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  • 特許-フェノール樹脂発泡体積層板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体積層板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/42 20060101AFI20221209BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221209BHJP
   C08J 9/14 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B32B27/42 101
B32B5/18
C08J9/14 CEZ
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021575886
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004337
(87)【国際公開番号】W WO2021157698
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020019158
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020089399
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】三堀 寿
(72)【発明者】
【氏名】宮田 成実
(72)【発明者】
【氏名】平松 信希
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/002097(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/036049(WO,A1)
【文献】特表2014-504675(JP,A)
【文献】特表2014-530939(JP,A)
【文献】特開2018-095869(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152155(WO,A1)
【文献】特開2019-072922(JP,A)
【文献】特開2015-105343(JP,A)
【文献】特開2021-038313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C08J9/00-9/42、
C08G4/00-16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂発泡体の一面および当該一面の裏面の少なくとも一方に可撓性の表面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体は、HCFO-1224yd(Z)を含有し、密度が20kg/m以上55kg/m以下、独立気泡率が80%以上、平均気泡径が60μm以上200μm以下、前記表面材からの浸み出し面積割合が30%以下であり、かつ、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10-3あたり、HCFO-1224yd(Z)の含有量が0.06mol以上0.35mol以下である、フェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項2】
炭素数6以下の脂肪族炭化水素および炭素数5以下の塩素化飽和炭化水素から選ばれるガス成分を少なくとも1つ含んでいる、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項3】
前記表面材が、不織布、織布、および紙類の何れかからなる、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項4】
45°角度での表面材剥離強度が1,000g以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項5】
23℃環境下における熱伝導率が0.0185W/m・K以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年2月6日に日本国に特許出願された特願2020-19158及び2020年5月22日に日本国に特許出願された特願2020-89399の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、フェノール樹脂発泡体積層板に関し、さらに詳しくは、表面材からの浸み出し汚れが少ないフェノール樹脂発泡体積層板に関するものである。
【背景技術】
【0003】
レゾール型フェノール樹脂を原料とした酸硬化型フェノール樹脂発泡体は、燃え難く、煙の発生が少なく、しかも断熱性も良好なことから、従前より、例えば金属サイディング等の外壁材、間仕切りパネル等の内壁材の他、天井材、防火扉、および雨戸等の建材に使用されている。また、酸硬化型フェノール樹脂発泡体は、建材用や工業プラント用の保冷・保温材としても広く使用されている。
【0004】
ここで、フェノール樹脂発泡体の製造時に使用する発泡剤としては、環境問題および建築物の断熱需要の高まりの観点から、近年、より一層の高断熱化が求められており、発泡剤としてとりわけ低い熱伝導率を有する、HCFO-1224yd(Z)(化学名:(Z)-1-Chloro-2,3,3,3-Tetrafluoropropene)をフェノール樹脂発泡体積層板に適用する技術が求められている。
【0005】
HCFO-1224yd(Z)を用いた技術としては、特許文献1および2に記載された技術が知られている。特許文献1には、フェノール樹脂発泡体に対し、HCFO-1224yd(Z)および他の発泡剤との組み合わせを使用できることが開示されている。
【0006】
特許文献2には、同じ熱硬化性樹脂発泡体であるウレタン樹脂発泡体において、HCFO-1224yd(Z)を使用することで熱伝導率が低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2019/036049号公報
【文献】2015-105343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2に記載のフェノール樹脂発泡体は、HCFO-1224yd(Z)の特性に起因する、発泡性樹脂組成物からの放散、および、可塑化による粘度低下、を同時に抑制することができず、断熱性能は低下し、発泡性樹脂組成物の表面材への浸み出しを抑制することができなかった。
【0009】
その詳細について、以下に説明する。HCFO-1224yd(Z)は、HCFOの中でも熱伝導率が小さいため、発泡剤中のHCFO-1224yd(Z)の成分比、特にフェノール樹脂発泡体中に充填されるHCFO-1224yd(Z)のモル量は断熱性能に影響する。一方で、HCFOの中ではHCFO-1224yd(Z)は沸点が低いため、表面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物は硬化する前に放散し易く、フェノール樹脂発泡体中に充填されるHCFO-1224yd(Z)のモル量が低下し易く、その結果、HCFO-1224yd(Z)の低熱伝導率を十分に生かし難いという問題を有していた。また、HCFO-1224yd(Z)は脂肪族炭化水素等に比べて、フェノール樹脂への溶解性が高いため、発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低下し易く、その結果、表面材から浸み出し易くなり、フェノール樹脂発泡体積層板の表面の外観不良が起こり易かった。すなわち、低熱伝導率化と表面材への浸み出し抑制との両立化が困難であった。
【0010】
そこで、HCFO-1224yd(z)を用いて、熱伝導率を低減しながら、さらには、表面材からの浸み出しを抑制した外観良好なフェノール樹脂発泡体積層板が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、フェノール樹脂発泡体積層板を製造する際に、沸点の低い発泡剤であるHCFO-1224yd(Z)の放散を抑制しつつフェノール樹脂組成物中に必要量を充填させることと合わせて、表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しを低減させる方法を見出し、前記課題を解決するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]~[5]を提供する。
【0013】
[1]フェノール樹脂発泡体の一面および当該一面の裏面の少なくとも一方に可撓性の表面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体は、HCFO-1224yd(Z)を含有し、密度が20kg/m以上55kg/m以下、独立気泡率が80%以上、平均気泡径が60μm以上200μm以下、前記表面材からの浸み出し面積割合が30%以下であり、かつ、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10-3あたり、HCFO-1224yd(Z)の含有量が0.06mol以上0.35mol以下である、フェノール樹脂発泡体積層板。
[2]炭素数6以下の脂肪族炭化水素および炭素数5以下の塩素化飽和炭化水素から選ばれるガス成分を少なくとも1つ含んでいる、[1]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
[3]前記表面材が、不織布、織布、および紙類の何れかからなる、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
[4]45°角度での表面材剥離強度が1,000g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
[5]23℃環境下における熱伝導率が0.0185W/m・K以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い断熱性能を有し、表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しが少ない、外観良好な高性能のフェノール樹脂発泡体積層板を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】45°角度での表面材剥離強度の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に則して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
<フェノール樹脂発泡体積層板>
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体積層板(以下、「発泡体積層板」という場合がある。)は、硬化反応によって形成されたフェノール樹脂硬化体中に、多数の気泡が分散した状態で存在するフェノール樹脂発泡体と、当該フェノール樹脂発泡体の一面および当該一面の裏面の少なくとも一方に表面材とを備える積層体である。なお、本実施形態の発泡体積層板は、表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しが少なく、上下の表面材を剥離することが可能であることから、表面材を剥離してなる母材の状態で、難燃性および断熱性に優れる建材などとして使用することもできる。なお、本実施形態における「厚み方向」とは、発泡体積層板の三辺のうち最も短い辺の寸法を指し、通常、発泡体積層板の製造時に下表面材上の発泡性フェノール樹脂組成物が発泡して成長する方向である。
【0018】
また、フェノール樹脂発泡体積層板は、これを単体で使用する他、外部部材と接合させて様々な用途に用いられている。外部部材の例としては、ボード状材料およびシート状・フィルム状材料の1およびその組み合わせがある。ボード状材料としては、普通合板、構造用合板、パーティクルボード、およびOSBなどの木質系ボード、木毛セメント板、木片セメント板、石膏ボード、フレキシブルボード、ミディアムデンシティファイバーボード、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板、ならびに火山性ガラス質複層板などが好適である。また、シート状・フィルム状材料としては、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、無機質充填ガラス繊維不織布、ガラス繊維不織布、紙、炭酸カルシウム紙、ポリエチレン加工紙、ポリエチレンフィルム、プラスチック系防湿フィルム、アスファルト防水紙、およびアルミニウム箔(孔あり・孔なし)などが好適である。
【0019】
<フェノール樹脂発泡体>
本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の密度は、20kg/m以上55kg/m以下であり、好ましくは22kg/m以上50kg/m以下であり、より好ましくは24kg/m以上45kg/m以下であり、さらに好ましくは26kg/m以上40kg/m以下であり、最も好ましくは、26kg/m以上36kg/m以下である。密度が20kg/m以上であると圧縮強度、および曲げ強さ等の機械的強度が確保でき、発泡体の取り扱い時に破損が起こることを回避することができる。一方、密度が55kg/m以下であると、樹脂部の伝熱が増大しにくいため、断熱性能を保つことができる。なお、フェノール樹脂発泡体の密度はフェノール樹脂発泡体への発泡剤の充填割合を調整すればよく、主に、フェノール樹脂発泡体への発泡剤の仕込み割合、発泡性フェノール樹脂組成物の温度、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下表面材上に吐出する工程における予成形のタイミング、さらには、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、温度や滞留時間等の硬化条件などの変更により所望の値に調整できる。
【0020】
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上である。独立気泡率が80%以上であると、フェノール樹脂発泡体中の発泡剤が空気と置換することに伴う、長期の断熱性能の低下を抑制することができる。なお、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、例えば、発泡核剤の添加量、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比などの変更により所望の値に調整できる。
【0021】
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、60μm以上200μm以下であり、好ましくは65μm以上180μm以下であり、より好ましくは70μm以上155μm以下であり、最も好ましくは75μm以上130μm以下である。平均気泡径が60μm以上であると、発泡体の密度が高くなることを抑制できる。この結果、発泡体における樹脂部の伝熱割合を低減できるため、フェノール樹脂発泡体の断熱性能を確保することができる。また、逆に平均気泡径が200μm以下であると、輻射による熱伝導率の増加を抑制し、発泡体の高い断熱性能を維持することができる。なお、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、例えば、固体発泡核剤の添加量、発泡性フェノール樹脂組成物の温度、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下表面材上に吐出する工程における予成形のタイミング、さらには、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、および温度や滞留時間等の硬化条件などの変更により所望の値に調整できる。
【0022】
フェノール樹脂発泡体積層板の23℃環境下で測定される熱伝導率は、好ましくは0.185W/m・K以下、より好ましくは0.0182W/m・K以下であり、さらに好ましくは0.0178W/m・K以下であり、特に好ましくは0.0174W/m・K以下であり、最も好ましくは0.0170W/m・K以下である。
【0023】
そして、フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体は、HCFO-1224yd(Z)を含有し、例えば、フェノール樹脂と、界面活性剤と、HCFO-1224yd(Z)を含有する発泡剤と、固体発泡核剤と、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物から製造される。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、任意に、上記以外の成分、例えばフタル酸系化合物等を含有していてもよい。
【0024】
フェノール樹脂としては、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物によって合成するレゾール型フェノール樹脂を用いる。レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを原料としてアルカリ触媒により40~100℃の温度範囲で加熱して合成する。また、必要に応じてレゾール型フェノール樹脂の合成時、もしくは合成後に、尿素等の添加剤を添加してもよい。尿素を添加する場合は予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をレゾール型フェノール樹脂に混合することがより好ましい。合成後のレゾール型フェノール樹脂は、通常過剰な水分を含んでいるので、発泡に際し、発泡に適した水分量に調整する。また、フェノール樹脂には、脂肪族炭化水素または高沸点の脂環式炭化水素、或いは、それらの混合物や、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等の粘度調整用の希釈剤、ならびにその他必要に応じて添加剤を添加することもできる。
【0025】
フェノール樹脂の合成時のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は好ましくは1:1から1:4.5の範囲内であり、より好ましくは1:1.5から1:2.5の範囲内である。
【0026】
ここで、本実施形態においてフェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類は、フェノール自体、および他のフェノール類であり、他のフェノール類の例としては、レゾルシノール、カテコール、o-、m-およびp-クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、ならびにp-tertブチルフェノール等が挙げられる。また、2核フェノール類も使用できる。
【0027】
また、アルデヒド類は、アルデヒド源となり得る化合物であればよく、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド自体、解重合させて利用できるパラホルムアルデヒド、および他のアルデヒド類やその誘導体を用いることが好ましい。他のアルデヒド類の例としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、およびベンズアルデヒド等が挙げられる。なお、フェノール樹脂には、添加剤として尿素、ならびにジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。本明細書において、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは添加剤を加えた後のものを指す。そして、本明細書では、「フェノール樹脂」に対して界面活性剤を添加したものを「フェノール樹脂組成物」と称し、「フェノール樹脂組成物」に対して発泡剤、固体発泡核剤および酸性硬化剤を添加して発泡性および硬化性を付与したものを「発泡性フェノール樹脂組成物」と称する。また、フェノール樹脂発泡体形成後の樹脂部分を「フェノール樹脂硬化体」と称する。
【0028】
フェノール樹脂の質量平均分子量は、900以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,150以上であることがさらに好ましく、1,300以上であることが最も好ましい。また該質量平均分子量は、2,500以下であることが好ましく、2,200以下であることがより好ましく、2,050以下であることがさらに好ましく、1,900以下であることが最も好ましい。フェノール樹脂の質量平均分子量が900以上であると、発泡性フェノール樹脂組成物の内部発熱による温度上昇を抑制し、HCFO-1224yd(Z)成分の放散を抑制し易くなる。一方、フェノール樹脂の質量平均分子量が2,500以下であると、発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しを抑制し易くなる。なお、フェノール樹脂の質量平均分子量は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0029】
フェノール樹脂およびフェノール樹脂組成物の40℃における粘度は、好ましくは5,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であり、より好ましくは7,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは9,000mPa・s以上40,000mPa・s以下である。また、フェノール樹脂およびフェノール樹脂組成物の水分量は1.5質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0030】
発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる界面活性剤、発泡剤および固体発泡核剤は、フェノール樹脂に予め添加しておいてもよいし、酸性硬化剤と同時に添加してもよい。
【0031】
界面活性剤としては、フェノール樹脂発泡体の製造に一般に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油との縮合物や、アルキレンオキサイドと、ノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合生成物や、アルキルエーテル部分の炭素数が14~22のポリオキシエチレンアルキルエーテルや、さらにはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類や、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物や、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量については特に制限はないが、フェノール樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下の範囲で好ましく使用される。
【0032】
発泡剤は、構成成分として、HCFO-1224yd(Z)を含有する。さらに、発泡剤は、HCFO-1224yd(Z)以外の発泡剤の構成成分として、炭素数6以下の脂肪族炭化水素、および炭素数5以下の塩素化飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0033】
炭素数6以下の脂肪族炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができる。例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、およびネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0034】
炭素数5以下の塩素化飽和炭化水素としては、炭素数が2~5の直鎖状または分岐状のものを用いることができる。結合している塩素原子の数は、限定されるものではないが、1~4が好ましく、塩素化脂肪族炭化水素としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、およびイソペンチルクロリドなどが挙げられる。これらのうち、クロロプロパンであるプロピルクロリドおよびイソプロピルクロリドがより好ましく用いられる。
【0035】
また、発泡剤は、HCFO-1224yd(Z)以外のハイドロフルオロオレフィン(塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの少なくともいずれか)を含んでいてもよい。
【0036】
HCFO-1224yd(Z)以外の塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd、例えば、E体(HCFO-1233zd(E))である、ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice(商標)LBA)、1,1,2-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1213xa)、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd)、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223za)、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224zb)、2,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン(HCFO-1231xf)、2,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン(HCFO-1232xf)、2-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、1-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yb)、3-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)、3-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yf)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)、および1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)などが挙げられ、これらの立体配置異性体、すなわちE体またはZ体の、一方または混合物が用いられる。さらに、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))も挙げられる。
【0037】
非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze、例えば、E体(HFO-1234ze(E))である、ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice(商標)ze)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz、例えば、Z体(HFO-1336mzz(Z))である、ケマーズ株式会社製、Opteon(商標)1100)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、および1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン(HFO-1438mzz)などが挙げられ、これらの立体配置異性体、すなわちE体またはZ体の、一方または混合物が用いられる。
【0038】
さらに、他の発泡剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、およびトリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0039】
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の量は、発泡剤の種類、フェノール樹脂との相性、温度、ならびに滞留時間等の発泡および硬化条件によりばらつきがあるが、フェノール樹脂および界面活性剤の合計100質量部に対して、4.0質量部以上11.0質量部以下であることが好ましく、4.5質量部以上10.5質量部以下であることがより好ましく、5.0質量部以上10.0質量部以下であることがさらに好ましい。フェノール樹脂および界面活性剤の合計100質量部当たりの発泡剤の量が4.0質量部以上の場合、フェノール樹脂発泡体の密度が高くなるのを抑制することができる。また、フェノール樹脂および界面活性剤の合計100質量部当たり11.0質量部以下であるとフェノール樹脂発泡体が低密度となることを抑制し、フェノール樹脂発泡体を適度な強度を有する密度とすることができる上に、気泡壁面が割れ難くなり独立気泡率の低下を抑制しやすくなる。
【0040】
本実施形態における、HCFO-1224yd(Z)の含有量は、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10-3あたり、0.06mol以上0.35mol以下であり、好ましくは0.11mol以上0.35mol以下であり、より好ましくは0.15mol以上0.35mol以下であり、さらに好ましくは0.15mol以上0.30mol以下であり、最も好ましくは0.15mol以上0.25mol以下である。HCFO-1224yd(Z)の量が0.06mol以上であると、フェノール樹脂発泡体およびフェノール樹脂発泡体積層板の低熱伝導率化が実現する。また、HCFO-1224yd(Z)の量が0.35mol以下であると、フェノール樹脂との高い親和性による樹脂の可塑化に伴う発泡性フェノール樹脂組成物の粘度の低下を抑え、表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しを抑制することができる。
【0041】
本実施形態においては、フェノール樹脂発泡体の製造に発泡核剤として固体発泡核剤を使用することが好ましい。固体発泡核剤としては、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏粉、ホウ砂、スラグ粉、アルミナセメント、ポルトランドセメント等の無機粉、およびフェノール樹脂発泡体の粉砕粉のような有機粉を添加することもできる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
固体発泡核剤は発泡性フェノール樹脂組成物中に存在していればよく、その添加タイミングは特に限定されないものの、一般的には、フェノール樹脂組成物に添加するか、もしくは、後述する混合工程で発泡剤と同時に添加される。
【0043】
固体発泡核剤の添加量は、フェノール樹脂組成物の100質量部に対して、3.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましい。固体発泡核剤の添加量が3.0質量部以上であると、表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しを抑制し難くなる。また、固体発泡核剤の添加量を10.0質量部以下とすることで、沸点の低い発泡剤であるHCFO-1224yd(Z)の放散を抑制し易くなる。
【0044】
酸性硬化剤は、フェノール樹脂組成物を硬化できる酸性の硬化剤であればよく、酸成分として有機酸を含有する。有機酸としては、アリールスルホン酸、或いは、これらの無水物が好ましい。アリールスルホン酸およびその無水物としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等、および、それらの無水物が挙げられ、これらを一種類で用いても、二種類以上組み合わせてもよい。なお、本実施形態では、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o-メチロールフェノール)、およびp-メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化剤は、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
【0045】
酸性硬化剤の使用量は、その種類により異なり、パラトルエンスルホン酸一水和物60質量%とジエチレングリコール40質量%との混合物を使用する場合には、フェノール樹脂と、界面活性剤との合計100質量部に対して、好ましくは8質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下で使用される。
【0046】
フェノール樹脂発泡体の一面および当該一面の裏面の少なくとも一方に配される表面材としては、可撓性を有する表面材(可撓性表面材)を用いる。使用される可撓性表面材としては、主成分がポリエステル、ポリプロピレン、およびナイロン等からなる不織布または織布、クラフト紙、ガラス繊維混抄紙、水酸化カルシウム紙、水酸化アルミニウム紙、および珪酸マグネシウム紙等の紙類、またはガラス繊維不織布のような無機繊維の不織布等が好ましく、これらは混合(または積層)して用いてもよい。得られるフェノール樹脂発泡体積層板から表面材を剥離し母材のみを利用する場合には、剥離後に廃棄可能な安価な紙類が好ましい。これら表面材は、通常ロール状の形態で提供されている。さらに、可撓性表面材としては、難燃剤等の添加剤を混練したものを用いても構わない。なお、表面材とフェノール樹脂発泡体との接着方法は種々の方法を取ることができ、エポキシ樹脂等の接着剤を使用しても構わないが、製造コスト面、および製造工程の煩雑化防止の面からも、フェノール樹脂発泡体が表面材表面で熱硬化する際の固着力のみによるものであることが好ましい。
【0047】
表面材からの浸み出し割合は、後述する測定方法により評価することができるが、30%以下である。好ましくは、25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、最も好ましくは10%以下である。30%以下であると、外観良好なフェノール樹脂発泡体積層板が得られるとともに、45°角度での表面材剥離強度も低くなり、表面材を剥いでフェノール樹脂発泡体として利用することも可能となる。
【0048】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板の45°角度での表面材剥離強度は、1,000g以下であることが好ましく、より好ましくは900g以下であり、さらに好ましくは800g以下であり、最も好ましくは、700g以下である。フェノール樹脂発泡体積層板の45°角度での表面材剥離強度が1,000g以下であると、表面材が剥ぎ易くなり、表面材なしでの使用も容易となる。ここで、45°角度での面材剥離強度は、HCFO-1224yd(Z)の添加量、固体発泡核剤の使用および添加量、フェノール樹脂の質量平均分子量、ならびに、発泡性フェノール樹脂組成物の温度などの変更により所望の値に調整できる。なお、フェノール樹脂発泡体積層板の45°角度での表面材剥離強度は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0049】
<フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法>
次に、上述したフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法について説明する。
【0050】
フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法は、上述した発泡性フェノール樹脂組成物を混合機にて混合する混合工程と、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下表面材上に吐出する吐出工程と、下表面材上に吐出したフェノール樹脂組成物からフェノール樹脂発泡体積層板を製造する発泡体積層板製造工程とを備える連続製造方式を採用することが可能である。
【0051】
連続製造方式においては、下表面材上に吐出したフェノール樹脂組成物を上表面材で被覆した後、発泡および硬化させながら上下方向から均すように予成形し、その後、発泡および硬化を進めつつ板状に本成形していく。
【0052】
連続製造方式においては、予成形や本成形を行う方法として、スラット型ダブルコンベアを利用する方法や、金属ロールもしくは鋼板を利用する方法、さらには、これらを複数組み合わせて利用する方法等、製造目的に応じた種々の方法が挙げられる。このうち、例えば、スラット型ダブルコンベアを利用して成形する場合には、上下の表面材で被覆された発泡性フェノール樹脂組成物をスラット型ダブルコンベア中へ連続的に案内した後、加熱しながら上下方向から圧力を加えて、所定の厚みに調整しつつ、発泡および硬化させ、板状に成形することができる。
【0053】
下表面材上に吐出する際の、発泡性フェノール樹脂組成物の温度は、35℃以上45℃以下であることが好ましい。発泡性フェノール樹脂組成物の温度が35℃以上であると、発泡性フェノール樹脂組成物が初期に発泡し易くなるために、下表面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の浸み出しを抑制し易くなる。一方、発泡性フェノール樹脂組成物の温度が45℃以下であると、沸点の低い発泡剤であるHCFO-1224yd(Z)の放散を抑制し易くなる。なお、下表面材上に吐出する発泡性フェノール樹脂組成物の温度は、各種組成物を混合するミキシングヘッドの温調水温度や流量、および、回転数等の調整によって行うことができる。
【0054】
下表面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させつつ上表面材上から予成形を行う工程は、40℃以上80℃以下とすることが望ましい。40℃以上であると、予成形工程での発泡の促進効果が得られ易くなり、硬化を促進させることができる。また、80℃以下であると、厚み方向中心部近傍における内部発熱の影響を受け難く、中心部温度が高くなり難く独立気泡率の低下を抑制できる。
【0055】
発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる際に、厚み方向中心部近傍における内部発熱による独立気泡率の低下を抑制しつつも効率的に硬化を促進させるためには、予成形工程に続き、本成形工程および後硬化工程を設け、段階的に昇温させることが重要である。予成形工程に続く本成形工程の加熱温調条件は、65℃以上100℃以下であることが望ましい。該区間において、無端スチールベルト型ダブルコンベアまたはスラット型ダブルコンベア、もしくはロール等を用いて本成形を行うことができる。また、本成形工程の滞留時間は、発泡および硬化反応を行わせる主工程であることから、5分以上2時間以内とすることが好ましい。滞留時間が5分以上であると発泡と硬化を十分に促進させることができる。滞留時間が2時間以内であるとフェノール樹脂発泡体積層板の生産効率を高めることができる。なお、コンベアを用いる際には、上下のコンベア温度差は4℃未満とすることが望ましい。
【0056】
予成形工程および本成形工程の温調区間を経て加熱温調した後に、後硬化工程を適用する。後硬化工程の温度は、90℃以上120℃以下であることが好ましい。90℃以上であると、発泡板中の水分が放散しやすくなり、120℃以下であると、製品の独立気泡率の低下を抑制し高い断熱性能を発現できる。後硬化工程の温調区間を設けることで、最終成形した後に、発泡性フェノール樹脂組成物中の水分を放散させることができる。
【実施例
【0057】
以下に、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<フェノール樹脂Aの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3,500kgと99質量%フェノール2,510kg(不純物として水を含む)とを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで48質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。反応液のオストワルド粘度が110センチストークス(=110×10-6/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を398kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液でpHを6.4に中和した。
【0059】
この反応液を60℃で濃縮処理して、フェノール樹脂Aを得た。なお、フェノール樹脂Aの質量平均分子量、および、40℃における粘度を各々以下の方法で測定したところ、質量平均分子量は1,300、40℃における粘度は9,700mPa・sであった。
【0060】
<粘度>
回転粘度計(東機産業(株)製、R-100型、ローター部は3°×R-14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値をフェノール樹脂Aの粘度とした。
【0061】
<質量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により以下のような条件で測定を行い、後に示す標準物質(標準ポリスチレン、2-ヒドロキシベンジルアルコールおよびフェノール)によって得られた検量線よりフェノール樹脂の質量平均分子量Mwを求めた。
前処理:
フェノール樹脂約10mgをN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)1mlに溶解し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過したものを測定溶液として用いた。
測定条件:
測定装置:Shodex System21(昭和電工株式会社製)
カラム:Shodex asahipak GF-310HQ(7.5mmI.D.×30cm)
溶離液:臭化リチウム0.1質量%をN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)に溶解し使用した。
流量:0.6ml/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(昭和電工株式会社製「Shodex standard SL-105」)、2-ヒドロキシベンジルアルコール(シグマアルドリッチ社製、99%品)、フェノール(関東化学株式会社製、特級)
【0062】
<フェノール樹脂Bの合成>
反応液のオストワルド粘度が80センチストークス(=80×10-6/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を430kg添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、質量平均分子量が900、40℃における粘度が9,800mPa・sである、フェノール樹脂Bを得た。
【0063】
<フェノール樹脂Cの合成>
反応液のオストワルド粘度が240センチストークス(=160×10-6/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を310kg添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、質量平均分子量が2,500、40℃における粘度が9,300mPa・sである、フェノール樹脂Cを得た。
【0064】
<フェノール樹脂Dの合成>
反応液のオストワルド粘度が75センチストークス(=75×10-6/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を450kg添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、質量平均分子量が800、40℃における粘度が9,500mPa・sである、フェノール樹脂Dを得た。
【0065】
<フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法>
(実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体とポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50%ずつ含有する組成物を3.0質量部の割合で混合した。これをフェノール樹脂組成物とする。上記界面活性剤を含むフェノール樹脂組成物100質量部に対して、固体発泡核剤としてフェノール樹脂発泡体粉をフェノール樹脂組成物に対して4.0質量部、発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)40質量%とシクロペンタン60質量%の混合物7.2質量部、さらに、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を12.0質量部添加し、18℃に温調した回転数可変式のミキシングヘッドに供給した。なお、ここで用いたフェノール樹脂発泡体粉は、特開2008-024868号の実施例1と同様の手順で粉砕した、フェノール樹脂発泡体(旭化成建材(株)製ネオマフォーム)粉砕粉(平均粒径は28.0μm、嵩密度は181kg/m)であり、発泡剤および酸性硬化剤の添加前に、二軸押出機にてフェノール樹脂組成物と混練した。その後、発泡剤および酸性硬化剤を混合し、得られた発泡性フェノール樹脂組成物をマルチポート分配管にて分配し、移動する下表面材上に供給した。なお、混合機(ミキサー)は、特開平10-225993号に開示されたものを使用した。即ち、混合機の上部側面に、固体発泡核剤を含むフェノール樹脂組成物、および、発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に酸性硬化剤の導入口を備えている混合機を使用した。攪拌部以降は発泡性フェノール樹脂組成物を吐出するためのノズルに繋がっている。即ち、混合機は、酸性硬化剤導入口までを混合部(前段)、酸性硬化剤導入口~攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部~ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。さらに、分配部はジャケット式構造になっており、温調水により十分熱交換できるようになっており、分配部の温調水温度を23℃に設定した。また、マルチポート分配管の吐出口には、発泡性フェノール樹脂組成物の温度を検出できるように熱電対が設置してあり、ミキシングヘッドの回転数を300rpmに設定した。このときの下表面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物の温度は39℃であった。下表面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、65℃に温調された予成形工程に導入され、30秒後に、上表面材上方より、フリーローラーにて予成形を行った。予成形は、吐出時のフロス高さの2/3となる高さにロールをセットし調節した。その後、二枚の表面材で挟み込まれるようにして、83℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアに導入され(本成形工程)、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアさせ(後硬化工程)、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。なお、表面材としては、上下表面材ともに、ポリエステル不織布(旭化成(株)エルタスE05060、目付量60g/m)を使用した。
【0066】
そして、得られたフェノール樹脂発泡体およびフェノール樹脂発泡体積層板の特性(フェノール樹脂発泡体の密度、独立気泡率、平均気泡径、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10-3あたりHCFO-1224yd(Z)の含有量、表面材からの浸み出し面積割合、45°角度での表面材剥離強度、および、23℃環境下での熱伝導率)を、以下の方法によって評価した。
【0067】
<フェノール樹脂発泡体の密度>
200mm角のフェノール樹脂発泡体積層板を試料とし、この試料から表面材を取り除いた後、JIS K7222に従い質量と見かけ容積を測定して求めた。
【0068】
<フェノール樹脂発泡体の独立気泡率>
ASTM-D-2856(C法)に従い測定した。具体的には、フェノール樹脂発泡体積層板より表面材を取り除いた後、直径35mm~36mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫き、高さ30mm~40mmに切り揃えた後、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1,000型)の標準使用方法により試料容積を測定した。その試料容積から、試料質量とフェノール樹脂硬化体の密度から計算した壁(気泡やボイド以外の部分)の容積を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの容積で割った値を独立気泡率とした。ここで、フェノール樹脂硬化体の密度は1.3kg/Lとした。
【0069】
<フェノール樹脂発泡体の平均気泡径>
平均気泡径は、JIS K6402に記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。フェノール樹脂発泡体積層板の厚み方向のほぼ中央を表裏面に平行に切削して得た試験片の切断面を50倍に拡大した走査型電子顕微鏡で写真を撮影し、得られた写真上にボイドを避けて90mmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数に準じて測定したセル数を各直線で求め、それらの平均値で1,800μmを割った値を平均気泡径とした。
【0070】
<表面材からの浸み出し面積割合>
フェノール樹脂発泡体積層板の上下表面材上の発泡性フェノール樹脂樹脂組成物が浸み出した箇所をペンで囲んで印を付けた後、該フェノール樹脂発泡体積層板の300mm×300mmエリアをデジタルカメラで撮影し、色調補正後、ピクセルカウンターソフトにて樹脂組成物が浸み出した箇所の画素数と300mm×300mmエリア全体の画素数をそれぞれカウントし、下記計算式(1)にて浸み出し面積割合を算出した。
表面材からの浸み出し面積割合(%)=(囲んだ部分の画素数/300mm×300mmエリア全体の画素数)×100 (1)
【0071】
<45°角度での表面材剥離強度>
フェノール樹脂発泡体積層板の45°角度での表面材剥離強度は以下の様に測定して求めた(図1参照)。先ず、フェノール樹脂発泡体積層板を、幅50mm、長さ120mm(長さ方向が製品流れ方向と一致する)に切り出し、上下面に位置する表面材(a)、(b)のうちの一方の表面材(b)を剥離した。その後、表面材(b)剥離後のフェノール樹脂発泡体積層板を上下面と平行方向に切断することで、表面材(a)を備えた幅50mm、長さ120mm、厚み25mmの評価用サンプル1を準備した。次に、評価用サンプル1の長さ方向の一端から20mmの位置に、カッターを用いて、表面材(a)を有さない側の面から厚み方向に深さ20mmの切り込みを入れた。その切込み位置にて、評価用サンプルの母材2を厚み方向に慎重に分割した。この際に表面材(a)(図1中の表面材3に相当)が母材2から剥がれないように長さ方向の力を加えないようにした。そして、母材が分割された評価用サンプル1の、母材の長さが長い側の部位を、図1のようにクランプ7で水平面と45°の角度になるように保持し、また、母材の長さが短い側の部位の先に金属ワイヤ5で繋がれた容器6を、ペーパークリップ4を介してセットした。その後、ポンプ(図示せず)を用いて空の容器6内に、100g/分の投入速度で、水を連続的に投入した。表面材3が評価用サンプル1の長さ方向に、切り込み位置から50mm剥離した時点での容器6内の水の質量を測定した。同様の操作を二回行い、ペーパークリップ4、金属ワイヤ5、容器6、および得られた水の質量の合計の平均値を表面材剥離強度(a)とした。さらに別途、表面材(b)を備え、幅50mm、長さ120mm、厚み25mmの評価用サンプルを準備し、表面材剥離強度(a)と同様にして表面材剥離強度(b)を求めた。そして、表面材剥離強度(a)および表面材剥離強度(b)のうち低い方の値を、フェノール樹脂発泡体積層板の45°角度での表面材剥離強度(単位:g)とした。
【0072】
<固形物中の水分量>
ボートタイプ水分気化装置を有するカールフィッシャー水分計で、110℃で加熱して気化させた水分を測定した。
【0073】
<発泡体中に含有されるHCFO-1224yd(Z)およびその他の発泡ガスの組成比>
表面材を剥がした発泡体試料を10gと金属製やすりを10L容器(製品名テドラーバック)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。テドラーバックの上からヤスリを使い試料を削り、細かく粉砕した。続いて、81℃に温調された温調機内に10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、GC/MSで測定し、発生したガス成分の種類と組成比を分析した。なお、発泡ガスの種類は、保持時間とマススペクトルから同定を行った。別途、発生したガス成分の検出感度を測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成比を算出した。
(GC/MS条件)
GC/MSの測定は以下のように設定し、行った。
ガスクロマトグラフィー:アジレント・テクノロジー社製「Agilent7890型」
カラム:DB-5MS(0.25mmφ×30m、膜厚1μm)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1ml/分
注入口の温度:150℃
注入方法:スプリット法(1/10)
試料の注入量:溶液1μL(気体試料の場合はガスタイトシリンジを用いて100μl)
カラム温度:40℃(5分)の後、50℃/minで150℃まで昇温し、4.8分保持 質量分析:日本電子株式会社製「Q1000GC型」
イオン化方法:電子イオン化法(70eV)
スキャン範囲:m/Z=10~500
電圧:-1,300V
イオン源温度:230℃
インターフェース温度:150℃
【0074】
<フェノール樹脂発泡体中のHCFO-1224yd(Z)の含有量>
フェノール樹脂発泡体積層板サンプルを約100mm角に切断し、試片6個を準備すると共に、密封可能な耐熱性を有するチャック付袋(以下チャック付袋と略す)を6袋準備し、各々の袋の質量を精密天秤で、測定した。試片を70℃に温調された循環式オーブン内に24±0.5hr入れ含有する水分を飛散させた後、速やかに、チャック付袋に入れ、封をして、室温まで冷やした。室温まで冷却後、チャック付袋より試片を取り出し、速やかに試片の表面材を剥離すると共に、各試片の質量(W1)を精密天秤より測定すると共に、各辺の長さをノギスにより測定し、試片の体積(V)を算出した。その後、各試片をチャック付袋に戻し、一部の開口部を残し、室温の油圧プレスの盤面間に入れ、油圧プレスで約200N/cmの圧力まで徐々に圧縮し、試片の気泡を破壊した。6試片の内の3試片について、試片の一部試料を採取し、前記固形物中の水分量の測定法により、含有する水分量を測定し、3点を平均した水分量(WS1)を求めた。上記水分量測定のために一部採取した3試片の残り、および、それ以外の3試片について、引き続き、一部の開口部を残した試片入りチャック付袋内に収めたまま、81℃に温調された循環式オーブン内に30±5分入れた。その後、直ちに、粉体が袋から出ないようにしつつ袋内気体を排出し、袋を密封し、室温まで冷やした。室温まで冷却後、上記で水分率測定用試料採取を行っていない、試片入りチャック付袋の質量を精密天秤で測定し、チャック付袋の質量を差し引き、揮発成分が除かれた質量(W2)を3点測定した。同時に、上記で水分率測定用試料採取を行った3試片の袋より、さらに一部試料を採取し、同様に水分量を測定し、3点を平均した水分量(WS2)を求めた。すなわち、本試験における、W1、W2計測時の各水分量は、各々、下記式(2)中のWS1、および、WS2となる。
【0075】
発泡体中のHCFO-1224yd(Z)およびその他の発泡ガス質量は、上記W1とW2の差分から、WS1とWS2の差分を差し引くと共に、試片の体積(V)から、固形フェノール樹脂密度を、一般的に知られているフェノール樹脂の密度である1.3g/cmと定義し、W2から計算された樹脂体積を差し引いた体積(発泡体内の空間体積)と、空気の密度(0.00119g/mL)により計算された空気浮力質量(WF)を加算し、揮発成分質量(W3)を測定した。得られたW3に、測定されたHCFO-1224yd(Z)およびその他の発泡ガス成分中比率を掛け、HCFO-1224yd(Z)の質量(W4)を算出した。
W3、WFは各々下記式で示される。
W3=(W1-W2)-(WS1-WS2)+WF (2)
WF=(V-W2/1.3)×0.00119 (3)
発泡体中のHCFO-1224yd(Z)の含有量(mol/22.4×10-3)は、HCFO-1224yd(Z)の分子量を用いることにより算出した。
【0076】
<23℃環境下での熱伝導率>
JIS A 1412-2:1999に準拠し、以下の方法で23℃の環境下におけるフェノール樹脂発泡体積層板の厚み方向の熱伝導率を測定した。具体的な手順は以下の通りである。
【0077】
フェノール樹脂発泡体積層板を300mm角に切断し、試片を23±1℃・湿度50±2%の雰囲気に入れた。その後、24時間ごとに重量の経時変化を測定し、24時間経過後の重量変化が0.2質量%以下になるまで、状態の確認および調節を行った。状態調節された発泡体積層板試片を、同じく23±1℃・湿度50±2%の雰囲気に置かれた熱伝導率装置に導入した。熱伝導率測定装置が、発泡体積層板試片が置かれていた23±1%・湿度50±2%にコントロールされた室内に置かれていない場合には、前述の雰囲気において状態の確認および調節を行った試片を、速やかにポリエチレン製の袋に入れて袋を閉じて、1時間以内に袋から出して、速やかに熱伝導率を測定した。
【0078】
熱伝導率測定は、23℃の熱伝導率は低温板13℃、高温板33℃の条件で、試験体1枚・対象構成方式の測定装置(英弘精機社、商品名「HC-074/FOX304」)を用い行った。
【0079】
(実施例2)
混合機分配部の温調水温度を16℃とする以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0080】
(実施例3)
混合機分配部の温調水温度を28℃とする以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0081】
(実施例4)
フェノール樹脂Aの代わりに、フェノール樹脂Bを使用する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0082】
(実施例5)
フェノール樹脂Aの代わりに、フェノール樹脂Cを使用する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0083】
(実施例6)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)65質量%とシクロペンタン35質量%の混合物7.6質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.0質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0084】
(実施例7)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)40質量%とイソペンタン60質量%の混合物7.7質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.2質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0085】
(実施例8)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)40質量%と2-クロロプロパン60質量%の混合物8.3質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.3質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0086】
(実施例9)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)40質量%、HCFO-1233zd(E)35質量%、および、シクロペンタン25質量%の混合物9.7質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.5質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0087】
(実施例10)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)40質量%、HCFO-1233zd(E)35質量%、および、イソペンタン25質量%の混合物9.7質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.6質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0088】
(実施例11)
固体発泡核剤として水酸化アルミニウム粉末(巴工業(株)製、B-325、平均粒径23.0μm)をフェノール樹脂組成物に対して3.0質量%添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0089】
(実施例12)
発泡剤としてHCFO-1224yd(Z)85質量%とシクロペンタン15質量%の混合物7.9質量部、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を13.2質量部添加する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0090】
(比較例1)
フェノール樹脂Aの代わりに、フェノール樹脂Dを使用する以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0091】
(比較例2)
発泡核剤として、固体発泡核剤を使用せず、気体発泡核剤である窒素を発泡剤100質量部に対して1質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0092】
(比較例3)
混合機分配部の温調水温度を14℃とする以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0093】
(比較例4)
混合機分配部の温調水温度を30℃とする以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0094】
実施例1~12および比較例1~4の特徴的な製造条件、ならびに、得られたフェノール樹脂発泡体積層板の特性評価結果を、表1にまとめた。
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、実施例1~12で得られたフェノール樹脂発泡体積層板は、比較例1~4で得られたフェノール樹脂発泡体積層板と比較して、該積層板中への発泡剤の充填量を減少させずに低熱伝導率化を実現しつつ、該積層板表面材への浸み出し抑制をも満足するものであることがわかる。
【符号の説明】
【0097】
1 評価用サンプル
2 評価用サンプルのフォーム部
3 評価用サンプルの下表面材
4 ペーパークリップ
5 金属ワイヤ
6 容器
7 クランプ
図1