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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】乳酸除去方法および乳酸除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20221212BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20221212BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B01J20/06 Z
B01D15/00 M
B01J20/26 H
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020541138
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033125
(87)【国際公開番号】W WO2020050068
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018166842
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018209884
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 敏明
(72)【発明者】
【氏名】亀田 知人
(72)【発明者】
【氏名】北川 文彦
(72)【発明者】
【氏名】神保 陽一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昌幸
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039505(JP,A)
【文献】特開昭63-188632(JP,A)
【文献】特開2006-212617(JP,A)
【文献】特開2001-095487(JP,A)
【文献】特開平11-032724(JP,A)
【文献】特開昭58-214338(JP,A)
【文献】特開2017-000567(JP,A)
【文献】国際公開第2002/004593(WO,A1)
【文献】実開昭63-122100(JP,U)
【文献】特開2017-951(JP,A)
【文献】特開2011-174043(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104478131(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
B01D 15/00 - 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物およびMg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤を乳酸およびグルコースを含有する溶液に接触させて、前記溶液中の乳酸を吸着することを含む、
乳酸除去方法
【請求項2】
前記溶液は、細胞または微生物の培養液である
請求項1に記載の乳酸除去方法
【請求項3】
前記乳酸吸着剤は、前記Cu-Al系層状複水酸化物、前記Mg-Al系層状複水酸化物、前記Ni-Al系層状複水酸化物、前記Cu-Al系層状複酸化物および前記Mg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される一種のみで構成される、
請求項1または2に記載の乳酸除去方法。
【請求項4】
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤を、乳酸およびグルコースを含有する、細胞または微生物の培養液に接触させて、前記培養液中の乳酸を吸着することを含む、
乳酸除去方法
【請求項5】
前記乳酸吸着剤は、Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される一種のみで構成される、
請求項に記載の乳酸除去方法
【請求項6】
前記乳酸吸着剤の添加量は、0.0005g/mL超0.2g/mL未満である請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳酸除去方法
【請求項7】
乳酸およびグルコースを含有する溶液を収容する容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物およびMg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤を有する吸着モジュールと、
前記容器および前記吸着モジュールをつなぎ、前記溶液を前記容器および前記吸着モジュールの間で循環させる循環路と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項8】
乳酸およびグルコースを含有する溶液を収容する容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物およびMg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤であって、前記容器の内壁面に支持される乳酸吸着剤と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項9】
乳酸およびグルコースを含有する溶液を収容する容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物およびMg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤と、
前記容器内を前記乳酸吸着剤が収容される第1空間と前記溶液が収容される第2空間とに区画するとともに前記溶液が透過可能な隔膜と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項10】
乳酸およびグルコースを含有する溶液を収容する容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物およびMg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤であって、前記溶液に添加される乳酸吸着剤と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項11】
前記乳酸吸着剤は、前記Cu-Al系層状複水酸化物、前記Mg-Al系層状複水酸化物、前記Ni-Al系層状複水酸化物、前記Cu-Al系層状複酸化物および前記Mg-Al系層状複酸化物からなる群から選択される一種のみで構成される、
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の乳酸除去装置。
【請求項12】
乳酸およびグルコースを含有する、細胞または微生物の培養液を収容する培養容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤を有する吸着モジュールと、
前記培養容器および前記吸着モジュールをつなぎ、前記培養液を前記培養容器および前記吸着モジュールの間で循環させる循環路と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項13】
乳酸およびグルコースを含有する、細胞または微生物の培養液を収容する培養容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤であって、前記培養容器の内壁面に支持される乳酸吸着剤と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項14】
乳酸およびグルコースを含有する、細胞または微生物の培養液を収容する培養容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤と、
前記培養容器内を前記乳酸吸着剤が収容される第1空間と前記培養液が収容される第2空間とに区画するとともに前記培養液が透過可能な隔膜と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項15】
乳酸およびグルコースを含有する、細胞または微生物の培養液を収容する培養容器と、
Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤であって、前記培養液に添加される乳酸吸着剤と、を備える、
乳酸除去装置。
【請求項16】
前記乳酸吸着剤は、Cu-Al系層状複水酸化物、Mg-Al系層状複水酸化物、Ni-Al系層状複水酸化物、Cu-Al系層状複酸化物、Mg-Al系層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有するハイポーラス型の弱塩基性陰イオン交換樹脂およびスチレン系ジメチルアミノ基を有するMR型の弱塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される一種のみで構成される、
請求項12乃至15のいずれか1項に記載の乳酸除去装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸吸着剤および乳酸の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品製造や再生医療などの分野において、細胞や微生物を人工的に効率よく大量培養することが求められている。大量培養が求められる細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)等の抗体産生細胞、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)等の多能性幹細胞等が挙げられる。これらの細胞等を長期間安定的に大量培養できれば、モノクローナル抗体等の生体物質や多能性幹細胞由来の分化誘導組織を効率よく生産することができる。
【0003】
細胞等を工業的に大量培養する方法としては、スピナーフラスコ等の培養槽を用いた浮遊攪拌培養が考えられる。一方、浮遊攪拌培養では設備規模が大きくなる傾向がある。したがって、コストの削減を図るために、細胞等の培養密度を高めることが有効である。しかしながら、培養密度を高めていくと、細胞等の増殖が抑えられることが知られている。これは、細胞等の高密度化によって培養液(液体培地)中の老廃物(代謝物)の濃度が上昇し、これにより細胞等の増殖活性が低下するためである。細胞等に影響を与える老廃物の代表的なものとしては、乳酸が知られている。
【0004】
したがって、細胞等を高密度状態で安定的に増殖させるためには、培養液中に蓄積する乳酸を除去することが望ましい。これに対し、例えば特許文献1には、濃度差に依存して成分を透過させる培養液成分調整膜を設けた送液ラインによって、細胞培養槽と成分調整液槽とを接続した細胞培養装置が開示されている。この細胞培養装置では、培養液中に蓄積した老廃物は、成分調整液側に移動することで培養液中での濃度が低下する。同時に、培養中に濃度が低下した栄養分は、成分調整液から培養液へ移動して補充される。これにより、培養液中の環境が細胞培養に適した状態に維持される。なお、成分調整液には、培養液そのものが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/122528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される細胞培養装置は、透析の原理を利用して培養液から老廃物を除去していた。したがって、十分な老廃物の除去を実現するために、成分調整液槽の容積を細胞培養槽の容積の10倍以上に設定していた。このため、必要な液量が莫大でコストがかかるという課題があった。特に、成分調整液に培養液そのものを用いる場合には、高価な培地を大量に消費することになり、より一層のコストがかかってしまう。また、透析技術を利用して老廃物を除去する場合、培養装置の構造が複雑になるという課題もあった。
【0007】
また、乳酸は、細胞等の培養液に限らず、他の溶液系においても除去が望まれることが多い。このため、透析技術以外の手法を用いた新規な乳酸除去技術が強く望まれる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、新規な乳酸除去技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は乳酸吸着剤である。この乳酸吸着剤は、層状複水酸化物、層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂、および強塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む。この態様によれば、新規な乳酸除去技術を提供することができる。
【0010】
上記態様において、乳酸吸着剤は、乳酸を含有する溶液に接触して、溶液中の乳酸を吸着してもよい。また、溶液は、グルコースを含有する、細胞または微生物の培養液であってもよい。また、強塩基性陰イオン交換樹脂は、スチレン系トリメチルアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂、およびスチレン系ジメチルエタノールアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂の少なくとも一方を含んでもよい。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂は、ハイポーラス型またはMR型であってもよい。また、乳酸吸着剤の溶液への添加量は、0.0005g/mL超0.2g/mL未満であってもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、乳酸の除去方法である。当該除去方法は、上記いずれかの態様の乳酸吸着剤を、乳酸に接触させることを含む。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な乳酸除去技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)~図1(D)は、実施の形態に係る乳酸の除去方法を説明するための模式図である。
図2】乳酸吸着剤として層状複水酸化物および層状複酸化物を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。
図3】乳酸吸着剤として層状複水酸化物および層状複酸化物を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。
図4図4(A)は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図4(B)は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。
図5図5(A)は、乳酸吸着剤として弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率を示す図である。図5(B)は、乳酸吸着剤としてスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。
図6】乳酸吸着剤としてスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
本発明者らは、乳酸の除去技術について鋭意検討を重ね、乳酸を高選択的に吸着することができる吸着剤を見出した。具体的には、本実施の形態に係る乳酸吸着剤は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)、層状複酸化物(Layered Double oxide:LDO)、スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂、および強塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む。「スチレン系ジメチルアミノ基」とは、スチレン骨格にイオン交換基(官能基)としてジメチルアミノ基が結合した構造を意味する。以下では適宜、スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂を、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂と称する。他の基を有する陰イオン交換樹脂についても同様である。
【0017】
層状複水酸化物は、二価金属のM(OH)におけるM2+の一部がM3+に置換されることにより正電荷を帯びた八面体層のホスト層と、ホスト層の正電荷を補償するアニオンおよび層間水からなるゲスト層と、で構成される。乳酸(乳酸イオン)は、ゲスト層の陰イオンとイオン交換されることで、LDHに吸着される。
【0018】
層状複水酸化物は、以下の化学式で表される。
[M2+ 1-X3+ (OH)][An- x/n・yHO]
上記式中、M2+は、Cu2+、Mn2+、Mg2+、Fe2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Co2+およびCd2+からなる群から選択される2価の金属イオンである。M3+は、Al3+、Cr3+、Fe3+、Co3+、In3+、Mn3+およびV3+からなる群から選択される3価の金属イオンである。An-は、CO 2-、SO 2-、Cl、OH、SiO 4-、SO 2-およびNO からなる群から選択されるn価の陰イオンである。xは0.22~0.3であり、nは1~3であり、yは1~12である。
【0019】
層状複酸化物は、LDHの酸化物である。LDOは、LDHを例えば200℃~500℃で焼成して得られる。LDOを乳酸水溶液に接触させると、乳酸を層間に吸着した状態でLDH構造を再生する。
【0020】
好ましい層状複水酸化物および層状複酸化物としては、Cu-Al系LDH、Cu-Al系LDO、Mg-Al系LDH、Mg-Al系LDO、Ni-Al系LDHが例示される。前記「系」は、上記化学式におけるAn-の種類を問わないことを意味する。構成する金属イオンや陰イオンの種類が異なる複数種の層状複水酸化物および/または層状複酸化物を混合して用いてもよい。
【0021】
スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂は、好ましくはハイポーラス型またはMR(macro-retlar:巨大網状)型である。このような弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、ハイポーラス型のWA30(三菱ケミカル社)や、MR型のIRA96SB(オルガノ社)等が挙げられる。
【0022】
強塩基性陰イオン交換樹脂としては、スチレン系トリメチルアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂や、スチレン系ジメチルエタノールアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい例として挙げられる。
【0023】
スチレン系トリメチルアンモニウム型強塩基性陰イオン交換樹脂としては、ゲル型のSA10A、SA12A、SA11A、NSA100(全て三菱ケミカル社)や、ポーラス型のPA306S、PA308、PA312、PA316、PA318L、HPA25(全て三菱ケミカル社)等が挙げられる。スチレン系ジメチルエタノールアンモニウム型強塩基性陰イオン交換樹脂としては、SA20A、SA21A(全て三菱ケミカル社)や、PA408、PA412、PA418(全て三菱ケミカル社)等が挙げられる。
【0024】
陰イオン交換樹脂は、その形状により、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型およびMR型に分類される。ゲル型は、樹脂原料(モノマー)を溶媒中で重合させた重合体であり、均一な三次元構造を有する。ゲル型は、ミクロポアのみを有する。ポーラス型やハイポーラス型は、ゲル型の三次元構造に物理的に孔(マクロポア)を設けた多孔質構造で構成される。ハイポーラス型は、ポーラス型よりも高多孔質である。MR型は、ゲル型を合成する際の重合方法を改良して作製されたものであり、ゲル型よりも比表面積、細孔容積が大きい。弱塩基性陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂に比べて吸着能が低いため、吸着面積の大きいハイポーラス型やMR型が好ましい。一方、強塩基性陰イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂に比べて吸着能が高いため、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型およびMR型のいずれの構造であってもよい。
【0025】
弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂は、遊離官能基と乳酸イオンとが電気的に相互作用するか、官能基と相互作用している交換イオンと乳酸イオンとがイオン交換することで、乳酸を吸着することができる。上記のSA10A、SA12A、SA11A、NSA100、PA306S、PA308、PA312、PA316、PA318L、HPA25、SA20A、SA21A、PA408、PA412およびPA418は、交換イオンClと乳酸イオンとのイオン交換により、乳酸を吸着する。WA30およびIRA96SBは、遊離官能基と乳酸イオンとの電気的相互作用により、乳酸を吸着する。乳酸吸着剤は、層状複水酸化物、層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂の任意の組み合わせを含有してもよい。
【0026】
層状複水酸化物、層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂、および強塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む乳酸吸着剤を乳酸に接触させることで、乳酸をこれらの物質に吸着させることができる。特に、本実施の形態の乳酸吸着剤は、溶液中の乳酸を吸着除去する場合に、好適に用いることができる。この場合、乳酸吸着剤を乳酸含有溶液に接触させることで、溶液中の乳酸を吸着させることができる。これにより、溶液中の乳酸を除去することができる。
【0027】
また、乳酸吸着剤は、溶液が、グルコースを含有する細胞または微生物の培養液であった場合に、培養液中に残すべきグルコースに比べて除去対象である乳酸を高選択的に吸着することができる。また、乳酸吸着剤は、細胞や微生物に対する毒性が低いものを選択することが好ましい。なお、培養液の種類は特に限定されない。
【0028】
また、溶液への乳酸吸着剤の添加量、言い換えれば溶液中の乳酸吸着剤の濃度は、好ましくは0.0005g/mL超であり、より好ましくは0.005g/mL以上である。また、当該添加量は、好ましくは0.2g/mL未満であり、より好ましくは0.1g/mL以下である。乳酸吸着剤の添加量を0.0005g/mL超とすることで、乳酸吸着率をより確実に高めることができる。また、添加量を0.005g/mL以上とすることで、水系溶液中で40%以上の乳酸吸着率を得ることができる。また、培養液中でも10%以上の乳酸吸着率を得ることができる。これにより、より確実に溶液中の乳酸量を低減させることができる。乳酸吸着率は、溶液中の全乳酸量に対する吸着した乳酸量の割合である。
【0029】
また、乳酸吸着剤の添加量を0.2g/mL未満とすることで、グルコース吸着率をより確実に抑制することができる。また、添加量を0.1g/mL以下とすることで、培養液において20%以下のグルコース吸着率を得ることができる。また、水系溶液においては、乳酸吸着率に対してグルコース吸着率を1/3程度に抑制することができる。これにより、乳酸吸着剤に起因するグルコース量の低減をより確実に抑制することができる。よって、より効率よく細胞等を培養することができる。グルコース吸着率は、溶液中の全グルコース量に対する吸着したグルコース量の割合である。
【0030】
培養液を用いて培養される細胞および微生物は、特に限定されない。例えば培養細胞は、ヒトiPS細胞、ヒトES細胞、ヒトMuse細胞等の多能性幹細胞;間葉系幹細胞(MSC細胞)、ネフロン前駆細胞等の体性幹細胞;ヒト近位尿細管上皮細胞、ヒト遠位尿細管上皮細胞、ヒト集合管上皮細胞等の組織細胞;ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)等の抗体産生細胞株;チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、昆虫細胞(SF9細胞)等のヒト以外の動物由来の抗体産生細胞株等が挙げられる。これらの細胞は、大量培養が特に望まれる細胞であるため、本実施の形態に係る乳酸吸着剤の使用対象としてより好ましい。
【0031】
(乳酸の除去方法)
本実施の形態に係る乳酸の除去方法は、上述した乳酸吸着剤を乳酸(乳酸イオン)に接触させることを含む。好ましくは、乳酸を含有する溶液に乳酸吸着剤を接触させることを含む。乳酸吸着剤を乳酸に接触させる方法は特に限定されないが、以下の態様が例示される。図1(A)~図1(D)は、実施の形態に係る乳酸の除去方法を説明するための模式図である。以下では、培養液からの乳酸除去を例に挙げて説明するが、他の溶液からの乳酸除去についても同様に実施することができる。
【0032】
図1(A)に示すように、第1の態様では、カラム等の容器2に乳酸吸着剤4が充填された吸着モジュール6が用意される。容器2は、容器2の内外を連通する入口2aと出口2bとを有する。乳酸吸着剤4は、例えば粒子状である。吸着モジュール6は、循環路8を介して、スピナーフラスコ等の培養容器10に接続される。循環路8は、培養容器10と容器2の入口2aとを接続する往路8aと、容器2の出口2bと培養容器10とを接続する復路8bとを含む。往路8aの途中には、ポンプ12が接続される。培養容器10中には、培養液14と、細胞16とが収容される。なお、ポンプ12は復路8bに配置されてもよい。
【0033】
ポンプ12が駆動すると、培養液14は培養容器10から吸引され、往路8aを介して吸着モジュール6の容器2内に送られる。容器2内に送り込まれた培養液14は、復路8bを介して培養容器10内に戻される。培養液14は、培養容器10と吸着モジュール6との間を循環する過程で、容器2に充填された乳酸吸着剤4と接触する。このとき、培養液14中の乳酸は、乳酸吸着剤4に吸着される。この結果、培養液14中の乳酸が除去される。往路8aにおける培養容器10に接続される側の端部には、図示しないフィルタが設けられる。これにより、細胞16が吸着モジュール6側に流れることが抑制される。なお、培養容器10と吸着モジュール6との間で培養液14を循環させる過程で、細胞16の培養に必要なグルコースやタンパク質等の培地成分が培養液14に補充されてもよい。
【0034】
つまり、第1の態様では、乳酸吸着剤4を有する吸着モジュール6と、細胞または微生物、および培養液14が収容される培養容器10と、吸着モジュール6と培養容器10とをつなぎ培養液14を循環させる循環路8と、を備える培養装置を用いることで、培養液14中の乳酸が除去される。
【0035】
図1(B)に示すように、第2の態様では、培養容器10の内壁面に乳酸吸着剤4が支持されている。培養容器10中には、培養液14と、細胞16とが収容されている。したがって、培養液14は、培養容器10の内壁面において露出する乳酸吸着剤4に接触する。これにより、培養液14中の乳酸を乳酸吸着剤4に吸着させることができる。培養容器10としては、スピナーフラスコ、シャーレ、ウェルプレート、セルカルチャーインサート、マイクロスフェア等が例示される。
【0036】
培養容器10の内壁面に乳酸吸着剤4を支持させる方法としては、例えば、乳酸吸着剤4を培養容器10の内壁面に接着させる方法や、培養容器10が樹脂製である場合には、予め乳酸吸着剤4を混合した樹脂で培養容器10を成形する方法が挙げられる。つまり、第2の態様では、培養容器10と、培養容器10の内壁面に支持される乳酸吸着剤4と、を備える培養装置を用いることで、培養液14中の乳酸が除去される。
【0037】
図1(C)に示すように、第3の態様では、培養容器10は、多孔質膜等の隔膜18によって容器内部が上段10aと下段10bに区切られた構造を有する。このような培養容器10としては、セルカルチャーインサートが例示される。上段10aには培養液14と細胞16が収容され、下段10bには培養液14と乳酸吸着剤4が収容される。培養液14は、隔膜18を通過して上段10aと下段10bとの間を行き来することができる。一方、細胞16および乳酸吸着剤4は、隔膜18を通過することができない。
【0038】
このような構造において、培養液14は、下段10bに収容された乳酸吸着剤4に接触する。これにより、培養液14中の乳酸を乳酸吸着剤4に吸着させることができる。つまり、第3の態様では、培養容器10と、乳酸吸着剤4と、培養容器10内を乳酸吸着剤4が収容される第1空間と細胞16が収容される第2空間とに区画する隔膜18と、を備える培養装置を用いることで、培養液14中の乳酸が除去される。
【0039】
図1(D)に示すように、第4の態様では、粒子状の乳酸吸着剤4を培養液14中に分散、沈降あるいは浮遊させる。これにより、培養液14中の乳酸を乳酸吸着剤4に吸着させることができる。なお、乳酸吸着剤4は、細胞16に貪食されることを防ぐために、所定サイズ以上、例えば10μm以上の大きさであることが好ましい。つまり、第4の態様では、培養容器10と、培養容器10内の培養液14に添加される乳酸吸着剤4と、を備える培養装置を用いることで、培養液14中の乳酸が除去される。
【0040】
好ましくは、乳酸吸着剤は、ポリビニルアルコール等の樹脂、コラーゲンやアルギン酸、ゼラチン等の生体由来ゲル等で被覆される。これにより、細胞等に影響を与え得る微粒子が乳酸吸着剤から培養液中に流出することを抑制することができる。あるいは、乳酸吸着剤は、セラミックスバインダー、樹脂バインダー、生体由来ゲル等と層状複水酸化物および/または層状複酸化物とを混練して成形される。これによっても、微粒子の流出を抑制することができる。セラミックスバインダーとしては、アルミナバインダー、コロイダルシリカ等が例示される。樹脂バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が例示される。生体由来ゲルとしては、コラーゲン、アルギン酸、ゼラチン等が例示される。
【0041】
溶液中の乳酸濃度を検出する場合、その検出方法は特に限定されないが、培地成分アナライザーを使用することが好ましい。また、所定の測定試薬を用いた比色法、酵素の基質特異性を利用する酵素電極法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を利用して、乳酸濃度を検出することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係る乳酸吸着剤は、層状複水酸化物、層状複酸化物、スチレン系ジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂、および強塩基性陰イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の物質を含む。また、本実施の形態に係る乳酸の除去方法は、この乳酸吸着剤を、乳酸に接触させることを含む。これにより、従来の透析技術を用いて乳酸を除去する場合とは異なり、莫大な量の溶液を使用せずに乳酸を除去することができる。したがって、本実施の形態によれば、低コストに乳酸を除去できる新規な乳酸除去技術を提供することができる。また、乳酸吸着剤を乳酸含有溶液に接触させるだけで乳酸を除去できるため、本実施の形態によれば培養装置の構造の簡略化を図ることができる。
【0043】
また、溶液が細胞等の培養液である場合には、従来の透析技術に比べて培養液の使用量を減らすことができる。一般的に培養液は高価であるため、より一層の低コスト化が可能である。また、乳酸の除去により細胞等を高密度に大量培養することができる。また、乳酸によって培地のpHが低下することも抑制できるため、この点でも細胞を高密度に大量培養することが可能となる。さらに、細胞が多能性幹細胞である場合には、乳酸の除去によって細胞の高密度大量培養が可能となることに加え、細胞が未分化の状態、つまり細胞の多分化能(分化多能性)を維持することができる。したがって、生体物質生産や分化誘導組織作製に好適な細胞を大量に得ることができる。これにより、医薬品製造や再生医療に要するコストを削減することができる。
【0044】
また、本実施の形態の乳酸吸着剤は、有用成分であるグルコースに対して乳酸を高選択的に吸着することができる。このため、より効率的な細胞培養が可能となる。よって、本実施の形態の乳酸吸着剤は、グルコースを含有する培養液における乳酸の除去に特に有用である。なお、本実施の形態の乳酸吸着剤は、他の細胞老廃物の吸着剤と併用してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【実施例
【0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0047】
<層状複水酸化物および層状複酸化物>
[乳酸吸着剤の合成]
(層状複水酸化物Cu-Al LDHの合成)
まず、イオン交換水の入った五口丸底フラスコを用意し、窒素流通下において30℃、300rpmの条件で撹拌した。また、1.0mol/L NaOH溶液(関東化学社)をイオン交換水に滴下し、pH8.0に上昇させた。次に、五口丸底フラスコを30℃、300rpmの条件で撹拌しながら、Cu-Al混合溶液250mLを10mL/分の速度でイオン交換水に滴下した。その際、1.0mol/L NaOH溶液もフラスコ中に滴下し、水溶液のpHを8.0に保持した。Cu-Al混合溶液の滴下が終了した後、1時間撹拌し、懸濁液を吸引ろ過した。続いて、ろ液が中性になるまでイオン交換水で洗浄した。得られた生成物を40℃、40時間減圧乾燥し、粉砕してCu-Al LDHを得た。
【0048】
(層状複酸化物Cu-Al LDOの合成)
上述の手順で作製したCu-Al LDHを電気炉で200℃、4時間仮焼して、Cu-Al LDOを得た。
【0049】
(層状複酸化物Mg-Al LDOの合成)
まず、NaCO水溶液500mLの入った五口丸底フラスコを用意した。そして、30℃、300rpmの条件で撹拌した。撹拌中に、Mg-Al混合溶液500mLを15mL/分の速度でフラスコ中の水溶液に滴下した。その際、1.25 mol/L NaOH水溶液もフラスコ中に滴下し、水溶液のpHを10.5±0.1に保持した。Mg-Al混合溶液の滴下が終了した後、1時間撹拌し、懸濁液を吸引ろ過した。得られた生成物を40℃、40時間減圧乾燥、粉砕した後、電気炉で500℃、2時間仮焼して、Mg-Al LDOを得た。
【0050】
(層状複水酸化物Mg-Al LDHの合成)
まず、イオン交換水の入った五口丸底フラスコを用意した。そして、窒素流通下において30℃、300rpmの条件で撹拌した。撹拌中に、Mg-Al混合溶液500mLを15mL/分の速度でフラスコ中のイオン交換水に滴下した。その際、1.25 mol/L NaOH水溶液もフラスコ中に滴下し、水溶液のpHを10.5±0.1に保持した。Mg-Al混合溶液の滴下が終了した後、1時間撹拌し、懸濁液を吸引ろ過した。得られた生成物を40℃、40時間減圧乾燥、粉砕して、Mg-Al LDHを得た。
【0051】
(層状複水酸化物Ni-Al LDHの合成)
まず、イオン交換水の入った五口丸底フラスコを用意した。そして、窒素流通下において30℃、300rpmの条件で撹拌した。また、1.0mol/L NaOH溶液(関東化学社)をイオン交換水に滴下し、pH10.5に上昇させた。次に、五口丸底フラスコを30℃、300rpmの条件で撹拌しながら、Ni-Al混合溶液250mLを10mL/分の速度でイオン交換水に滴下した。その際、1.0mol/L NaOH溶液もフラスコ中に滴下し、水溶液のpHを10.5に保持した。Ni-Al混合溶液の滴下が終了した後、1時間撹拌し、懸濁液を吸引ろ過した。続いて、ろ液が中性になるまでイオン交換水で洗浄した。得られ生成物を40℃、40時間減圧乾燥し、粉砕してNi-Al LDHを得た。
【0052】
[乳酸およびグルコースの水溶液(水系溶液)における吸着剤性能の解析1]
乳酸(関東化学社)とグルコース(関東化学社)とを純水に添加し、グルコース濃度1000ppm、乳酸濃度10mMの水溶液を作製した。さらに、この水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、水溶液のpHを7.2に調整した。そして、水溶液20mLを複数の50mL三角フラスコに分注した。また、各種の吸着剤0.5gを各フラスコの水溶液に添加した。したがって、吸着剤の濃度は0.025g/mLである。そして、37℃、150rpmで24時間振とうした。
【0053】
吸着剤には、球状活性炭(SAC:クレハ社)、酸化金属(MgO:関東化学社)、セラミックス(SiO:関東化学社)、Cu-Al LDH、Cu-Al LDOおよびMg-Al LDOを用いた。
【0054】
24時間経過後、0.1μmフィルタで水溶液と吸着剤とを分離した。そして、HPLC(日本分光社)を用いて水溶液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、以下の数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率およびグルコースの吸着率を算出した。
吸着率(%)=[吸着前濃度-吸着後濃度]/吸着前濃度×100
【0055】
結果を図2に示す。図2は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物および層状複酸化物を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図2に示すように、吸着剤濃度0.025g/mLにおいて、球状活性炭(SAC)、酸化金属(MgO)およびセラミックス(SiO)は乳酸を全く吸着しなかったのに対し、層状複水酸化物であるCu-Al LDHと、層状複酸化物であるCu-Al LDOおよびMg-Al LDOとでは50%以上の乳酸吸着率が得られた。このことから、層状複水酸化物および層状複酸化物が優れた乳酸吸着能を有することが確認された。
【0056】
また、球状活性炭(SAC)および酸化金属(MgO)ではグルコース吸着率が35%以上であったのに対し、層状複水酸化物および層状複酸化物ではグルコース吸着率が10%以下であった。このことから、層状複水酸化物および層状複酸化物がグルコースに対して乳酸を高選択的に吸着することが確認された。
【0057】
乳酸吸着剤として好適であることが確認された層状複水酸化物および層状複酸化物のうち、Cu-Al LDHおよびMg-Al LDOについて、水溶液への添加量を異ならせて上記の吸着試験を実施し、乳酸吸着率およびグルコース吸着率を算出した。添加量(濃度)は、0.01g(0.0005g/mL)、0.1g(0.005g/mL)、0.5g(0.025g/mL)、1.0g(0.05g/mL)、2.0g(0.1g/mL)とした。結果を図2に示す。
【0058】
図2に示すように、いずれの吸着剤濃度においても乳酸を吸着できることが確認された。また、濃度が0.0005g/mL超、さらには0.005g/mL以上のときに、より良好な乳酸吸着率が得られることが確認された。また、吸着剤の濃度が増加するにつれて乳酸吸着率は上昇するが、同時にグルコース吸着率も上昇する傾向にあることが確認された。しかしながら、Cu-Al LDHでは、グルコース吸着率が最大の33.7%であった吸着剤濃度0.1g/mLにおいても、乳酸吸着率はその3倍近い値であった。同様に、Mg-Al LDOでも、グルコース吸着率が最大の27.3%であった吸着剤濃度0.1g/mLにおいて、乳酸吸着率はその3倍近い値であった。このことから、層状複水酸化物および層状複酸化物がグルコースに対して乳酸を高選択的に吸着することが確認された。
【0059】
[細胞培養液における吸着剤性能の解析1]
多能性幹細胞用培地(StemFit AK02N:味の素社)に乳酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社)を添加し、グルコース濃度250mg/L、乳酸濃度10mMの培地を作製した。この培地20mLを複数の50mLチューブ(ThermoFisher Scientific社)に分注した。また、各種の吸着剤を各チューブの培地に添加した。吸着剤には、Cu-Al LDH、Cu-Al LDOおよびMg-Al LDOを用いた。吸着剤の添加量(濃度)は、0.01g(0.0005g/mL)、0.1g(0.005g/mL)、0.5g(0.025g/mL)、1.0g(0.05g/mL)、2.0g(0.1g/mL)、4.0g(0.2g/mL)とした。そして、37℃、60回/分で24時間振とうした。
【0060】
24時間経過後、0.22μmフィルタで培養液と吸着剤とを分離した。そして、血液ガス分析装置(ABL800 FLEX:ラジオメーター社)を用いて、細胞培養液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、上記数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率およびグルコースの吸着率を算出した。
【0061】
結果を図3に示す。図3は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物および層状複酸化物を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図3に示すように、水系溶液の場合に比べて多少は減少するものの、細胞培養液中でも層状複水酸化物および層状複酸化物が乳酸を吸着できることが確認された。特に、吸着剤濃度が0.0005g/mL超、さらには0.005g/mL以上のときに、より良好な乳酸吸着率が得られることが確認された。また、層状複水酸化物および層状複酸化物ではグルコース吸着率が最大でも26%であった。このことから、層状複水酸化物および層状複酸化物がグルコースを含む培地中の乳酸除去に好適であることが確認された。
【0062】
細胞培養液中においても、吸着剤濃度が増加するにつれて乳酸吸着率は上昇するが、同時にグルコース吸着率も上昇することが確認された。これに対し、吸着剤濃度が0.2g/mL未満、さらには0.1g/mL以下のときに、グルコース吸着率をより良好に低減できることが確認された。
【0063】
[乳酸およびグルコースの水溶液(水系溶液)における吸着剤性能の解析2]
上述の解析1で用いなかった層状複酸化物Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHについて、吸着剤性能の解析を実施した。まず、乳酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社)とグルコース(関東化学社)とをそれぞれ純水に添加し、乳酸濃度10mMの乳酸水溶液と、グルコース濃度1000ppmのグルコース水溶液とを作製した。そして、各水溶液20mLを別々の50mL三角フラスコに分注した。また、各種の吸着剤0.5gを各フラスコの水溶液に添加した。したがって、吸着剤の濃度は0.025g/mLである。そして、37℃、150rpmで24時間振とうした。吸着剤には、Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHを用いた。
【0064】
24時間経過後、0.1μmフィルタで水溶液と吸着剤とを分離した。そして、HPLC(日本分光社)を用いて水溶液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、上記数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率およびグルコースの吸着率を算出した。
【0065】
結果を図4(A)に示す。図4(A)は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図4(A)に示すように、吸着剤濃度0.025g/mLにおいて、Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHの乳酸吸着率は67.5%以上と非常に高い値であった。また、Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHのグルコース吸着率は8.7%以下と非常に低い値であった。このことから、層状複水酸化物が優れた乳酸吸着能を有し、且つグルコースに対して乳酸を高選択的に吸着することが確認された。
【0066】
[細胞培養液における吸着剤性能の解析2]
多能性幹細胞用培地(StemFit AK02N:味の素社)に乳酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社)を添加し、グルコース濃度250mg/L、乳酸濃度10mMの培地を作製した。この培地10mLを複数の15mLチューブ(ThermoFisher Scientific社)に分注した。また、各種の吸着剤を各チューブの培地に添加した。吸着剤には、Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHを用いた。吸着剤の添加量(濃度)は、0.25g(0.025g/mL)とした。そして、37℃、60回/分で24時間振とうした。
【0067】
24時間経過後、0.22μmフィルタで培養液と吸着剤とを分離した。そして、血液ガス分析装置(ABL800 FLEX:ラジオメーター社)を用いて、細胞培養液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、上記数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率およびグルコースの吸着率を算出した。
【0068】
結果を図4(B)に示す。図4(B)は、乳酸吸着剤として層状複水酸化物を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図4(B)に示すように、水系溶液の場合に比べて多少は減少するものの、細胞培養液中でもMg-Al LDHおよびNi-Al LDHが乳酸を吸着できることが確認された。また、Mg-Al LDHおよびNi-Al LDHのグルコース吸着率は最大でも8.3%であった。このことから、層状複水酸化物がグルコースを含む培地中の乳酸除去に好適であることが確認された。
【0069】
<弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂>
[乳酸およびグルコースの水溶液(水系溶液)における吸着剤性能の解析1]
乳酸リチウム(富士フィルム和光純薬社)とグルコース(関東化学社)とを純水に添加し、乳酸濃度10mM、グルコース濃度1000ppmの水溶液を作製した。この水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、水溶液のpHを7.2に調整した。そして、水溶液20mLを複数の50mL三角フラスコに分注した。また、各種の吸着剤0.5gを各フラスコの水溶液に添加した。したがって、吸着剤の濃度は0.025g/mLである。そして、37℃、150rpmで24時間振とうした。
【0070】
使用した吸着剤は、以下の通りである。
酸化金属:
α-Fe(添川理化学社)
γ-Fe(添川理化学社)
Al(関東化学社)
Al(OH)(関東化学社)
弱塩基性陰イオン交換樹脂:
スチレン系ポリアミン型 WA20(三菱ケミカル社)
スチレン系ジメチルアミン型 WA30(三菱ケミカル社)
アクリル系ジメチルアミン型 IRA67(オルガノ社)
スチレン系ジメチルアミン型 IRA96SB(オルガノ社)
強塩基性陰イオン交換樹脂:
スチレン系トリメチルアンモニウム型 SA10A(三菱ケミカル社)
スチレン系ジメチルエタノールアンモニウム型 SA20A(三菱ケミカル社)
【0071】
なお、WA20はハイポーラス型、WA30はハイポーラス型、IRA67はゲル型、IRA96SBはMR型、SA10Aはゲル型、SA20Aはゲル型である。
【0072】
24時間経過後、0.1μmフィルタで水溶液と吸着剤とを分離した。そして、HPLC(日本分光社)を用いて水溶液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、上記数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率を算出した。
【0073】
結果を図5(A)に示す。図5(A)は、乳酸吸着剤として弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率を示す図である。図5(A)に示すように、吸着剤濃度0.025g/mLにおいて、酸化金属(α-Fe、γ-Fe、Al、Al(OH))、スチレン系ポリアミン型弱塩基陰イオン交換樹脂(WA20)、およびアクリル系ジメチルアミン型弱塩基陰イオン交換樹脂(IRA67)では、乳酸はほとんど吸着されなかった。
【0074】
これに対し、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂(WA30およびIRA96SB)、スチレン系トリメチルアンモニウム型強塩基性陰イオン交換樹脂(SA10A)およびスチレン系ジメチルエタノールアンモニウム型強塩基性陰イオン交換樹脂(SA20A)では、20%以上の良好な乳酸吸着率が得られた。特に、WA30、SA10AおよびSA20Aでは、49%以上のより良好な乳酸吸着率が得られた。これらの結果より、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂が優れた乳酸吸着能を有することが確認された。
【0075】
[乳酸およびグルコースの水溶液(水系溶液)における吸着剤性能の解析2]
上述の解析1で良好な乳酸吸着能を示したWA30、IRA96SB、SA10AおよびSA20Aについて、水溶液への添加量(濃度)を異ならせて上記の吸着試験を実施し、乳酸吸着率およびグルコース吸着率を算出した。濃度は、0.01g(0.0005g/mL)、0.1g(0.005g/mL)、0.5g(0.025g/mL)、2.0g(0.1g/mL)とした。
【0076】
結果を図5(B)に示す。図5(B)は、乳酸吸着剤としてスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、乳酸およびグルコースの水溶液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図5(B)に示すように、いずれの吸着剤濃度においても乳酸を吸着できることが確認された。また、濃度が0.0005g/mL超、さらには0.005g/mL以上のときに、より良好な乳酸吸着率が得られることが確認された。
【0077】
また、弱塩基性陰イオン交換樹脂(WA30およびIRA96SB)では、吸着剤の濃度が増加するにつれて乳酸吸着率は上昇するが、同時にグルコース吸着率も上昇する傾向にあることが確認された。しかしながら、グルコース吸着率が最大の56%であった吸着剤濃度0.2g/mLにおいても、乳酸吸着率はその1.5倍近い値であった。また、吸着剤濃度0.1g/mLでは、グルコース吸着率に対して乳酸吸着率が2.7倍以上の値に上昇した。したがって、弱塩基性陰イオン交換樹脂では、吸着剤濃度が0.2g/mL未満、さらには0.1g/mL以下のときに、乳酸に対する吸着選択性がより向上した。
【0078】
一方、強塩基性陰イオン交換樹脂(SA10A、SA20A)では、吸着剤の濃度が増加するにつれて乳酸吸着率は上昇するが、グルコース吸着率はほとんど上昇しないことが確認された。グルコース吸着率が最大の4%であった吸着剤濃度0.2g/mLにおいて、乳酸吸着率はその20倍近い値であった。これらのことから、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂がグルコースに対して乳酸を高選択的に吸着することが確認された。
【0079】
[細胞培養液における吸着剤性能の解析]
多能性幹細胞用培地(StemFit AK02N:味の素社)に乳酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社)を添加し、グルコース濃度250mg/L、乳酸濃度10mMの培地を作製した。この培地10mLを複数の15mLチューブ(ThermoFisher Scientific社)に分注した。また、各種の吸着剤を各チューブの培地に添加した。吸着剤には、WA30およびSA10Aを用いた。吸着剤の添加量(濃度)は、0.005g(0.0005g/mL)、0.05g(0.005g/mL)、0.25g(0.025g/mL)、0.5g(0.05g/mL)、1.0g(0.1g/mL)、2.0g(0.2g/mL)とした。そして、37℃、60回/分で24時間振とうした。
【0080】
24時間経過後、0.22μmフィルタで培養液と吸着剤とを分離した。そして、血液ガス分析装置(ABL800 FLEX:ラジオメーター社)を用いて、細胞培養液中の乳酸濃度およびグルコース濃度を測定した。また、上記数式に基づいて、各吸着剤における乳酸の吸着率およびグルコースの吸着率を算出した。
【0081】
結果を図6に示す。図6は、乳酸吸着剤としてスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合における、細胞培養液での乳酸吸着剤の乳酸吸着率およびグルコース吸着率を示す図である。図6に示すように、水系溶液の場合に比べて多少は減少するものの、細胞培養液中でもスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂(WA30)および強塩基性陰イオン交換樹脂(SA10A)が乳酸を吸着できることが確認された。特に、吸着剤濃度が0.0005g/mL超、さらには0.005g/mL以上、さらには0.025g/mL以上のときに、より良好な乳酸吸着率が得られることが確認された。また、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂ではグルコース吸着率が最大でも25%であった。このことから、スチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂がグルコースを含む培地中の乳酸除去に好適であることが確認された。
【0082】
細胞培養液中においても、吸着剤濃度が増加するにつれて乳酸吸着率は上昇するが、同時にグルコース吸着率も上昇することが確認された。これに対し、吸着剤濃度が0.2g/mL未満、さらには0.1g/mL以下のときに、グルコース吸着率をより良好に低減できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、乳酸吸着剤および乳酸の除去方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 容器、 4 乳酸吸着剤、 6 吸着モジュール、 8 循環路、 10 培養容器、 12 ポンプ、 14 培養液、 16 細胞、 18 隔膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6