(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】非接触保持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B25J15/06 Z
(21)【出願番号】P 2019166734
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019108332
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】平澤 勝人
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-000583(JP,A)
【文献】特開2005-118966(JP,A)
【文献】特開昭63-008135(JP,A)
【文献】特開2004-217252(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧によって環状体の物品を非接触状態で保持する非接触保持装置であって、
前記物品に対向し、該物品の面方向に圧力流体を噴出可能に構成されたパッド部と、
前記物品と非接触状態で該物品の移動を規制する補助保持手段と、
第一の噴出手段と第二の噴出手段と、を有
し、
前記第一の噴出手段は、前記物品と前記パッド部の間に該パッド部の全体中心から外側に向かって圧力流体を噴出可能に構成され、
前記第二の噴出手段は、前記第一の噴出手段とは異なる方向に圧力流体を噴出可能に構成され、
前記第二の噴出手段から噴出される圧力流体は、前記物品の保持状態において、前記補助保持手段の軸方向に沿って気流を生じさせる、
ことを特徴とする非接触保持装置。
【請求項2】
負圧によって環状体の物品
を非接触状態で保持
する非接触保持装置であって、
前記物品に対向し、該物品の面方向
に圧力流体
を噴出
可能に構成されたパッド部
と、
前記物品と非接触状態で該物品の移動を規制する補助保持手段
と、
を有し、
前記補助保持手段は、柱状部材であり、該柱状部材の外周面に沿って負圧が発生するように構成されている、
ことを特徴とする非接触保持装置。
【請求項3】
前記第一の噴出手段は、前記物品
の面方向において前記補助保持手段よりも外側に
設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触保持装置。
【請求項4】
前記補助保持手段
は、前記第二の噴出手段
を有する、
ことを特徴とする
請求項1または請求項3
のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項5】
前記補助保持手段は、前記物品の保持状態において該物品の穴部に挿通され、
前記物品の面方向において前記補助保持手段よりも外側
の領域に
圧力流体の噴出手段が設けられる、
ことを特徴とする請求項
1乃至請求項4
のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項6】
前記パッド部は、前記補助保持手段
を囲む複数の分割パッド部から構成される、
ことを特徴とする請求項
1乃至請求項5
のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項7】
前記物品は円環状体である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項8】
前記パッド部が固定されるとともにロボットアームに取り付け可能なベース部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項9】
前記物品はいずれの部位も非接触状態で保持される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧によって物品を非接触で保持して搬送する非接触保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体の噴出によって負圧を生じさせて物体を非接触で保持する保持具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような保持具は、ガラス板や半導体ウェハなど薄型で脆い物品の保持または搬送に利用されている。
【0004】
ところで、食品等の包装ラインにおいてもロボットの利用などによって搬送効率の向上が図られている。しかしながら、一部の製品、例えばバウムクーヘンやドーナツなど表面が柔らかく、また、表面にコーティングが施されているような製品については、傷の発生を防止するため、包装機等への供給は人手に頼っている場合が多い。
【0005】
また、例えばロボットアームにチャックを取り付けてバウムクーヘン等の物品を挟持する場合もあるが、物品の崩れや傷の発生を防止するために処理速度を向上できない問題がある。
【0006】
そこで、負圧によって物品を非接触で保持する保持具を用いて柔らかく脆い食品等を保持する装置が検討されている。
【0007】
図10は、従来の非接触保持装置100による物品XA1の保持及び搬送の状態を示す概要図であり、物品XA1の厚み方向の断面図である。またこの場合の物品XA1は例えば、バウムクーヘンやドーナツなど略円環状体で柔らかい食品である。
【0008】
図10(A)に示すように、非接触保持装置100は例えば不図示のロボットアームに取り付けられ、略円形状のパッド部101を有している。パッド部101は例えば、周方向に点在する導出部(不図示)を有し、その上方から供給される圧力流体を当該導出部を介して、パッド部101の下面(物品XA1との対向面)側に噴出し、またパッド部101の下面に沿って外周方向へ、矢印で示すように高速で流通させる。
【0009】
その状態で同図(B)に示すように非接触保持装置100を、ロボットアームで物品XA1の上方へと移動させ、物品XA1に接近させると、パッド部101の下面と物品XA1との間を高速で流通する圧力流体に起因してベルヌーイ効果により負圧が発生する。その負圧によって物品XA1がパッド部101側へと吸引されて非接触で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、
図10(B)に示した状態で保持した物品XA1を次工程に搬送するために例えば同図(C)に示すようにパッド部101を高速で移動させると、物品XA1がパッド部101に追従できず、パッド部101からずれてしまう問題があった。これは、物品XA1の形状が略円環状体の場合には、パッド部101の下面に対向する面積、すなわち負圧によって吸引される面積が(円形の場合と比較して)小さくなるためである。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、環状体の物品であっても確実に保持することが可能な非接触保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、負圧によって環状体の物品を非接触状態で保持する非接触保持装置であって、前記物品に対向し、該物品の面方向に圧力流体を噴出可能に構成されたパッド部と、前記物品と非接触状態で該物品の移動を規制する補助保持手段と、第一の噴出手段と第二の噴出手段と、を有し、前記第一の噴出手段は、前記物品と前記パッド部の間に該パッド部の全体中心から外側に向かって圧力流体を噴出可能に構成され、前記第二の噴出手段は、前記第一の噴出手段とは異なる方向に圧力流体を噴出可能に構成され、前記第二の噴出手段から噴出される圧力流体は、前記物品の保持状態において、前記補助保持手段の軸方向に沿って気流を生じさせる、ことを特徴とする非接触保持装置である。
また、本発明は、負圧によって環状体の物品を非接触状態で保持する非接触保持装置であって、前記物品に対向し、該物品の面方向に圧力流体を噴出可能に構成されたパッド部と、前記物品と非接触状態で該物品の移動を規制する補助保持手段と、を有し、前記補助保持手段は、柱状部材であり、該柱状部材の外周面に沿って負圧が発生するように構成されている、ことを特徴とする非接触保持装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環状体の物品であっても確実に保持することが可能な非接触保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る(A)非接触保持装置および物品の概略側断面図、(B)非接触保持装置の概略断面図、(C)非接触保持装置の平面(上面)図、(D)物品の平面(上面面)図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る非接触保持装置の概略図であり(A)側断面図、(B)平面(底面)図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る非接触保持装置の概略図であり(A)側断面図、(B)ベース部の側断面図、(C)パッド部および補助保持手段の側断面図、(D)、(E)図(A)の一部拡大側断面図である。
【
図4】本発明の実施形態における(A)非接触保持装置の下面図、パッド部および補助保持手段の下面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る非接触保持装置の側面概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る非接触保持装置の概略側断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る非接触保持装置の(A)概略側断面図、(B))平面図、(C)概略側断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る非接触保持装置の(A)概略側断面図、(B))平面図、(C)概略図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る非接触保持装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る非接触保持装置10の構成について説明する。
図1は、非接触保持装置10の概略を示す図であり、同図(A)が非接触保持装置10および物品XA1の側断面図であり、同図(B)が非接触保持装置10を分解して示す側断面図であり、同図(C)が非接触保持装置10の平面(上面)図であり、同図(D)が非接触保持装置10で保持する物品XA1の平面(上面)図である。同図(A)は同図(C)のX-X線に対応する断面である。また、
図2は、非接触保持装置10の概略を示す図であり、同図(A)が非接触保持装置10の側断面図であり、同図(B)が平面(下面)図である。なお、本図及び以降の各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本図及び以降の各図において、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0017】
図1(A)に示すように、本実施の形態の非接触保持装置10は、例えばパッド部12と、補助保持手段13とを有し、不図示のロボットアームの先端などに取り付けられて負圧によって物品XA1を非接触状態で保持するものである。以下の実施形態では一例として、非接触保持装置10は、パッド部12が固定されるとともにロボットアームに取り付け可能なベース部11を有する場合を例に説明する。
【0018】
同図(A)および同図(D)に示すように、本実施形態の物品XA1は、中央付近に空間(穴部H)を有する環状体であり、具体的には、略円環状体である。一例を挙げるとバウムクーヘンやドーナツなどの食品であるが、これに限らず、例えばテープやシート(フィルム)などの長尺物を巻回した(ロール状の)製品であってもよい。
【0019】
パッド部12は物品XA1に対向し、補助保持手段13は、パッド部12の略中央に設けられて物品XA1の中心付近(この例では(略)円形の穴部H)に挿通される。
【0020】
なお、平面視においてベース部11の大きさは、保持する物品XA1の大きさと略同等若しくは若干小さく設定され、補助保持部13の大きさは環状体である物品XA1の穴部Hより(若干)小さく設定されている。
【0021】
同図(A)~同図(C)に示すように、ベース部11は、ロボットアーム側となる第一の面11ASと、物品XA1側となる第二の面11BSを有し、平面視において略円板形状を呈する。以下、説明の便宜上、非接触保持装置10における方向の定義として、ロボットアーム側を上方向、物品XA1側を下方向とする。つまり第一の面11ASは「上面」、第二の面11BSは「下面」と称する。
【0022】
ベース部11の上面11ASには、ロボットアームの先端に取り付けるための係合手段(不図示)、および供給ポート25が設けられる。供給ポート25は、圧力流体供給源(不図示)から配管(不図示)を通じて圧力流体が供給される。
【0023】
ベース部11の下面11BSは、保持する物品XA1に対向する端面となり、その略中央部に、平面視において円形でパッド部12を収容可能な凹状部14を有する。
【0024】
パッド部12は、物品XA1に対向する端面(下面12BS)を有し、中心から外側方向に圧力流体を噴出可能に構成される。具体的には、パッド部12は上面12ASと下面12BSを有し、平面視において円板形状である(
図1(B)および同図(C))。パッド部12は上面12ASがベース部11に対向するように凹状部14に収容されることでベース部11の下面11BS(物品XA1に対向する端面)に取り付けられる(同図(A))。ベース部11にパッド部12を取り付けた状態で、パッド部12の外縁部12Pとベース部11の凹状部14の縁部の間には隙間が形成され、且つパッド部12の下面(端面)12BSと、その周囲のベース部11の下面(端面)11BSは略同一平面に位置するように構成されている(同図(A))。
【0025】
図2は、本実施形態の非接触保持装置10で物品XA1を保持する際の圧力流体の流通の状態を示す図である。この例では、パッド部12の外縁部12Pとベース部11の凹状部14の縁部の隙間が、圧力流体の導出路15となる。導出路15の構成については後述するが、ベース部11の供給ポート25を介してベース部11とパッド部12の間に供給された圧力流体をパッド部12の外縁部分から下方に導出するとともに、パッド部12の中心から外側方向に噴出可能に構成されている。この場合圧力流体は、
図2の白抜き矢印Aで示すように、パッド部12の下面(端面)12BSおよびベース部11の下面11BSに沿って、ベース部11の外縁方向(径方向外側)に向かって噴出する。
【0026】
補助保持手段13は、パッド部12の下面12BSの略中央に設けられ、物品XA1の中心付近における保持を補助するとともに、パッド部12から物品XA1が離脱しないようガイドする。より具体的に、補助保持手段13は、少なくともパッド部12が端面12BS(ベース部11の下面11BS)に平行な方向へ移動する際に物品XA1の保持状態が維持されるように補助し、また物品XA1がパッド部12から離脱しないようにガイドする。
【0027】
一例として補助保持手段(補助保持部)13は、パッド部12から下方向に突出する柱状部材であり、その外形(柱状の径方向の断面形状)は、物品XA1の穴部Hの形状に対応していることが望ましい。この例の補助保持部13の断面形状は、円形の穴部Hに対応した円柱状部材である。この補助保持部13は、円柱の外周面13Sに沿って負圧が発生するように構成されている。具体的には、
図2(A)に示すように、圧力流体を円柱の外周面13Sに沿って外部に導出する複数の導出路16を有し、ベース部11の供給ポート25を介してベース部11とパッド部12の間に供給された圧力流体を白抜き矢印Bで示すように外周面13Sに沿って下方向に噴出する。
【0028】
図2に示すように圧力流体を噴出した状態の非接触保持装置100を、ロボットアームなどで物品XA1の上方へと移動し、物品XA1に接近させ、補助保持部13を環状体の物品XA1の穴部に挿入すると、白抜き矢印Aに示すように高速で流通する圧力流体に起因してベルヌーイ効果によりパッド部12の下面12BS(およびベース部11の下面11BS)に負圧が発生する。その負圧によって物品XA1がパッド部12側へと吸引されて
図1(A)に示すように非接触で保持される。
【0029】
また、補助保持部13においても同様に、白抜き矢印Bに示すように高速で流通する圧力流体に起因してベルヌーイ効果により外周面13Sの周囲に負圧が発生する。その負圧によって物品XA1(の穴部H)が補助保持部13側へと吸引されて非接触で保持される。
【0030】
このように、補助保持部13の外周面13Sが物品XA1(穴部H)の吸引面として機能するため、物品XA1を確実に保持することができる。環状体の物品XA1では、ベース部11の下面11BS(パッド部12の下面12BS)との対向する面積が円板(全円)状の物品と比較して少なくなるが、本実施形態によれば、穴部Hも吸引することができるため、環状体の物品XA1であっても吸引される面積を十分に確保することができ、確実な保持が可能となる。
【0031】
また、物品XA1を保持した状態で非接触保持装置10を高速に移動し、物品XA1を次工程に搬送する場合などにおいて、万が一、パッド部12による保持力が不足し、パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に物品XA1がずれる(パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に平行な方向に移動する)ことがあっても、補助保持部13が物品XA1の穴部Hに当接することで、物品XA1がパッド部12から離脱することを防止できる。
【0032】
図3および
図4を参照して、本実施形態の導出路15、16について説明する。
図3は、本実施形態における導出路15,16の一例について説明する概要図であり、同図(A)が非接触保持装置10の概略側断面図、同図(B)がベース部11の概略側断面図、同図(C)がパッド部12および補助保持部13の概略側断面図、同図(D)および同図(E)が同図(A)のパッド部12外縁部付近の一部拡大図である。また
図4(A)は非接触保持装置10の下面概要図であり、
図4(B)はパッド部12の下面概要図である。
【0033】
図3(A)、同図(B)を参照して、ベース部11の凹状部14は、より詳細には、側面(内周面)が階段状に構成される。すなわち、凹状部14は、ベース部11の厚み方向(上下方向)の下方から上方に向かって(下面11BSから上面11ASに向かって)、ベース部11の半径内方向に段階的に縮径する複数(ここでは3つ)の凹部14A,14B,14Cにより構成される。
【0034】
同図(B)に示すように、凹部14Aは3つのうち最大の径を有し、ベース部11の最も下面11BS側に位置する。またその側面(内周面)14ASは、上方から下方に向かって徐々に半径外方向に拡径するようにテーパ状に形成される。
【0035】
また、凹部14Bは、3つのうち中間の径を有し、凹部14Aの上方に位置する。凹部14Bの側面(内周面)14BSは、ベース部11の上面11ASに対して略垂直面である。また側面14BSは、供給ポート25と隣接して互いに連通している。
【0036】
また、凹部14Cは、3つのうち最小の径を有し、凹部14Bの上方に位置する。凹部14Cの側面(内周面)14CSは、ベース部11の上面11ASに対して略垂直面である。
【0037】
パッド部12は凸部18を有する。凸部18は円形状の下面12BSに対して縮径し、且つ、ベース部11の凹状部14に収容されるように所定高さで突出した部位である。凸部18の外周径は、ベース部11の最も上方に位置する凹部14Cの内周径と略同一となるように設定されている(同図(A))。
【0038】
凸部18の側面(外周面)18Sはパッド部12の下面12BSに対して略垂直面であり、下面12BSより径が小さいため、同図(D)、同図(E)に拡大して示すように凸部18の周囲には鍔部19が形成される。
【0039】
さらに、同図(E)に示すように、鍔部19の周方向において、その一部を階段状に切り欠いた連通孔20が設けられる。連通孔20は、
図4に示すように、パッド部12の平面視(下面視)においてパッド部12の外縁部12Pにおいて、周方向に等間隔で複数設けられる。
【0040】
図3(A)に戻り、パッド部12は、ベース部11の凹状部14に収容され、両者は例えばボルト27などによって固定される。その状態で、パッド部12(下面12BSの外縁部12P付近)とベース部11の間には隙間が形成される。この隙間が圧力流体の導出路15となる。
【0041】
圧力流体供給源(不図示)から配管(不図示)を介して供給ポート25に圧力流体が供給されると、供給ポート25に連通する凹部14Bの側面14BSと凸部18の外周面で構成される導出路15(
図3(D)参照)に圧力流体が流れ込み、周回する。そして、圧力流体が部分的に形成された連通孔20(同図(E))に達すると、ベース部11の下面11BSおよびパッド部12の下面12BSの間に形成された導出路15から、圧力流体が外部に放出され、ベース部11の下面11BSに沿って、ベース部11の外縁部方向に流通する。つまり圧力流体は、ベース部11の下面11BS(パッド部12の下面12BS)か放射状に、ベース部11の外周方向に噴出する。
【0042】
また、
図3(A),同図(C)に示すように、本実施形態の非接触保持装置10は、導出路15に加えて、供給ポート25を介して供給された圧力流体を補助保持部13から噴出する導出路16を有する。導出路16は例えば、第1導出路16Aと第2導出路16Bを連通してなる。第1導出路16Aは、例えばパッド部12に設けられ、凸部18の側面18Sから凸部18の中心に向かい、パッド部12の下面12BSの中心部に開口部16AOを有する流通経路である。また、第2導出路16Bは、補助保持部13に設けられる。補助保持部13は、例えば円柱状部材の上面13ASをパッド部12の下面12BSの中央付近に当接するように設けられる。そして第2導出路16Bは、一端が第1導出路16Aの開口部16AOと連通し、そこから垂直下方に延在した後、補助保持部13の中心(軸中心)から下降しつつ外周面13Sに向かって複数本に分岐(放射状に分岐)して、外周面13Sに開口部16BOを有する流通経路である。
【0043】
これにより、供給ポート25を介して供給された圧力流体は、第1導出路16Aおよび第2導出路16Bを介して、補助保持部13の外周面13Sから
図2(A)の白抜き矢印Bの如く噴出する。
【0044】
そして高速で圧力流体が流通することにより、パッド部12の下方、および補助保持部13の外周に負圧が生じ、その負圧によって物品XA1がパッド部12側に吸引されるとともに補助保持部13側へと吸引されて非接触で保持される。
【0045】
物品XA1は、穴部Hが補助保持部13に吸引されることにより、パッド部12が高速に移動した場合であっても、パッド部12からの離脱を防止でき、確実な保持が可能となる。
【0046】
なお、上述した導出路15の形状は一例であり、パッド部12(及びベース部11)において、中心から外側方向に圧力流体を噴出可能(
図2(A)に示す白抜き矢印Aのように噴出可能)な導出路15であれば、この例に限らない。
【0047】
同様に、上述した導出路16の形状は一例であり、補助保持部13の外周面13Sから圧力流体を噴出可能(
図2(A)に示す白抜き矢印Bのように噴出可能)な導出路16であれば、この例に限らない。
【0048】
<他の実施形態>
図5を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。同図は他の実施形態に係る非接触保持装置10の側断面概要図である。なお、他の実施形態は、補助保持手段13の構成が異なる例である。同図においてはベース部11およびパッド部12の詳細は省略しているが、以下に説明する構成以外は、上述の実施形態における構成と同様とする。
【0049】
同図(A)に示すように、補助保持手段(補助保持部)13は例えば、導出路16(第1導出路16Aおよび第2導出路16B)を有しない構成であってもよい。つまり補助保持部は例えば、(中実の)円柱状部材または円筒状部材であり、パッド部12の下面12BSから下方に突出するように設けられる。これ以外の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0050】
この構成の場合、補助保持部13からの圧力流体の噴出はないが、パッド部12の外縁部分からは白抜き矢印Aに示すように圧力流体が噴出しており、パッド部12およびベース部11の下方には負圧が生じている。また、補助保持部13を物品XA1の穴部Hに挿通することで狭小となった物品XA1の穴部Hの内側の空気が白抜き矢印Cで示すようにパッド部12方向に吸引され、補助保持部13の周囲が負圧となるため、物品XA1を確実に保持できる。また、万が一、パッド部12による保持力が不足し、パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に物品XA1がずれる(パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に平行な方向に移動する)ことがあっても、補助保持部13が物品XA1の穴部Hに当接することで、物品XA1がパッド部12から離脱することを防止できる。
【0051】
また、同図(B)を参照して、補助保持手段13は、パッド部12の中央付近から直下に噴出する圧力流体(その流れFRそのもの)、およびその圧力流体を噴出する噴出孔16AOであってもよい。この場合、円柱状(または円筒状)の補助保持手段は不要であり、パッド部12の下面12BSの中心部分には第1導出路16Aの開口部である噴出孔16AOが露出している。この場合、第1導出路16Aの構成は
図3等に示すものと同様であるが、開口部(噴出孔)16AOの平面視におけるサイズ(径)は、物品XA1の穴部Hより若干小さい程度(噴出する圧力流体の流れFRが物品XA1の穴部H内壁に非接触となるサイズ)とする。これ以外の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0052】
噴出孔16AOから同図に白抜き矢印Dで示すようにパッド部12の中心部の直下に適宜選択された流速・流量の圧力流体を噴出することで、その周囲に負圧を生じさせることができ、および/または物品XA1の水平方向(面方向)への移動を規制して物品XA1を確実に保持できる。
【0053】
また、同図(C)を参照して、補助保持手段(補助保持部)13は、パッド部12の下面12BSから下方に突出する略円柱状部材であって、補助保持部13の底部13Bから下方に圧力流体を噴出する導出路16Bを有する構成でもよい。この場合、補助保持部13は、底部13Bの周囲を覆うとともに、流体(空気)の流入口13Iを形成可能なカバー部材13CVを設けるとよい。
【0054】
つまり、この例における第2導出路16Bは、第1導出路16Aの開口部16AO(いずれも不図示)と連通するが、その経路は補助保持部13の軸方向に延び、補助保持部13の底部13Bに開口部を有する。また、底部13Bは先細りのテーパー形状とし、当該テーパー部分を覆うようにカバー部材13CVを設ける。但しカバー部材13CVの上方端部は、底部13Bの周囲に流体(空気)の流入口13Iを形成するように補助保持部13と離間して配置する。これ以外の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0055】
補助保持部13の底部13Bから下方に向かって圧力流体を噴出することにより、補助保持部13の外周面13S付近の空気が流入口13Iからカバー部材13CVの内部に吸引される。これにより、補助保持部13の周囲(物品XA1の穴部H)の内側に負圧が生じるので、物品XA1を確実に保持できる。また、通常の(正常な)保持状態において補助保持部13は、物品XA1のいずれの部位とも非接触であるが、万が一、パッド部12による保持力が不足するなど異常が発生し、パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に物品XA1がずれる(パッド部12の下面12BS(ベース部11の下面11BS)に対して相対的に平行な方向に移動する)ことがあっても、補助保持部13が物品XA1の穴部Hに当接することで、物品XA1がパッド部12から離脱することを防止できる。
【0056】
以上説明したように、本発明の非接触保持装置10は、環状体の物品XA1に対向するパッド部12と補助保持手段13を有する。パッド部12は、物品XA1の面方向に圧力流体を噴出可能に構成される。より詳細には、パッド部12は、物品XA1の面方向において補助保持手段13よりも外側(パッド部12の径方向における外側)の領域に圧力流体の噴出手段(例えば、導出路15)が設けられる。当該噴出手段(導出路15)から高速で圧力流体を噴出させることで物品XA1との間に負圧を生じさせ、これによって当該物品XA1を非接触状態で保持する。
【0057】
また、パッド部12の全体中心12C付近に設けられる補助保持手段13は、物品XA1の保持状態において例えば
図1等に示すように物品XA1の穴部Hに挿通される柱状部材(補助保持部13)であってもよいし、
図5(B)に示す物品XA1の穴部Hに挿通するように噴射される圧力流体(その流れFRそのもの)であってもよい。
【0058】
この補助保持手段13は、物品XA1の通常の(正常な)保持状態において物品XA1とは非接触状態で、該物品XA1の水平方向の移動(パッド部12からのずれ)を規制する。
【0059】
図6は、
図1等に示した非接触保持装置10の概略側断面図(同図(A))と、それによる物品XA1の保持状態を示す概略側断面図(同図(B))である。
【0060】
補助保持手段13は物品XA1の保持状態において当該物品XA1の穴部Hに挿通される。そして補助保持手段13が例えば柱状部材(補助保持部13)の場合、本実施形態では物品XA1の保持状態において、物品XA1の穴部Hと補助保持手段(補助保持部13)の間に圧力流体の流路Rが形成される(そのように補助保持部13が構成される)。
【0061】
すなわち、同図(A)に示すように非接触保持装置10は、第一の噴出手段(例えば、導出路15)と第二の噴出手段(例えば、
図6(A)や
図5(C)の第2導出路16B、
図5(B)の噴出孔16AOなど)を有する。第一の噴出手段(導出路15)は、物品XA1の面方向において補助保持手段13よりも外側(パッド部12および物品XA1の径方向外側)に設けられ、物品XA1とパッド部12の間において、
図6(A)の白抜き矢印Aに示すようにパッド部12の全体中心12Cから外側(パッド部12の径方向外側)に向かって圧力流体を噴出可能に構成される(
図6、
図5参照)。この第一の噴出手段から圧力流体を噴出することにより、パッド部12と物品XA1の間に負圧を生じさせ、物品XA1を吸引保持することができる。つまり第一の噴出手段は、パッド部12と物品XA1の間に負圧を生じさせることが可能な圧力流体を噴出する手段である。
【0062】
一方、第二の噴出手段(第2導出路16B、
図5(B)の噴出孔16AO)は、例えば、第一の噴出手段よりもパッド部12の径方向内側に設けられ、第一の噴出手段とは異なる方向、例えば、
図6(A)の白抜き矢印Bで示すような補助保持手段13に沿う方向に圧力流体を噴出可能に構成される。
図6の例では第二の噴出手段(第2導出路16B)は例えば、補助保持部13(の内部)に設けられるが、
図5(B)に示すようにこの例に限らない。
【0063】
例えば
図6(B)に示す構成の場合、第二の噴出手段(第2導出路16)は物品XA1の穴部Hと補助保持部13の間の領域(クリアランス領域R)に向けて圧力流体を噴出する。つまりこの場合当該クリアランス領域Rは圧力流体の経路となり当該クリアランス領域Rに破線矢印のように補助保持部13の軸方向に沿って気流が生じる。
【0064】
本実施形態の非接触保持装置10は、保持状態において物品XA1の移動を規制するために補助保持手段13を物品XA1の穴部Hに挿通する構成であるが、例えば、物品XA1がバウムクーヘンなどの食品(焼き菓子)等の場合、同じ円環(円盤)形状の硬質の物品(例えば、光ディスクなど)と異なり、物品XA1(穴部H)の形状自体に若干のばらつきが生じている場合もある。そこで、物品XA1の形状にばらつきが生じていても補助保持部13と穴部Hとが干渉しないように両者の間は適宜の(十分な)隙間、すなわちクリアランス領域Rが確保されるように補助保持部13を構成する。
【0065】
一方で、当該クリアランス領域Rが大きすぎると、第一の噴出手段から噴出する圧力流体が当該クリアランス領域Rに流れ込み保持力が低下する問題がある。
【0066】
そこで本実施形態では、第二の噴出手段(例えば導出路16)を設け、吸引保持のための第一の噴出手段とは異なる方向に圧力流体を噴出させることで、第一の噴出手段が穴部H等に流れ込むことを防止し、保持力を高めつつ物品XA1の移動を規制する。
【0067】
具体的には例えば、
図6(A)の白抜き矢印Bで示すように第二の噴出手段から補助保持部13に沿う方向に(例えば、穴部Hとのクリアランス領域Rに向けて)、別途圧力流体を噴出する。これにより、補助保持部13と穴部Hとの適宜の(十分な)隙間を確保しつつも、第一の噴出手段から噴出される圧力流体が物品XA1の穴部H(クリアランス領域R)に流れ込むことを防止し、パッド部12の保持力を高めることができる。
【0068】
また同図(B)の場合はクリアランス領域Rが圧力流体の経路となり、クリアランス領域Rには気流(同図(B)に破線で示す)が生じる層が形成される。これにより(クリアランス領域Rには圧力流体により負圧が生じる場合もあり)、補助保持部13と穴部Hの間を所定距離に維持できる(安定的に補助保持部13を穴部Hの中央付近にセンタリングできる)。
【0069】
ここで、本実施形態のクリアランス領域Rの幅D1(パッド部12の径方向における補助保持手段13と穴部Hの距離)は、例えば、穴部Hの直径の1%~15%程度であり、より好適には3%~10%程度であり、更に好適には、4%~6%程度である。
【0070】
このようにして、例えばパッド部12の移動速度を大きくするような場合でも物品XA1がパッド部12に対して水平方向に移動する(ずれる)ことを回避でき、確実に物品XA1を保持することができる。
【0071】
更に、第二の噴出手段から圧力流体を噴出することにより、補助保持部13の周囲に物品XA1の破片等が付着することを防止できる。
【0072】
図5(B)の例においても、第二の噴出手段(噴出孔16AO)は、例えば、第一の噴出手段よりもパッド部12の径方向内側に設けられ、第一の噴出手段とは異なる方向(補助保持手段13に沿う方向)に圧力流体を噴出可能に構成される。第二の噴出手段によって穴部Hに、補助保持手段13の軸方向に沿う方向の気流(圧力流体の流れFR)を生じさせ、第一の噴出手段から噴出される圧力流体が物品XA1の穴部Hに流れ込むことを防止し、パッド部12の保持力を高めることができる。
【0073】
また、
図5(C)の例では、第二の噴出手段(第2導出路16B)は、例えば、第一の噴出手段よりもパッド部12の径方向内側に設けられ、第一の噴出手段とは異なる方向(補助保持手段13に沿う方向)に圧力流体を噴出可能に構成される。第二の噴出手段によって穴部Hと補助保持手段13の間に補助保持手段13に沿う方向の気流を生じさせ、第一の噴出手段から噴出される圧力流体が物品XA1の穴部Hに流れ込むことを防止し、パッド部12の保持力を高めることができる。
【0074】
本実施形態では、補助保持手段13がいずれの構成の場合も、正常な保持状態において物品XA1のいずれの部位も、非接触保持装置10とは非接触状態で保持される。
【0075】
<実施形態2>
図7~
図9を参照して、本発明の非接触保持装置10の更に他の実施形態について説明する。
【0076】
図7および
図8は、非接触保持装置10の概略を示す図であり、
図7(A)が側面概要図、
図7(B)が保持される物品XA1(同図(A)の下方)側から見たパッド部12の平面(下面)図、
図7(C)は物品XA1を保持している状態の側面概要図である。また、
図8(A)、同図(B)はそれぞれ、
図7(A)および同図(B)の一部拡大図であり、同図(C)は、
図7(B)を概念的に示す平面図である。なお、以下の説明において実施形態1と同一の構成については、その説明を省略する。
【0077】
図7(A)に示すように、ベース部11は例えばロボットアーム(不図示)に取り付け可能に構成され、物品XA1に対向するパッド部12を固定して支持する。パッド部12は、噴出手段を有して物品XA1の面方向に圧力流体を噴出可能に構成され、その全体中心12C付近に補助保持手段13を有する。この例の補助保持手段13は、物品XA1の保持状態ではその穴部Hに挿通可能な、例えば円柱(円筒)状の部材(補助保持部13)である(同図(B),同図(C))。
【0078】
図7(B)に示すように、パッド部12は物品XA1と対向する面側において、その全体中心12Cを囲む(補助保持部13を囲む)ように複数(この例では4個に)分割される。
【0079】
より詳細には、パッド部12は、パッド支持部12BAと、互いに独立した構成(この例では、円柱形状)の複数の分割パッド部12PTにより構成される。パッド支持部12BAは例えば下面視(平面視)において例えば十字状に構成され、ベース部11側の上面と、物品XA1側の下面を有する。なお、パッド支持部12BAの形状はこれに限らず、例えば、円環(円盤)状や、矩形状であってもよい。各分割パッド部12PTは、パッド部12の周方向(補助保持部13の周方向)に沿って互いに等距離で離間して配置され、パッド支持部12BAの下面に固定・支持される(同図(A))。なお、分割パッド部Pの配置は一例であり、複数の分割パッド部12PTは、保持する物品XA1の保持面の形状に合わせて(形状に沿って)配置する。つまりこの例では、保持する物品XA1が円環状であるので4個の分割パッド部12PTもその形状に沿って円環状に配置している。しかし保持する物品XA1が例えば楕円形状の場合には、複数の分割パッド部12PTも物品XA1に沿った楕円形状に配置する。複数の分割パッド部12PTはそれぞれ同一の構成であるので以下、一つの分割パッド部12PTについて説明する。
【0080】
分割パッド部12PTは、パッド支持部12BA側の上面と、物品XA1側の下面を有する。つまりこの例では、同図(A)に示すように、分割パッド部12PTの下面が、物品XA1に対向するパッド部12の端面(パッド部12の下面12BS)に対応する(
図3(A)参照)。
【0081】
分割パッド部12PTは、第一の噴出手段122と第二の噴出手段123を有する。第一の噴出手段122は、物品XA1と分割パッド部12PT(パッド部12)の間において、パッド部Pの面における或る方向に圧力流体を噴出する手段であり、例えば、
図7(A)、同図(B)に白抜き矢印Aで示すようにパッド部12の全体中心12Cから外側(パッド部12の径方向外側)に向かって圧力流体を噴出可能に構成される手段であり、パッド部12と物品XA1の間に負圧を生じさせることが可能な圧力流体を噴出する手段である。以下の説明において、パッド部12の全体中心12C側をパッド部内側PI,パッド部12の外縁部側をパッド部外側POという。また、パッド部12の全体中心12Cからその径方向外側に向かう方向(パッド部内側PIからパッド部外側POに向かう方向)を、パッド部外側方向という。また、パッド部12の径方向外側から全体中心12Cに向かう方向(パッド部外側POからパッド部内側PIに向かう方向)を、パッド部内側方向という。
【0082】
第二の噴出手段123は、第一の噴出手段122とは異なる方向(例えば、第一の噴出領域126とは逆方向)に圧力流体を噴出可能に構成される手段である。この例の第二の噴出手段123は、例えば、物品XA1と分割パッド部12PT(パッド部12)の間において、
図7(A)、同図(B)に白抜き矢印Bで示すようにパッド部内側方向に圧力流体を噴出可能な手段である。また、この場合の第二の噴出手段123は、物品XA1の保持状態において、物品XA1の穴部Hと補助保持手段13の間に気流を生じさせる圧力流体を噴出する手段である。
【0083】
図8(A)および同図(B)は1つの分割パッド部12PTを抜き出して示す図であり、
図8(A)が
図7(A)に対応する側面図、
図8(B)が
図7(B)に対応する下面図(平面図)である。
図8(A)および同図(B)においては、図示右側がパッド部外側POであり、図示左側がパッド部内側PIとする。
【0084】
同図(A)に示すように分割パッド部12PTは例えばその下面12BS側に噴出部121が設けられる。噴出部121は、例えば、分割パッド部中心12PCを頂点として分割パッド部12PTの外縁部に向かって広がる逆すり鉢状の斜面121Aと、分割パッド部中心12PC部分に設けられた例えば円柱状の島状部121Bを有する。分割パッド部12PT内部には導出路124が設けられる。導出路124は例えば、分割パッド部12PTの上面から下面に向かって軸(分割パッド部中心12PC)方向に延在し、途中で島状部121Bの外周面に向かって複数本(この例では8本)に等間隔で分岐(放射状に分岐)する。また、導出路124は分割パッド部12PTの上面において供給ポート25と連通する(
図7(A))。
【0085】
図8(B)に示すように島状部121Bは、その外周面に沿って等間隔で複数の開口部(噴出孔)125(この例では8個の開口部125A~125H)が設けられる。分岐した導出路124はそれぞれ開口部125A~125Hに達する。なお、各開口部125から噴出する圧力流体の条件(流量、流速)は同等であり、複数の分割パッド部12PT間においても同等である。
【0086】
供給ポート25を介して導出路124に供給された圧力流体は、開口部125A~125Hに達すると噴出部121の斜面121Aに沿って、
図8(A)同図(B)に矢印で示すように分割パッド部中心12PCから放射状に噴出する。つまり、分割パッド部12PTは、少なくともパッド部外側方向(
図8(B)のパッド部内側PIからパッド部外側POに向かう方向)に圧力流体を噴出可能であり、またパッド部内側方向(
図8(B)のパッド部外側POからパッド部内側PIに向かう方向)に圧力流体を噴出可能である。
【0087】
より詳細には、図示のように8個の開口部125A~125Hが設けられる場合、
図8(B)の概ね右(パット部外側PO)半分に設けられている、少なくとも開口部125Aを含む開口部125(開口部125Aを中心とした複数の開口部125(例えば開口部125H、125A、125B、及び開口部125G(の一部)、開口部125C(の一部))から噴出される圧力流体は、パッド部外側方向に噴出されるといえる。つまり、この例では、パッド部外側方向に圧力流体を噴出する1または複数の開口部125(例えば開口部125H、125A、125B(及び開口部125G、開口部125Cのそれぞれの一部)が第一の噴出手段122である。そして第一の噴出手段122が設けられる領域を、以下、第一の噴出領域126という。
【0088】
また、
図8(B)の概ね左(パット部内側PI)半分に設けられている、少なくとも開口部125Eを含む一又は複数の開口部125(開口部125Eを中心とした複数の開口部125(例えば開口部125F、125E、125D、及び開口部125G(の一部)、開口部125C(の一部))から噴出される圧力流体は、パット部内側方向に噴出されるといえる。つまり、この例ではパット部内側方向に圧力流体を噴出する1または複数の開口部125(例えば開口部125F、125E、125D(及び開口部125G、開口部125Cのそれぞれの一部)が第二の噴出手段123である。そして第二の噴出手段123が設けられる領域を、以下、第二の噴出領域127という。
【0089】
このような分割パッド部12Pが複数(例えば、4個)補助保持手段13の周囲に等間隔で配置されている場合、同図(C)に示すように、パッド部12の外縁部付近において4個の分割パッド部12Pのそれぞれの第一の噴出領域126が略環状に配置されるといえる。なお、
図8(C)において、各分割パッド部12PTから噴出される圧力流体においてバッド部12Pの周方向に沿って噴出される圧力流体については、パッド部12の径方向内側および径方向外側への影響(作用)が同等と考えられるので記載を省略している(以下の図において同様)。
【0090】
つまり、パッド部12としては、外縁部付近に設けられた第一の噴出手段122によってパッド部外側方向に圧力流体が噴出される。従って、物品XA1の保持状態では、パッド部12の下面12BSに沿って、つまりパッド部12と物品XA1の間に、パッド部外側方向に12Pに圧力流体が流れるので(
図7(C)の実線矢印参照)、パッド部12と物品XA1の間に負圧を生じさせ、物品XA1を吸引保持することが可能となる。
【0091】
また、パッド部12の外縁部よりも内側で補助保持手段13の外側を囲むように4個の分割パッド部12Pのそれぞれの第二の噴出領域127が(略環状に)配置される。つまり、パッド部12としては、補助保持手段13の外周に設けられた第二の噴出手段123によってパッド部内側方向に圧力流体が噴出される。そしてパッド部内側方向に噴出される圧力流体は、
図7(A)に白抜き矢印Bで示すように、補助保持部13の外周面13Sに達し、当該外周面13Sに沿って下方に流れる。
【0092】
従って、物品XA1の保持状態において、補助保持部13に沿って下方に噴出される圧力流体は、
図7(C)に破線矢印で示すように物品XA1の穴部Hと補助保持部13の間のクリアランス領域Rに気流を生じさせる。換言すると、第二の噴出手段123は、流路となるクリアランス領域Rに向かって圧力流体を噴出する。
【0093】
ここで、物品XA1の穴部Hと補助保持部13の間のクリアランス領域Rの距離D1は、既述のとおり、例えば、穴部Hの直径の1%~15%程度であり、より好適には3%~10%程度であり、更に好適には、4%~6%程度である。
【0094】
本実施形態では、円環状の物品XA1の形状に対応させてその周方向に等間隔で点在する複数の分割パッド部12PTを設けることで、実施形態1の場合と比較して噴出する圧力流体の分散を軽減し、圧力流体の噴出を物品XA1の保持面の形状に集中させることができるので物品XA1の保持力を高めることができる。
【0095】
また、補助保持部13の周囲にも気流の層を生じ(あるいは補助保持部13の周囲においても負圧が生じ)させることができるので、穴部Hの略中央に補助保持部13が存在するようにその位置が安定する(穴部Hに対して補助保持部13がセンタリングされる)。これにより補助保持部13は、物品XA1の通常の(正常な)保持状態において物品XA1とは非接触状態で、該物品XA1の水平方向の移動(パッド部12からのずれ)を規制することができる。
【0096】
従って、ロボットアームなどでベース部11を高速で移動させた場合でも物品XA1が離脱、落下する不具合を大幅に低減できる。
【0097】
また、物品XA1は、いずれの部位も非接触保持装置10と接触することなく(すなわち物品XA1の全体に亘って非接触で)保持することができる。
【0098】
さらに、独立した複数の分割パッド部12PTとすることで、分割パッド部12PT間の領域に、例えば、物品XA1の吸着状態などを感知するセンサなどを配置することが可能となり、設計上の自由度を高めることができる。
【0099】
なお、上述した導出路124の形状やパターンは一例であり、分割パッド部12PTの分割パッド部中心12PCから均等に複数の開口部125に圧力流体が噴出する構成であれば、図示の例に限らない。また、開口部125の数も図示の例に限らない。更に、分割パッド部12PTの形状や配置等も一例であり、物品XA1を吸引保持するため或る方向(例えば、パッド部外側方向)に圧力流体を噴出する第一の噴出手段122と、或る方向とは異なる方向(例えば、パッド部内側方向)に圧力流体を噴出する第二の噴出手段123を有する構成であれば、図示の例に限らない。
【0100】
さらに、図示は省略するが、この例においても導出路124に加えて、補助保持部13に導出路16(
図3参照)を設けても良い。導出路16は、供給ポート25を介して供給された圧力流体を補助保持部13から噴出するものであり、第二の噴出手段123(の一部)として機能する。
【0101】
図9を参照して実施形態2の他の例について説明する。同図は分割パッド部12PTの圧力流体の噴出態様の概要を示す、
図8(C)に対応する平面図である。
【0102】
図7および
図8においては、分割パッド部12PTはそれぞれに、分割パッド部中心12PCから放射状(周方向において等間隔(均等))に圧力流体を噴出するよう、導出路124及びその開口部125が設けられている場合、すなわち第一の噴出領域126および第二の噴出領域127のいずれも有している場合を例示した。換言すると、各分割パッド部12Pはパッド部外側POおよびパッド部内側PIのいずれにも圧力流体を噴出する構成である。
【0103】
しかしこれに限らず、パッド部12は、物品XA1の面方向において補助保持手段13よりも外側の領域に圧力流体の噴出手段が設けられ、物品XA1の面方向に圧力流体を噴出可能に構成されるものであればよい。すなわち、各分割パッド部12Pは、第一の噴出領域126および第二の噴出領域127のいずれかを有し、パッド部外側POおよびパッド部内側PIのいずれかに圧力流体を噴出する構成であってもよい。
【0104】
一例を挙げると、同図(A)は、各分割パッド部12Pが第一の噴出領域126(例えば、
図8(B)に示す開口部125H,125A,125Bとそれらに通じる導出路124)のみを有し、パッド部外側POのみに圧力流体を噴出する構成である。
【0105】
同図(B)は、各分割パッド部12Pは、第二の噴出領域127(例えば、
図8(B)に示す開口部125F,125E,125Dとそれらに通じる導出路124)のみを有し、パッド部内側PIのみに圧力流体を噴出する構成である。
【0106】
更に、第一の噴出領域126はパッド部Pの面における一の方向に圧力流体を噴出し、第二の噴出領域127は、第一の噴出領域126とは逆方向に圧力流体を噴出する領域であればよい。つまり、パッド部Pの面における方向は径方向に限らず周方向であってもよい。一例を挙げると、同図(C)において、各分割パッド部12PTは第一の噴出領域126がパッド部12の時計回りの周方向に圧力流体を噴出するように構成され、第二の噴出領域127が、第一の噴出領域126とは逆方向、すなわちパッド部12の反時計回りの周方向に圧力流体を噴出するように構成である。パッド部12を複数の分割パッド部12PTで構成することによりこのような構成も可能となる。
【0107】
なお、例えばパッド支持部12BAは(例えばリンク機構などにより)その形状を変更可能に構成してもよい。また、分割パッド部12PTとの固定位置や固定数を適宜変更可能に構成してもよい。このようにすることで、複数の分割パッド部12PTの配置パターンや配置数を変更でき、その変更の自由度も高めることができる。つまり、保持する物品XA1の形状が変化した場合であっても、その保持面の形状に沿って分割パッド部12Pを個々に(独立して)移動させることで、容易に形状等の変更に対応させることが可能となる。
【0108】
以上、上述の実施形態では、ベース部11とパッド部12を別体の構成として説明したが、両者は一体的に設けられていてもよい。
【0109】
また、実施形態1においてベース部11とパッド部12間に形成される隙間を圧力流体の流通経路(圧力流体の噴出手段、導出路15(第一の噴出手段))とする例を示したが、パッド部12に圧力流体の噴出手段(導出路15(第一の噴出手段))を設けても良い。具体的には例えば、パッド部12に供給ポート25を連通させる構成とし、パッド部12にその内部を貫通してパッド部12の下面12BSから外縁部方向に放射状に噴出する導出路15(第一の噴出手段)を設ける構成であってもよい。その場合パッド部12を収容するベース部11は不要とし、パッド部12の上面にロボットアームとの係合部としてのベース部が設けられる構成であってもよい。
【0110】
また、例えば供給ポート25は、ベース部11の側面から圧力流体を供給するように構成してもよい。
【0111】
補助保持手段(補助保持部)13を、下方向に突出する柱状部材とした場合、径方向の断面形状は円形に限らず、物品XA1との間に負圧を発生させることができれば、楕円形、四角形や五角形などの多角形、凹凸のある外周形状をもつ形などを採用することができる。
【0112】
また、物品XA1は円環状体に限らず、例えば、五角環状体、八角環状体などの角環状体であってもよく、穴部Hの形状も円形に限らず、例えば、五角形状、八角形状などであってもよい。
【0113】
以上、本発明に係る非接触保持装置10は、上述の実施の形態に限らず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0114】
すなわち、上記実施形態において、各構成の位置、大きさ、長さ、形状、材質、向きなどは適宜変更できる。
【符号の説明】
【0115】
10 非接触保持装置
11 ベース部
11AS 上面
11BS 下面
12 パッド部
12P 外縁部
12AS 上面
12BS 下面
13 補助保持手段
13S 外周面
14 凹状部
14A,14B,14C 凹部
15,16,16A,16B 導出路
16AO 開口部
16BO 開口部
12BA パッド支持部
12C 全体中心
12PT 分割パッド部
12P 分割パッド部
12PC 分割パッド部中心
121 噴出部
122 第一の噴出手段
123 第二の噴出手段
124 導出路
125 開口部
126 第一の噴出領域
127 第二の噴出領域
PI パット部内側
PO パット部外側
R クリアランス領域
18 凸部
18S 側面
19 鍔部
20 連通孔
25 供給ポート
27 ボルト
100 非接触保持装置
101 パッド部