(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】光パターンを補正するための方法および自動車両の照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/08 20060101AFI20221209BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20221209BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20221209BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20221209BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221209BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20221209BHJP
【FI】
B60Q1/08
F21S41/153
F21W102:20
F21W102:10
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021550078
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2020052367
(87)【国際公開番号】W WO2020173658
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンタン、プラット
(72)【発明者】
【氏名】アリ、カンジ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094857(JP,A)
【文献】特開平11-066911(JP,A)
【文献】特開2013-054963(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031210(WO,A1)
【文献】特開平09-213104(JP,A)
【文献】特開2013-022989(JP,A)
【文献】特開2004-056680(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03412962(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/08
F21S 41/153
F21W 102/20
F21W 102/10
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1速度にある照明装置(1)によってもたらされる第1光パターンを補正するための方法であって、前記第1光パターンは、
wを当該第1光パターンの幅、hを当該第1光パターンの高さとしたとき、水平方向へ-0.5wから+0.5w、垂直方向へ-0.5hから+0.5hに広がる第1光束と、
中央方向(2)の第1中央光強度および横方向(3)の第1横光強度と、
を有し、
前記中央方向(2)は、-α・wから+α・wの間に含まれる方向であり、前記横方向(3)は、+α・wから+0.5wの間に含まれる方向であって、中央(2)および横(3)の両方向が、-β・hから+β・hの間に含まれ、
αは、0.05から0.25の間に含まれるパラメータであり、
βは、0.05から0.25の間に含まれるパラメータであり、
当該方法は、
a. 前記照明装置の現在速度を測定する段階と、
b. 補正された中央光強度と補正された横光強度とを有する補正された光パターンを生成する段階と、
を備え、
前記補正された中央光強度は、前記現在速度が前記第1速度よりも高いときには前記第1中央光強度よりも大きく、前記現在速度が前記第1速度よりも低いときには前記第1中央光強度よりも小さく、
前記補正された横光強度は、前記現在速度が前記第1速度よりも高いときには前記第1横光強度よりも小さく、前記現在速度が前記第1速度よりも低いときには前記第1横光強度よりも大きい、方法。
【請求項2】
前記補正された光パターンの光束が前記第1光パターンの光束と実質的に同じである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
αが0.1から0.2の間に含まれる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
段階a.と段階b.との間に、前記照明装置の前記現在速度と前記第1速度との間の差に応じたスケール因子(f)を算出する段階を更に備え、前記補正された光パターンを生成する段階は、前記第1中央光強度に前記スケール因子を適用して前記補正された光パターンの前記中央方向の光強度を得ることと、前記スケール因子の逆数を適用して前記補正された光パターンの前記横方向の光強度を得ることとを含んでいる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記スケール因子(f)は、速度が所定速度(PS)以下である場合には1であり、速度が前記所定速度(PS)よりも高い場合には1よりも大きい、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記所定速度(PS)よりも高い速度についての前記スケール因子(f)が、
f= 1+a・(s-p)
の式によって与えられ、
fは、スケール因子、
aは、0.002から0.004h/kmの間に含まれるパラメータ、
sは前記照明装置の速度、pは前記所定速度で、両者とも単位はkm/h
である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記所定速度よりも高い速度についての前記スケール因子(f)が、ベジェ曲線、指数曲線、または多項式曲線によって与えられる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記所定速度(SP)が50km/hから70km/hの間に含まれる、請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記スケール因子が前記第1光パターンに適用され、前記第1光パターンが2次元ガウス分布を有している、請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1光パターンは上方向の第1上光強度をも有し、
前記上方向は、+β・hから+0.5・hの間に含まれる方向であり、中央および上の両方向が、-α・wから+α・wの間に含まれており、
前記補正された光パターンは補正された上光強度を備え、前記補正された上光強度は、前記現在速度が前記第1速度よりも高いときには前記第1上光強度よりも小さく、前記現在速度が前記第1速度よりも低いときには前記第1上光強度よりも大きい、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
光パターン(11,12)をもたらすように企図された、ソリッドステート光源(4)のマトリックス配列と、
前記請求項のいずれかに記載の方法の各段階を達成するための制御手段と、
を備えた、自動車両の照明装置。
【請求項12】
前記マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源(4)を備えている、請求項11記載の自動車両の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車両の照明装置の分野に関し、より特定的には光パターンの管理の仕方に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル式照明装置は、自動車メーカーによって中高級市場向け製品に採用されることが増えている。
【0003】
照明装置におけるアダプティブ(配光可変)機能は通常、非幻惑性の規定に焦点が当てられている。これが主たる関心事であるのは、良質なハイビーム機能をもたらすときに幻惑性が極めて重要な点だからである。
【0004】
しかしながら、光パターンを車両の現在条件に適合させることによって運転者の体感を改善する別の可能性も存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、運転者の視覚的体感を改善するための代替的な解決策を、請求項1記載の光パターンを補正するための方法、および請求項10記載の自動車両の照明装置によって提供するものである。本発明の好適な諸実施形態は、各従属請求項に定義されている。
【0006】
別様に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的、科学的用語を含む)は、当該技術において通例であるように解釈されるべきものである。さらに、一般的な語法による用語類も、やはり関連技術において通例であるように解釈されるべきであって、本明細書で明確にそう定義されない限り、理想化されたり過度に形式的であったりする意味に解釈されるべきではない。
【0007】
この本文において、用語「備える/含む(comprises)」や、その派生語(例えば「備えている/含んでいる(comprising)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではない。即ち、これらの用語は、説明されたり定義されたりするものが更なる要素や段階などを含み得るという可能性を排除するように解釈されるべきではないのである。
【0008】
第1の発明態様において、本発明は、第1速度にある照明装置によってもたらされる第1光パターンを補正するための方法であって、第1光パターンは、
wを当該第1光パターンの幅、hを当該第1光パターンの高さとしたとき、水平方向へ-0.5wから+0.5w、垂直方向へ-0.5hから+0.5hに広がる第1光束と、
中央方向の第1中央光強度および横方向の第1横光強度と、
を有し、
中央方向は、-α・wから+α・wの間に含まれる方向であり、横方向は、+α・wから+0.5wの間に含まれる方向であって、中央および横の両方向が、-β・hから+β・hの間に含まれ、
αは、0.05から0.25の間に含まれるパラメータであり、
βは、0.05から0.25の間に含まれるパラメータであり、
当該方法は、
a. 照明装置の現在速度を測定する段階と、
b. 補正された中央光強度と補正された横光強度とを有する補正された光パターンを生成する段階と、
を備え、
補正された中央光強度は、現在速度が第1速度よりも高いときには第1中央光強度よりも大きく、現在速度が第1速度よりも低いときには第1中央光強度よりも小さく、
補正された横光強度は、現在速度が第1速度よりも高いときには第1横光強度よりも小さく、現在速度が第1速度よりも低いときには第1横光強度よりも大きい、方法を提供する。
【0009】
この方法は、車両の速度(従って、照明装置の速度)が変化したときに、照明装置によってもたらされる光パターンを補正することを企図している。自動車両の照明装置は通常、自動車両上に搭載されているため、照明装置の速度は自動車両の速度と同じであり、容易に検知されるものである。この方法では、基準方向として中央方向と横方向の2つの方向が考慮される。中央方向と横方向は両者とも水平方向の中間区域(-β・hから+β・hの間)に含まれているが、中央区域が中央部(-α・wから+α・w)に含まれるのに対して、横方向はこの中央区域の外側(+α・wから+0.5・wの間)にある。当該補正は、中央区域での光強度を増加させ、中央区域の外側の光強度を減少させて、速度上昇時の運転者の視覚的体感を改善することを企図しているのである。
【0010】
幾つかの特定の実施形態では、補正された光パターンの光束が第1光パターンの光束と実質的に同じである。
【0011】
一定量の光束を維持することで、設計上の境界条件に影響を与える熱や消費の水準が一定に保たれる。車両の速度に応じて熱や消費の水準が変化するとすれば、より複雑な設計が照明装置に必要となるのである。
【0012】
光強度とは、比視感度(人間の目の感度の標準化モデル)に基づいて、光源によって特定方向へ単位立体角あたりに放出される、波長で重み付けされた出力の尺度となる光の大きさである。光度のSI単位はカンデラ(cd)である。光束は光の知覚される出力の尺度であるのは光強度である。光束のSI単位はルーメン(lm)である。1ルーメンは、1ステラジアンの立体角に亘って1カンデラの光強度を放出する光源によって作り出される光の光束として定義されるものである。
【0013】
幾つかの特定の実施形態では、αが0.1から0.2の間に含まれる。この値は、補正の影響を受ける中央区域の大きさを示しており、設計段階で選択され得るものである。
【0014】
幾つかの特定の実施形態では、当該方法は、段階a.と段階b.との間に、照明装置の現在速度と第1速度との間の差に応じたスケール因子を算出する段階を更に備え、補正された光パターンを生成する段階は、第1中央光強度にスケール因子を適用して、補正された光パターンの中央方向の光強度を得ることと、スケール因子の逆数を適用して、補正された光パターンの横方向の光強度を得ることとを含んでいる。
【0015】
スケール因子を用いることは、この方法を実行するための可能性の一つである。スケール因子によって、光パターンを車両速度に適合させるための、容易な計算と、光パターン全体に影響を与える補正とが可能となる。
【0016】
幾つかの特定の実施形態では、スケール因子は、速度が所定速度以下である場合には1であり、速度が所定速度よりも高い場合には1よりも大きい。
【0017】
低い速度では光パターンの補正を必要としない場合がある。このような場合、因子は1であって、光パターンは補正されない。所定速度以上から、光パターンが補正され得る。幾つかの特定の実施形態では、所定速度よりも高い速度についてのスケール因子が、
f= 1+a・(s-p)
の式によって与えられる。
【0018】
その式で、fは、スケール因子、aは、0.002から0.004h/kmの間に含まれるパラメータ、sは照明装置の速度、pは所定速度で、両者とも単位はkm/hである。
【0019】
これは、スケール因子を得る簡単なやり方であって、パラメータaは自動車製造者や照明装置の設計者によって選択され得る。幾つかの特定の実施形態では、所定速度が50km/hから70km/hの間に含まれる。
【0020】
幾つかの特定の実施形態では、スケール因子が、ガウス曲線、ベジェ曲線、指数曲線、または多項式曲線に従って第1光パターンに適用される。
【0021】
幾つかの特定の実施形態では、所定速度よりも高い速度についてのスケール因子が、ベジェ曲線、指数曲線、または多項式曲線によって与えられる。
【0022】
これらは、速度と共に増大する曲線を得る目的を達成するための簡単な例である。
【0023】
幾つかの特定の例では、スケール因子が第1光パターンに適用され、第1光パターンが2次元ガウス分布を有している。
【0024】
幾つかの特定の実施形態では、
第1光パターンは上方向の第1上光強度をも有し、
上方向は、+β・hから+0.5・hの間に含まれる方向であり、中央および上の両方向が、-α・wから+α・wの間に含まれており、
補正された光パターンは補正された上光強度を備え、補正された上光強度は、現在速度が第1速度よりも高いときには第1上光強度よりも小さく、現在速度が第1速度よりも低いときには第1上光強度よりも大きい。
【0025】
これにより、光パターンの二次元的な補正が生じるが、これが環境によっては有利となり得る。
【0026】
第2の発明態様において本発明は、
光パターンをもたらすように企図された、ソリッドステート光源のマトリックス配列と、
先行する請求項のいずれかに記載の方法の各段階を達成するための制御手段と、
を備えた、自動車両の照明装置を提供する。
【0027】
この照明装置は、車両の速度に応じて光パターンの形状や集中度を適合させるという有利な機能性をもたらす。
【0028】
幾つかの特定の実施形態では、マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源を備えている。
【0029】
用語「ソリッドステート(solid state)」は、電力を光へと変換するために半導体を用いるソリッドステートエレクトロルミネッセンスによって放出される光を表す。白熱照明に比べて、ソリッドステート照明は、熱の発生を減少させ、より少ないエネルギー消散で可視光を作り出す。ソリッドステート電子照明装置の概して小さな嵩は、もろいガラス管/球や長細いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に対してより強い耐性を与えるものである。それらはまた、フィラメントの蒸発を排除して、発光装置の寿命を増大させる可能性を有している。これらの型式の照明における幾つかの例は、光源として、電気フィラメント、プラズマ、またはガスよりも寧ろ、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、または高分子発光ダイオード(PLED)を備えている。
【0030】
この方式の典型的な例として、マトリックス(行列)配列がある。行同士が投射距離範囲でグループ化され、各グループの各列が角度間隔を表し得る。この角度の値は、マトリックス配列の解像度に依るが、典型的には0.01°毎列から0.5°毎列の間に含まれる。従って、必要に応じて、より真っ直ぐなパターンを生じさせるように各ピクセルの光強度を適合させ得る。
【0031】
本明細書を完全なものとするよう、また本発明のより深い理解に備えるために、一連の図面が提供される。当該図面は、本明細書の不可欠な部分を成し、本発明の実施形態を示しているが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を如何にして実施することができるかの例示として解釈されるべきである。図面は、以下の各図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による自動車両の照明装置の全体斜視図。
【
図2】自動車両が第1速度で走行するときに照明装置によってもたらされる第1光パターンの測光分布を示す図。
【
図3】自動車両が第1速度で走行しているときのガウス型の光強度分布を示す図。
【
図4】本発明による方法で用いられるスケール因子の特定の例を示す図。
【
図5】様々な現在車両速度についての様々な光強度曲線を示す図。スケール因子は各速度で適用されるが、光束の全体的な値は維持される。
【
図6a】第1光パターンについての等照曲線を示す図。
【
図6b】補正された光パターンについての等照曲線を示す図。
【
図7a】補正された光パターンの測光分布を示す図。
【
図7b】補正された光パターンの測光分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
例示される実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステムやプロセスを具現化して実施するのを可能とするに足るほど詳細に説明されている。各実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではない、ということを理解するのが重要である。
【0034】
従って、実施形態は種々のやり方で改変することができ、種々の代替形態をとることができるが、それらの特定の諸実施形態を例として図面に示すと共に、以下で詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲内に入っている全ての改変、均等物、および代替物が包含されるべきである。
【0035】
図1は、本発明による自動車両の照明装置の全体斜視図である。
【0036】
この照明装置1は、自動車両100内に設置されると共に、
ある光パターンをもたらすように企図されたLED4のマトリックス配列と、
照明機能を果たすよう、特に車両速度に応じて光パターンを補正するように、各LED4の強度を制御するための制御手段と、
を備えている。
【0037】
このマトリックス構成は、2000ピクセルを超える解像度を有した、高解像度モジュールである。ただし、投射モジュールを製造するのに用いられる技術に制限があると考えられるものではない。
【0038】
このマトリックス構成の第1例は、モノリシック光源を備えている。このモノリシック光源は、数列×数行に配置されたモノリシックなエレクトロルミネセント(電界発光)素子のマトリックスを備えている。モノリシックマトリックスにおいて、各エレクトロルミネセント素子は、共通基板から成長させることができ、個別にか、或いはエレクトロルミネセント素子同士のサブセット(小集団)毎にかのいずれかで選択的に作動可能となるよう、電気的に接続されている。基板は、主として半導体材料で作られていてよい。基板は、1つないし複数の他の材料、例えば非半導体材料(金属や絶縁体)を含んで成っていてもよい。かくして、各エレクトロルミネセント素子またはエレクトロルミネセント素子の各グループが、光ピクセルを形成することができ、従って、そ(れら)の素子の材料へ電力が供給されたときに光を放出することができるのである。そのようなモノリシックマトリックスの構成によって、プリント回路基板上に半田付けされるよう企図された従来の発光ダイオード群と比べて、選択的に点灯可能なピクセル同士を互いにかなり近接させて配置することが可能となる。モノリシックマトリックスは、共通基板に対して垂直に測定した高さの主寸法が略1マイクロメートルであるエレクトロルミネセント素子を備えていてよい。
【0039】
モノリシックマトリックスは、マトリックス配列によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射を制御するように制御センターに結合されている。かくして制御センターは、マトリックス配列の各ピクセルの発光を個別に制御することができる。
【0040】
上記で提示したものに代えて、マトリックス配列は、ミラー(反射鏡)のマトリックスに結合された主光源を備えていてもよい。かくして、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードで形成された少なくとも1つの主光源と、主光源からの光線を反射によって投射光学素子へ差し向ける光電素子のアレイとの組立体によって、ピクセル化された光源が形成される。その光電素子のアレイは、例えば「Digital Micro-mirror Device(デジタルマイクロミラーデバイス)」の頭字語DMDによっても知られるマイクロミラーのマトリックスである。適切な場合には補助光学素子が、少なくとも1つの光源の光線を集中させてマイクロミラーアレイの表面の方へ差し向けるように、それらの光線同士を集めることができる。
【0041】
各マイクロミラーは、2つの決められた位置、各光線が投射光学素子の方へ反射される第1位置と、各光線が投射光学素子とは異なる方向へ反射される第2位置との間を回動することができる。2つの決められた位置は、全てのマイクロミラーについて同様の向きにされ、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して当該マイクロミラーのマトリックスの仕様で定められた特有の角度を成している。そのような角度は、一般的には20°未満であり、通常は約12°であってよい。かくして、マイクロミラーのマトリックス上に入射する光ビームの一部を反射する各マイクロミラーが、ピクセル化された光源の基本発光体を成す。この基本発光体を、基本光ビームを放出したりしなかったりするよう選択的に作動させるための、各ミラーの位置変更の作動および制御は、制御センターによって制御される。
【0042】
異なる実施形態において、マトリックス配列は、次のような走査素子に向かってレーザー光源がレーザービームを放出する走査レーザーシステムを備えていてもよい。即ち、レーザービームで波長変換器の表面を探査するように構成された走査素子である。この表面の像が、投射光学素子によって捕捉される。
【0043】
走査素子の探査は、人間の目が投射像の如何なる変位も知覚せぬに足るほど高い速度で実行され得る。
【0044】
レーザー光源の点灯とビームの走査運動との同期制御によって、選択的に点灯させることのできる基本発光体のマトリックスを波長変換素子の表面に生成することが可能となる。走査手段は、レーザービームの反射によって波長変換素子の表面を走査するための可動式マイクロミラーであってよい。走査手段として挙げられるマイクロミラーは、例えば、「Micro-Electro-Mechanical Systems(微小電気機械システム)」を表すMEMS型のものである。但し、本発明は、そのような走査手段に限定されるものではなく、他の種類の走査手段(例えば、回転要素上に配置された一連のミラーであって、当該要素の回転がレーザービームによる伝達面の走査をもたらすものなど)を用いることができる。
【0045】
別の変形例では、光源が複雑なものであって、光素子(発光ダイオードなど)の少なくとも1つのセグメントと、モノリシック光源の表面部分との両者を含んでいてもよい。
【0046】
図2は、自動車両が第1速度で走行するときに照明装置によってもたらされる第1光パターンの測光分布を示している。
【0047】
この第1光パターンは、wを当該第1光パターンの幅、hを当該第1光パターンの高さとしたとき、水平方向に-0.5wから+0.5w、垂直方向に-0.5hから+0.5hに広がっている。
【0048】
この光パターンでは、2つの主要な方向が特定される。第1に中央方向2、第2に横方向3である。
【0049】
中央方向は、光強度の高い方向を代表するものであり、光パターンの中央区域、より特定的には-α・wから+α・wの間(水平座標)で、-β・hから+β・hの間(垂直座標)に含まれている。αおよびβは0.1から0.2の間に含まれるパラメータである。
【0050】
これに対して横方向は、この中央区域の外側ではあるが、それでも垂直方向では中央にある方向を代表するものであり、より特定的には+α・wから+0.5・wの間(水平座標)で、-β・hから+β・hの間(垂直座標)にある。
【0051】
これら2つの方向は、まさに光パターンに沿った光の分布を代表するものである。例えば、
図3に示すもののようなガウス型の光強度分布を例に挙げることができる。このガウス型光強度分布は、
図2から垂直座標が0の所を選んで表されている。結果として、横軸は水平方向を表しているが、縦軸は1に正規化された光強度を表している。この場合、中央方向2は0の水平座標に対応し、横方向3は+0.25wの水平座標に対応している。
【0052】
本発明による方法は、
a. 照明装置の現在速度を測定する段階と、
b. 補正された中央光強度と補正された横光強度とを有する補正された光パターンを生成する段階と、
を備えている。
【0053】
補正された光パターンは、現在速度と第1速度との間の関係に左右される。現在速度が第1速度よりも高い場合、補正された光パターンは、中央方向の光強度を増大させ、横方向の光強度を減少させ、より集中させられることとなる。これに対して、現在速度が第1速度よりも低い場合、補正された光パターンは、中央方向の光強度を減少させ、横方向の光強度を増大せることとなる。
【0054】
実際には、
図3に示した曲線にスケール因子が適用され、光パターンの全光束の値が一定に保たれることとなる。
【0055】
図4は、本発明による方法で用いられるスケール因子の特定の例を示している。
【0056】
この場合、所定速度PSが存在しているが、これは70km/hに固定されている。この所定速度までの現在速度については、運転者の視覚的体感が速度(speed)によってそれほど影響を受けないため、光パターンには変化がない。しかし、この速度以上になると、スケール因子は、
f=1+a・(s-p)
の式に従い、
fはスケール因子、
aは、0.002~0.004h/kmの間に含まれるパラメータ、
sは照明装置の速度、pは所定速度であり、両者とも単位はkm/hである。
【0057】
このスケール因子が現在速度に従って算出されたならば、このスケール因子が
図3のガウス曲線に適用される。このガウス曲線は、較差と分散という2つの変数に依る分布を表している。このガウス曲線にスケール因子が適用された場合、新たな較差は元の較差にスケール因子を乗じたものであり、新たな分散は元の分散をスケール因子で除したものである。
【0058】
図5は、様々な現在車両速度についての様々な光強度曲線を示している。スケール因子は各速度で適用されるが、光束の全体的な値は維持される。
【0059】
実線は、所定速度(例えば、70km/h)での光パターンを表す。点線は、もう少し速い第2速度(例えば、90km/h)での光パターンを表す。スケール因子は約1.06であることから、中央方向2の光強度が少し高く、横方向3の光強度が少し低くなっている。破線は、第2速度よりも少し高い第3速度(例えば、110km/h)での光パターンを表している。スケール因子は約1.12であることから、中央方向2の光強度が少し高く、横方向3の光強度が少し低くなっている。一点鎖線は、第3速度よりも少し高い第4速度(例えば、130km/h)での光パターンを表している。スケール因子は約1.2であることから、中央方向2の光強度が最も高く、横方向3の光強度が最も低くなっている。
【0060】
図6aおよび
図6bは、第1光パターンおよび補正された光パターンについての等照曲線群を示している。
図6aは第1速度についての等照曲線群を示し、
図6bは第1速度よりも高い現在速度についての等照曲線群を示している。その結果、光強度の最大値に対応した等照曲線5は、この区域の光強度が
図6aよりも高いことから、より遠くまで延長されてる。
【0061】
最後に、
図7aおよび
図7bは、2つの補正された光パターンの測光分布を示している。
図7aは、上記で説明した方法によって補正された光パターンを示している。
図7bは、異なるやり方で補正された光パターンを示している。
【0062】
この場合には、垂直方向と水平方向の2次元で補正が行われている。(前述の例のような)一定垂直座標についての光強度プロファイルと、一定水平座標についての光強度プロファイルとの両者にスケール因子が適用されて、異なる光パターンを引き起こしている。その光パターンにおいては、-α・wから+α・wの間(水平座標)と、+β・hから+0.5・hの間(垂直座標)とに位置した上方向が、横方向と同じ役割を果たしている。