(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20221212BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20221212BHJP
H01L 35/24 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H01L35/32 Z
H01L35/24
(21)【出願番号】P 2018186342
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅規
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-168264(JP,A)
【文献】特開2006-294738(JP,A)
【文献】特開昭52-097441(JP,A)
【文献】特開平09-199764(JP,A)
【文献】特開2003-111459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 24/00 -27/30
H02K 31/00 -31/04
H02K 35/00 -35/06
H02K 39/00
H02K 47/00 -47/30
H02K 53/00
H02K 99/00
H02N 1/00 - 1/12
H02N 3/00 -99/00
H01L 35/32
H01L 35/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電装置であって、
当該熱発電装置は、
端部に封止部を有して内部が密閉された
一重管からなる管状容器と、
前記管状容器の内面に設けられた
環状の熱電変換部と、
前記熱電変換部の内側に設けられた蓄熱部と、
前記熱電変換部に電気的に接続され、前記封止部を貫通するように設けられたリード部と、
を有するとともに、
前記環状の熱電変換部は、その外周面が前記管状容器の内面に当接して設けられており、
前記蓄熱部を構成する蓄熱材料が前記管状容器の内部に充填されていて、前記蓄熱材料が前記熱電変換部の内周面と接触している、
ことを特徴とした熱発電装置。
【請求項2】
前記熱電変換部は、環状の絶縁材を介して管軸方向に1つ置きに配置された環状の正孔輸送部と環状の電子輸送部とを備え、前記正孔輸送部と前記電子輸送部は、導電部により電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項3】
前記絶縁材は、前記管状容器の軸方向よりも半径方向に高い熱伝導率を有する方向性熱伝導材料からなることを特徴とする請求項2に記載の熱発電装置。
【請求項4】
前記導電部は、隣接する前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接されて、これらを導通する第1電極と、隣接する前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接されて、これらを導通する第2電極とからなり、
前記第2電極は、前記管状容器の内面に当接されており、
前記リード部は前記電極のいずれかに接続されていることを特徴とする請求項2に記載の熱発電装置。
【請求項5】
前記熱電変換部は、軸方向の一端部に前記正孔輸送部が配置され、他端部に前記電子輸送部が配置されていて、
前記リード部は、前記管状容器の内面に当接された前記第2電極に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の熱発電装置。
【請求項6】
前記絶縁材は、
一対の前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接する第1電極と、これに隣接する他の一対の前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接する第1電極との間に配置される第1絶縁材と、
一対の前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接する第2電極と、これに隣接する他の一対の前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接する第2電極との間に配置され、外周部が前記管状容器の内面に当接する第2絶縁材と、
からなることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽光エネルギーを熱として蓄え、当該熱を利用して発電する技術が知られている。
特開平05-167104号公報(特許文献1)には、平面型の熱発電用パネルを用いたものが開示されており、太陽光を一方の面で受けて、その熱を蓄熱槽内の蓄熱材に蓄熱する方式が採用されている。
図9(A)にその概略構造が示されていて、熱電素子モジュール100は、p型半導体101とn型半導体102を金属板103によって熱電対の形状に接合して熱電素子105を構成し、この隣接する熱電素子105を金属端子106によって直列に電気接続している。これら熱電素子モジュール100は、一対のセラミック基板108、109によって支持されている。
【0003】
図9(B)は、その機能概略図であって、前記熱電素子モジュール100の一端側に蓄熱槽120が当接され、その内部には蓄熱材121が収容されている。
太陽光は反射鏡130によって収束されて蓄熱槽120のホットプレート122を加熱し、内部の蓄熱材121を加熱する。
蓄熱材121の熱が熱電素子モジュール100に伝えられて、該熱電素子モジュール100において発電された電気エネルギーは端子111、112を介して取出されるものである。
【0004】
ところが、この公知例によれば、蓄熱槽が熱電素子モジュールに一面でしか接触していないため、蓄熱された熱を用いて夜間などに発電する場合には、他の面から熱が逃げやすく、蓄熱された熱が発電に利用される割合が少なく、有効利用されないという問題がある。
また、蓄熱材は繰り返し利用できることが肝要であるが、当該文献では蓄熱槽の封止構造に言及がなく、外気との接触を有効に遮断する構造が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、光エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電装置において、太陽熱によって蓄熱材に蓄えられた熱をロスなく電気エネルギーの変換に利用でき、また、蓄熱材の劣化をきたすことのない構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る熱発電装置では、光エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電装置であって、当該熱発電装置は、端部に封止部を有して内部が密閉された管状容器と、前記管状容器の内面に設けられた熱電変換部と、前記熱電変換部の内側に設けられた蓄熱部と、前記熱電変換部に電気的に接続され、前記封止部を貫通するように設けられたリード部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記熱電変換部は、絶縁材を介して管軸方向に1つ置きに配置された環状の正孔輸送部と環状の電子輸送部とを備え、前記正孔輸送部と前記電子輸送部は、導電部により電気的に接続されていることを特徴とする。
また、前記絶縁材は、前記管状容器の軸方向よりも半径方向に高い熱伝導率を有する方向性熱伝導材料からなることを特徴とする。
また、前記導電部は、隣接する前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接されて、これらを導通する第1電極と、隣接する前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接されて、これらを導通する第2電極とからなり、前記第2電極は、前記管状容器の内面に当接されており、前記リード部は前記電極のいずれかに接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記熱電変換部は、軸方向の一端部に前記正孔輸送部が配置され、他端部に前記電子輸送部が配置されていて、前記リード部は、前記管状容器の内面に当接された前記第2電極に接続されていることを特徴とする。
また、前記絶縁材は、一対の前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接する第1電極と、これに隣接する他の一対の前記正孔輸送部と前記電子輸送部の内周面に当接する第1電極との間に配置される第1絶縁材と、一対の前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接する第2電極と、これに隣接する他の一対の前記電子輸送部と前記正孔輸送部の外周面に当接する第2電極との間に配置され、外周部が前記管状容器の内面に当接する第2絶縁材と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の熱発電装置によれば、熱電変換部が密閉された管状容器の内部に設けられ、該熱電変換部の内側に蓄熱部が設けられていることにより、発電時には、太陽光により蓄熱部に蓄熱された熱の全てが、内側から熱電変換部に伝達されて電気エネルギーへの変換に利用されるので、熱エネルギーの損失がなく効率的な熱電変換が行われる。
また、蓄熱部を構成する蓄熱材は、端部が封止された管状容器内に密閉状態で収容されているので、その劣化が抑制できる。
更には、熱電変換部を構成する正孔輸送部と電子輸送部との間に介在される絶縁材を、管状容器の半径方向に高い熱伝導率を有する方向性熱伝導材より構成することにより、太陽光からの熱伝導あるいは蓄熱部からの熱伝導が有効に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のA-A断面図(A)、B-B断面図(B)、C-C断面図(C)、D-D断面図(D)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の熱発電装置の全体を示す断面図であり、
図2(A)~(D)は、それぞれ
図1のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、D-D断面図である。
円筒状の管状容器1は、透光性材料、例えば、石英ガラスやソーダガラスなどのガラス管などからなり、中央の本体部2と、その両端の封止部3、3とからなる。前記管状容器1の本体部2の内面には、熱電変換部4が設けられている。
この熱電変換部4は、熱電変換素子5と絶縁材8と導電部10とを有している。熱電変換素子5は、共に環状の正孔輸送部6と電子輸送部7とからなり、当該正孔輸送部6と電子輸送部7とは、管状容器1の内面に管軸方向に1つ置きに所定間隔で配置されている。
【0013】
そして、これら正孔輸送部6と電子輸送部7の間には絶縁材8が設けられていて、不所望の箇所でこれらが電気的導通をすることを防止している。
図3にもその詳細が示されるように、この絶縁材8、例えば、左端に位置する第1の正孔輸送部61と第1の電子輸送部71の間に位置する第1の絶縁材81は、これら第1の正孔輸送部61と第1の電子輸送部71よりも管状容器1の内面側に突出していて、当該管状容器1の内面に当接している。また、前記第1の電子輸送部71と第2の正孔輸送部62の間の第2の絶縁材82は、これら第1の電子輸送部71と第2の正孔輸送部62よりも管状容器1の中心側に突出している。
【0014】
導電部10は、第1電極11と第2電極12とからなり、第1電極11は、隣接する正孔輸送部6と電子輸送部7の内周面に当接していてこれらを電気的に接続するとともに、第2電極12は、隣接する電子輸送部7と正孔輸送部6の外周面に当接していてこれらを電気的に接続するとともに、管状容器1の内面に当接している。
そして、
図1および
図3に示された配置の一例では、第1の正孔輸送部61の外周面に当接された第2電極12と、これに隣接した一対の第1の電子輸送部71と第2の正孔輸送部62の外周面に当接された第2電極12との間には、第1の絶縁材81が介在していてこれらを電気的に絶縁している。
【0015】
また一方、一対の第1の正孔輸送部61と第1の電子輸送部71の内周面に当接された第1電極11と、これに隣接した他の一対の第2の正孔輸送部62と第2の電子輸送部72の内周面に当接された第1電極11との間には、第2の絶縁材82が介在してこれらを絶縁している。
このような構成により、第2電極12-第1の正孔輸送部61-第1電極11-第1の電子輸送部71-第2電極12-第2の正孔輸送部62・・・という電気的接続がなされる。
【0016】
前記正孔輸送部6および電子輸送部7の材料としては、有機材料、無機材料のいずれであってもよい。
有機材料からなる正孔輸送部6としては、CuPc、PEDOT/PSS、m-TDATA、TPD、α-NPD、TCTA、TAPCなどが使用される。また、無機材料からなる正孔輸送部6としては、縮退半導体からなるp型半導体が使用される。
一方、電子輸送部7としては、有機材料の場合、Alq3、BCP、t-Bu-PBD、シロール誘導体、BND、PBDなどが使用され、無機材料の場合、縮退半導体からなるn型半導体が使用される。
【0017】
そして、熱電変換素子の特性向上のためには、前記正孔輸送部6および電子輸送部7のそれぞれの構造をポーラス構造とすることが有用である。ポーラス構造とすることで、該正孔輸送部6および電子輸送部7が低熱伝導率材となる。素子自体に熱が伝わりにくいので、温度差が維持されることにより、更なる熱電変換の性能アップが期待できる。
【0018】
また、導電部10を構成する第1電極11や第2電極12は、銅、鉄、チタン、アルミニウム、SUSなどの金属や、TCO、TIO、FTOなどの透明導電材料が使用される。そして、後述する蓄熱部に効率良く熱を蓄えるために、蓄熱部に光が効果的に届くようにするという観点から、透明導電材料を使用することが好ましい。
この導電部10(第1電極11、第2電極12)と熱電変換素子5(正孔輸送部6、電子輸送部7)との間には、アルミニウムや銀ロウなどの接合層を設ける構成としてもよい。
【0019】
また、正孔輸送部6と電子輸送部7の間に介在される絶縁材8としては、PDMSやSiO2が用いられる。
この絶縁材8は、前記管状容器1の軸方向への熱伝導率よりも半径方向への熱伝導率が高い方向性熱伝導材料から構成することが好適である。こうすることで、管状容器1の周囲からの太陽光による熱を、後述する管状容器1の中心部に位置する蓄熱部13に効率的に熱を伝導することができる。
このような方向性熱伝導材料としては、シリコン樹脂やガラスなどの誘電体からなるマトリックスに、カーボンファイバー(カーボンナノチューブを含む)や、アルミファイバーなどの繊維材料を管状容器1の半径方向に整列するように分散させたものを使用することができる。
【0020】
前述した熱電変換部4が形成された管状容器1の内部には、蓄熱部13を構成する蓄熱材料が充填されている。
この蓄熱材料は顕熱性蓄熱材料や潜熱性蓄熱材料など、種々の蓄熱材料が利用できるが、その中でも潜熱性蓄熱材料が好ましく、蓄熱時における蓄熱部13の温度上昇量が小さいので、管状容器1内の部材の劣化等が抑制される。
このような蓄熱材料としては、パラフィンや糖アルコール、無機塩水和物、脂肪族炭化水素化合物、エステル、脂肪酸などが使用される。
【0021】
このように、熱電変換部4が設けられ、蓄熱部13を構成する蓄熱材料が充填された管状容器1の両端には、封止部3、3が形成されていて、管状容器1内部を密閉している。
この封止部3、3は、ランプ技術における発光管におけるピンチシールなどの封止部構造と同様なものである。管状容器1の両端の封止部3、3内に埋設される金属箔15、15に、内部リード16、16と、封止部3、3から外部に延びる外部リード17、17とが溶接接合されていて、これら内部リード16と外部リード17とでリード部18が構成されている。そして、前記管状容器1の両端部を加熱軟化して前記金属箔15、15部分を中心としてこれを圧潰して封止部3、3を形成する。その結果、内部に蓄熱材が封入された管状容器1の両端が封止され、該管状容器1内が液密状態に密閉されるものである。
また、この実施例においては、両端の封止部3、3における内部リード16、16は、それぞれ第2電極12、12に接続されている。
【0022】
なお、本実施例では封止部3、3の構造としてピンチシール構造を示したが、外部環境に対して気密を保持した状態で導通が取れる構造であれば、ピンチシール構造に限らない。例えば、金属箔部分をシュリンクシールするシュリンクシール構造や段接ぎシール、サファイヤランプで見られるような管状容器1の端部をメタライズし金属板等からなる封止板を接合するような構造であっても良い。また、シュリンクシール構造や段接ぎシールにおいては、金属箔ではなく、金属パイプをガラスと溶着させ、該金属パイプの外部端部を圧着封止等しても良い。
【0023】
図4に他の実施例が示されていて、この実施例では、熱電変換部4の正孔輸送部6と電子輸送部7の配列が
図3の実施例とは異なる配列をしている例である。
図4に示すように、軸方向の左端部に第1の電子輸送部71が配置され、その次に絶縁材81を介在させて第1の正孔輸送部61が配置される。そして、第1の絶縁材81の内周面は、第1電極11を貫通するように内方に延び、外周面は第2電極12に当接している。こうすることで、第1の絶縁材81により第1の電子輸送部71と第1の正孔輸送部61を環状の内周面側で絶縁し、外周面側で電気的接続をしている。
このような配列とする場合、内部リード16は、内側の第1電極11に接続される。
【0024】
また、ここでは図示しないが、
図4の配列で、右端側を電子輸送部7とすることで、内部リード16を外側の第2電極12に接続する構成とすることも可能である。
このように、正孔輸送部6と電子輸送部7の配列を変更することで、内部リード16を第1電極11か第2電極12のいずれかに接続する構成とすることができる。
ただ、内部リード16を、管状容器1の管壁に沿って配置された第2電極12に接続する構造とすることでその配線作業が簡便になるという利点がある。
【0025】
次いで本発明の熱発電装置の作用を
図5、
図6に基づいて説明する。
図5は、
図1~3に示された構成に関する昼間における作用図で、太陽光が照射されて管状容器1の外側温度が内部温度(蓄熱部13の温度)よりも高い状態となる。太陽光による熱は、管状容器1の外部から方向性熱伝導材料からなる絶縁材8を介して管状容器1内部の蓄熱部13に伝導される。
そして、外部温度が内部温度よりも高い状態のとき、熱電変換素子5の電荷は温度の低い方、即ち、管状容器1の中心部側に向かって移動する。
つまり、熱電変換素子5の正孔輸送部6では、正の電荷をもつ正孔が高温側から低温側に(半径方向の外側から内側に向かって)移動する。また、電子輸送部7においては、負の電荷をもつ電子が高温側から低温側に移動する。
これにより、正孔輸送部6では電流が半径方向の外側から内側に向かって流れ、また、電子輸送部7においては電流が内側から外側に向かって流れる。そして、これらの正孔輸送部6と電子輸送部7は内側の第1電極11によって接続されているので、電流は熱電変換素子5内を
図5の左端側から右側に流れることになる。
そして、ここから外部に取り出される電流は、
図5の右方から左方に流れる。
【0026】
図6に夜間における発電状態が説明されていて、太陽が没する夜間は昼間とは温度勾配が逆転し、管状容器1の外部温度が蓄熱部13の温度よりも低くなる。この温度勾配に合わせて熱電変換素子5の電荷は温度の低い方、即ち、放電容器1の半径方向の外側に移動し、熱電変換素子5内を流れる電流の向きは昼間(
図5)とは逆転して、
図6の右側から左側に流れる。これにより、外部に取り出される電流は、
図6の左方から右方に流れる。
【0027】
図7に他の実施例が示されていて、外部に取り出された電流の回路中に整流ダイオード20が配置されている。こうすることで、昼間においては電流の流れが阻止され、発電作用が行われず、昼間の間に太陽光により蓄熱部13に蓄えられたエネルギーが発電により消費されることがなく、専ら蓄熱のみがなされる。
図7に示すように、この昼間に蓄えられたエネルギーを夜間に発電に利用することでより多くの電力を供給することができる。
【0028】
図8に更に他の実施例が示されていて、蓄熱部13を構成する蓄熱材料が導電性である場合、図に示すように、熱電変換部4全体を絶縁被覆層21で被覆することができる。こうすることで、熱電変換部4の内周面における第1電極11相互間や、端面における第1電極11と第2電極12間での短絡を防止できる。
この絶縁被覆層21の絶縁材料としては、シリコン系、ウレタン・アクリル系、フッ素系、樹脂系、アルミナなどの酸化無機材を用いることができる。
なお、段落0019で例示した蓄熱材料のうち、導電性を有するものは、無機塩水和物(水分を吸収して導電性となる)、糖アルコール(糖アルコール自体は絶縁性であるが、導電性溶媒に溶かして使用)である。
【0029】
本発明の熱発電装置の一具体例を以下に記載する。
<寸法・材質例>
○管状容器
・材質:石英ガラス
・長さ:1000mm
・外径:20mm
・内径:18mm
○熱電変換素子:
・正孔輸送部
・材質:CuPc
・寸法:幅10mm、厚さ0.5mm
・電子輸送部:
・材質:BCP
・寸法:幅10mm、厚さ0.5mm
○導電部(電極)
・材質:TCO
・寸法:厚さ10μm
○絶縁材(方向性熱伝導材料):
・材質:シリコン樹脂(絶縁性)+カーボンナノファイバー(熱伝導性)
・寸法:幅2mm、厚さ0.5mm以上
○蓄熱部(蓄熱材料):
・材質:パラフィン(融点:46℃)
【0030】
次いで、本発明の熱発電装置の製造方法の一例を挙げると以下の通りである。
<第1の方法>
(1)ペットフィルム等の平板状の絶縁性フィルムの一方の面にスパッタ蒸着技術を用いて、導電部(電極)を形成する。
(2)半導体の製膜技術と同様に、第2電極を形成する部分をマスクし、それ以外をエッチングにより除去する。
(3)次いで、除去した部分に絶縁材(方向性熱伝導材料)を形成する。
(4)その後、マスクを除去し、正孔輸送部を形成する部分以外にマスクを付け、半導体製膜技術を用いて正孔輸送部を形成する。
(5)次に、同様の方法で電子輸送部を形成する。
(6)同様にマスク形成により必要な部分に絶縁材や第1電極を形成する。
(7)形成された平板状の熱電変換部をペットフィルムごと丸めて、ガラス管の中に挿入し、該ガラス管の内面にペットフィルムを当接させる。
(8)第2電極にリード線を接続する。
(9)ガラス管内に蓄熱材料としてパラフィンを充填する。
(10)ガラス管の両端を加熱溶融し、縮径して封止部を形成する。
(11)必要に応じてリード線等に整流ダイオードを取り付ける。
【0031】
<第2の方法>
(1)ペットフィルム等の平板フィルム上にインクジェットプリンタによる製膜技術を用いて熱電変換部を形成する。
(2)次に、熱電変換部に絶縁材料をコーティングし、絶縁被覆層を形成する。(3)ガラス管にペットフィルムを丸めて挿入し、ペットフィルムがガラス管と当接するようにガラス管の中に配置する。
(4)第2電極にリード線を接続する。
(5)ガラス管の一方の端を加熱縮径して、封止部を形成する。また、他端も同様に封止部を形成するが、蓄熱材料を充填するための細管を付けておく。
(6)この細管を利用して、導電性を有する蓄熱材料(例えば液状の糖アルコールや無機塩水和物)をガラス管の中に充填する。
(7)細管を加熱溶融して封止する。
【0032】
<第3の方法>
(1)ガラス管の内側全面に、マスクを用いて電極パターンを形成し、スプレー熱分解法(SPD)等を用いて導電膜を該電極パターンに合わせて形成し、焼結処理を行う。
(2)インクジェットプリンタ技術を用いて熱電素子部分を前記導電膜上に直接描画し、焼結処理を行う。
(3)異方向性材料を熱電素子部分まで形成したガラス管内面に、例えば吸い上げ法により塗布し、焼結処理を行う。その後、表面研磨、または、エッチングにより、不要な箇所に形成された異方向性材料を除去して、絶縁材を形成する。
(4)熱電素子部分のガラス管中心方向の面に(1)と同様の手法で導電性膜を電極パターンに合わせて形成し、焼結処理を行う。
(5)必要に応じて、最内表面や熱電素子側面にコーティング材を塗布乾燥して、絶縁被覆層を形成する。
(6)第2電極にリード線を接続させる。
(7)ガラス管の両端を加熱溶融し、縮径して、封止部を形成する。
(8)ガラス管内に蓄熱材としてパラフィンを充填する。
(9)前記パラフィンの充填後に、ガラス管内を気密に封止するためには、該封止部に埋設した金属パイプを圧着封止したり、ガラス管に前もって形成した枝管を加熱溶融したりする等ができる。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る熱発電装置によれば、熱電変換部が密閉された管状容器の内部に設けられ、該熱電変換部の内側に蓄熱部が設けられていることにより、特に夜間の発電時には、太陽光により蓄熱部に蓄熱された熱の全てが、内側から熱電変換部に伝達されて電気エネルギーへの変換に利用されるので、熱エネルギーの損失がなく効率的な熱電変換が行われる。
また、蓄熱部を構成する蓄熱材料は、端部が封止された管状容器内に密閉状態で収容されているので、その劣化が抑制できる。
【符号の説明】
【0034】
1 :管状容器
2 :本体部
3 :封止部
4 :熱電変換部
5 :熱電変換素子
6 :正孔輸送部
7 :電子輸送部
8 :絶縁材
10:導電部
11:第1電極
12:第2電極
13:蓄熱部
15:金属箔
16:内部リード
17:外部リード
18:リード部
20:整流ダイオード
21:絶縁被覆層