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特許7191238センサシステム、画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】センサシステム、画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/351 20110101AFI20221209BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20221209BHJP
   H04N 5/378 20110101ALI20221209BHJP
【FI】
H04N5/351
H04N5/374
H04N5/378
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021541868
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033708
(87)【国際公開番号】W WO2021038751
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 誠
(72)【発明者】
【氏名】堀江 淳
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135411(WO,A1)
【文献】特開2019-134271(JP,A)
【文献】特開2018-186478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30-5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサ、および前記第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を前記第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサを含むセンサアレイと、
前記第1のセンサが輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成したときに、前記第2のセンサが前記輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成したか否かに応じて前記輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する階調判定部と
を備えるセンサシステム。
【請求項2】
前記センサアレイは、前記第1のセンサを構成する透過型の第1の受光層に前記第2のセンサを構成する第2の受光層が積層された積層型のセンサを含み、
前記第2の画素アドレスは、前記第1の画素アドレスに重複する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記第2の受光層は、透過型であり、
前記積層型のセンサでは、前記第1の画素アドレスにおける光量の変動を前記第2の感度よりも低い第3の感度で検出する第3のセンサを構成する第3の受光層がさらに積層され、
前記階調判定部は、前記第2のセンサが前記輝度変動イベントに対して前記第2のイベント信号を生成したときに、前記第3のセンサが前記輝度変動イベントに対して第3のイベント信号を生成したか否かによって前記被写体の階調を判定する、請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第1のイベント信号に、前記第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を前記第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが前記輝度変動イベントに対して生成した第2のイベント信号を関連付けるイベント信号関連付け部と、
前記第1のイベント信号に関連付けられる前記第2のイベント信号の有無に応じて前記輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する階調判定部と
を備える画像処理装置。
【請求項5】
前記イベント信号関連付け部は、前記第1のイベント信号に、前記第1の画素アドレスに隣接または重複する第3の画素アドレスにおける光量の変動を前記第2の感度よりも低い第3の感度で検出する第3のセンサが前記輝度変動イベントに対して生成した第3のイベント信号を関連付け、
前記階調判定部は、前記第1のイベント信号に関連付けられる前記第3のイベント信号の有無に応じて前記被写体の階調を判定する、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが、輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成するステップと、
前記第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を前記第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが前記輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成するか、または前記第2のイベント信号を生成しないステップと、
前記第1のイベント信号に前記第2のイベント信号を関連付けるステップと、
前記第1のイベント信号に関連付けられる前記第2のイベント信号の有無に応じて前記輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定するステップと
を含む画像処理方法。
【請求項7】
第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第1のイベント信号に、前記第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を前記第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが前記輝度変動イベントに対して生成した第2のイベント信号を関連付ける機能と、
前記第1のイベント信号に関連付けられる前記第2のイベント信号の有無に応じて前記輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSなどのイメージセンサは、垂直同期信号などの同期信号に同期して画像データ(フレーム)を撮像する同期型の固体撮像素子である。一般的な同期型の固体撮像素子では、同期信号の周期(例えば、1/60秒)ごとにしか画像データが取得されないため、例えば移動体における画像データを利用した高速な処理には対応が困難な場合がある。そこで、例えば非特許文献1などにおいて、アドレスイベントを検出するアドレスイベント表現(AER:Address Event Representation)回路を設けた非同期型の固体撮像素子が提案されている。
【0003】
上記の非同期型の固体撮像素子において、アドレスイベントは、ある画素アドレスで画素の光量が変動し、変動量が閾値を超えた場合に発生する。具体的には、アドレスイベントは、画素の光量が変動して所定の上限を超えた場合に発生するオンイベントと、光量が所定の下限を下回った場合に発生するオフイベントとを含む。このような非同期型の固体撮像素子において、画素ごとのオンイベントおよびオフイベントの有無を2ビットのデータで表現する画像データの形式はAERフォーマットと呼ばれる。非同期型の固体撮像素子を用いた技術は、例えば特許文献1にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-186478号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Patrick Lichtsteiner, et al., A 128×128 120dB 15μs Latency Asynchronous Temporal Contrast Vision Sensor, IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL. 43, NO. 2, FEBRUARY 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような非同期型の固体撮像素子(以下、イベント駆動型センサともいう)では、被写体の動きを高速に検出することは可能であるものの、画像データとしてオンイベントまたはオフイベントの2通りの情報しか得られないため、被写体の輝度の階調を検出することは困難である。例えば、階調を検出することが可能な同期型の固体撮像素子をイベント駆動型センサとともに配置し、イベント駆動型センサで被写体の動きが検出された場合に同期型の固体撮像素子を露光して階調を検出することも考えられるが、この場合は階調を含めた画像データの取得周期が同期型の固体撮像素子の同期信号の周期に制約されるため、イベント駆動型センサの高速性が損なわれてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、イベント駆動型センサを用いて高速に被写体の階調を検出することを可能にする、センサシステム、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサ、および第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサを含むセンサアレイと、第1のセンサが輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成したときに、第2のセンサが輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成したか否かに応じて輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する階調判定部とを備えるセンサシステムが提供される。
【0009】
本発明の別の観点によれば、第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第1のイベント信号に、第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第2のイベント信号を関連付けるイベント信号関連付け部と、第1のイベント信号に関連付けられる第2のイベント信号の有無に応じて輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する階調判定部とを備える画像処理装置が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の観点によれば、第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが、輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成するステップと、第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成するか、または第2のイベント信号を生成しないステップと、第1のイベント信号に第2のイベント信号を関連付けるステップと、第1のイベント信号に関連付けられる第2のイベント信号の有無に応じて輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定するステップとを含む画像処理方法が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出する第1のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第1のイベント信号に、第1の画素アドレスに隣接または重複する第2の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する第2のセンサが輝度変動イベントに対して生成した第2のイベント信号を関連付ける機能と、第1のイベント信号に関連付けられる第2のイベント信号の有無に応じて輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を判定する機能とをコンピュータに実現させるためのプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。
図2A】本発明の実施形態における階調算出の原理について説明するための図である。
図2B】本発明の実施形態における階調算出の原理について説明するための図である。
図3】本発明の実施形態における階調算出の原理について説明するための図である。
図4A】本発明の第1の実施形態における同時化処理について説明するための図である。
図4B】本発明の第1の実施形態における同時化処理について説明するための図である。
図4C】本発明の第1の実施形態における同時化処理について説明するための図である。
図4D】本発明の第1の実施形態における同時化処理について説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施形態における処理の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施形態におけるセンサ配置の他の例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態におけるセンサ配置の他の例を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。
図10】本発明の第3の実施形態における処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。図示されているように、センサシステム10Aは、センサモジュール100と、画像処理装置200Aとを含む。センサモジュール100は、画素ごとに配置された第1のセンサ111および第2のセンサ112を含むセンサアレイと、信号処理回路120(イベント信号処理部)とを含む。画像処理装置200Aは、例えば通信インターフェース、プロセッサ、およびメモリを有するコンピュータによって実装され、プロセッサがメモリに格納された、または通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現される時刻差分取得部210Aおよび階調算出部220Aの機能部分を含む。画像処理装置200Aは、さらに、画像生成部230および遅延時間算出部240の機能部分を含んでもよい。以下、各部についてさらに説明する。
【0015】
第1のセンサ111および第2のセンサ112は、いずれもイベント駆動型センサ(EDS:Event Driven Sensor)であり、それぞれの画素アドレスで光量の変動量が閾値を超えたときに、アドレスイベントの発生を示すイベント信号を出力する。本実施形態において、センサアレイは所定のパターンで平面的に配列された第1のセンサ111および第2のセンサ112を含む。第1のセンサ111は、第1の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出し、第2のセンサ112は、第1の画素アドレスに隣接する第2の画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する。
【0016】
具体的には、例えば、第2のセンサ112の感度(第2の感度)は、第1のセンサ111の感度(第1の感度)のp倍(1>p>0)である。このような第1のセンサ111および第2のセンサ112は、例えば、センサアレイに重畳され、第2のセンサ112に入射する光量を低減させるフィルタ115(例えばグレーフィルタ、または絞り)を配置することによって実現できる。この場合、第1のセンサ111および第2のセンサ112に同じ構成のEDSを用いることができる。フィルタ115が光量の(1-p)倍を遮断する場合、第2の感度は第1の感度のp倍になる。あるいは、第1のセンサ111と第2のセンサ112との間でバイアス電流を異ならせることによってそれぞれのセンサの感度を調節してもよい。
【0017】
信号処理回路120は、メモリおよびプロセッサを含み、プロセッサがメモリに格納されたプログラムに従って動作することによって第1のセンサ111が生成した第1のイベント信号、および第2のセンサ112が生成した第2のイベント信号を処理する。具体的には、信号処理回路120は、第1のイベント信号および第2のイベント信号のそれぞれのタイムスタンプを生成する。タイムスタンプは、第1のセンサ111および第2のセンサ112が輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した時刻の差分を示す情報の例である。
【0018】
ここで、第1のセンサ111および第2のセンサ112は、例えば被写体の移動や光源の変化などの輝度変動イベント(以下、単にイベントともいう)が発生したときに、検出する光量の変動量が閾値を超えたことによってイベント信号を生成する。ここで、上述のように、第1のセンサ111と第2のセンサ112との間では光量の変動を検出する感度が異なる。従って、同一のイベントに対して第1のセンサ111および第2のセンサ112の両方がイベント信号を生成した場合にも、それぞれのセンサで検出されている光量の変動量は異なる。本実施形態では、以下で説明するように、光量の変動量が異なるとイベントからイベント信号の生成までの遅延時間が異なるというセンサの特性を利用して、第1のセンサ111および第2のセンサ112が同一の輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した時刻の差分から、被写体の階調を算出する。
【0019】
図2A図2Bおよび図3は、本発明の実施形態における階調算出の原理について説明するための図である。図2Aおよび図2Bに示されているように、明るい(高階調の)被写体objの動きによってイベントが発生する場合、イベントの輝度変動量は相対的に大きい。この場合、イベントが発生してからEDSがイベント信号を生成するまでに遅延時間dが生じるとする。一方、暗い(低階調の)被写体objの動きによってイベントが発生する場合、イベントの輝度変動量は相対的に小さい。この場合、イベントが発生してからEDSがイベント信号を生成するまでに生じる遅延時間dは、被写体objの場合の遅延時間dよりも長い(d<d)。つまり、EDSがイベント信号を生成する遅延時間は、被写体の階調が高いほど短くなり、被写体の階調が低いほど長くなる。
【0020】
そこで、例えば、図3に示されているように、第2のセンサ112の感度が第1のセンサ111の感度の50%(上述の例においてp=0.5)である場合、第2のセンサ112で検出されるイベントの輝度変化は、第1のセンサ111で検出されるイベントの輝度変化の50%になる。つまり、第2のセンサ112では、被写体の階調が50%低減されて検出される。この場合において、第1のセンサ111で生成された第1のイベント信号の遅延時間dと第2のセンサ112で生成された第2のイベント信号の遅延時間dとの差分(d-d)は、被写体の階調の50%分に相当する。従って、被写体の階調とEDSの遅延時間との関係を予め測定しておけば、遅延時間の差分、すなわちそれぞれのセンサがイベント信号を生成した時刻の差分から被写体の階調を算出することができる。
【0021】
より具体的には、例えば、本実施形態では、イベントを発生させる被写体の階調とEDSの遅延時間との関係を予め測定することによって、被写体の階調を遅延時間dの関数g(d)として特定する。これによって、第1のイベント信号および第2のイベント信号の遅延時間d,dが未知であっても、遅延時間dと遅延時間dとの差分d=d-dが既知であれば、
g(d+d)=0.5×g(d) ・・・(式1)
となるような第1のセンサ111の遅延時間dと、第1のセンサ111で検出されている被写体の階調g(d)と算出することができる。
【0022】
再び図1を参照して、画像処理装置200Aにおいて、時刻差分取得部210Aは、信号処理回路120が生成したタイムスタンプに基づいて、第1のセンサおよび第2のセンサが同じ輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した時刻の差分を示す情報を取得する。他の例として、例えば画像処理装置200Aが信号処理回路120を含む場合は、信号処理回路120が第1のイベント信号および第2のイベント信号のタイムスタンプとは別に、第1のイベント信号および第2のイベント信号の間の時間差を示す情報を直接的に取得してもよい。
【0023】
階調算出部220Aは、時刻差分取得部210Aが取得した時刻の差分を示す情報に基づいて、輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を算出する。上記で図2A図2Bおよび図3を参照して説明したように、イベントを発生させる被写体の階調とEDSの遅延時間との関係を予め測定しておけば、イベント信号が生成された時刻の差から被写体の階調を算出することができる。本実施形態において、画像処理装置200Aのメモリには時間差-階調テーブル221が格納され、階調算出部220Aは時間差-階調テーブル221を参照することによって被写体の階調を算出する。
【0024】
上記のような処理によって階調算出部220Aが算出した被写体の階調は、例えば画像生成部230でイベント信号を用いて被写体の画像を生成するのに用いられてもよい。この場合、第1のイベント信号および第2のイベント信号は後述するような処理によって同時化されてもよい。あるいは、階調算出部220Aが算出した被写体の階調は、イベント信号から認識される被写体に対する処理を選択するために用いられてもよい。上記のような処理を実行する機能部分は、画像処理装置200Aの内部において実装されてもよいし、画像処理装置200Aから被写体の階調を示す情報を受信する外部装置において実装されてもよい。
【0025】
遅延時間算出部240は、時刻差分取得部210Aが取得した時刻の差分を示す情報から、第1のセンサ111における輝度変動イベントからイベント信号の生成までの遅延時間を算出する。上記で図3を参照して説明したように、被写体の階調を遅延時間dの関数g(d)として表現した場合、遅延時間d,dが未知でも、差分d=d-dからg(d+d)=0.5×g(d)となる遅延時間dを算出することができる。遅延時間算出部240は、同様にして第2のセンサ112における遅延時間dを算出してもよい。
【0026】
上記のように遅延時間算出部240が算出した遅延時間は、例えば遅延時間を除いたイベントの真の発生時刻を特定するために用いられてもよい。具体的には、遅延時間dを第1のセンサ111が生成した第1のイベント信号のタイムスタンプから差し引くことによって、第1のセンサ111が検出したイベントの真の発生時刻を特定することができる。本実施形態では画像処理装置200Aが階調算出部220Aおよび遅延時間算出部240の両方を含むが、他の実施形態では画像処理装置が階調算出部220Aまたは遅延時間算出部240のいずれか一方のみを含んでもよい。
【0027】
図4A図4Dは、本発明の第1の実施形態における同時化処理について説明するための図である。上述のように、第1のセンサ111と第2のセンサ112との間では、輝度変動イベントが発生してからイベント信号が生成されるまでの遅延時間が異なる。本実施形態ではこの遅延時間の違いを利用して被写体の階調を算出しているが、その一方で、第1のセンサ111が生成する第1のイベント信号と第2のセンサ112が生成する第2のイベント信号との間では、遅延時間の違いに相当するタイムスタンプの差分が生じる。
【0028】
そこで、図示された例では、第2のセンサ112Aで生成された第2のイベント信号のタイムスタンプを、隣接する第1のセンサ111A~111Hのそれぞれで生成されたイベント信号のタイムスタンプの平均値に置き換えることで、第2のイベント信号を第1のイベント信号に同時化している。図4A図4Dには、それぞれ、第2のセンサ112Aに隣接してイベント信号を生成した第1のセンサ111が2個、4個および8個の場合の例が示されている。例えば、階調算出部220Aまたは遅延時間算出部240に入力されるイベント信号とは別に同時化されたイベント信号を生成することによって、第1のセンサ111が配置される第1の画素アドレスおよび第2のセンサ112が配置される第2の画素アドレスの両方を含むセンサアレイの全画素で検出されたイベントに基づいて(つまり、解像度を下げることなく)被写体の動きを特定することができる。
【0029】
なお、上記のような同時化処理は必ずしも実行されなくてもよく、例えば、第1のセンサ111が生成する第1のイベント信号に基づいて、第1のセンサ111が配置される第1の画素アドレスで検出されたイベントのみに基づいて被写体の動きを特定してもよい。この場合、第2の画素アドレスで検出されたイベントが用いられない分だけ解像度は低下するが、例えば線形補間などの公知の補間の手法によって解像度の低下を補うことができる。また、高い解像度が必要とされない場合は、同時化処理や補間処理を行わず、第1の画素アドレスで取得されたイベント信号のみを被写体の動きの特定に用いてもよい。あるいは、第1のセンサ111および第2のセンサ112の配列パターンにおいて、第1のセンサ111を第2のセンサ112よりも多く配置することによって、必要最低限の解像度で階調を算出しつつ、被写体の動きを特定するための解像度を維持してもよい。
【0030】
図5は、本発明の第1の実施形態における処理の例を示すフローチャートである。図示された例では、まず、センサモジュール100の第1のセンサ111が輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成する(ステップS101)。その時刻からわずかに遅れて、第2のセンサ112が同じ輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成する(ステップS102)。上述のように、このような第1のイベント信号と第2のイベント信号との間の時間差は、検出された輝度変動量が第1のセンサ111と、より感度が低い第2のセンサ112との間で異なることによって生じる。
【0031】
次に、画像処理装置200Aにおいて、時刻差分取得部210Aが、第1のセンサ111および第2のセンサ112がそれぞれ第1のイベント信号および第2のイベント信号を生成した時刻の差分を示す情報を取得する(ステップS103)。具体的には、時刻差分取得部210Aは、信号処理回路120によって生成された第1のイベント信号および第2のイベント信号のタイムスタンプに基づいて、第1のセンサおよび第2のセンサが同じ輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した(上記のステップS101,S102)時刻の差分を示す情報を取得する。
【0032】
さらに、階調算出部220Aが、時刻差分取得部210Aが取得した時刻の差分を示す情報に基づいて、輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を算出する(ステップS104)。上記図1を参照して説明したように、このとき階調算出部220Aは、画像処理装置200Aのメモリに格納された時間差-階調テーブル221を参照してもよい。図示された例では算出された階調とイベント信号とを用いて画像生成部230が被写体の画像を生成しているが(ステップS105)、上述のように算出された階調は画像生成とともに、または画像生成の代わりに他の処理に利用されてもよい。
【0033】
図6は、本発明の第1の実施形態におけるセンサ配置の他の例を示す図である。図示された例において、センサモジュール100のセンサアレイは所定のパターンで平面的に配列された第1のセンサ111、第2のセンサ112、第3のセンサ113および第4のセンサ114を含む。上記で図1を参照して説明した例と同様の第1のセンサ111および第2のセンサ112に加えて、第3のセンサ113は、第1および第2の画素アドレスの少なくともいずれかに隣接する第3の画素アドレスにおける光量の変動を第2の感度よりも低い第3の感度で検出する。第4のセンサ114は、第1から第3の画素アドレスの少なくともいずれかに隣接する第4の画素アドレスにおける光量の変動を第3の感度よりも低い第4の感度で検出する。信号処理回路120(図示せず)は、第1から第4のセンサ111~114がそれぞれ生成したイベント信号のタイムスタンプを生成する。
【0034】
上記の例において、例えば、第2のセンサ112の感度(第2の感度)、第3のセンサ113の感度(第3の感度)、および第4のセンサ114の感度(第4の感度)は、それぞれ第1のセンサ111の感度(第1の感度)のp倍、p倍、およびp倍である(1>p>p>p>0)。具体的には、p=0.75、p=0.5、p=0.25としてもよい。このような第1から第4のセンサ111~114は、例えば、センサアレイに重畳され、第2から第4のセンサ112~114に入射する光量を低減させるフィルタ116(例えばグレーフィルタ、または絞り)を配置することによって実現できる。上記の例の場合、フィルタ116は、第2のセンサ112に入射する光量の25%を遮断し、第3のセンサ113に入射する光量の50%を遮断し、第4のセンサ114に入射する光量の75%を遮断する。
【0035】
上記の場合、第2のセンサ112、第3のセンサ113および第4のセンサ114で検出されるイベントの輝度変化は、それぞれ第1のセンサ111で検出されるイベントの輝度変化の75%、50%および25%になり、第1から第4のセンサ111~114でそれぞれ生成された第1から第4のイベント信号の遅延時間d~dの差分(d-d)、(d-d)および(d-d)は、それぞれ被写体の階調の75%、50%および25%に相当する。
【0036】
このように、本実施形態において、センサアレイに配列されるセンサの感度を2よりも多い段階で設定した場合、例えば上記の式1のような条件式を複数設定することができるため、被写体の階調を示す関数g(d)がどのようなものであっても、条件を満たす遅延時間dを正確に探索することができる。あるいは、それぞれのセンサの感度の低下量に生じる誤差(例えば、第2のセンサ112の感度が第1のセンサ111の感度の正確に0.5倍ではない可能性)を考慮し、第1のイベント信号と第2のイベント信号との時間差から算出される階調、第1のイベント信号と第3のイベント信号との時間差から算出される階調、および第1のイベント信号と第4のイベント信号との時間差から算出される階調を平均することによって階調の算出結果を安定させてもよい。
【0037】
以上で説明した本発明の第1の実施形態では、光量の変動を検出する感度が異なるセンサを隣接する画素アドレスに配置し、それぞれのセンサで生成されたイベント信号の時間差から被写体の階調を算出する。これによって、イベント駆動型センサ(EDS)の高速性を損なうことなく被写体の階調を検出することができる。また、本実施形態では、感度が異なるセンサがセンサアレイ内で平面的に隣接して配置されるため、例えば感度が均一な通常のEDSにグレーフィルタなどのフィルタを組み合わせることによって容易に階調の検出を実現することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。図示された例において、センサシステム10Bは、センサモジュール300と、画像処理装置200Aとを含む。センサモジュール300は、画素ごとに配置された積層型のセンサ310を含むセンサアレイと、信号処理回路320(イベント信号処理部)とを含む。なお、画像処理装置200Aの構成は、上記の第1の実施形態と同様であるため重複した説明は省略する。以下、各部についてさらに説明する。
【0039】
積層型のセンサ310では、第1のセンサを構成する透過型の第1の受光層311と、第2のセンサを構成する第2の受光層312とが積層され、第1の受光層311が光の入射側、すなわち被写体に近い側に配置される。被写体からの光は、第1の受光層311を透過して第2の受光層312にも入射する。第1の受光層311は、センサ310が配置された画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度で検出し、第2の受光層312は同じ画素アドレスにおける光量の変動を第1の感度よりも低い第2の感度で検出する。本実施形態において、第1の受光層311によって構成される第1のセンサが配置される第1の画素アドレスと、第2の受光層312によって構成される第2のセンサが配置される第2の画素アドレスとは重複している。
【0040】
具体的には、例えば、第2の受光層312の感度(第2の感度)は、第1の受光層311の感度(第1の感度)のp倍(1>p>0)である。このような積層型のセンサ310は、例えば、第1の受光層311の量子効率をpとし(1>p>0)、第2の受光層312の量子効率をpとする((1-p)>p>0)ことによって実現できる。この場合、第2の受光層312の感度は、第1の受光層311の感度のp/p倍になる(p=p/p)。なお、量子効率は、光子1個あたり何%の確率で検出できるかを示す指標を意味する。後述する例のように、EDS310は2層を超える積層構造を有してもよい。
【0041】
信号処理回路320は、メモリおよびプロセッサを含み、プロセッサがメモリに格納されたプログラムに従って動作することによって第1の受光層311によって構成される第1のセンサが生成した第1のイベント信号、および第2の受光層312によって構成される第2のセンサが生成した第2のイベント信号を処理する。具体的には、信号処理回路320は、第1のイベント信号および第2のイベント信号のそれぞれのタイムスタンプを生成する。タイムスタンプは、第1の受光層311によって構成される第1のセンサおよびと第2の受光層312によって構成される第2のセンサが輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した時刻の差分を示す情報の例である。
【0042】
上記のように、同じ画素アドレスに配置された第1のセンサおよび第2のセンサが輝度変動イベントに対してそれぞれイベント信号を生成した時刻の差分を示す情報が得られることによって、本実施形態でも、上記の第1の実施形態と同様に画像処理装置200Aにおいて輝度変動イベントを発生させた被写体の階調を算出することができる。なお、本実施形態では、センサアレイの全画素で第1のイベント信号および第2のイベント信号の両方が生成可能であるため、例えば画像生成部230がイベント信号を用いて被写体の画像を生成するときに、第1のイベント信号と第2のイベント信号とを同時化する処理は行われなくてもよい。画像生成部230は、第1のイベント信号のみを用いて被写体の動きを特定してもよい。
【0043】
図8は、本発明の第2の実施形態におけるセンサ配置の他の例を示す図である。図示された例において、積層型のセンサ310では、光の入射側から順に第1の受光層311、第2の受光層312、第3の受光層313および第4の受光層314が積層される。第1から第3の受光層311~313は透過型であり、被写体からの光は第1の受光層311、第2の受光層312および第3の受光層313を透過して第4の受光層314まで入射する。上記で図7を参照して説明した例と同様の第1の受光層311および第2の受光層312に加えて、第3の受光層313は、センサ310が配置された画素アドレスにおける光量の変動を第2の感度よりも低い第3の感度で検出し、第3のセンサを構成する。第4の受光層314は、同じ画素アドレスにおける光量の変動を第3の感度よりも低い第4の感度で検出し、第4のセンサを構成する。信号処理回路120は、第1から第4の受光層311~314によって構成されるセンサがそれぞれ生成したイベント信号のタイムスタンプを生成する。
【0044】
上記の例において、例えば、第2の受光層312の感度(第2の感度)、第3の受光層313の感度(第3の感度)、および第4の受光層314の感度(第4の感度)は、それぞれ第1の受光層311の感度(第1の感度)のp倍、p倍、およびp倍である(1>p>p>p>0)。具体的には、p=0.5、p=0.25、p=0.125としてもよい。このようなEDS310は、例えば、第1の受光層311の量子効率を40%、第2の受光層312の量子効率を20%、第3の受光層313の量子効率を10%、第4の受光層314の量子効率を5%とすることによって実現できる。
【0045】
上記の場合、第2の受光層312、第3の受光層313および第4の受光層314で検出されるイベントの輝度変化は、それぞれ第1の受光層311で検出されるイベントの輝度変化の50%、25%および12.5%になり、第1から第4の受光層311~314でそれぞれ生成された第1から第4のイベント信号の遅延時間d~dの差分(d-d)、(d-d)および(d-d)は、それぞれ被写体の階調の50%、25%および12.5%に相当する。これによって、上記で図6を参照して説明した例と同様に、例えば条件を満たす遅延時間を正確に探索したり、階調の算出結果を安定させたりすることができる。
【0046】
以上で説明した本発明の第2の実施形態では、光量の変動を検出する感度が異なる受光層を同じ画素アドレスに積層し、それぞれの受光層で生成されたイベント信号の時間差から被写体の階調を算出する。これによって、第1の実施形態と同様に、イベント駆動型センサ(EDS)の高速性を損なうことなく被写体の階調を検出することができる。また、本実施形態では、感度の異なるセンサが同じ画素アドレスに積層されるため、解像度を下げることなく被写体の階調を算出することができる。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係るシステムの概略的な構成を示す図である。図9に示された例は、上記で図8を参照して説明した例の変形例として説明される。つまり、本実施形態において、センサシステム10Cは、4層の積層構造を有するセンサ310を含むセンサモジュール300と、画像処理装置200Cとを含む。センサモジュール300は、上記の第2の実施形態と同様に積層型のセンサ310を含むセンサアレイと、信号処理回路320とを含む。画像処理装置200Cは、例えば通信インターフェース、プロセッサ、およびメモリを有するコンピュータによって実装され、プロセッサがメモリに格納された、または通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現されるイベント信号関連付け部210Cおよび階調判定部220Cの機能部分を含む。画像処理装置200Cは、さらに、画像生成部230の機能部分を含んでもよい。以下、画像処理装置200Cの各部についてさらに説明する。
【0048】
イベント信号関連付け部210Cは、信号処理回路320から入力される第1のイベント信号に、第2から第4のイベント信号を関連付ける。ここで、第1のイベント信号は、第1の受光層311によって構成される第1のセンサが輝度変動イベントに対して生成したものである。第1のイベント信号に関連付けられる第2から第4のイベント信号は、第2から第4の受光層312~314によって構成される第2から第4のセンサが、第1のセンサと同じ輝度変動イベントに対して生成したものである。
【0049】
なお、上記で図2A図2Bおよび図3を参照して説明したように、センサの感度が異なるとイベントの発生からイベント信号の生成までの遅延時間が異なる。従って、第2から第4のイベント信号は、第1のイベント信号と同じ輝度変動イベントに対応するものであっても、第1のイベント信号よりも遅れて生成される。イベント信号関連付け部210Cは、例えばそれぞれのイベント信号の順序およびタイムスタンプの間隔に基づいて、イベント信号の関連付けを実行する。
【0050】
具体的には、イベント信号関連付け部210Cは、第2のイベント信号が第1のイベント信号の後に生成され、かつ第1のイベント信号と第2のイベント信号とのタイムスタンプの間隔が所定の範囲内の場合に、第2のイベント信号を第1のイベント信号に関連付ける。そのような第2のイベント信号がない場合、イベント信号関連付け部210Cは第1のイベント信号に第2のイベント信号を関連付けない。同様に、イベント信号関連付け部210Cは、第3のイベント信号が第2のイベント信号の後に生成され、かつ第2のイベント信号と第3のイベント信号とのタイムスタンプの間隔が所定の範囲内の場合に、第3のイベント信号を第1のイベント信号に関連付ける。そのような第3のイベント信号がない場合、および第1のイベント信号に第2のイベント信号が関連付けられていない場合、イベント信号関連付け部210Cは第1のイベント信号に第3のイベント信号を関連付けない。
【0051】
階調判定部220Cは、イベント信号関連付け部210Cにおけるイベント信号の関連付けの結果に応じて被写体の階調を判定する。図8を参照して説明したように、積層型のセンサ310の第1から第4の受光層311~314は、光量の変動に対する感度が段階的に低下するように構成されるため、輝度変動イベントを発生させた被写体の階調が低い場合には、感度が相対的に低い受光層において光量の変動量が閾値を超えず、その受光層によって構成されるセンサはイベント信号を生成しない。具体的には、イベントの輝度変化が最も大きい場合、第1の受光層311がイベント信号を生成したときには第2から第4の受光層312~314もイベント信号が生成するが、輝度変化が小さくなるにつれて、まず感度が最も低い第4の受光層314がイベント信号を生成しなくなり、さらに輝度変化が小さくなると第3の受光層313もイベント信号を生成しなくなり、検出可能な最も小さい輝度変化の場合には第2の受光層312もイベント信号を生成せず、第1の受光層311のみがイベント信号を生成する。
【0052】
本実施形態において、階調判定部220Cは、上記のような被写体の階調と各イベント信号の生成との関係に従って被写体の階調を判定する。具体的には、イベント信号関連付け部210Cによって第1のイベント信号に関連付けられた第2から第4のイベント信号のすべてが存在する場合に、階調判定部220Cは被写体の階調が最も高い水準であると判定する。一方、第1のイベント信号に関連付けられた第2および第3のイベント信号は存在するが、第4のイベント信号は存在しない場合、階調判定部220Cは被写体の階調が2番目の水準であると判定する。第1のイベント信号に関連付けられた第2のイベント信号のみが存在する場合、階調判定部220Cは被写体の階調が3番目の水準であると判定する。第1のイベント信号に関連付けられたイベント信号がない場合、階調判定部220Cは被写体の階調が最も低い水準であると判定する。このようにして判定された被写体の階調は、第1の実施形態と同様に、例えば画像生成部230による被写体の画像を生成や、イベント信号から認識される被写体に対する処理の選択するために用いられる。
【0053】
図10は、本発明の第3の実施形態における処理の例を示すフローチャートである。簡単のため、図10では第1のイベント信号および第2のイベント信号を用いた判定について説明するが、第3のイベント信号および第4のイベント信号を用いた判定についても同様である。図示された例では、まず、センサモジュール300で第1のセンサを構成する第1の受光層311が、輝度変動イベントに対して第1のイベント信号を生成する(ステップS201)。その時刻からわずかに遅れて、第2のセンサを構成する第2の受光層312が、同じ輝度変動イベントに対して第2のイベント信号を生成する(ステップS202)。なお、感度が相対的に低い第2の受光層312で光量の変動量が閾値を超えなかった場合は、第2のイベント信号は生成されない。
【0054】
次に、画像処理装置200Cにおいて、イベント信号関連付け部210Cが、第1のイベント信号に第2のイベント信号が関連付けられるか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、イベント信号関連付け部210Cは、タイムスタンプによって示される第1のイベント信号および第2のイベント信号の順序と、タイムスタンプの間隔とに基づいて関連付けの可否を判定する。第1のイベント信号に第2のイベント信号が関連付けられた場合、階調判定部220Cは被写体の階調が相対的に高い水準であると判定する(ステップS204)。一方、第1のイベント信号に第2のイベント信号が関連付けられなかった場合、階調判定部220Cは被写体の階調が相対的に低い水準であると判定する(ステップS205)。
【0055】
なお、図示された例ではセンサ310が第1から第4の受光層311~314を含む4層の積層構造を有するが、他の例ではセンサ310が図7に示された例と同様に2層の積層構造を有してもよく、3層、または4層を超える積層構造を有してもよい。また、他の例において、センサモジュールは、上記で図1および図6を参照して説明したような、異なる感度のセンサが所定のパターンで平面的に配列されたセンサアレイを含んでもよい。
【0056】
以上で説明した本発明の第3の実施形態では、光量の変動を検出する感度が異なる受光層を同じ画素アドレスに積層し、どの受光層までがイベント信号を生成したかによって被写体の階調を判定する。これによって、第1の実施形態と同様に、イベント駆動型センサ(EDS)の高速性を損なうことなく被写体の階調を検出することができる。本実施形態では、被写体の階調が受光層の感度の数と同じ段階でしか検出されないが、被写体の階調とEDSの遅延時間との関係を予め測定する必要がないため簡便であり、また単純な判定によって安定的に被写体の階調を特定することができる。
【0057】
本発明の実施形態は、例えばゲームコントローラ、スマートフォン、各種の移動体(自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボットなど)で周辺環境の情報を取得したり、周辺の被写体の位置から自己位置を推定したり、飛来する被写体を検出して回避行動をとったりするために利用することができる。被写体の階調は、例えば上記のような用途において被写体を同定したり、被写体を識別したりするために有用でありうる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
10A,10B,10C…センサシステム、100…センサモジュール、111…第1のセンサ、112…第2のセンサ、113…第3のセンサ、114…第4のセンサ、115,116…フィルタ、120…信号処理回路、200A,200C…画像処理装置、210A…時刻差分取得部、210C…イベント信号関連付け部、220A…階調算出部、220C…階調判定部、230…画像生成部、240…遅延時間算出部、300…センサモジュール、310…センサ、311…第1の受光層、312…第2の受光層、313…第3の受光層、314…第4の受光層、320…信号処理回路。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10