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特許7191326油圧機構を備えた機械式拡径バケット、及び、中間拡径部用杭孔掘削機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】油圧機構を備えた機械式拡径バケット、及び、中間拡径部用杭孔掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21B 11/00 20060101AFI20221212BHJP
   E21B 10/32 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E21B11/00 B
E21B10/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019061376
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159124
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:平成31年1月24日、刊行物:建設技術審査審査証明事業(住宅関連技術)報告書、公開者:大成建設株式会社、システム計測株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】濱 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 曉洋
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】中西 義隆
(72)【発明者】
【氏名】小座間 琢也
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-151485(JP,U)
【文献】特開2011-058256(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01359258(EP,A1)
【文献】特許第4699304(JP,B2)
【文献】特開2018-155007(JP,A)
【文献】特開昭60-242292(JP,A)
【文献】特開2012-140856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E02D 7/00-13/10
E02D 3/12
E02D 5/22-5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ユニットと、杭孔を削孔する機械式拡径バケットとを有し、
前記油圧ユニットは、外殻を形成する荷重伝達体と、該荷重伝達体に内包される外管と、該外管に内包される内管と、該内管に対してシリンダが固定される油圧ジャッキとを備え、
前記機械式拡径バケットは、筒状の外側本体と、該外側本体の内側に配設される筒状の内側本体と、該内側本体の内部において摺動するとともに前記外管に固定される軸体と、該軸体に取り付けられているアームと、該外側本体に回動自在に取り付けられるとともに該アームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備え、前記内側本体において該内側本体の軸心方向に対して傾斜した方向に開設されている案内溝に前記アームが案内され、前記拡径翼の閉姿勢と開姿勢を形成するようになっており、
前記内管は、第一上蓋と第一筒体とを備え、該第一上蓋の上面に掘削機の有するケリーバの下端が固定され、
前記油圧ジャッキは、前記シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンロッドとを備え、前記第一上蓋の下面に該シリンダが固定され、
前記外管は、下蓋と第二筒体とを備え、前記内管の下方から該第二筒体が前記第一筒体の外周に摺動自在に配設され、前記ピストンロッドが該下蓋の上面に固定され、
前記機械式拡径バケットの有する前記軸体が前記下蓋の下面に固定され、
前記荷重伝達体は、第二上蓋と第三筒体とを備え、第二上蓋に開設されているケリーバ用開口に前記ケリーバが挿通されて該第二上蓋が前記第一上蓋の上面に載置され、該第三筒体は前記第一筒体及び前記第二筒体の外周に配設され、該第三筒体が前記機械式拡径バケットの上部に固定され、
前記第一筒体の外周には、該第一筒体の軸心方向に延設する係合突起が設けられ、
前記第二筒体の内周には、該第二筒体の軸心方向に延設する被係合突起が設けられ、
前記ケリーバが回転した際に、前記係合突起と前記被係合突起が係合するようになっており、
前記機械式拡径バケットの自重は、前記荷重伝達体を介し、前記内管を介して前記ケリーバに伝達され、
前記油圧ジャッキを作動させた際の反力は、前記内管を介し、前記荷重伝達体を介して前記機械式拡径バケットに伝達され、
前記ケリーバの回転トルクは、前記内管を介し、前記外管を介して前記機械式拡径バケットに伝達されることを特徴とする、油圧機構を備えた機械式拡径バケット。
【請求項2】
前記内管の前記第一上蓋の上面、もしくは、前記第二上蓋の下面のいずれか一方には回転機構が取り付けられており、該回転機構を介して前記荷重伝達体の前記第二上蓋が載置されていることを特徴とする、請求項に記載の油圧機構を備えた機械式拡径バケット。
【請求項3】
軸部と、該軸部の途中位置にある中間拡径部と、該軸部の底部にある拡底部と、を有する拡径杭の施工に当たり、軸部用杭孔と、中間拡径部用杭孔と、拡底部用杭孔と、を有する拡径杭用杭孔の造成のうち、該中間拡径部用杭孔の造成に用いられる中間拡径部用杭孔掘削機であって、
ベースマシンと、該ベースマシンに支持される回転駆動部と、該回転駆動部により回転されるケリーバと、ケリーバに支持される請求項1又は2に記載の油圧機構を備えた機械式拡径バケットと、を有することを特徴とする、中間拡径部用杭孔掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機構を備えた機械式拡径バケット、及び、中間拡径部用杭孔掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の支持力強化手法として、杭の軸部に拡径部を形成する手法が挙げられる。この拡径部により、杭の支持力の増加に加えて、杭の引抜き抵抗力の増加も図ることができる。そのため、アスペクト比が大きく、転倒モーメントが卓越して引抜き力が課題となり得る高層ビルや超高層ビル、高層タワー等の基礎杭として、拡径部を有する杭は好適となる。
上記する拡径部には、杭の軸部の底部にある拡底部と、杭の軸部の途中位置にある中間拡径部が含まれ、拡底部と中間拡径部のいずれか一方を備えている形態の拡径杭と、拡底部と中間拡径部の双方を備えている形態の拡径杭がある。
【0003】
従来、上記する拡底部を備えている拡径杭の杭孔(拡径杭用杭孔であって、軸部用杭孔と、拡底部用杭孔と、を有する)の造成に当たり、拡底部用杭孔の造成に好適ないくつかの拡底バケットが提案されている。拡底バケットは、油圧機構を有する油圧式の拡底バケットと、油圧機構を有さない機械式の拡底バケットに大別されるが、ここでは、機械式の拡底バケットの一例について提示する。具体的には、円筒状の本体部と、本体部の直径を拡大させるように開放可能に形成された拡径翼部とを備え、拡径翼部の側端部に回転自在のローラビットが側端部の延設方向に間隔を置いて複数設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4699304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の拡底バケットによれば、硬質な地盤であっても、拡径杭用杭孔を構成する拡底部用杭孔を、精度よく、かつ容易に造成することができる。ここで、この拡底バケットは、先行して造成された軸部用杭孔の底部地盤の上に拡底バケットを着底させ、底部地盤に反力を取って拡底バケットの有する拡径翼をケリーバの押込力を利用して開姿勢とした後、ケリーバを介して拡底バケットを回転させることにより拡底部用杭孔を造成するものである。
そこで、軸部用杭孔の底部地盤の上に拡底バケットを着底させることなく、中間拡径部用杭孔を有する拡底部用杭孔を効率的に造成することのできる技術が切望される。
【0006】
本発明は、中間拡径部用杭孔を有する拡底部用杭孔を効率的に造成することのできる、油圧機構を備えた機械式拡径バケットと、このバケットを有する中間拡径部用杭孔掘削機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一態様は、
油圧ユニットと、機械式拡径バケットとを有し、
前記油圧ユニットは、掘削機の有するケリーバの下端と、前記機械式拡径バケットの上部と、に着脱自在に固定されるとともに、該機械式拡径バケットを保持しながら、該機械式拡径バケットの有する拡径翼を開閉自在であり、かつ、前記ケリーバの回転トルクを該機械式拡径バケットに伝達自在であることを特徴とする。
本態様によれば、油圧ユニットと機械式拡径バケットが着脱自在に構成され、油圧ユニットがケリーバの下端に着脱自在に構成され、油圧ユニットによって機械式拡径バケットの有する拡径翼が開閉されることにより、地盤から反力を取ることなく、拡径翼の開姿勢を形成できるため、中間拡径部用杭孔の造成を効率的に行うことが可能になる。ここで、「油圧機構を備えた機械式拡径バケット」とは、油圧ユニットを着脱自在に備えている機械式拡径バケットのことである。
【0008】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記油圧ユニットの外殻は、油圧ジャッキが内包された荷重伝達体により形成され、
前記ケリーバの下端と前記荷重伝達体とは、回転力を伝達自在に固定されており、
前記荷重伝達体は前記機械式拡径バケットの上部に固定されていることを特徴とする。
本態様によれば、油圧ユニットの外殻を形成するとともに機械式拡径バケットの上部に固定されている荷重伝達体と、ケリーバの下端とが、回転力を伝達自在に固定されていることにより、機械式拡径バケットの自重をケリーバに伝達させる作用、油圧ジャッキを作動させた際の反力を機械式拡径バケットに伝達させる作用、及びケリーバの回転トルクを機械式拡径バケットに伝達させる作用、の全ての作用を実現することができる。
【0009】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記油圧ユニットの外殻は、油圧ジャッキが内包された荷重伝達体により形成され、
前記荷重伝達体は、内管と、外管と、をさらに内包し、
前記内管に対して、前記ケリーバの下端と前記油圧ジャッキの有するシリンダが固定され、
前記外管は、前記内管の外周に配設され、該内管に対して、該内管の軸心方向に摺動自在であって該内管の周方向に係合自在であり、前記油圧ジャッキの有するピストンロッドが固定されており、
前記荷重伝達体は、前記内管及び前記外管の外周に配設されて該内管の上に載置され、前記機械式拡径バケットの上部に固定されていることを特徴とする。
本態様によれば、内管と、油圧ジャッキと、外管と、機械式拡径バケットと、荷重伝達体を構成要素とし、油圧ジャッキにより、機械式拡径バケットを構成する拡径翼の開姿勢を実現することができるため、地盤から反力を取ることなく、拡径翼の開姿勢を形成して中間拡径部用杭孔の造成を効率的に行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記機械式拡径バケットは、筒状の外側本体と、該外側本体の内側に配設される筒状の内側本体と、該内側本体の内部において摺動するとともに前記外管に固定される軸体と、該軸体に取り付けられているアームと、該外側本体に回動自在に取り付けられるとともに該アームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備え、前記内側本体において該内側本体の軸心方向に対して傾斜した方向に開設されている案内溝に前記アームが案内され、前記拡径翼の閉姿勢と開姿勢を形成するようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、油圧ジャッキにより、機械式拡径バケットを構成する軸体を押し込み、軸体に取り付けられているアームの先端に取り付けられている拡径翼の開姿勢を実現することができる。従って、地盤から反力を取ることなく、機械式拡径バケットの深度を保持しながら拡径翼の開姿勢を形成できるため、中間拡径部用杭孔の造成を効率的に行うことが可能になる。
【0011】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記機械式拡径バケットの自重は、前記荷重伝達体を介し、前記内管を介して前記ケリーバに伝達され、
前記油圧ジャッキを作動させた際の反力は、前記内管を介し、前記荷重伝達体を介して前記機械式拡径バケットに伝達され、
前記ケリーバの回転トルクは、前記内管を介し、前記外管を介して前記機械式拡径バケットに伝達されることを特徴とする。
本態様によれば、上記するバケット構成により、機械式拡径バケットの自重を(油圧ジャッキを介さずに)ケリーバに伝達させる作用、油圧ジャッキを作動させた際の反力を機械式拡径バケットに伝達させる作用、及びケリーバの回転トルクを機械式拡径バケットに伝達させる作用、の全ての作用を実現することができる。
【0012】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記内管は、第一上蓋と第一筒体とを備え、該第一上蓋の上面に掘削機の有するケリーバの下端が固定されるようになっており、
前記油圧ジャッキは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンロッドとを備え、前記第一上蓋の下面に該シリンダが固定されており、
前記外管は、下蓋と第二筒体とを備え、前記内管の下方から該第二筒体が前記第一筒体の外周に摺動自在に配設され、前記ピストンロッドが該下蓋の上面に固定されており、
前記機械式拡径バケットの有する前記軸体が前記下蓋の下面に固定されており、
前記荷重伝達体は、第二上蓋と第三筒体とを備え、第二上蓋に開設されているケリーバ用開口に前記ケリーバが挿通されて該第二上蓋が前記第一上蓋の上面に載置され、該第三筒体は前記第一筒体及び前記第二筒体の外周に配設され、該第三筒体が前記機械式拡径バケットの上部に固定されていることを特徴とする。
本態様によれば、各構成要素の具体的な構成と相互の固定態様により、上記する様々な作用を奏する油圧機構を備えた機械式拡径バケットを、より明確に具現化することができる。
【0013】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記第一筒体の外周には、該第一筒体の軸心方向に延設する係合突起が設けられ、
前記第二筒体の内周には、該第二筒体の軸心方向に延設する被係合突起が設けられ、
前記ケリーバが回転した際に、前記係合突起と前記被係合突起が係合することを特徴とする。
本態様によれば、内管の有する係合突起と外管の有する被係合突起がケリーバの回転の際に係合することにより、ケリーバの回転トルクを機械式拡径バケットに伝達させる作用を奏することができる。ここで、内管の外周には、その周方向に間隔を置いて、その軸心方向に延設する複数の係合突起が設けられ、外管の内周には、各係合突起を挟むように二本で一組の軸心方向に延設する被係合突起が設けられている形態などが挙げられる。
【0014】
また、本発明による油圧機構を備えた機械式拡径バケットの他の態様において、前記内管の前記第一上蓋の上面、もしくは、前記第二上蓋の下面のいずれか一方には回転機構が取り付けられており、該回転機構を介して前記荷重伝達体の前記第二上蓋が載置されていることを特徴とする。
本態様によれば、内管の外側に被せられる荷重伝達体を、該内管に対して相対回転自在に取り付けることができ、ケリーバの回転トルクが直接伝達される内管の回転の際に、内管と荷重伝達体の間に過度の摩擦力が生じることを抑制することができる。尚、内管に伝達された回転トルクは、内管に固定される油圧ジャッキを介して当該油圧ジャッキに固定される外管に伝達され、外管に固定される軸体を介して当該軸体を構成要素とする機械式拡径バケットに伝達され、当該機械式拡径バケットに固定される荷重伝達体に伝達されることから、間接的には荷重伝達体にもケリーバの回転トルクが伝達されることになる。
【0015】
また、本発明による中間拡径部用杭孔掘削機の一態様は、
軸部と、該軸部の途中位置にある中間拡径部と、該軸部の底部にある拡底部と、を有する拡径杭の施工に当たり、軸部用杭孔と、中間拡径部用杭孔と、拡底部用杭孔と、を有する拡径杭用杭孔の造成のうち、該中間拡径部用杭孔の造成に用いられる中間拡径部用杭孔掘削機であって、
ベースマシンと、該ベースマシンに支持される回転駆動部と、該回転駆動部により回転されるケリーバと、ケリーバに支持される前記油圧機構を備えた機械式拡径バケットと、を有することを特徴とする。
本態様によれば、上記する油圧機構を備えた機械式拡径バケットがケリーバに支持されていることにより、機械式拡径バケットを軸部用杭孔の底部地盤に着底させて地盤に反力を取ることを必要とせずに、拡径翼を開姿勢として地盤の拡径掘削を行いながら、効率的に中間拡径部用杭孔の造成を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の油圧機構を備えた機械式拡径バケット、及び、中間拡径部用杭孔掘削機によれば、中間拡径部用杭孔を有する拡底部用杭孔を効率的に造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機の一例の側面図である。
図2】実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図である。
図3】実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図4】(a)から(c)にかけて、拡径翼を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更する際の、内側本体の案内溝におけるアームの移動態様を説明する図である。
図5】拡径翼の平面図であって、(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。
図6】荷重伝達体の上方から見た斜視図である。
図7】内管と外管の配設態様を説明する斜視図である。
図8図3のVIII-VIII矢視図であって、内側本体と軸体とアームの取り付け部の構成を説明する図である。
図9】油圧機構を備えていない機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図10】(a)から(g)にかけて順に、拡径杭用杭孔の造成方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機、及び実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケットと、中間拡径部用杭孔掘削機を用いた拡径杭用杭孔の造成方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0019】
[実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機]
はじめに、図1を参照して、実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機の一例の側面図である。
【0020】
中間拡径部用杭孔掘削機100は、アースドリル掘削機を形成するベースマシン10と、ブーム11と、支持ビーム12と、支持ビームにて支持されている回転駆動部13と、回転駆動部13により回転駆動されるケリーバ17と、ケリーバ17の先端に着脱自在に取り付けられている油圧ユニット20と、油圧ユニット20の下部に着脱自在に取り付けられている機械式拡径バケット80とを有する。ここで、油圧ユニット20を着脱自在に備えている機械式拡径バケット80を、油圧機構を備えた機械式拡径バケットと称する。ベースマシン10は、斜め上方に延設するブーム11の下端を回動自在に支持し、ブーム11の先端から下方に延設するワイヤ16によりケリーバ17が垂下されている。ケリーバ17は、ベースマシン10側に設けられているドラム(図示せず)によってワイヤ16が巻き取られ、もしくは巻き戻されることにより上下方向に移動自在となっている。回転駆動部13の下側近傍には、油圧ホースや電気制御ケーブル(いずれも図示せず)などを巻き取るための複数のリール14が搭載されたターンテーブル15が設けられている。
【0021】
尚、以下で詳説するように、施工対象の拡径杭用杭孔は、図10(g)に示すように、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3と、を有する拡径杭用杭孔Pであるが、図1に示す中間拡径部用杭孔掘削機100は、そのうちの中間拡径部用杭孔P2の造成に用いられる掘削機である。軸部用杭孔P1の造成に際しては、中間拡径部用杭孔掘削機100の有するケリーバ17の先端から油圧機構を備えた機械式拡径バケット80を取り外し、ドリリングバケット等の掘削バケット95(図10(a)、(d)参照)が取り付けられて構成される、軸部用杭孔掘削機が用いられる。また、拡底部用杭孔P3の造成に際しては、中間拡径部用杭孔掘削機100の有するケリーバ17の先端から油圧ユニット20と機械式拡径バケット80を取り外し、油圧機構を備えていない機械式拡径バケット90(図10(e)、(f)参照)が取り付けられて構成される、拡底部用杭孔掘削機が用いられる。
【0022】
[実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケット]
次に、図2乃至図8を参照して、実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例について説明する。ここで、図2及び図3はそれぞれ、実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図、及び拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。また、図4は、図4(a)から図4(c)にかけて、拡径翼を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更する際の、内側本体の案内溝におけるアームの移動態様を説明する図である。また、図5は、拡径翼の平面図であって、図5(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、図5(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。また、図6は、荷重伝達体の上方から見た斜視図であり、図7は、内管と外管の配設態様を説明する斜視図である。さらに、図8は、図3のVIII-VIII矢視図であって、内側本体と軸体とアームの取り付け部の構成を説明する図である。
【0023】
油圧機構を備えた機械式拡径バケット80は、内管30、油圧ジャッキ60、外管40、及び荷重伝達体50を備える油圧ユニット20と、油圧ユニット20に着脱自在に取り付けられている機械式拡径バケット70とを有し、いずれの部材ともに、鋼製の構成部材により形成されている。荷重伝達体50は、油圧ユニット20の外殻を形成し、荷重伝達体50の内部に、外管40と内管30が内包され、内管30の内部に油圧ジャッキ60が内包されている。
【0024】
油圧ユニット20と機械式拡径バケット70とを着脱自在に取り付けられるようにしたことにより、一つの油圧ユニット20に対して、拡大径が異なる機械式拡径バケット70を組み合わせることが可能となり、同じ拡大径を有する油圧式拡径バケットを複数製作する場合に比べて、コストが少なくて済む。また、現場で故障が発生した場合には、当該部位のみの整備工場への輸送と点検と修理、あるいは交換が可能となり、メンテナンスがし易いとともに、早期の工事再開に寄与する。
【0025】
内管30は、平面視円形の第一上蓋31と第一筒体32とを備え、第一上蓋31の上面に対してケリーバ17の下端はボルト接合により固定されている。
【0026】
油圧ジャッキ60は、シリンダ61と、シリンダ61内を摺動するピストンロッド62とを備え、第一上蓋31の下面31bに対してシリンダ61はボルト接合により固定されている。
【0027】
外管40は、平面視円形の下蓋41と第二筒体42とを備え、内管30の下方から第二筒体42が第一筒体の外周に配設され、下蓋41の上面41aに対してピストンロッド62はボルト接合により固定されている。
【0028】
機械式拡径バケット70は、筒状の外側本体71と、外側本体71の内部に配設される筒状の内側本体72と、内側本体72の内部において摺動するとともに外管40に固定される軸体73と、軸体73に取り付けられているアーム74と、アーム74の先端に取り付けられている拡径翼76とを備える。図3に示すように、内側本体72には、その軸心方向L1に対して傾斜した方向(傾斜角度θ1)に開設されている案内溝75が開設されており、この案内溝75にアーム74が案内されることにより、拡径翼76の閉姿勢(図2参照)と開姿勢(図3参照)を形成するようになっている。また、機械式拡径バケット70の有する軸体73は、外管40の有する下蓋41の下面41bに対してボルト接合や溶接接合により固定されている。さらに、外側本体71の下端には、円錐状の蓋部78が開閉自在に取り付けられており、蓋部78を開放することにより、外側本体71の内部に収容されている掘削土砂が搬出される。尚、ここで示した機械式掘削バケット70は一例であり、他の機械式掘削バケットを使用することが可能である。
【0029】
荷重伝達体50は、平面視円形の第二上蓋51と第三筒体52とを備え、第二上蓋51に開設されているケリーバ用開口53にケリーバ17、または第一上蓋31とケリーバ17の固定部が挿通される。尚、ケリーバ用開口53の平面視寸法を、ケリーバ17の平面視寸法及び第一上蓋31とケリーバの固定部の平面視寸法よりも大きくして、内管30と荷重伝達体50との取り外しを容易にしてもよい。第二上蓋51は、内管30の第一上蓋31の上面31aに直接的もしくは間接的に載置され、第三筒体52は、第一筒体32と第二筒体42の外周に配設される。また、機械式拡径バケット70の上部には、杭孔内における機械式拡径バケット70の姿勢制御を行うスタビライザ85が配設されており、第三筒体52は、接続部材54を介してスタビライザ85に固定される。
【0030】
図6に示すように、内管30の第一上蓋31の上面31aには、第一上蓋31の周方向に間隔を置いて複数のローラ35(回転機構の一例)が回転自在に取り付けられており、荷重伝達体50の有する第二上蓋51は、複数のローラ35を介して第一上蓋31の上に載置されている。このように、複数のローラ35を介して第一上蓋31の上に第二上蓋51が載置されることにより、内管30に対して荷重伝達体50を回転自在に載置することができる。そのため、機械式拡径バケット70の重量を直接支持する荷重伝達体50が内管30に対して相対的に回転する際に、内管30と荷重伝達体50の間に過度の摩擦力が生じて双方が損傷することを抑制することができる。尚、回転機構は、第二上蓋51の下に設けてもよく、図示例のローラ35以外にも、ベアリング等であってもよい。
【0031】
図7に示すように、内管30の第一筒体32の外周には、第一筒体32の軸心方向L2に延設する係合突起33が、第一筒体32の周方向であるR1方向に間隔を置いて複数設けられている。一方、外管40の第二筒体42の内周には、第二筒体42の軸心方向L2に延設する複数の被係合突起43が設けられている。この被係合突起43は、二つで一組を成して複数組存在し、各組の被係合突起43の間に係合突起33が配設されている。
【0032】
この構成により、外管40は、内管30に対して、内管30の軸心方向L2に沿ってY3方向に摺動自在であり、かつ、ケリーバ17の回転に応じて内管30がY4方向に回転した際には、係合突起33がその左右にあるいずれかの被係合突起43に係合自在となる。
【0033】
従って、図3に示すように、ケリーバ17がY1方向に回転した際の回転トルクにより、内管30がY2方向に回転し、係合突起33と被係合突起43が係合することにより外管40が内管30と係合してY3方向に回転する。さらに、外管40が回転することにより、外管40に固定されている軸体73が回転し、軸体73を構成要素とする機械式拡径バケット70の全体がY4方向に回転する。このように、ケリーバ17の回転トルクは、内管30を介し、外管40を介して機械式拡径バケット70に伝達される。
【0034】
図8に示すように、軸体73には、その長手方向に直交する方向に延設して軸体73を貫通するキー74aが係合しており、キー74aはさらに内側本体72の有する案内溝75を貫通し、キー74aの両端には端部カバー74bが取り付けられている。さらに、端部カバー74bにはユニバーサルジョイント74cが取り付けられ、ユニバーサルジョイント74cには連結部材74dが取り付けられている。図3に示すように、機械式拡径バケット70は二つの拡径翼76を有しており、それぞれの拡径翼76に対して、図8に示す二方向に延設する連結部材74dの先端が回動自在に取り付けられている。
【0035】
図2に示す閉姿勢の二つの拡径翼76を平面的に見た図5(a)に示すように、二つの拡径翼76は平面視円弧状の線形を有しており、図示する閉姿勢の状態において、それぞれの拡径翼76の先端は翼ストッパ77に係合し、図示する状態よりも拡径翼76がさらに内側に回動することが規制されている。
【0036】
一方、図3に示す開姿勢の二つの拡径翼76を平面的に見た図5(b)に示すように、X4方向に開いた図示する開姿勢の状態において、ケリーバ17の回転に応じてそれぞれの拡径翼76がY4方向に回転することにより、切削された土砂Dは、平面視円弧状の拡径翼76にて効果的に掬われながら、拡径翼76の回転方向に搬送される。
【0037】
図3に示すように、拡径翼76は、側面視三角形状の上方傾斜部翼76aと、側面視矩形状の立ち上がり部翼76bと、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼76cが連続した側面視形状を有しており、各部の側端には複数の切削ビット76dが取り付けられている。尚、切削ビット76dは、全て固定されている固定ビットであってもよいし、固定ビットと、回転自在な回転ビットの組み合わせ形態であってもよい。また、拡径翼76は、図示例のように下方傾斜部翼76cを具備せず、上方傾斜部翼76aと立ち上がり部翼76bが連続した側面視形状を有している形態などであってもよい。
【0038】
次に、図2乃至図4を参照して、拡径翼76を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更する際の、内側本体72の案内溝75におけるアーム74の移動態様について説明する。図4(a)乃至図4(c)はいずれも、幅tの内側本体72の中央位置であるt/2の位置において、アーム74を形成するキー74aが案内溝75を貫通して紙面の前面に臨んでいる状態を示している。
【0039】
図4(a)は、図2に示す拡径翼76が閉姿勢の際の案内溝75に対するキー74aの位置を示している。また、図4(b)は、拡径翼76が閉姿勢から開姿勢に移行する移行途中の案内溝75に対するキー74aの位置を示している。さらに、図4(c)は、図3に示す拡径翼76が開姿勢の際の案内溝75に対するキー74aの位置を示している。
【0040】
図2及び図3に示すように、キー74aが係合する軸体73は、外管40の下蓋41を介して、油圧ジャッキ60のピストンロッド62が伸長することにより下方に押し下げられる。図4(a)から図4(c)を順に見ることにより明らかなように、下方に押し下げられたキー74aは、その位置を内側本体72の中央位置であるt/2の位置に保持したまま、鉛直下方であるX2方向に移動する。
【0041】
図4(b)に示すように、キー74aがその側面視における位置を保持した状態で斜め方向に延設する案内溝75に沿って下方にh1移動することにより、下方に移動するキー74aから案内溝75の側面が受ける押圧力Sの水平方向成分S1により、内側本体72がX3方向に回転される。この際には、拡径翼76は途中まで開いた姿勢を形成する。ここで、荷重伝達体50と内管30との相対回転が生じ得るが、荷重伝達体50は内管30に対してローラ35を介して載置してあることから、当該相対回転に追従することができる。
【0042】
図4(c)に示すように、キー74aが案内溝75に沿ってさらに下方にh2移動して案内溝75の下端に到達すると、下方に移動するキー74aから案内溝75の側面が受ける押圧力Sの水平方向成分S1により、拡径翼76は図3に示す完全に開いた姿勢を形成する。
【0043】
このように、油圧ジャッキ60を作動させることにより、拡径翼76の開姿勢を形成することができるが、図2に示すように、機械式拡径バケット70の重量は、荷重伝達体50にてZ1方向に支持され、荷重伝達体50が載置される内管30を介して、内管30に固定されるケリーバ17にZ2方向に伝達される。そのため、拡径翼76の開閉に際して下方地盤からの反力がない状態においても、油圧ジャッキ60を作動させた際の反力をケリーバ17に伝達させることにより、拡径翼76の開閉を実現することが可能になる。
【0044】
また、図3に示すように、油圧ジャッキ60を作動させた際の反力の一部は、シリンダ61が固定されている内管30を介し、内管30の上方に載置されている荷重伝達体50を介してZ3方向で機械式拡径バケット70に伝達される。そのため、油圧ジャッキ60を作動させた際の過度な反力がケリーバ17に伝達されることが抑制され、ケリーバ17の破損や機械式拡径バケット70の深度のずれ等を抑止することが可能になる。
【0045】
尚、例えば、ケリーバ17が減速機(図示せず)を介して内管30に固定されていてもよく、この形態によれば、ケリーバ17による回転トルクを減速機にて増大させ、内管30を介し、外管40を介して増大された回転トルクを機械式拡径バケット70に伝達することが可能になる。
【0046】
[拡径杭用杭孔の造成方法]
次に、図1図9及び図10を主として参照しながら、拡径杭用杭孔の造成方法の一例について説明する。ここで、図9は、油圧機構を備えていない機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。また、図10は、図10(a)から図10(g)にかけて順に、拡径杭用杭孔の造成方法の一例を示す工程図である。
【0047】
以下、拡径杭を構成する軸部のための軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2と、軸部用杭孔P1の底部にある拡底部のための拡底部用杭孔P3と、を有する拡径杭用杭孔Pの造成方法について説明する。
【0048】
図10(a)に示すように、施工対象の地盤Gに対し、所定深度まで軸部用杭孔P1を造成する。ここで、軸部用杭孔P1の施工に際しては、図1に示すベースマシン10により垂下されるケリーバ17の先端に対して、油圧機構を備えた機械式拡径バケットに代えてドリリングバケット95(掘削バケットの一例)を装着した掘削機を適用する。表層数mの深度uまでは、相対的に大径の掘削孔を造成し、短尺のケーシングCAを建て込むとともに、安定液SLを孔内に注入することにより、孔壁の安定を図る。
【0049】
表層の孔口近傍の孔壁の安定を図った後、ケリーバ17の回転によりドリリングバケット95を回転させながら地盤Gを軸方向に掘削し、ドリリングバケット95の内部に掘削土砂を収容しながら所定深度まで軸部用杭孔P1を造成する。ここで所定深度は、設計深度より0.5m以上上方に設定する。ドリリングバケット95は随時地上に引き上げ、収容されている掘削土砂の搬出を行う。尚、軸部用杭孔P1の径D1は、例えば800mm乃至4000mmの範囲に設定できる(以上、A工程)。
【0050】
次に、図10(b)に示すように、ベースマシン10により垂下されるケリーバ17の先端に対して、ドリリングバケット95に代えて油圧機構を備えた機械式拡径バケット80を装着することにより、中間拡径部用杭孔掘削機100を形成し、ケリーバ17を介して油圧機構を備えた機械式拡径バケット80を所定深度に位置決めする。
【0051】
ここで、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80の装着の手順を説明する。まず、機械式拡径バケット70を軸部用杭孔P1の孔口に落とし込み、ケーシングCAの上端に取り付けたブラケットにスタビライザ85を係合させて、ケーシングCAに機械式拡径バケット70を保持させる。次いで、油圧ユニット20とケリーバ17をボルト接合により固定してから、油圧ユニット20を機械式拡径バケット70の上部に位置させ、接続部材を介して機械式拡径バケット70と油圧ユニット20とをボルトで接合し、ブラケットを取り外す。このように、機械式拡径バケット70の上部とケリーバ17の先端に油圧ユニット20を取り付けるようにしたことにより、機械式拡径バケット70をケーシングCAに保持させながら油圧ユニット20の装着作業が行えるようになり、機械式拡径バケット70が安定して作業効率が高まるととともに、足場を設ける必要がなく、作業安全性も向上する。
【0052】
そして、図10(c)に示すように、図3及び図4等を参照して既に説明したように、油圧ジャッキ60を作動させて拡径翼76の開姿勢を形成し、ケリーバ17の回転トルクにより拡径翼76を回転させながら地盤の掘削を行う。この掘削では、機械式拡径バケット70の蓋部78を開放して行い、掘削土砂は、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80よりも下方にある軸部用杭孔P1の下方において、掘削土砂の残土ZDとして堆積している。このとき、油圧ユニット20の平面視における外形を機械式拡径バケット70の外側本体の平面視における外形より小さくすることにより、先端に重錘を取り付けた検尺テープを、地上部から第三筒体52の外面とスタビライザ85の外殻内面との間の隙間、外側本体と内側本体との間の平面視における隙間、および蓋部78の開口部を通して、掘削土砂の残土ZDの上面に降ろし、当該上面の深度が機械式拡径バケット70の下方にあることを適宜確認することが可能となる。そのため、機械式拡径バケット70に残土ZDが入り込んで拡径掘削動作を妨げることを防止できる。また、油圧ユニット20を機械式拡径バケット70の上部に設置したことにより、掘削土砂が油圧ユニット20の内部に入り込み、油圧機構の動作を妨げる恐れがない。
【0053】
油圧機構を備えた機械式拡径バケット80による掘削後、図10(d)に示すように、拡径翼76を閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の途中深度において、中間拡径部用杭孔P2が造成される。
【0054】
ここで、図3を参照して既に説明したように、拡径翼76は、側面視三角形状の上方傾斜部翼76aと、側面視矩形状の立ち上がり部翼76bと、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼76cが連続した側面視形状を有し、この側面視形状の拡径翼76が回転することにより、中間拡径部用杭孔P2が造成される。そのため、造成される中間拡径部用杭孔P2の側面視形状は、上方に台形状、中央に矩形状、下方に逆台形状を有する形状となる。この側面視形状において、上方の傾斜角度θ2は、例えば3度乃至30度に設定され、下方の傾斜角度θ3は、例えば5度乃至45度に設定される。さらに、中央の最大径D2は、例えば1000mm乃至5500mmに設定される(以上、B工程)。
【0055】
次に、同図10(d)に示すように、ケリーバ17の先端に対して、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80に代えてドリリングバケット95を装着し、B工程の際に軸部用杭孔P1の下方に堆積した掘削土砂の残土ZDをドリリングバケット95にて回収し、孔外へ排出する(以上、C工程)。このとき、軸部用杭孔P1の下端深さが設計深度より上方に設定してあるので、杭先端部の支持地盤が長時間の応力解放を受けて緩んだり、掘削土砂の残土ZDの回収中に乱される恐れがない。さらに、ドリリングバケット95を回転させ、拡径杭用杭孔Pが造成されるべき設計深度までドリリングバケット95による掘削を行い、設計深度まで延びる軸部用杭孔P1を造成する。そして、ドリリングバケット95により、掘削土砂を回収し、軸部用杭孔P1の底ざらいを行う。ここで、掘削土砂の残土ZDの体積に比べて、軸部用杭孔P1の体積が少ないときには、B工程とC工程を繰り返し行ってもよい。
【0056】
このC工程では、その前工程であるB工程において、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80を有する中間拡径部用杭孔掘削機100にて中間拡径部用杭孔P2を造成し、軸部用杭孔P1の下方に堆積した掘削土砂の残土ZDを、油圧機構や拡翼機構を有さず土砂収容量が大きなドリリングバケット95にて回収することにより、効率的な施工が実現される。仮に、中間拡径部用杭孔掘削機100を使用せずに中間拡径部用杭孔P2を造成する場合は、軸部用杭孔P1の造成を中間拡径部用杭孔P2の造成位置で止め、油圧機構を備えていない機械式拡径バケットを有する掘削機(拡底部用杭孔P3の造成に適用される掘削機)を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケットを着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケットの有する拡径翼にて拡径掘削を行うことにより、中間拡径部用杭孔P2を造成する。その際、機械式拡径バケット70の土砂収容量は、ドリリングバケット95に比べて少ないため、機械式拡径バケットによる掘削と、掘削地盤の排土を拡径翼が完全に開くまで繰り返し行うこととなり、中間拡径部用杭孔P2の造成に際して手間と時間を要することになる。
【0057】
次に、図10(e)に示すように、ケリーバ17の先端に対して、ドリリングバケット95に代えて油圧機構を備えていない機械式拡径バケット90を装着することにより、拡底部用杭孔掘削機(全体の図示略)を形成し、ケリーバ17を介して機械式拡径バケット90を所定深度に位置決めする。
【0058】
ここで、図9に示すように、機械式拡径バケット90は、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80と異なり、油圧ジャッキ60を備えておらず、ケリーバ17の下端が機械式拡径バケットの軸体73に固定されている。そのため、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80のように、底部からの地盤反力のない状態で拡径翼の開姿勢を形成することはできない。
【0059】
また、拡底杭用の杭孔を造成することから、拡径翼76Aは、拡径翼76のように下方傾斜部翼76cを具備せず、上方傾斜部翼76aと立ち上がり部翼76bが連続した側面視形状を有している。
【0060】
次に、図10(f)に示すように、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット90を着底させ、底部地盤に反力Qを取って機械式拡径バケット90の有する拡径翼76Aを開姿勢とした後、ケリーバ17を介して機械式拡径バケット90を回転させ、地盤を掘削する。機械式拡径バケット90による掘削後、図10(g)に示すように、拡径翼76Aを閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の底部において拡底部用杭孔P3が造成され(以上、D工程)、D工程を経て、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3とを有する拡径杭用杭孔Pが造成される。
【0061】
拡径杭用杭孔Pが造成された後、孔壁内の寸法測定を行って出来形を確認した後、軸部用杭孔P1に鉄筋籠を建て込み、トレミー管を介してコンクリートを打設し、孔口のケーシングCAを撤去することにより、軸部と、該軸部の途中位置にある中間拡径部と、該軸部の底部にある拡底部と、を有する拡径杭(図示せず)が施工される。
【0062】
図示する拡径杭用杭孔の造成方法によれば、中間拡径部用杭孔掘削機100を用いて中間拡径部用杭孔P2を造成することにより、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3とを有する拡径杭用杭孔Pを効率的に造成することができる。また、軸部用杭孔P1を拡底部まで造成した後に中間拡径部用杭孔P2の肌落ちが生じた場合にも、中間拡径部用杭孔P2を上下方向または径方向に拡大掘削することにより、中間拡径部用杭孔P2の形状を修正することも可能となる。
【0063】
仮に、中間拡径部用杭孔掘削機100を用いずに中間拡径部用杭孔P2を造成する場合は、上記するように、軸部用杭孔P1の造成を中間拡径部用杭孔P2の造成位置で止め、図9に示す機械式拡径バケット90を有する掘削機等を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット90を着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケット90の有する拡径翼76Aにて拡径掘削を行うことにより、中間拡径部用杭孔P2を造成する。この際、拡径翼76Aを徐々に開きながら地盤の掘削を行うことから、機械式拡径バケット90による掘削と、掘削地盤の排土を拡径翼76Aが完全に開くまで繰り返し行うこととなり、中間拡径部用杭孔P2の造成に手間と時間を要する。次いで、拡径杭用杭孔Pの設計深度まで軸部用杭孔P1を造成した後、再度、機械式拡径バケット90を有する掘削機を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット90を着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケット90の有する拡径翼76Aにて拡径掘削を行うことにより、拡底部用杭孔P3の造成を行う。従って、図示例の造成方法のように効率的に拡径杭用杭孔の造成を行うことは難しい。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0065】
例えば、図示する造成方法により造成される拡径杭用杭孔Pは、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2と、軸部用杭孔P1の底部にある拡底部のための拡底部用杭孔P3とを有する杭孔であるが、それ以外の形態の杭孔であってもよい。例えば、軸部用杭孔P1の途中位置に複数の中間拡径部用杭孔P2を有する形態であってもよい。また、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つもしくは複数の中間拡径部用杭孔P2とを有する形態(拡底部用杭孔P3を具備しない形態)の杭孔であってもよい。あるいは、B工程に先立って拡底部用杭孔P3の一部を造成し、B工程における掘削土砂を堆積させるスペースを増大させてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10:ベースマシン、11:ブーム、12:支持ビーム、13:回転駆動部、14:リール、15:ターンテーブル、16:ワイヤ、17:ケリーバ、20:油圧ユニット、30:内管、31:第一上蓋、32:第一筒体、33:係合突起、35:ローラ(回転機構)、40:外管、41:下蓋、42:第二筒体、43:被係合突起、50:荷重伝達体、51:第二上蓋、52:第三筒体、53:ケリーバ用開口、54:接続部材、60:油圧ジャッキ(油圧機構)、61:シリンダ、62:ピストンロッド、70:機械式拡径バケット、71:外側本体、72:内側本体、73:軸体、74:アーム、74a:キー、74b:端部カバー、74c:ユニバーサルジョイント、74d:連結部材、75:案内溝、76,76A:拡径翼、76a:上方傾斜部翼、76b:立ち上がり部翼、76c:下方傾斜部翼、76d:切削ビット、77:翼ストッパ、80:油圧機構を備えた機械式拡径バケット(機械式拡径バケット)、85:スタビライザ、90:油圧機構を備えていない機械式拡径バケット(機械式拡径バケット)、95:ドリリングバケット(掘削バケット)、100:中間拡径部用杭孔掘削機、G:地盤、P:拡径杭用杭孔、P1:軸部用杭孔、P2:中間拡径部用杭孔、P3:拡底部用杭孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10