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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】高品質黒目漆の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09F 1/00 20060101AFI20221212BHJP
   C07G 99/00 20090101ALN20221212BHJP
【FI】
C09F1/00
C07G99/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021178294
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2022074131
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020182884
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520026504
【氏名又は名称】及川 秀悟
(73)【特許権者】
【識別番号】520026515
【氏名又は名称】李 福律
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 秀悟
(72)【発明者】
【氏名】李 福律
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-205469(JP,A)
【文献】特開平03-263477(JP,A)
【文献】特開平03-174482(JP,A)
【文献】特開平03-210376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料生漆液を減圧蒸留する工程を含み、
減圧蒸留は、アスピレーターを備えるエバポレーター(但し、剪断力を付与する手段を備えるエバポレーターを除く)を用いて、原料生漆液の蒸気圧より30~50hPa減圧し、処理後の黒目漆の水分量が3重量%以下となるまで、20~35℃で30~80分行う、
高品質黒目漆の製造方法。
【請求項2】
原料生漆液が、色素をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
色素が、Fe(OH) 、HgS、クロシン、クロセチン及び弁柄から選ばれる少なくとも1つである、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
原料生漆液を減圧蒸留する工程を含み、
減圧蒸留は、アスピレーターを備えるエバポレーター(但し、剪断力を付与する手段を備えるエバポレーターを除く)を用いて、原料生漆液の蒸気圧より25~60hPa減圧して、処理後の黒目漆の水分量が3重量%以下となるまで、20~35℃で30~80分行う、
漆の精製方法。
【請求項5】
原料生漆液が、色素をさらに含む、請求項4に記載の精製方法。
【請求項6】
色素が、Fe(OH) 、HgS、クロシン、クロセチン及び弁柄から選ばれる少なくとも1つである、請求項5に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質黒目漆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漆は、伝統的に、漆の樹木から採取される樹液から生漆を得て、「なやし」及び「くろめ」と称される精製作業を経て製造される。生漆は油中水型(W/O型)エマルジョンであり、水相にゴム質とラッカーゼ等のタンパク質が、油層にはウルシオールと糖タンパク質が含まれている。「なやし」では、生漆を、通常30分程度常温でゆるやかに撹拌する。これにより、生漆においてはゴム質が沈降した不均一な漆成分を、均一にすることができる。さらに「くろめ」では、ラッカーゼの失活を防ぐため45℃以下に加熱しながら撹拌し、生漆に含まれる水分(通常25~30%)を蒸発すると、油中水型(W/O)エマルション系が破壊され、漆成分が均等に混合された透黒目漆等の黒目漆(水分は通常、約2~3%)を得る。透黒目漆は、透明な黒目漆であり、高品質であり仕上げに用いられる。透黒目漆以外の黒目漆は、通常、色素を含む着色黒目漆であり、代表的なものとして蝋色黒目漆、朱色黒目漆、梨子地黒目漆及び弁柄黒目漆がある。着色黒目漆は、日本、中国、韓国における多くの漆伝統工芸品の調製のために不可欠な成分である。
【0003】
黒目漆中の含水量は、漆の安定性、凝固性、硬さ、光沢の調整において重要な因子であることが知られている。含水量の高い生漆は、高粘度であり、酸素への暴露により徐々にメラニン化し固まり、その結果、漆塗へ使用できなくなり、経済的に不利である。一方、くろめ工程を経て、含水量の低い透黒目漆、黒目漆は、含水量が低いため、安定性が高く、凝固が長時間抑制され、良好な透明性、つやを有し、低粘度である等、品質が高い。そのため、くろめ工程は漆の製造において最も需要な工程であるといえる。
【0004】
くろめ工程の終点である含水量の判断は、現在も、熟練の漆職人の経験と勘によって行われ、ガラス板にサンプルを塗り付け、透明度から含水量を推測し、かつ、ガラス板を傾けた際の流動性から粘度を推測して決めている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】熊野谷 従(1991年)Jasco Report、33巻、2号、15-29ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、くろめ工程の分子メカニズム、及び、得られた黒目漆中の水分の科学的な定量方法は、現時点ではまだ十分に検討されておらず、漆職人の経験と勘によって行われており、科学的パラメータによる裏付けを欠いている。また、従来の方法では、「くろめ」における加熱撹拌を4~9時間と長時間行う必要がある。中でも、色素等の他の成分を添加して製造される黒目漆の場合、添加した他の成分により粘度がより上昇し、脱水にさらに長時間を要する。長時間の加熱撹拌を行うと、その間に生漆に存在するラッカーゼ酵素が変質し酵素活性が減少することにより、ラッカーゼによるウルシオールの架橋化反応が鈍化し漆の品質が低下すると言う問題がある。さらに、現在も、加熱撹拌時等製造工程において漆に含まれる低沸点の揮発性テルペン類の蒸気を漆職人が吸うと、強い炎症応答が生じ、いわゆる漆かぶれを起こすため、漆職人の健康面でも問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、短時間で効率的に、安全面でも問題なく、一定の品質を有する黒目漆を高い再現性をもって製造できる、黒目漆を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、〔1〕~〔8〕を提供する。
〔1〕原料生漆液を減圧蒸留する工程を含む、高品質黒目漆の製造方法。
〔2〕減圧蒸留は、処理後の黒目漆の水分量が3重量%以下となるまで行う、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕減圧蒸留は、原料生漆液の蒸気圧より25~60hPa減圧して行う、〔1〕記載の製造方法。
〔4〕減圧蒸留は、30分以上行う、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕減圧蒸留は、20~35℃で行う、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕原料生漆液を減圧蒸留する工程を含む、漆の精製方法。
〔7〕原料生漆液を収容する反応容器と、容器内で生漆を減圧するための減圧手段を少なくとも有する、漆の精製装置。
〔8〕反応容器は、減圧手段と接続可能な第1の開口部、処理後のサンプル取出用の第2の開口部、処理途中のサンプル分析用の第3の開口部を有する、〔7〕に記載の装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の方法における「なやし」と「くろめ」を一つの操作で同時に行うことができ、かつ、短時間で、かつ健康面の問題も生じさせずにウルシオール回収効率が高く、タンパク質を豊富に含み、ラッカーゼ活性の高い高品質な黒目漆を製造することができ、そのため、これらの伝統的な手法に代わる方法として、漆の大量生産への道を開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1の黒目漆(上段)、実施例3の黒目漆(中段)、実施例4の黒目漆(下段)のHPLCチャートである。
図2図2は、実施例5における実施例1の生漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図3図3は、実施例5における実施例3の生漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図4図4は、実施例5における実施例4の生漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図5図5は、実施例5における実施例1の黒目漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図6図6は、実施例5における実施例3の黒目漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図7図7は、実施例5における実施例4の黒目漆のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図8図8は、実施例10における、サンプル2-1~2-3の全タンパク質含量を示す図である。
図9図9は、実施例11における、サンプル2-1~2-3の電気泳動の結果を示す図である。左側のレーンより順に、ラッカーゼ(20μgタンパク質)、レーン1:サンプル2-1 20μg、レーン2:サンプル2-2 20μg、レーン3:サンプル2-3 20μg、レーン4:サンプル2-1 35μg、レーン5:サンプル2-2 35μg、レーン6:サンプル2-3 35μg、ステラシアニン(12μgタンパク質)を示す。
図10図10は、実施例11における、サンプル2-1~2-3のラッカーゼ活性を示す図である。
図11図11は、実施例12における、サンプル2-1~2-3(それぞれ上段、中段、下段)のHPLC溶出パターンの結果を示す図である。
図12図12は、実施例18における、サンプル3-1~3-6の電気泳動の結果を示す図である。レーン1~6は、それぞれサンプル3-1~3-6(各20μg)の結果を示す。
図13図13は、実施例19における、サンプル3-1(上段)、3-3(下段)のHPLC溶出パターンを示す図である。
図14図14は、実施例19における、サンプル3-2(上段)、3-4(下段)のHPLC溶出パターンを示す図である。
図15図15は、実施例19における、サンプル3-5(上段)、3-6(下段)のHPLC溶出パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔高品質黒目漆の製造方法〕
-原料生漆液-
本明細書において、原料生漆液は、ウルシの樹液に由来する成分を少なくとも含む液体であり、ウルシの樹木から採取される天然樹液、合成品、及びそれらの混合物のいずれを含むものでもよい。原料生漆液は、天然樹液を含む液体が好ましく、生漆がより好ましい。本明細書において、生漆とは、漆の樹木から採取される樹液から不純物(例えば、樹皮、木屑、異物)を除去して得られるものである。除去は、通常、綿、ガーゼ等の布、紙を用いるろ過により行われる。原料生漆液は、生漆以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、Fe(OH)、HgS、クロシン、クロセチン及び弁柄等の色素が挙げられる。無添加の原料生漆液より調製される黒目漆を、他の成分を添加して得られる黒目漆から区別して、透黒目漆と称することがある。色素を含む原料生漆液から得られる黒目漆としては、例えば、蝋色黒目漆、朱色黒目漆、梨子地黒目漆及び弁柄黒目漆が挙げられる。
【0012】
漆の樹木は、ウルシ科(Anacardiaceae)に属する植物の樹木である。ウルシ科植物の生育地は、一般に日本、韓国、中国、東南アジアであるが、原料生漆液の産地は特に限定されない。ウルシ科植物としては、例えば、ウルシオールを主成分として含む植物(Toxicodendron vernicifera、産地:中国、日本、韓国)、ラッコールを主成分として含む植物(T.succedanea、産地:ベトナム、台湾)、チチオールを主成分として含む植物(Gluta usitata、産地:ミャンマー、カンボジア、タイ)の3種類が挙げられる。
【0013】
-減圧蒸留-
本発明の製造方法では、原料生漆液を減圧蒸留する。これにより、従来の方法よりも短時間で、かつかぶれの発症を抑制しながら安全に高品質の黒目漆を得ることができる。
減圧蒸留の条件は、特に限定されないが、一例を挙げると以下のとおりである。圧力は、蒸気圧より25hPa以上減圧することが好ましく、30hPa以上がより好ましい。減圧条件は、蒸気圧より25~60hPa低下させることが好ましく、30~50hPa低下させることがより好ましい。これにより、原料生漆液に含まれる低沸点の揮発性テルペン類、ガス成分、水分を十分に除去できる。
【0014】
温度は、通常、室温以下(例えば、35℃以下)であり、好ましくは20~35℃である。これにより、原料生漆液に含まれるラッカーゼの変性による失活を抑制できる。
【0015】
減圧蒸留の時間は、30分以上が好ましく、40分以上がより好ましい。上限は特に制限はないが、通常は120分以下、好ましくは80分以下である。これにより、適切な水分量を含む反応物を得ることができる。
【0016】
減圧蒸留中の水分量を計測管理し、所望の水分量(例えば、3.5重量%以下、3.2重量%以下又は3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、又は2重量%以下)となった時点で減圧蒸留を終了し産物を回収してもよい。水分量の計測法としては、例えば、乾燥減量法、近赤外分光法、ガスクロマトグラフ法及びカールフィッシャー法が挙げられ、これらのうちサンプルが少量でも正確な定量が可能であり、感度がよいこと、再現性に優れることから、カールフィッシャー法が好ましい。カールフィッシャー法は、滴定セル内でカールフィッシャー試薬(ヨウ化物イオン、二酸化硫黄、アルコールを主成分とする電解液)が、メタノールの存在下で水と特異的に反応することを利用して、物質中の水分を定量する方法である。カールフィッシャー法は、滴定の進め方により容量滴定法及び電量滴定法に分類され、容量滴定法が好ましい。容量滴定法は、滴定フラスコに試料に適した脱水溶剤(例えば、無水分子ふるい)を入れておき、滴定剤で無水状態にしてから試料を加え、あらかじめ力価(mg HO/mL)を標定しておいた滴定剤を用いて滴定を行い、その滴定量(mL)から試料中の水分量を求める。
【0017】
減圧蒸留後には、高品質の黒目漆液を得ることができる。本明細書において高品質の黒目漆液とは、原料生漆液と比較して、炭素原子数15かつ不飽和二重結合を3つ含む側鎖(例えば、下記式(1)中の置換基R1)を有するウルシオール(以下、C15-3ウルシオールと言うことがある)含量及びラッカーゼ活性が高く、漆成分が均等に混合された水分含量の低い漆液である。高品質の漆液は、原料生漆液と比較して成分が均一で揮発性テルペン類の含量が低いことがより好ましく、以下の少なくともいずれかを満たすことがさらに好ましい。
(1)C15-3ウルシオールの含有量が、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは36%以上である。
(2)全タンパク質量が、生漆の場合、好ましくは0.7%以上、黒目漆の場合、好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.1%以上である。
【0018】
ウルシオールは、式(1)で表される。
【化1】
式(1)中、Rは、以下のR1~R5のいずれかである。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0019】
(1)の確認は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)等のクロマトグラフィーによることができ、HPLCによることが好ましく、後段の実施例に記載の方法によることがより好ましい。(2)の確認は、紫外吸光光度法、蛍光光度法によることができ、紫外吸光光度法によることが好ましく、後段の実施例に記載の方法によることがより好ましい。
【0020】
〔漆の精製方法〕
原料生漆液を減圧蒸留することにより、原料生漆液の品質を高めることができる。減圧蒸留の条件は、上記製造方法において説明したのと同様である。
【0021】
〔漆の精製装置〕
漆の精製装置は、原料生漆液を収容する反応容器と、容器内で生漆を減圧するための減圧手段を少なくとも有する装置である。本装置を、生漆からの高品質漆の製造、漆の精製の際の減圧蒸留の際に用いることにより、各処理をより効率よく行うことができる。
【0022】
反応容器は、原料生漆液を収容できる容器であればよく、漆液の色の変化を観察できる点で少なくとも一部が透明または半透明な素材(例えば、ガラス、透明プラスチック製)形成されていることが好ましい。反応容器は、開口部を少なくとも3つ有することが好ましい。第1の開口部は、減圧手段と接続可能な開口部、第2の開口部は、処理後のサンプルの取出用開口部、第3の開口部は、処理途中のサンプルの分析用(分析用サンプルを取出すための)開口部(分析は、好ましくは組成の確認、より好ましくは水分量の確認)である。各開口部の位置は特に限定されないが、第1の開口部と第2の開口部が反応容器の一端及び他端に位置し、第3の開口部は第1及び第2の開口部の間に位置してもよい。第2、第3の開口部は、必要時以外はコック等で密閉できることが好ましい。減圧手段は、容器内の圧力を低下させることのできる手段であればよく例えばアスピレーターを備えるエバポレータ―が挙げられるがこれに限定されない。
【0023】
装置は、反応容器内の漆液の温度を管理する温度管理手段を更に有していてもよい。これにより、容器内の漆液の温度変化(主に昇温)を効率よく抑制できる。温度管理手段は、容器内の温度センサー及び冷却器を備えていてもよい。
【0024】
装置は、反応溶液の水分量を管理する水分量管理手段を更に有していてもよい。これにより、減圧蒸留反応の終了時を検討でき、得られる漆液の品質を確認できる。水分量管理手段は、カールフィッシャー法による水量センサーを備えていてもよい。
【0025】
装置は、漆液の組成分析手段を更に有していてもよい。これにより、得られる漆液の品質を効率よく確認できる。組成分析手段は、ウルシオール、全タンパク質量を分析できる手段が好ましい。例えば、HPLC、TOF/MS、NMR、ELISA、SDS-PAGE、好ましくはHPLC、SDS-PAGEを実施できる手段が好ましい。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0027】
実施例1(浄法寺漆)
生漆(浄法寺漆、岩手県産、産地より直接入手)約50mLを漆紙で濾過し、フラスコ、アスピレーター及びウォーターバスを備えたロータリーエバポーター(東京理化器械社製)のフラスコ中に投入し、系内をアルゴン置換して蒸気圧から40hPa前後まで減圧し、気泡が発生しなくなるまで35℃で蒸留を行った。(蒸留時間:1時間。減圧蒸留後のサンプル(黒目漆)収量は、約40mLであり、透明に近く、生漆中の粒子が破壞されて均等な粘液ができ漆中のラッカーゼによるメラニン化反応が起きて、ガラス板に薄く塗った時、黒~茶色の透明な液になった。
【0028】
カールフィッシャー水分計(メトローム社製)を用いて減圧蒸留開始時及び終了後のサンプルのそれぞれの水分量を測定した。測定条件は、減圧蒸留開始時:サンプル100mg±5mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;終了後:サンプル80mg±5mg。反応終了時、気流を停止し、水分量を測定した後、水分計からサンプルを取り出した。その結果、減圧蒸留開始時及び終了後のサンプルの水分量は、それぞれ14.66重量%、1.22重量%であった(それぞれn=3)。
【0029】
実施例2(浄法寺漆)
実施例1と同様に生漆(実施例1と同じ)を減圧蒸留した。減圧蒸留開始時、15分後、30分後、45分後のカールフィッシャー法に従って水分量を測定したところ、それぞれ17.51、5.20、2.19、1.54重量%であった。なお、水分量の測定条件は、開始時:サンプル100mg±5mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;15分後:サンプル90mg±3mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;30分後:サンプル80mg±5mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;45分後:サンプル79mg±5mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分とした。減圧蒸留後のサンプルは透明に近く、ガラス板に薄く塗ると黒~茶色の透明な液となり、実施例1と同様であった。
【0030】
実施例3(中国産漆)
実施例1の生漆の代わりに中国産生漆(城口生漆、中国原産、日本国内で製造)を用いたほかは実施例1と同様に行った。減圧蒸留開始時及び終了後のサンプル(黒目漆)のそれぞれの水分量を測定した。測定条件は、減圧蒸留開始時:サンプル約100mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;終了後:サンプル約74±3mgになった。その結果、減圧蒸留開始時及び終了後のサンプルの水分量は、28.55重量%、2.67重量%であった(それぞれn=2)。減圧蒸留後のサンプルは透明に近く、ガラス板に薄く塗ると黒~茶色の透明な液となり、実施例1と同様であった。
【0031】
実施例4(中国産漆)
実施例1の生漆の代わりに中国産生漆(毛バ生漆、中国原産、日本国内で製造)を用いたほかは実施例1と同様に行った。減圧蒸留開始時及び終了後のサンプル(黒目漆)のそれぞれの水分量を測定した。測定条件は、減圧蒸留開始時:サンプル約100mg、温度180℃、抽出時間1400秒、流速80ml/分;終了後:サンプル約80±5mgになった。その結果、減圧蒸留開始時及び終了後のサンプルの水分量は、25.79重量%、2.52重量%であった(それぞれn=2)。減圧蒸留後のサンプルは透明に近く、ガラス板に薄く塗ると黒~茶色の透明な液となり、実施例1と同様であった。
【0032】
実施例5(ウルシオールの組成の分析)
実施例1、3、4のそれぞれの生漆及び蒸留終了後のサンプル(透黒目漆)、市販の生漆及び透黒目漆(京うるし 堤浅吉漆店製)中の全タンパク質量を以下の手順で測定した。
各サンプル4gにアセトン30mlを添加し、4℃で2時間撹拌してアセトン抽出した。高速遠心機(日立製)で4℃、14,400×gの条件で遠心分離して沈殿物1と上清1を得た。沈殿物1について、漆に含まれているウルシオールをより完全に抽出するため、アセトン抽出溶液の色(褐色)褐色が消失するまで、同様のアセトン抽出及び遠心分離を4回反復して行い、120mLの無色の上清2(アセトン可溶性画分)を沈殿物1(アセトン不溶性画分)から分離した。
【0033】
その後、上清1と上清2からアセトンを減圧留去して得られるサンプル(ウルシオール画分)について、TLC分析、HPLC分析を行い、C15-3ウルシオール(炭素原子数15かつ不飽和二重結合を3つ有するアルケニル基を側鎖として有するウルシオール)の、ウルシオール全量に占める割合を測定した(図1~7、表1)。HPLCの条件は、以下のとおりである。
【0034】
HPLCの条件:
カラム:JUPITER(登録商標)、5μm、C18、250×15.0mm、 0.5mlサンプルループ(フェノメネックス社製)
サンプル:ウルシオール画分(希釈サンプル)
溶出緩衝液:アセトニトリル:水:酢酸=90:10:2
流速:3ml/min、UV:254nm)
定組成溶離
注入サンプル量:希釈サンプル100μL(サンプル150μL及び緩衝液850μL)
【0035】
緩衝液の調製:アセトニトリル1800mLをミリQ水200mLと酢酸40mLに添加し、全2040mLとした後、脱気した。
サンプルのスケールアップ:上記サンプル150μLにアセトニトリル850μLを添加し1mLとした。この希釈サンプルの300μLを注入した。
【0036】
【表1】
【0037】
高品質である実施例1の生漆及び黒目漆は、C15-3ウルシオールを36%以上含有していたのに対し、実施例3~4の各サンプルは、35.5%未満であった(表1)。
【0038】
また、実施例3,4の生漆は、HPLC溶出時間4~12分の間にC15-3ウルシオールのピークよりも高いピークが数個見られた。これらのピークは、炭素原子数17の側鎖を有するウルシオール、C15-3以外の炭素原子数15の側鎖を有するウルシオール等の不純物(例えば、C15-2、C15-1、C15ウルシオール:式(1)中のRがR2、R3、R4であるウルシオール)と推定される(図1~7)。
【0039】
実施例6(全タンパク質量の分析)
実施例5において、上清2を分離後の沈殿物11.5gを蒸留水15mLに4℃で溶解し撹拌して懸濁液を得た。この懸濁液を、高速遠心機(日立製)で4℃、14,400×gの条件で遠心分離し、上清3と沈殿物3を得た。上清3を真空超高速遠心機(日立製)で4℃、174,000×gの条件で遠心分離し、上清のUV吸光度を(280nm)測定し、全タンパク質量を得た(表2)。
【0040】
【表2】
【0041】
高品質である実施例1の黒目漆は、全タンパク質量が1.14%であったのに対し、実施例3,4の各黒目漆では、1%未満であった(表2)。また、実施例1の生漆は、全タンパク質量が0.86%であったのに対し、実施例3,4の生漆では0.7%未満であった。
【0042】
実施例7、比較例1、2(粘度、透明性の比較)
以下の3つのサンプルについて、粘度と透明度の比較を行った。
サンプル1-1(実施例7):実施例1と同様に減圧蒸留により調製した透黒目漆を用いた。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.167%であった。
サンプル1-2(比較例1):最初に、中国産(城口)生漆について1時間なやし処理(減圧をせずに蒸留器を循環させた)した後、実施例1と同様に減圧蒸留を行い、透黒目漆を得た。
サンプル1-3(比較例2):最初に、中国産(城口)生漆について2時間なやし処理(真空処理をせずに蒸留器を循環させた)した後、実施例1と同様に減圧蒸留を行い、透黒目漆を得た。
【0043】
サンプル1-2及び1-3のなやし処理においては、実施例1と同様のロータリーエバポレータを用いて、アスピレーターを用いた減圧を行わないほかは同様に、サンプルを入れたフラスコをウォーターバスで保温しながら回転させて蒸留した。
【0044】
各サンプルをガラス板へスポットした。その結果、サンプル1-1は、サンプル1-2,1-3と比較して透明性が高く、粘度が低かった。この結果は、従来の黒目漆の製造において行われてきたなやし処理が黒目漆の粘度を増加し、透明性を低下させたのに対し、本発明の方法によればなやし工程を省略でき、かつ、良好な透明性を有し、低粘度の透黒目漆を得られることを示している。
【0045】
また、サンプル1-1を長時間(約12か月間、4℃)保管したところ、保管後も凝集がみられなかった。これらの結果は、本発明の方法によればなやし等の従来の方法と比較して透明な透き黒目漆の製造が可能であることを示している。
【0046】
比較例3、実施例8、9
以下の実施例10~12で用いる各サンプルを調製した。
サンプル2-1(比較例3):市販の透黒目漆(有限会社 辻田漆店)を用いた。この市販品は、従来のなやし処理(加熱撹拌蒸発法)により調製された漆であり、生漆は中国産であった。
サンプル2-2(実施例8):二戸産の生漆を実施例1と同様の方法で減圧蒸留して調製した透黒目漆を用いた。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.030であった。
サンプル2-3(実施例9):市販の生漆(中国(城口)産、辻田漆店)生漆を実施例1と同様の方法で調製した透黒目漆を用いた。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ3.081%であった。
【0047】
実施例10(全タンパク質量、タンパク質組成の分析)
実施例8~9及び比較例3の黒目漆の全タンパク質量を以下の手順で分析した。
サンプル2-1~2-3各2.0gを40mLのアセトンに懸濁し、4℃で30分間の抽出を3回行った。続いて4℃で20分間24,000×gの条件で遠心分離した。この抽出を3回繰り返した結果、全120mLのアセトン層が得られた。このアセトン層を残渣のアセトン臭がなくなるまで蒸留した。なお、ここで得られる油層を、実施例11のC15-3ウルシオールの定量に用いた。
【0048】
3回のアセトン抽出後に得られる残渣を20mLのDDW(再蒸留水)に溶解した。各残渣を完全に懸濁した後、懸濁液を4℃で22,400×gの条件で遠心分離した。水層を集め、3Mろ紙でろ過し、不要物を除去した。ろ過後の水溶液を 真空超高速遠心機(日立製)で4℃、174,000×gの条件で遠心分離し、上清のUV吸光度を(280nm)測定し、全タンパク質量を得た(表3、図8)。
また、上記真空超高速遠心後の水溶液についてSDS-PAGEを行った(12%ゲルを使用)。
【0049】
【表3】
【0050】
加熱撹拌蒸発法により調製されたサンプル2-1と比較して、減圧蒸留法で調整したサンプル2-2及び2-3は、約2倍量のタンパク質(ラッカーゼなど)を含んでいた(表3、図8)。この結果は、本発明の方法により、なやし処理等の加熱撹拌蒸発処理よりも低温かつ短時間で、ラッカーゼ等の漆タンパク質に損傷を与えることなく効率よく回収でき、蒸留処理は透黒目漆の調製に良好な方法であることを示している。
【0051】
実施例11(ラッカーゼ活性の測定)
ラッカーゼ活性の測定は、A.Leonowicz and K.Grzywnowicz(1981)“Quantitative estimation of laccase forms in some white-rot fungi using syringaldazine as a substrate”(1981)Enzyme and Microbial Technology Volume 3,Issue 1,January 1981,Pages 55-58を参照し、以下の試薬と反応液を用いて行った。
【0052】
試薬:シリングアルダジン(シグマ-アルドリッチ社製)
反応緩衝液:40mM MES-NaOH緩衝液(pH5.3)
50mMシリングアルダジン原液:180.2mgを5mlのDMFと5mLメタノールの混合液に溶解して調製した。
0.5mMシリングアルダジン溶液:50mM原液 100μL+メタノール9.9mLを混合して調製した。
【0053】
アッセイ条件:
750μLの40mM MES緩衝液(pH5.3又はpH4.5)
100μMの0.5mM シリングアルダジン
50μLの2mg/ml 精製ラッカーゼ(100μgラッカーゼ)又はサンプル2-1~2-3(実施例10におけるろ過後の水溶液)
【0054】
30℃で30分間インキュベーション後、530nmで吸光度を測定し、0.001増加を1ユニットと定義してラッカーゼ活性を評価した(表4、図9、10)。
【0055】
【表4】
【0056】
サンプル2-2は、3つのサンプルのうち最も高いラッカーゼ活性を示した(表4、図9、10)。
【0057】
実施例12(C15-3ウルシオールの定量)
HPLC分析により、サンプル2-1~2-3のC15-3ウルシオールを定量した(表5、図11)。
【0058】
【表5】
【0059】
サンプル2-2と2-3は、サンプル2-1と比較してウルシオール量が高く、中でもサンプル2は、最も高いウルシオール量を示した(表5、図11)。
【0060】
比較例4~5、実施例13~16
以下の実施例17~19で用いる各サンプルを調製した。
・サンプル3-1(比較例4):市販蝋色黒目漆(有限会社辻田漆店製、生漆及び鉄成分を含む原料より製造)
・サンプル3-2(比較例5):市販朱色黒目漆(有限会社辻田漆店製、生漆とHgS成分を含む原料より製造)
・サンプル3-3(実施例13):蝋色黒目漆(減圧蒸留法により調製、二戸生漆と合成した Fe(OH)3を使用)
・サンプル3-4(実施例14):朱色黒目漆(減圧蒸留法により調製、二戸生漆と市販HgSを使用)
・サンプル3-5(実施例15):弁柄黒目漆(減圧蒸留法により調製、二戸生漆と市販弁柄色素を使用)
・サンプル3-6(実施例16):梨子地黒目漆(減圧蒸留法により調製、二戸生漆と合成したクロシン及びクロセチンを使用)
【0061】
サンプル3-3~3-6は、以下の手順で調整した。
【0062】
[サンプル3-3の調製(実施例13)]減圧蒸留法による蝋色黒目漆の製造
i)Fe(OH)3の調製:FeSO2.7gとNaOH2.7gを100gのDDW(再蒸留水)に溶解し混合した。この溶液を室温で1時間撹拌した。反応液を濾紙(No.2、東洋濾紙社製)でろ過した。残渣をDDWでpH7.0まで洗浄した(通常、DDW7回の洗浄でpH7.0に達する。)。
【0063】
ii)蝋色黒目漆の調製:100gの二戸産生漆又は100gの中国産生漆を上述のFe(OH)3残渣とよく混合し、すぐに1~1.5時間、30℃で減圧蒸留した。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.260%であった。
【0064】
[サンプル3-4の調製(実施例14)]減圧蒸留法による朱色黒目漆の製造
弁柄の粉末の代わりにHgS(Nikka)の粉末130g(Yamamoto Scinnabar社)を用いたほかは、実施例13と同様に行った。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.096%であった。
【0065】
[サンプル3-5の調製(実施例15)]減圧蒸留法による梨子地黒目漆の製造
弁柄の粉末(Bura社)50gを100g二戸産生漆又は100gの中国産生漆に添加し、1~1.5時間、30℃で減圧蒸留した。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.031%であった。
【0066】
[サンプル3-6の調製(実施例16)]減圧蒸留法による梨子地黒目漆の製造
梨子地黒目漆の製造のための色素材料は、クロシン、クロセチン等の黄色色素であることが知られている。これらの色素は、クチナシ(Gardenia jasminoides J.Ellis. Cape Jasmine)の木の主成分である。
【0067】
クロシン及びクロセチン黄色色素を得るため、クチナシの粉末を室温で12時間メタノール/水(50:50%)溶液3リットルで抽出した。12時間撹拌後、混合物を4℃で20分14,000×gで遠心分離した。上清を濾紙(No.2、東洋濾紙社製)でろ過した。
得られたメタノール/水溶液を真空蒸留器で蒸発させた。その後、残渣を24時間凍結乾燥した。凍結乾燥した残渣(15g)を15mLのDDWに懸濁させ、二戸生漆70gに溶解した。混合物を1~1.5時間、30℃で減圧蒸留した。最終水分量は、カールフィッシャー法で測定したところ2.440%であった。
【0068】
実施例17(全タンパク質量)
各サンプル3-1~3-6各2.0gより、全タンパク質量を実施例10と同様の条件で分析し、全タンパク質量を得た(表6)。
【0069】
【表6】
【0070】
減圧蒸留法により調製した黒目漆は、加熱撹拌蒸留法により調製したものと比較して全タンパク質量の回収率が同等であった(表6)。なお、サンプル3-2、3-3、3-5では、HgSがタンパク質と複合体を形成したため、全タンパク質量の回収率を低下させたものと推測された。
【0071】
実施例18(ラッカーゼ活性の測定)
実施例10において、サンプル3-1~3-6を用いたほかは同様にして、SDS-PAGE分析を行い、20mL中のラッカーゼとステラシアニンを分析した(表7、図12)。
【0072】
【表7】
【0073】
サンプル3-1と3-3は、他のサンプルと比較してラッカーゼ量の収率が低かった(図12)。この結果は、蝋色黒目漆の色素であるFe(OH)の鉄イオンがラッカーゼとの複合体を形成し、その結果回収率が低下したことを示唆している。一方、表7から明らかなように、加熱撹拌蒸留法を経たサンプル3-1及び3-2と比較して、減圧蒸留法によるサンプル3-3~3-6は、高いラッカーゼ活性を示した。
【0074】
実施例19(C15-3ウルシオールの定量)
実施例12において、サンプル3-1~3-6を用いたほかは同様にして、HPLC分析によりC15-3ウルシオールを定量した(表8、図13~15)。
【0075】
【表8】
【0076】
減圧蒸留法によるサンプル3-3~3-6は、加熱撹拌蒸留法を経たサンプル3-1及び3-2と比較してC15-3ウルシオール量が高く、C15-3ウルシオールを効率よく回収できることが明らかとなった(表8、図13~15)。
【0077】
以上の結果より、本発明の方法によれば、伝統的な加熱撹拌蒸発法と比較して、原料生漆液(染料分子を含むものも、含まないものも)における水分除去を効率よく行うことができる。また、本発明の方法によれば、従来の方法と比較して短時間で処理を完了でき、また、処理中の酵素の変質や酵素活性が抑制されるため、ウルシオール回収効率が高く、タンパク質を豊富に含み、ラッカーゼ活性の高い高品質な黒目漆を得ることができることがわかる。よって、本発明の方法は、伝統的ななやし等の加熱撹拌蒸発法に代わる、新しい黒目漆の製造方法として有用である。
図1
図2
図3
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図5
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図15