(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】アライメント機構、アライメント方法、成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221209BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221209BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221209BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H01L27/32
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021534060
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028386
(87)【国際公開番号】W WO2021015224
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0089113
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】中須 祥浩
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195907(JP,A)
【文献】特表2019-513290(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 51/50-51/56
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着して保持するための基板吸着手段と、マスクを支持するマスク支持手段と、前記マスク支持手段に備えられ、前記基板及び前記マスクを一時的に支持する仮受け手段と、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を搭載し、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させる水平粗動ステージ機構と、前記水平粗動ステージ機構を昇降させる垂直粗動ステージ機構とを含むアライメント機構を用いて、基板とマスクを位置調整するためのアライメント方法であって、
搬入された基板を、前記仮受け手段によって支持する基板仮受け工程と、
前記水平粗動ステージ機構を駆動して、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させることで、前記仮受け手段により支持された基板の前記基板吸着手段に対する位置を調整する基板位置調整工程と、
前記基板位置調整工程で位置が調整された前記基板を前記基板吸着手段に吸着させる基板吸着工程と、
を含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項2】
さらに、前記基板仮受け工程の前に、
搬入されたマスクを、前記仮受け手段によって支持するマスク仮受け工程と、
前記水平粗動ステージ機構を駆動して、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させることで、前記仮受け手段により支持されたマスクの位置を調整するマスク位置調整工程と、
前記マスク位置調整工程で位置が調整された前記マスクを前記マスク支持手段に載置するマスク載置工程と、
を含むことを特徴とする請求項
1に記載のアライメント方法。
【請求項3】
さらに、前記基板吸着工程の後に、
前記水平粗動ステージ機構を駆動して前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で再度移動させることによって、前記マスク支持手段に載置されたマスクの位置を調整するマスク位置再調整工程
を含むことを特徴とする請求項
2に記載のアライメント方法。
【請求項4】
前記仮受け手段は、前記基板または前記マスクを受け取ることができる受け取り位置と、前記基板または前記マスクとの干渉を回避することができる退避位置と、の2位置を取ることができ、
前記マスク載置工程で前記マスクを前記マスク支持手段に載置した後に、前記仮受け手段を前記受け取り位置から前記退避位置へ移動させることを特徴とする請求項
2または請求項
3に記載のアライメント方法。
【請求項5】
前記仮受け手段は、前記基板または前記マスクを受け取ることができる受け取り位置と、前記基板または前記マスクとの干渉を回避することができる退避位置と、の2位置を取ることができ、
前記基板吸着工程により前記基板を前記基板吸着手段に吸着させた後に、前記仮受け手段を前記受け取り位置から前記退避位置へ移動させることを特徴とする請求項
1~請求項
4の何れか一項に記載のアライメント方法。
【請求項6】
前記マスク位置調整工程で前記水平粗動ステージ機構を駆動して前記マスク支持手段を移動させる際に、マスク固定機構により前記マスク支持手段上での前記マスクの位置を固定することを特徴とする請求項
2~請求項
4の何れか一項に記載のアライメント方法。
【請求項7】
前記アライメント機構は、前記基板上に形成された基板アライメントマーク及び前記マスク上に形成されたマスクアライメントマークの位置を検出するための位置検出手段をさらに含み、
前記基板位置調整工程における基板位置調整動作は、前記位置検出手段によって検出される前記基板アライメントマークに基づいて、前記仮受け手段により支持された基板の位置を調整することを特徴とする請求項
1~請求項
6の何れか一項に記載のアライメント方法。
【請求項8】
前記水平粗動ステージ機構を駆動して前記基板の位置を調整する、前記基板位置調整工程は、前記位置検出手段によって前記基板アライメントマークが計測可能な位置まで、前記垂直粗動ステージ機構により前記水平粗動ステージ機構を移動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載のアライメント方法。
【請求項9】
前記アライメント機構は、前記基板上に形成された基板アライメントマーク及び前記マスク上に形成されたマスクアライメントマークの位置を検出するための位置検出手段をさらに含み、
前記基板位置調整工程における基板位置調整動作と、前記マスク位置調整工程及び前記マスク位置再調整工程におけるマスク位置調整動作は、それぞれ、前記位置検出手段によって検出される前記基板アライメントマークまたは前記マスクアライメントマークに基づいて、前記仮受け手段により支持された基板もしくはマスク、または前記マスク支持手段に載置されたマスクの位置を調整し、
前記基板の位置を調整する前記基板位置調整工程において、前記基板アライメントマークが前記位置検出手段の検出視野内で見つからない場合、
前記水平粗動ステージ機構を駆動して前記基板アライメントマークを探索する工程と、
前記探索された前記基板アライメントマークの座標を算出し、算出された前記座標に基づいて、前記基板位置調整工程及び前記基板吸着工程と、前記マスク位置再調整工程を繰り返し、前記位置検出手段の検出視野内に前記マスクアライメントマークと前記基板アライメントマークが共に入るようにする工程をさらに含むことを特徴とする請求項
3に記載のアライメント方法。
【請求項10】
前記アライメント機構は、さらに、前記基板吸着手段の位置を調整することができる微
動ステージ機構を含み、
位置調整された前記基板と前記マスク間の相対位置を、前記微動ステージ機構により、微細調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項
7または請求項
8に記載のアライメント方法。
【請求項11】
前記微動ステージ機構は、前記基板吸着手段の吸着面に平行に固定設置される固定プレート部と、前記固定プレート部に対して相対的に移動可能な可動プレート部と、前記可動プレート部を前記固定プレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含む磁気浮上ステージ機構であることを特徴とする請求項
10に記載のアライメント方法。
【請求項12】
前記基板吸着手段は、前記可動プレート部に設けられることを特徴とする請求項
11に記載のアライメント方法。
【請求項13】
基板を吸着して保持するための基板吸着手段と、マスクを支持するマスク支持手段と、前記マスク支持手段に備えられ、前記基板及び前記マスクを一時的に支持する仮受け手段と、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を搭載し、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させる水平粗動ステージ機構と、前記水平粗動ステージ機構を昇降させる垂直粗動ステージ機構とを含むアライメント機構を用いて、基板とマスクを位置調整するためのアライメント方法であって、
搬入されたマスクを、前記仮受け手段によって支持するマスク仮受け工程と、
前記水平粗動ステージ機構を駆動して、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させることで、前記仮受け手段により支持されたマスクの位置を調整するマスク位置調整工程と、
前記マスク位置調整工程で位置が調整された前記マスクを前記マスク支持手段に載置するマスク載置工程と、
を含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項14】
基板上にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜方法であって、
請求項
1~請求項
13の何れか一項に記載のアライメント方法により、前記基板及び前記マスクを位置調整する工程と、
成膜源によって粒子化された成膜材料を、前記マスクを介して前記基板に成膜する工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント機構、アライメント方法、成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイだけでなく、VR HMD(Virtual Reality Head Mount Display)などにその応用分野が広がっており、特に、VR HMDに用いられるディスプレイは、ユーザーのめまいを低減するために画素パターンを高精度で形成することが求められる。
【0003】
有機EL表示装置の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際に、成膜装置の成膜源から放出された成膜材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に成膜することで、有機物層や金属層を形成する。
【0004】
このような成膜装置においては、成膜精度を高めるために、成膜工程の前に、基板とマスクの相対位置を測定し、相対位置がずれている場合には、基板および/またはマスクを相対的に移動させて位置を調整(アライメント)する工程が必要になる。
【0005】
このため、従来の成膜装置は、基板支持ユニットとマスク台にそれぞれ連結されたアライメントステージ機構を含む。また、成膜装置は基板及びマスクに形成されたアライメントマークを撮影するアライメント用カメラを備える。また、成膜装置は基板及びマスクを搬出入する搬送機構を備える。成膜装置は搬送機構により基板またはマスクの受け渡しを行う。アライメント機構はアライメントカメラによって得られる基板及びマスクの相対位置情報を元にアライメントを行う。また、高精度なアライメントを行うためには高解像度のアライメントカメラを必要とする。しかし、高解像度のアライメントカメラは視野が相対的に狭く、搬送機構の受け渡し精度では基板及びマスクに形成されたアライメントマークをアライメントカメラの視野内に受け渡すことは困難であった。また、搬送機構の受け渡し精度を高めることは機構上困難である。そのため、成膜装置に、低解像度であるが、相対的に広い視野を持つラフアライメントカメラと、相対的に狭い視野しか持たないが、高解像度であるファインアライメントカメラを備え、ファインアライメント用カメラの視野内に基板及びマスクに形成されたアライメントマークを移動させることを目的としたラフアライメントと、成膜精度を高めるために基板とマスクのアライメントマークを高精度にアライメントするファインアライメント、に工程を分けている。また、アライメント機構はカメラによって撮影されたアライメントマークの位置合わせを行うための複数のアクチュエータ(例えば、2つのX方向のモータ及び1つのY方向のモータ)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の成膜装置では、ラフアライメント工程における基板及びマスクのアライメント動作を、基板及びマスクに個別のアライメント機構で行っていた。そのため、ラフアライメント機構の配置スペースが余剰に必要になり、装置サイズの大型化及びコスト上昇につながっていた。
【0007】
本発明は、ラフアライメント機能を維持しつつ、装置サイズやコストの低減を行うアライメント機構の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアライメント方法は、基板を吸着して保持するための基板吸着手段と、マスクを支持するマスク支持手段と、前記マスク支持手段に備えられ、前記基板及び前記マスクを一時的に支持する仮受け手段と、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を搭載し、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させる水平粗動ステージ機構と、前記水平粗動ステージ機構を昇降させる垂直粗動ステージ機構とを含むアライメント機構を用いて、基板とマスクを位置調整するためのアライメント方法であって、搬入された基板を、前記仮受け手段によって支持する基板仮受け工程と、前記水平粗動ステージ機構を駆動して、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させることで、前記仮受け手段により支持された基板の前記基板吸着手段に対する位置を調整する基板位置調整工程と、前記基板位置調整工程で位置が調整された前記基板を前記基板吸着手段に吸着させる基板吸着工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態によるアライメント方法は、基板を吸着して保持するための基板吸着手段と、マスクを支持するマスク支持手段と、前記マスク支持手段に備えられ、前記基板及び前記マスクを一時的に支持する仮受け手段と、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を搭載し、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させる水平粗動ステージ機構と、前記水平粗動ステージ機構を昇降させる垂直粗動ステージ機構とを含むアライメント機構を用いて、基板とマスクを位置調整するためのアライメント方法であって、搬入されたマスクを、前記仮受け手段によって支持するマスク仮受け工程と、前記水平粗動ステージ機構を駆動して、前記マスク支持手段及び前記仮受け手段を水平面内で移動させることで、前記仮受け手段により支持されたマスクの位置を調整するマスク位置調整工程と、前記マスク位置調整工程で位置が調整された前記マスクを前記マスク支持手段に載置するマスク載置工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板及びマスクにそれぞれのラフアライメント機構を設ける必要なく、ラフアライメント動作を行うことが可能となり、装置のサイズ及びコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるアライメント機構を有する成膜装置の模式図である。
【
図3a】
図3aは、本発明の一実施形態による微動ステージ機構の模式図である。
【
図3b】
図3bは、本発明の一実施形態による微動ステージ機構の模式図である。
【
図3c】
図3cは、本発明の一実施形態による微動ステージ機構の模式図である。
【
図3d】
図3dは、本発明の一実施形態による微動ステージ機構の模式図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の一実施形態による磁気浮上リニアモータの構造を示す模式図である。
【
図4b】
図4bは、本発明の一実施形態による磁気浮上リニアモータの構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による自重補償手段の構造を示す模式図である。
【
図6a】
図6aは、本発明の一実施形態によるラフアライメントの一連の動作を説明する図である。
【
図6b】
図6bは、本発明の一実施形態によるラフアライメントの一連の動作を説明する図である。
【
図6c】
図6cは、本発明の一実施形態によるラフアライメントの一連の動作を説明する図である。
【
図6d】
図6dは、本発明の一実施形態によるラフアライメントの一連の動作を説明する図である。
【
図6e】
図6eは、本発明の一実施形態によるラフアライメントの一連の動作を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態によるマスク固定機構が備えられたラフアライメント機構を示す図である。
【
図8a】
図8aは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【
図8b】
図8bは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【
図8c】
図8cは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【
図8d】
図8dは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【
図8e】
図8eは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【
図8f】
図8fは、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合における本発明の一実施形態によるラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に限定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用することができる。
【0015】
基板の材料としては、半導体(例えば、シリコン)、ガラス、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができ、基板は、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、成膜材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選ぶことができる。
【0016】
なお、本発明は、加熱蒸発による真空蒸着装置の以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、適用することができる。本発明の技術は、具体的には、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造装置に適用可能である。電子デバイスの具体例としては、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどが挙げられる。
【0017】
本発明は、中でも、OLEDなどの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造装置に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0018】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0019】
図1の製造装置は、例えば、VR HMD用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。VR HMD用の表示パネルの場合、例えば、所定のサイズ(例えば300mm)のシリコンウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウエハを切り出して、複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0020】
本実施形態に係る電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0021】
クラスタ装置1は、基板Wに対する処理(例えば、成膜)を行う成膜装置11と、使用前後のマスクを収納するマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、
図1に示したように、成膜装置11およびマスクストック装置12のそれぞれと接続される。
【0022】
搬送室13内には、基板Wおよびマスクを搬送する搬送ロボット14が配置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板W又はマスクを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0023】
成膜装置11では、成膜源から放出された成膜材料がマスクを介して基板W上に成膜される。搬送ロボット14との基板W/マスクの受け渡し、基板Wとマスクの相対的位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Wの固定、成膜などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0024】
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、成膜装置11は、成膜される材料の種類によって、有機膜の成膜装置と金属性膜の成膜装置に分けることができ、有機膜の成膜装置は、有機物の成膜材料を蒸着又はスパッタリングによって基板Wに成膜し、金属性膜の成膜装置は、金属性の成膜材料を蒸着またはスパッタリングにより基板Wに成膜する。
【0025】
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、どの成膜装置をどの位置に配置するかは、製造される有機EL素子の積層構造によって異なり、有機EL素子の積層構造に応じてこれを成膜するための複数の成膜装置が配置される。
【0026】
有機EL素子の場合、通常、アノードが形成されている基板W上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソードがこの順に積層される構造を有し、これらの層を順次成膜できるように基板の流れ方向に沿って適切な成膜装置が配置される。
【0027】
例えば、
図1において、成膜装置11aは、正孔注入層HILおよび/または正孔輸送層HTLを成膜し、成膜装置11b、11fは、青色の発光層を、成膜装置11cは、赤色の発光層を、成膜装置11d、11eは、緑色の発光層を、成膜装置11gは、電子輸送層ETLおよび/または電子注入層EILを、成膜装置11hは、カソード金属膜を成膜するように配置される。
図1に示した実施例では、素材の特性上、青色の発光層と緑色の発光層の成膜速度が赤色の発光層の成膜速度より遅いので、処理速度のバランスを取るために青色の発光層と緑色の発光層とをそれぞれ2つの成膜装置で成膜するようにしているが、本発明はこれに限定されず、他の配置構造を有しても良い。
【0028】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、複数のカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納されている新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0029】
複数のクラスタ装置1の間を連結する中継装置は、クラスタ装置1の間で基板Wを搬送するパス室15を含む。
【0030】
搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Wを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Wを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11e)から受け取って、下流側に連結されたパス室15に搬送する。
【0031】
中継装置は、パス室15の他に、上下流側のクラスタ装置1での基板Wの処理速度の差を吸収するためのバッファ室(不図示)、及び基板Wの方向を変えるための旋回室(不図示)をさらに含むことができる。例えば、バッファ室は、複数の基板Wを一時的に収納する基板積載部を含み、旋回室は、基板Wを180度回転させるための基板回転機構(例えば、回転ステージまたは搬送ロボット)を含む。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Wの向きが同じくなり、基板処理が容易になる。
【0032】
本発明の一実施形態によるパス室15は、複数の基板Wを一時的に収納するための基板積載部(不図示)や基板回転機構を含んでもよい。つまり、パス室15が、バッファ室や旋回室の機能を兼ねても良い。
【0033】
クラスタ装置1を構成する成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13などは、有機発光素子の製造過程で、高真空状態に維持される。中継装置のパス室15は、通常、低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもいい。
【0034】
有機EL素子を構成する複数の層の成膜が完了した基板Wは、有機EL素子を封止するための封止装置(不図示)や基板を所定のパネルサイズに切断するための切断装置(不図示)などに搬送される。
【0035】
本実施例では、
図1を参照し電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバを有してもよく、これらの装置やチャンバ間の配置が変わってもいい。
【0036】
例えば、本発明の一実施形態による電子デバイス製造装置は、
図1に示したクラスタタイプではなく、インラインタイプであってもいい。つまり、基板Wとマスクをキャリアに搭載して、一列に並んだ複数の成膜装置内を搬送させながら成膜を行う構成を有してもよい。また、クラスタタイプとインラインタイプを組み合わせたタイプの構造を有しても良い。例えば、有機層の成膜まではクラスタタイプの製造装置で行い、電極層(カソード層)の成膜工程から封止工程及び切断工程などは、インラインタイプの製造装置で行ってよい。
【0037】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0038】
<成膜装置>
図2は、本発明の一実施形態による成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とし、水平面をXY平面とするXYZ直交座標系を用いる。また、X軸まわりの回転角をθ
X、Y軸まわりの回転角をθ
Y、Z軸まわりの回転角をθ
Zで表す。
【0039】
図2は、成膜材料を加熱することによって蒸発または昇華させ、マスクMを介して基板Wに成膜する成膜装置11の一例を示している。
【0040】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21内に設けられ、基板Wの位置を少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向に調整するための微動ステージ機構22と、真空容器21内に設けられ、マスクMを支持するマスク台23と、真空容器21内に設けられ、基板Wを吸着して保持する基板吸着手段24と、真空容器21内に設けられ、基板W及びマスクMを仮受けする受け爪28と、受け爪28からマスク台23へマスクを受け渡す際にマスクを受け取るマスク受けピン281と、マスク台23と受け爪28を装備し、基板W及びマスクMの位置をX方向、Y方向、θZ方向に調整するための粗動ステージ232と、真空容器21内に設けられ、成膜材料を収納し、成膜時にこれを粒子化して放出する成膜源25とを含む。
【0041】
本発明の一実施形態による成膜装置11は、磁気力によってマスクMを基板W側に密着させるための磁力印加手段26をさらに含むことができる。
【0042】
本発明の一実施形態による成膜装置11の真空容器21は、微動ステージ機構22が配置される第1真空容器部211と、成膜源25が配置される第2真空容器部212とを含み、例えば、第2真空容器部212に接続された真空ポンプPによって真空容器21全体の内部空間が高真空状態に維持される。
【0043】
また、少なくとも第1真空容器部211と第2真空容器部212との間には、伸縮可能部材213が設置される。伸縮可能部材213は、第2真空容器部212に連結される真空ポンプからの振動や、成膜装置11が設けられた床又はフロアからの振動が、第2真空容器部212を通して第1真空容器部211に伝わることを低減する。伸縮可能部材213は、例えば、ベローズであり得るが、本発明はこれに限定されず、第1真空容器部211と第2真空容器部212との間で振動の伝達を低減することができる限り、他の部材を使用してもよい。
【0044】
真空容器21は、微動ステージ機構22が固定連結される基準フレーム215を含む。本発明の一実施例においては、
図2に示したように、基準フレーム215と第1真空容器部211との間にも伸縮可能部材213をさらに設置してもよい。これにより、基準フレーム215を介して微動ステージ機構22に外部振動が伝わることをさらに低減することができる。
【0045】
基準フレーム215と成膜装置11の設置架台217との間には、床又はフロアから成膜装置11の設置架台217を通して基準フレーム215に振動が伝わることを低減するための除振ユニット216が設置される。
【0046】
微動ステージ機構22は、磁気浮上リニアモータによって基板Wまたは基板吸着手段24の位置を調整するためのステージ機構であって、少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向における基板Wまたは基板吸着手段24の位置を調整する。
【0047】
微動ステージ機構22は、固定台として機能するステージ基準プレート部221(第1プレート部)と、可動台として機能する微動ステージプレート部222(第2プレート部)と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対し磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。
【0048】
マスク台23は、アライメント時及び成膜時にマスクMを設置する台である。
【0049】
マスク台23は水平方向(XYθ方向)に移動可能な粗動ステージ232上に設置されている。これにより、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークをアライメントカメラの視野内に入るよう移動することができる。また、マスク台23及び粗動ステージ232は、粗動Zステージ機構233の上に設置されている。これにより基板WとマスクMの間の鉛直方向における間隔を容易に調整することができる。粗動ステージ232と粗動Zステージ機構233は、サーボモータ及びボールねじ(不図示)によって機械的に駆動される。
【0050】
マスク台23は、搬送ロボット14によって真空容器21内に搬入された基板W及びマスクMを一時的に受け取るための受け爪28をさらに含む。
【0051】
受け爪28はマスク台23上に設置されており、搬送ロボット14から基板WまたはマスクMを一時的に受け取ることができる。受け爪28は、前記粗動ステージ232により、基板WまたはマスクMをファインアライメントカメラの視野中心に移動するラフアライメント動作の際、基板WまたはマスクMを支持することができる。受け爪28は、駆動軸を持ち、基板WまたはマスクMの受取位置と基板WまたはマスクMと干渉しない退避位置の2位置を取ることができる。受け爪28は前記駆動軸と前記粗動Zステージ機構233により、一時的に受け取った基板Wを、成膜プロセスの際に基板Wが吸着される基板吸着手段24に設置することができ、同じく一時的に受け取ったマスクMを、成膜プロセスの際にマスクMが載置されるマスク台23に設置することができる。
【0052】
マスク受けピン281は、マスク台23のマスク支持面に対して相対的に昇降できるように構成される。例えば、
図2に示したように、粗動Zステージ機構233によって、マスク受けピン281がマスク台23のマスク支持面に対して相対的に昇降可能に構成することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、マスク受けピン281とマスク台23のマスク支持面とが相対的に昇降可能な限り、他の構成を有してもいい。例えば、マスク受けピン281が独立した昇降機構を持ち、昇降可能に構成しても良い。
【0053】
ラフアライメント動作の完了後、粗動Zステージ機構233の下降動作により、
図2におけるマスク受けピン281はマスク台23のマスク支持面に対し、相対的に上昇し、マスクMはマスク受けピン281に受け渡される。受け爪28は退避位置に移動し、粗動Zステージ機構233の上昇動作により、マスクMはマスク受けピン281からマスク台23に受け渡される。逆に使用済みのマスクMを搬出する場合には、マスク台23に載置されたマスクMを、粗動Zステージ機構233が下降することで、マスク台23のマスク設置面より相対的に上昇したマスク受けピン281が受け取る。その状態で、受け爪28をマスク受取位置へ移動させ、粗動Zステージ機構233が上昇することで、受け爪28でマスクMを持ち上げ、搬送ロボット14のハンドがマスクMを受け取ることができるようにする。
【0054】
マスクMは、基板W上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有し、マスク台23によって支持される。例えば、VR-HMD用の有機EL表示パネルを製造するのに使われるマスクMは、有機EL素子の発光層のRGB画素パターンに対応する微細な開口パターンが形成された金属製マスクであるファインメタルマスク(Fine Metal Mask)と、有機EL素子の共通層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を形成するのに使われるオープンマスク(Open Mask)とを含む。
【0055】
マスクMの開口パターンは、成膜材料の粒子を通過させない遮断パターンによって定義される。
【0056】
基板吸着手段24は、搬送室13に設置された搬送ロボット14が搬送してきた、被成膜体としての基板Wを吸着して保持する手段である。基板吸着手段24は、微動ステージ機構22の可動台である微動ステージプレート部222に設置される。
【0057】
基板吸着手段24は、例えば、誘電体/絶縁体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する静電チャックである。
【0058】
基板吸着手段24としての静電チャックは、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が高い誘電体が介在して、電極と被吸着体との間のクーロン力によって吸着が行われるクーロン力タイプの静電チャックであってもよいし、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が低い誘電体が介在して、誘電体の吸着面と被吸着体との間に発生するジョンソン・ラーベック力によって吸着が行われるジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよいし、不均一電界によって被吸着体を吸着するグラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。
【0059】
被吸着体が導体または半導体(シリコンウエハ)である場合には、クーロン力タイプの静電チャックまたはジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックを用いることが好ましく、被吸着体がガラスのような絶縁体である場合には、グラジエント力タイプの静電チャックを用いることが好ましい。
【0060】
静電チャックは、一つのプレートで形成されてもよく、複数のサブプレートを有するように形成されてもいい。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電気回路を有し、一つのプレート内で位置によって静電引力が異なるように制御してもいい。
【0061】
また、
図2には図示しなかったが、基板吸着手段24の吸着面とは反対側に基板Wの温度上昇を抑制するための冷却手段(例えば、冷却板)を設けて、基板W上に堆積された有機材料の変質や劣化を抑制する構成にしてもよい。
【0062】
成膜源25は、基板Wに成膜される成膜材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、成膜源25からの蒸発レートが一定になるまで成膜材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。成膜源25は、点(point)成膜源や線状(linear)成膜源など、用途に従って多様な構成を有することができる。
【0063】
成膜源25は、互いに異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを含んでもよい。このような構成においては、真空容器21を大気開放せずに成膜材料を変更できるように、異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを成膜位置に移動可能に設置してもよい。
【0064】
磁力印加手段26は、成膜工程時に磁力によってマスクMを基板W側に引き寄せて密着させるための手段であって、鉛直方向に昇降可能に設置される。例えば、磁力印加手段26は、電磁石および/または永久磁石で構成される。
【0065】
図2に図示しなかったが、成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含んでもいい。
【0066】
真空容器21の上部外側(大気側)には磁力印加手段26を昇降させるための磁力印加手段昇降機構261が設置される。
【0067】
本発明の一実施形態による成膜装置11は、真空容器21の上部外側(大気側)に設置され、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラユニット27をさらに含む。
【0068】
本実施例において、アライメント用カメラユニット27は、基板WとマスクMの相対的位置を大まかに調整するのに用いられるラフアライメント用カメラと、基板WとマスクMの相対的位置を高精度に調整するのに用いられるファインアライメント用カメラとを含むことができる。ラフアライメント用カメラは、相対的に視野角が広く、低解像度であり、ファインアライメント用カメラは、相対的に視野角は狭いが、高解像度を有するカメラである。
【0069】
ラフアライメント用カメラとファインアライメント用カメラは、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークに対応する位置に設置される。例えば、ファインアライメント用カメラは、4つのカメラが矩形の4つのコーナー部をなすように設置され、ラフアライメント用カメラは、該矩形の対向する二つの辺の中央に設置される。ただし、本発明はこれに限定されず、基板W及びマスクMのアライメントマークの位置に応じて他の配置を有しても良い。
【0070】
図2に示したように、本発明の一実施形態による成膜装置11のアライメント用カメラユニット27は、真空容器21の上部大気側から真空容器21に設けられた真空対応筒214を通してアライメントマークを撮影する。このようにアライメント用カメラは真空対応筒を介して真空容器21の内側に入り込むように設置することによって、微動ステージ機構22の介在により、基板WとマスクMが基準フレーム215から相対的に遠く離れて支持されても、基板WとマスクMに形成されたアライメントマークに焦点を合わせることができる。真空対応筒の下端の位置は、アライメント用カメラの焦点深度と、基板W/マスクMが基準フレーム215から離れた距離に応じて、適切に決めることができる。
【0071】
図2には図示しなかったが、成膜工程中に密閉される真空容器21の内部は暗いので、真空容器21の内側に入り込んでいるアライメント用カメラによりアライメントマークを撮影するために、下方からアライメントマークを照らす照明光源を設置してもよい。
【0072】
成膜装置11は、制御部(不図示)を具備する。制御部は、基板W/マスクMの搬送及びアライメントの制御、成膜の制御などの機能を有する。また、制御部は、静電チャックへの電圧印加を制御する機能を有してもいい。
【0073】
制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成することができる。この場合、制御部の機能は、メモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(Programmable Logic Controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0074】
<ラフアライメント機構>
以下、
図2を参照して本発明の一実施形態によるラフアライメント機構について説明する。
【0075】
ラフアライメント動作はアライメント用カメラユニット27の内、ファインアライメント用カメラの視野内に、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを移動する動作を指し、ラフアライメント動作を行う機構をラフアライメント機構と呼ぶ。
【0076】
本発明におけるラフアライメント機構は、ラフアライメント動作時に基板W及びマスクMを支持することができ、駆動機構を持つことで基板WまたはマスクMの受取位置と基板WまたはマスクMとの干渉を避ける退避位置の2位置を取ることのできる受け爪28(把持手段)と、受け爪28が取り付けられており、成膜プロセス時にマスクMを支持するマスク台23と、受け爪28とマスク台23を平面方向(XYθ方向)に移動させ、ファインアライメント用カメラの視野内に基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを移動(調整)することのできる粗動ステージ機構232(水平粗動ステージ機構)と、粗動ステージ機構232を支持し、鉛直方向に移動させる粗動Zステージ機構233(垂直粗動ステージ機構)と、受け爪28からマスク台23へのマスクMの受け渡しの際、一時的にマスクMを支持するマスク受けピン281を含む。
【0077】
<微動ステージ機構>
以下、
図3a~3d、
図4a、
図4b、
図5を参照して、本発明の一実施形態による微動ステージ機構22について説明する。
【0078】
図3a~3dは、本発明の一実施形態による微動ステージ機構22の模式的平面図および模式的断面図である。
【0079】
微動ステージ機構22は、前述したように、固定台として機能するステージ基準プレート部221と、可動台として機能する微動ステージプレート部222と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。
【0080】
ステージ基準プレート部221は、微動ステージプレート部222の移動の基準となる部材であって、その位置が固定されるように設置される。例えば、
図2に示したように、ステージ基準プレート部221は、XY平面に平行に、真空容器21の基準フレーム215に固定されるように設置される。
【0081】
ステージ基準プレート部221は、微動ステージプレート部222の移動の基準となる部材であるため、伸縮可能部材213及び除振ユニット216などにより、真空ポンプまたは床からの振動のような外乱から影響を受けないように設置されるのが好ましい。
【0082】
微動ステージプレート部222は、ステージ基準プレート部221に対して移動可能に設置され、微動ステージプレート部222の一主面(例えば、下面)には、静電チャックのような基板吸着手段24が設置される。したがって、微動ステージプレート部222の移動により、基板吸着手段24及びこれに吸着された基板Wの位置を調整することができる。
【0083】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223は、可動台である微動ステージプレート部222を固定台であるステージ基準プレート部221に対して移動させる駆動力を発生させるための磁気浮上リニアモータ31と、微動ステージプレート部222の位置を測定するための位置測定手段と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対して浮上させる浮上力を提供することで微動ステージプレート部222にかかる重力を補償する自重補償手段33と、微動ステージプレート部222の原点位置を決める原点位置決め手段34とを含む。
【0084】
磁気浮上リニアモータ31は、微動ステージプレート部222を移動させるための駆動力を発生させる駆動源であって、例えば、
図3aに示したように、微動ステージプレート部222をX方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのX方向磁気浮上リニアモータ311と、微動ステージプレート部222をY方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのY方向磁気浮上リニアモータ312と、微動ステージプレート部222をZ方向に移動させるための駆動力を発生させる3つのZ方向磁気浮上リニアモータ313とを含む。
【0085】
これら複数の磁気浮上リニアモータ31を用いて、微動ステージプレート部222を6つの自由度に(X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向に)移動させることができる。
【0086】
例えば、X方向、Y方向、Z方向への並進移動は、X方向磁気浮上リニアモータ311、Y方向磁気浮上リニアモータ312、およびZ方向磁気浮上リニアモータ313のそれぞれを同じ方向に駆動することによって具現できる。
【0087】
θZ方向への回転移動は、2つのX方向磁気浮上リニアモータ311と2つのY方向磁気浮上リニアモータ312の駆動方向を調整することによって具現できる。例えば、X方向磁気浮上リニアモータ311aは+X方向に、X方向磁気浮上リニアモータ311bは-X方向に、Y方向磁気浮上リニアモータ312aは+Y方向に、Y方向磁気浮上リニアモータ312bbは-Y方向に駆動することにより、微動ステージプレート部222をZ軸を中心に反時計まわりに回転移動させることができる。
【0088】
同様に、θX方向、θY方向への移動は、3つのZ方向磁気浮上リニアモータ313のそれぞれの駆動方向を調整することによって具現できる。
【0089】
図3aに示した磁気浮上リニアモータ31の数や配置は、例示的なものであり、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222を所望の方向に移動させることができる限り、他の数や配置を有しても良い。
【0090】
図4aは、Z方向磁気浮上リニアモータ313の構造を示す模式図であり、
図4bは、X方向またはY方向磁気浮上リニアモータ311、312の構造を示す模式図である。
【0091】
磁気浮上リニアモータ31は、ステージ基準プレート部221に設置される固定子314と、微動ステージプレート部222に設置される可動子315とを含む。
【0092】
図4aおよび
図4bに示すように、磁気浮上リニアモータ31の固定子314は、磁界発生手段、例えば、電流が流れるコイル3141を含み、可動子315は、磁性体、例えば、永久磁石3151を含む。
【0093】
磁気浮上リニアモータ31は、固定子314のコイル3141に電流を流すことで発生した磁界によって、可動子315の永久磁石3151に駆動力を加える。磁気浮上リニアモータ31は、固定子314に流れる電流の方向を調整することによって、可動子315である永久磁石3151に加えられる力の方向を調整することができる。
【0094】
例えば、
図4aの(b)に示したように、固定子314のコイル3141に流れる電流の方向を反時計回りにすると、
図4aの(a)において、コイル3141の左側(-X側)にN極が誘導され、右側(+X側)にはS極が誘導されるので、可動子315は、下方(-Z)方向に力を受ける。逆に、コイル3141に流れる電流の方向を時計回りにすると、可動子315を上方(+Z)方向に移動させることができる。
【0095】
同様に、
図4bに示したX方向磁気浮上リニアモータ311、又はY方向磁気浮上リニアモータ312も、固定子314のコイル3141に流れる電流の方向を制御することによって、可動子315をそれぞれX方向、Y方向に移動させることができる。
【0096】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の位置測定手段は、微動ステージプレート部222の位置を測定するための手段であって、レーザー干渉計32と、これと対向するように微動ステージプレート部222に設置された反射部324とを含む。反射部324は、例えば、平面鏡であり得る。
【0097】
レーザー干渉計32は、測定ビームを微動ステージプレート部222に設置された反射部324に照射し、その反射ビームを検出することで、反射部324の位置(微動ステージプレート部222の位置)を測定する。より具体的には、レーザー干渉計32は、測定ビームの反射光と参照ビームの反射光との干渉光に基づいて、微動ステージプレート部222の位置を測定することができる。
【0098】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の位置測定手段は、微動ステージプレート部222のX方向における位置を測定するためのX方向位置測定部と、Y方向における位置を測定するためのY方向位置測定部と、Z方向における位置を測定するためのZ方向位置測定部とを含む。
【0099】
図3aに示したように、本発明の一実施形態による位置測定手段のレーザー干渉計32は、微動ステージプレート部222のX軸方向の位置を検出するための二つのX方向レーザー干渉計321と、微動ステージプレート部222のY軸方向の位置を検出するための一つのY方向レーザー干渉計322と、微動ステージプレート部222のZ軸方向の位置を検出するための3つのZ方向レーザー干渉計323とを含む。
【0100】
微動ステージプレート部222には、これらのレーザー干渉計32からの測定ビームを反射させる反射部324が、レーザー干渉計32に対向するように設置される。例えば、反射部324は、X方向レーザー干渉計321に対向するように設置されたX方向反射部3241と、Y方向レーザー干渉計322に対向するように設置されたY方向反射部3242と、Z方向レーザー干渉計323に対向するように設置されたZ方向反射部3243とを含む。
【0101】
X方向位置測定部は、X方向レーザー干渉計321とX方向反射部3241とを含み、Y方向位置測定部は、Y方向レーザー干渉計322とY方向反射部3242とを含み、Z方向位置測定部は、Z方向レーザー干渉計323とZ方向反射部3243とを含む。
【0102】
図3aに示した実施例では、X方向反射部3241とZ方向反射部3243は、一つの部材の側面と上面に設置された平面鏡であるが、本発明はこれに限定されず、それぞれの反射部324が、これに対向するレーザー干渉計32からの測定ビームを反射してレーザー干渉計32に戻すことができる限り、他の構造及び配置を有しても良い。
【0103】
このような位置測定手段の構成により、6つの自由度(degree of freedom)において、微動ステージプレート部222の位置を精密に測定することができる。つまり、X方向レーザー干渉計321、Y方向レーザー干渉計322、及びZ方向レーザー干渉計323によって、微動ステージプレート部222のX方向位置、Y方向位置、及びZ方向位置を測定することができる。また、X方向レーザー干渉計321を複数設置することによって、Z軸を中心とした回転(θZ)方向の位置も測定することができる。また、Z方向レーザー干渉計323を複数設置することによって、X軸および/またはY軸を中心とした回転方向(θXまたはθY)の位置(つまり、微動ステージプレート部222の傾斜角度)も測定することができる。
【0104】
ただし、本発明は、
図3a及び
図3bに示したレーザー干渉計32と反射部324の数や配置に限定されず、微動ステージプレート部222の6つの自由度(X、Y、Z、θ
X、θ
Y、θ
Z)における位置を測定することができる限り、他の数や配置を有しても良い。例えば、X方向レーザー干渉計を一つだけ設置する代わりに、Y方向レーザー干渉計を2つ設置してもよい。
【0105】
本発明の一実施形態による成膜装置11の制御部は、レーザー干渉計32によって測定された微動ステージプレート部222(またはこれに設置された基板吸着手段24)の位置情報に基づいて、磁気浮上リニアモータ31を制御する。例えば、成膜装置11の制御部は、微動ステージプレート部222または基板吸着手段24を、レーザー干渉計32で測定された微動ステージプレート部222または基板吸着手段24の位置と、アライメント用カメラユニット27で測定された基板WとマスクM間の相対的位置ずれ量とによって決められる位置決め目標位置に移動させる。これにより、微動ステージプレート部222または基板吸着手段24の位置をナノメートル単位で高精度に制御することができる。
【0106】
本実施例では、微動ステージプレート部222の位置を測定するための手段であって、レーザー干渉計を用いる構成を説明したが、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222の位置が測定できる限り、他の位置測定手段を用いてもいい。
【0107】
自重補償手段33は、微動ステージプレート部222の重量を補償するための手段であって、例えば、本発明の一実施形態による自重補償手段33は、
図3d及び
図5に示したように、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332との間の反発力または吸引力を利用して、微動ステージプレート部222にかかる重力に相応する大きさの浮上力を提供する。
【0108】
第1の磁石部331と第2の磁石部332は、電磁石または永久磁石で構成することができる。
【0109】
例えば、
図3dに示したように、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332を、逆極性の磁極が対向するように配置することによって、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331が微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332を上方に吸引し、微動ステージプレート部222にかかる重力を相殺することができる。
【0110】
または、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332との間の反発力によって、微動ステージプレート部222の重力を相殺することもできる。
【0111】
例えば、
図5に示したように、第1の磁石部331と第2の磁石部332を同じ極性の磁極が対向するように配置するとともに、微動ステージプレート部222と第2の磁石部332との間にZ方向に延びるスペーサー333を介在させ、第2の磁石部332の下端が第1の磁石部331の下端よりも高くなるように設置してもよい。つまり、スペーサー333のZ方向の長さを、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332の下端がステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331の下端よりも高くなるように(つまり、微動ステージプレート部222から、より遠くなるように)する。
【0112】
このような構成によって、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332は、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331により上方に反発力を受け、微動ステージプレート部222にかかる重力を相殺することができる。
【0113】
自重補償手段33は、微動ステージプレート部222をより安定的に支持することができるように、
図3aに示したように、XY平面内で少なくとも3つの位置に設置することが好ましい。例えば、微動ステージプレート部222の重心の周りに対称になるように設置することが好ましい。
【0114】
このように、本発明の一実施形態による成膜装置11においては、自重補償手段33を採用することによって、磁気浮上リニアモータ31の負荷を低減させ、磁気浮上リニアモータ31から発生する熱を低減することができる。これにより基板Wに成膜された有機材料が熱変性することを抑制することができる。
【0115】
つまり、自重補償手段33を使わず、Z方向磁気浮上リニアモータ313のみで微動ステージプレート部222の重量を支持しようとすると、Z方向磁気浮上リニアモータ313に過度な負荷がかかり、相当な熱が発生し、これが基板W上に成膜された有機材料の変性をもたらす恐れがある。本実施例では、微動ステージプレート部222にかかる重力は自重補償手段33によって相殺されるので、Z方向磁気浮上リニアモータ313は、自重補償手段33によって浮上された微動ステージプレート部222にZ方向の微動のための駆動力のみを提供すれば良く、よって、負荷が低減される。
【0116】
本発明の一実施例においては、自重補償手段33を磁石で具現したが、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222の重力を相殺して浮上させることができる限り、他の構成を有しても良い。
【0117】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の原点位置決め手段34は、微動ステージプレート部222の原点位置を決める手段であって、三角錐状の凹部341と半球状の凸部342とを含むキネマティックカップリング(kinematic coupling)で構成することができる。
【0118】
例えば、
図3cに示したように、ステージ基準プレート部221側に三角錐状の凹部341を設置し、微動ステージプレート部222側に半球状の凸部342を設置する。半球状の凸部342が三角錐状の凹部341に挿入されると、半球状の凸部342が3つの支点で三角錐状の凹部341の内面に接触し、微動ステージプレート部222の位置が決められる。
【0119】
このようなキネマティックカップリングタイプの原点位置決め手段34を、
図3aに示したように、微動ステージプレート部222の中心の周りに対称になるように3つを等間隔(例えば、120°間隔)で設置することで、微動ステージプレート部222の中心の位置を一定に決めることができる。つまり、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に接近させて3つの原点位置決め手段の凸部342が凹部341内に着座したときの、微動ステージプレート部222の位置を、レーザー干渉計32により測定し、これを原点位置とする。
【0120】
本発明の一実施形態による成膜装置11によると、3つのキネマティックカップリングを原点位置決め手段34として採用することで、微動ステージプレート部222の原点位置を一定に決めることができ、微動ステージプレート222の位置制御をより精密に行うことができる。
【0121】
<ラフアライメント方法>
以下、本発明のラフアライメント機構を用いて、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークをファインアライメント用カメラの視野内に入るよう調整を行うラフアライメント方法を基板WとマスクMそれぞれの場合について説明する。
【0122】
まず、マスクMのラフアライメント方法を説明する。
【0123】
マスクMが搬送ロボット14によって、真空容器21内に搬入され、受け爪28に受け渡される。受け爪28が取り付けられた粗動Zステージ機構233は、受け爪28によって支持されたマスクMを、予め設定されたラフアライメント用カメラの計測距離になるまで接近させる。
【0124】
マスクMがラフアライメント用カメラの計測距離になると、ラフアライメント用カメラにより、マスクMのアライメントマークを撮像して、ラフアライメントカメラ視野内の、XYθ方向におけるマスクMのアライメントマーク位置を測定し、これに基づき、マスクMのアライメントマークがラフアライメント用カメラ視野中央に来るようにマスクMを粗動ステージ機構232によって移動させる。
【0125】
次に、粗動Zステージ機構233により、受け爪28に支持されたマスクMをマスク受けピン281に受け渡す。マスクMが受け爪28から離れてマスク受けピン281に受け渡された後に、受け爪28は駆動機構により退避位置へ移動する。また、マスクMが受け爪28から離れてマスク受けピン281に受け渡されたら、粗動ステージ機構232はそのXYθ方向の位置を各々のストローク中心(原点)に移動させる。この動作を行うことで、マスクMのXYθ方向の位置は、マスクMのロボットハンドによる搬送位置に関わらず、常に粗動ステージ機構232のストローク中心に位置合わせられることになる。
【0126】
次いで、粗動Zステージ機構233を上昇動作させて、マスク受けピン281からマスクMを受け取り、マスク台23のマスク設置面に載置することで、マスクMのラフアライメント完了とする。
【0127】
次に、基板Wのラフアライメント方法を説明する。
【0128】
図6は、前述のラフアライメント動作により、マスクMのアライメントマークが粗動ステージ機構232の中心に合わせられた状態で、基板Wが成膜装置11内に搬入されてラフアライメントが完了するまでの一連の動作を説明する図である。
【0129】
まず、退避位置へ移動されていた受け爪28を受取位置に戻す。この状態で基板Wが搬送ロボット14によって真空容器21内に搬入され、受け爪28に受け渡される(
図6a)。マスクMのラフアライメント動作と同様に、受け爪28が取り付けられた粗動Zステージ機構233は、受け爪28によって支持された基板Wを予め設定されたラフアライメント用カメラの計測距離になるまで接近させる。基板Wがラフアライメント用カメラの計測距離になると、ラフアライメント用カメラにより、基板Wのアライメントマークを撮像して、ラフアライメントカメラ視野内の、XYθ方向における基板Wのアライメントマーク位置を測定する(
図6b)。この測定結果に基づき、基板Wのアライメントマークがラフアライメント用カメラ視野中央に来るように基板Wを粗動ステージ機構232によって移動させる(
図6c)。
【0130】
次に粗動Zステージ機構233により受け爪28に支持された基板Wを微動ステージ機構22に設けられている基板吸着手段に十分に近接または接触させた状態で基板吸着手段に基板吸着電圧を印加し、静電引力により基板Wを基板吸着手段に吸着させる(
図6d)。基板Wを基板吸着手段に吸着させる際に、基板吸着手段の吸着面全体に基板Wの全面を同時に吸着させてもよく、基板吸着手段の複数の領域のうち一領域から他の領域に向かって順次に基板Wを吸着させてもよい。基板Wの基板吸着手段への吸着を以て基板Wのラフアライメントの完了とする。この際、受け爪28には基板吸着手段への基板Wの、接触または衝突による衝撃緩和を目的としたコンプライアンス機構を追加しても良い。基板Wが微動ステージ機構22上の基板吸着手段へ吸着された後、受け爪28は駆動機構により退避位置へ移動する。
【0131】
以上の基板Wのラフアライメント過程で、マスクMのアライメントマークが前に行われたアライメント完了位置から移動する場合がある。基板Wのラフアライメントが完了した状態、つまり、基板Wが微動ステージ機構22上の基板吸着手段へ吸着された後に、前述したマスクMのラフアライメント動作を再度行うことにより、アライメントカメラの視野中心から移動したマスクMのアライメントマークを再度カメラ視野中心に移動させる。つまり、マスク台23に載置されたマスクMを前述したラフアライメント用カメラの計測距離まで上昇させた後、ラフアライメント用カメラによりマスクMのアライメントマーク位置を測定し、マスクMのアライメントマークがカメラ視野中央に来るようにマスクMを粗動ステージ機構232によって移動させる(
図6e)。これにより、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークをファインアライメント用カメラの視野内に入るように調整するラフアライメントが完了する。
【0132】
<ファインアライメント方法>
成膜装置11の制御部は、粗動Zステージ機構233を駆動して、基板吸着手段24とマスク台23を相対的に接近させる。この際、制御部は、基板吸着手段24に吸着された基板Wとマスク台23によって支持されたマスクMとの間の距離が、予め設定されたファインアライメント計測距離になるまで、基板吸着手段24とマスク台23を相対的に接近(例えば、マスク台23を上昇または基板Wを下降)させる。
【0133】
基板WとマスクMとの間の距離がファインアライメント計測距離になると、ファインアライメント用カメラにより、基板W及びマスクMのアライメントマークを撮像して、XYθZ方向における基板WとマスクMの相対位置を測定し、これに基づき、これらの相対的位置ずれ量を算出する
基板WとマスクMとの間の相対的位置ずれ量が所定の閾値より大きければ、マスクMを再度下降(または、基板Wを再度上昇)させ、基板WとマスクMを離間させた後、レーザー干渉計32によって測定された微動ステージプレート部222の位置と、基板WとマスクMの相対的位置ずれ量に基づいて、微動ステージプレート部222の移動目標位置を算出する。
【0134】
算出された移動目標位置に基づいて、微動ステージプレート部222の位置をレーザー干渉計32で測定しながら、磁気浮上リニアモータ31によってXYθZ方向に微動ステージプレート部222を移動目標位置まで駆動することによって、基板WとマスクMの相対位置を調整する。
【0135】
このような過程を、基板WとマスクMの相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなるまで繰り返す。
【0136】
基板WとマスクMの相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなると、基板吸着手段24に吸着された基板Wの成膜面がマスクMの上面と接触する蒸着位置になるように、基板Wを下降させる。
【0137】
基板WとマスクMが接触する蒸着位置に達すると、磁力印加手段26を下降させ、基板W越しにマスクMを引き寄せることで、基板WとマスクMを密着させる。
【0138】
この過程で、基板WとマスクMのXYθZ方向における位置ずれが生じたかを確認するために、ファインアライメント用カメラを用いて、基板WとマスクMの相対的位置の計測を行い、計測された相対的位置のずれ量が所定の閾値の以上である場合、基板WとマスクMを所定の距離まで再び離間(例えば、基板Wを上昇)させた後、基板WとマスクMとの間の相対位置を調整し、同じ過程を繰り返す。
【0139】
基板WとマスクMが蒸着位置に位置する状態で、基板WマスクMとの間の相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなると、アライメント工程を完了し、成膜工程を開始する。
【0140】
<成膜プロセス>
本実施形態のアライメント方法によって、基板WとマスクMとの間の相対位置のずれ量が所定の閾値より小さくなると、成膜源25のシャッタを開け、成膜材料をマスクMを介して基板Wに成膜する。
【0141】
所望の厚さに蒸着した後、磁力印加手段26を上昇させてマスクMを分離し、マスク台23を下降させる。
【0142】
次いで、搬送ロボット14のハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、基板吸着手段24の電極部にゼロ(0)または逆極性の基板分離電圧が印加し、基板Wを基板吸着手段24から分離する。分離された基板Wを搬送ロボット14によって真空容器21から搬出する。
【0143】
なお、上述の説明では、成膜装置11は、基板Wの成膜面が鉛直方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆる上向蒸着方式(デポアップ)の構成としたが、本発明はこれに限定はされず、基板Wが真空容器21の側面側に垂直に立てられた状態で配置され、基板Wの成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0144】
このように、本発明によれば、成膜装置内に搬入される基板とマスクを一時的に仮受けする把持手段としての受け爪を、基板とマスクを受け取る受け取り位置と、基板とマスクと干渉しない退避位置との間で移動可能に構成し、これをマスク台と共に粗動ステージ機構に設置することによって、基板移動用ステージ機構とマスク移動用ステージ機構とをそれぞれ別途設ける必要なく、一つの共通のステージ機構で基板とマスクのラフアライメント動作を行うことが可能となり、装置のサイズ及びコストを低減することができる。
【0145】
<その他の実施形態>
なお、上記実施例は本発明の一例を示したものであり、本発明は上記実施例の構成に限られず、その技術思想の範囲内において適宜変形しても構わない。
【0146】
例えば、
図7に示したように、本発明のラフアライメント機構は、以上で説明したラフアライメント動作時に、またはアライメント完了後磁力印加手段26によってマスクMを基板W側に吸引する時などにおいてマスクMがマスク台23上で揺れ位置がずれることを防止するために、マスク固定機構29をマスク台23上にさらに設置することができる。
【0147】
示したように、マスク固定機構29は、マスクMがマスク台23のマスク設置面に載置された状態で、前述したラフアライメントのために粗動ステージ機構232等によりマスク台23が移動する際に、マスク台23上でのマスクMの動きを防止する。これにより、マスクMのラフアライメント動作の精度がより向上することができる。
【0148】
また、本発明のラフアライメント機構は、以上説明したラフアライメントの際に、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合にも対応可能である。
図8は、この場合の本発明のラフアライメント機構を用いたアライメント処理手順を概念的に説明した図である。
図8aは、前述の
図6bに対応する図であり、マスクMのアライメントマークが粗動ステージ機構232の中心に合わせられた状態で、成膜装置11内に搬入された基板Wをラフアライメントのための計測位置で撮影した様子を示している。図示されたように、基板Wのアライメントマークがカメラ視野の外にあり、見つからない。このように、カメラ視野内でアライメントマークが見つからない場合には、粗動ステージ機構232を水平面内で前後左右に駆動しながら基板Wのアライメントマークの探索を行う(
図8b)。基板Wのアライメントマークを見つけたら、その座標を算出した後、前述した基板Wを基板吸着手段に吸着させその状態で粗動ステージ機構232を駆動しマスクMを移動させる動作を繰り返すことによって、基板WのアライメントマークとマスクMのアライメントマークとの距離を縮め両マークが共にカメラの視野内に入るようにする(
図8c)。両マークが共にカメラ視野内に入ってくると、まず基板Wのアライメントマークがカメラ視野中心にくるように粗動ステージ機構232を駆動し位置調整された基板Wを基板吸着手段に吸着させて(
図8d)、次いで、粗動ステージ機構232を逆方向に同じ移動量駆動させてマスクMのアライメントがカメラ視野内のもとの位置に戻るようにした後(
図8e)、最後にマスクMのアライメントマークがカメラ視野中心にくるように粗動ステージ機構232を駆動させる(
図8f)。これにより、アライメントマークがカメラの視野から大きく外れている場合にも、本発明のラフアライメント機構を用いたアライメント動作が実現可能になる。
【符号の説明】
【0149】
11:成膜装置
22:微動ステージ機構
23:マスク台
24:基板吸着手段
28:受け爪(把持手段)
232:粗動ステージ機構
233:粗動Zステージ機構
29:マスク固定機構