(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】エンジンオイル添加剤
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20221212BHJP
C10L 10/04 20060101ALI20221212BHJP
C10M 101/04 20060101ALN20221212BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20221212BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20221212BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20221212BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20221212BHJP
C10N 10/06 20060101ALN20221212BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20221212BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
C10M169/04
C10L10/04
C10M101/04
C10M159/24
C10N40:25
C10N20:00 Z
C10N10:12
C10N10:06
C10N10:04
C10N30:00 Z
(21)【出願番号】P 2020145571
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2022-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520332863
【氏名又は名称】丸山化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】松浦 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山下 修平
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-503194(JP,A)
【文献】特開2005-264066(JP,A)
【文献】特開2009-102486(JP,A)
【文献】特開平10-053780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0207638(US,A1)
【文献】特開2006-016618(JP,A)
【文献】米国特許第05505867(US,A)
【文献】特表2001-525011(JP,A)
【文献】特開2011-016898(JP,A)
【文献】特開平02-153994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C10L10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油系エステルをベースオイルとする
ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まり防止用エンジンオイル添加剤であって、エンジンオイル添加剤全量に対して、硫酸灰分が、0.76~1.20質量%で
あり、前記エンジンオイル添加剤の全塩基価は、14.5~18.0 mgKOH/gであって、前記エンジンオイル添加剤は、過塩基性カルシウムスルホネートを含むことを特徴とする
ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まり防止用エンジンオイル添加剤。
【請求項2】
さらに、クロム、アルミニウム、バリウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む
請求項1記載のエンジンオイル添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンオイル添加剤を、エンジンオイルに添加する工程を含む、ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法。
【請求項4】
さらに燃料添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする
請求項3記載の方法。
【請求項5】
さらにDPF再生促進剤を添加する工程を含むことを特徴とする
請求項3又は4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンオイル添加剤、及び当該エンジンオイル添加剤を用いたディーゼル排気微粒子フィルター(Diesel Particulate Filter。以下では、DPFともいう。)の詰まりを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が高まり、ディーゼル車から排出される粒子状物質(Particulate Matter。以下では、PMともいう。)をいかに低減できるかが大きな課題となっている。このような状況下、世界的な排出ガス規制強化が実施されており、ディーゼルエンジンにおいては排気微粒子(捕集)フィルター(DPF)の使用が急速に拡大している。DPFは、約99%のPMを捕集することが可能であるといわれており、捕集されたPMは二酸化炭素として排出されている。
【0003】
エンジンオイルには添加剤としてカルシウムなどの金属成分が含まれており、これらが再生時にDPF内にアッシュとして残存する。すなわち、PM中には、再生により処理することができないアッシュ、例えば、硫酸カルシウムや硝酸カルシウムなどが含まれている。DPFの再生方法として、例えば、フィルタ材に捕捉された殆どの成分が可燃物質であることから、当該成分をDPFフィルタ材自身に内蔵された電気ヒータによる加熱、またはバーナ装置によってエンジン排ガス自体の温度を可燃物質の燃焼温度まで昇温した排ガスをDPFに通すことによってDPFに捕捉された成分を焼却してフィルタ部分を再生する方法がある。
【0004】
かかる従来の再生方法では、フィルタ材が焼損したりフィルタ材にクラックが発生する等により、DPFの機能を長期間維持することが困難であった。このようなことから、エンジンを停止した状態において、エンジンからDPFまでの通常の排ガス経路とは別に、DPF上流に前記捕捉された可燃物質を焼却処理した焼却ガスを含む熱風がエンジンを経由せず大気へ放出可能とする焼却ガスを含む熱風の放出経路を設けて、前記捕捉された可燃物質を燃焼するために必要且つ充分な温度を有する熱風をDPFに対して下流より上流方向に向けて流通させるDPFの再生方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1を含め従来技術においては、残存するアッシュを根本的に排除するものではなく、アッシュが生じる毎に、DPFの再生を繰り返し行う必要がある。このように繰り返し行う必要があるDPFの再生には、高額なメンテナンスコストが掛かるという問題点も有している。また、DPFの詰まりは、多額なフィルターの修理交換・作動中の停止(手動再生)・燃費悪化・周辺機器の故障を引き起こしているのが現状である。したがって、残存するアッシュを根本的に排除できれば、再生回数も低減可能となり、ひいては、再生によるフィルタ材の焼損、クラックなどを極力低減することが可能となる。しかるに、DPFの詰まりそのものを防止しようとする技術についてこれまで知られていない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、DPFの詰まりを極力防止し得るエンジンオイル添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者は、エンジンオイル添加剤について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0009】
すなわち、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まり防止用エンジンオイル添加剤は、植物油系エステルをベースオイルとするディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まり防止用エンジンオイル添加剤であって、エンジンオイル添加剤全量に対して、硫酸灰分が、0.76~1.20質量%であり、前記エンジンオイル添加剤の全塩基価は、14.5~18.0 mgKOH/gであって、前記エンジンオイル添加剤は、過塩基性カルシウムスルホネートを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のエンジンオイル添加剤の好ましい実施態様において、さらに、クロム、アルミニウム、バリウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法は、本発明のエンジンオイル添加剤を、エンジンオイルに添加する工程を含む、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法の好ましい実施態様において、さらに燃料添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法の好ましい実施態様において、さらにDPF再生促進剤を添加する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンオイル添加剤によれば、DPFの目詰まりを低減することができるという有利な効果を奏する。
【0016】
本発明のエンジンオイル添加剤によれば、金属最表面に有機化学吸着膜を精製し、境界摩擦係数を低減するという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様におけるエンジンオイル添加剤を適用した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエンジンオイル添加剤は、植物油系エステルをベースオイルとするエンジンオイル添加剤であって、エンジンオイル添加剤全量に対して、硫酸灰分が、0.76~1.20質量%であることを特徴とする。硫酸灰分を、0.76~1.20質量%としたのは、洗浄分散性を向上させて、ひいては、エンジン燃焼室へのオイル消費を減らすという観点からである。硫酸灰分は、塩基価を高める成分に含まれる金属成分量などによって決定することが可能である。すなわち、本発明者らによれば、PMの成分は主として、煤とオイルアッシュで構成されており、煤については、後述するDPF再生促進剤により取り除くことが可能であることが判明しており、さらに、オイルアッシュについては、オイルが排気行程に混入しなければDPFが詰まらないことが分かってきている。すなわち、オイル消費量=DPF詰まりということが言える。本発明のエンジンオイル添加剤により、エンジン燃焼室のオイル消費を極力低減することが可能であり、ひいては、DPF詰まりを防止することが可能となる。本発明のエンジンオイル添加剤は、上述の洗浄分散性の他、揮発性に優れている性質を有することができる。なお、オイル添加剤には、通常、清浄分散剤の他、酸化防止剤、摩耗防止剤、極圧剤、錆止め剤、粘度指数向上剤、消泡剤、流動点降下剤などを挙げることができる。本発明の添加剤は、これらの他のオイル添加剤が含まれているエンジンオイルに、加えて使用することも可能である。本発明のオイル添加剤の添加により、清浄分散性能を強化することが可能である。なお、トラックなどのディーゼルエンジンオイルの場合、DH-2規格があり、硫酸灰分は1±0.1(=0.9~1.1)mass%の範囲内とされているため、本願発明の添加剤を使用する場合には、当該条件を満たす範囲内で、適切な値を適宜設定することができる。また、硫酸灰分は、カルシウムやマグネシウムなど金属系清浄剤に含まれているものとすることができる。下記の全塩基価を高めるための金属成分を増やすことにより、硫酸灰分の範囲を0.76~1.20に調整することが可能となる。
【0019】
本発明において、植物油系エステルをベースオイルとすることができる。すなわち、エステル系オイルの内、植物油系エステルを他のエステルと比較して、多く含むことができる。基油として、鉱油、PAO、ポリブテンなどの炭化水素系基油と、植物油、PAGなどの含酸素系基油と、アルキルベンゼン、ポリフェニルエーテルなどの芳香族系基油に分けることができるが、本発明は、この内、植物油系エステルを使用することができる。植物油は鉱油に比較して、蒸発しにくい性質を有している。エステルは、一般に、酸とアルコールとの反応生成物として定義されるが、数千種類の異なるエステルが商業的に広範な用途に製造されている。多数の市販の酸とアルコールがあるため、エステルの分子設計において多様性がある。本発明においては、植物油系エステルをベースオイルとする限り、これらのエステルも含むことができる。本発明のエンジンオイル添加剤は、独自開発のエステルをベースオイルとした添加剤であり、蒸発性が低いエステルを基油とする添加剤で、混合したオイルの蒸発性を低下させることが可能である。また、優れた粘度指数向上剤を加えることにより、高温粘度を高め混合オイルの蒸発性を抑制することも可能である。
【0020】
また、本発明のエンジンオイル添加剤の好ましい実施態様において、前記エンジンオイル添加剤の全塩基価は、塩基価を高めて酸中和性能を強化するという観点から、14.5~18.0mgKOH/gであることを特徴とする。全塩基価の範囲が、14.5~18.0mgKOH/gとしたのは、塩基価を高めることで酸中和性能を強化することができるが、塩基価を高めるために添加する金属系成分が18.0mgKOH/g以上となると、結果として硫酸灰分量が増えすぎてアッシュを増やす原因となりうる虞があるためである。DH-2規格のエンジンオイルでは全塩基価が5.5以上と規定されている。本発明のエンジンオイル添加剤は、塩基価を高めて酸中和性能を強化することが可能である。すなわち、清浄剤を強化することで酸中和性を強化し、オイルのロングライフ化することが可能である。
【0021】
また、本発明のエンジンオイル添加剤の好ましい実施態様において、スラッジやカーボンデポジット等のエンジン内への付着を防止し、清浄分散性、酸中和性を高めるという観点から、さらに、クロム、アルミニウム、バリウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。本発明においては、この他、カーボンデポジットのエンジン内の付着を防ぐために、中性/過塩基性金属(Ba,Ca,Mg)スルホネート、過塩基性金属(Ba,Ca,Mg)フェネート、過塩基性金属(Ca,Mg)サリシレートなどを併用することも可能である。このように、本発明のエンジンオイル添加剤は、塩基価を高めると同時にカルシウム系の金属成分のため硫酸灰分(アッシュ)も増加させている点が特徴となっている。本発明において、明確なメカニズムは不明であるが、おそらく、本発明のエンジンオイル添加剤によって、アッシュ(硫酸灰分)の量は計算上増えるものの、エンジン内部で金属表面に吸着することから、燃焼・排気行程へ排出される量は多くないと推測される。そのため、本発明のエンジンオイル添加剤によれば、DPFの目詰まりを低減することができる結果となる。さらに、本発明のエンジンオイル添加剤を10%混合したエンジンオイルが、本発明のエンジンオイル添加剤を添加しないオイルに比べて蒸発率が低下されることができ、ひいてはDPFに入るエンジンオイル量を抑制する効果を有する。過塩基性カルシウムスルホネートは、界面活性剤であるカルシウムスルホネートと中和剤である炭酸カルシウム粒子から構成されており、カルシウムスルホネートは、潤滑油の劣化物が不溶性スラッジとなることを抑制するために、炭酸カルシウム粒子は、基油の酸化等により生成する有機酸などの酸成分を中和するために、それぞれ基油に添加することができる。また、過塩基性カルシウムスルホネートではスラッジが発生しないことから,カルシウムスルホネート中に含まれる無機の炭酸塩分はスラッジ抑制に大きく影響していると考えられる。
【0022】
このように本発明のエンジンオイル添加剤によれば、植物油系をベースオイルとしているため、蒸発しにくいオイルであり、ひいては、オイル消費が少なくPM低減に効果があることが後述する実施例により判明した。また、高温での粘度が高いオイルほど燃焼室に飛散しにくくオイル消費が低減され、PMは少なくなる傾向があり、本発明には、粘度指数向上剤を含んでも良い。粘度指数向上剤としては、特に限定されず、粘度指数を向上できれば、常法により、市販の物を使用可能である。この場合、添加剤を混合したオイルは高温粘度が高くなることから、PM低減に効果を有することになる。
【0023】
なお、オイル添加剤には、その他、酸化防止剤、粘度指数向上剤、消泡剤、流動点降下剤などが挙げられるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明以外の添加剤を本発明と併用することも可能である。また、エンジンオイルの種類として、植物油、鉱物油、合成油、上記油の混成油を挙げることができるが、本発明のエンジンオイル添加剤は、いずれのベースオイルにも適用可能である。
【0024】
次に、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法について説明すれば、以下の通りである。すなわち、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法は、上述した本発明のエンジンオイル添加剤を、エンジンオイルに添加する工程を含む、ことを特徴とする。本発明のエンジンオイル添加剤のエンジンオイルへの添加量については、特に限定されず、所望により適宜設定することが可能である。例えば、本発明のエンジンオイル添加剤のエンジンオイルへの添加量としては、好ましくは、5~15%、より好ましくは、8~12%混合することが可能である。エンジンオイル添加剤については、上述した本発明のエンジンオイル添加剤の説明をそのまま参照することが可能である。エステル系の添加剤としての効果を発揮するためには、5%未満の添加ではエステルの特徴である極性の効果を発揮することができない虞があり、15%以上の場合には、含まれる粘度指数向上剤等によって適用されるエンジンオイルの粘度上限を超える虞があるためである。
【0025】
また、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法の好ましい実施態様において、さらに燃料添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする。本発明において、燃料添加剤は、空の(または空に近い)燃料タンクに投入し混合することで、燃料と一緒に燃料ラインからインジェクターを経て燃焼室に添加することができる。必ずしも空のタンクに投入する必要はないが、空の燃料タンクに投入することにより、添加剤を先に入れてから燃料を入れることが可能となり、燃料タンク内で良く撹拌されて、燃料に均等に添加剤を混合することができるという利点を有する。なお、エンジンオイルの場合は、オイルポンプによって循環、撹拌されることができる。当該過程において、燃料添加剤は、インジェクターに付着するカーボン等の堆積物を洗浄し、付着を防止することが可能となる。すなわち、本発明において、燃料添加剤は、煤とオイルアッシュ混入の要因になるインジェクターのワーキングコンデイションを維持することが可能となる。本発明において、インジェクターのワーキングコンデイションを維持することが可能であれば、用いる燃料添加剤は特に限定されない。例えば、燃料添加剤としては、製品名FT-902(米国JBケミカル社製)等を使用することができる。
【0026】
また、本発明において、燃料添加剤の添加量としては、特に限定されないが、好ましくは、燃料全体の約0.5%(0.3~0.9%)を添加することができる。添加剤に着火性を良くするための成分や、摩耗防止剤、低温流動性向上剤等が含まれており、1.0%以上の添加は燃焼効率を低下させる虞がある。
【0027】
また、本発明のディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止する方法の好ましい実施態様において、さらにDPF再生促進剤を添加する工程を含むことを特徴とする。本発明において、DPF再生促進剤を燃料タンクに添加してDPF内の煤やカーボン(SUTE)などを除去することが可能となる。本発明において、DPF内の煤やカーボン(SUTE)などを除去することが可能であれば、DPF再生促進剤は特に限定されない。例えば、DPF再生促進剤としては、製品名DPF再生促進剤(英、インフィニアム社)等を使用することができる。
【0028】
また、本発明において、DPF再生促進剤の添加量としては、特に限定されないが、添加量は、燃料100~200Lから1本(500ml)等とすることができる。また、添加条件は、例えば、燃料満充填時とすることができる。
【実施例】
【0029】
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0030】
実施例1~2
まず、植物油系エステルをベースオイルとするエンジンオイル添加剤を調整した。植物油系エステルが約50%、粘度指数向上剤が35~40%、その他は各1~5%未満となるように、エンジンオイル添加剤を調整した。調整したエンジンオイル添加剤の具体的な成分表を表1に示す。
【0031】
【0032】
このようにして得られた本発明のエンジンオイル添加剤を、エンジンオイルに10%混合して使用することで、以下のような効果が得られた。
1)超潤滑性 ⇔ 摩擦係数は一般潤滑油の1/2以下
2)極圧潤滑効果 ⇔ 超微粒子高分子構造+粘弾性・極圧性に優れた強力油膜
3)清浄分散性 ⇔ カーボン・スラッジをナノレベルに分解、金属面に付着させない
4)摩耗防止性 ⇔ 超潤滑性+極圧潤滑効果+清浄分散性が摩耗を防止
5)低揮発性 ⇔ 蒸発損失は石油系オイルの約1/2+強力油膜
6)密封作用 ⇔ 粘弾性・極圧性に優れた強力油膜+低揮発性
8)熱安定性 ⇔ 発火点240+流動点 -30℃+高粘度指数 249
9)粘度安定性 ⇔ 高粘度指数249+発火点240℃+流動点 -30℃
(平均値で表記)
10) 高温酸化安定性 ⇔ 熱安定性+高全塩基価16.0(過塩素酸法・mgKOH/g)
【0033】
実施例3
次に、本発明のエンジンオイル添加剤を用いて、ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止することが可能か否かを調べた。その結果、ディーゼルエンジンオイルに混合することで、ディーゼルエンジンのDPFを最終的に詰まらせるエンジンオイルの金属成分が、燃焼・排気行程に入り込む量を劇的に減らすことで、DPFの長寿命化に貢献できることが判明した。
【0034】
実施例4
次に、本発明のエンジンオイル添加剤以外に、燃料添加剤及びDPF再生促進剤を用いて、ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止することが可能か否かを調べた。燃料添加剤としては、製品名FT-902(米国JBケミカル社製)を、DPF再生促進剤としては、製品名DPF再生促進剤(英、インフィニアム社)を、それぞれ用いた。
【0035】
燃料添加剤を用いた場合、DPF再生促進剤を用いた場合、及びこれらを両方とも用いた場合について、ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止することが可能か否かを調べた。
【0036】
図1は、本発明の一実施態様におけるエンジンオイル添加剤を適用した場合の一例を示す図である。
図1において、1はインジェクター正常化を示し、燃料添加剤を燃料タンクに投入し混合することで、燃料と一緒に燃料ラインからインジェクターを経て燃焼室に添加する様子を示している。当該過程において、燃料添加剤は、インジェクターに付着するカーボン等の堆積物を洗浄し、付着を防止することが可能となる。また、
図1中、2は本発明のエンジンオイル添加剤の使用によりDPF詰まりが解消されたことを示す。
図1中、3は完全燃焼している様子を、4はエンジンオイルを、それぞれ示す。
【0037】
本発明においては、エンジンオイルに本発明のエンジンオイル添加剤を添加することにより、上述のような効果を得ることが可能となるが、本発明のエンジンオイル添加剤と、燃料添加剤及びDPF再生促進剤とを併用することにより、さらに、ディーゼル排気微粒子フィルター(DPF)の詰まりを防止することが可能となることが判明した。
【0038】
本発明において、PMの成分は、煤とオイルアッシュであるが、煤は、DPF再生促進剤(例えば、シェルとエクソンの共同開発したFBC)で取り切れることが判明した。また、残りのオイルアッシュについては、オイルが排気工程に混入しなければDPFは詰まらない、すなわち、オイル消費量=DPF詰まりと予想することができ、実際に、本発明のエンジンオイル添加剤により、洗浄分散性と揮発性が群を抜いており殆どオイル消費せず、DPFは詰まらないことが判明した。
【0039】
さらに、煤とオイルアッシュ混入の要因になるインジェクターは燃料添加剤(FT-902)によりワーキングコンデイションを維持できることも判明した。
【0040】
このように、本発明によれば、DPFの詰まり及び周辺機器(EGR・インジェクター・エアードライヤー・ターボ・SCR)の故障を回避することが可能であり、長年の業界の悩み事が一つ解決され、業界の非常に大きな利益となることが判明した。すなわち、現在DPFによる不具合にユーザーは、悩まされており、DPFの詰まりは、多額なフィルターの修理交換・作動中の停止(手動再生)・燃費悪化・周辺機器の故障が深刻さが増しているところ、当該課題を解決し、本発明においては、DPF詰まりの根本治療ともいえることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
DPFの詰まりを防止可能であり、広範な技術分野において適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 インジェクター正常化
2 DPF詰まり解消
3 完全燃焼
4 エンジンオイル