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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】バッテリ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20221212BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018242864
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104578
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】片山 憲治
(72)【発明者】
【氏名】角田 龍平
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088503(JP,A)
【文献】実開昭58-081153(JP,U)
【文献】実開昭59-128449(JP,U)
【文献】特開2007-050803(JP,A)
【文献】特開2017-193294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 11/06
H01M 10/613
H01M 10/625
B60R 3/00 - 11/06
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
B60N 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの搭載装置であって、
上記車両の車室内に搭載されたバッテリと、
このバッテリを覆うように、上記車両の助手席シートの前方、且つ上記車両の助手席シートよりも下方に配置された板状の部材であるトーボードと、を有し、
上記バッテリは上記トーボードと上記車両のフロアパネルの間に配置され
上記トーボードには、上記車両の側面衝突時において優先的に変形されるように、車幅方向内側の部位に脆弱部が設けられていることを特徴とするバッテリ搭載装置。
【請求項2】
上記トーボードは、上記車両のフロアパネルの上側に、上記車両の前方側が高くなるように傾斜して配置される請求項1記載のバッテリ搭載装置。
【請求項3】
上記バッテリは、上記車両のフロアパネルの上側、且つ上記トーボードの下側に、上記車両の前方側が高くなるように傾斜して配置される請求項2記載のバッテリ搭載装置。
【請求項4】
上記トーボードの上記脆弱部の下側には、上記バッテリを冷却するための空気が流れる冷却用ダクトが配置されている請求項記載のバッテリ搭載装置。
【請求項5】
さらに、上記バッテリに電気的に接続されたワイヤハーネスを有し、上記トーボードは金属で形成されると共に、上記ワイヤハーネスを覆うように配置される請求項1乃至の何れか1項に記載のバッテリ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ搭載装置に関し、特に、車両に搭載されるバッテリの搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-16143号公報(特許文献1)には、バッテリ冷却装置が記載されている。このバッテリ冷却装置においては、車両に搭載されたバッテリが、車両のフロアパネルの上方、且つ、助手席のシート及びコンソールボックスの下方に配置され、助手席のシートの下側に配置されたブロワによりバッテリに冷却空気を送り、バッテリを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-16143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に搭載されるバッテリは、或る程度の大型化は避けることができない。このため、特許文献1記載のバッテリ冷却装置のように、車両のシートの下側にバッテリを収納すると、シート上方の空間が狭くなるため、乗員の頭部と車室の天井面の間の距離が近くなり、乗員に圧迫感を与えるという問題がある。この問題は、車高全体が低いスポーツタイプの車両において、特に顕著になる。また、後部座席の後方にバッテリが収納されている車両も存在するが、後部座席の後方にバッテリが収納すると、荷物を積載するためのトランクスペースが狭くなり、車両の使い勝手が悪くなると言う問題がある。
【0005】
従って、本発明は、乗員に圧迫感を与えたり、トランクスペースを狭くしたりすることなく、バッテリを車両に搭載することができるバッテリ搭載装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載されるバッテリの搭載装置であって、車両の車室内に搭載されたバッテリと、このバッテリを覆うように、車両の助手席シートの前方、且つ車両の助手席シートよりも下方に配置された板状の部材であるトーボードと、を有し、バッテリはトーボードと車両のフロアパネルの間に配置され、トーボードには、車両の側面衝突時において優先的に変形されるように、車幅方向内側の部位に脆弱部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、トーボードが助手席シートの前方、且つ助手席シートよりも下方に配置され、バッテリはトーボードと車両のフロアパネルの間に配置されるので、乗員に与える圧迫感を最小にしながら、十分なバッテリ収納スペースを確保することができる。一般に、助手席に着座した乗員の足先近傍の空間は、助手席に乗員が乗車していなければ完全なデッドスペースであり、このスペースをバッテリが占有していても、乗員に何ら不都合を与えることはない。また、助手席に乗員が乗車したとしても、その乗員の体格によっては、乗員が不自由を感じることはない。一方、助手席に体格の大きい乗員が乗車した場合には、乗員の足先近傍に収納されたバッテリが邪魔になることが考えられる。しかしながら、このような場合にも助手席のシートを車両の後方にスライドさせることにより、十分な乗車スペースを確保することが可能である。従って、本発明のバッテリ搭載装置によれば、収納されたバッテリによって乗員が不都合を感じるのは、助手席に体格の大きい乗員が乗車し、助手席のシートを後方にスライドさせることができない場合に限られる。このように、本発明のバッテリ搭載装置によれば、バッテリが車室内のスペースを占有することによる悪影響を十分に抑制しながら、十分なスペースを確保することができる。
また、このように構成された本発明によれば、トーボードには、車幅方向内側の部位に脆弱部が設けられている。この結果、車両の側面衝突時等において脆弱部が変形され、バッテリの移動が許容されるので、バッテリ自体が損傷を受けにくくすることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、トーボードは、車両のフロアパネルの上側に、車両の前方側が高くなるように傾斜して配置される。
このように構成された本発明によれば、トーボードが、乗員の足先近傍に車両の前方側が高くなるように傾斜して配置されているので、乗員はトーボードをフットレストとして活用することができ、バッテリに十分なスペースを確保しながら、乗員に与える圧迫感を最少にすることができる。また、バッテリがトーボードによって覆われているため、車両の減速時等に乗員の足から荷重を受けた場合でも、バッテリに過大な力が加わり損傷されるのを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、バッテリは、車両のフロアパネルの上側、且つトーボードの下側に、車両の前方側が高くなるように傾斜して配置される。
このように構成された本発明によれば、トーボードと共に、バッテリも車両の前方側が高くなるように傾斜して配置されているので、トーボードの下側にデッドスペースが生じにくく、スペースを有効に活用することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、トーボードの脆弱部の下側には、バッテリを冷却するための空気が流れる冷却用ダクトが配置されている。
このように構成された本発明によれば、トーボードの脆弱部の下側には、冷却用ダクトが配置されているので、車両の側面衝突時等においては脆弱部と共に冷却用ダクトが変形され、バッテリ自体が損傷を受けにくくすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、バッテリに電気的に接続されたワイヤハーネスを有し、トーボードは金属で形成されると共に、ワイヤハーネスを覆うように配置される。
一般に、バッテリに接続されたワイヤハーネスには大電流が流れ、これによりワイヤハーネスから電磁波が放射される。このため、ワイヤハーネスの近傍に通信機器等が置かれていると、これが誤作動する虞がある。上記のように構成された本発明によれば、ワイヤハーネスが金属製のトーボードによって覆われているので、ワイヤハーネスから放射される電磁波をシールドすることができ、通信機器等の誤作動を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッテリ搭載装置によれば、乗員に圧迫感を与えたり、トランクスペースを狭くしたりすることなく、バッテリを車両に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を搭載した車両全体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を搭載した車両を後ろ斜め上方から見た斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う側面断面図である。
図4】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置全体を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を、バッテリ及びトーボードを取り外した状態で示す正面図である。
図6】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置において、バッテリから延びるワイヤハーネスの配索を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置において排気ダクトの排出口を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を搭載した車両1全体を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を搭載した車両1を後ろ斜め上方から見た斜視図である。図3は、図2のIII-III線に沿う側面断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のバッテリ搭載装置を搭載した車両1は、その前部に前方から順にエンジン2、モータ/ジェネレータ4、トランスミッション6が配置され、後部の車輪8が駆動される所謂FR車である。エンジン2及びモータ/ジェネレータ4によって生成された動力は、車両1の幅方向中央を前後方向に延びるプロペラシャフト(図示せず)を介して後部の車輪8に伝達される。このプロペラシャフトは、運転席シート12と、助手席シート14の間を車両1の前後方向に延びるトンネル部10aの中に通されている。さらに、運転席シート12及び助手席シート14の後方には、後部座席シート16が設けられている。また、運転席シート12及び助手席シート14の前方、中央には、車室内を暖房する暖房ユニット18が設けられている。
【0017】
さらに、図2に示すように、サイドメンバ10bが、車両1の両側面に沿って車両の前後方向に延びるように夫々設けられている。なお、図2には、助手席シート14を取り外した状態が図示されている。また、このサイドメンバ10bとトンネル部10aを接続するように、車幅方向に延びる第1クロスメンバ10c、及び第2クロスメンバ10dが夫々設けられている(図2には助手席側のみ図示)。ここで、第1クロスメンバ10cは、運転席シート12及び助手席シート14(図2には図示せず)の後端部付近に配置され、第2クロスメンバ10dは、運転席シート12及び助手席シート14の前端部付近に配置されている。
【0018】
さらに、第1クロスメンバ10cと第2クロスメンバ10dの間には、シートレール10eが車両1の前後方向に延びるように取り付けられている(図2には助手席側のみ図示)。即ち、シートレール10eの前部は第2クロスメンバ10dに取り付けられ、後部は第1クロスメンバ10cに取り付けられている。運転席シート12及び助手席シート14は、夫々、平行に延びる2本のシートレール10eにより、車両1の前後方向にスライド可能に支持されている。
【0019】
また、図2に示すように、車両1の前部に配置された暖房ユニット18には暖房エアダクト18aが接続されている。この暖房エアダクト18aは、暖房ユニット18から車両1の後方に向かって延び、第2クロスメンバ10dの上側を越えて助手席シート14の下方の空間まで延びている。これにより、暖房ユニット18によって加熱された暖房エアは暖房エアダクト18aによって案内され、助手席シート14の下方に位置する吹き出し口18bから後方に向けて吹き出され、後部座席シート16の下方へ流れる。
【0020】
次に、図3に示すように、車室C内にはバッテリ22を含む本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置20が備えられ、このバッテリ搭載装置20は、助手席シート14の前方、且つ助手席シート14よりも下方に配置されている。換言すれば、バッテリ22は、車室Cのダッシュパネル24a直後の、フロアパネル24bの上方に、車両1の前方側が高くなるように斜めに配置され、助手席シート14に着座した乗員の足先近傍に位置している。バッテリ22は、モータ/ジェネレータ4によって回生又は発電された電力を蓄積するように構成され、蓄積された電力はモータ/ジェネレータ4の駆動や、他の車載電気機器(図示せず)を作動させるために使用される。なお、バッテリ搭載装置20の詳細については、後述する。
【0021】
また、バッテリ22の上方には、板状の金属製のトーボード26が配置されており、バッテリ22が上方から覆われている。即ち、バッテリ22は、トーボード26及び助手席シート14の前方、且つ助手席シート14よりも下方に配置されている。この結果、バッテリ22は、トーボード26と車両1のフロアパネル24bとの間に配置されることとなる。また、このトーボード26は、バッテリ22の上面に沿って車両1の前方側が高くなるように斜めに配置されていると共に、助手席シート14に着座した乗員の足先近傍に位置しているので、フットレストとしても利用することができる。また、車両1の減速時等に、乗員の足から荷重を受けた場合であっても、バッテリ22が損傷されることのないよう、トーボード26は十分な強度を備えている。
【0022】
次に、図4乃至図7を参照して、本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置を説明する。
図4は、本発明の実施形態によるバッテリ搭載装置20全体を示す側面図である。図5は、本実施形態によるバッテリ搭載装置20を、バッテリ22及びトーボード26を取り外した状態で示す正面図である。図6は、バッテリ22から延びるワイヤハーネスの配索を示す斜視図である。図7は、本実施形態によるバッテリ搭載装置20の排気ダクトの排出口を示す断面図である。
【0023】
図4及び図5に示すように、バッテリ搭載装置20は、バッテリ22と、このバッテリ22を上方から覆うトーボード26と、バッテリ搭載装置20をフロアパネル24bに固定する固定部材28と、バッテリ22を支持するためのバッテリブラケット30と、を有する。さらに、本実施形態においては、バッテリ搭載装置20はバッテリ22を冷却する機能も備えており、バッテリ22を冷却するための空気が流れる冷却用ダクトである吸気ダクト32と、バッテリ22に冷却風を送る冷却ファン34と、バッテリ22を冷却した後の空気を車室C内に排出する排出ダクト36と、を有する。さらに、バッテリ搭載装置20は、吸気ダクト32から供給された空気をバッテリ22のケースに接触させ、バッテリを冷却する熱交換チャンバ38(図5)を有する。
【0024】
バッテリ22は、本実施形態においては、概ね直方体の金属製のケースに収められたリチウムイオンバッテリである。バッテリ22は、面積の広い前面22aが助手席シート14の方へ斜め上方に向けられ、この前面22aはトーボード26によって覆われている。前面22aの反対側の背面22bは、バッテリブラケット30によって支持、固定されている。
【0025】
固定部材28は、金属板をプレス加工して形成された部材であり、その脚部28a、28bをフロアパネル24bにボルト止めすることにより、バッテリ搭載装置20を車両1に固定するように構成されている。この固定部材28により、バッテリブラケット30及びバッテリ22は、フロアパネル24bに対して傾斜して固定される。
【0026】
バッテリブラケット30は、金属板をプレス加工して形成された部材であり、バッテリ22の一部の側面を覆うように構成されている。バッテリブラケット30は、固定部材28に取り付けられて、バッテリ22を背面22b側から支持している。これにより、バッテリ22は、その前面22aが車両の前方に向かって高くなるように傾斜して固定される。また、バッテリブラケット30には、バッテリ22の前面22aに向かって延びるアーム部30a、30b、30cが設けられている。トーボード26は、これらのアーム部30a、30b、30cによって、バッテリ22前面22aの上方に固定される。また、バッテリブラケット30の車幅方向外側の端部には折曲部30dが形成されており、この折曲部30dにより、バッテリ22の車幅方向外側の側面の一部、及び冷却ファン34の一部が覆われている。
【0027】
トーボード26は、上述したように、金属製の概ね長方形板状の部材であり、バッテリ22の上方に、バッテリ22の前面22aとほぼ平行に取り付けられている。また、トーボード26の車幅方向外側の端部には、下方に向かって折り曲げられた折曲部26aが形成されており、この折曲部26aによってバッテリ22の車幅方向外側の側面の一部、及び冷却ファン34の一部が覆われている。また、トーボード26の、車幅方向内側の端部には、脆弱部26b(図2)が設けられている。図2に示すように、脆弱部26bは車両1のトンネル部10aに隣接する部分に設けられており、車両1が側面衝突した場合等に、脆弱部26bが優先的に(トーボード26の他の部分よりも先に)変形されるようになっている。この脆弱部26bは、トーボード26の他の部分よりも板厚を薄く形成することにより、容易に変形されるように構成されている。
【0028】
また、図6に示すように、バッテリ22への充電、及びバッテリ22からの電力の供給を行うためのワイヤハーネス23は、バッテリ22の前面22aとトーボード26の間を通って延びている。なお、図6においては、トーボード26、運転席シート12、助手席シート14等を取り外した状態が図示されている。バッテリ22から延びるワイヤハーネス23は、車幅方向内側へ向かい、トンネル部10aの上を越えて運転席側へ延びている。さらに、ワイヤハーネス23は、運転席シート12の下方においてフロアパネル24bの下側へ延び、車両1前部のモータ/ジェネレータ4(図1)等に接続されている。このように、ワイヤハーネス23は、バッテリ22の前面22aとトーボード26の裏面の間の空間を通されており、トーボード26によって保護されている。また、ワイヤハーネス23に電流が流れると、その周囲に電磁波が放射されるが、ワイヤハーネス23は金属製のトーボード26によって覆われているため、ワイヤハーネス23から放射される電磁波がシールドされる。これにより、ワイヤハーネス23から放射される電磁波が車室C内に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0029】
一方、図4及び図5に示すように、吸気ダクト32は、バッテリ22に対して車幅方向内側に設けられた逆L字形のダクトであり、概ね水平に延びる水平部分と、この水平部分の一端から鉛直下方に延びる垂直部分から構成されている。また、水平部分の先端には、車室C内の空気を吸い込むための吸気口32aが、下方に向けて設けられている。また、吸気ダクト32は、トーボード26の脆弱部26bの下側に位置している。このため、車両1の側面衝突時等において、トーボード26の脆弱部26bが変形された場合には、その下側にある吸気ダクト32も容易に変形される。これにより、側面衝突時等において、吸気ダクト32の側方に配置されているバッテリ22が損傷されるのを防止することができる。
【0030】
熱交換チャンバ38は、バッテリ22の背面22bに配置された薄い箱状の部材であり、吸気ダクト32の垂直部分の下端部と連通するように構成されている。この熱交換チャンバ38の上面側は全面的に開口されており、この開口部がバッテリ22の背面22bによって閉塞されている。これにより、吸気ダクト32を通って吸入された空気が熱交換チャンバ38内に流入すると、バッテリ22の背面22bに沿って空気が流れ、バッテリ22を冷却することができる。
【0031】
冷却ファン34は、熱交換チャンバ38に対して、吸気ダクト32の反対側に取り付けられた送風装置であり、バッテリ22を冷却するための冷却風を流すように構成されている。即ち、冷却ファン34は、熱交換チャンバ38の車幅方向外側の端部に、バッテリ22の側面に隣接して配置されている。この冷却ファン34を作動させることにより、車室C内の空気は、吸気口32aから吸気ダクト32に吸入され、熱交換チャンバ38内を通って冷却ファン34に到達する。熱交換チャンバ38内でバッテリ22を冷却した空気は、冷却ファン34により、排出ダクト36を通って車室C内に排出される。また、図4に示すように、冷却ファン34は、車両1の側面から見て、その一部がバッテリ22と重なるように配置されており、バッテリ搭載装置20全体がコンパクトにされている。また、冷却ファン34は、ファン制御装置34a(図4)に接続されており、バッテリ22の温度が所定温度以上に上昇すると、冷却ファン34が作動されるようになっている。
【0032】
排出ダクト36は、冷却ファン34の下流側に接続された通風路であり、熱交換チャンバ38内においてバッテリ22を冷却した後の空気を、車室C内に排出するように構成されている。即ち、図2及び図4に示すように、排出ダクト36は、バッテリ22の側面から下方に下った後、フロアパネル24bに沿って車両1の後方に向けて延びている。さらに、フロアパネル24bに沿って後方へ延びる排出ダクト36は、第2クロスメンバ10dの上を越えて助手席シート14下方の空間内へ延びている。即ち、排出ダクト36先端の排出口36aは助手席シート14下方の空間に位置している。また、排出ダクト36の先端部は車幅方向外側に向けて湾曲されているため、排出ダクト36先端の排出口36aは、サイドメンバ10bの方に向けられている。
【0033】
また、図2及び図7に示すように、助手席シート14下方の空間内には、暖房ユニット18の暖房エアダクト18aも延びている。本実施形態においては、排出ダクト36は、暖房エアダクト18aに対して車幅方向外側に配置されており、暖房エアダクト18a及び排出ダクト36は、車両1の側面から見て一部が重なるように配置されている。このように、車両1の幅方向外側から延びる排出ダクト36を、幅方向内側から延びる暖房エアダクト18aよりも外側に配置しているので、図2に示すように、暖房エアダクト18aと排出ダクト36が上面視において交差することはない。
【0034】
ここで、助手席シート14下方の空間は、下方にフロアパネル24b、上方に助手席シート14のシートクッション14a、車幅方向内側の側方にトンネル部10a、車幅方向外側の側方にサイドメンバ10bが夫々配置され、これらの部材によって助手席シート14下方の空間が形成されている。また、図2に示すように、助手席シート14下方の空間の、車両1の前側には第2クロスメンバ10dが配置され、後側には第1クロスメンバ10cが配置されている。このため、排出ダクト36先端の排出口36aは、第1クロスメンバ10cよりも車両1の前側に、第2クロスメンバ10dよりも車両1の後ろ側に位置している。
【0035】
上記のように、バッテリ搭載装置20の排気が排出される排出口36aは、車幅方向外側に向けられているので、排出口36aから排出された空気はサイドメンバ10bの表面(壁面)等に当たって助手席シート14下方の空間内で拡散される。このように、助手席シート14下方の空間を形成する壁面に向けて空気を排出口36aから排出することにより、排出された空気が助手席シート14下方の空間から直接流出するのを回避することができる。このため、排出口36aから排出された空気は、助手席シート14下方の空間内で拡散されると共に滞留し、各部材の間から低い流速で、少しずつ流出する。このように、バッテリ22を冷却した後の空気を拡散させながら車室C内に排出することにより、車室C内の乗員は、排出口36aから空気が排出されていることに気づきにくい。
【0036】
一方、暖房エアダクト18aの吹き出し口18bは、助手席シート14下方の空間内において車両1の後方に向けて開口している。このため、暖房ユニット18からの暖気は、助手席シート14下方の空間から車両1の真後ろに向けて噴射され、効率良く後部座席シート16の下方に案内され、後部座の足元が暖房される。また、本実施形態においては、暖房エアダクト18aの吹き出し口18bは、排出ダクト36の排出口36aに対して車幅方向内側に配置されると共に、排出口36aは車幅方向外側に向けられている。このため、吹き出し口18bからの暖気と、排出口36aからの排気が干渉して暖房に悪影響を与えたり、排出口36aからの排気が暖気と共に直接後部座席に向かったりするのを防止することができる。
【0037】
本発明の実施形態のバッテリ搭載装置によれば、トーボード26が助手席シート14の前方、且つ助手席シート14よりも下方に配置され、バッテリ22はトーボード26と車両1のフロアパネル24bの間に配置される(図3)ので、乗員に与える圧迫感を最小にしながら、十分なバッテリ収納スペースを確保することができる。
【0038】
また、本実施形態のバッテリ搭載装置によれば、トーボード26が、乗員の足先近傍に車両1の前方側が高くなるように傾斜して配置されている(図3)ので、乗員はトーボード26をフットレストとして活用することができ、バッテリ22に十分なスペースを確保しながら、乗員に与える圧迫感を最少にすることができる。また、バッテリ22がトーボード26によって覆われているため、車両1の減速時等に乗員の足から荷重を受けた場合でも、バッテリ22に過大な力が加わり損傷されるのを防止することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のバッテリ搭載装置によれば、トーボード26と共に、バッテリ22も車両1の前方側が高くなるように傾斜して配置されている(図3)ので、トーボード26の下側にデッドスペースが生じにくく、スペースを有効に活用することができる。
【0040】
また、本実施形態のバッテリ搭載装置によれば、トーボード26には、車幅方向内側の部位に脆弱部26aが設けられている(図2)。この結果、車両1の側面衝突時等において脆弱部26aが変形され、バッテリ22の移動が許容されるので、バッテリ自体が損傷を受けにくくすることができる。
【0041】
さらに、本実施形態のバッテリ搭載装置によれば、トーボード26の脆弱部26aの下側には、冷却用ダクトである吸気ダクト32が配置されているので、車両1の側面衝突時等においては脆弱部26aと共に吸気ダクト32が変形され、バッテリ自体が損傷を受けにくくすることができる。
【0042】
また、本実施形態のバッテリ搭載装置によれば、ワイヤハーネス23が金属製のトーボード26によって覆われている(図6)ので、ワイヤハーネス23から放射される電磁波をシールドすることができ、通信機器等の誤作動を防止することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、エンジン及びモータ/ジェネレータが車両の前部に搭載されたFR車に本発明が適用されていたが、バッテリが搭載された任意の形式の車両に本発明を適用することができる。
【0044】
また、上述した実施形態においては、バッテリ搭載装置20は、バッテリ22を冷却する機能を備えていたが、冷却機能を備えていないバッテリ搭載装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 エンジン
4 モータ/ジェネレータ
6 トランスミッション
8 車輪
10a トンネル部
10b サイドメンバ
10c 第1クロスメンバ
10d 第2クロスメンバ
10e シートレール
12 運転席シート
14 助手席シート
14a シートクッション
16 後部座席シート
18 暖房ユニット
18a 暖房エアダクト
18b 吹き出し口
20 バッテリ搭載装置
22 バッテリ
22a 前面
22b 背面
23 ワイヤハーネス
24a ダッシュパネル
24b フロアパネル
26 トーボード
26a 折曲部
26b 脆弱部
28 固定部材
28a、28b 脚部
30 バッテリブラケット
30a、30b、30c アーム部
32 吸気ダクト(冷却用ダクト)
32a 吸気口
34 冷却ファン
34a ファン制御装置
36 排出ダクト
36a 排出口
38 熱交換チャンバ
C 車室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7