(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62K 21/00 20060101AFI20221209BHJP
B62H 1/02 20060101ALI20221209BHJP
B62H 5/02 20060101ALI20221209BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20221209BHJP
【FI】
B62K21/00
B62H1/02 E
B62H5/02
B62J45/41
(21)【出願番号】P 2021550669
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035938
(87)【国際公開番号】W WO2021065649
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019179012
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 爾
(72)【発明者】
【氏名】戸村 甲子男
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-184934(JP,A)
【文献】特開2011-106166(JP,A)
【文献】特開2014-113865(JP,A)
【文献】特開2019-011016(JP,A)
【文献】特表2011-514865(JP,A)
【文献】特開2017-149327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/00 - 21/26
B62H 1/02 - 1/04
B62H 5/02 - 5/06
B62J 45/41 - 45/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪(2)および操舵ハンドル(4)を支持する懸架装置(3)と、
前記懸架装置(3)を転舵可能に支持する車体フレーム(5)と、
前記車体フレーム(5)に対する前記懸架装置(3)の転舵を予め定めたハンドルロック位置(P1)でロックするハンドルロック機構(60)と、
前記懸架装置(3)にアシストトルク(Tm)を付与するステアリングアクチュエータ(43)と、
前記ステアリングアクチュエータ(43)を駆動制御する制御手段(23)と、を備え、
前記制御手段(23)は、予め定めたロック待機状態を検知したとき、前記ステアリングアクチュエータ(43)を作動させ、前記懸架装置(3)を前記ハンドルロック位置(P1)まで転舵させるハンドルロック制御を行う鞍乗り型車両。
【請求項2】
車体を起立状態に支持するスタンド(18,19)を備え、
前記ロック待機状態は、前記スタンド(18,19)で車体を支持した状態で、予め定めたハンドルロック要求操作がなされた状態である請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ハンドルロック要求操作は、車両側に設けたスイッチ(30)、および車両から分離した無線機(64)、の少なくとも一つに対する予め定めたロック操作である請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記スタンド(18,19)は、車体を左右一側に傾斜した起立姿勢で支持するサイドスタンド(18)を含み、
前記懸架装置(3)は、前記サイドスタンド(18)側に転舵して前記ハンドルロック位置(P1)に至る請求項2又は3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記ハンドルロック機構(60)は、ハンドルロックアクチュエータ(61)を含み、 前記制御手段(23)は、前記ハンドルロックアクチュエータ(61)が、前記懸架装置(3)を前記ハンドルロック位置(P1)まで転舵させた後に自動で、前記懸架装置(3)の転舵をロックしたロック状態まで作動させる前記ハンドルロック制御を行う請求項1から4の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記制御手段(23)は、規定時間(t1)内に前記懸架装置(3)がハンドルロック位置(P1)まで転舵しきらない場合、あるいは規定時間(t2)内に前記ハンドルロックアクチュエータ(61)がロック状態まで作動しきらない場合は、前記ハンドルロック制御をキャンセルする請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
本願は、2019年9月30日に出願された日本国特願2019-179012号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクチュエータで作動するロック機構部からロックピンを突出させること、およびアクチュエータの動作指令を無線通信によって行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、アクチュエータの動作を無線通信によって可能としているが、ハンドルロック操作全体でさらなる利便性の向上を図ることが検討されている。
【0005】
本発明の態様は、ハンドルロック操作時の利便性を向上させることができる鞍乗り型車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る一態様の鞍乗り型車両は、操舵輪および操舵ハンドルを支持する懸架装置と、前記懸架装置を転舵可能に支持する車体フレームと、前記車体フレームに対する前記懸架装置の転舵を予め定めたハンドルロック位置でロックするハンドルロック機構と、前記懸架装置にアシストトルクを付与するステアリングアクチュエータと、前記ステアリングアクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め定めたロック待機状態を検知したとき、前記ステアリングアクチュエータを作動させ、前記懸架装置を前記ハンドルロック位置まで転舵させるハンドルロック制御を行う。
(2)上記(1)の態様において、車体を起立状態に支持するスタンドを備えてもよく、前記ロック待機状態は、前記スタンドで車体を支持した状態で、予め定めたハンドルロック要求操作がなされた状態であってもよい。
(3)上記(2)の態様において、前記ハンドルロック要求操作は、車両側に設けたスイッチ、および車両から分離した無線機、の少なくとも一つに対する予め定めたロック操作であってもよい。
(4)上記(2)又は(3)の態様において、前記スタンドは、車体を左右一側に傾斜した起立姿勢で支持するサイドスタンドを含んでもよく、前記懸架装置は、前記サイドスタンド側に転舵して前記ハンドルロック位置に至ってもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項の態様において、前記ハンドルロック機構は、ハンドルロックアクチュエータを含んでもよく、前記制御手段は、前記ハンドルロックアクチュエータが、前記懸架装置を前記ハンドルロック位置まで転舵させた後に自動で、前記懸架装置の転舵をロックしたロック状態まで作動させる前記ハンドルロック制御を行ってもよい。
(6)上記(5)の態様において、前記制御手段は、規定時間内に前記懸架装置がハンドルロック位置まで転舵しきらない場合、あるいは規定時間内に前記ハンドルロックアクチュエータがロック状態まで作動しきらない場合は、前記ハンドルロック制御をキャンセルしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の態様によれば、当該鞍乗り型車両のハンドルロックを行う際、ステアリングアクチュエータが自動で懸架装置をハンドルロック位置まで転舵させるので、懸架装置の転舵操作が省略される。このため、ハンドルロック操作全体が簡略化され、利便性を向上させることができる。
上記(2)の態様によれば、スタンドを用いて車体を起立状態に支持した状態で、懸架装置を自動でハンドルロック位置まで転舵させるので、懸架装置が自動で転舵する際に車体がスタンドで確実に支持される。このため、利便性を向上させることができる。
上記(3)の態様によれば、車両側のスイッチか車両から分離した無線機の少なくとも一つに対するロック操作により、懸架装置の転舵を実行できるので、利便性を向上させることができる。
上記(4)の態様によれば、懸架装置がサイドスタンド側に転舵してハンドルロック位置に至るので、懸架装置を自動で転舵させる際、車体のサイドスタンド側への傾斜姿勢を起こすことはない。このため、懸架装置が自動でハンドルロック位置に転舵する際にも、車体の傾斜姿勢を安定させることができる。
上記(5)の態様によれば、ロック待機状態から懸架装置の転舵とハンドルロックとが自動で実行されるので、より一層利便性を向上させることができる。
上記(6)の態様によれば、懸架装置の転舵からハンドルロックまでの一連の動作を妨げる事象(例えば車両周囲の障害物と懸架装置との干渉等)が生じている場合を考慮し、規定時間を過ぎてもハンドルロックが完了しない場合は、ハンドルロック制御をキャンセルすることで、ハンドルロック装置および車両周囲の保護性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【
図3】上記自動二輪車の操舵アシスト装置の構成図である。
【
図4】上記操舵アシスト装置のふらつき抑制アシストトルク算出ブロックの構成図である。
【
図6】上記自動二輪車のハンドルロックシステムを示す構成図である。
【
図7】上記ハンドルロックシステムのハンドルロック制御時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中心を示す線CL、が示されている。
【0010】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態は、大型のカウリングを備えた自動二輪車(鞍乗り型車両)1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、前輪懸架装置3に支持されている。前輪懸架装置3は、車体フレーム5の前端部に支持されている。車体フレーム5の前端部には、前輪懸架装置3を支持するフロントブロック6が設けられる。フロントブロック6の上部には、前輪転舵用のバーハンドル4が取り付けられている。バーハンドル4は、ライダー(運転者)Jが把持する左右一対のグリップを備えている。
【0011】
フロントブロック6の後方には、左右一対のメインフレーム7が斜め下後方に延びている。左右メインフレーム7の後端部は、それぞれ左右一対のピボットフレーム8の上端部に接続されている。左右メインフレーム7の下方かつ左右ピボットフレーム8の前方には、例えば水平対向六気筒型のエンジンを含むパワーユニットUが搭載されている。
【0012】
左右ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が支持されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。スイングアーム11の前部と車体フレーム5の前後中間部との間には、不図示のリヤクッションが介設されている。
【0013】
左右ピボットフレーム8の後部には、リヤフレーム9の前端部が接続されている。リヤフレーム9の上方には、乗員着座用のシート14が配置されている。シート14の下方には、燃料タンク15が配置されている。シート14の後方には、リヤトランク16が配置されている。リヤトランク16の下方の左右両側には、左右サドルバッグ17がそれぞれ配置されている。左ピボットフレーム8の下端近傍には、車体を左側に傾斜した起立姿勢で支持するサイドスタンド18が格納可能に支持されている。左右ピボットフレーム8の下端近傍には、車体を直立した起立姿勢で支持するメインスタンド19が格納可能に支持されている。
【0014】
自動二輪車1は、前輪2を制動する前輪ブレーキ2Bと、後輪12を制動する後輪ブレーキ12Bと、を備えている。前後ブレーキ2B,12Bは、それぞれ油圧ディスクブレーキである。自動二輪車1は、前後ブレーキ2B,12Bに対する油圧を給排するブレーキアクチュエータ42(
図5参照)を備えている。自動二輪車1は、前後ブレーキ2B,12Bと、ライダーJが操作するブレーキレバーおよびブレーキペダル等のブレーキ操作子と、を電気的に連係させるバイワイヤ式のブレーキシステムを構成している。
【0015】
<前輪懸架装置>
前輪懸架装置3は、ハンドル支持部6aと、ハンドルポスト4aと、ヘッドパイプ3aと、フロントフォーク部材3bと、転舵部材3cと、リンク部材4bと、揺動アーム3dと、クッションユニット3eと、を備える。ハンドル支持部6aは、フロントブロック6の上端部に設けられている。ハンドルポスト4aは、ハンドル支持部6aに回動可能に支持されている。ヘッドパイプ3aは、車体フレーム5とは別体に設けられている。フロントフォーク部材3bは、ヘッドパイプ3aに回動可能に支持されている。転舵部材3cは、フロントフォーク部材3bの上端部に一体回動可能に取り付けられている。リンク部材4bは、転舵部材3cとハンドルポスト4aとを連結している。揺動アーム3dは、フロントブロック6に対してヘッドパイプ3aを揺動可能に連結している。クッションユニット3eは、フロントフォーク部材3bとフロントブロック6との間に介設されている。
【0016】
フロントフォーク部材3bは、左右フォークの下端部に前輪2を支持する。フロントフォーク部材3bの上端部には、ステアリング軸が一体に設けられ、このステアリング軸がヘッドパイプ3aに挿通支持されている。ステアリング軸の上端部は、ヘッドパイプ3aの上方に突出し、この上端部に転舵部材3cが取り付けられている。
【0017】
以下、ハンドル支持部6aに対するハンドルポスト4aの回動中心軸線をハンドル回動軸線C2と称する。また、ヘッドパイプ3aに対するフロントフォーク部材3bの回動中心軸線をステアリング軸線C3と称する。ステアリング軸線C3は、ハンドル回動軸線C2よりも前方にオフセット(離間)している。ステアリング軸線C3とハンドル回動軸線C2とは、車両の1G状態で互いに実質的に平行である。
【0018】
図5は、
図1におけるステアリング軸線C3およびハンドル回動軸線C2に沿う矢印V方向から見た矢視図である。
図5において、リンク部材4bは、転舵部材3c及びハンドルポスト4aと共に平行リンクを形成する。これにより、バーハンドル4の操舵角と前輪2の転舵角とが互いに同一になる。
【0019】
図1を参照し、揺動アーム3dは、前端部がヘッドパイプ3aに上下揺動可能に支持されるとともに、後端部がフロントブロック6に上下揺動可能に支持されている。揺動アーム3dは、上下一対のアーム部材を備えている。揺動アーム3dは、ヘッドパイプ3aを規定の軌跡で上下動可能とする。例えば下アーム部材には、クッションユニット3eの下端部が連結されている。
【0020】
前輪懸架装置は、揺動アーム3dを上方へ揺動させて、フロントフォーク部材3b及びヘッドパイプ3aを上方移動させる。このとき、下アーム部材がクッションユニット3eの下端部を上方移動させて、クッションユニット3eを圧縮させる。
前輪懸架装置は、揺動アーム3dを下方へ揺動させて、フロントフォーク部材3b及びヘッドパイプ3aを下方移動させる。このとき、下アーム部材がクッションユニット3eの下端部を下方移動させて、クッションユニット3eを伸長させる。
【0021】
<制御装置>
図2は、本実施形態における自動二輪車1の制御装置23の構成図である。
自動二輪車1は、各種センサ類21から取得した検知情報に基づき、各種装置類22を作動制御する制御装置23を備えている。制御装置23は、例えば一体または複数体の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)として構成されている。制御装置23は、少なくとも一部がソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御装置23は、エンジン10の運転を制御する燃料噴射制御部、点火制御部およびスロットル制御部を含んでいる。自動二輪車1は、スロットル装置48等のエンジン補機と、ライダーJが操作するアクセルグリップ等のアクセル操作子と、を電気的に連係させるバイワイヤ式のエンジン制御システムを構成している。
【0022】
各種センサ類21は、スロットルセンサ31、車輪速センサ32およびブレーキ圧センサ33の他、車体加速度センサ34、舵角センサ35、操舵トルクセンサ36および車速センサ37を含んでいる。
各種センサ類21は、ライダーJの各種操作入力、ならびに自動二輪車1および乗員の各種状態を検知する。各種センサ類21は、制御装置23に各種の検知情報を出力する。
【0023】
スロットルセンサ31は、スロットルグリップ等のアクセル操作子の操作量(加速要求)を検知する。
ブレーキ圧センサ33は、前記ブレーキ操作子の操作力(減速要求)を検知する。
車体加速度センサ34は、5軸または6軸のIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)であり、車体における3軸(ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸)の角速度および加速度を検知し、さらにその結果から角度を検知する。以下、車体加速度センサ34を車体角速度センサ34ということがある。
舵角センサ35は、例えば操舵軸(ステアリング軸又はハンドル回動軸)に設けられたポテンショメータであり、車体に対する操舵軸の回動角度(操舵角度)を検知する。
【0024】
操舵トルクセンサ36は、例えばフォーク部材3bのステアリング軸(又はハンドルポスト4aの回動軸)に設けられた磁歪式トルクセンサであり、バーハンドル4から入力される捩じりトルク(操舵入力)を検知する。操舵トルクセンサ36は、バーハンドル4(ステアリング操作子)に入力される操舵力を検知する荷重センサの一例である。
【0025】
実施形態の前輪懸架装置3は、バーハンドル4を支持するハンドルポスト4aの回動軸と、前輪2を操向可能とするステアリング軸と、が互いに別体であるが、これに限らない。例えば、一般的な前輪懸架装置のように、ハンドル回動軸と操舵軸(前輪回動軸)とが互いに同一であってもよく、前輪懸架装置が車体フレーム5前端部のヘッドパイプに支持される構成であってもよい。
【0026】
各種装置類22には、エンジン制御手段45、ブレーキアクチュエータ42、ステアリングアクチュエータ43およびハンドルロックアクチュエータ61を含んでいる。
エンジン制御手段45は、燃料噴射装置46、点火装置47およびスロットル装置48等を含んでいる。すなわち、エンジン制御手段45は、エンジン10を駆動させるエンジン補機を含んでいる。
【0027】
ブレーキアクチュエータ42は、ブレーキ操作子への操作に応じて前後ブレーキ2B12Bに油圧を供給してこれらを作動させる。ブレーキアクチュエータ42は、ABS(Anti-lock Brake System)の制御ユニットを兼ねている。
【0028】
ステアリングアクチュエータ43は、バーハンドル4からフォーク部材3bまでの操舵機構に操舵トルクを出力する。ステアリングアクチュエータ43は、操舵トルクセンサ36の検知情報に応じて、自身の駆動源である電気モータを作動させ、操舵機構にアシストトルクを付与する。ステアリングアクチュエータ43は、前記電気モータの作動を電気的に制御するST-ECUを含んでいる。
【0029】
図5を参照し、ステアリングアクチュエータ43は、ハンドル支持部6aの左側方に配置されて車体フレーム5に取り付けられている。ステアリングアクチュエータ43は、前記電気モータの駆動軸43aをハンドル回動軸と平行にして配置されている。駆動軸43aには、揺動アーム43bが一体回動可能に取り付けられている。揺動アーム43bは、ハンドルポスト4aのアクチュエータ連結部4a1と連結ロッド43cを介して連結されている。これにより、前記電気モータの駆動力(トルク)がハンドルポスト4aに伝達可能であり、もって前輪2の操舵がアシストされる。
ハンドルロックアクチュエータ61は、後述するハンドルロック機構60の一部をなし、規定の制御により作動してバーハンドル4および前輪懸架装置3の転舵を規制する。
【0030】
<操舵アシスト制御>
図1を参照し、車体加速度センサ34は、自動二輪車1の車体(例えば車体フレーム5)に支持されている。例えば、車体加速度センサ34は、側面視で後輪12の接地点Gpとヘッドパイプ3aの略中央部とを結ぶ線分Lの近傍に配置されている。車体加速度センサ34は、自動二輪車1のヨー方向の角速度Yとロール方向の角速度Rとを検知する。以下、ヨー方向の角速度YをヨーレートYということがある。なお、実施形態の車体とは、車体フレーム5のみならず、車体フレーム5と一体的にローリング、ピッチングおよびヨーイングといった挙動をなす構成を含む。
【0031】
自動二輪車1の低速時には、バーハンドル4の操作による転舵(ヨー)が発生してから車体のバンク(ロール)が発生する特性を有する。つまり、自動二輪車1の低速時には、ヨーが先行して発生するので、ヨー角速度Yを多く検知することが好ましい。一方、自動二輪車1の高速時には、車体のバンク(ロール)が発生してから転舵(ヨー)が発生する特性を有する。つまり、自動二輪車1の高速時には、ロールが先行して発生するので、ロール角速度Rを多く検知することが好ましい。この特性を自動二輪車1の転舵特性と称する。
【0032】
図4を参照し、制御装置23は、車体加速度センサ34が検知したヨー角速度Y及びロール角速度Rを合成し、合成角速度Sを生成する。制御装置23は、検知された車速Vに応じて、車体加速度センサ34が検知したヨー角速度Y及びロール角速度Rの重み付けを以下のように変えて合成する。つまり、上記した自動二輪車1の転舵特性から、車速Vが低いときにはヨー角速度Yの重み付けをロール角速度Rより大きくして合成し、車速Vが高いときにはロール角速度Rの重み付けをヨー角速度Yより大きくして合成する。
【0033】
合成角速度Sの生成は、例えば、次の(1)式に示すように、ヨー角速度Yに第1調整値AD1を乗算した値(Y×AD1)と、ロール角速度Rに第2調整値AD2を乗算した値(R×AD2)と、を加算することで、合成角速度Sを生成してもよい。
S=Y×AD1+R×AD2…(1)
【0034】
この場合、第1調整値AD1は、低速側で大きく高速側で小さくなるように設定され、第2調整値AD2は、低速側で小さく高速側で大きくなるように設定される。
【0035】
図3は、操舵アシスト装置50の構成図である。
操舵アシスト装置50は、操舵トルクセンサ36、車速センサ37、車体角速度センサ34、制御装置23およびステアリングアクチュエータ43を備えている。
【0036】
車速センサ37は、例えば自動二輪車1のパワーユニットUの出力軸の回転速度を検知し、この回転速度から後輪12の回転速度ひいては自動二輪車1の車速を検知する。なお、ABSおよびTCS(Traction Control System)の少なくとも一方から車輪速情報を得て車速を検知してもよい。
【0037】
制御装置23は、パワーアシストトルク算出ブロック00、およびふらつき抑制アシストトルク算出ブロック300を備えている。各ブロック00、300は、単独に動作することが可能であり、全体として動作することも可能である。
【0038】
パワーアシストトルク算出ブロック00は、車速Vと操舵トルクTsとに基づき、バーハンドル4に付与するパワーアシストトルクTpを算出する。車速Vは、車速センサ37の検知情報すなわち駆動輪(後輪12)の回転速度から算出される。操舵トルクTsは、運転者によるバーハンドル4への入力トルクに相当し、操舵トルクセンサ36の検知情報から算出される。パワーアシストトルクTpは、運転者のバーハンドル4の操舵を軽減するためのトルクである。
【0039】
ふらつき抑制アシストトルク算出ブロック300は、車速Vとヨー角速度Yおよびロール角速度Rとに基づき、バーハンドル4に付与するふらつき抑制アシストトルクTwを算出する。ヨー角速度Yおよびロール角速度Rは、車体角速度センサ34の検知情報から算出される。ふらつき抑制アシストトルクTwは、自動二輪車1のふらつきを抑制するためのトルクである。例えば、ふらつき抑制アシストトルクTwは、自動二輪車1が左に傾いた場合は、バーハンドル4および前輪2を左に切る方向に作用する。ふらつき抑制アシストトルクTwは、自動二輪車1が右に傾いた場合は、バーハンドル4および前輪2を右に切る方向に作用する。
【0040】
制御装置23は、加算器224及びモータ駆動部226を備えている。
加算器224は、次の(2)式に示すように、パワーアシストトルクTpと、ふらつき抑制アシストトルクTwと、を加算し、アシストトルクTmを生成する。加算器224は、生成したアシストトルクTmをモータ駆動部226に出力する。
Tm=Tp+Tw…(2)
【0041】
モータ駆動部226は、アシストトルクTmをトルク電流に変換し、ステアリングアクチュエータ43の電動モータに供給する。電動モータは、トルク電流が供給されている間に駆動し、トルク電流に応じた駆動力を発生する。電動モータの駆動力は、連結ロッド43c等を介してハンドルポスト4aに伝達され、バーハンドル4および前輪2の回動をアシストする。すなわち、バーハンドル4および前輪2に対し、アシストトルクTmに応じた駆動力(補助力)が付与される。
【0042】
図4を参照し、ふらつき抑制アシストトルク算出ブロック300は、合成角速度生成部302と、乗算器304と、第1車速補正係数生成部306と、第2車速補正係数生成部308と、乗算器310と、加算器312と、除算器314と、乗算器316と、を備えている。
合成角速度生成部302は、車体角速度センサ34が検知したヨー角速度Y及びロール角速度Rを合成して、自動二輪車1の挙動を示す合成角速度(車体挙動レート)Sを生成する。
乗算器304は、合成角速度Sと合成角速度Sとを乗算して合成角速度Sの二乗を生成する。
【0043】
第1車速補正係数生成部306は、車速Vに基づきふらつきを抑制する第1車速補正係数Fを生成する。
第2車速補正係数生成部308は、車速Vに基づきふらつきを抑制する第2車速補正係数Gを生成する。
乗算器310は、第2車速補正係数Gと合成角速度Sの二乗とを乗算する。
加算器312は、乗算器310が出力した値(G×S2)と定数αとを加算する。
除算器314は、第1車速補正係数Fを加算器312が出力した値(G×S2+α)で除算する。
【0044】
乗算器316は、除算器314が出力した値(F/(G×S2+α))に合成角速度Sを乗算する。すなわち、乗算器316は、次の(3)式に示すふらつき抑制アシストトルクTwを出力する。
Tw=F×S/(G×S2+α)…(3)
【0045】
自動二輪車1がふらついている場合(運転者の意図しない傾きが発生している場合)、合成角速度Sは相対的に小さい値となる。自動二輪車1が運転者の体重移動の操作により傾いている場合、合成角速度Sは相対的に大きい値となる。これらの場合に対し、ふらつき抑制アシストトルクTwを(3)式によって算出することで、以下の効果を得る。すなわち、合成角速度Sが大きい時には、ふらつき抑制アシストトルクTwを小さくすることができる。従って、運転者の体重移動による操作の邪魔をしないよう、ふらつき抑制アシストトルクTwを設定し、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0046】
合成角速度生成部302は、前述したように、低速側ではヨー角速度Yの重み付けを大きくロール角速度Rの重み付けを小さくしてこれらを合成(加算)する。また、合成角速度生成部302は、高速側ではヨー角速度Yの重み付けを小さくロール角速度Rの重み付けを大きくしてこれらを合成(加算)する。自動二輪車1の転舵特性を鑑みると、低速時にはヨー角速度Yを多く検知し、高速時にはロール角速度Rを多く検知することが、自動二輪車1の挙動を高精度に検知する点で好ましい。
【0047】
そして、自動二輪車1の挙動が大きい場合は、運転者の体重操作によるものと判断してアシストトルクTwを小さくし、自動二輪車1の挙動が小さい場合は、運転者の体重操作ではなく車体のふらつきであると判断してアシストトルクTwを大きくする。
このように、自動二輪車1が低速時及び高速時のどちらにあっても、運転者の操作に対して違和感のないふらつき抑制アシストを行うことができる。
【0048】
<ハンドルロックシステム>
図6は、本実施形態における自動二輪車1のハンドルロックシステム60Aの構成図である。
ハンドルロックシステム60Aは、ハンドルロック機構60と、ステアリングアクチュエータ43と、制御装置23と、を備えている。
【0049】
ハンドルロック機構60は、車体フレーム5に対する前輪懸架装置3(バーハンドル4を含む)の転舵を、予め定めたハンドルロック位置P1でロックする。実施形態のハンドルロック位置P1は、前輪懸架装置3およびバーハンドル4のフル転舵位置である。フル転舵位置とは、実質的に、前輪懸架装置3およびバーハンドル4が左右何れかに回動しきった位置である。実施形態のハンドルロック位置P1は、前輪懸架装置3およびバーハンドル4の左側(サイドスタンド18側)へのフル転舵位置であるが、右側へのフル転舵位置とすることも有り得る。
【0050】
ハンドルロック機構60は、車体フレーム5に支持されるハンドルロックアクチュエータ61と、前輪懸架装置3におけるバーハンドル4と一体に回動する部材に設けられる転舵側係合部4dと、を備えている。
ハンドルロックアクチュエータ61は、車体フレーム5のハンドル支持部6aに支持、固定されている。ハンドルロックアクチュエータ61は、例えばソレノイドで作動する電動式であり、車体側係合部であるロックピン61aを転舵側係合部4dに対して出没させる。
【0051】
転舵側係合部4dは、例えばハンドル支持部6a内に挿通されるハンドル回動軸4cに設けられている。転舵側係合部4dは、ロックピン61aを挿脱させる係合孔4d1を有している。ロックピン61aは、ハンドル支持部6aの後部を貫通して係合孔4d1に至っている。ハンドル回動軸4cは、ハンドルポスト4aと一体に回動する。
係る構成において、ロックピン61aが突出して係合孔4d1に挿入されると、ハンドル支持部6aに対するハンドル回動軸4cの回動が規制される。これにより前輪懸架装置3およびバーハンドル4の転舵が規制される。
【0052】
図6において、ハンドルロックアクチュエータ61は、ハンドル支持部6aの後方に配置され、ロックピン61aを前後方向に出没させる。ロックピン61aは、ハンドル支持部6a内のハンドル回動軸4cに対して係脱される。しかし、ハンドルロック機構60の構成は
図6の構成に限らない。例えば、ハンドルロックアクチュエータ61は、ハンドル支持部6aの前方に配置されてもよい。また、ハンドルロックアクチュエータ61は、ロックピン61aを上下方向に出没させてもよい。このとき、ロックピン61aは、ハンドルポスト4aのトップブリッジ部分に設けた転舵側係合部に係合してもよい。
【0053】
制御装置23は、規定のロック待機状態を検知したとき、ステアリングアクチュエータ43を作動させ、前輪懸架装置3およびバーハンドル4をハンドルロック位置P1まで転舵させる。制御装置23には、
図2に示すセンサ類および装置類から各種信号が入力される他、自動二輪車1の主電源スイッチであるメインスイッチ30からのオンオフ信号、およびサイドスタンド18に設けられるスタンドスイッチ18aからのオンオフ信号、が入力される。
【0054】
ここで、実施形態のハンドルロックアクチュエータ61は、スマートキーシステムに含まれている。
スマートキーシステムは、自動二輪車1の車体に搭載されたスマートコントロールユニット(ECU)62と、スマートコントロールユニット62に接続された送受信機(アンテナ)63と、運転者が携帯するスマートキー(無線機)64と、を備えている。スマートキー64は、送受信機63を介してスマートコントロールユニット62と双方向通信を行い、スマートキー64のID認証を行う。スマートキー64のID認証がなされると、エンジン始動や車両各部の解錠が可能となる。
【0055】
例えば、メインスイッチ30のオン操作は、スマートキー64のID認証によって可能又は有効になる(解錠状態)。スマートキー64がスマートコントロールユニット62から離れる等によりスマートキー64とスマートコントロールユニット62との通信が無くなると不能又は無効になる(施錠状態)。スマートキー64のID認証によって解錠、施錠がなされる装備には、例えばハンドルロック、シートの開閉、物品収納部や給油口の開閉、等がある。スマートキーシステムは、各種装置の施錠および解錠を行った際、例えばハザードランプを点滅させる等の視覚的なサイン、および電子音を鳴らす等の聴覚的なサイン、の少なくとも一方を実行する(アンサーバック)。
【0056】
前記ロック待機状態とは、サイドスタンド18で自動二輪車1の車体を左側に傾斜した起立姿勢で支持した状態で、かつ規定のハンドルロック要求操作がなされた状態が挙げられる。前記ハンドルロック要求操作とは、車両側に設けたメインスイッチ30、および車両から分離したリモートキーの少なくとも一方に対する規定の操作が挙げられる。前記規定の操作とは、メインスイッチ30およびスマートキー64における操作子の規定時間以上のオーバーストロークや長押し、あるいは規定の回数や規則の複数回操作等が挙げられる。自動二輪車1の停車状態と上記したハンドルロック要求操作とを組み合わせることで、意図せずステアリングアクチュエータ43が作動することを抑止する。
【0057】
なお、前記ロック待機状態が、メインスタンド19で自動二輪車1の車体を直立した起立姿勢で支持した状態としてもよい。この場合、ハンドルロック位置は、前輪懸架装置3の右側へのフル転舵位置としてもよい。
【0058】
次に、ハンドルロックシステム60Aのハンドルロック制御時の処理を
図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1で、自動二輪車1が前記ロック待機状態にあるか否かを判定する。 自動二輪車1が前記ロック待機状態にある場合(ステップS1でYES)、次に、サイドスタンド18が起立状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。
サイドスタンド18が起立状態にある場合(ステップS2でYES)、次に、前記ハンドルロック要求操作がなされたか否かを判定する(ステップS3)。
【0059】
前記ハンドルロック要求操作がなされた場合(ステップS3でYES)、ステアリングアクチュエータ43を作動させ、前輪懸架装置3の転舵を開始する(ステップS4)。
ステップS1~S3の判定は、例えば制御装置23においてなされる。ステップS1でNO(自動二輪車1が前記ロック待機状態にない)、ステップS2でNO(サイドスタンド18が起立状態にない)、ステップS3でNO(前記ハンドルロック要求操作がなされない)の場合、一旦処理を終了する。
【0060】
その後、前輪懸架装置3がサイドスタンド18側のフル転舵位置(ハンドルロック位置P1)まで転舵したか否かを判定する(ステップS5)。前輪懸架装置3がフル転舵位置まで転舵した場合(ステップS5でYES)、ハンドルロックアクチュエータ61を作動させ、ロックピン61aを転舵側係合部4dに向けて突出させる(ステップS6)。
その後、ロックピン61aが突出しきったハンドルロック状態になったか否かを判定する(ステップS7)。ハンドルロック状態になった場合(ステップS7でYES)、ハンドルロック制御の処理を終了する。
【0061】
ステップS5,S7の判定は、例えば制御装置23またはスマートコントロールユニット62においてなされる。ステップS5でNO(前輪懸架装置3がフル転舵位置まで転舵していない)の場合、転舵開始から予め定めた時間t1が経過したか否かを判定する(ステップS51)。時間t1が経過している場合(ステップS51でYES)、転舵動作をキャンセルし(S52)、処理を終了する。ステップS51でNO(時間t1が経過していない)の場合、ステップS5に戻る。
【0062】
ステップS7でNO(ハンドルロック状態になっていない)の場合、ロックピン61aの突出開始から予め定めた時間t2が経過したか否かを判定する(ステップS71)。時間t2が経過している場合(ステップS71でYES)、ハンドルロック動作(ピン突出動作)をキャンセルし(S72)、処理を終了する。ステップS71でNO(時間t2が経過していない)の場合、ステップS7に戻る。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1は、操舵輪(前輪2)および操舵ハンドル(バーハンドル4)を支持する前輪懸架装置3と、前輪懸架装置3を転舵可能に支持する車体フレーム5と、車体フレーム5に対する前輪懸架装置3の転舵を予め定めたハンドルロック位置P1でロックするハンドルロック機構60と、前輪懸架装置3にアシストトルクTmを付与するステアリングアクチュエータ43と、ステアリングアクチュエータ43を駆動制御する制御装置23と、を備える鞍乗り型車両である。制御装置23は、予め定めたロック待機状態を検知したとき、ステアリングアクチュエータ43を作動させ、前輪懸架装置3をハンドルロック位置P1まで転舵させる。
この構成によれば、当該自動二輪車1のハンドルロックを行う際、ステアリングアクチュエータ43が自動で前輪懸架装置3をハンドルロック位置P1まで転舵させるので、前輪懸架装置3の転舵操作が省略される。このため、ハンドルロック操作全体が簡略化され、利便性を向上させることができる。
【0064】
また、自動二輪車1は、車体を起立状態に支持するスタンド18,19を備え、前記ロック待機状態は、スタンド18,19で車体を支持した状態で、予め定めたハンドルロック要求操作がなされた状態である。
この構成によれば、スタンド18,19を用いて車体を起立状態に支持した状態で、前輪懸架装置3を自動でハンドルロック位置P1まで転舵させるので、前輪懸架装置3が自動で転舵する際に車体がスタンド18,19で確実に支持される。このため、利便性を向上させることができる。
【0065】
また、自動二輪車1は、前記ハンドルロック要求操作は、車両側に設けたメインスイッチ30、および車両から分離したスマートキー64、の少なくとも一つに対する予め定めたロック操作である。
この構成によれば、車両側のメインスイッチ30か車両から分離したスマートキー64の少なくとも一つに対するロック操作により、前輪懸架装置3の転舵を実行できるので、利便性を向上させることができる。
【0066】
また、自動二輪車1は、前記スタンド18,19は、車体を左右一側に傾斜した起立姿勢で支持するサイドスタンド18を含み、前輪懸架装置3は、サイドスタンド18側に転舵してハンドルロック位置P1に至る。
この構成によれば、前輪懸架装置3がサイドスタンド18側に転舵してハンドルロック位置P1に至るので、前輪懸架装置3を自動で転舵させる際、車体のサイドスタンド18側への傾斜姿勢を起こすことはない。このため、前輪懸架装置3が自動でサイドスタンド18側に転舵する際にも、車体の傾斜姿勢を安定させることができる。
【0067】
また、自動二輪車1は、ハンドルロック機構60は、ハンドルロックアクチュエータ61を含み、ハンドルロックアクチュエータ61は、前輪懸架装置3をハンドルロック位置P1まで転舵させた後に自動で、前輪懸架装置3の転舵をロックしたロック状態まで作動する。換言すれば、制御装置23は、ハンドルロックアクチュエータ61が、懸架装置3をハンドルロック位置P1まで転舵させた後に自動で、懸架装置3の転舵をロックしたロック状態まで作動させるハンドルロック制御を行う。
この構成によれば、ロック待機状態から前輪懸架装置3の転舵とハンドルロックとが自動で実行されるので、より一層利便性を向上させることができる。
【0068】
また、自動二輪車1(の制御装置23)は、規定時間t1内に前輪懸架装置3がハンドルロック位置P1まで転舵しきらない場合、あるいは規定時間t2内にハンドルロックアクチュエータ61がロック状態まで作動しきらない場合は、ハンドルロック制御をキャンセルする。
この構成によれば、前輪懸架装置3の転舵からハンドルロックまでの一連の動作を妨げる事象(例えば車両周囲の障害物と懸架装置との干渉等)が生じている場合を考慮し、規定時間を過ぎてもハンドルロックが完了しない場合は、ハンドルロック制御をキャンセルすることで、ハンドルロック装置および車両周囲の保護性を高めることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、リンク式の前輪懸架装置3を備える車両を例示したがこれに限らない。例えば、前輪懸架装置に周知のテレスコピック式フロントフォークを備える車両であってもよい。
スマートキーシステムを有さない車両に適用してもよい。さらに、ハンドルロックアクチュエータを有さない車両に適用してもよい。この場合、懸架装置のフル転舵のみステアリングアクチュエータにより自動で行う構成でもよい。
自動二輪車は、運転者が車体を跨いで乗車する車両に限らず、ステップフロアを有するスクータ型車両や原動機付自転車を含む。また、自動二輪車に限らず、前輪および前輪懸架装置を、車体フレーム5とともに傾斜させて旋回する、鞍乗り型車両への適用も可能である。
【0070】
鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車し、かつ車体をロールさせてバランスをとる車両全般が含まれる。また、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。また、ステップフロアを有するスクータ型車両や原動機付自転車も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 前輪(操舵輪)
3 前輪懸架装置(懸架装置)
5 車体フレーム
18 サイドスタンド(スタンド)
19 メインスタンド(スタンド)
23 制御装置(制御手段)
30 メインスイッチ(スイッチ)
43 ステアリングアクチュエータ
50 操舵アシスト装置
60A ハンドルロックシステム
60 ハンドルロック機構
61 ハンドルロックアクチュエータ
64 スマートキー(無線機)
Tm アシストトルク
P1 ハンドルロック位置
t1,t2 規定時間