(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】送電ネットワークの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/36 20060101AFI20221212BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H02J3/36
H02J3/38
(21)【出願番号】P 2021577356
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067927
(87)【国際公開番号】W WO2020260519
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-22
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517202755
【氏名又は名称】スーパーグリッド インスティテュート
【住所又は居所原語表記】23 RUE CYPRIAN, 69100 VILLEURBANNE, FRANCE
(73)【特許権者】
【識別番号】518039545
【氏名又は名称】サントラルスペレック
【氏名又は名称原語表記】CENTRALESUPELEC
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】511230347
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス ジュアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】コスタン ヴァレンチン
(72)【発明者】
【氏名】ダム ギルネイ
(72)【発明者】
【氏名】ベンチャイブ アブデルクリム
(72)【発明者】
【氏名】ラムナビ-ラガリーグ フランソワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルスカン ブルーノ
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3035476(EP,A1)
【文献】国際公開第2014/053171(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254669(US,A1)
【文献】特表2018-535633(JP,A)
【文献】特開2003-158824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/36
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電ネットワーク(1)の制御方法であって、前記送電ネットワーク(1)は、複数の高電圧直流線(320)と、個別の添え字iで識別されるn個のAC/DCコンバータ(21,22,23,24,25)とを含み、nは3以上であり、前記コンバータは、前記高電圧直流線によって相互に接続され、前記AC/DCコンバータ(321)のそれぞれは、一方が、個別の添え字iで識別される交流電圧バス(11)に接続され、他方が、前記高電圧直流線(320)の1つに接続され、前記制御方法は、
添え字iの各コンバータが、電力設定値Pdc
i
【数36】
を適用し、
jは、交流電圧バスiとそれに接続されたコンバータとは異なる、交流電圧バスとそれに接続されたn個のうちのいずれかのコンバータを示す添え字であり、Pconx
ijは、n個の前記コンバータが前記交流電圧バスに接続された状態で、前記送電ネットワーク(1)を介して、添え字iのバスと添え字jのバスとの間で交換される電力基準であり、
添え字iの各コンバータが、他のコンバータのそれぞれについて、前記送電ネットワークを介してバスiからバスjに送られた
電力基準Pconx
ij
の最大値である最大電力基準
【数37】
を保存し、
添え字iの各コンバータが、他のコンバータのそれぞれについて、前記送電ネットワークを介してバスjからバスiによって受けられた
電力基準Pconx
ij
の最大値である最大電力基準
【数38】
を保存し、
添え字iの各コンバータが、
前記送電ネットワークに送られた、その最大有効電力
【数39】
を保存し、
添え字iの各コンバータが、前記送電ネットワークによって受けられた、その最大有効電力
【数40】
を保存し、
添え字iの各コンバータが、以下の関係が保証されるように、電力基準Pconx
ij
を規定する、
【数41】
【数42】
【数43】
送電ネットワークの制御方法。
【請求項2】
添え字iの各コンバータについて、送電ネットワークのオペレータによって適用された所望の有効電力Pdc0
iが回復され、
添え字iの各コンバータが、Pdc0
i+ΔP
i=Pdc
iに基づき、値ΔP
iを用いて、所望の有効電力Pdc0
iを修正する、請求項1
に記載の送電ネットワークの制御方法。
【請求項3】
添え字iのバスの電圧V
iの瞬時値と、前記電圧の角度θ
iの瞬時値又は周波数f
iの瞬時値を回復し、
添え字iの各コンバータが、項ΔPdcs
i又は項ΔPdca
iを含む値ΔP
iを用いて、所望の有効電力Pdc0
iを修正し、ここで、
【数44】
【数45】
であり、
ここで、kδ
ijは、寄与調整パラメータであり、θref
ijは、定常状態におけるバスiとバスjとの角度差の基準であり、kf
ijは、寄与調整パラメータである、請求項
2に記載の送電ネットワークの制御方法。
【請求項4】
θref
ijがゼロでない値である、請求項
3に記載の送電ネットワーク(3)の制御方法。
【請求項5】
項ΔPdcs
i又は項ΔPdca
iは、添え字iのコンバータの演算回路によって算出されることを特徴とする、請求項
3又は4に記載の送電ネットワークの制御方法。
【請求項6】
前記添え字iのコンバータは、数式47が示す条件であるときに、
前記送電ネットワーク(1)を介して添え字iのバスと添え字kのバスとの間で交換される電力値
【数46】
が、添え字iのコンバータが他の各コンバータに出力した個別の電力値よりも大きいコンバータkを決定する、
【数47】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の送電ネットワーク(3)の制御方法。
【請求項7】
前記交流電圧バスの少なくとも2つが相互に接続される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の送電ネットワーク(3)の制御方法。
【請求項8】
前記コンバータのうちの少なくとも2つが、高電圧直流線を介してポイントツーポイント接続された、それらのDCインタフェースを備えていない、請求項1~
7のいずれか1項に記載の送電ネットワークの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ネットワークの制御方法に関し、特に、複数の交流バスの間の電力交換を可能にするように設計された、いくつかの直流電力線を介して接続されたメッシュ型直流ネットワークのいくつかのコンバータステーションを含む電気ネットワークの安定性を確保するための制御方法に関する。
【0002】
メッシュ型直流ネットワークを交流ネットワークに統合することにより、有効電力及び無効電力を制御することができ、これは、再生可能電源から交流ネットワークへの電力入力を容易にする有望な技術である。
【0003】
ネットワークの誤動作は、時折、或る発電機が加速し、他の発電機が減速する一時的な電力の不均衡によって生じる。そして、我々は、ネットワークの複数の交流電圧バスの間の位相シフトの変化を監視できる。外乱の後にシステムが平衡状態に戻らない場合、発電機が非同期で動作し、電力交換が保証できなくなるため、システムが不安定になる。例えば、発電機は、ネットワークから切り離すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなメッシュ型直流ネットワークの統合により、実際には、これらの交流ネットワークの一時的な安定性のゆとりが減少する。これにより、このようなネットワークは、大規模な障害の後に不安定になり易い。
【0005】
Javier Renedo等による「Active Power Control Strategies for Transient Stability Enhancement of AC/DC Grids With VSC-HVDC Multi-Terminal Systems」というタイトルの刊行物は、2016年11月のIEEE Transactions on Power Systems,vol.31,no.6,4595~4605ページにおいて、交流ネットワークの一時的な安定性を改善する制御手段について記載している。この解決手段では、様々な変換ポイントのコンバータが、高電圧直流線によって相互に接続され、コンバータの各対の間にポイントツーポイントリンクが形成される。特に、この刊行物は、各交流バスの周波数を測定して、各直流ネットワークコンバータの有効電力設定値を補正することを提案しており、コンバータの有効電力の補正は、このコンバータに接続された交流ネットワークバスの周波数の測定に応じて行われる。交流バスの周波数は、電圧の角速度として識別することもできる。位相ベクトル測定ユニットを用いて、瞬時角速度を測定することができる。
【0006】
このような制御方法は、特に、特定の外乱において、一時的な安定性のゆとりを十分に増やすことができない。一般的に、電力をコンバータに速やかに設定して、ネットワークのニーズに合わせつつ、複数のコンバータと、これらのコンバータを接続する高電圧直流線の電気的な制限を考慮することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これらの欠点の1つ以上を解決することを目的とする。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定するように、送電ネットワークの制御方法に関する。
【0008】
また、本発明は、従属クレームの変形例に関する。当業者であれば、明細書又は従属クレームの各特徴は、独立クレームの特徴と独立して組み合わせることができ、これは中間的な一般化を構成しないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は、限定的ではなく、添付図面を参照して、以下に示す説明から明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明の実施のための配電ネットワークの一例の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のネットワークでエミュレート可能な仮想的な交流接続を示す。
【
図3】
図3は、複数の交流ネットワークバスの間の相互接続を有する単純化されたネットワークを表す。
【
図4】
図4は、本発明に係るシステムにおけるコンバータの制御方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、シミュレーションを実行するために用いられる基準ネットワークを表す。
【
図6】
図6は、本発明を実施したときの基準ネットワークの発電機の速度の変化を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明を実施したときの基準ネットワークの発電機の間の位相シフトの変化を示す図である。
【
図8】
図8は、基準ネットワークにおいて、本発明に係る制御方法で使用されるコンバータの電力の変化を示す図である。
【
図9】
図9は、最新技術にしたがって動作する、
図5のネットワークの発電機の非同期化を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の特定の実施形態におけるコンバータの制御方法の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す特定の場合のコンバータ制御方法を採用したネットワークの実施形態のための角度差の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、配電ネットワーク1の一例を概略的に示しており、これは、複数のコンバータステーションを有する高電圧直流ネットワークを含む。このように、配電ネットワークは、複数のコンバータステーションを含み、それぞれが個別のAC/DCコンバータを含む。これらのコンバータステーションはそれぞれ、コンバータ21~25を含む。コンバータ21~25は、例えば、モジュラーマルチレベルコンバータである。各コンバータ21~25は、高電圧直流線を介して他のコンバータの少なくとも1つのDCインタフェースに接続されたDCインタフェースを有する。これにより、コンバータ21,25のDCインタフェースは、高電圧線115を介して接続され、コンバータ24,25のDCインタフェースは、高電圧線145を介して接続され、コンバータ2
2,23のDCインタフェースは、高電圧線123を介して接続され、コンバータ22,24のDCインタフェースは、高電圧線124を介して接続され、コンバータ23,24のDCインタフェースは、高電圧線123を介して接続される。
【0011】
したがって、本発明は、各対のコンバータのDCインタフェースの間にポイントツーポイントの高電圧DCリンクがない場合に実施することができる。したがって、コンバータ21とコンバータ22の間、コンバータ21とコンバータ23の間、コンバータ21とコンバータ24の間、コンバータ22とコンバータ23の間、コンバータ22と25コンバータの間、及びコンバータ23と25との間には、直流高電圧線が存在しない。
【0012】
また、各コンバータ21~25は、個別のACインタフェースを有する。各コンバータ21~25のACインタフェースは、それぞれ交流電圧バス51~55に接続される。各交流電圧バス51~55は、それぞれ交流ネットワーク41~45に接続される。図に示す例では、交流ネットワーク41~45の間には、相互接続が存在しない。しかしながら、
図3に示す簡略化した例のように、いくつかの交流ネットワークの間に相互接続を設けてもよい。したがって、
図3の例では、リンク523が、交流電圧バス53を交流電圧バス52に接続する。ここでは、2つのマシン42,422が、交流電圧バス52に接続される。
【0013】
本発明によれば、ネットワークの2つのコンバータ(高電圧直流線によって直接的又は間接的に接続される)の間の有効電力は、これら2つのコンバータの電力制限を考慮して、これらの各コンバータに保存されたルールに従って変調される。したがって、ネットワークにおいて有効電力の変調を非常に速やかに行うことができると共に、コンバータ及び高電圧直流線の電気的な大きさのルールを遵守することができる。
【0014】
より詳細には、添え字iのコンバータのそれぞれは、電力設定値Pdciを適用する。
【0015】
【0016】
ここで、Pconxijは、送電ネットワーク1を介して、添え字iのバスと添え字jのバスとの間で交換される電力基準であり、nは、交流電圧バス41~45に接続されるコンバータの数である。
【0017】
添え字iの各コンバータは、他のコンバータのそれぞれについて、送られた最大電力基準を保存する。
【0018】
【0019】
この最大電力基準は、送電ネットワーク1を介して、バスiからバスjに送られる。
【0020】
添え字iの各コンバータは、他のコンバータのそれぞれについて、受けた最大電力基準を保存する。
【0021】
【0022】
この最大電力基準は、送電ネットワーク1を介して、バスjからバスiによって受信される。
【0023】
添え字iの各コンバータは、送られて保存された最大電力値と、受けて保存された最大電力値を監視できるように、各電力基準Pconxijを規定する。
【0024】
以下とすることが有利である。
【0025】
【0026】
各電力基準Pconxijを規定するために、添え字iの各コンバータは、送電ネットワークを介して送られた最大有効電力を保存することが有利である。
【0027】
【0028】
そして、添え字iの各コンバータは、送電ネットワーク1を介して受けた、その最大有効電力を保存する。
【0029】
【0030】
ここで、添え字iの各コンバータは、以下の関係が保証されるように、電力基準Pconxijを規定する。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
送電ネットワーク1のオペレータに関連する動作モードによれば、この制御方法は、
添え字iの各コンバータについて、送電ネットワーク1のオペレータによって適用された有効電力設定値Pdc0iが回復され、
添え字iの各コンバータが、Pdc0i+ΔPi=Pdciに基づき、値ΔPiを用いて、有効電力設定値Pdc0iを修正する。
【0035】
したがって、Pdci値に関する従前のルールが遵守されるように、有効電力設定値の修正ΔPiが行われる。
【0036】
本発明の変形例を実現するコンバータ2を含むコンバータステーションにおける機能が、
図4の図に示される。この代替例では、同期電力補正及び減衰電力補正が用いられる。この代替例では、同期電力補正のみを用い、又は減衰電力補正のみを用いることもできる。
【0037】
以下の処理が、コンバータステーションのコンバータ2のそれぞれについて実行される。コンバータステーション内の添え字iのコンバータ2に対し、オペレータは、有効電力設定値Pdc0iを供給する。これにより、コンバータ2の制御回路6は、この有効電力設定値Pdc0iを回復する。制御回路6は、交流ネットワーク4に接続された交流電圧バス5の電圧Viの瞬時値、電圧角度θiの瞬時値を回復し、また、この電圧の周波数fiの瞬時値を回復することが有利である。これらの瞬時値Vi、θi及びfiは、交流電圧バス5の位相同期ループによって回復できる。この場合、コンバータ2の連続するインタフェースは、高電圧直流線31及び32に接続され、他のコンバータステーションの他のコンバータとポイントツーポイント接続をする。
【0038】
制御回路6は、有効電力設定値Pdc0iをコンバータ2に適用し、項ΔPdcsiを有効電力設定値Pdc0iに加算することにより、有効電力設定値Pdc0iを修正する。
【0039】
【0040】
ここで、nは、交流電圧バスに接続されるコンバータの数であり、kδijは、同期の補正電力に対する寄与調整パラメータであり、θrefijは、定常状態におけるバスiとバスjの角度差の基準である。θrefijは、バスiとjとの間の基準位相シフトを考慮し、ゼロ以外の値とすることが有利である。
【0041】
このような動作モードでは、各ペアのコンバータの間にポイントツーポイント高電圧リンクが存在しない場合でも、少なくとも1つの同期電力項(terme de puissance synvhronisante, synchronizing power term)を、各ペアのコンバータの間に追加することができる。このような動作モードでは、送電ネットワーク1のオペレータは、有効電力設定値Pdc0iと角度θrefijの基準値を、コンバータに供給するだけでよい。
【0042】
添え字iのコンバータは、数式23に示す条件のときに、送電ネットワーク1を介して添え字iのバスと添え字kのバスとの間で交換された電力値Pconxikが、添え字iのコンバータが他のコンバータのそれぞれに出力した個別の電力値よりも大きいコンバータkを決定することが有利である。
【0043】
【0044】
制御回路6は、有効電力設定値Pdciをコンバータ2に適用し、項ΔPdcaiを有効電力設定値Pdc0iに加算することによって、有効電力設定値Pdc0iを修正することが有利である。
【0045】
【0046】
kfijは、補正減衰電力に対する寄与調整パラメータである。
【0047】
この場合、有効電力設定値Pdciは、以下の値とすることができる。
【0048】
【0049】
図3に示す簡略化されたネットワークの例では、コンバータ21~23の有効電力設定値は、以下の通りである。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
パラメータkδij及びkfijの計算では、高電圧直流ネットワークのダイナミクスが、交流ネットワークと、交流ネットワークに接続された電気機械のダイナミクスよりも遥かに大きいという事実が考慮される。したがって、高電圧直流ネットワークの挙動を規定する代数方程式は、各コンバータステーションを、その電流入力モデルで表現することにより、後者のダイナミクスを無視できる。
【0054】
高電圧直流ネットワークに重要なエネルギー蓄積装置がない場合、この高電圧直流ネットワークに供給される電力の合計は、この高電圧直流ネットワークから出力される電力の合計に等しいと定義される。
図3の例では、次の方程式を遵守する必要がある。
【0055】
【0056】
さらに、通常の動作時には、電流制御及び電圧制御により、次の方程式が保証される。
【0057】
【0058】
そして、寄与調整パラメータは、以下のルールに従う必要がある。
【0059】
【0060】
補正項がある場合でも、設定値電力の和が常に0であることを保証することにより、どのような種類の制御においても、高いレイヤにおいて、そのような計算を行うことができる。したがって、本発明は、高電圧直流ネットワークがマスター/スレーブシステムとして構成される場合と、コンバータステーションが電圧ドループ制御で動作するように、高電圧直流ネットワークが構成された場合の双方において、容易に実施することができる。
【0061】
同期電力項は、コンバータiとコンバータjとの間の送電線として機能する。コンバータiとコンバータjとの間の送電線をエミュレートするために必要とされるのは、適切なゲインkδijの計算のみである。
【0062】
複数の交流バスの間に接続が存在しない場合でも、マルチポイントの高電圧直流ネットワーク1から、交流バスに接続された仮想的なアドミタンスのネットワークをエミュレートすることができる。したがって、n個のコンバータステーションを有する高電圧直流ネットワークは、n-1個の自由度があることに留意すべきである。したがって、
図2は、説明した制御方法を用いて、
図1のネットワーク1によってエミュレートすることができる仮想的な交流接続を示す。したがって、コンバータステーション21~25のうちの1つのACインタフェースと、その他のコンバータステーション21~25の各ACインタフェースとの間のACリンクをエミュレートすることができる。以下のことが、図に示されている。
【0063】
一方のコンバータ21のACインタフェースと、各コンバータ22~25の個別のACインタフェースとの間のACリンク312~315をエミュレートすることができる。
【0064】
一方のコンバータ22のACインタフェースと、各コンバータ23~25の個別のACインタフェースとの間のACリンク323~325をエミュレートすることができる。
【0065】
一方のコンバータ23のACインタフェースと、各コンバータ24及び25の個別のACインタフェースとの間のACリンク334及び335をエミュレートすることができる。
【0066】
一方のコンバータ24のACインタフェースとコンバータ25の個別のACインタフェースとの間のACリンク345をエミュレートすることができる。
【0067】
したがって、ネットワーク1の2つのコンバータステーションの間にポイントツーポイントの高電圧DCリンクが存在しない場合でも、これらのコンバータステーションの間で、補正同期電力又は補正減衰電力を、常に統合することができる。
【0068】
一般に、外部システムに接続されたm個のノードを有する、そのようなマルチポイントの交流ネットワークは、クロン縮約法を用いて、これらのm個のノードの間のラインのパターンに縮小できる。
【0069】
特に、交流ネットワークへの同期電力の入力は、本発明に係る2つの方法で実現できる。
【0070】
第1の解決手段
【0071】
【0072】
θrefijは、電力フローの計算によって算出される基準角度差であり、制御レイヤ、例えば、第2の制御によって決定される。
【0073】
第2の解決手段によれば、所望の平衡点を得るために、ゲインkδijが算出される。したがって、ネットワークオペレータが、定常状態で電力Pdc0を得たい場合、オペレータは、添え字iのバスと添え字jのバスとの間にのみ、同期電力を入力することを望むであろう。この電力は、次のように分類できる。
【0074】
【0075】
したがって、値P0及びkδijは、定常状態でPdcs0の所望の値を得るように定義できる。
【0076】
仮想的な送電線又はエミュレートされた送電線について、コンバータステーションiとコンバータステーションjの間で送られる電力は、以下のように定義できる。
【0077】
【0078】
ここで、Yijは、コンバータステーションi及びコンバータステーションjのACインタフェースの間のエミュレートされた仮想的なアドミタンス値である。
【0079】
Vi及びVjは、既知の値であるため、アドミタンス値Yijについて、所望の挙動をエミュレートすることができる。
【0080】
ネットワーク1のオペレータが所望する基準電力は、以下のように定義することができる。
【0081】
【0082】
ここで、kδij=Vi×Vj×Yijである。ネットワーク1のオペレータは、項P0のみを算出し、又は、P0=0と設定してもよい。
【0083】
添え字iのコンバータにおいて、電力制限、減衰電力補正、及び同期電力補正を行うことにより、4つのコンバータステーションを有するネットワークを制御する実施例を、
図10に示す。
【0084】
図11は、誤動作の場合における、ネットワークの特定の事例に適用するための複数の交流電圧バスの間の位相シフトと、
図10を参照して説明した制御方法とを示す図である。全ての位相シフトは収束しており、これは、非常に短い時間でネットワークが安定したことを意味することに留意すべきである。
【0085】
図5に示すように、39個の交流バスと10個の発電機401~410を含むIEEE New England Power Grid Modelの例についてシミュレーションを行った。このシミュレーションの例では、ネットワークは、3つのAC-DCコンバータステーションを有する。このモデルでは、コンバータステーションのACインタフェースが、参照符号39のバスに接続される。別のコンバータステーションのACインタフェースが、参照符号16のバスに接続される。別のコンバータステーションのACインタフェースが、参照符号19のバスに接続される。
【0086】
参照符号5のバス及び参照符号8のバスの間のラインで発生する障害が想定されている。コンバータの電力設定値を一定にすることにより、
図9の結果に示すように、参照符号31のバス及び参照符号10のバスに接続された発電機が、徐々に非同期になり、最終的には、システムからの切り離しが監視される。
図9における値θ
iは、
図5の発電機40iに対応する。
【0087】
本発明の制御方法を適用すると、
図6に示す結果が得られた。
図6は、参照符号5のバスと参照符号8のバスの間のラインでの故障の発生後の、発電機の速度の時間変化を示す。故障の後、全ての発電機が振動することに留意されたい。しかしながら、この振動は減衰し、発電機の回転速度は、数秒後に安定値に達する。
【0088】
図7は、本発明に係る制御方法を使用する場合の基準発電機1と他の発電機との間の角度位相シフトを示す。故障後、位相シフトは振動するが、限定的であることに留意すべきである。他の各発電機について、数秒後に、位相シフトの振動は速やかに減衰し、一定の値で安定する。
【0089】
図8は、本発明に係る制御処理を実行する場合に、コンバータによって変調された電力を示す図である。3つのコンバータステーションにおいて、補正項を用いて実現される電力の変調により、上述の結果を得ることができる。