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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】免震装置用ベースプレート
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20221212BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
F16F15/04 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021099183
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2022-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521260318
【氏名又は名称】株式会社COM
(73)【特許権者】
【識別番号】521260329
【氏名又は名称】須藤 千秋
(73)【特許権者】
【識別番号】518255499
【氏名又は名称】日本マーツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521261337
【氏名又は名称】株式会社T-tec
(73)【特許権者】
【識別番号】521260330
【氏名又は名称】株式会社FLP
(73)【特許権者】
【識別番号】515274756
【氏名又は名称】日昭建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 千秋
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124479(JP,A)
【文献】特開平10-292668(JP,A)
【文献】特開平10-088853(JP,A)
【文献】特開2021-011921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/02-15/08
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置が取り付けられる取付面を有する免震装置用ベースプレートであって、
平面状に配置されて前記取付面を画定する複数の分割プレートと、
前記取付面と反対側の面に接合されて前記複数の分割プレートの隣り合う分割プレート同士を締結により連結する複数の連結部材と、を含み、
前記連結部材は、連結板と、連結ボルトと、位置決めピンを含み、
前記分割プレートは、前記連結ボルトを螺合するタップ孔と、前記位置決めピンを嵌合させるピン孔を含み、
前記連結板は、前記連結ボルトを通すボルト孔と、前記位置決めピンを嵌合させるピン孔を含む、
ことを特徴とする免震装置用ベースプレート。
【請求項2】
前記複数の分割プレートは、平面状に配置された形態が、リング状、円盤状、矩形状、又は、多角形状をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項3】
前記複数の分割プレートは、平面状に配置された形態が中心から放射状に分割されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項4】
前記複数の分割プレートは、互いに所定の隙間をおいて隣接して配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項5】
前記連結板は、前記分割プレートに接合される面と反対側の面の周縁に面取りが施されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項6】
前記連結ボルトは、前記連結板のボルト孔を通して前記分割プレートのタップ孔に螺合された状態で、その先端が前記分割プレートの取付面から突出しないように形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項7】
前記分割プレートは、複数のアンカーシステムを含み、
前記アンカーシステムは、前記取付面と反対側の面から突出するように固定されると共に前記取付面に接合された前記免震装置を固定する取付ボルトが螺合される長ナットと、前記長ナットの先端側から螺合されたアンカーボルトを含む、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一項に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項8】
前記分割プレートは、前記複数のアンカーシステム同士の間に形成された空気孔を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の免震装置用ベースプレート。
【請求項9】
前記連結部材が配置された連結部分には、吊り治具装着用雌ねじが設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一項に記載の免震装置用ベースプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置用ベースプレートに関し、特に、免震装置を構造物に固定する免震装置用ベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置の取付フランジを包含する平面寸法の円形、矩形、多角形の鋼板に、免震装置の取付ボルトと螺合する袋ナットなどのアンカーシステムが溶接や螺合などで一体化した構造が一般に用いられている。また、充分な耐力を有し、しかも精度良く容易に施工することのできる、免震装置をコンクリート構造物に接合するため、ベースプレートアセンブリは、鋼板製のベースプレートと、前記ベースプレートの第1面に植設され、免震装置をベースプレートアセンブリに固定する固定用ボルトを前記ベースプレートの第2面側から螺合させることのできる複数の長ナットとを備えており、コンクリート構造物は、前記複数の長ナットの各々の両側に配設されて水平に延在する複数の水平補強筋と、該水平補強筋にかぶせるように配設されて鉛直に延在する逆U字形の複数の鉛直補強筋とを含む鉄筋組立体を備える免震装置用ベースプレートアセンブリの設置構造が知られている(特
許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-25358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含め従来技術においては、前述の構造では、鋼板寸法が大きくなり、コストアップを招くだけでなく、輸送や施工での扱いが負担になっている。また、下側ベースプレートの施工時に打設するコンクリートがプレート下に十分に充填されるための工夫が必要である。また、通常ベースプレートは、一枚板状であり、施工現場で所定位置に設置後も天日に曝されるなどの原因により、ベースプレート全体の大きな昇温や、プレート面内の温度差が生じた際、設置時には見られなかった変形、ゆがみ、湾曲が生じ、施工の障害になる例がある。この矯正も施工時の大きな負担となるだけでなく、最終的なベースプレートの品質を低下させる原因にもなっている。すなわち、これらのゆがみや湾曲等は、プレスなどの機械的方法やバーナーであぶるなどの熱的方法などで矯正しなければならず、製造時の大きな負担となるだけでなく、最終的なベースプレートの品質を低下させる問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、変形等を軽減させる免震装置用ベースプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置用ベースプレートは、免震装置が取り付けられる取付面を有する免震装置用ベースプレートであって、平面状に配置されて取付面を画定する複数の分割プレートと、取付面と反対側の面に接合されて複数の分割プレートの隣り合う分割プレート同士を締結により連結する複数の連結部材を含み、連結部材は、連結板と、連結ボルトと、位置決めピンを含み、分割プレートは、連結ボルトを螺合するタップ孔と、位置決めピンを嵌合させるピン孔を含み、連結板は、連結ボルトを通すボルト孔と、位置決めピンを嵌合させるピン孔を含む、ことを特徴とする。
【0007】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、複数の分割プレートは、平面状に配置された形態が、リング状、円盤状、矩形状、又は、多角形状をなす、構成を採用してもよい。
【0008】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、複数の分割プレートは、平面状に配置された形態が中心から放射状に分割されている、構成を採用してもよい。
【0009】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、複数の分割プレートは、互いに所定の隙間をおいて隣接して配置されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、連結板は、分割プレートに接合される面と反対側の面の周縁に面取りが施されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、連結ボルトは、連結板のボルト孔を通して分割プレートのタップ孔に螺合された状態で、その先端が分割プレートの取付面から突出しないように形成されている、構成を採用してもよい。
【0013】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、分割プレートは、複数のアンカーシステムを含み、アンカーシステムは、取付面と反対側の面から突出するように固定されると共に取付面に接合された免震装置を固定する取付ボルトが螺合される長ナットと、長ナットの先端側から螺合されたアンカーボルトを含む、構成を採用してもよい。
【0014】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、分割プレートは、複数のアンカーシステム同士の間に形成された空気孔を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記構成の免震装置用ベースプレートにおいて、連結部材が配置された連結部分には、吊り治具装着用雌ねじが設けられている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の免震装置用ベースプレートによれば、変形等を軽減させることが可能であるという有利な効果を奏する。すなわち、本発明の免震装置用ベースプレートによれば、複数の分割プレート及び隣り合う分割プレート同士を締結により連結する連結部材を含むため、免震装置用ベースプレートに生じる熱膨張や残留ひずみの顕在化などの影響を複数の分割プレート間の近接部で解放することができ、変形等を軽減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施態様における免震装置用ベースプレートの一例を示し、免震装置用ベースプレートの上面図を示す。
図2図2は、本発明の一実施態様における免震装置用ベースプレートの一例を示し、免震装置用ベースプレートの側面図を示す。
図3図3は、本発明の一実施態様における免震装置用ベースプレートの一例を示し、免震装置用ベースプレートの斜め上方から見た図を示す。
図4図4は、本発明の一実施態様における免震装置用ベースプレートの一例を示し、免震装置用ベースプレートの斜め下方から見た図を示す。
図5図5は、本発明の一実施態様における免震装置用ベースプレートの一例を示し、免震装置用ベースプレートの下面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の免震装置用ベースプレート(以下、ベースプレートと称す。)は、平面状に配置されて免震装置が取り付けられる取付面を画定する複数の分割プレートと、分割プレートの取付面と反対側の面に接合されて複数の分割プレートの隣り合う分割プレート同士を締結により連結する複数の連結部材を含む、ことを特徴とする。本発明においては、ベースプレートを複数の部分に分割したため、ベースプレートに生じる熱膨張や残留ひずみの顕在化などの影響を分割プレート間の近接部で解放することができ、ひいては、ベースプレートの変形を軽減させることが可能となる。すなわち、施工現場で所定位置に設置後も天日に曝されるなどの原因により、ベースプレート全体の大きな昇温や、プレート面内の温度差が生じた際、設置時には見られなかった変形が生じ、施工の障害になる例があり、当該矯正も施工時の大きな負担となるだけでなく、最終的なベースプレートの品質を低下させる原因にもなっていたのであるが、本発明においては、これら、ベースプレートの変形を軽減することが可能となる。
【0019】
また、本発明において、分割プレートの数については、特に限定されない。ベースプレートは、免震装置の取付ボルトが螺合されるアンカーシステムを有する。このため、分割はアンカーシステムと干渉しないことが必要とされるという観点から、好ましくは、均等な4分割とすることができる。なお、アンカーシステム設置用の孔と孔との間には、コンクリート流れを良くし、充填を確認できる空気を設けることができる。本発明において、ベースプレートは、分割されていれば足り、特に限定されるものではない。ベースプレートを中心から放射状に分割してもよい。また、ベースプレートの形状も特に限定されない。例えば、リング状、円盤状、矩形状、多角形状等であってもよい。
【0020】
例えば、リング状のベースプレートによって、ベースプレート自体の軽量化を図れる。分割しないリング状のベースプレートにおいては、製作過程ではリングの内側は廃棄されるので、材料歩留まりが悪いことが予想されるが、本発明においては、ベースプレートを分割することにより、一枚の板材から、より多くの分割プレートを取り出すことが可能であり、廃棄される材料の量も大幅に軽減される利点を有する。
【0021】
なお、リング状を含めベースプレートは平面寸法に対し厚さが薄い場合や幅が小さい場合、母材の残留ひずみや取り付けられるアンカーシステムの自重などにより、ベースプレートとして必要とされる平面度を阻害するようなねじれ、湾曲などのゆがみが起きることが予想される。特に防錆処理として溶融亜鉛メッキを用いる場合、処理熱により母材の残留ひずみが顕在化して、この湾曲が大きくなることがある。これらのゆがみや湾曲は、プレスなどの機械的方法やバーナーであぶるなどの熱的方法、あるいはそれらの併用などの方法で矯正しなければならず、製造時の大きな負担となるだけでなく、最終的なベースプレートの品質を低下させる原因にもなることが予想されるが、分割プレートであれば、このような課題も解決可能となる。
【0022】
また、本発明のベースプレートは、免震装置の下部及び/又は上部に設置されることを特徴とする。本発明のベースプレートは、免震装置の上部のみでよく、若しくは下部のみでもよく、又は上部及び下部の両方に設置してもよい。
【0023】
また、本発明のベースプレートは、複数の分割プレートの隣り合う分割プレート同士を、免震装置を取り付ける取付面の裏側から締結により連結部材で連結して一体化したことにより、免震装置を下部構造へ安定的で高い水平性を保って固定することができる。本発明において、連結部材は、隣り合う分割プレート同士を連結できれば特に限定されない。このように、連結部材を有することにより、ベースプレートにおいて、より十分な剛性と平面度を実現することが可能となる。また、連結部材部分に既存のレベル調整装置を適用することによって、ベースプレートの水平度を調整することも可能である。
【0024】
また、上部に設置されるベースプレートは、必要な平面は免震装置のフランジで形成できていると考えられ、連結板は特に必須とする必要はない。この場合、上部分割ベースプレートの機能は免震装置の取付ボルトと柱フーチングに固定されるアンカーボルトの接続のみとすることができる。
【0025】
現状の免震層(基礎と構造躯体の間、免震装置が収まる層)の施工手順では、基礎側のベースプレート(下部のベースプレート)迄施工し、水平な設置面を形成後、積層ゴムなどの免震装置を据え付けることができ(ボルト留め)、その後、上部ベースプレートを免震装置にボルト留めし、上部ベースプレートのアンカーボルトなどを用いて構造躯体の柱フーチングを形成する工程を採用することができる。したがって、少なくとも下部ベースプレートはそれだけで平面を安定的に形成することが期待される。
【0026】
上述のように、レベル調整装置を用いて、ベースプレートの水平度を調整することも可能であるが、隣り合う分割プレート同士を連結板により連結する構成としたことにより、複数の分割プレートをベースプレートとして再構成するにあたり、特に熟練を要する作業などに頼ることなく、簡単、単純な作業を介して、ベースプレートとして具備すべきボルト穴位置精度、平面度を得られるという観点から、前記連結部材は、連結板と、連結ボルトと、位置決めピンとで構成されることを特徴とする。また、本発明のベースプレートの好ましい実施態様において、十分な剛性と平面度を付与するという観点から、前記連結板の厚さは、前記分割プレートの厚さよりも厚くてもよい。本発明において、連結板は位置決めピンと連結ボルトで分割プレート同士を正確な位置に保持することと、ベースプレートが施工中を含め、免震装置を適正に保持し続けられるための剛性と平面度を付与可能とするという観点から、連結板は、好ましくは、分割プレートの厚さの1.2倍、より好ましくは2倍以上の曲げ剛性となるような板厚とすることができる。また、ボルト孔やピン孔も、接合の位置精度を高め、(ボルトの場合)曲げ等の外力に十分抵抗できるために分割プレートと連結板の合計板厚の2倍程度の間隔を有するような配置とすることができる。コンクリート打設時にコンクリート流れを改善するために、連結板の周縁は片面C5程度の面取りを施すことが望ましい。
【0027】
また、本発明のベースプレートの好ましい実施態様において、前記位置決めピンは、1又はそれ以上を有し、当該位置決めピンによって、前記分割プレートと前記連結板とを位置決めしてもよい。また、本発明のベースプレートの好ましい実施態様において、前記連結ボルトは、1又はそれ以上を有し、当該連結ボルトによって、前記分割プレートと、前記連結板とを締結により連結してもよい。分割プレートの両端部には連結板と接続するためのボルト用タップ、ピン孔を設けることができる。ピン孔は、ピンを押し込むだけで分割プレート同士の配置を一位的に決定できるように適切な間隔を持たせた1又は複数配置とすることができる。また、ボルト用タップは、ボルトで連結板と螺合することで、ベースプレートとして十分な剛性と平面度を実現できるよう、リングの半径方向と周長方向それぞれに適切な間隔を持たせた1又は複数配置とすることができる。なお、本発明において、連結ボルトは、ベースプレート、例えばリング状のベースプレートの自重や取扱時の曲げなどによって、分割プレートと連結板の間に生じる曲げ応力を伝達するのに十分な強度を持つことが好ましい。また、ボルトは六角ボルトでも六角穴付きボルトでも可能であるが、免震装置の取付面側に突出することは避けなければならない。
【0028】
また、本発明において、位置決めピンは、適切な間隔に開けられた貫通孔に、適切な呼びのスプリングピンを押し込むことで、分割プレートと連結板の平面的位置関係を一位的に定めることができる。この位置決めの精度が高いことによって組立作業の効率が図られるだけでなく、連結ボルトの片当たりなどを防止でき、振動などによるボルト弛み等の不具合を防止することができる。連結板+連結ボルト+位置決めピンで構成する連結部材と分割プレートに設ける連結用雌ねじ+位置決め孔の態様においては、より簡便に、分割プレート同士を免震装置側が平滑になるように、かつ接続後のアンカーシステムの位置が免震装置の取付ボルトと必要な精度で一致するように接続することができる。
【0029】
また、本発明のベースプレートの好ましい実施態様において、分割プレートに連結ボルトで連結板が締結されたすなわち連結板が配置された連結部分に、吊り治具装着用雌ねじを設けてもよい。
【0030】
また、本発明のベースプレートが適用される免震装置に関しては、特に限定されず、例えば、積層ゴム方式のアイソレータ、当該アイソレータとダンパーを組み合わせたもの、弾性すべり支承などのすべり系アイソレータ、転がり系アイソレータなどの免震装置を挙げることができる。
【0031】
また、免震下部構造の施工方法に関しても、常法により特に限定されない。例えば、コンクリート充填工法、グラウト充填工法等を挙げることができる。
【実施例
【0032】
次に、各図を用いて、本発明の一実施態様における一例のベースプレート及び当該ベースプレートが適用される免震装置について説明するが、本発明は下記一例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0033】
図1は、本発明の免震装置用ベースプレート(以下、前述同様に、ベースプレートと称す。)の一実施形態を示す上面図である。図1においては、免震装置の上部(上部のベースプレートは図示せず。)、アンカーシステム用挿入孔2、下部のベースプレートを形成する複数の分割プレート3、複数の連結ボルト4がそれぞれ示されている。この例において、免震装置の上部1に取り付けられるベースプレートは図示しておらず、免震装置の上部1が示されているが、本発明のベースプレートを免震装置の上部に適用することができる。挿入孔2は、上部の建物と免震装置5とを接続するために使用される。この例においては、ベースプレートを形成する複数の分割プレート3は、4つに分割されたものであるが、これに限定されない。同様に、この例においては、連結部材と、分割プレートに設ける連結用雌ねじ+位置決め孔からなる接続構造をもって、より簡便に、接続後のアンカーシステムの位置が免震装置の取付ボルトと必要な精度で一致させることが可能である。
【0034】
図2は、上記一実施態様を示す側面図である。図2においては、免震装置の上部1、下部のベースプレートを形成する複数の分割プレート3、免震装置5、取付ボルト6、アンカーシステム7がそれぞれ示されている。また、図3は、上記一実施態様を示すものであり、斜め上方から見た斜視図である図3においては、免震装置の上部1、下部のベースプレートを形成する複数の分割プレート3、複数の連結ボルト4、免震装置5、取付ボルト6、アンカーシステム7がそれぞれ示されている。免震装置5地面側とが、アンカーシステム7及び取付ボルト6によって接続されている。
【0035】
図4は、上記一実施態様を示すものであり、斜め下方から見た斜視図である。図4においては、免震装置の上部1、下部のベースプレートを形成する複数の分割プレート3、免震装置5、アンカーシステム7、連結板8、連結ボルト9、位置決めピン10がそれぞれ示されている。この例は連結部材を用いた例であり、連結板8、連結ボルト9、位置決めピン10が示されているが上述のようにレベル調整装置を用いて、ベースプレートの水平度を調整してもよい。
【0036】
図5は、上記一実施態様を示す下面図である。図5においては、下部のベースプレートを形成する複数の分割プレート3、アンカーシステム7、連結板8、連結ボルト9、位置決めピン10、空気孔11がそれぞれ示されている。
【0037】
実際に、一例として下記のようなベースプレートの作成を試みた。一例として、リング状のベースプレートを分割した態様について試験を行った。具体的には、実例として汎用的に使用されるゴム部径φ700用のベースプレートを用いた。
【0038】
分割プレート(分割したプレート)として、外径φ1050、内径φ710(リング幅170)アンカーボルトP.C.Dφ880、板厚t9のものを作成した。分割は均等な4分割で、分割プレート同士には1mmの隙間を設け、連結部材を有する態様のものを作成した。4分割であるため、各分割プレートには3本のアンカーシステム(M30長ナット+M30アンカーボルト)が装着される。分割プレートの両端部には連結板のボルト孔、ピン孔と符合する位置にそれぞれM10タップ孔(貫通)、φ8キリ孔(貫通)が開けられている。
【0039】
アンカーシステムの間には、コンクリート流れを良くし、充填を確認できる空気を設けた。コンクリートの充填を助けるために、免震装置を取り付ける取付面側をφ20、コンクリートが充填される側をφ30のテーパ形状とした。また、連結板については、外径φ1050、内径φ710(連結板幅170)中心角20度、板厚t12の略台形の扇形とした。ボルト孔の中心位置については、中心線から両側20.5mm、内径から20mm、外径から20mmの位置とした。中心線から両側中心角7.4度、連結板幅方向の中央として、ボルト孔の数は、合計3×2=6孔とした。ピン孔の中心位置については、中心線から両側20.5mm、内径から40mm、外径から40mmの位置として、ピン孔の数は、合計2×2=4孔とした。コンクリート打設時にコンクリート流れを改善するために、連結板の周縁は片面C5の面取りを施した。面取りされていない面が分割プレートに接する態様とする。
【0040】
また、連結ボルトについては、M10ボルトが各連結板毎に計6本、4分割で合計24本とした。ボルトは六角ボルトでも六角穴付きボルトでも可能であるが、免震装置の取付面側に突出することは避けるためにボルト首下長さは分割プレート厚+連結板厚の-1mm以下でねじの掛かりが十分となるようにする。位置決めピンについては、適切な間隔に開けられたφ8の貫通孔に、呼び8のスプリングピンを押し込むことで、分割プレートと連結板の平面的位置関係が一位的に定まる態様とした。
【0041】
このように作成した本発明の分割プレートにおいては、変形等生じることなく、簡便に施工することができ、しかも形状によっては、歩留まりも向上させることが可能であることが判明した。例えば、リング状のベースプレートと、分割したベースプレートとを比較した場合、リングの分割による材料歩留まりの向上を図ることが可能である。すなわち、リングを適切な数(4分割など)に分割することで、個々の部材の形状が直線に近づき、大板からの効率的な材料取りが可能になり、廃棄される面積を極小にできる。
【0042】
また、本発明の分割プレートの各態様によれば、1.材料歩留まりが向上し、材料コストおよび材料輸送コストの削減が図れる。完成系の品質保証などの課題を解決でき、組み立てを施工現場で実施することができれば、ベースプレート製品輸送コストも削減可能となる。2.連結板+連結ボルト+位置決めピンで構成する接続構造の態様によれば、(1)十分に高い精度で加工された分割プレートと連結部材を、複数の位置決めピンで位置決めすることにより、簡単な作業で間違いのない位置合わせが可能になる。この位置合わせを連結ボルトの締結だけで行うと、ボルト軸とボルトの空隙(これがないとボルトは回せない)、雄ねじと雌ねじの遊びなどの動き代により、位置合わせがずれたり、輸送中の振動などでゆるみが生じたりすることがある。これに対し、分割プレートと連結部材を貫通する穴に対しほぼ密着する位置決めピンを、圧入、打ち込みなどで繋ぐことで、精度の高い位置合わせとゆるみ防止が図れる。(2)十分な剛性を有する連結板を、免震装置を取り付ける取付面の逆側(以下、裏面とする)から、適切な離間距離で配された複数の連結ボルトで螺合することで、免震装置を取り付ける取付面(以下、表面とする)では、ベースプレートとして有すべき平面度が実現できる。これは、分割プレート裏面側に必要数配置されたアンカーシステムの重量を加えた状態で実現される。(3)連結部材と分割プレートが締結により連結された高い剛性を有する部分に吊り上げ用治具を取り付けることで、組み上がったベースプレートのハンドリング時の変形を抑止することができる。(4)連結板+連結ボルト+位置決めピンで構成する接続構造は、接続部に十分な剛性を持たせられる反面、完全な剛結ではないので、分割プレートに生じる熱膨張や残留ひずみの顕在化などの影響を、分割プレートを変形させることなく接続部で解放することができる。本発明においては、鉄道レールにおいて、温度変化によるレールの膨張収縮に対し接手部を設けることで、レール本体の面外変形をさせることなく解放することと類似の効果を発揮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のベースプレートによれば、湾曲などのゆがみを防止することが可能で、品質の低下を抑制することが可能であり、広範な技術分野において適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 免震装置の上
2 アンカーシステム用挿入孔
分割プレート
4 連結ボルト
5 免震装置
取付ボルト
7 アンカーシステム
8 連結板(連結部材)
9 連結ボルト(連結部材)
10 位置決めピン(連結部材)
11 空気孔
【要約】
【課題】本発明は、ベースプレートの変形を軽減させるベースプレートを提供することにある。
【解決手段】
本発明の免震装置用ベースプレートは、ベースプレートが前記免震装置を取付ける面に対して、複数の部分に分割したプレートであることを特徴とする。また、本発明の免震装置用ベースプレートの好ましい実施態様において、ベースプレートは、前記免震装置の下部及び/又は上部に設置されることを特徴とする。また、本発明の免震装置用ベースプレートの好ましい実施態様において、分割したプレートを、前記免震装置の取付面の裏側から螺合する連結部材で一体化したことを特徴とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5