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特許7191300無線通信システム、スレーブ無線装置及びマスタ無線装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】無線通信システム、スレーブ無線装置及びマスタ無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20221212BHJP
   H04W 76/30 20180101ALI20221212BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20221212BHJP
   H04W 84/20 20090101ALI20221212BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W76/30
H04W4/08
H04W84/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020504918
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006718
(87)【国際公開番号】W WO2019171979
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018039324
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】阿木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 憲正
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332974(JP,A)
【文献】特開2010-028637(JP,A)
【文献】特開2005-269593(JP,A)
【文献】米国特許第06856844(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用設備内に複数設置されたマスタ無線装置と、複数の機器に設けられ、前記マスタ無線装置と無線通信が可能な複数のスレーブ無線装置とを有する無線通信システムであって、
複数の前記機器は、前記産業用設備内を移動可能であり、
複数の前記マスタ無線装置は、マスタ制御部とマスタ通信部とをそれぞれ有し、
複数の前記スレーブ無線装置は、スレーブ制御部とスレーブ通信部とをそれぞれ有し、
前記マスタ制御部は、前記マスタ無線装置の予め決められた通信対象領域に入った前記スレーブ無線装置に対して無線接続を要求するための接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信し、
前記スレーブ無線装置のスレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記接続要求信号を受信した場合に、前記無線接続を行い、
前記スレーブ無線装置と無線接続されている前記マスタ無線装置のマスタ制御部は、前記通信対象領域から外れる前記スレーブ無線装置に対して前記無線接続の切断を要求するための切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信し、
前記スレーブ無線装置のスレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記切断要求信号を受信した場合に、前記無線接続を切断し、
前記スレーブ制御部は、前記無線接続が完了した旨の接続完了信号、及び、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を、前記スレーブ通信部を介して前記マスタ通信部に送信可能であり、
前記マスタ制御部は、前記受信完了信号を受信するか、又は、前記スレーブ通信部から前記マスタ通信部への応答が一定時間ない場合、前記無線接続の切断が行われたと認識し、
複数の前記機器に設けられる複数の前記スレーブ無線装置によって1つのバンクが構成され、
1つの前記マスタ無線装置の前記通信対象領域に1つの前記バンクがあるときのみ、1つの前記マスタ無線装置と、1つの前記バンクの複数の前記スレーブ無線装置とが通信接続される、無線通信システム。
【請求項2】
請求項に記載の無線通信システムであって
数の前記スレーブ無線装置の各々は、自己の所属するバンクの識別番号と、複数の前記マスタ無線装置の識別番号とを少なくとも格納するスレーブ側テーブルをさらに有し、
複数の前記マスタ無線装置の各々は、複数の前記バンクの識別番号と、自己の識別番号とを少なくとも格納するマスタ側テーブルをさらに有し、
前記マスタ制御部は、前記マスタ側テーブルを参照して、1つの前記バンクの識別番号と、自己の識別番号とを含む前記接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して、前記通信対象領域に入った1つの前記バンクに所属する複数の前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信し、
前記スレーブ制御部は、前記スレーブ側テーブルを参照して、前記スレーブ通信部が受信した前記接続要求信号に含まれる1つの前記バンクの識別番号と、自己の所属するバンクの識別番号とが一致し、且つ、前記接続要求信号に含まれる前記マスタ無線装置の識別番号が前記スレーブ側テーブルに格納されている場合に、前記無線接続を行う、無線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信システムであって、
複数の前記マスタ無線装置に接続されるコンピュータをさらに有し、
前記コンピュータは、複数の前記マスタ無線装置に1つの前記スレーブ無線装置との前記無線接続又は前記無線接続の切断を指示する指示信号を出力し、
前記マスタ制御部は、
前記コンピュータから前記指示信号が入力された場合に、前記接続要求信号又は前記切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ通信部に送信し、
前記無線接続が完了した旨の接続完了信号、又は、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を、前記スレーブ制御部から前記スレーブ通信部を介して前記マスタ通信部が受信するか、あるいは、前記スレーブ通信部から前記マスタ通信部への応答が一定時間ない場合に、前記無線接続の完了又は前記無線接続の切断の完了を通知するための完了通知信号を前記コンピュータに出力する、無線通信システム。
【請求項4】
所定の機器に設けられ、産業用設備内に複数設置されたマスタ無線装置と無線通信が可能なスレーブ無線装置であって、
前記機器は、前記産業用設備内を移動可能であり、
前記スレーブ無線装置は、スレーブ制御部とスレーブ通信部とを有し、
前記スレーブ制御部は、
前記スレーブ通信部が前記マスタ無線装置から接続要求信号を受信した場合に、前記マスタ無線装置との無線接続を行い、
前記スレーブ通信部が前記マスタ無線装置から切断要求信号を受信した場合に、前記マスタ無線装置との無線接続を切断し、
前記無線接続が完了した旨の接続完了信号、及び、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を、前記スレーブ通信部を介して前記マスタ無線装置に送信可能であり、
前記スレーブ通信部から前記マスタ無線装置への応答を一定時間行わないことで、前記無線接続を切断し、
前記スレーブ無線装置は、1つのバンクに設けられ、
1つの前記マスタ無線装置の通信対象領域に1つの前記バンクがあるときのみ、1つの前記マスタ無線装置と、前記スレーブ無線装置とが通信接続される、スレーブ無線装置。
【請求項5】
産業用設備内に設置され、複数の機器に設けられた複数のスレーブ無線装置と無線通信が可能なマスタ無線装置であって、
複数の前記機器は、前記産業用設備内を移動可能であり、
前記マスタ無線装置は、マスタ制御部とマスタ通信部とを有し、
前記マスタ制御部は、前記マスタ無線装置の予め決められた通信対象領域に入った前記スレーブ無線装置に対して無線接続を要求するための接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置に送信し、
前記マスタ無線装置と無線接続されている前記スレーブ無線装置が前記通信対象領域から外れる場合に、前記マスタ制御部は、前記スレーブ無線装置に対して前記無線接続の切断を要求するための切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置に送信し、
前記マスタ制御部は、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を前記スレーブ無線装置から前記マスタ通信部を介して受信するか、又は、前記スレーブ無線装置から前記マスタ通信部への応答が一定時間ない場合、前記無線接続の切断が行われたと認識し、
複数の前記機器に設けられる複数の前記スレーブ無線装置によって1つのバンクが構成され、
前記マスタ通信部は、前記通信対象領域に1つの前記バンクがあるときのみ、1つの前記バンクの複数の前記スレーブ無線装置との間で通信接続する、マスタ無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタ無線装置、及び、所定の機器に設けられ且つマスタ無線装置と無線通信が可能な複数のスレーブ無線装置を有する無線通信システムと、マスタ無線装置と無線通信が可能なスレーブ無線装置と、複数のスレーブ無線装置と無線通信が可能なマスタ無線装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-188868号公報には、マスタ無線装置の通信範囲に配置された複数の機器に複数のスレーブ無線装置が設けられることで、マスタ無線装置と複数のスレーブ無線装置との間で無線通信が可能な無線通信システムが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
上記公報では、特定のマスタ無線装置と複数のスレーブ無線装置とを無線接続するように構成されている。そのため、機器の移動に伴って、スレーブ無線装置がマスタ無線装置の通信範囲から外れると、特定のマスタ無線装置と、通信範囲から外れたスレーブ無線装置との間で無線通信が行えなくなる。また、このスレーブ無線装置が他のマスタ無線装置の通信範囲に入っても、通信範囲に入ったスレーブ無線装置と他のマスタ無線装置とを無線接続することができない。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、機器が移動する場合でも、スレーブ無線装置とマスタ無線装置との間で無線通信を行うことが可能な無線通信システム、スレーブ無線装置及びマスタ無線装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明に係る無線通信システムは、マスタ無線装置と、複数の機器に設けられ、前記マスタ無線装置と無線通信が可能な複数のスレーブ無線装置とを有する無線通信システムである。複数の前記機器は、移動可能である。複数の前記マスタ無線装置は、マスタ制御部とマスタ通信部とをそれぞれ有する。複数の前記スレーブ無線装置は、スレーブ制御部とスレーブ通信部とをそれぞれ有する。この場合、前記スレーブ無線装置と無線接続されている前記マスタ無線装置のマスタ制御部は、前記マスタ無線装置の予め決められた通信対象領域から外れる前記スレーブ無線装置に対して無線接続の切断を要求するための切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信する。また、前記スレーブ無線装置のスレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記切断要求信号を受信した場合に、前記無線接続を切断する。
【0006】
これにより、前記通信対象領域から外れる前記スレーブ無線装置は、接続フリー状態となる。この結果、前記スレーブ無線装置が他のマスタ無線装置の通信対象領域に入った場合、前記スレーブ無線装置と前記他のマスタ無線装置とを無線接続することが可能となる。従って、本発明では、前記機器が移動する場合でも、前記スレーブ無線装置と前記他のマスタ無線装置との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0007】
また、前記マスタ制御部は、前記通信対象領域に入った前記スレーブ無線装置に対して前記無線接続を要求するための接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信する。前記スレーブ無線装置のスレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記接続要求信号を受信した場合に、前記無線接続を行う。これにより、接続フリー状態の前記スレーブ無線装置と前記マスタ無線装置とを容易に無線接続することができる。
【0008】
さらに、前記スレーブ制御部は、前記無線接続が完了した旨の接続完了信号、及び、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を、前記スレーブ通信部を介して前記マスタ通信部に送信可能である。前記マスタ制御部は、前記受信完了信号を受信するか、又は、前記スレーブ通信部から前記マスタ通信部への応答が一定時間ない場合、前記無線接続の切断が行われたと認識することができる。
【0009】
さらにまた、複数の前記機器に設けられる複数の前記スレーブ無線装置によって1つのバンクが構成されてもよい。この場合、複数の前記スレーブ無線装置の各々は、自己の所属するバンクの識別番号と、複数の前記マスタ無線装置の識別番号とを少なくとも格納するスレーブ側テーブルをさらに有する。また、複数の前記マスタ無線装置の各々は、複数の前記バンクの識別番号と、自己の識別番号とを少なくとも格納するマスタ側テーブルをさらに有する。そして、前記マスタ制御部は、前記マスタ側テーブルを参照して、1つの前記バンクの識別番号と、自己の識別番号とを含む前記接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して、前記通信対象領域に入った1つの前記バンクに所属する複数の前記スレーブ無線装置のスレーブ通信部に送信する。これを受けて、前記スレーブ制御部は、前記スレーブ側テーブルを参照して、前記スレーブ通信部が受信した前記接続要求信号に含まれる1つの前記バンクの識別番号と、自己の所属するバンクの識別番号とが一致し、且つ、前記接続要求信号に含まれる前記マスタ無線装置の識別番号が前記スレーブ側テーブルに格納されている場合に、前記無線接続を行えばよい。
【0010】
このように、前記マスタ側テーブル及び前記スレーブ側テーブルのようなデータファイルを用いて、複数の前記マスタ無線装置の各々と、1つの前記バンクとのペアリングが行われる。これにより、前記無線接続を正確に且つ効率よく行うことができる。また、故障している前記マスタ無線装置を新たなマスタ無線装置に交換する際、1つの前記バンクを構成する複数の前記スレーブ無線装置から前記新たなマスタ無線装置に、前記スレーブ側テーブルに格納された各識別番号を送信すれば、前記新たなマスタ無線装置の前記マスタ側テーブルに前記各識別号をコピーすることができる。これにより、前記無線通信システムの復旧作業が容易になる。
【0011】
また、前記無線通信システムは、複数の前記マスタ無線装置に接続されるコンピュータをさらに有してもよい。この場合、前記コンピュータは、複数の前記マスタ無線装置に1つの前記スレーブ無線装置との前記無線接続又は前記無線接続の切断を指示する指示信号を出力する。前記マスタ制御部は、前記コンピュータから前記指示信号が入力された場合には、前記接続要求信号又は前記切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ通信部に送信する。また、前記マスタ制御部は、前記無線接続が完了した旨の接続完了信号、又は、前記切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を、前記スレーブ制御部から前記スレーブ通信部を介して前記マスタ通信部が受信するか、あるいは、前記スレーブ通信部から前記マスタ通信部への応答が一定時間ない場合には、前記無線接続の完了又は前記無線接続の切断の完了を通知するための完了通知信号を前記コンピュータに出力すればよい。
【0012】
これにより、前記コンピュータは、入力される前記完了通知信号に基づいて、前記無線接続の完了、又は、前記無線接続の切断の完了を容易に確認することができる。
【0013】
また、本発明に係るスレーブ無線装置は、所定の機器に設けられ、マスタ無線装置と無線通信が可能なスレーブ無線装置であって、前記機器は、移動可能である。この場合、前記スレーブ無線装置は、スレーブ制御部とスレーブ通信部とを有する。前記スレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記マスタ無線装置から切断要求信号を受信した場合に、前記マスタ無線装置との無線接続を切断する。
【0014】
これにより、前記スレーブ無線装置は、接続フリー状態となる。この結果、前記マスタ無線装置の通信対象領域から外れて、他のマスタ無線装置の通信対象領域に入った場合、前記他のマスタ無線装置と無線接続することが可能となる。従って、本発明では、前記機器が移動する場合でも、前記スレーブ無線装置と前記他のマスタ無線装置との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記スレーブ制御部は、前記スレーブ通信部が前記マスタ無線装置から接続要求信号を受信した場合に、前記無線接続を行えばよい。これにより、接続フリー状態の前記スレーブ無線装置と前記マスタ無線装置とを容易に無線接続することができる。
【0016】
さらに、本発明に係るマスタ無線装置は、複数の機器に設けられた複数のスレーブ無線装置と無線通信が可能なマスタ無線装置であって、複数の前記機器は、移動可能である。この場合、前記マスタ無線装置は、マスタ制御部とマスタ通信部とを有する。前記マスタ無線装置と無線接続されている前記スレーブ無線装置が前記マスタ無線装置の予め決められた通信対象領域から外れる場合に、前記マスタ制御部は、前記スレーブ無線装置に対して無線接続の切断を要求するための切断要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置に送信する。
【0017】
これにより、前記スレーブ無線装置は、前記無線接続を切断し、接続フリー状態となる。この結果、前記スレーブ無線装置は、前記通信対象領域から外れて、他のマスタ無線装置の通信対象領域に入った場合、前記他のマスタ無線装置と無線接続することが可能となる。従って、本発明では、前記機器が移動する場合でも、前記スレーブ無線装置と前記他のマスタ無線装置との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0018】
また、前記マスタ制御部は、前記通信対象領域に入った前記スレーブ無線装置に対して前記無線接続を要求するための接続要求信号を、前記マスタ通信部を介して前記スレーブ無線装置に送信すればよい。これにより、接続フリー状態の前記スレーブ無線装置と前記マスタ無線装置とを容易に無線接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
図2図2は、1つのマスタ無線装置の通信対象領域に1つのバンクがある場合を示す説明図である。
図3図3は、コンピュータ、マスタ無線装置及び複数のスレーブ無線装置の接続関係を示すブロック図である。
図4図4は、図3のマスタ側テーブルを示す図である。
図5図5は、図3のスレーブ側テーブルを示す図である。
図6図6は、マスタ無線装置とスレーブ無線装置との無線接続処理の流れを示すシーケンス図である。
図7図7は、コンピュータから機器に対する制御処理の流れを示すシーケンス図である。
図8図8は、マスタ無線装置とスレーブ無線装置との無線接続の切断処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る無線通信システム、スレーブ無線装置及びマスタ無線装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0021】
[1.本実施の形態の構成]
本実施の形態に係る無線通信システム10は、図1図3に示すように、複数のマスタ無線装置12と、複数の機器14に設けられ、後述する複数のバンク32を構成し、且つ、1つのマスタ無線装置12との間で無線通信が可能な複数のスレーブ無線装置16と、複数のマスタ無線装置12に接続されるコンピュータ18とを有する。
【0022】
図1及び図2は、無線通信システム10を産業用設備内の無線通信に適用した一例を図示している。この一例では、自動車生産工場のコンベアライン20に無線通信システム10を適用している。この場合、コンベアライン20には、作業エリア21が設けられ、この作業エリア21には、後述する台車28の搬送方向(図1に示す時計回りの方向)に沿って、所定の作業を行うための複数のステーション22が順に設けられている。複数のステーション22の各々には、1つのマスタ無線装置12が設置されると共に、所定の作業を行うための不図示の複数の産業用ロボットが所定位置に設置されている。これらの産業用ロボットの各々にも、1つのマスタ無線装置12と無線通信が可能な無線装置が接続されている。
【0023】
なお、本実施の形態では、複数のステーション22及び複数のマスタ無線装置12の数をL個(Lは、1以上の整数)とする。また、マスタ無線装置12は、所定の通信範囲を有するが、この通信範囲のうち、マスタ無線装置12が設置されるステーション22内の領域を、1つのバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間で無線通信を行うための通信対象領域24に設定している。従って、隣接するステーション22のマスタ無線装置12との間では、通信範囲の一部が重複しても、通信対象領域24が重複することはない。
【0024】
コンベアライン20には、完成前の自動車26(図2参照)を載置した移動用の機器である複数の台車28が、搬送方向に沿って順次搬送される。複数の台車28において、自動車26の周辺には、自動車26のドア等の自動車部品をクランプするクランプシリンダ等の複数の機器14が配置されている。複数の機器14の各々には、スレーブ無線装置16と、測定対象の機器14の状態を検出する各種のセンサ30とが設けられている。従って、1台の台車28には、複数の機器14、複数のスレーブ無線装置16及び複数のセンサ30が設けられている。また、台車28が搬送方向に搬送されることで、複数の機器14、複数のスレーブ無線装置16及び複数のセンサ30は、台車28と一体に移動する。
【0025】
台車28に配置された複数のスレーブ無線装置16は、1つのバンク32を構成する。そのため、台車28が移動することで、バンク32も移動する(図1参照)。図1では、説明の便宜上、搬送方向に沿ってバンク32が移動している様子を図示している。
【0026】
図1及び図2に示すように、台車28がコンベアライン20に沿って1つのステーション22に搬送されると、台車28に設けられたバンク32が当該ステーション22に配置されたマスタ無線装置12の通信対象領域24に入る。これにより、マスタ無線装置12とバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間で無線接続が行われる。
【0027】
また、当該ステーション22において、台車28に載置された自動車26に対して所定の作業が行われた後に、このステーション22から下流側の次のステーション22に向けて台車28が搬送されると、バンク32は、通信対象領域24から外れることになる。この場合、マスタ無線装置12と、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間では、無線接続の切断処理が行われる。従って、無線接続が切断した後の複数のスレーブ無線装置16は、接続フリー状態となる。
【0028】
そのため、本実施の形態では、複数のステーション22毎に、1つのマスタ無線装置12の通信対象領域24に1つのバンク32があるときにのみ、1つのマスタ無線装置12と、1つのバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間で無線通信が行われる。
【0029】
また、本実施の形態でも、1つのマスタ無線装置12と複数のスレーブ無線装置16との間では、上記公報と同様に、周波数ホッピング方式で無線通信が行われる。すなわち、マスタ無線装置12では、無線接続の切断後、次のバンク32の複数のスレーブ無線装置16との間で無線通信が行えるように、通信対象領域24から外れたバンク32の同期周波数とは異なる同期周波数のチャンネルに切り替える。一方、接続フリー状態の複数のスレーブ無線装置16は、次のマスタ無線装置12との間で無線通信が行えるように、前回の無線接続での同期周波数とは異なる同期周波数のチャンネルに切り替える。周波数ホッピング方式によるチャンネルの切り替えは、上記公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0030】
なお、本実施の形態では、1台の台車28について、1つのバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16の個数をM個(Mは、1以上の整数)とする。また、本実施の形態では、バンク32の個数(台車28の台数)をN個とする。
【0031】
図3は、1つのステーション22について、コンピュータ18と、マスタ無線装置12と、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との接続関係を示したブロック図である。なお、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16は、互いに同一構成である。また、複数のステーション22の各々に配置されているマスタ無線装置12は、互いに同一構成である。
【0032】
コンピュータ18とマスタ無線装置12とは、フィールドバス等の通信線34を介して接続され、信号の送受信が可能である。コンピュータ18は、例えば、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)又はPC(パーソナル・コンピュータ)であり、産業用設備(自動車生産工場のコンベアライン20)の監視を少なくとも行う。コンピュータ18は、通信線34を介してマスタ無線装置12に各種の指示(例えば、指示信号、制御指示信号)を出力する。また、コンピュータ18には、マスタ無線装置12から各種の指示に対する応答(例えば、完了通知信号)が入力される。さらに、コンピュータ18は、無線通信システム10全体を監視している。例えば、複数のバンク32の識別番号であるバンクIDを有することで、マスタ無線装置12から入力される応答内容に基づき、各バンク32の現在位置や、各バンク32(複数のスレーブ無線装置16)とマスタ無線装置12との無線接続の状態等を認識することが可能である。
【0033】
マスタ無線装置12は、マスタ制御部12a、マスタ通信部12b及びマスタ側テーブル12cを有する。マスタ制御部12aは、マスタ無線装置12の全体を制御すると共に、マスタ通信部12bを介して、マスタ無線装置12の通信対象領域24にあるスレーブ無線装置16との間で、無線通信による信号の送受信を行う。
【0034】
また、マスタ制御部12aは、コンピュータ18から入力される指示信号に基づき、無線接続を要求するための接続要求信号、又は、無線接続の切断を要求するための切断要求信号を、マスタ通信部12bを介して通信対象領域24にあるスレーブ無線装置16に送信する。さらに、マスタ制御部12aは、無線接続が完了した旨の接続完了信号、又は、切断要求信号を受信した旨の受信完了信号をマスタ通信部12bがスレーブ無線装置16から受信した場合、無線接続の完了、又は、無線接続の切断の完了を通知するための完了通知信号をコンピュータ18に出力する。また、マスタ制御部12aは、受信完了信号の受信に代えて、スレーブ無線装置16からマスタ通信部12bへの応答が一定時間ない場合、完了通知信号をコンピュータ18に出力してもよい。このように、マスタ制御部12aは、受信完了信号を受信した場合、又は、スレーブ無線装置16からの応答が一定時間ない場合には、無線接続の切断が行われたと認識して、完了通知信号を出力する。
【0035】
スレーブ無線装置16は、スレーブ制御部16a、スレーブ通信部16b及びスレーブ側テーブル16cを有する。スレーブ制御部16aは、スレーブ無線装置16の全体を制御すると共に、スレーブ通信部16bを介して、マスタ無線装置12との間で無線通信による信号の送受信を行う。この場合、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bで受信されるマスタ無線装置12からの制御指示信号を機器14に供給することで、機器14を動作させ、一方で、センサ30が検出した機器14の状態を示す検出信号を、スレーブ通信部16bを介してマスタ無線装置12に送信する。
【0036】
また、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bが接続要求信号を受信した場合、マスタ無線装置12との無線接続を行った後、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに接続完了信号を送信する。さらに、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bが切断要求信号を受信した場合、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに受信完了信号を送信した後、マスタ無線装置12との無線接続の切断を行う。
【0037】
図4は、マスタ側テーブル12cに格納されている各種の識別番号(ID)を示す図であり、図5は、スレーブ側テーブル16cに格納されている各種のIDを示す図である。
【0038】
マスタ側テーブル12cには、自己の識別番号であるマスタIDと、複数のバンク32の識別番号であるバンクIDと、複数のバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16の識別番号であるスレーブIDとが格納されている。図4では、1番目のマスタ無線装置12であることを示す「MID1」のマスタIDと、0~NまでのバンクIDとがマスタ側テーブル12cに格納されていることを図示している。また、図4では、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16を示す「SIDij」(i=0~Nの整数、j=1~Mの整数)のスレーブIDも格納されている。なお、本実施の形態では、「1~N」までのバンクIDを有する複数のバンク32は存在する一方で、「0」のバンクIDのバンク32は将来の拡張用の予備のバンクとして準備されていることに留意する。
【0039】
スレーブ側テーブル16cには、自己が所属するバンク32のバンクIDと、自己の識別番号であるスレーブIDと、複数のマスタ無線装置12のマスタIDとが格納されている。図5では、3番目のバンク32であることを示す「3」のバンクIDと、「SID31」のスレーブIDと、「MIDk」(k=1~Lの整数)のマスタIDとがスレーブ側テーブル16cに格納されていることを図示している。
【0040】
従って、マスタ制御部12aは、図4のマスタ側テーブル12cを参照して、1つのバンクID、1つのスレーブID及び自己のマスタIDを含む接続要求信号を、マスタ通信部12bを介してスレーブ通信部16bに送信する。スレーブ制御部16aは、図5のスレーブ側テーブル16cを参照して、スレーブ通信部16bが受信した接続要求信号に含まれるバンクIDと、自己の所属するバンクIDとが一致し、接続要求信号に含まれるスレーブIDと、自己のスレーブIDとが一致し、且つ、接続要求信号に含まれるマスタIDがスレーブ側テーブル16cに格納されていれば、無線接続を行う。
【0041】
一方、スレーブ制御部16aは、スレーブ側テーブル16cを参照して、自己の所属するバンクID、自己のスレーブID、及び、無線接続対象のマスタ無線装置12のマスタIDを含む接続完了信号を、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに送信する。マスタ制御部12aは、マスタ側テーブル12cを参照して、マスタ通信部12bが受信した接続完了信号に含まれるバンクID及びスレーブIDがマスタ側テーブル12cに格納され、接続完了信号に含まれるマスタIDと、自己のマスタIDとが一致すれば、無線接続が完了したことを認識する。
【0042】
そのため、バンク32(バンクID)の数や、複数のバンク32内のスレーブ無線装置16(スレーブID)の数は、マスタ側テーブル12cの容量の大きさに応じて、増減することが可能である。また、マスタ無線装置12(マスタID)の数は、スレーブ側テーブル16cの容量の大きさに応じて、増減することが可能である。
【0043】
[2.本実施の形態の動作]
以上のように構成される本実施の形態に係る無線通信システム10、マスタ無線装置12及びスレーブ無線装置16の動作について、図6図8のシーケンス図を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、図1図5も参照しながら説明する。
【0044】
この動作説明では、1つのステーション22に1台の台車28が搬送されてマスタ無線装置12の通信対象領域24に1つのバンク32が入ってから、台車28の移動によってバンク32が通信対象領域24から出ていくまでの動作について説明する。なお、この動作は、図1に示す全てのステーション22において、同様に行われることに留意する。
【0045】
<2.1 図6の動作(無線接続の動作)>
前述のように、コンピュータ18は、バンクIDを有し、複数のマスタ無線装置12から入力される情報に基づき、全てのバンク32を監視可能である。そのため、ステップS1において、コンピュータ18は、1つのステーション22(図1及び図2参照)に搬送される台車28について、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16が接続フリー状態であると共に、当該ステーション22に設けられたマスタ無線装置12も未接続状態であると認識する。また、コンピュータ18は、このステーション22の通信対象領域24に入るバンク32のバンクIDを把握すると共に、通信対象領域24にバンク32が入ることで、マスタ無線装置12とバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間で無線接続が可能であると判断する。なお、本実施の形態では、周波数ホッピング方式による無線通信を行うので、マスタ無線装置12、及び、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16は、それぞれ、同期周波数のチャンネルの切り替えを予め行っている。
【0046】
次のステップS2において、コンピュータ18は、マスタ無線装置12とバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との無線接続の要求を指示するための指示信号をマスタ無線装置12に出力する。この場合、コンピュータ18は、当該バンク32のバンクIDを含めた指示信号をマスタ無線装置12に出力する。
【0047】
ステップS3で指示信号が入力された場合、次のステップS4において、マスタ無線装置12のマスタ制御部12a(図3参照)は、指示信号の示すバンクIDを認識する。次に、マスタ制御部12aは、マスタ側テーブル12cを参照して、バンクID、1つのスレーブID及び自己のマスタIDを含む接続要求信号を生成し、生成した接続要求信号を、マスタ通信部12bを介して通信対象領域24に送信する。
【0048】
ここで、ステーション22に台車28が搬送され、バンク32が通信対象領域24に入った場合、ステップS5において、バンク32に所属する複数のスレーブ無線装置16のスレーブ通信部16bは、マスタ通信部12bからの接続要求信号を受信する。
【0049】
そして、ステップS6において、複数のスレーブ無線装置16のスレーブ制御部16aは、スレーブ側テーブル16cを参照して、接続要求信号に含まれるバンクIDと、自己の所属するバンク32のバンクIDとが一致し、接続要求信号に含まれるスレーブIDと、自己のスレーブIDとが一致し、且つ、接続要求信号に含まれるマスタIDがスレーブ側テーブル16cに格納されているか否かを判定する。
【0050】
その結果、各IDが一致した場合、次のステップS7において、スレーブ制御部16aは、自己のスレーブ無線装置16に対して無線接続が要求されたものと認識し、マスタIDの示すマスタ無線装置12との間での無線接続処理を行う。その後、ステップS8において、スレーブ制御部16aは、スレーブ側テーブル16cを参照して、自己の所属するバンクID、自己のスレーブID、及び、接続要求信号を送信したマスタ無線装置12のマスタIDを含む接続完了信号を生成し、生成した接続完了信号を、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに送信する。なお、ステップS6において、各IDが一致しない場合、スレーブ制御部16aは、IDが一致する接続要求信号をスレーブ無線装置16が受信するまで待機する。
【0051】
ステップS9において、マスタ通信部12bが接続完了信号を受信した場合、マスタ制御部12aは、マスタ側テーブル12cを参照して、接続完了信号に含まれるバンクID及びスレーブIDがマスタ側テーブル12cに格納され、接続完了信号に含まれるマスタIDと自己のマスタIDとが一致すれば、スレーブIDの示すスレーブ無線装置16との間での無線接続が完了したことを認識する。
【0052】
次のステップS10において、マスタ制御部12aは、バンク32内の全てのスレーブ無線装置16との無線接続が完了したか否かを判定する。全てのスレーブ無線装置16との無線接続が完了していない場合、すなわち、全てのスレーブ無線装置16から接続完了信号が受信されていない場合(ステップS10:NO)、ステップS4に戻り、接続完了信号を受信していないスレーブ無線装置16を対象として、接続要求信号を再度送信する。従って、バンク32内の全てのスレーブ無線装置16との無線接続が完了するまで、ステップS4~S10の処理が繰り返し行われる。
【0053】
ステップS10において、バンク32内の全てのスレーブ無線装置16との無線接続が完了した場合(ステップS10:YES)、次のステップS11において、マスタ制御部12aは、バンク32を構成する全てのスレーブ無線装置16との無線接続が完了したことを示す完了通知信号をコンピュータ18に出力する。ステップS12において、コンピュータ18は、完了通知信号の入力に基づいて、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16とマスタ無線装置12との無線接続が完了し、無線通信が可能な状態になったことを認識することができる。
【0054】
<2.2 図7の動作(機器14に対する制御動作)>
図7のステップS13において、コンピュータ18は、機器14に対する制御を指示するための制御指示信号をマスタ無線装置12に出力する。ステップS14で制御指示信号が入力された場合、次のステップS15において、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bを介して、制御対象の機器14に設けられたスレーブ通信部16bに、制御指示信号を送信する。
【0055】
ステップS16でスレーブ通信部16bが制御指示信号を受信した場合、次のステップS17において、スレーブ制御部16aは、受信した制御指示信号を機器14に供給することで、機器14を動作させる。一方、センサ30は、機器14の動作状態を検出し、その検出信号をスレーブ無線装置16に出力する。ステップS18において、スレーブ制御部16aは、センサ30の検出信号を、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに送信する。
【0056】
ステップS19でマスタ通信部12bが検出信号を受信した場合、次のステップS20において、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bが受信した検出信号をコンピュータ18に出力する。ステップS21において、コンピュータ18は、検出信号の入力に基づいて、制御対象の機器14の状態を認識することができる。
【0057】
次のステップS22において、コンピュータ18は、1台の台車28に配置された全ての機器14に対する制御を完了すべきか否かを判定する。全ての機器14に対する制御が完了していない場合(ステップS22:NO)、コンピュータ18は、ステップS13に戻り、同じ機器14又は他の機器14に対する制御指示信号の出力を行う。このように、ステップS13~S22の処理を繰り返し行うことにより、1つのステーション22において、台車28に載置された自動車26に対する所定の作業を行うことができる。
【0058】
なお、ステップS13~S22において、コンピュータ18は、マスタ無線装置12を介して、ステーション22の通信対象領域24内に設置された産業用ロボットの無線装置に制御指示信号を送信する。これにより、産業用ロボットは、無線装置を介して供給された制御指示信号に基づき、台車28に載置された自動車26に対して、所定の作業を行うことができる。この場合、マスタ無線装置12は、上記公報の技術を利用して、産業用ロボットに設けられた無線装置との間の無線通信を行えばよい。また、ステップS13~S22において、マスタ無線装置12は、上記公報の技術を利用して、スレーブ無線装置16との間の無線通信を行ってもよい。
【0059】
<2.3 図8の動作(無線接続の切断動作)>
自動車26に対する所定の作業が完了し、全ての機器14に対する制御を完了させる場合(図7のステップS22:YES)、図8のステップS23において、コンピュータ18は、マスタ無線装置12と、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16との間での無線接続の切断を指示するための指示信号をマスタ無線装置12に出力する。
【0060】
ステップS24で指示信号が入力された場合、次のステップS25において、マスタ制御部12aは、切断要求信号を生成し、生成した切断要求信号を、マスタ通信部12bを介して通信対象領域24に送信する。
【0061】
ステップS26において、複数のスレーブ無線装置16のスレーブ通信部16bがマスタ通信部12bから切断要求信号を受信した場合、ステップS27において、スレーブ制御部16aは、自己のスレーブ無線装置16に対して無線接続の切断が要求されたものと認識する。そして、スレーブ制御部16aは、切断要求信号を受信した旨の受信完了信号を生成して、生成した受信完了信号を、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに送信する。その後、ステップS28において、スレーブ制御部16aは、マスタ無線装置12との間での無線接続の切断処理を行う。
【0062】
ステップS29において、マスタ通信部12bが受信完了信号を受信した場合、マスタ制御部12aは、受信完了信号を送信したスレーブ無線装置16において、無線接続の切断処理が行われたものと認識する。次のステップS30において、マスタ制御部12aは、バンク32内の全てのスレーブ無線装置16との間での無線接続の切断処理を認識できたか否か、すなわち、全てのスレーブ無線装置16から受信完了信号を受信したか否かを判定する。全てのスレーブ無線装置16との無線接続の切断を認識できない場合、すなわち、全てのスレーブ無線装置16から受信完了信号が受信されていない場合(ステップS30:NO)、ステップS25に戻る。そして、マスタ制御部12aは、受信完了信号を受信していないスレーブ無線装置16を対象として、切断要求信号を再度送信する。従って、バンク32内の全てのスレーブ無線装置16から受信完了信号を受信するまで、ステップS25~S30の処理が繰り返し行われる。
【0063】
バンク32内の全てのスレーブ無線装置16から受信完了信号が受信され、マスタ制御部12aにおいて全てのスレーブ無線装置16との無線接続の切断を認識できた場合(ステップS30:YES)、次のステップS31において、マスタ制御部12aは、バンク32を構成する全てのスレーブ無線装置16との無線接続の切断が完了したことを示す完了通知信号をコンピュータ18に出力する。このように、マスタ無線装置12とバンク32内の複数のスレーブ無線装置16との無線接続が切断されることで、マスタ無線装置12は未接続状態になると共に、複数のスレーブ無線装置16は接続フリー状態となる。その後、マスタ無線装置12、及び、接続フリー状態となった複数のスレーブ無線装置16では、それぞれ、同期周波数のチャンネルの切り替えが行われる。
【0064】
ステップS32で完了通知信号が入力された場合、次のステップS33において、コンピュータ18は、完了通知信号に基づき、バンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16とマスタ無線装置12との間での無線接続の切断が完了し、マスタ無線装置12及び複数のスレーブ無線装置16が共に未接続状態になったことを認識することができる。なお、自動車26に対する所定の作業が完了しているため、台車28が下流側の次のステーション22に向けて搬送されることで、バンク32は、全てのスレーブ無線装置16が接続フリー状態で、通信対象領域24から出ていく。
【0065】
[3.変形例]
本実施の形態において、複数の台車28に代えて、完成前の自動車26を載置した移動用の機器である複数の自動搬送車(AGV)36を搬送方向に移動させてもよい。この場合でも、自動搬送車36に配置された複数のスレーブ無線装置16によりバンク32を構成することができる。
【0066】
また、図6のステップS4において、マスタ無線装置12のマスタ通信部12bは、バンクID及びマスタIDを含む接続要求信号を送信してもよい。これにより、マスタ無線装置12の通信対象領域24に入っているバンク32の複数のスレーブ無線装置16に対して、一斉に接続要求信号を送信することができる。この結果、マスタ無線装置12と複数のスレーブ無線装置16との無線接続を速やかに行うことが可能となる。この場合、マスタ側テーブル12c及びスレーブ側テーブル16cには、少なくともバンクID及びマスタIDが格納されていればよい。
【0067】
さらに、図7のステップS15において、マスタ無線装置12のマスタ通信部12bは、バンクID及びマスタID、又は、バンクID、マスタID及びスレーブIDを含む制御指示信号を送信してもよい。これにより、通信対象領域24に入っているバンク32の複数のスレーブ無線装置16は、ステップS17において、図6のステップS6と同様のID照合処理を行い、自己に接続された機器14に対する制御指示信号であることを認識した上で、該機器14に制御指示信号を供給することができる。
【0068】
さらにまた、図7のステップS18において、スレーブ制御部16aは、センサ30の検出信号にバンクID、マスタID及びスレーブIDを付加し、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに送信してもよい。これにより、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bで受信されたバンクID、マスタID及びスレーブIDに基づき、ステップS15で送信した制御指示信号に対する応答としての検出信号を受信することができたと認識することができる。
【0069】
また、図8のステップS25において、マスタ無線装置12のマスタ通信部12bは、バンクID及びマスタID、又は、バンクID、マスタID及びスレーブIDを含む切断要求信号を送信してもよい。これにより、通信対象領域24に入っているバンク32の複数のスレーブ無線装置16は、ステップS27において、図6のステップS6と同様のID照合処理を行い、自己に対する切断要求信号であることを認識した上で、無線接続の切断処理を行うことができる。
【0070】
さらに、図8に破線で示すように、ステップS27での受信完了信号の送信、及び、ステップS29での受信完了信号の受信に代えて、マスタ制御部12aは、スレーブ無線装置16からマスタ通信部12bへの応答が一定時間ない場合には、該スレーブ無線装置16において無線接続の切断が行われたと認識してもよい。これにより、ステップS30において、全てのスレーブ無線装置16について無線接続の切断が行われたと認識した場合(ステップS30:YES)、マスタ制御部12aは、ステップS31で完了通知信号をコンピュータ18に出力することができる。
【0071】
[4.本実施の形態の効果]
以上のように、本実施の形態に係る無線通信システム10では、複数の機器14、台車28及び自動搬送車36が移動可能である。機器14、台車28及び自動搬送車36に設けられたスレーブ無線装置16と無線接続されているマスタ無線装置12のマスタ制御部12aは、通信対象領域24から外れるスレーブ無線装置16に対して、マスタ通信部12bを介してスレーブ無線装置16のスレーブ通信部16bに切断要求信号を送信する。スレーブ無線装置16のスレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bが切断要求信号を受信した場合に、無線接続を切断する。
【0072】
これにより、通信対象領域24から外れるスレーブ無線装置16は、接続フリー状態となる。この結果、スレーブ無線装置16が他のマスタ無線装置12の通信対象領域24に入った場合、スレーブ無線装置16と他のマスタ無線装置12とを無線接続することが可能となる。従って、機器14、台車28及び自動搬送車36が移動する場合でも、スレーブ無線装置16と他のマスタ無線装置12との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0073】
また、マスタ制御部12aは、通信対象領域24に入ったスレーブ無線装置16に対して、マスタ通信部12bを介してスレーブ通信部16bに接続要求信号を送信する。スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bが接続要求信号を受信した場合に、無線接続を行う。これにより、接続フリー状態のスレーブ無線装置16とマスタ無線装置12とを容易に無線接続することができる。
【0074】
さらに、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bを介してマスタ通信部12bに、接続完了信号及び受信完了信号を送信する。これにより、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bで受信される接続完了信号及び受信完了信号に基づいて、無線接続の完了を容易に確認することができると共に、無線接続の切断が行われたことを容易に認識することができる。また、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bでの受信完了信号の受信に代えて、スレーブ通信部16bからマスタ通信部12bへの応答が一定時間ない場合には、無線接続の切断が行われたと認識してもよい。
【0075】
このように、受信完了信号の受信によって、無線接続の切断が行われたことを確実に認識することができる。また、スレーブ通信部16bからの応答が一定時間ない場合は、スレーブ無線装置16で無線接続の切断が行われ、接続フリー状態に遷移したものと、マスタ制御部12a側で推定することが可能となる。
【0076】
また、複数の機器14、台車28及び自動搬送車36に設けられる複数のスレーブ無線装置16によって1つのバンク32が構成される。複数のスレーブ無線装置16の各々は、自己の所属するバンク32のバンクID、複数のマスタ無線装置12のマスタID及び自己のスレーブIDを格納するスレーブ側テーブル16cをさらに有する。また、複数のマスタ無線装置12の各々は、複数のバンク32のバンクID、自己のマスタID、複数のバンク32に所属する複数のスレーブ無線装置16のスレーブIDを格納するマスタ側テーブル12cをさらに有する。マスタ制御部12aは、マスタ側テーブル12cを参照して、1つのバンクIDと自己のマスタIDとを少なくとも含む接続要求信号を、マスタ通信部12bを介して、通信対象領域24に入った1つのバンク32に所属する複数のスレーブ無線装置16のスレーブ通信部16bに送信する。これを受けて、スレーブ制御部16aは、スレーブ側テーブル16cを参照して、スレーブ通信部16bが受信した接続要求信号に含まれるバンクIDと、自己の所属するバンク32のバンクIDとが一致し、且つ、接続要求信号に含まれるマスタIDがスレーブ側テーブル16cに格納されている場合に、無線接続を行う。
【0077】
このように、マスタ側テーブル12c及びスレーブ側テーブル16cのようなデータファイルを用いて、複数のマスタ無線装置12の各々と、1つのバンク32とのペアリングが行われる。これにより、無線接続を正確に且つ効率よく行うことができる。また、故障しているマスタ無線装置12を新たなマスタ無線装置12に交換する際、1つのバンク32を構成する複数のスレーブ無線装置16から新たなマスタ無線装置12に、スレーブ側テーブル16cに格納された各IDを送信すれば、新たなマスタ無線装置12のマスタ側テーブル12cに各IDをコピーすることができる。これにより、無線通信システム10の復旧作業が容易になる。
【0078】
また、コンピュータ18は、複数のマスタ無線装置12に対して指示信号を出力する。マスタ制御部12aは、指示信号が入力された場合、接続要求信号又は切断要求信号を、マスタ通信部12bを介してスレーブ通信部16bに送信し、一方で、マスタ通信部12bが接続完了信号又は受信完了信号を受信した場合、完了通知信号をコンピュータ18に出力する。これにより、コンピュータ18は、入力される完了通知信号に基づいて、無線接続の完了、又は、無線接続の切断の完了を容易に確認することができる。この場合も、受信完了信号の受信に代えて、スレーブ通信部16bからマスタ通信部12bへの応答が一定時間ないときに、マスタ制御部12aは、完了通知信号をコンピュータに出力してもよい。
【0079】
また、本実施の形態に係るスレーブ無線装置16によれば、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bがマスタ無線装置12から切断要求信号を受信した場合に、マスタ無線装置12との無線接続を切断する。これにより、スレーブ無線装置16は、接続フリー状態となる。この結果、スレーブ無線装置16は、マスタ無線装置12の通信対象領域24から外れて、他のマスタ無線装置12の通信対象領域24に入った場合、他のマスタ無線装置12と無線接続することが可能となる。従って、機器14、台車28及び自動搬送車36が移動する場合でも、スレーブ無線装置16と他のマスタ無線装置12との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0080】
また、スレーブ制御部16aは、スレーブ通信部16bがマスタ無線装置12から接続要求信号を受信した場合に、無線接続を行う。これにより、接続フリー状態のスレーブ無線装置16とマスタ無線装置12とを容易に無線接続することができる。
【0081】
さらに、本実施の形態に係るマスタ無線装置12によれば、マスタ無線装置12と無線接続されているスレーブ無線装置16が通信対象領域24から外れる場合に、マスタ制御部12aは、マスタ通信部12bを介してスレーブ無線装置16に切断要求信号を送信する。これにより、スレーブ無線装置16は、無線接続を切断し、接続フリー状態となる。この結果、スレーブ無線装置16は、通信対象領域24から外れて、他のマスタ無線装置12の通信対象領域24に入った場合、他のマスタ無線装置12と無線接続することが可能となる。従って、機器14、台車28及び自動搬送車36が移動する場合でも、スレーブ無線装置16と他のマスタ無線装置12との間で無線通信を行うことが可能となる。
【0082】
また、マスタ制御部12aは、通信対象領域24に入ったスレーブ無線装置16に対して接続要求信号を、マスタ通信部12bを介してスレーブ無線装置16に送信するので、接続フリー状態のスレーブ無線装置16とマスタ無線装置12とを容易に無線接続することができる。
【0083】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
10…無線通信システム 12…マスタ無線装置
12a…マスタ制御部 12b…マスタ通信部
12c…マスタ側テーブル 14…機器
16…スレーブ無線装置 16a…スレーブ制御部
16b…スレーブ通信部 16c…スレーブ側テーブル
18…コンピュータ 20…コンベアライン
22…ステーション 24…通信対象領域
26…自動車 28…台車
30…センサ 32…バンク
34…通信線 36…自動搬送車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8