(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】結束具及び結束方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20221212BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E04C5/18 103
E04G21/12 105E
E04C5/18 102
(21)【出願番号】P 2020045952
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】392012836
【氏名又は名称】株式会社泉の台開発
(73)【特許権者】
【識別番号】596106700
【氏名又は名称】ウーブンナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】新保 善正
(72)【発明者】
【氏名】西 弘三
(72)【発明者】
【氏名】森 大介
(72)【発明者】
【氏名】奥村 航
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 裕之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-062544(JP,A)
【文献】特開平01-174753(JP,A)
【文献】特許第6705958(JP,B1)
【文献】特開平01-304246(JP,A)
【文献】特開平08-027808(JP,A)
【文献】特開2014-047559(JP,A)
【文献】米国特許第08099925(US,B1)
【文献】米国特許第06265065(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00 - 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する結束具であって、
前記第一筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部と、
前記第二筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部と、
前記第一被覆部と前記第二被覆部とを連結する第一連結部及び第二連結部と、を備え、
前記第二被覆部は、2つに分離して、前記第一被覆部の長手方向と交差する方向または直角方向に延在するように形成されており、
前記第一被覆部は、側面長手方向が開口した第一開口部を有し、
前記第二被覆部は、側面長手方向が開口した第二開口部を有し、
前記第一連結部は、前記第一被覆部の側面と側面周方向に接合し、かつ、一方の前記第二被覆部の側面と側面長手方向に接合しており、
前記第二連結部は、前記第一被覆部の側面と側面周方向に接合し、かつ、他方の前記第二被覆部の側面と側面長手方向に接合していることを特徴とする結束具。
【請求項2】
前記
第一筋材及び前記第二筋材が、繊維ロッドである請求項
1に記載の結束具。
【請求項3】
前記第一被覆部及び前記第二被覆部は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物によって構成されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の結束具。
【請求項4】
前記第一被覆部及び前記第二被覆部は、熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂組成物によって構成されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の結束具。
【請求項5】
少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する
結束具を用いた結束方法であって、
前記結束具は、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部と、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部と、前記第一被覆部と前記第二被覆部とを連結する第一連結部及び第二連結部と、を備え、
前記第二被覆部は、2つに分離して、前記第一被覆部の長手方向と交差する方向または直角方向に延在するように形成されており、
前記第一被覆部は、側面長手方向が開口した第一開口部を有し、
前記第二被覆部は、側面長手方向が開口した第二開口部を有し、
前記第一連結部は、前記第一被覆部の側面と側面周方向に接合し、かつ、一方の前記第二被覆部の側面と側面長手方向に接合しており、
前記第二連結部は、前記第一被覆部の側面と側面周方向に接合し、かつ、他方の前記第二被覆部の側面と側面長手方向に接合しており、
前記結束方法は、前記第一筋材を、
前記第一被覆部によって被覆する第一被覆工程と、前記第二筋材を、
前記第二被覆部によって被覆する第二の被覆工程と、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を熱収縮させる熱収縮工程と、を含む結束方法。
【請求項6】
前記第一被覆部及び前記第二被覆部が熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物によって構成され、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を加熱することによって、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を熱収縮させて前記第一筋材及び前記第二筋材を結束する請求項
5に記載の結束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の強化に用いられる補強筋として使用される繊維ロッド等の筋材の結束に好適な結束具および結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート中に補強筋を埋設し、コンクリートの補強が行なわれている。補強筋は、
図10及び
図11に示すように、複数の縦筋の筋材50Aと複数の横筋の筋材50Bとを筋材を格子状に一体化した補強筋100が広く使用され、複数の筋材50A、50Bを交差させた交差部Cを結束して固定化している。特に建築や土木分野では、鉄筋コンクリート、すなわち筋材として鉄筋を使用した補強筋をコンクリートの内部に配し、コンクリートと鉄とを組み合わせることによって強度や耐久性を向上させたものが建材として一般的に用いられている。
【0003】
このような鉄筋コンクリートにおいて、補強筋を構成する2本の鉄筋を結束させるための各種発明がなされてきた(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1には、鉄筋コンクリート構造の鉄筋の交差部または分岐部において鉄筋同士を接合するための鉄筋接合部構造であり、複数本の結束線を交差部または分岐部で重なった鉄筋に巻き付け、端部同士を捩じって縛ることにより、平板状または棒状に束ねられた結束線で鉄筋同士を固縛し、かつ、結束線束の各結束線間の隙間等に金属接着剤を注入し、硬化した金属接着剤により、結束線同士、結束線束と鉄筋、鉄筋同士を一体化してなる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、結合される複数の鉄筋が配置されるループ部と、該ループ部に複数の鉄筋が配置された状態で捻り合わせることにより該鉄筋どうしを結合させる結束線を使用して鉄筋、鉄筋同士を一体化してなる技術が開示されている。
【0005】
鉄筋は重量(比重)が大きいため、高層ビルなど単位面積当たりの重量負荷が大きくなる構造物に使用する場合、鉄筋自体の重量を保持できるよう設計する必要があり、設計上の制約やコスト高の一因となっている。また、鉄筋をコンクリートへの筋材として使用した場合には、長い年月を経るとコンクリートの構成成分であるセメントが外部からの水等と反応して腐食し強度を失う等の問題があった。このような背景から、鉄筋の代替物として、引張強度や弾性係数等の機械的性能、酸やアルカリに対する耐食性に優れ、軽量な炭素繊維やバサルト繊維等を使用した強化繊維ロッドを筋材として使用する試みがなされている(例えば、特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-13548号公報
【文献】特開2008-121187号公報
【文献】特開2012-136814号公報
【文献】特開2012-251378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、筋材としての繊維ロッドは、引張強度は優れるものの、剪断強度が鉄筋と比較して高くない。そのため、筋材として繊維ロッドを使用した補強筋の形成に上記従来の鉄筋に使用される金属製結束線をそのまま使用すると、結束線によって繊維ロッドを構成する繊維の一部が切断され強度が低下する問題があった。また、長期の使用により、金属製結束線自体が腐食・膨張して、コンクリートにひび割れ等が生じ、その結果として繊維ロッドの結合力も低下するという問題があった。このように、繊維ロッドを筋材として使用した補強筋において、異なる2本の繊維ロッドを結束させるための技術については検討されていなかった。さらに、繊維ロッド以外の筋材(鉄筋や竹筋等)についても新たな結束具の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、異なる2本の繊維ロッド等の筋材を簡易に且つ強固に結束させることが可能な結束具及び結束方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する結束具であって、前記第一筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部と、前記第二筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部と、を備えた結束具。
<2> 前記第一被覆部と前記第二被覆部とを連結する連結部を有する<1>に記載の結束具。
<3> 前記第二被覆部は、前記第一被覆部の長手方向と交差する方向又は平行方向に延在するよう、前記第一被覆部と一体化して形成される<1>または<2>に記載の結束具。
<4> 前記第二被覆部は、前記第一被覆部の長手方向と直角方向に延在するよう、前記第一被覆部と一体化して形成される<3>に記載の結束具。
<5> 前記筋材が、繊維ロッドである<1>から<4>のいずれかに記載の結束具。
<6> 前記第一被覆部及び前記第二被覆部は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物によって構成される<1>から<5>のいずれかに記載の結束具。
<7> 前記第一被覆部及び前記第二被覆部は、熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂組成物によって構成される<1>から<5>のいずれかに記載の結束具。
<8> 少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する結束方法であって、前記第一筋材を、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部によって被覆する第一被覆工程と、前記第二筋材を、前記第一被覆部と一体的に形成された熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部によって被覆する第二の被覆工程と、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を熱収縮させる熱収縮工程と、を含む結束方法。
<9> 前記第一被覆部及び前記第二被覆部が熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物によって構成され、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を加熱することによって、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を熱収縮させて前記第一筋材及び前記第二筋材を結束する<8>に記載の結束方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる2本の繊維ロッド等の筋材を簡易に且つ強固に結束させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る炭素繊維ロッドの一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る高強力繊維複合材の一例を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る高強力繊維複合材の一例を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係る結束具の第一例を示す図である。
【
図5】第一例に係る結束具(第一例)の使用例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る結束具の第二例を示す図である。
【
図7】第二例に係る結束具(第二例)の使用例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る結束具(第三例)を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る結束具(第三例)の使用例を示す図である。
【
図10】補強用筋材の構成及び構造を説明するための平面図である。
【
図11】補強用筋材の構成及び構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
【0013】
本発明は、少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する結束具であって、前記第一筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部と、前記第二筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部と、を備えた結束具に関する。第一筋材及び第二筋材は、繊維ロッドであってもよいし、繊維ロッド以外の筋材であってもよい。繊維ロッド以外の筋材としては、例えば、鉄筋や竹筋が挙げられる。
また、本発明は、少なくとも異なる2本の第一筋材及び第二筋材を結束する結束方法であって、前記第一筋材を、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部によって被覆する第一被覆工程と、前記第二筋材を、前記第一被覆部と一体的に形成された熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部によって被覆する第二の被覆工程と、前記第一被覆部及び前記第二被覆部を熱収縮させる熱収縮工程と、を含む結束方法に関する。
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明の結束具の使用対象となる筋材の一例として炭素繊維を原料として形成される炭素繊維ロッドを例に挙げて説明を行うが、筋材としては本実施形態に示す炭素繊維ロッドに限定されず、炭素繊維ロッド以外の繊維ロッドや、鉄筋、竹筋等の繊維ロッド以外の筋材を使用できる。
【0015】
[炭素繊維ロッドの一例]
図1は、本実施形態に係る炭素繊維ロッドの一例を示す図である。
図2は、本実施形態に係る高強力繊維複合材の一例を示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係る高強力繊維複合材の一例を示す断面図である。
【0016】
まず
図1を用いて繊維ロッドの一例である炭素繊維ロッド5について説明する。
図1に示す炭素繊維ロッド5は、炭素繊維を原料として形成される棒状物である。この炭素繊維ロッド5は、芯となる高強力繊維複合材51aと、当該高強力繊維複合材51aを取り囲む6本の高強力繊維複合材51bとが撚り合わされたストランド構造を有するものである。なお、以下の説明において、高強力繊維複合材51a、51bのいずれか一方を指す場合には、単に「高強力繊維複合材51」ともいう。炭素繊維ロッド5の長さは、目的とする補強筋の大きさに応じて適宜決定されるが、通常、1m~数十m程度である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、高強力繊維複合材51は、数千本から数十万本の高強力繊維糸52(ここでは炭素繊維糸)が束ねられて無撚り、もしくはゆるく撚りがかかった高強力繊維束53と、高強力繊維束53の周囲面に被覆され、高強力繊維糸52がばらばらにならないように拘束する拘束繊維54(特に
図3参照)とが母材樹脂(不図示)により一体化して固化されたものである。高強力繊維糸52としては、PAN系、ピッチ系等のいずれの炭素繊維糸も使用できる。高強力繊維束53の外径は、使用される高強力繊維糸52の太さ、本数によって決定され、通常、1mmから100mm程度である。
【0018】
拘束繊維54は、例えばポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の合成繊維や、再生繊維、天然繊維等が使用される。また、母材樹脂は、例えば、熱可塑エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が使用される。
【0019】
以上、本実施形態に係る例に示す結束対象の繊維ロッドとして、炭素繊維ロッドの一例によって説明したが、本発明における結束対象は、当該炭素繊維ロッドに限定されるものではなく、他の構成の繊維ロッドであってもよい。例えば、本実施形態では、高強力繊維複合材51a、51bとからなるストランド構造の炭素繊維ロッド5を使用しているが、炭素繊維ロッドはストランド構造でなくてもよい。また例えば、炭素繊維ロッドとして、引用文献3(特開2012-136814号公報)に開示されているように、芯となる炭素繊維からなる高強力繊維複合材51aを内層とし、この周囲に中間層と、外層に保護層とを設けた繊維ロッドを使用していてもよい。
【0020】
また、炭素繊維を原料とした炭素繊維ロッドに限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない限り、その他の繊維を原料とした繊維ロッドであってもよい。例えば、炭素繊維以外の繊維として、例えばガラス繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、PVA(ポリビニルアルコール)繊維等を原料として形成される繊維ロッドを使用してもよい。また、繊維ロッドで使用される上記繊維(炭素繊維含む)は、1種類でも良いし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
また、本発明の結束具は、繊維ロッド以外の筋材にも使用することもできる。繊維ロッド以外の筋材としては、例えば、鉄筋や竹筋が挙げられる。
【0022】
[結束具の第一例]
図4は、本実施形態に係る結束具の第一例を示す図である。本実施形態の結束具は、筋材を直交させた補強筋に対して好適に使用される。例えば、本実施形態の結束具は、
図10及び
図11で示した複数の筋材50A(第一筋材に相当)と、これに直交する複数の筋材50B(第二筋材に相当)を格子状に一体化した補強筋100における交差部Cの結束に好適に使用される。
なお、以下の説明において、筋材の一例として炭素繊維ロッドを例に挙げて説明を行うが、筋材としては炭素繊維ロッド以外の繊維ロッドや、鉄筋、竹筋等の繊維ロッド以外の筋材を使用できる。
【0023】
図4に示す結束具1は、第一被覆部2、第二被覆部3を有する構成である。第一被覆部2及び第二被覆部3は、熱収縮可能な樹脂(熱収縮性樹脂)によって形成され、本実施形態では熱可塑性樹脂を使用している。熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して熱収縮性が高く、結束対象である繊維ロッド(筋材)をより強く結束固定できるという利点がある。また、加熱により可塑性が得られるので、繊維ロッド(筋材)を結束固定した後でも再度加熱することによって、取り外すことが可能である。熱収縮可能な熱可塑性樹脂としては、アルカリに対する耐久性の観点から、ナイロン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、熱可塑エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。使用される熱可塑性樹脂は、必要とされる熱収縮性が得られる限り複数の樹脂の共重合体や混合物であってもよい。また、熱可塑性樹脂の中に例えば、熱収縮を阻害しない程度に繊維が短い短繊維炭素繊維、ガラス繊維、セルロースナノフアイバー(CNF)、バサルト繊維等を混合させて、強度を向上させた樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物)として用いてもよい。
【0024】
また、熱収縮性樹脂として熱可塑性樹脂に代えて、熱収縮可能な熱硬化性樹脂を使用してもよい。熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂と比較して耐熱性、硬さ等に優れ、樹脂組成の大幅な変更が可能であり、補強材としての利用域が大きい等の利点がある。熱収縮可能な熱硬化性樹脂として、好適には、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、必要とされる熱収縮性が得られる限り複数の樹脂の共重合体や混合物であってもよい。また、熱硬化性樹脂の中に例えば、熱収縮を阻害しない程度に繊維が短い短繊維炭素繊維、ガラス繊維、セルロースナノフアイバー(CNF)、バサルト繊維等を混合させて、強度を向上させた樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)として用いてもよい。
【0025】
第一被覆部2と第二被覆部3とは同一の樹脂(樹脂組成物)であってもよく、それぞれ異なった樹脂(樹脂組成物)であってもよいが、通常、同一の樹脂(樹脂組成物)が用いられる。
【0026】
第一被覆部2は、円筒状の筒状体であって側面長手方向に開口した一対の開口縁21、22により構成される開口部23が形成されている。この第一被覆部2の略中央には、第一被覆部2の長手方向と直角方向に延在する第二被覆部3が一体化して形成されている。
本実施形態では第一被覆部2の筒状部分の内径は、結束対象の筋材の外径よりもやや大きく構成されており、この第一被覆部2は結束対象の筋材を被覆することができる。なお、第一被覆部は結束対象の筋材を被覆できればよく、変形できるのであれば、結束対象の筋材の外径より、小さな内径を有する第一被覆部を使用してもよい。
【0027】
第二被覆部3は、円筒状の筒状体であって側面長手方向に開口した一対の開口縁31、32により構成される開口部33が形成されている。この第二被覆部3は、第一被覆部2の開口縁21、22に連続する開口縁34、35を有する。
本実施形態では第二被覆部3の内径は、前述の第一被覆部2と同様に炭素繊維ロッド5の外径よりもやや大きく構成されており、この第二被覆部3は炭素繊維ロッド5を被覆することができる。なお、第二被覆部は結束対象の筋材を被覆できればよく、変形できるのであれば、結束対象の筋材の外径より、小さな内径を有する第二被覆部を使用してもよい。
【0028】
以上に示すように、第一の例に係る結束具1は、互いに直角方向に延在する第一被覆部2と第二被覆部3とが一体化して形成されたものであり、直交する異なる2本の筋材(本実施形態では炭素繊維ロッド5)を被覆することができる。なお、結束具1を構成する第一被覆部2と第二被覆部3の大きさ(長さ、厚み等)は、必要とされる結束力が得られる限りにおいて任意であり、結束対象である筋材の材質、太さ、長さ等を考慮して適宜決定すればよい。また、第一被覆部2と第二被覆部3とは互いに交差する方向に延在するものであれば、直角方向に延在するものに限定されるものでない。
【0029】
以上の通り、第一の例に係る結束具は、少なくとも異なる2本の筋材である第一筋材(第一繊維ロッド)及び第二筋材(第二繊維ロッド)を結束する結束具であって、前記第一筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第一被覆部と、前記第二筋材を被覆し、熱収縮可能な樹脂または樹脂組成物からなる筒状の第二被覆部と、を備え、前記第二被覆部は、前記第一被覆部の長手方向と交差する方向または直角方向に延在するよう、前記第一被覆部と一体化して形成され、前記第一被覆部は、側面長手方向が開口した第一開口部を有し、前記第二被覆部は、側面長手方向が開口した第二開口部と、前記第一開口部を構成する一対の開口縁に連続して当該第二被覆部に形成された一対の開口縁により構成される第三開口部とを有することを特徴とする本発明の一態様である。
【0030】
図5は、第一例に係る結束具の使用例を示す図である。以下、
図5を用いて第一例に係る結束具1の使用例について説明する。
【0031】
まず
図5(a)に示すように、手作業等に第一被覆部2の開口部23を開き、第一の炭素繊維ロッド(第一筋材)5Aを第一被覆部2により被覆する。次に
図5(b)に示すように、手作業等により第二被覆部3の開口部33を開き、第二の炭素繊維ロッド(第二筋材)5Bを第二被覆部3により被覆する。なお、第一の炭素繊維ロッド5A及び第二の炭素繊維ロッド5Bは、前述の炭素繊維ロッド5に相当する。
【0032】
続いて、
図5(a)及び
図5(b)に示す工程により第一の炭素繊維ロッド5A及び第二の炭素繊維ロッド5Bを被覆した結束具1を加熱する。
この加熱過程において結束具1が熱収縮することによって、第一被覆部2及び第二被覆部3がそれぞれ第一の炭素繊維ロッド5A、第二の炭素繊維ロッド5Bに固着し、その結果、結束具1は第一の炭素繊維ロッド5Aと第二の炭素繊維ロッド5Bとを結束固定する。
【0033】
この場合の加熱条件は、第一被覆部2、第二被覆部3を構成する熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)が収縮し、結束対象の筋材を結束固定できる温度、時間になるように、熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)の種類や第一被覆部2、第二被覆部3の長さや厚み等に応じて適宜決定される。加熱方法は特に限定はなく、例えば、ドライヤー等の従来公知の加熱器具、乾燥器具を用いて加熱すればよい。
【0034】
以上に示すように、本第一例に係る結束具1によれば、直交する異なる2本の炭素繊維ロッド5A、5Bを簡易且つ強固に結束固定させることができる。なお、第一被覆部2及び第二被覆部3の形状や両被覆部がなす角度(本第一例では直角)は、
図4に示す形状や角度に限定されるものではない。
【0035】
[結束具の第二例]
図6は、本実施形態に係る結束具の第二例を示す図である。なお、以下の説明において、筋材の一例として炭素繊維ロッドを例に挙げて説明を行うが、筋材としては炭素繊維ロッド以外の繊維ロッドや、鉄筋、竹筋等の繊維ロッド以外の筋材を使用できる。
【0036】
図6に示す結束具1Aは、第一被覆部2A、第二被覆部3Aを有する構成である。この結束具1Aは、前述の結束具1と同様の樹脂材料によって形成される。
【0037】
第一被覆部2Aは、円筒状の筒状体であって側面長手方向に開口した一対の開口縁21A、22Aにより構成される開口部23Aが形成されている。この第一被覆部2は、第一被覆部2Aの長手方向と平行方向に延在する第二被覆部3Aと一体化して形成されている。本実施形態では第一被覆部2Aの内径は、前述の炭素繊維ロッド5の外径よりもやや大きく構成されており、この第一被覆部2Aは炭素繊維ロッド5を外側から被覆することができる。なお、第一被覆部は結束対象の筋材を被覆できればよく、変形できるのであれば、結束対象の筋材の外径より、小さな内径を有する第一被覆部を使用してもよい。
【0038】
第二被覆部3Aは、円筒状の筒状体であって側面長手方向に開口した一対の開口縁31A、32Aにより構成される開口部33Aが形成されている。本実施形態では第二被覆部3Aの内径は、前述の第一被覆部2Aと同様に炭素繊維ロッド5の外径よりもやや大きく構成されており、この第二被覆部3Aは炭素繊維ロッド5を被覆することができる。なお、第二被覆部は結束対象の筋材を被覆できればよく、変形できるのであれば、結束対象の筋材の外径より、小さな内径を有する第二被覆部を使用してもよい。
【0039】
以上に示すように、第二の例に係る結束具1Aは、平行方向に延在する第一被覆部2Aと第二被覆部3Aとが一体化して形成されたものであり、分岐する異なる2本の炭素繊維ロッド5を被覆することができる。なお、結束具1Aを構成する第一被覆部2Aと第二被覆部3Aの大きさ(長さ、厚み等)は、必要とされる結束力が得られる限りにおいて任意であり、結束対象である筋材の材質、太さ、長さ等を考慮して適宜決定すればよい。
【0040】
図7は、第二例に係る結束具の使用例を示す図である。以下、
図7を用いて第二例に係る結束具1Aの使用例について説明する。
【0041】
図7に示すように、手作業等に第一被覆部2Aの開口部23Aを開き、第一の炭素繊維ロッド5Cを第一被覆部2Aにより被覆するとともに、手作業等により第二被覆部3Aの開口部33Aを開き、第二の炭素繊維ロッド5Dを第二被覆部3Aにより被覆する。なお、第一の炭素繊維ロッド5C及び第二の炭素繊維ロッド5Dは、前述の炭素繊維ロッド5に相当するが、説明の便宜上、第二の炭素繊維ロッド5Dは途中で折曲した態様にて示している。
【0042】
続いて、
図7に示す工程により第一の炭素繊維ロッド5C及び第二の炭素繊維ロッド5Dを被覆した結束具1Aを加熱する。この加熱過程において結束具1Aが熱収縮することによって、第一被覆部2A及び第二被覆部3Aがそれぞれ第一の炭素繊維ロッド5C、第二の炭素繊維ロッド5Dに固着し、その結果、結束具1Aは第一の炭素繊維ロッド5Cと第二の炭素繊維ロッド5Dとを結束固定する。
【0043】
この場合の加熱条件は、第一被覆部2、第二被覆部3を有する構成する熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)が収縮し、結束対象の筋材を結束固定できる温度、時間になるように、熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)の種類や第一被覆部2、第二被覆部3の長さや厚み等に応じて適宜決定される。加熱方法は特に限定はなく、例えば、ドライヤー等の従来公知の加熱器具、乾燥器具を用いて加熱すればよい。
【0044】
以上に示すように、本第二例に係る結束具1Aによれば、分岐する異なる2本の炭素繊維ロッド5C、5Dを簡易且つ強固に結束固定させることができる。なお、第一被覆部2A及び第二被覆部3Aの形状は、
図6に示す形状に限定されるものではない。
【0045】
[結束具の第三例]
図8は、本実施形態に係る結束具の第三例を示す図である。なお、以下の説明において、筋材の一例として炭素繊維ロッドを例に挙げて説明を行うが、筋材としては炭素繊維ロッド以外の繊維ロッドや、鉄筋、竹筋等の繊維ロッド以外の筋材を使用できる。
【0046】
図8に示す結束具1Bは、第一被覆部2B、第二被覆部3B及び連結部4を有する構成である。この結束具1Bは、前述の結束具1と同様の樹脂材料によって形成される。また、
図9に結束具1Bを使用して直交した繊維ロッドを連結した図を示す。
【0047】
結束具1Bにおいて、
図8(a)に示すように、第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとは連結部4を介して連結している。結束具1Bでは、上述した結束具の第一例(結束具1)と異なり、第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとは直接的に一体化しているわけではなく、連結部4と第一被覆部2B、連結部4と第二被覆部3Bのそれぞれが一体化して形成されることによって第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとが結合されている。
【0048】
結束具1Bは、
図8(b)の通り、第一被覆部2Bの側面長手方向が開口した開口部23Bと、第二被覆部3Bの側面長手方向が開口した開口部33Bと、を有する。
【0049】
連結部4の構成材料は、第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとを連結するための特性(強度や弾力等)があればよく、第一被覆部2Bと第二被覆部3Bと同様に熱収縮可能な樹脂材料で形成してもよいし、熱収縮しない材料で形成していてもよい。
【0050】
また、連結部4の形状は、第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとを連結するための特性(強度や弾力等)があればよく、
図8で示した形状でなくてもよい。また、結束具1Bにおいて、
図8(a)に示すように連結部4は2つであるが、これに限定されず、目的に応じて2以上形成してもよい。
【0051】
図9は、第三例に係る結束具1Bの使用例を示す図である。
【0052】
手作業等に第一被覆部2Bの開口部23Bを開き、第一の炭素繊維ロッド5Eを第一被覆部2Bにより被覆する。次に手作業等により第二被覆部3の開口部33Bを開き、第二の炭素繊維ロッド5Fを第二被覆部3Bにより被覆する。なお、第一の炭素繊維ロッド5E及び第二の炭素繊維ロッド5Fは、前述の炭素繊維ロッド5に相当する。
【0053】
続いて、第一の炭素繊維ロッド5E及び第二の炭素繊維ロッド5Fを被覆した結束具1Bを加熱する。
この加熱過程において結束具1Bが熱収縮することによって、第一被覆部2B及び第二被覆部3Bがそれぞれ第一の炭素繊維ロッド5E、第二の炭素繊維ロッド5Fに固着し、その結果、結束具1Bは第一の炭素繊維ロッド5Eと第二の炭素繊維ロッド5Fとを結束固定する。
【0054】
この場合の加熱条件は、第一被覆部2B、第二被覆部3Bを構成する熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)が収縮し、繊維ロッドを結束固定できる温度、時間になるように、熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)の種類や第一被覆部2B、第二被覆部3Bの長さや厚み等に応じて適宜決定される。加熱方法は特に限定はなく、例えば、ドライヤー等の従来公知の加熱器具、乾燥器具を用いて加熱すればよい。
【0055】
本実施形態では、第一被覆部2B及び第二被覆部3Bによって炭素繊維ロッド5E,5F全体が被覆されているわけではないが、第一被覆部2B、第二被覆部3Bを構成する熱収縮性樹脂(または樹脂組成物)の収縮により強固に固定することができる。
なお、上述した結束具の第一例(結束具1)と同様に第一被覆部2B及び第二被覆部3Bによって、炭素繊維ロッド全体を被覆するようにしてもよい。
【0056】
以上に示すように、本第三例に係る結束具1Bによれば、直交する異なる2本の炭素繊維ロッド5E、5Fを簡易且つ強固に結束固定させることができる。なお、第一被覆部2B及び第二被覆部3Bの形状や両被覆部がなす角度(本第三例では直角)は、
図9に示す形状や角度に限定されるものではない。
【0057】
また、図示しないが、上述した本第二例に係る結束具1Aに連結部を形成してもよい。この場合、平行した第一被覆部2Aと第二被覆部3Aにおける開口部23A,33Aが形成された反対側に連結部を形成すればよい。連結部の構成材料や形状は第一被覆部2Bと第二被覆部3Bとを連結するための特性(強度や弾力等)があればよく、目的に応じて適宜選択できる。また、連結部の数は1つでもよいが、第一被覆部2Aと第二被覆部3Aを高めるために、連結部は2以上形成することが好ましい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。特に今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、具体的な構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B 結束具
2、2A、2B 第一被覆部
3、3A、3B 第二被覆部
4 連結部
5 炭素繊維ロッド(筋材)
5A、5C、5E 第一炭素繊維ロッド(第一筋材)
5B、5D、5F 第二炭素繊維ロッド(第二筋材)
50A 筋材(縦筋)
50B 筋材(横筋)
100 格子状の補強筋
C 交差部