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特許7191217電池セル熱伝導度測定装置及びそれを用いた電池セル熱伝導度測定方法。
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  • 特許-電池セル熱伝導度測定装置及びそれを用いた電池セル熱伝導度測定方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電池セル熱伝導度測定装置及びそれを用いた電池セル熱伝導度測定方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20221209BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20221209BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20221209BHJP
【FI】
G01N25/18 D
H01M10/613
H01M10/6555
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/658
H01M10/633
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021524443
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2020007270
(87)【国際公開番号】W WO2020256316
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0072383
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クァン・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・ソン
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-227010(JP,A)
【文献】特開2013-019712(JP,A)
【文献】特開2012-032231(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220153(WO,A1)
【文献】特開平1-169346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
H01M 10/613
H01M 10/6555
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/651
H01M 10/658
H01M 10/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を含む熱板と、
前記熱板の側面から離隔された状態で前記熱板を囲む保護熱板と、を含み、
前記熱板に対して垂直な方向へ上部及び下部にそれぞれ測定板、冷却板、及び冷却ユニットを順次に含めて対称構造を成しており、
前記上部及び前記下部における前記測定板と前記冷却板との間にはそれぞれ電池セルが配置され
前記保護熱板は、前記熱板よりも高い温度で維持される、電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項2】
前記測定板の厚さは前記熱板から発生する熱量の大きさに比例して大きくなる、請求項に記載の電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項3】
前記測定板はアルミニウム、銅又はこれらの合金からなる、請求項1又は2に記載の電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項4】
前記測定板の側面に、前記測定板と離隔された位置で前記測定板を囲む保護測定板を追加でさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項5】
前記熱板は円柱又は直六面体の形態である、請求項1からのいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項6】
前記電池セル熱伝導度測定装置の側面に断熱性素材からなる断熱材が熱伝導度測定装置から離隔されて具備されている、請求項1からのいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定装置を利用して電池セルの熱伝導度を測定する方法であって、
熱板に対して垂直な上部方向へと前記電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
熱板に対して垂直な下部方向へと前記電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
前記上部方向に印加される熱量と前記下部方向に印加される熱量を利用して前記電池セルの熱伝導度を算出する段階と、を含む、電池セル熱伝導度測定方法。
【請求項8】
前記熱板に垂直の上部方向へと前記電池セルに印加される熱量は、下記数学式1によって算出される、請求項に記載の電池セル熱伝導度測定方法。
【数1】
(前記数学式1において、Pupは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【請求項9】
前記熱板に垂直の下部方向へと前記電池セルに印加される熱量は、下記数学式2によって算出される、請求項又はに記載の電池セル熱伝導度測定方法。
【数2】
(前記数学式2において、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【請求項10】
前記電池セルの上部方向熱伝導度は下記数学式3によって算出される、請求項からのいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定方法。
【数3】
(前記数学式3において、kupは電池セル下面から上面への垂直方向熱伝導度、Pupは上部方向へと電池セルに印加される熱量、Ltopは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、Tは電池セル熱板に近い電池セル下面の温度、Tは冷却板に近い電池セル上面の温度を意味する。)
【請求項11】
前記電池セルの下部方向熱伝導度は下記数学式4によって算出される、請求項から10のいずれか一項に記載の電池セル熱伝導度測定方法。
【数4】
(前記数学式4において、kdownは電池セル上面から下面への垂直方向熱伝導度、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Lbottomは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、T'は電池セル熱板に近い電池セル上面の温度、T'は冷却板に近い電池セル下面の温度を意味する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパウチ型電池セルの熱特性、具体的には電池セルの熱伝導度を測定するための装置及びそれを用いた熱伝導度測定方法に関するものである。
【0002】
本出願は2019年6月18日付の韓国特許出願第10-2019-0072383号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
化石燃料のエネルギー価格が上昇し、環境汚染に対する関心が増して、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求が将来生活のための必要不可欠な要因となっている。特に、モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれ、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。
【0004】
代表的には、電池の形状面においては薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用され得る角形二次電池とパウチ型二次電池に対する需要が高く、材料面においてはエネルギー密度、放電電圧、出力安定性の高い、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
最近には、スタック型又はスタック/折り畳み型電極組立体をアルミニウムラミネートシートのパウチ型電池ケースに内蔵した構造のパウチ型電池が、低い製造費、少ない重量、容易な形態変形などを理由に多くの関心を集めており、使用量も徐々に増加している。
【0006】
パウチ型電池セルには、正極、分離膜、負極を積層して製造されるスタック型又はスタック-折り畳み型電極組立体が収容される。それぞれの正極及び負極は電極タップによって電気的に連結され、電極タップの外部に引き出される電極リードが連結される。
【0007】
上記電極タップ及び電極リードが連結された電極組立体をパウチ形態の電池ケースに収容した後に電解液を注入し、電極リードの一部が外部に露出された状態で電池ケースを密封してパウチ型電池セルを製造する。
【0008】
一方、パウチ型電池セルの電池ケースはパウチ形態からなっているので加工が容易であり、電極組立体の大きさや形態による制約が少なく、電池セルの内部空間を効率的に使用し得る。従って、パウチ型電池セルはエネルギー密度が高く、多様な形態で加工することが可能であり、最近には多様な形態から成されたモバイル機器及び自動車電池にも使用されている。しかし、パウチ型電池セルは小型機器から大型機器に至るまで高いエネルギー集積度が適用されるため、機器内部において温度上昇を誘発し得る。このような温度上昇は機器自体の性能に影響を与えるか、火災、爆発などの危険を誘発するため、電池セルから排出される熱の流れ、即ち、電池セルの熱伝導度(Thermal conductivity)を把握することが重要である。
【0009】
熱伝導度(Thermal conductivity)は物体内で熱が伝導する程度を示す数値を意味し、熱の流れに垂直な単位面積を経て単位時間に流れる熱量を単位長さ当たりの温度の差で分けた値である。従って、熱伝導度が高いほど、相対的に熱を上手く通過させることを意味する。一般的に金属は熱伝導度が高い。
【0010】
このような熱伝導度測定方法としては、熱線法(Hot wire method)、 熱流束法(Guarded Heat flow method)、保護熱板法(Guarded Hot plate method)が知らされている。この中、保護熱板法(Guarded Hot plate method)は固体試料(specimen)の熱伝導度を測定する方法であって、試料両面の温度を正確に測定しながら、高い温度側の面から低い温度側の面へと流れ込む熱量を測定することで、熱伝導度を測定する原理である。即ち、試料内で一次元的に熱流が正確に形成され得るように熱板(hot plate)の周辺に保護熱板(guard plate)という補助的な熱板を配置させ、熱板(hot plate)が一定な温度を有するようにしている。また、板の表面に垂直方向へと熱を移動するようにしてからこそ、正確な熱伝導度を計算することができる。
【0011】
従って、熱板と保護熱板は一定距離に離隔された状態で配置され、時には、その間を熱伝導度の低い素材に埋めることもある。
【0012】
このような保護熱板法においても多様な構造が研究されて来ており、熱板と冷却板をそれぞれ1個ずつ備えてそれらの間に試験片を置き、熱の流れを計算して測定する通常的な方法の外に、熱板を中心に上下対称的な構造を成す、いわゆる2枚法という構造も使用されている。
【0013】
しかし、従来の保護熱板法の場合、単一素材からなる単純な形態の試験片の測定のみのために設計されたものである。2枚法の場合も、2個の試験片を利用して上方向と下方向の熱の流れを測定するということにおいて違いがあるが、上方向と下方向の熱伝導度の平均を求めることで、正確度を高めたということを除いては従来の方法と同一であり、基本的に熱伝導度が一方性を有する単一素材を対象とするということにおいては従来の方法と違いがない。
【0014】
どころが、パウチ型電池セルの場合、単一素材の試験片とは異なって正極及び負極集電体、分離膜、電極合剤、電池ケースなど物性が相違する多様な素材を含んでおり、各素材の配置が均一に分散されたことでもないので、単一素材の試験片とは異なって示される。
【0015】
従って、従来の保護熱板法の装置及び方法としては電池セルの熱特性に対する評価をすることが難しいので、これを測定するための新たな装置及び方法が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は電池セルの熱特性を測定し難い従来の熱伝導度測定装置及び測定方法を改善し、異方性が示される電池セルの熱伝導度を各方向に応じて独立的に測定するための装置及びそれを用いた測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するため、本発明に係る電池セル熱伝導度測定装置は発熱体を含む熱板と、上記熱板の側面から離隔された状態で熱板を囲む保護熱板と、を含み得る。
【0018】
また、上記熱板に対して垂直な方向へと上部及び下部にそれぞれ測定板、冷却板、冷却ユニットを順次に含み得、上記熱板の上方向と下方向にそれぞれ配置される測定板、冷却板、冷却ユニットは熱板を中心に対称構造を成している。
【0019】
このとき、 熱伝導度測定のために、上記上部及び上記下部における測定板と冷却板との間には電池セルがそれぞれに1個ずつ配置され得る。
【0020】
一方、上記保護熱板は、熱板の熱伝達方向を熱板を中心にして垂直である上下方向の線形で1次元的に誘導するためのものであって、熱板から発生する熱が側面へ移動しないように上記熱板と同じ温度、又は上記熱板よりも高い温度で維持されることを特徴とする。
【0021】
上記測定板の厚さは熱板から発生する熱量の大きさに比例して大きくなることを特徴とする。測定板は熱板に近い高温面と冷却板の方がより近い低温面で熱性向が示され得るが、高温面と低温面の距離が遠いほど、熱の流れが均一に示される傾向がある。しかし、厚さが増加するほど、熱損失も大きくなるため、熱量の大きさに応じて好適な厚さで調節する必要がある。
【0022】
上記測定板は熱伝導度が優秀であり、レファレンス値がよく知らされた金属材料を用いることが好ましい。具体的に、上記測定板は熱伝導度が50W/m.K以上の金属または金属合金であることが好ましい。更に具体的には、アルミニウム、銅またはこれらの合金である金属素材からなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のまた他の一実施形態によると、上記測定板の側面に測定板と離隔された位置で測定板を囲む保護測定板を追加で更に含み得、この場合は測定板での熱損失を更に減らすことができる。
【0024】
一方、熱伝導度測定装置の側面から損失される熱を更に減らすために、上記電池セル熱伝導度測定装置の側面には断熱性素材からなる断熱材が具備され得る。上記断熱材は、それを通じて直接的な熱伝達が行われないように熱伝導度測定装置から離隔されて具備されることが好ましい。
【0025】
上記熱板は円柱又は直六面体の形態であり得る。熱板の形態に制限はないが、側面方向への熱損失を抑制し、上下方向へと一次元的な熱量伝達を図るために、長方形又は正四角形、最も好ましくは円形である得る。
【0026】
本発明の電池セル熱伝導度測定装置を利用すると、電池セルの上方向と下方向において異なる熱特性が示される電池セル熱伝導度をそれぞれ分離して測定することができる。具体的に、下記のような段階を経て垂直方向へ上方向と下方向とをそれぞれ分離して測定することが可能である。
熱板に対して垂直の上部方向へと電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
熱板に対して垂直の下部方向へと電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
上記上部方向へと印加される熱量と下部方向へと印加される熱量を利用して電池セルの熱伝導度を算出する段階。
【0027】
このとき、上記熱板に垂直の上部方向へと電池セルに印加される熱量は、下記数学式1によって算出され得る。
【0028】
【数1】
【0029】
(上記数学式1において、Pupは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【0030】
また、熱板に垂直の下部方向へと電池セルに印加される熱量は下記数学式2によって算出され得る。
【0031】
【数2】
【0032】
(上記数学式2において、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【0033】
上記上部方向へと印加される熱量値を利用して、上記電池セルの上部方向熱伝導度は下記数学式3によって算出され得る。
【0034】
【数3】
【0035】
(上記数学式3において、kupは電池セル下面から上面への垂直方向熱伝導度、Pupは上部方向へと電池セルに印加される熱量、Ltopは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、Tは電池セル熱板に近い電池セル下面の温度、Tは冷却板に近い電池セル上面の温度を意味する。)
【0036】
一方、上記下部方向へと印加される熱量値を利用して、上記電池セルの下部方向熱伝導度は下記数学式4によって算出され得る。
【0037】
【数4】
【0038】
(上記数学式4において、kdownは電池セル上面から下面への垂直方向熱伝導度、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、LBottomは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、T'は電池セル熱板に近い電池セル上面の温度、T'は冷却板に近い電池セル下面の温度を意味する。)
【発明の効果】
【0039】
本発明は電池セル熱伝導度測定装置及びそれを用いた熱伝導度測定方法に関するものであって、非等方性熱伝導特性が示されるパウチ型電池セルの熱伝導度を各方向に応じて分離して測定することが可能であり、それを通じて二次電池用電池セルを用いる製品の熱特性による安定性評価を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】従来の熱伝導度測定装置の側面から見た構造を模式的に示したものである。
図2】従来の又他の熱伝導度測定装置の側面から見た構造を模式的に示したものである。
図3】本発明の一実施形態による熱伝導度測定装置の側面から見た構造を示したものである。
図4】本発明の一実施形態による熱伝導度測定装置の構造を立体的に示したものである。
図5】本発明の又他の一実施形態による熱伝導度測定装置の側面から見た構造を示したものである。
図6】本発明の又他の一実施形態による熱伝導度測定装置の構造を立体的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができる。そこで、特定実施形態を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0042】
各図面を説明しながら、類似な参照符号を類似な構成要素に対して用いた。添付された図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して図示したものである。多様な構成要素を説明するのに使用された用語は理解を助けるためのものであって、上記構成要素が上記用語によって限定されてはならない。上記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。例えば、本発明の権利範囲から外れずに第1構成要素が第2構成要素として命名され得、類似に第2構成要素も第1構成要素として命名され得る。単数の表現は、文脈上に明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0043】
本発明の明細書全体において使用される「含む」又は「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0044】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「直ぐ上に」ある場合のみではなく、その中間に又は他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、これは他の部分の「直ぐ下に」ある場合のみではなく、その中間に又は他の部分がある場合も含む。また、本発明の明細書において「上に」配置されるということは上部だけでなく、下部に配置される場合も含むことであり得る。
【0045】
本明細書の全体においては「上部」、「下部」、「上方向」、「下方向」、「上面」、「下面」はいずれも本発明の熱伝導度測定装置の熱板を基準として、垂直方向への相対的な位置を意味する。例えば、「上方向」への熱量伝達ということは熱板を基準に垂直方向に上側方向を意味し、電池セルの「上面」ということはパウチ型電池セルを熱伝導度測定装置に水平に配置したとき、上記「上方向」を向く一面を意味する。従って、電池セルの「下面」は上記「上面」の反対側である他面を意味する。
【0046】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0047】
最近、モバイル機器から電気自動車に至るまで多様な製品群において高エネルギーの高集積二次電池を必要としている。パウチ型二次電池は空間活用度が優れているので、エネルギー集積度が高い二次電池の製造に適合する。しかし、このような集積度に比例して、使用時に発生する熱量も増加する。二次電池内で高い熱が発生するときに、それを効率的に排出できなければ、二次電池自体から熱暴走現象が発生し得る。そして、二次電池が含まれた電子機器の熱特性によっても悪い影響を与え得る。従って、パウチ型電池セルの熱特性を測定することは非常に重要である。
【0048】
どころが、電池セルの場合、単一材料からなる素材とは異なって非等方性熱伝導が起こるため、従来の熱伝導度測定装置で特性を把握するには困難さがある。このような問題を解決するために、本発明の熱伝導度測定装置はパウチ型電池セルの下面から上面への垂直方向熱伝導度及び上面から下面への垂直方向熱伝導度を分離し、それぞれを測定することができることを特徴とする。
【0049】
これを通じて、電池セル内部から発生する熱が電池セルの上面と下面にどのような割合で伝達されるのかを正確に判別することが可能であり、電子製品の内部部品の熱特性を考慮して二次電池の配置位置及び方向を最適化して設計することが可能である。
【0050】
本発明の熱伝導度測定装置は、発熱体を含む熱板と、上記熱板の側面から離隔された状態で熱板を囲む保護熱板と、を含み得る。
【0051】
また、上記熱板に対して、垂直な方向へと上部及び下部にそれぞれ測定板、冷却板、冷却ユニットを順次に含み得、上記熱板の上方向と下方向とにそれぞれ配置される測定板、冷却板、冷却ユニットは熱板を中心に対称構造を成している。このような構造に起因して熱板で発生した熱が熱板から上下の冷却板に向かって垂直方向に移動することになる。
【0052】
このとき、上記上部及び上記下部における測定板と冷却板との間には、熱伝導度測定のために、それぞれ電池セルが1個ずつ配置され得る。
【0053】
一方、上記保護熱板は熱板の熱伝達方向を熱板を中心に垂直である上下方向の線形として1次元的に誘導するためのものであり、熱板から発生する熱が側面に移動しないように上記熱板と同じ温度、又は上記熱板よりも高い温度で維持されることを特徴とする。仮に保護熱板が熱板より低い温度に下がると、高い温度から低い温度に移動するという特性上、側面にも熱移動が発生するので、正確な熱伝導度測定が難しくなる。
【0054】
上記測定板の厚さは、熱板から発生する熱量の大きさに比例して大きくなることを特徴とする。測定板は熱板に近い高温面と冷却板の方にさらに近い低温面とで熱性向が現れ得るが、高温面と低温面との距離が遠いほど熱の流れが均一に現れる傾向がある。即ち、測定板の厚さが厚いほど、更に精巧に熱特性測定が可能である。しかし、厚さが厚くなるほど熱損失も大きくなるため、熱板から発生する熱量の大きさに応じた好適な厚さに調節する必要がある。
【0055】
上記測定板は熱伝導度が優れており、レファレンス値がよく知らされた金属材料を用いることが好ましい。具体的に、上記測定板の素材としてはアルミニウム、銅又はこれらの合金を選択して用いることができる。熱伝導度が低いと、その分ほど熱損失が大きくなるので正確な熱量測定が難しくなる。
【0056】
一方、測定板は熱伝導度測定の基準となる構成要素であって、熱伝導度計算時に、熱板に近い一面と冷却板に近い他面の温度をそれぞれ測定することになる。
【0057】
また、測定板の厚さの増加に起因する熱損失を最小限に抑えるために、熱板と類似な構造で測定板を設計することができる。本発明の又他の一実施形態によると、上記測定板の側面に測定板と離隔された位置で測定板を囲む保護測定板を追加で更に含み得、このような場合、測定板での熱損失を更に減らし得る。
【0058】
熱伝導度測定装置の側面へと損失される熱を更に減らすために、上記電池セル熱伝導度測定装置の側面には、断熱性素材からなる断熱材が具備され得る。上記断熱材は、それを通じて直接的な熱伝達が行われないように、熱伝導度測定装置から離隔されて具備されることが好ましい。
【0059】
上記熱板は円柱又は直六面体の形態であり得る。熱板の形態には制限がないが、側面方向への熱損失を抑制し、上下方向に一次元的な熱量伝達を図るために、長方形又は正四角形、最も好ましくは円形であり得る。
【0060】
本発明の電池セル熱伝導度測定装置を利用すると、電池セルの上方向と下方向においてそれぞれ異なる熱特性が示される電池セル熱伝導度を、それぞれ分離して測定することができる。具体的には下記のような段階を経て、垂直方向へ上方向と下方向とをそれぞれ分離して測定することが可能である。
熱板に対して、垂直の上部方向へ電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
熱板に対して、垂直の下部方向へ電池セルに印加される熱量を算出する段階と、
上記上部方向へ印加される熱量と下部方向へ印加される熱量とを利用し、電池セルの熱伝導度を算出する段階。
【0061】
従来の保護熱板法のうち2枚法は、主熱板と補助熱板の温度を同一にした状態で主熱板の垂直な方向へと一定な熱流束を形成する原理である。それにつれ、補助熱板は大きさが相当に大きくなければならず、熱板と完全に同一な温度を維持しなければならない。また、上下の試験片は同一な材料で熱伝導度が同様であると仮定し、上方向と下方向の熱伝導度の平均で熱量を求める。従って、熱伝導度が均一な等方性材料や断熱材の熱特性測定には適合するが、パウチ型電池セルの熱伝導度はこのような方法では測定することは不可能である。
【0062】
従って、本発明の熱伝導度測定装置は熱板の上下に測定板を配置し、上方向の熱量と下方向の熱量とをそれぞれ分離して別々に測定する。また、電池セルの大きさに対応して熱板を大きく作製すべきである。しかし、測定板を配置することによって保護熱板は相対的に小さく作製しても良く、保護熱板の温度も熱板より高い状態で維持すれば良いので調節が容易である。
【0063】
本熱伝導度測定装置の測定原理は次の通りである。
【0064】
熱板から発生する総熱量は電流と電圧との掛け算で示すことができ、これは上方向の熱量と下方向の熱量とを足した値と同じである。
【0065】
一方、上部測定板と下部測定板の表面温度を利用すると、上下方向にそれぞれ印加される熱量の割合を求めることができる。これを利用し、電池セルの上方向と下方向への熱伝導度をそれぞれ求めることができ、その割合も容易に算出することができる。
【0066】
まず、上記熱板に垂直の上部方向へと電池セルに印加される熱量は下記数学式1によって算出され得る。
【0067】
【数5】
【0068】
(上記数学式1において、Pupは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【0069】
次に、熱板に垂直の下部方向へと電池セルに印加される熱量は下記数学式2によって算出され得る。
【0070】
【数6】
【0071】
(上記数学式2において、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Tは熱板上部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板上部に配置される測定板の電池セルと対面する他面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の熱板と対面する一面の温度、Tは熱板下部に配置される測定板の電池セルと対面する一面の温度、iは熱板に印加される電流、Vは熱板に印加される電圧を意味する。)
【0072】
上記それぞれ計算した熱量値を利用して、電池セルの熱伝導度を計算することができる。下記数学式3、4による熱伝導度計算因子は下記の通りである。
【0073】
まず、上記上部方向に印加される熱量値を利用して、上記電池セルの上部方向熱伝導度は下記数学式3によって算出され得る。
【0074】
【数7】
【0075】
(上記数学式3において、kupは電池セルの下面から上面への垂直方向熱伝導度、Pupは上部方向へと電池セルに印加される熱量、Ltopは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、Tは電池セルの熱板に近い電池セル下面の温度、Tは冷却板に近い電池セル上面の温度を意味する。)
【0076】
上記下部方向に印加される熱量値を利用して、上記電池セルの下部方向熱伝導度は下記数学式3によって算出され得る。
【0077】
【数8】
【0078】
(上記数学式4において、kdownは電池セル上面から下面への垂直方向熱伝導度、Pdownは下部方向へと電池セルに印加される熱量、Lbottomは冷却板の厚さ、Aは熱量を測定する単位面積、T'は電池セル熱板に近い電池セル上面の温度、T'は冷却板に近い電池セル下面の温度を意味する。)
【0079】
上記kupとkdownのの値で、異方性が現れる電池セルの熱伝導度を各方向別に分離して計算することができ、各方向に熱が伝達される割合も容易に分かる。
【0080】
以下、各図面を参考して、本発明の熱伝導度測定装置の構造を更に詳しく説明する。
【0081】
図1は、従来の熱伝導度測定装置(10)であって、熱板(11)、保護熱板(12)、測定板(13)、保護板(14)、冷却板(16)、断熱材(17)、保護板(18)を備えており、試験片(15)は冷却板(16)の上に配置される。熱板(11)から発生した熱は冷却板(16)の方向へと垂直に移動するため、試験片(15)の上部から下部への熱移動が発生する。従って、このような方法は等方性材料のみに適用し得る。また、側面への熱損失が大きく現れるため、大略的な熱特性を把握することは可能であるが、精密な測定は不可能である。また、上記測定板(13)は熱板(11)から発生された熱量を直接測定するのではなく、熱量測定における熱の損失を防止するための断熱材の役割を果たす。従って、上記図1の測定装置(10)においては、測定板(13)の上下方向表面の温度を測定しない。これと比較して、本発明の測定装置に具備された測定板は従来の測定装置とは異なって、上下対称構造で存在し、断熱材の役割を果たすのではなく、測定板の表面温度を直接測定することによって熱板の上下方向へと移動する熱量を算出する用途で利用される。
【0082】
図2は、従来の又他の熱伝導度測定装置(20)であって、上記図1の熱伝導度測定装置(10)をさらに改善したものである。これは熱板(21)、測定板(22)、測定器(23)、保護板(24)、保護熱板(25)、冷却板(27)、冷却ユニット(28)及び断熱材(29)を含んでおり、試験片(26)は冷却板(27)の上に配置され、熱の移動は上方向から下方向へと発生する。図1の熱伝導度測定装置(10)から熱損失が更に抑制されている構造であるが、同様に一方向の熱伝導度のみを測定することが可能であるため、電池セルの熱伝導度測定には適合しない。
【0083】
図3及び図4は本発明の熱伝導度測定装置(100)の一実施形態である。中央にある熱板(110)から熱が垂直方向に上方向と下方向とへ移動することになり、側方向への損失を防止するために熱板(110)の側面には保護熱板(120)が離隔されて配置される。また、熱板から上下方向に隣接して上部測定板(131)及び下部測定板(132)が存在しており、上部測定板(131)と下部測定板(132)の各面の温度を測定して、上下方向へと伝達される熱量の割合が分かる。その次に、上部冷却板(141)と下部冷却板(142)が配置されるが、これと隣接して上部冷却ユニット(151)と下部冷却ユニット(152)が配置され、冷却板の低い温度を維持することになる。電池セルは上方向と下方向とにそれぞれ配置され(101、102)、下面から上面方向への熱伝導度及び上面から下面方向への熱伝導度をそれぞれ分離して計算するために、同一な種類の電池セルが同一な方向に配置されるべきである。
【0084】
図5及び図6は本発明の熱伝導度測定装置(200)の又他の一実施形態である。中央にある熱板(210)から熱が垂直方向に上方向と下方向とへ移動することになり、側方向への損失を防止するために熱板(210)の側面には保護熱板(220)が離隔されて配置される。また、熱板から上下方向に隣接して上部測定板(131)及び下部測定板(132)が存在しており、上部測定板(131)と下部測定板(132)の各面の温度を測定して、上下方向へと伝達される熱量の割合が分かる。また、上記上部測定板(131)と下部測定板(132)の側面にはそれぞれ保護測定板(241、242)が離隔されて配置される。これを通じて、測定板からの熱損失を更に減らすことができながらも、熱伝達特性を均一に維持することが可能である。その次に、上部冷却板(251)と下部冷却板(252)が配置されるが、これと隣接して上部冷却ユニット(261)と下部冷却ユニット(262)が配置され、冷却板の低い温度を維持することになる。電池セルは上方向と下方向にそれぞれ配置され(201、202)、下面から上面方向への熱伝導度及び上面から下面の方向への熱伝導度をそれぞれ分離して計算するために、同一な種類の電池セルが同一な方向に配置されるべきである。
【符号の説明】
【0085】
10:熱伝導度測定装置
11:熱板
12:保護熱板
13:測定板
14:保護板
15:試験片
16:冷却板
17:断熱材
18:保護板
20:熱伝導度測定装置
21:熱板
22:測定板
23:測定器
24:保護板
25:保護熱板
26:試験片
27:冷却板
28:冷却ユニット
29:断熱材
100:熱伝導度測定装置
101:上部電池セル
102:下部電池セル
110:熱板
120:保護熱板
131:上部測定板
132:下部測定板
141:上部冷却板
142:下部冷却板
151:上部冷却ユニット
152:下部冷却ユニット
160:断熱材
200:熱伝導度測定装置
201:上部電池セル
202:下部電池セル
210:熱板
220:保護熱板
231:上部測定板
232:下部測定板
241:上部保護測定板
242:下部保護測定板
251:上部冷却板
252:下部冷却板
261:上部冷却ユニット
262:下部冷却ユニット
270:断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6