(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20221212BHJP
F16L 19/065 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F16L33/22
F16L19/065
(21)【出願番号】P 2018187041
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修司
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068447(JP,A)
【文献】特開2009-036293(JP,A)
【文献】特開平11-230463(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02056009(EP,A2)
【文献】国際公開第2017/051803(WO,A1)
【文献】特開2017-058018(JP,A)
【文献】特表2013-518219(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1452357(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/22
F16L 19/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚が異なる複数種類の管体の挿入空間に沿って設けられるニップルと、
前記ニップルに沿って差し込まれた前記複数種類の管体に対して軸方向及び周方向へ相対的に回転移動自在に設けられ、前記ニップルに対する相対的な回転移動に伴って前記複数種類の管体を前記ニップルの外周面に向け押し付ける押圧部を有する締め付け部材と、
前記ニップル及び前記締め付け部材に亘って設けられる係合凸部と係合凹部の係合により、前記ニップルに対して前記締め付け部材を回転移動不能にロックするロック部材と、を備え、
前記係合凸部又は前記係合凹部の一方は、前記ニップルに対する前記締め付け部材の回転移動に伴う前記複数種類の管体に対応した複数の締め付け完了位置に配置され、
前記係合凸部又は前記係合凹部の他方は、前記係合凸部又は前記係合凹部の一方と径方向へ対向し且つ周方向へ乗り越え係合するように配置され、
締め付け完了位置を確定する前記係合凸部又は前記係合凹部の一方は、前記複数の締め付け完了位置の全部に亘って配置される第一部位と、前記複数の締め付け完了位置のうち後の締め付け完了位置のみに配置される第二部位とを有することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記第一部位の軸方向長は前記第二部位の軸方向長よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記係合凸部は、前記係合凹部と当接する先端に脆弱部位を有し、前記脆弱部位が、前記締め付け部材の回転移動に伴う前記係合凹部との当接で破壊して乗り越えるように設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉厚が異なる複数種類の管体を配管接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手として、ニップルに管体が差し込まれた後に、その外側に締め付け部材を被せて管体の差し込み方向へ回転移動させることにより、ニップルと締め付け部材(押圧部)との間に管体が挟み込まれて(締め付けられて)引き抜き不能に接続されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
管体が差し込まれたニップルと、最終締め付け位置の締め付け部材とに亘って設けたロック部材により、ニップルに対し締め付け部材が相対的に回転不能となって、締め付け部材を管体の抜け方向へ緩み止めしている。
管体としては、硬質材料からなるパイプ又は軟質材料からなるホースやチューブなどが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、管体の配管場所や管体を通る流体の流量に応じて管体のサイズは、内径や外径が大小異なるものを多種類用意しており、管体の内径に対応してニップル(挿入部)のサイズも大小異なるものが多種類用意されている。
さらに管体として求められる耐圧性能や耐熱性能などの要望を満たすためには、肉厚寸法が異なる複数種類の管体を用意する場合がある。つまり同一サイズのニップルに対して管体の内径サイズが同一であっても、肉厚寸法の違いにより外径サイズが大小異なる複数種類の管体を接続する必要がある。
このように同一サイズのニップルに対して肉厚で外径が大きい(大径な)管体を差し込んで締め付け部材(押圧部)により挟み込んだ場合と、肉薄で外径が小さい(小径な)管体を差し込んで締め付け部材により挟み込んだ場合とでは、管体の肉厚寸法の違いにより、ニップルに対する締め付け部材の最終締め付け位置(締め付け完了位置)に違いが生じる。
すなわち、ニップルに差し込まれた肉薄な管体を締め付け部材の押圧部で挟み込む(締め付ける)場合には、肉薄な管体の小径な外面に押圧部が圧接するまで締め付け部材を管体の差し込み方向へ回転移動可能となる。
これに対して、ニップルに差し込まれた肉厚な管体を締め付け部材の押圧部で挟み込む(締め付ける)場合には、肉厚な管体の大径な外面と押圧部との隙間が狭くなるので、肉薄な管体の締め付け時よりも比較的に速いタイミングで押圧部が圧接する。このため、ニップルに対する締め付け部材の最終締め付け位置(締め付け完了位置)は、肉厚な管体の締め付け時の方が、肉薄な管体の締め付け時よりも手前で回転移動不能となる。
さらに肉厚が異なる複数種類の管体が硬質なパイプである場合には、作業者による締め付け部材の回転操作で押圧部をパイプの外面に圧接させても、パイプの外面はほとんど圧縮変形しないため、パイプの肉厚寸法の違いにより、ニップルに対する締め付け部材の最終締め付け位置(締め付け完了位置)に明らかな違いが生じた。
これにより、管体が差し込まれたニップルと締め付け部材に亘って設けられるロック部材を、肉薄な管体に合わせて緩み止め設定すると、肉厚な管体の場合には緩み止め機能が発揮されず、これと逆に肉厚な管体に合わせて緩み止め設定すると、肉薄な管体の場合には緩み止め機能が発揮されない。
肉厚が異なる複数種類の管体に対応して緩み止め機能を発揮するには、各サイズ専用のニップルや締め付け部材を用意する必要があり、このため部品点数が増えて管理が面倒になるだけでなくコストアップになるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る管継手は、肉厚が異なる複数種類の管体の挿入空間に沿って設けられるニップルと、前記ニップルに沿って差し込まれた前記複数種類の管体に対して軸方向及び周方向へ相対的に回転移動自在に設けられ、前記ニップルに対する相対的な回転移動に伴って前記複数種類の管体を前記ニップルの外周面に向け押し付ける押圧部を有する締め付け部材と、前記ニップル及び前記締め付け部材に亘って設けられる係合凸部と係合凹部の係合により、前記ニップルに対して前記締め付け部材を回転移動不能にロックするロック部材と、を備え、前記係合凸部又は前記係合凹部の一方は、前記ニップルに対する前記締め付け部材の回転移動に伴う前記複数種類の管体に対応した複数の締め付け完了位置に配置され、前記係合凸部又は前記係合凹部の他方は、前記係合凸部又は前記係合凹部の一方と径方向へ対向し且つ周方向へ乗り越え係合するように配置され、締め付け完了位置を確定する前記係合凸部又は前記係合凹部の一方は、前記複数の締め付け完了位置の全部に亘って配置される第一部位と、前記複数の締め付け完了位置のうち後の締め付け完了位置のみに配置される第二部位とを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す説明図であり、(a)が管体の肉厚が厚い場合の一部切欠正面図、(b)が
図1(a)の(1B)-(1B)線に沿える縦断側面図、(c)が管体の肉厚が薄い場合の一部切欠正面図、(d)が
図1(c)の(1D)-(1D)線に沿える縦断側面図である。
【
図3】締め付け部材を逆方向から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手Aは、
図1~
図3に示すように、継手本体10の接続端に形成されるニップル11に対し、肉厚が異なる複数種類の管体Bを配管接続するために用いられる流体継手である。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る管継手Aは、複数種類の管体Bの挿入空間Sに沿って設けられるニップル11を有する継手本体10と、ニップル11に沿って差し込まれた複数種類の管体Bに対して軸方向及び周方向へ相対的に回転移動自在に設けられる締め付け部材20と、ニップル11側及び締め付け部材20側に亘って設けられる締め付け部材20を緩み止めするためのロック部材30と、を主要な構成要素として備えている。
複数種類の管体Bの挿入空間Sは、継手本体10のニップル11と締め付け部材20との間に形成される。
なお、締め付け部材20が回転移動する軸方向とは、複数種類の管体Bの差し込み方向とその逆向きの抜け方向であり、複数種類の管体Bの差し込み方向を以下「管差し込み方向N」といい、管差し込み方向Nと逆向きの抜け方向を以下「管抜け方向U」という。作業者による締め付け部材20の回転操作方向を以下「締め付け方向F」という。締め付け方向Fと逆向きの締め付け部材20の緩み回転方向を以下「緩み方向L」という。
【0008】
複数種類の管体Bは、肉厚寸法の違いにより内径や外径が大小異なるパイプ又はホースやチューブなどである。
複数種類の管体Bとして図示例の場合には、肉厚で外径が大きい管体Baと、肉薄で外径が小さい管体Bbの二種類のみを例示している。肉厚で外径が大きい管体Baと肉薄で外径が小さい管体Bbは、それぞれの内径を同一サイズに設定している。
複数種類の管体Bがパイプである場合には、例えば硬質合成樹脂や金属などの硬質材料からなり、単層構造や複数層構造に構成されている。
特に内径が大小異なるパイプの場合には、後述するニップル11の外周面11aに沿って差し込まれる拡径端部Bcを有することが好ましい。拡径端部Bcは、差し込み前の時点でパイプの接続側の末端部(末端開口)に専用工具を挿入して強制的に拡径変形させた部位である。拡径端部Bcの形状は、パイプの末端部へ向かって徐々に拡径するテーパー状に形成することが好ましい。
内径が大小異なるパイプであっても、パイプの末端部に拡径端部Bcを一体形成することにより、拡径端部Bcの内径が設定サイズに拡径変形されるため、外径が設定サイズに形成された後述するニップル11に対して、拡径端部Bcが容易に差し込み可能になる。これと同時に、パイプにおいて拡径端部Bcを除く略全体の内径が、後述するニップル11の内径と同等になって、流体の圧力損失を低減させ効率良い流体輸送が実現可能になる。
複数種類の管体Bの具体例として
図1(a)~(d)及び
図2に示される場合には、単層構造のパイプであるが、金属層や硬質樹脂層などが一体的に積層された複数層構造のパイプに代えることも可能である。
また複数種類の管体Bが複数層構造のパイプである場合には図示しないが、アルミニウムやアルミニウム合金又はアルミニウムと類似する軽量な金属などからなる芯層と、ポリエチレンや架橋ポリエチレン又はポリエチレンと類似する軟質合成樹脂などからなる内層と、を有することが好ましい。さらに前記芯層及び前記内層に、前記内層と同材質の外層を加え、それぞれの層間に接着層を挟んで一体化した五層構造のパイプを用いることがより好ましい。
【0009】
継手本体10は、例えば耐熱・耐薬品性・耐衝撃性に優れたスーパーエンジニアリング・プラスチック(スーパーエンプラ)のような硬質合成樹脂又は錆難いステンレスや真鍮等の金属材料などの硬質材料で略円筒状に形成される。
継手本体10は、ニップル11と、後述する締め付け部材20の内面と径方向へ対向して設けられる案内部12と、を有している。
ニップル11は、複数種類の管体Bの拡径端部Bcの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径の円筒状に形成されている。
ニップル11の外周面11aには、複数種類の管体B(拡径端部Bc)の内面B1と圧接するシール部材11bを設けることが好ましい。シール部材11bは、例えばOリングなどの弾性変形可能な材料からなる環状体であり、その外周端がニップル11の外周面11aから若干突出するように装着されている。
案内部12は、ニップル11に対して後述する締め付け部材20をその軸方向へ往復動自在に案内する部位である。
【0010】
継手本体10の具体例として
図1(a)~(d)及び
図2に示される場合には、継手本体10の軸方向一端側にニップル11が突出形成されている。ニップル11の外周面11aには、シール部材11bが軸方向へ複数組(二組)それぞれ所定間隔を空けて配置されている。
継手本体10の軸方向中間には、ニップル11の大径な案内部12が後述する締め付け部材20の内面と径方向へ対向して設けられる。案内部12としては、後述する締め付け部材20の内面と螺合する雄ネジを用いている。
継手本体10の軸方向他端側には、工具(図示しない)が係合する第一工具係合部13と、他の機器や他の管体などの管接続口(図示しない)に接続するための接続部14と、を有している。
第一工具係合部13は、継手本体10の露出部位(外面)に工具と周方向や管抜け方向Uへ移動不能に係合する形状に形成されている。図示例では、第一工具係合部13の形状としてスパナやレンチなどが嵌合する八角ナット形状や六角ナット形状などに形成している。
接続部14は、管継手Aに接続する他の機器や他の管体などにおける管接続口の内表面に内ネジが刻設される場合には、これと対応する外ネジを刻設し、また管接続口の外表面に外ネジが刻設される場合には、これと対応する内ネジを刻設している。図示例では、接続部14として外ネジが刻設されている。
また、その他の例として図示しないが、継手本体10とニップル11を別個に形成して着脱自在に取り付けることや、シール部材11bを一組又は三組以上配置することや、第一工具係合部13の形状を後述する締め付け部材20の第二工具係合部23と同様に周方向へ凹部と凸部が交互に連続する形状などに変更することも可能である。
【0011】
締め付け部材20は、継手本体10と同様にスーパーエンプラのような硬質合成樹脂又は錆難いステンレスや真鍮等の金属材料などの硬質材料で円筒状に形成された袋ナットなどからなる。
締め付け部材20において軸方向一部は、ニップル11に差し込まれた複数種類の管体B(拡径端部Bc)の外径よりも大きい内径を有し、軸方向他部は、複数種類の管体B(拡径端部Bc)の外径と略同じ内径を有している。
締め付け部材20は、その内面にニップル11の外周面11aと径方向へ対向して設けられる移動手段21と、ニップル11が差し込まれた複数種類の管体B(拡径端部Bc)と径方向へ対向して設けられる押圧部22と、工具(図示しない)が係合する第二工具係合部23と、を有している。
【0012】
移動手段21は、ニップル11の案内部12に対し軸方向及び周方向へ回転移動自在に連係させて、作業者による回転操作で締め付け部材20を管差し込み方向N及び管抜け方向Uへ往復動自在に移動させる部位である。
移動手段21の具体例として
図1(a)~(d)及び
図2に示される場合には、案内部12の雄ネジと螺合する雌ネジであり、この雌ネジを締め付け部材20の内面において軸方向一端側(管差し込み方向Nの端部側)に部分形成している。
押圧部22は、ニップル11に対する移動手段21の管差し込み方向Nへの回転移動に伴って、複数種類の管体B(拡径端部Bc)の外面B2をニップル11の外周面11aに向け径方向へ押し付ける(締め付ける)ための部位である。
押圧部22によって複数種類の管体B(拡径端部Bc)は、ニップル11の外周面11aとの間に挟み込まれ、管体B(拡径端部Bc)の内面B1がニップル11の外周面11aやシール部材11bに密着して管抜け方向Uへ引き抜き不能に接続される。
【0013】
押圧部22の具体例として
図1(a)~(d)及び
図2に示される場合には、管抜け方向Uへ向け徐々に小径となるように傾斜するテーパー面である。押圧部22となるテーパー面を締め付け部材20の内面他端側に部分形成することで、複数種類の管体B(拡径端部Bc)の外面B2と直接的に接触させている。
第二工具係合部23は、締め付け部材20の露出部位(外面)に工具と周方向や管差し込み方向Nへ移動不能に係合する形状に形成されている。
第二工具係合部23の具体例として
図1~
図3に示される場合には、締め付け部材20の露出部位(外面)に沿って凹部と凸部が周方向へ交互に連続して形成されている。
また、その他の例として図示しないが、移動手段21として雌ネジに代え軸方向に延びる直線突起やスライダーの外側部分などを設けて直線的に移動させることや、押圧部22の形状や配置を図示例以外に変更することが可能である。さらに押圧部22の内側に弾性変形可能なスリーブを介装して押圧部22が複数種類の管体B(拡径端部Bc)の外面B2と間接的に接触するように変更することや、第二工具係合部23の形状をスパナやレンチなどが嵌合する六角ナット形状などに変更することも可能である。
【0014】
一方、作業者の回転操作に伴うニップル11に対する締め付け部材20の締め付け完了位置は、管体Bの肉厚寸法の違いによって異なる。肉厚の違いにより外径が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)の場合には、複数種類の管体B(Ba,Bb)の外径に対応してニップル11に対する締め付け部材20の締め付け完了位置が複数異なる。
詳しく説明すると、
図1(a)(b)に示されるように肉厚で外径が大きい管体Baの場合には、締め付け部材20の回転移動途中において、管体Baの大径な外面B2に締め付け部材20の押圧部22が圧接する。これにより、それ以上に締め付け部材20の締め付け移動が不能となる。このため肉厚な管体Baに対応する先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)は、締め付け部材20の回転移動範囲の途中になる。
これに対して、
図1(c)(d)に示される肉薄で外径が小さい管体Bbの場合には、締め付け部材20が先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)に到達しても、押圧部22が管体Bbの小径な外面B2に当接せず両者間にスペースがある。これにより、締め付け部材20の回転移動による締め付けが継続され、最終的には押圧部22が管体Bbの小径な外面B2に圧接する。このため肉薄な管体Bbに対応する後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)は、先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)よりも奥側に配置される。
図示例の場合には、複数種類の管体Bとして肉厚で外径が大きい管体Baと、肉薄で外径が小さい管体Bbの二種類のみを例示している。このためニップル11に対する締め付け部材20の回転移動に伴う複数種類の管体B(Ba,Bb)に対応した複数の締め付け完了位置が、第一締め付け完了位置P1と第二締め付け完了位置P2になる。
【0015】
ロック部材30は、ニップル11に対して締め付け部材20が不意に緩まないようにニップル11に対する締め付け部材20の回転を規制するストッパーである。
ロック部材30は、ニップル11を含む継手本体10側又は締め付け部材20側のいずれか一方に形成される係合凸部31と、他方に形成される係合凹部32とからなる。
係合凸部31と係合凹部32は、ニップル11に対する締め付け部材20の回転移動に伴う複数種類の管体B(Ba,Bb)に対応した複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)に、それぞれ径方向へ対向して配置される。
つまり係合凸部31と係合凹部32は、作業者による回転操作で締め付け部材20がニップル11に対して管差し込み方向Nへ回転移動することにより、複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)で周方向へ係合するように構成されている。
係合凸部31と係合凹部32の係合形態としては、係合凸部31や係合凹部32の先端が弾性変形するか又は部分的に破壊することで、締め付け方向Fへは乗り越え可能であるが、緩み方向Lへは回転移動不能にロックするように構成される。
さらに係合凸部31は、複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)に亘って配置される第一凸状部位31aと、複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)のうち後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に配置される第二凸状部位31bと、を有することが好ましい。
【0016】
ロック部材30の具体例として
図1~
図3に示される場合には、ニップル11を含む継手本体10側に係合凸部31が形成され、締め付け部材20側に係合凹部32が形成されている。係合凹部32は、締め付け部材20の内側開口端に形成することが好ましい。
係合凸部31は、継手本体10の外表面に沿って周方向へ所定間隔毎に複数連続して凹凸形成され、係合凸部31の集合体を複数組それぞれ分散配置している。
図示例では、案内部12と第一工具係合部13の間に、係合凸部31として第一凸状部位31aの集合体と、第二凸状部位31bの集合体をそれぞれ二組ずつ周方向へ分散配置している。
第一凸状部位31a及び第二凸状部位31bは、断面山型形状に形成され、第一凸状部位31aの突出高さや突出幅を、第二凸状部位31bの突出高さや突出幅よりも小さくして、第一凸状部位31aが配置される部位の外径よりも第二凸状部位31bが配置される部位の外径を大径に設定することことが好ましい。これにより、第一凸状部位31aに対する係合凹部32の乗り越えを容易にしている。
係合凹部32は、締め付け部材20の内表面全周に亘って周方向へ所定間隔毎に複数連続して凹凸形成されている。
図示例では、締め付け部材20の内面において移動手段21よりも軸方向一端側(管差し込み方向Nの端部側)の開口端に連続形成している。
また、第一締め付け完了位置P1と第二締め付け完了位置P2において、係合凸部31(第一凸状部位31a,第二凸状部位31b)と係合凹部32の先端同士が弾性変形することにより、係合凸部31(第一凸状部位31a,第二凸状部位31b)に対して係合凹部32を乗り越え係合させている。
また、その他の例として図示しないが、係合凸部31(第一凸状部位31a,第二凸状部位31b)や係合凹部32の形状や配置を図示例以外の形状や配置に変更することも可能である。さらに係合凸部31(第一凸状部位31a,第二凸状部位31b)において係合凹部32と当接する先端に脆弱部位を有してもよい。脆弱部位の強度及び破壊領域は、ニップル11に対する締め付け部材20の回転移動に伴う係合凹部32と当接(突き当たり)で破壊して乗り越えるように設定することが好ましい。
【0017】
このような本発明の実施形態に係る管継手Aによると、
図1(a)(b)に示される肉厚で外径が大きい管体Baの場合には、締め付け部材20の回転移動途中に配置される先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)で、肉厚な管体Baの大径な外面B2に締め付け部材20の押圧部22が圧接する。これにより、肉厚な管体Baは引き抜き不能に接続される。
これと同時に、ロック部材30の係合凸部31と係合凹部32が乗り越え係合する。これにより、ニップル11に対して締め付け部材20を作業者による締め付け部材20の回転操作方向(締め付け方向F)と逆回転方向(緩み方向L)へ回転移動不能にロックする。このため、先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)において締め付け部材20が緩み止めされる。
また
図1(c)(d)に示される肉薄で外径が小さい管体Bbの場合には、先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)の次に配置される後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)において、肉薄な管体Bbの小径な外面B2に締め付け部材20の押圧部22が圧接する。これにより、肉薄な管体Bbは引き抜き不能に接続される。
これと同時に、ロック部材30の係合凸部31と係合凹部32が乗り越え係合する。これにより、ニップル11に対して締め付け部材20を作業者による締め付け部材20の回転操作方向(締め付け方向F)と逆回転方向(緩み方向L)へ回転移動不能にロックする。このため、後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)でも締め付け部材20が緩み止めされる。
したがって、肉厚が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)であっても肉厚の違いに関係なくニップル11に対し締め付け部材20を回転移動不能にロックして緩み防止することができる。
その結果、肉厚が異なる複数種類の管体に対応するには、各サイズ専用のニップルや締め付け部材を用意する必要がある従来のものに比べ、同じサイズのニップル11や締め付け部材20で部品交換せずに締め付け部材20の緩みを防止できる。
このため、肉厚が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)に対応して各サイズ専用のニップル11や締め付け部材20やロック部材30を別々に用意する必要がなくなるので、外径が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)の接続作業が行い易くなって作業性に優れると同時に、コストの低減化が図れる。
また肉厚が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)が硬質なパイプであっても、肉厚の違いに関係なくニップル11に対し締め付け部材20を回転移動不能にロックして緩み防止できて利便性に優れる。
【0018】
特に、係合凸部31は、複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)に亘って配置される第一凸状部位31aと、複数の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1,第二締め付け完了位置P2)のうち後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に配置される第二凸状部位31bと、を有することが好ましい。
この場合には、
図1(c)(d)に示されるように肉薄で外径が小さい管体Bbの場合には、作業者による締め付け部材20の回転操作に伴い、先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)に到達した時点で、第一凸状部位31aと係合凹部32が乗り越え係合する。それ以降も締め付け部材20の回転操作に伴って第一凸状部位31aと係合凹部32の乗り越え係合が継続される。
このため作業者は、先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)から始まった第一凸状部位31aと係合凹部32の乗り越え係合による抵抗で、締め付け部材20の回転操作が突然重くなったことを感知する。
その後の締め付け部材20の回転操作により、第一凸状部位31aと係合凹部32の乗り越え係合が継続し、次に後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に到達した時点で、第二凸状部位31bと係合凹部32の乗り越え係合が終了する。
このため作業者は、第二凸状部位31bと係合凹部32の乗り越え係合で抵抗が増えるので、締め付け部材20の回転操作が更に重くなったことを感知する。
したがって、作業者が回転操作の重みで締め付け部材20が前の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)や後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に到達したことを簡単に確認することができる。
その結果、肉厚が異なる複数種類の管体B(Ba,Bb)の最適な締め付け状態を締め付け作業中に簡単で且つ正確に確認できて作業性に優れる。
特に第一凸状部位31aの突出高さを第二凸状部位31bの突出高さよりも小さく設定した場合には、第一凸状部位31aに対する係合凹部32の乗り越え抵抗の方が第二凸状部位31bに対する係合凹部32の乗り越え抵抗よりも低くなる。
このため、前の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)から後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に到達するまで係合凹部32が第一凸状部位31aをスムーズに乗り越え可能になる。
したがって、肉薄で外径が小さい管体Bbの場合に前の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)から後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に到達するまで締め付け部材20を無理なく回転操作することができる。
【0019】
さらに、係合凸部31は、係合凹部32と当接する先端に脆弱部位(図示しない)を有し、脆弱部位を、締め付け部材20の回転移動に伴う係合凹部32との当接で破壊して乗り越えるように設定することが好ましい。
この場合には、作業者による締め付け部材20の回転操作で、係合凸部31の先端の脆弱部位が、係合凹部32と当接することにより、部分破壊して係合凹部32と擦れながら乗り越える。
このため作業者は、脆弱部位の破壊に伴う音と衝撃を感知することに加え、破壊した脆弱部位が係合凹部32と擦れることで抵抗となるから、締め付け部材20の回転操作が突然重くなる。
したがって、作業者が脆弱部位の破壊音及び衝撃や回転操作の重みで締め付け部材20が先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置P1)や後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置P2)に到達したことを簡単に確認することができる。
その結果、最適な管体B(Ba,Bb)の締め付け状態を締め付け作業中により簡単で且つより正確に確認できて作業性に優れる。
【0020】
なお、前示の実施形態において図示例では、複数種類の管体Bとして肉厚で外径が大きい管体Baと、肉薄で外径が小さい管体Bbの二種類のみを説明したが、これに限定されず、肉厚の違いにより外径が異なる三種類以上の管体Bであってもよい。
この場合においても、管体Bが二種類の場合と同様な作用や利点が得られる。
さらに接続部14として外ネジが刻設した場合のみを示したが、これに限定されず、接続部14に代えて単数又は複数のニップル11を形成して他の管体Bを接続可能に変更するなど、図示例以外の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
A 管継手 11 ニップル
11a 外周面 20 締め付け部材
22 押圧部 30 ロック部材
31 係合凸部 31a 第一凸状部位
31b 第二凸状部位 32 係合凹部
B 管体 Ba 肉厚が厚い管体
Bb 肉厚が薄い管体 B2 外面
P1 先の締め付け完了位置(第一締め付け完了位置)
P2 後の締め付け完了位置(第二締め付け完了位置)
S 管体の挿入空間