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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】回転カッタ研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/46 20060101AFI20221212BHJP
   B23D 63/14 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B24B3/46
B23D63/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019044750
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020146782
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000127916
【氏名又は名称】株式会社エスケー
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 一仲
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-177883(JP,A)
【文献】特開2011-140090(JP,A)
【文献】特開2014-226732(JP,A)
【文献】特開2014-46393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/46
B23D 63/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに設けた回転カッタ支持部及びグラインダ支持部を、前記回転カッタ支持部に備えた揺動レバーの揺動操作により接近離反させ、回転カッタ支持部に取り付けた回転カッタの刃を、グラインダ支持部に保持させたグラインダの砥石に押し付けて研削する回転カッタ研削装置において、
回転カッタの刃をグラインダの砥石に押し付けた際、揺動レバーの特定部位に側面が当接するカムをベースに軸着したことを特徴とする回転カッタ研削装置。
【請求項2】
ベースに設けた回転カッタ支持部及びグラインダ支持部を、前記グラインダ支持部に備えた揺動レバーの揺動操作により接近離反させ、グラインダ支持部に保持させたグラインダの砥石を、回転カッタ支持部に取り付けた回転カッタの刃に押し付けて前記回転カッタの刃を研削する回転カッタ研削装置において、
グラインダの砥石を回転カッタの刃に押し付けた際、揺動レバーの特定部位に側面が当接するカムをベースに軸着したことを特徴とする回転カッタ研削装置。
【請求項3】
カムは、側面の半径を徐変かつ一方向に拡大又は縮小させた請求項1又は2いずれか記載の回転カッタ研削装置。
【請求項4】
カムは、揺動レバーのレバー掛合部と掛合するカム掛合部を有し、側面の半径を前記カム掛合部から回転操作方向と逆方向に拡大又は縮小させた請求項1~3いずれか記載の回転カッタ研削装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転カッタの刃を研削する回転カッタ研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈機等に使用される回転カッタは、回転カッタ研削装置を用いて摩耗した刃を研削する。特許文献1は、回転カッタ(回転刃)を支持するカッタ支持部(回転刃支持部)、グラインダを支持するグラインダ支持部(研磨支持台)、カッタ支持部の案内部、ラチェットレバー(刃送り部)及び揺動レバー(操作部)からなる刃送り機構部をベース(台座)に備えた回転カッタ研削装置(刈払機用回転刃研磨装置)を開示する(特許文献1・[請求項1][請求項2])。特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、作業者が揺動レバーを揺動操作して回転カッタをグラインダに接近及び離反させる際、カッタ支持部の軌道を案内部で特定できる点に特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-177883公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個人が利用する回転カッタ研削装置は、作業者が揺動レバーを揺動操作して回転カッタをグラインダに接近及び離反させることから、グラインダに対する刃の押し付け具合を作業者が加減して、刃ごとに研削量を調整できる利点があった。しかし、作業者が揺動レバーを操作して加減する刃の押し付け具合は、あくまで作業者の感覚によるもので、研削を終えた刃が一様に揃う(例えば刃の形状が同じで、刃の外縁半径が均一になる)ように刃を研削することが難しかった。
【0005】
このため、例えば揺動レバーの操作範囲を制限するストッパをベースに設け、グラインダに対する刃の押し付け具合を一定にする回転カッタ研削装置も見られる。しかし、ストッパを設けた回転カッタ研削装置は、刃の摩耗具合に応じた研削量の加減ができない問題がある。そこで、作業者の感覚によらず、研削を終えた刃が一様に揃うように刃を研削できるほか、刃の摩耗具合に応じた研削量の加減が可能な回転カッタ研削装置について、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、ベースに設けた回転カッタ支持部及びグラインダ支持部を、前記回転カッタ支持部に備えた揺動レバーの揺動操作により接近離反させ、回転カッタ支持部に取り付けた回転カッタの刃を、グラインダ支持部に保持させたグラインダの砥石に押し付けて研削する回転カッタ研削装置において、回転カッタの刃をグラインダの砥石に押し付けた際、揺動レバーの特定部位に側面が当接するカムをベースに軸着したことを特徴とする回転カッタ研削装置である。
【0007】
回転カッタ支持部が揺動レバーを備える場合、揺動レバーを揺動させると、回転カッタがグラインダに対して接近及び離反を繰り返し、砥石に押し付けた刃が研削される。カムは、回転カッタの刃をグラインダの砥石に押し付けた際の揺動レバーの揺動角度を変化させ、回転カッタの刃をグラインダの砥石に押し付ける押圧力を加減する。回転カッタは、ベースに設けたラチェットレバーのピンを、半径方向内向きに付勢された状態で刃の間に掛合させて、グラインダから遠ざけた際、ラチェットレバーのピンが刃を乗り越えて次の刃の間に移ることにより刃送りされ、砥石に押し付ける刃を順次変える。
【0008】
また、本発明は、ベースに設けた回転カッタ支持部及びグラインダ支持部を、前記グラインダ支持部に備えた揺動レバーの揺動操作により接近離反させ、グラインダ支持部に保持させたグラインダの砥石を、回転カッタ支持部に取り付けた回転カッタの刃に押し付けて前記回転カッタの刃を研削する回転カッタ研削装置において、グラインダの砥石を回転カッタの刃に押し付けた際、揺動レバーの特定部位に側面が当接するカムをベースに軸着したことを特徴とする回転カッタ研削装置としても構成される。
【0009】
グラインダ支持部が揺動レバーを備える場合、揺動レバーを揺動させると、グラインダが回転カッタに対して接近及び離反を繰り返し、刃に押し付けた砥石が前記刃を研削する。カムは、グラインダの砥石を回転カッタの刃に押し付けた際の揺動レバーの揺動角度を変化させ、グラインダの砥石を回転カッタの刃に押し付ける押圧力を加減する。回転カッタは、グラインダに連動して回転カッタ支持部に接近離反するグラインダ支持部用ベースに設けたラチェットレバーのピンを、半径方向内向きに付勢された状態で刃の間に掛合させて、グラインダを遠ざけた際、ラチェットレバーのピンが刃を乗り越えて次の刃の間に移ることにより刃送りされ、砥石に押し付ける刃を順次変える。
【0010】
カムは、平板又はブロックである。これから、本発明に言うカムの「側面」は、平板であるカムの場合の側縁を含む。揺動レバーは、カムの側面を当接させる専用の突起を特定部位として設けてもよい。しかし、最も簡易な揺動レバーの特定部位は、揺動レバーの側面(側縁を含む)であり、カムの側面を面接触で当接させる。カムは、揺動レバーの特定部位との当接を妨げない部分に、前記特定部に当接させる側面を変更する回転操作をするための操作レバーを設けるとよい。
【0011】
カムは、側面の半径を徐変かつ一方向に拡大又は縮小させると、一方向の回転操作量に比例して、揺動レバーの特定部位と側面との当接位置を変化させる。また、カムは、揺動レバーのレバー掛合部と掛合するカム掛合部を有し、側面の半径を前記カム掛合部から回転操作方向と逆方向に拡大又は縮小させると、カムの側面を揺動レバーの特定部位に当接させた状態でカム掛合部とレバー掛合部とを掛合させ、揺動レバーを拘束できる。そして、カムは、揺動レバーを拘束した姿勢から一方向の回転操作量に比例して、揺動レバーの特定部位と側面との当接位置を変化させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転カッタ研削装置は、揺動レバーの特定部位がカムの側面に当接する範囲に揺動レバーを揺動範囲を特定させることで、作業者の感覚によらず、研削を終えた刃が一様に揃うように回転カッタの刃を研削できる。そして、本発明の回転カッタ研削装置は、カムを回転操作して揺動レバーの特定部位とカムの側面との当接位置を変化させると、刃の摩耗具合に応じた研削量の加減が可能となる。カムは、側面の半径を徐変かつ一方向に拡大又は縮小させると、一方向の回転操作量に比例して回転カッタの刃の研削量を増加する方向に調整でき、前記研削量の調整がわかりやすい。
【0013】
側面を揺動レバーの特定部位に当接させた状態でカム掛合部とレバー掛合部とを掛合させるカムは、グラインダの姿勢を調整させる際、砥石が回転カッタの刃を押して回転カッタ支持部が動くことを防止して、回転カッタの刃とグラインダの砥石との基準となる当接関係を特定する。そして、側面の半径を前記カム掛合部から回転操作方向と逆方向に拡大又は縮小させたカムは、前記当接関係から一方向の回転操作量に応じて回転カッタの刃の研削量を増加する方向に調整でき、前記研削量の調整がわかりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した回転カッタ研削装置の一例を表す平面図である。
図2】本例の回転カッタ研削装置の正面図である。
図3】回転カッタとグラインダとの位置関係を設定している状態における本例の回転カッタ研削装置の部分破断平面図である。
図4】回転カッタの刃をグラインダの砥石に小さな押圧力で押し付けて研削させている状態における本例の回転カッタ研削装置の部分破断平面図である。
図5】回転カッタの刃をグラインダの砥石に大きな押圧力で押し付けて研削させている状態における本例の回転カッタ研削装置の部分破断平面図である。
図6】本発明を適用した回転カッタ研削装置の別例を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、図1図3に見られるように、ベース15に設けた回転カッタ支持部11及びグラインダ支持部13を、前記回転カッタ支持部11に備えた揺動レバー12の揺動操作により接近離反させ、回転カッタ支持部11に取り付けた回転カッタ3の刃31を、グラインダ支持部13に保持させたグラインダ4の砥石41に押し付けて研削する回転カッタ研削装置1に適用される。回転カッタ研削装置1の全体構成は、従来同種と変わらない。
【0016】
本例の回転カッタ研削装置1は、回転カッタ3の刃31をグラインダ4の砥石41に押し付けた際、揺動レバー12の手前側(図1又は図3中下側)の側面(特定部位)123に、円弧状の側縁221(の一部を当接させるカム2を、回転軸26を中心としてベース15に軸着させている。カム2は、回転カッタ3の刃31をグラインダ4の砥石41に押し付けた際、揺動レバー12の特定部位に側縁221を当接できる位置であれば、ベース15のどこに軸着されてもよい。
【0017】
本例のベース15は、平面視長方形の板面の四辺からフランジを下方に向けて折り曲げた扁平な箱体で、前記板面の長手方向手前側(図1又は図3中下側)から順に、ラチェットレバー支持部162を固定し、揺動レバー12及びグラインダ支持部13をそれぞれ軸着している。本例の回転カッタ支持部11は、揺動レバー12に設けられる。回転カッタ支持部11、揺動レバー12、グラインダ支持部13、ラチェットレバー16の配置関係は自由である。本例の回転カッタ研削装置1は、従来同種の構成に倣って回転カッタ支持部11、揺動レバー12、グラインダ支持部13、ラチェットレバー16を配置している。
【0018】
本例の回転カッタ支持部11は、揺動レバー12のレバー側上面板121にカッタ受け面111を載せ、カッタ受け面111に締め付けるカッタ固定ネジ112と前記カッタ受け面111とにより回転カッタ3を挟んで保持する。カッタ受け面111は、レバー側上面版121から下方に貫通させた支持軸にコイルバネ113を外嵌させ、レバー側上面板に圧接させており、回転カッタ3を左回りにのみ回転させる一方向クラッチを内蔵している。これにより、カッタ受け面111及びカッタ固定ネジ112で挟んで保持される回転カッタ3は、自由回転が抑制され、ラチェットレバー16のピン161に刃31が押される時のみ左回転し、刃送りされる。
【0019】
回転カッタ支持部11は、揺動レバー12の揺動軸124より前方(図1図3中左方)の端部に設けられ、揺動レバー12の揺動に従って円弧状に変位し、回転カッタ3をグラインダ4の砥石41に対して接近又は離反させる。このように、揺動レバー12の揺動に従って回転カッタ3をグラインダ4の砥石41に対して接近又は離反させることができればよいので、例えば回転カッタ支持部11を揺動レバー12の揺動軸124より後方(図1図3中右方)に設けてもよい。
【0020】
本例の揺動レバー12は、垂直なレバー側面板125及びレバー端面板126で繋がれた水上下二層のレバー上面板121及びレバー下面板122から構成される箱状で、前記レバー端面板126から突出させたハンドル125により揺動操作させる。本例の揺動レバー12を箱状としたのは、取り付ける回転カッタ支持部11による回転カッタ3を高い位置で保持するため、高さ方向の厚みを確保したことによる。これから、例えばカッタ受け面111の高さが確保されれば、揺動レバー12を1枚の板材で構成してもよい。
【0021】
回転カッタ支持部11は、レバー上面板121に設けられる。揺動レバー12の揺動軸124は、レバー下面板122に設けられる。本例の揺動レバー12は、レバー下面板122にレバー掛合部128を設け、前記レバー下面板122の手前側(図1中下側)の側面123をカム2の側縁221が当接する特定部位としている。当接部位は、カム2の街道操作により少しずつずれていくが、当接部位の中心位置を、レバー下面板122に当接位置マーク129を付して明示している。レバー掛合部126は、レバー下面板122の側面123から切り欠いて、左方に突出した鍵状部分である。
【0022】
本例のグラインダ支持部13は、プレート固定ネジ132により締め付けてベース15に固定する支持プレート131にクランプ133を設けた構成で、前記クランプ133にグラインダ4の駆動本体42を保持させる。グラインダ4は、プレート固定ネジ132を緩めて支持プレート131の水平向きを変えることにより、砥石41の水平向きを調整できる。また、グラインダ4は、クランプ133に保持させる駆動本体42を自転させることにより、砥石41の傾きを調整できる。
【0023】
本例のラチェットレバー16は、ベース15に固定されたラチェットレバー支持部162の上端に水平旋回自在に支持され、捻りコイルバネ163の働きにより左旋回方向に付勢させている。ラチェットレバー16は、左旋回方向の付勢により、回転カッタ支持部11に保持させた回転カッタ3の刃31の間にピン161を押し付けるように、掛合させている。回転カッタ3は、揺動レバー12の揺動操作によりグラインダ4から遠ざけた際、ラチェットレバー16のピン161が刃31を乗り越えて次の刃31の間に移り、再びグラインダ4に接近する際、前記ピン162により押されることにより刃送りされる。
【0024】
本例のカム2は、円弧状の側縁221を有するカム本体22と、カム本体22から揺動レバー12に近い奥側(図3中上側)に右方(図3中右方)に突出させた鍵状のカム掛合部25と、カム本体22から手前側(図3中下側)に突出させた操作レバー21とからなる板材で、左回りを回転操作方向とする。カム本体22は、ネジである回転軸26によりベース15に軸着されている。側縁221は、回転軸26を中心として、半径を右回り(回転操作方向と逆方向)に徐変に縮小させる楕円弧で、揺動レバー12のレバー下面板122の側面(特定部位)123に当接させる。
【0025】
本例のカム本体22は、側縁221に沿って、カム掛合部25をレバー掛合部128と掛合させた状態で当接位置マーク129に一致する基準マーク23と、基準マーク23から右回りに徐変に幅が広くなる曲がった楔状の調整マーク24を設けている。基準マーク23は、研削しない位置として数字の「0」、調整マーク24の始端は、研削開始位置として数字の「1」を付している。側縁221は、基準マーク23から調整マーク24の始端までは半径が同じであるが、調整マーク24から右回りに徐変に半径が小さくなるように形成されている。基準マーク23から調整マーク24の始端までは、レバー掛合部128及びカム掛合部25の掛合を解除するためにカム2を回転させる逃げ代である。
【0026】
カム2の働きを説明する。本例のカム2は、(1)カム掛合部25とレバー掛合部128との掛合により、回転カッタ3の刃31とグラインダ4の砥石41との基準となる当接関係を特定する働きと、(2)レバー下面板122の側面(特定部位)123と側縁221との当接位置を変化させることにより、回転カッタ3の刃31をグラインダ4の砥石41に押し付ける押圧力を加減する働きとを有する。カム掛合部25及びレバー掛合部128がなければ、カム2は前記(2)の働きのみを有する。
【0027】
まず、準備作業として、図3に見られるように、揺動レバー12のハンドル127を手前(図3中下側)に引き寄せ、カム2を右回りさせて、レバー掛合部128にカム掛合部25を掛合させる。これにより、揺動レバー12は一時的に拘束され、揺動レバー12に設けられたカッタ支持部11が動かなくなるので、前記カッタ支持部11に取り付けられた回転カッタ3も位置拘束される。更に、回転カッタ3は、ラチェットレバー16のピン161が刃31の間に掛合しているので、回転も規制される。この結果、グラインダ4に向いた回転カッタ3の刃31の位置及び向きが特定される。回転カッタ3は、揺動レバー12がレバー掛合部128及びカム掛合部25が掛合している限り拘束され、グラインダ4に向けた刃31の位置及び向きを固定させる。
【0028】
次に、砥石41の姿勢を調整しながら、グラインダ4の駆動本体42をグラインダ支持部13のクランプ133に装着する。同時に、ベース15上の位置が特定された回転カッタ3の刃31に前記砥石41が押し付けられるように、支持プレート131を動かして砥石41の位置決めをし、プレート固定ネジ132を締め付けて前記支持プレート131を固定する。このとき、回転カッタ3の刃31を研削するには、砥石41を刃31に押し付ける必要がある。回転カッタ3は、上述したように、レバー掛合部128及びカム掛合部25を掛合させて揺動レバー12を一時拘束し、刃31の位置及び向きを固定させている。このため、砥石41を刃31に押し付けても回転カッタ3が動くことがなく、刃31に押し付ける位置及び姿勢で砥石41の位置及び姿勢を特定できる。
【0029】
準備作業が終わると、図4に見られるように、カム2を左回り(回転操作方向)に回転させ、揺動レバー12側の当接位置マーク129とカム2の調整マーク24の始端とを一致させる。こうして、レバー掛合部128及びカム掛合部25の掛合を解除する。そして、ハンドル127を押し込んで(図4中上方へ動かして)揺動レバー12を左回りに揺動させ、回転カッタ3をグラインダ4から遠ざけて刃31を砥石41から一旦引き離す。それから、グラインダ4の砥石41を回転駆動させてから、ハンドル127を引き戻す(図4中下方へ動かす)及び押し込む(図4中上方へ動かす)を繰り返して揺動レバー12を揺動させて、間欠的に刃31を砥石41に押し付けて、研削作業を実施する。
【0030】
回転カッタ3は、ラチェットレバー16のピン161が、刃31の間に掛合している。揺動レバー12の揺動操作により回転カッタ3がグラインダ4から遠ざかると、ピン161が刃31を乗り越えて次の刃31の間に移る。そして、揺動レバー12の揺動操作により回転カッタ3がグラインダ4に近くと、ピン161が刃31を押して回転カッタ3を左回りに回転させ、刃送りさせる。ラチェットレバー16による回転カッタ3の刃送りは、従来同種の装置と同じである。刃31は、ラチェットレバー16の位置や長さによって、1個又は2個単位で刃送りされる。
【0031】
刃送りされた回転カッタ3は、ハンドル127を引き戻す(図4中下方へ動かす)ことにより揺動レバー12を右回りに揺動させると、左回転しながら再びグラインダ4に接近し、刃送り前に砥石41に押し付けられていた刃31の右隣(図4中右側)の刃31を砥石41に押し付ける。このとき、カム2の側縁221が揺動レバー12の側面123に当接して揺動レバー12の揺動角度を制限する。回転カッタ3の刃31をグラインダ4の砥石41に押し付ける押圧力は、揺動レバー12の揺動角度により決定される。このことから、カム2により揺動レバー12の揺動角度が制限されると、揺動操作の遅速又は強弱を問わず、常に同じ押圧力で回転カッタ3の刃31をグラインダ4の砥石41に押し付け、一定の研削量が実現される。
【0032】
回転カッタ3の刃31の研削量を大きくする場合、図5に見られるように、操作レバー21を押してカム2を左回転(回転操作方向に回転)させ、揺動レバー12の側面123が当接するカム本体22の側縁221の当接位置を右回りにずらす。本例の側縁221は、右回りに半径が小さくなっている。このため、左回転させたカム2は、右回りにずれたカム本体22の側縁221が手前側(図5中下側)に引っ込むことで、揺動レバー12の揺動角度を大きくする。これにより、回転カッタ3は、刃31をグラインダ4の砥石41により強く押し付けられるようになり、研削量が大きくなる(図5中黒塗り矢印参照)。
【0033】
回転カッタ3の刃31の研削量は、カム本体22の側縁221に沿って設けた調整マーク24の幅を目安としてカム2の回転操作し、調整する。揺動レバー12の揺動角度は、揺動レバー12の側面123とカム2の側縁221との当接位置から、一義的に特定できる。しかし、回転カッタ3の種類や大きさによって、揺動レバー12の揺動角度と刃31との位置関係が微妙に変わるほか、なによりグラインダ4の砥石41の姿勢は利用者が設定することから、カム2の回転操作量と回転カッタ3の刃31の研削量との関係を数値の大小で明示することが難しい。このことから、本例のような幾何学模様の調整マーク24で、回転カッタ3の刃31の研削量の大小だけを読み取って、カム2を回転操作させる研削量の調整が好ましい。
【0034】
本発明は、図6に見られるように、ベース55に設けた回転カッタ支持部51及びグラインダ支持部53を、前記グラインダ支持部53に備えた揺動レバー54の揺動操作により接近離反させ、グラインダ支持部53に保持させたグラインダ4の砥石41を、回転カッタ支持部51に取り付けた回転カッタ3の刃31に押し付けて前記回転カッタ3の刃31を研削する別例の回転カッタ研削装置5にも適用される。カム2は、本例の回転カッタ研削装置1のものと同じもので、揺動レバー54を構成するレバー板542の側面(特定部位)543に、円弧状の側縁221を当接させる。
【0035】
別例の回転カッタ支持部51は、ベース55に直接支持されたカッタ受け面(図示略)に回転カッタ3を載せ、カッタ固定ネジ512を締め付けて、カッタ受け面に内蔵させた一方向クラッチ(図示略)の働きにより、前記回転カッタ3を左回りのみ回転できるように保持する。別例のグラインダ支持部53は、ベース55上を回転カッタ支持部51に向けて接近離反する移動ベース551に設けられる。別例のグラインダ支持部53は、本例同様、プレート固定ネジ532により締め付けて移動ベース551に固定する支持プレート531にクランプ533を設けて構成され、前記クランプ533にグラインダ4の駆動本体42を保持させる。
【0036】
別例の揺動レバー54は、ベース55と移動ベース551との間に構成された平行リンク機構(図示略)の駆動リンクに相当するレバー板542から構成される。レバー板542は、本例の揺動レバー12のレバー下面板122同様、端部からハンドル547が突出させ、前記ハンドル547近傍に設けたレバー掛合部548とハンドル547との間の側面543を、をカム2の側縁221が当接する特定部位としている。主に当接する中心部位は、レバー板542に当接位置マーク549を付して明示している。レバー掛合部548は、レバー板542の側面543から切り欠いて形成された鍵状部分である。
【0037】
別例のベース55は、既述したように、グラインダ支持部53を設ける移動ベース551を備え、別例のラチェットレバー56のラチェットレバー支持部562が、ベース55ではなく、移動ベース551に設けられる。ラチェットレバー56は、半径方向内向きに付勢されることにより、回転カッタ3の刃31の間にピン561を掛合させている。回転カッタ3は、グラインダ4を遠ざけるために移動ベース551を後退させる(図6中下方へ移動)と、ラチェットレバー56のピン561が刃31を乗り越えて次の刃31の間に移り、
グラインダ4に近づけるために移動ベース551を前進させる(図6中上方へ移動)と、前記ピン561が刃31を押して刃送りされる。
【0038】
別例の回転カッタ支持部51は、揺動レバー54を揺動させて、ベース55上に位置固定された回転カッタ3に対してグラインダ4を接近及び離反させ、砥石41を刃31に押し付けて研削する。カム2は、本例同様、揺動レバー54の側面543に対する側縁221の当接位置を変えることにより、揺動レバー54の揺動角度を変化させ、グラインダ4の砥石41を回転カッタ3の刃31に押し付ける押圧力を加減できる。このように、本発明は、揺動レバー12,54が回転カッタ3又はグラインダ4のいずれを動かすようにしても、カム2が揺動レバー12,54の揺動角度を制限できる限り、カム2の回転操作により回転カッタ3の刃31の研削量が調整できる。
【符号の説明】
【0039】
1 回転カッタ研削装置
11 回転カッタ支持部
12 揺動レバー
13 グラインダ支持部
15 ベース
16 ラチェットレバー
2 カム
21 操作レバー
22 カム本体
23 基準マーク
24 調整マーク
25 カム掛合部
26 回転軸
3 回転カッタ
31 刃
4 グラインダ
41 砥石
42 駆動本体
5 回転カッタ研削装置
51 回転カッタ支持部
512 カッタ固定ネジ
53 グラインダ支持部
54 揺動レバー
55 ベース
56 ラチェットレバー

図1
図2
図3
図4
図5
図6