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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】環境の空間プロファイルの推定
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/931 20200101AFI20221212BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20221212BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20221212BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S17/89
H04B10/071
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020511278
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 AU2018050901
(87)【国際公開番号】W WO2019036766
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】2017903440
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518090546
【氏名又は名称】バラハ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリッカセリル,シビー
(72)【発明者】
【氏名】ボンディー,フェデリコ コラルテ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506927(JP,A)
【文献】特開平08-285942(JP,A)
【文献】特表2014-505861(JP,A)
【文献】特開2011-085610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199621(US,A1)
【文献】特開2015-103164(JP,A)
【文献】特開2005-181193(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G02F 1/00 - 1/125
1/21 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステムであって、
当該システムは、
前記環境の第1部分の空間プロファイルを推定する空間プロファイルの推定部である第1のユニットと、
前記環境の第2部分の空間プロファイルを推定する空間プロファイルの推定部である第2のユニットと、
を備え、
前記第2のユニットは、
送出光を供給するように構成された光源と、
前記送出光を、1つ又はそれ以上の方向に沿って前記環境内に差し向けるように構成されたビームディレクタであって、前記差し向けられる光には、前記1つ又はそれ以上の方向の内の少なくとも1つの方向において到達可能な前記第1のユニットによって受信される送出通信情報が付与される、ビームディレクタと、
入来光を検出するように構成された光検出器であって、前記入来光は前記環境によって反射された前記送出光の少なくとも一部分に対応する、光検出器と、
を含み、
前記検出された光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、前記1つ又はそれ以上の送出方向に関連付けられる前記環境の前記第2部分の前記空間プロファイルの推定のための距離情報を含み、
前記送出通信情報は、前記第1のユニットにて受信して、前記第1のユニットの空間プロファイリング範囲を効果的に拡張する空間プロファイリング情報を含む、
システム。
【請求項2】
前記送出光は、前記送出光を符号化するための最大長ベースのシーケンス(MLS:maximum-length-based sequence)を含み、前記光源は、前記通信情報を前記MLS上の帯域内周波数において符号化するための符号化器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記送出光は、前記送出光を符号化するための最大長ベースのシーケンス(MLS)を含み、前記光源は、前記通信情報を前記MLS上の帯域外周波数において符号化するための符号化器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ビームディレクタは、拡大光学系に自由空間結合された分散素子を備える、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記推定された空間プロファイルに基づいて、前記1つ又はそれ以上の方向の内の少なくとも1つを決定するためのプロセッサをさらに含む、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記推定された空間プロファイル内の認識可能物体プロファイルに基づいて、指向性通信を促進するための1つ又はそれ以上の選択される方向を決定するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又はそれ以上の方向の内の前記少なくとも1つは、同報通信を促進するために前記1つ又はそれ以上の方向の全てを含む、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のユニットは通信送信器に結合され、前記光検出器は、前記通信送信器から、入来通信情報を付与された光を受信するための第2の通信受信器を含む、請求項1~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは第1の車両内に配置され、前記第1の車両は、道路車両又は鉄道車両であり、前記第1のユニットは、第2の道路車両若しくは第2の鉄道車両内にそれぞれ、又は、路側ユニット若しくは鉄路側ユニット内にそれぞれ、のいずれかで配置される、請求項1~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルで、かつ、前記1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルのそれぞれに対応する前記1つ又はそれ以上の方向で、前記送出光を供給するように構成された、請求項1~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
環境の空間プロファイルの推定を促進する方法であって、
光を差し向けるビームディレクタに送出光を供給するステップと、
前記ビームディレクタによって、前記送出光を、前記環境内に1つ又はそれ以上の方向に沿って差し向けるステップであって、前記差し向けられる光には、前記1つ又はそれ以上の方向の内の少なくとも1つにおいて到達可能な第1の通信受信器によって受信される送出通信情報が付与される、ステップと、
前記環境によって反射された前記送出光の少なくとも一部分に対応する入来光を検出するステップと、
を含み、
前記検出された光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、前記1つ又はそれ以上の送出方向に関連付けられる前記環境の前記空間プロファイルの推定のための距離情報を含み、
前記送出通信情報は、空間プロファイリング情報を含
前記送出光を供給するプロセス、前記送出光を差し向けるプロセス、及び前記入来光を検出するプロセスは、第1のユニットによって実行され、前記方法は、
さらに、前記送出光を供給するプロセス、前記送出光を差し向けるプロセス、及び前記入来光を検出するプロセスを、前記第1のユニットの前記環境内に配置された第2のユニットにおいて実行するステップと、
前記第2のユニットから前記第1のユニットへ、前記第2のユニットによる検出に基づく情報を通信するステップと、
前記通信された情報を、前記第1のユニットの空間プロファイリング範囲を効果的に拡張するように、利用するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項12】
前記第1の通信受信器に差し向けられる更なる送出通信情報が付与された光に関して1つ又はそれ以上の選択された方向を決定するステップと、
前記1つ又はそれ以上の選択された方向に沿って更なる送出光を前記環境内に差し向けるステップであって、前記差し向けられる更なる光には、前記第1の通信受信器によって受信される更なる送出通信情報が付与される、ステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ビームディレクタは、拡大光学系に自由空間結合された分散素子を備える、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更なる環境の空間プロファイルリング情報を含む送出通信情報が付与される更なる入来光を検出するステップと、
前記環境及び前記更なる環境の空間プロファイルの推定を決定すべく、前記距離情報及び前記空間プロファイリング情報を処理するステップと、
をさらに含む、請求項11~13の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステム及び方法に関する。より具体的には、本発明は、自由空間光通信を促進すると同時に、光学手段による環境の空間プロファイルの推定を促進することに関する。
【背景技術】
【0002】
空間プロファイリングは、所望の視野から眺められる環境のマッピングを指す。視野内の各々の点又はピクセルは、環境の表現を形成するように距離に関連付けられる。空間プロファイルは環境内の物体及び/又は障害物を識別し、それにより仕事の自動操作を促進するのに有用であり得る。
【0003】
空間プロファイリングの1つの技術は、光を環境内に特定の方向に送るステップと、その方向からの、例えば、環境内の反射表面によって反射される、いずれかの反射光を検出するステップとを含む。反射光は、反射表面までの距離を決定するための関連情報を運ぶ。特定の方向及び距離の組み合わせは、環境の表現の中の点又はピクセルを形成する。上記のステップは、表現の他の点又はピクセルを形成するように、複数の異なる方向に対して繰り返すことができ、それにより所望の視野内の環境の空間プロファイルの推定を促進する。
【0004】
本明細書においては、どのような従来技術に対する参照も、この従来技術がいかなる権限においても一般共通知識の部分を形成すること、又はこの従来技術が、当業者により、従来技術の他の部分に関連する及び/又は組み合わせられると理解され、見なされると合理的に予期される可能性があること、の承認又はいかなる形での示唆ではなく、また、そのように取られるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様により、環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステムであって、
送出光を供給するように構成された光源と、
送出光を1つ又はそれ以上の方向に沿って環境内に差し向けるように構成されたビームディレクタであって、差し向けられる光には1つ又はそれ以上の方向のうちの少なくとも1つにおいて到達可能な第1の通信受信器によって受信される送出通信情報が付与される、ビームディレクタと、
入来光を検出するように構成された光検出器であって、入来光は環境によって反射された送出光の少なくとも一部分に対応する、光検出器と、
を備え、
検出された光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、1つ又はそれ以上の送出方向に関連付けられる環境の空間プロファイルの推定のための距離情報を含む、
システムが提供される。
【0006】
幾つかの実施形態において、送出光は、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルにおいて、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルのそれぞれに対応する1つ又はそれ以上の方向に、供給される。
【0007】
幾つかの実施形態において、送出光は、送出光を符号化するための最大長ベースのシーケンス(MLS、maximum-length-based sequence)を含む。光源は、通信情報をMLS上の帯域内周波数において符号化するための符号化器を含むことができる。代替的に、光源は、通信情報をMLS上の帯域外周波数において符号化するための符号化器を含むことができる。
【0008】
幾つかの実施形態において、送出光はバーカーコード(Barker code)を含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、送出光は1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルにおいて、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルのそれぞれに対応する1つ又はそれ以上の方向に、供給される。
【0010】
幾つかの実施形態において、システムは、推定された空間プロファイルに基づいて、1つ又はそれ以上の方向のうちの少なくとも1つを決定するためのプロセッサをさらに含む。プロセッサは、推定された空間プロファイル内の認識可能物体プロファイルに基づいて、指向性通信を促進するように1つ又はそれ以上の選択された方向を決定するように構成される。
【0011】
幾つかの実施形態において、ビームディレクタは、拡大光学系に自由空間結合された分散素子を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、1つ又はそれ以上の方向の内の少なくとも1つは、同報通信を促進するために、1つ又はそれ以上の方向の全てを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、第1の通信受信器が通信送信器に結合され、光検出器は、通信送信器から入来通信情報を付与された光を受信する、第2の通信受信器を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、本システムは道路車両内に配置され、第1の通信受信器及び/又は通信送信器が路側ユニット内に配置される。
【0015】
幾つかの実施形態において、本システムは第1の道路車両内に配置され、第1の通信受信器及び/又は通信送信器が第2の道路車両内に配置される。
【0016】
幾つかの実施形態において、本システムは鉄道車両内に配置され、第1の通信受信器及び/又は通信送信器が鉄路側ユニット内に配置される。
【0017】
幾つかの実施形態において、本システムは第1の鉄道車両内に配置され、第1の通信受信器及び/又は通信送信器が第2の鉄道車両内に配置される。
【0018】
本開示の第2の態様により、環境の空間プロファイルの推定を促進するための方法であって、
送出光を供給するステップと、
送出光を1つ又はそれ以上の方向に沿って環境内に差し向けるステップであって、差し向けられる光には1つ又はそれ以上の方向の内の少なくとも1つにおいて到達可能な、第1の通信受信器によって受信される送出通信情報が付与される、ステップと、
環境によって反射された送出光の少なくとも一部分に対応する入来光を検出するステップと、
を含み、
検出される光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、1つ又はそれ以上の送出方向に関連付けられる環境の空間プロファイルの推定のための距離情報を含む、
方法が提供される。
【0019】
幾つかの実施形態において、送出光は1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルにおいて、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルのそれぞれに対応する1つ又はそれ以上の方向に、供給される。
【0020】
幾つかの実施形態において、本方法は、
第1の通信受信器へ差し向けられるさらに別の送出通信情報を付与された光の1つ又はそれ以上の選択された方向を決定するステップと、
さらに別の送出光を1つ又はそれ以上の選択された方向に沿って環境内に差し向けるステップと、
をさらに含み、
さらに別の差し向けられる光には第1の通信受信器によって受信される別の送出通信情報を付与される。
【0021】
幾つかの実施形態において、前段に記載された方法の一実施形態を各々が実行する少なくとも2つのユニットが存在し、本方法は、1つのユニットから、そのユニットによる検出に基づく情報を別のユニットへ通信するステップと、その通信情報を、他のユニットの空間プロファイリング範囲を効果的に広げるように利用するステップと、をさらに含む。
【0022】
本開示の第3の態様により、通信受信器が内部に配置される環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステムから差し向けられる、通信情報が付与される光を受信する通信受信器が提供される。
【0023】
幾つかの実施形態において、通信受信器は、システムによって認識可能な、認識可能物体プロファイルをさらに含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、通信受信器は、閾値視野より大きい視野を有する。
【0025】
幾つかの実施形態において、通信受信器は、調節可能視野を有する。
【0026】
本開示の第4の態様により、複数の送信器及び複数の受信器を備える通信ネットワークが提供され、ここで、複数の送信器は各々、送出光を供給するように構成された光源と、送出光を1つ又はそれ以上の方向に沿って環境内に差し向けるように構成されたビームディレクタとを備え、差し向けられる光には送出通信情報が付与され、複数の受信器は、前記送信器の内の少なくとも1つから差し向けられた光を受信し、ネットワークは、異なる物理的位置に第1の前記送信器及び第1の送信器と通信する第1の前記受信器を備える少なくとも2つの静止ユニットと、第2の前記受信器及び第2の前記送信器を備え、通信ネットワーク内で、アドホック通信ノードを提供する少なくとも1つの可動ユニットと、を備える。
【0027】
幾つかの実施形態において、少なくとも2つの静止ユニットの内の少なくとも1つ及び少なくとも1つの可動ユニットは、そのユニットの周りの環境の空間プロファイリング情報を収集し、空間プロファイリング情報を別のユニットに通信するように構成される。
【0028】
ユニットの各々は、本明細書で開示される環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステムの何れかの実施形態の特徴を有することができる。
【0029】
本開示のさらに別の態様、及び前段に記載された態様のさらに別の実施形態は、例として与えられた、添付の図面に関連する以下の説明から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステムの一配置を示す。
図2】通信受信器及び通信送信器を含む環境の中の、図1のシステムを示す。
図3】環境の空間プロファイルの推定を促進する方法の概要を示す。
図4】本開示のユースケースシナリオを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で開示されるのは、環境の空間プロファイルの推定を、光検出及び測距(LiDAR:light detection and ranging)に基づく技術に基づいて、促進するためのシステム及び方法である。「光」は、以下では、遠赤外線、赤外線、可視光線及び紫外線を含む、光学周波数を有する電磁放射を含む。一般に、LiDARは、環境内へ光を送ること、及び次に環境によって反射された光を検出することを含む。光が往復するのに要する時間、及びそれ故に、視野内の反射表面の距離を決定することによって、環境の空間プロファイルの推定を形成することができる。一配置において、本開示は、一次元にわたり、例えば、垂直方向に沿って、光を差し向けることに基づいて、空間プロファイル推定を促進する。別の配置において、一次元に差し向けられた光を別の次元、例えば、水平方向に沿って、さらに差し向けることにより、本開示は、2次元において光を差し向けることに基づいて、空間プロファイル推定を促進する。
【0032】
本開示の開示者(単数又は複数)は、空間プロファイリングされる環境の一部分が光受信器を含む場合、通信目的の情報を運ぶために送信光を付加的に使用することができることを認識している。図4に示されるように、送信光400A、400B、400Cが可動ユニット(例えば、道路車両402又は鉄道車両(図示せず))から生じる交通の文脈において、光受信器を別の可動ユニット(例えば、別の道路車両404又は鉄道車両(図示せず))又は静止ユニット(例えば、路側ユニット、例えば、交通信号灯406、ビルディング408又は鉄道信号ユニット(図示せず))の上に配置することができる。別の可動ユニットとの通信は、アドホックな及びポイントツー-ポイントのベースで交通安全性を向上させる(例えば、互いの衝突を避ける)ことができる。この種の通信は、可動ユニットの可能的に急速に変化する相対的運動に敏感な、遅延の小さい通信を必要とする。他方で、静止ユニットによる通信は、位置関係ベースの情報を提供するため(例えば、周囲のユニットに前方の危険を警告するため、又は交通データを回収するため)、或いは、より広域のネットワーク(例えば、インターネット)への情報のダウンロード又はアップロードを可能にするためとすることができる。
【0033】
複数のユニット(例えば、402、404、406及び408)を接続して、通信ネットワークを形成し、拡張し、又はリルートすることができる。例えば、静止ユニットをビルディングの屋上に(408等)配置して通信ノードを形成することができ、他方、可動ユニット(402及び404等)は、通信ネットワークに帯域幅又は容量を付加するためのアドホック通信ノードとして作用することができる。非自由空間光通信(即ち、光ファイバー通信)と比べると、自由空間光通信は、光ファイバ内よりも自由空間(又は空気)内の光のより高速度のために、より低い遅延を有する。別の例として、一つのユニット(例えば、404)の空間プロファイリング範囲は、本開示の自由空間通信技術を介して、別のユニット(例えば、404)から、付加的な空間プロファイリング情報(例えば、光400Aによって運ばれる)を受信することによって拡張することができ、逆も成り立つ。従って、2つのユニットは、空間プロファイリング情報を共用し、それらの個々の範囲を拡張することができる。
【0034】
図1に示される一般的な形態において、本開示システム100は、送出光を供給するように構成された光源102、送出光120を1つ又はそれ以上の方向に沿って環境110内に差し向けるように構成されたビームディレクタ103、及び、入来光130を検出するように構成された光検出器104を含み、この入来光は、環境110によって反射された送出光120の少なくとも一部分に対応する。検出される光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、1つ又はそれ以上の送出方向に関連付けられる環境110の空間プロファイルの推定のための距離情報を含む。ビームディレクタ103は、光源102及び光検出器104に光ファイバで結合される拡大光学系103Aを含むことができる。ビームディレクタ103は、拡大光学系103Aに自由空間結合される分散素子103Bを付加的に含むことができる。本開示システム100は、送出光路125と入来光路135との少なくとも一部分が共用されるように、循環要素106を含むことができる。
【0035】
当業者であれば、依拠する適切な特徴は送出光の形態に依存することを認識するであろう。送出光がパルスの形態である場合、適切な特徴は、パルスのピーク又は中心のラウンドトリップ時間を含むことができる。送出光が変調波形の形態である場合、適切な特徴は、入来光の位相シフト又は位相遅延を含むことができる。送出光が符号化されたパルス又は変調の形態である場合、適切な特徴は、入来光と符号とのクロス相関を含むことができる。
【0036】
差し向けられる光には、送出通信情報が付与される。例えば、通信情報は変調器、例えば強度変調器又は位相変調器、によって光に付与することができる。図2に示されるように、本開示システム100からの送出通信情報は、1つ又はそれ以上の方向のうちの少なくとも1つにおいて到達可能な通信受信器202によって受信されることになる。交通の文脈において、送出通信情報が可動ユニット(例えば、道路又は鉄道車両)から生成される場合、通信受信器を別の可動ユニット(例えば、別の道路又は鉄道車両)或いは静止ユニット(例えば、路側ユニット又は鉄道信号ユニット)の上に配置することができる。別の可動ユニットとの通信は、交通安全性を向上させるため(例えば、互いの衝突を避けるため)とすることができ、他方、静止ユニットとの通信は、位置関係ベースの情報を提供するため(例えば、周囲のユニットに前方の危険を警告するため、又は交通データを回収するため)とすることができる。幾つかの実施形態において、本開示システム100は、距離情報及び/又は通信情報などの情報を処理するためのプロセッサ105を含む。当業者であれば、「プロセッサ」に対する言及は、単一ユニットより多くのプロセッサによる、又は分散処理による情報処理を含むことを意図するものであることを認識するであろう。
【0037】
幾つかの配置において、通信受信器202は、通信受信器202によって受信される送出通信情報の受取りに応答して、敏感な通信情報を送信するための通信送信器204に動作可能に結合される。通信受信器202及び通信送信器204は一緒に単一ユニットとして通信送受信器とすることができる。代替的に、通信受信器202及び通信送信器204は分離される。
【0038】
一配置において、送出光は、送出光を符号化するための最大長ベースのシーケンス(MLS)を含む。例えば、MLSは一群のバーカーコードを含む。プロセッサは、距離情報を運ぶ符号化された入来光をMLSに基づいて認証するように構成することができる。例えば、プロセッサは入来光を、送出光中に使用されたMLSのローカルコピーと交差相関させて、入来光が認証されているかどうかを決定することができる。相関が高い(例えば、閾値信号レベルにおける又はそれより高い相関信号を生じる)場合、入来光が認証される。さもなければ即ち相関が低い(例えば、閾値信号レベルより低い相関信号を生じる)場合、入来光はなりすましによって生じた可能性があり、認証されない。一配置において、MLSの帯域幅は凡そ10MHzと凡そ1GHzとの間である。別の配置において、MLSの帯域幅は凡そ50MHzと凡そ200MHzとの間である。さらに別の配置において、MLSの帯域幅は凡そ100MHzである。一配置において、光源102は、MLS上の1つ又はそれ以上の帯域内周波数において通信情報を符号化する符号化器(例えば、強度変調器及び/又は位相変調器)を含む。この配置においては、MLS自体が、通信受信器202に通信される符号化された情報を表す。符号化された情報の帯域幅は、それ故に、MLSの帯域幅(例えば、凡そ10MHzと凡そ1GHzとの間)に類似する。一例において、MLSは、低及び高強度レベルのような2進シーケンス(即ち2つのレベル)で表すことができる。別の例において、MLSは、2つより多くのレベルで表すことができる。2進の例において、MLSは、符号化される送信のための511ビット長シーケンス(2-1=511)を生成するための、情報の9ビットによってシードされる「MLS9」シーケンスとすることができる。受信器202はMLS9シーケンスを復号して情報の9ビットの推定を再生するように構成することができる。この配置において、送信される情報は暗号化される。この配置は雑音耐性であるが、包括的且つより多くの信号処理を必要とする。通信帯域の使用を改善するために、ひとたびシステム100が、通信受信器202に到達することができる方向を決定する(例えば、環境の第1の走査において)と、システム100は、環境のその後の走査を省略するように構成することができ、通信情報を運ぶ光を、全ての情報が送信されるまで、通信受信器202に差し向けるように構成することができる。
【0039】
代替的な一配置において、光源102は、MLS上の1つ又はそれ以上の帯域外周波数において通信情報を符号化するための符号化器(例えば、強度変調器及び/又は位相変調器)を含む。この配置において、通信受信器202に通信される情報はMLS上に符号化される。それ故に、符号化された情報の帯域幅はMLSの帯域幅より大きい(例えば、凡そ1又は数GHzを超える)。例えば、符号化器は、MLSの振幅又は強度の小さい振幅又は強度揺らぎ(例えば、1%)として通信を符号化することができる。揺らぎの帯域幅はMLS帯域幅には依存しないようにすることができる。この代替的配置のビット速度は、それ故に、凡そ1Gb/s又はそれ以上とすることができる。通信情報を復号するために、通信受信器202は、通信情報を運ぶ帯域外周波数を強調するために、MLSの下層周波数(例えば、1GHz未満)を抑制するためのハイパスフィルターを含むことができる。さらに代替的に、光源102は、MLS上の帯域内及び帯域外周波数の両方において通信情報を符号化するための符号化器(例えば、強度変調器及び/又は位相変調器)を含む。当業者であれば、他の型のシーケンス、例えば、擬ランダム2進シーケンスをMLSの代わりに使用することができることを認識するであろう。さらに、符号化器は、正弦変調を用いることなどにより、通信を非2進及び/又は非デジタル方式で符号化することができる。
【0040】
一配置において、図1に示されるように、送出光は、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルλ...λにおいて、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルλ...λのそれぞれに対応する1つ又はそれ以上の方向に供給される。波長依存の方向性は、意図されない方向から送信及び/又は受信される通信情報を抑制するのに役立つ。この配置において、システム100は固有の方向フィルターを提供する。例えば、システム100を有し、一組の交通信号灯において対応する通信受信器202により停止する車両は、特定の方向(単数又は複数)及びそれ故に特定の波長チャネル(単数又は複数)において対応する通信受信器202と通信する。この例において、車両及び一組の交通信号灯の何れか又は両方は、通信目的のための特定の波長チャネル(単数又は複数)を自動追跡することができ、それ故に、ノイズ又は悪意ある攻撃、或いは通信情報が傍受される機会、を潜在的に減らす。
【0041】
一配置において、通信情報は、送出光が差し向けられる全ての方向に一斉送信することができる。代替的に、通信情報は、方向のうちの1つのみ(即ち、ユニキャスト)又は幾つか(即ち、マルチキャスト)に向けられる光に付与することができる。この代替的配置において、通信情報は、差し向けられる光の差し向けを促進するために、推定される空間プロファイル内の認識可能物体プロファイルに基づいて、1つ又はそれ以上の選択された方向に付与することができる。物体プロファイルは、物体の形状、輪郭、及び/又は反射光強度を含むことができる。例えば、空間プロファイル推定のための連続走査の場合、環境110の第1の走査は、プロセッサ105が形状、輪郭、及び/又は反射強度の認識に基づいて、何れかの通信受信器の存在を決定することを可能にする。第1の操作によって決定された何れかの存在する通信受信器の方向(単数又は複数)に基づいて、本開示システム100の何れかの速度情報(大きさ及び方向)を用いて又は用いずに、プロセッサ105は、第2の及びその後の走査における送出光が存在する通信受信器によって受信される可能性がある方向(単数又は複数)を決定することができる。この選択性は、不要な電力使用量を減らし、代替的に又は付加的に、通信情報が傍受される機会を減らす。
【0042】
一配置において、光検出器104は、通信送信器204から、入来通信情報が付与された光を受信するための通信受信器(図示せず)を含む。この配置は、本開示システム100(例えば、道路車両又は鉄道車両などの可動ユニットの上に配置される)と、環境110内の対応するシステム(例えば、別の可動ユニット或いは路側ユニット又は鉄道信号ユニットなどの静止ユニットの上に配置される)との間の双方向通信を可能にする。当業者であれば、システム100に関するここでの記述は、対応するシステムに等しく当てはまることを認識するであろう。例えば、システム100と同様に、対応するシステムは環境の空間プロファイルの推定を促進するように構成される。そのような推定は、対応するシステムが、システム100からの通信情報の受取りに応答して、敏感な通信情報を運ぶ光をシステム100に達するように差し向けることができる方向を決定することを可能にする。
【0043】
別の態様において、環境の空間プロファイルの推定を促進する方法300が提供される。方法300は、送出光を供給するステップ302と、1つまたはそれ以上の方向に沿って環境内に送出光を差し向けるステップ304であって、差し向けられる光には、1つまたはそれ以上の方向の内の少なくとも1つにおいて到達可能な第1の通信受信器によって受信される送出通信情報が付与される、ステップ304と、入来光を検出するステップ306であって、入来光は環境によって反射された送出光の少なくとも一部分に対応する、ステップ306と、を含み、検出される光に関連付けられる少なくとも1つの特徴は、1つまたはそれ以上の送出方向に関連付けられる環境の空間プロファイルの推定のための距離情報を含む。
【0044】
方法300は、第1の通信受信器に差し向けられる、さらに別の送出通信情報を付与された光の1つまたはそれ以上の選択された方向を決定するステップと、さらに別の送出光を1つまたはそれ以上の選択された方向に沿って環境内に差し向けるステップと、をさらに含み、さらに別の差し向けられる光には、第1の通信受信器によって受信されるさらに別の送出通信情報が付与される。
【0045】
本開示の別の態様において、通信受信器が内部に配置された環境の空間プロファイルの推定を促進するためのシステム100から、通信情報が付与された差し向けられる光を受信する通信受信器202が提供される。通信受信器202は、システム100によって認識可能な、認識可能物体プロファイルを含むことができる。この認識は、システム100から差し向けられた光を通信受信器202に差し向ける助けとなり得る。物体プロファイルは、物体の形状、輪郭、及び/又は反射光強度を含むことができる。物体の反射光強度は、物体にわたる反射光強度の変化を含むことができる。例えば、反射光強度の変化は、バーコード又はQRコード(登録商標)の形におけるような、対比反射率の領域206を含む物体によって達成することができる。この例において、システム100は、環境110の空間プロフィルの推定に関して、対比反射率の領域206によって達成される認識可能な反射光強度を認識するように、構成される。
【0046】
一配置において、通信受信器202は、閾値FOVより大きい視野(FOV、field of view)を有することができる。広いFOVは不十分な効率に関係するが、広いFOVは、通信情報を運ぶ送信光の広い角度又は立体角度における収集を促進する。閾値FOVは、以下の因子の内の1つ又はそれ以上に依存し得る。
1. 閾値FOVは、システム100のFOVに依存し得る。例えば、通信受信器202のFOVは、システム100のFOVより大きい。別の例において、通信受信器202のFOVは、システム100のFOVよりも設定倍数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍)又は凡そ設定倍数だけ大きい。
2. 閾値FOVは、光収集に必要な角度に依存し得る。例えば、一組の交通信号灯は、その一組の交通信号灯において停止している車両から、特定の方向及びそれ故に特定の立体角に角度調整されている可能性がある。例えば、一組の交通信号灯において停止している初めの10台の車両から通信情報を取り込むために、閾値FOVは、少なくとも10台の平均車両長(車両間の距離を無視)離れて、通信情報を運ぶ送信光の収集を可能にすることに基づいて決定される。
3. 閾値FOVは、通信受信器202の最小限受信光強度に依存し得る。例えば、最小限受信光強度がPmin Rx=-20dBmであり、システム100を出発する送信光強度がPTx=+30dBmである場合、FOVは、50dB損失(PTx-Pmin Rx)にも耐えられるように、50dB損失(PTx-Pmin Rx)に寄与するFOVに対応する閾値FOVにより、増加させることができる。
【0047】
一配置において、通信受信器202は、送信光の収集を促進するための光拡散体を含む。光拡散体は、その通信受信器202のFOVを広げるように作用する。
【0048】
一配置において、通信受信器202のFOVは調節可能である。例えば、通信受信器202は、そのFOVを調節するための望遠レンズシステムを含むことができる。その調節は、元のFOVから拡大されたFOVへの拡大とすることができる。別の例において、通信受信器202は、そのFOVを調節するための交換可能レンズを含むことができる。FOVは、閾値FOVに基づいて調節することができ、閾値FOVは時間によって変化し得る。
【0049】
今や本開示の配置が説明されているので、当業者には、少なくとも1つの説明された配置が以下の利点を有することが明白となるはずである。
・ 距離又は測距ニーズのために使用される光エネルギーを同時に通信ニーズのためにも利用することができる。
・ 波長依存の指向性が方向性フィルターを提供し、潜在的にノイズ又は悪意ある攻撃、或いは、通信情報が傍受される機会を減らす。
【0050】
本明細書において開示され定義される本発明は、本文又は図面から示される若しくは明白な、2つ又はそれ以上の個々の特徴の全ての代替的な組合せに広がることを理解されたい。これらの異なる組合せの全ては、本発明の種々の代替的な態様を構成する。
図1
図2
図3
図4