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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】遮断弁及び漏水管理システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/36 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F16K17/36 D
F16K17/36 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021097591
(22)【出願日】2021-06-10
(62)【分割の表示】P 2017122307の分割
【原出願日】2017-06-22
(65)【公開番号】P2021152412
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000155333
【氏名又は名称】株式会社木村技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝映
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-88060(JP,U)
【文献】特開2013-245739(JP,A)
【文献】特開2017-31623(JP,A)
【文献】実開昭61-106670(JP,U)
【文献】実開昭51-120527(JP,U)
【文献】特開平9-242918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00-3/36,17/36
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と接続され、停電時に前記配管内を通る流体の流路を閉じる遮断弁であって、
前記流路の開閉を行う弁体と、
前記弁体に接続され、前記弁体の開閉動作と連動する連動部と、
電力の供給を受け、前記連動部を介して前記弁体を駆動して、前記弁体を開弁状態に保持する駆動部と、
を備えた遮断弁であって、
前記連動部と係合した場合に、前記弁体が閉じる動作を係止する係止部と、
前記係止部が前記連動部と係合した係合状態となるように、又は前記係止部が前記連動部と係合しない非係合状態となるように、前記係止部の位置を制御する係止制御部と、
前記遮断弁が設置された場所の揺れを検出する揺れ検出部と、
前記揺れ検出部の検出結果に応じて前記駆動部への電力の供給を制御する駆動制御部と、
を更に備え、
前記揺れ検出部が、所定値以上の揺れを検出していない場合には、前記係止制御部が前記係止部を係合状態として、前記弁体が閉じる動作を係止し、前記駆動制御部が前記駆動部への電力の供給を停止し、
前記揺れ検出部が、所定値以上の揺れを検出した場合には、前記係止制御部が前記係止部を非係合状態とし、前記駆動制御部が前記駆動部へ電力を供給して開弁状態に保持し、前記電力の供給が停止して前記駆動部が前記弁体を開弁状態に保持しなくなった場合に、前記連動部に接続された錘が落下する力を前記連動部が前記弁体に伝え、前記弁体を下方向以外へ移動させることによって、前記弁体を閉状態とする遮断弁。
【請求項2】
前記弁体が、前記流路と直交する方向に進退動することで、前記流路を開閉するゲート状の部材である請求項1に記載の遮断弁。
【請求項3】
外部の給水源と接続され、前記流体としての給水の流路を開閉する請求項1又は2に記載の遮断弁と、
前記配管からの漏水を検出するセンサと、
前記センサによって漏水を検出した場合に、前記遮断弁を制御して止水させる制御装置と、
を有する漏水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁及び漏水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な地震が発生すると、給水管や排水管が破損し、漏水が発生してしまうことがある。例えば、建物内の給水管や排水管が破損して漏水が発生すると、内装等の損壊や、コンピュータ等の電子機器の故障、エレベータ等の電気設備の損壊を招くことになる。特に、この漏水が、病院内で発生した場合には医療機器の損傷を招き、倉庫内で発生した場合には倉庫内に保管している物品の損壊を招くなど、多大な被害を生じさせることになる。
【0003】
また、建物外で漏水が発生した場合にも、排水の漏えいによる周囲の汚染や、給水管の損傷個所から噴出する漏水によって周囲の土砂が流失して道路の陥没を招く等、甚大な損害の発生が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-31623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、漏水が発生すると、多大な損害を招く恐れがあるため、特許文献1では、漏水を検出するセンサを配置し、漏水を検出した際、直ちに給水弁を閉じることにより、漏水による被害の拡大を防止している。
【0006】
このように、漏水を検出し、給水弁(例えば電動弁)を閉状態に駆動するためには、電力が必要であるが、給水管や排水管が損傷するような大規模な地震が発生した場合には、送電線の切断や、漏電の発生により、停電する可能性が考えられる。しかしながら、特許文献1のシステムでは、停電した場合、漏水を検知することも給水弁を閉状態に駆動することもできないため、漏水を止めることができないという問題点があった。
【0007】
このため、給水弁に、常時閉(NC:ノーマルクローズ)型の電磁弁を用いることが考えられる。これにより、停電していないときには、電磁弁に電力を供給し、電磁弁を開状態に保つことで給水を行い、停電したときには、電磁弁への電力の供給が無くなり非励磁となることで、電磁弁を閉状態とし、給水を停止させる。この場合、給水弁を閉じるための電力を必要としないので、停電が生じた場合でも漏水を停止させることができる。しかし、このような電磁弁は、比較的、小口径の給水管に適用されるものであり、例えば建物の屋上に設置した高置水槽の出口側配管のように、大口径の給水管に適用するのは困難であった。
【0008】
また、電磁弁は、ソレノイドによって弁体を駆動して、開弁状態又は閉弁状態に切り換える構造のため、停電時に全開状態から急に全閉状態へ切り換えることになり、給水管に設けられた場合、ウォーターハンマーを生じさせて、給水管の破損を招くという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、配管内を通る流体の流路を停電時に適切に閉じる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る遮断弁は、
配管と接続され、停電時に前記配管内を通る流体の流路を閉じる遮断弁であって、
前記流路の開閉を行う弁体と、
前記弁体に接続され、前記弁体の開閉動作と連動する連動部と、
電力の供給を受け、前記連動部を介して前記弁体を駆動して、前記弁体を開弁状態に保持する駆動部と、
を備え、
前記電力の供給が停止して前記駆動部が前記弁体を開弁状態に保持しなくなった場合に、前記弁体が自重により落下すること、又は前記連動部に接続された錘の落下により前記連動部を介して前記弁体を移動させることによって、前記弁体を閉状態とする。
【0011】
前記遮断弁は、前記弁体が、前記流路と直交する方向に進退動することで、前記流路を開閉するゲート状の部材であってもよい。
【0012】
前記遮断弁は、前記連動部と係合した場合に、前記弁体が閉じる動作を係止する係止部と、
前記係止部が前記連動部と係合した係合状態となるように、又は前記係止部が前記連動部と係合しない非係合状態となるように、前記係止部の位置を制御する係止制御部と、
前記遮断弁が設置された場所の揺れを検出する揺れ検出部と、
前記揺れ検出部の検出結果に応じて前記駆動部への電力の供給を制御する駆動制御部とを備え、
前記揺れ検出部が、所定値以上の揺れを検出していない場合には、前記係止制御部が前記係止部を係合状態として、前記弁体が閉じる動作を係止し、前記駆動制御部が前記駆動部への電力の供給を停止し、
前記揺れ検出部が、所定値以上の揺れを検出した場合には、前記係止制御部が前記係止部を非係合状態とし、前記駆動制御部が前記駆動部へ電力を供給して開弁状態に保持してもよい。
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る漏水管理システムは、
外部の給水源と接続され、前記流体としての給水の流路を開閉する前記遮断弁と、
前記配管からの漏水を検出するセンサと、
前記センサによって漏水を検出した場合に、前記遮断弁を制御して止水させる制御装置とを有する。
【0014】
なお、上記した課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管内を通る流体の流路を停電時に適切に閉じる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第一の実施形態に係る遮断弁の開弁状態を示す図である。
図2図2は、第一の実施形態に係る遮断弁の閉弁状態を示す図である。
図3図3は、図1のA-A線に沿う断面を示した図である。
図4図4は、変形例1の遮断弁の構成を示す図である。
図5図5は、変形例2の遮断弁の構成を示す図である。
図6図6は、変形例3の遮断弁の構成を示す図である。
図7図7は、変形例4の遮断弁の構成を示す図である。
図8図8は、変形例5に係る遮断弁の開弁状態を示す図である。
図9図9は、変形例5に係る遮断弁の閉弁状態を示す図である。
図10図10は、第二の実施形態に係る遮断弁において、係止部がラックギアを係止している状態を示す図である。
図11図11は、第二の実施形態に係る遮断弁において、係止部がラックギアを係止していない状態を示す図である。
図12図12は、第三の実施形態に係る漏水管理システム全体の構成を説明する図である。
図13図13は、建物内に設けられたトイレの一例を示す図である。
図14図14は、トイレのトイレブース部分を示す斜視図である。
図15図15は、トイレのトイレブース部分を示す断面図である。
図16図16は、トイレの一部を示す平面図である。
図17図17は、漏水センサの構成を示す図である。
図18図18は、漏水センサの電極部分を示す図である。
図19図19は、トイレの機能ブロック図である。
図20図20は、コンピュータの装置構成図の一例である。
図21図21は、漏水検出処理の一例を示す処理フローである。
図22図22は、給水弁動作確認処理の一例を示す処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一の実施形態>
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態は本発明の一例であり、本発明の構成は以下の例には限られない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る遮断弁の開弁状態を示す図、図2は、本実施形態に係る遮断弁の閉弁状態を示す図、図3は、図1のA-A線に沿う断面を示した図である。本実施形態では、図1図3における鉛直方向をy方向とし、このうち重力によって落下する方向を下、その反対を上と称し、鉛直方向と直交する方向を水平方向と称す。また、図1図2における流路の方向をx方向とし、x方向及びy方向と直交する方向をz方向とする。これは、本実施形態を説明するための便宜的な呼称であり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0019】
図1図3に示すように、遮断弁10は、弁箱11や、弁体12、ラックギア13、ピニオンギア14、及びモータ15を備えている。
【0020】
弁箱11は、給水管90と接続されて流路の一部を成し、この流路を仕切るように弁体12を内蔵している。弁箱11は、その内部で板状(ゲート状)の弁体12の上下動を可能とし、弁体12が下部に位置した時に流路を閉じ、弁体12が流路から退避して流路を開けた際に、前記空間11aの上部に位置する。このため弁箱11は、開弁時に弁体12が退避する空間11aの上部を囲うように上方へ突出した上部筐体11bを有している。
【0021】
弁体12は、ほぼ板状(ゲート状)の部材で、流路と直交する平面12a,12bを有し、当該平面12a,12bが流路よりもやや大きい円形状となっている。弁箱11の内壁には、弁体12の辺縁部が嵌る溝(不図示)が上下方向(y方向)に設けられ、弁体12は、この溝に沿って上下動可能になっている。即ち、弁体12は、x方向の流路と直交するy方向に進退動して、流路の開閉を行う。図1に示すように弁体12が上方に位置している場合、給水管90と連通した弁箱11内の流路を通って給水(流体)が下流側へ供給される。また、図2に示すように弁体12が下方に位置している場合、下流側の給水管90と連通する弁箱11内の開口11dを弁体12の下流側の平面12aを塞ぐことで給水の流路を閉じる。
【0022】
ラックギア13は、上下方向に長手で、側面にピニオンギア14と噛合する歯13aを有し、下端に弁体12が接続されている。ピニオンギア14は、モータ15の回転軸15aに取り付けられ、モータの駆動力をラックギア13に伝達し、ラックギア13と共に弁体12を上方へ移動させる。即ち、ラックギア13及びピニオンギア14は、本実施形態における連動部の一形態である。
【0023】
モータ15は、駆動制御部151を介して電力の供給を受けると、回転軸15aの回転駆動を行い、ピニオンギア14を回転させることで、ピニオンギア14と噛合するラックギア13を上方へ移動させ、弁体12を開弁状態に維持する。このとき開弁状態の維持は、例えばラックギア13の上端を不図示のストッパに突き当て、この状態で駆動力をかけ続けることで、図2に示すように開弁状態を維持する。これに限らず、ラックギア13の位置を検出するセンサを設け、この検出結果に基づいてモータ15の駆動力を調整することにより、ラックギア13が所定の高さ(開弁状態となる高さ)に位置するように制御してもよい。
【0024】
駆動制御部151は、商用電源等から電力の供給を受け、当該電力を所定の電圧値に変換して、モータ15へ供給する。なお、モータ15が、商用電源からの電力を変換することなく用いることができる場合には、駆動制御部151を省略してもよい。
【0025】
なお、モータ15への電力の供給が停止され、モータ15による駆動力がラックギア13に働かなくなると、弁体12及びラックギア13は、自重により下降する。ラックギア13が下降する場合には、ラックギア13と噛合しているピニオンギア14も回転することになるが、電力が供給されていないモータ15の回転軸15aは、自由に回転可能となっているため、ピニオンギア14はラックギア13に従動し、ラックギア13の下降を妨げない。
【0026】
本実施形態の遮断弁10は、例えば、建物の屋上に設置した高置水槽の出口側配管のように、大口径の給水管90に接続される。一方、電磁弁のように給水管の開口端に当接する弁体をソレノイドによって流路と同方向に進退動する構成の場合、開弁状態から閉弁状態へ移行する際に、給水管の開口端に対して弁体の当接面が平行に突き当てられるため、ウォータハンマの発生が著しく、大口径の給水管に適用するのは困難である。
【0027】
これに対し、本実施形態の遮断弁10は、給水管90の開口端に当接する弁体12の平面12aが、流路と直交する方向に進退動するため、開弁状態から閉弁状態へ移行する際、弁体12は、流路の径方向の断面積を徐々に狭めながら流路に進出する。このため、本実施形態の遮断弁10は、流路を閉じた際のウォータハンマの発生を抑えられる。なお、給水管90の口径(内径)は、特に限定されるものではないが、例えば50mm以上、或は60mm以上としても良い。更に、給水管90の内径は、60mm以上300mm以下、望ましくは80mm以上300mm以下としても良く、本実施形態では、150mmとしている。
【0028】
上記遮断弁10は、通常時、電力の供給を受けて、モータ15がラックギア13を上方へ駆動することで開弁状態を維持し、給水管90による給水を可能にしている。
【0029】
そして、地震等の災害が生じて停電した場合、遮断弁10は、モータ15の駆動力が働かなくなることにより、ラックギア13及び弁体12が自重によって下降し、給水の流路を閉じる。このように、本実施形態の遮断弁10は、停電により電動の駆動源が利用できない状況であっても、弁体の自重によって給水の流路を閉じることができる。このため、大規模な地震等の災害によって、給水管や排水管が破損して漏水が発生する状況で停電となった場合でも、本実施形態の遮断弁10は、給水の流路を閉じることができるので、漏
水を進行させることがなく、漏水による被害を抑えることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の遮断弁10は、下流側の給水管90の開口端と当接して止水する弁体12の平面12aが、開弁状態から閉弁状態へ移行する際に、給水の流路と直交した方向へ駆動されて流路に進入し、流路と直交する方向の断面における開口を狭めながら流路を閉じるゲート弁のため、流路を閉じた際のウォータハンマの影響を抑えられる。
【0031】
更に、本実施形態の遮断弁10は、停電等により電力の供給が停止した際、弁体12の自重によって流路を閉じる構成のため、遮断弁10を大型化した場合、必然的に弁体12も大きく且つ重くなり、閉弁のために作用する力も大きくなるので、大型化が容易である。
【0032】
また、本実施形態の遮断弁10は、停電等により流路を閉じた後、電力の供給が再開された場合には、モータ15がラックギア13及び弁体12を上方へ移動させるように駆動を行うので、開弁状態となり、手動で遮断弁10をリセットする等の手間がかからない。
【0033】
なお、本実施形態の遮断弁10は、給水管90に接続した例を示したが、これに限らず、排水や雨水など、他の流体を通す配管に接続されるものであってもよい。
【0034】
<変形例1>
図4は、変形例1の遮断弁101の構成を示す図である。本変形例の遮断弁101は、第一の実施形態の遮断弁10と比べて、ラックギア13に錘16を設けて、弁体の移動と連動するようにした構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0035】
図4に示すように、本変形例では、ラックギア13の上端部に錘16を接続しており、停電等によってモータ15の駆動力が働かなくなった場合、弁体12、ラックギア13、及び錘16の重量によって弁体12等が下降し、流路を閉じる。このため、ラックギア13の下降に伴ってピニオンギア14を回転させる際の抵抗や、弁体12が下降する際に受ける水圧の影響などにより、流路を閉じるための力が、弁体12の自重だけでは不足する場合でも、錘16の重量により確実に流路を閉じることができる。なお、錘16の重量は、特に限定されるものではなく、流路を閉じるために必要な力に応じて任意に設定してよい。
【0036】
<変形例2>
図5は、変形例2の遮断弁102の構成を示す図である。本変形例の遮断弁102は、第一の実施形態の遮断弁10と比べて、ラックギア13とピニオンギア14との間に、複数のギアを設けて、ラックギア13の移動量に対するピニオンギア14の回転量が任意の値となるようにギア比を設定した構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0037】
図5に示すように、本変形例では、ラックギア13とピニオンギア14との間に、ギア17A,17Bを設けて、連動部を構成している。ギア17A,17Bは同軸に設けられ、ラックギア13と噛合するギア17Aの歯数に対し、ピニオンギア14と噛合するギア17Bの歯数を大きくしており、ラックギア13を上方へ駆動する際のトルクが、第一の実施形態と比べて小さくなるように設定している。このため、比較的小型のモータ15を採用することができる。なお、連動部のギア比は、ラックギア13の駆動に必要なトルクや、閉弁状態から開弁状態とするのにかけられる時間などに応じて設定してよい。このように本変形例によれば、モータ15や連動部といった構成要素の選択の幅が広がり、設計の自由度が向上する。
【0038】
<変形例3>
図6は、変形例3の遮断弁103の構成を示す図である。本変形例の遮断弁103は、変形例2の遮断弁102と比べて、モータ15A、15B及びピニオンギア14A,14Bを複数備えた構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、本変形例では、モータ15A、15B及びピニオンギア14A,14Bを複数設け、ピニオンギア14A,14Bをそれぞれギア17Bと噛合させている。また、駆動制御部152は、モータ15A、15Bに電力を供給して駆動を制御する。例えば、モータ15A、15Bは、閉弁状態から開弁状態へ弁体12を移動させる際に最も駆動力を必要とし、開弁状態を維持するだけなら、弁体12を移動させるときよりも少ない駆動力でもよい。このため、駆動制御部152は、閉弁状態から開弁状態へ弁体12を移動させる際には、2つのモータ15A、15Bを駆動させ、開弁状態を維持する際にはモータ15A、15Bの何れか一方を駆動する。これにより、一つのモータ15A、15Bに求められる駆動力が、比較的小さくてよいため、小型のモータ15A、15Bを採用することができる。これに限らず、両方のモータ15A、15Bが、弁体12を移動させるのに必要な駆動力をもち、一方が故障した場合には、他方を駆動させるように冗長性を備える構成としてもよい。
【0040】
また、駆動制御部152は、開弁状態を維持する際に駆動させるモータ15A、15Bと停止させるモータ15A、15Bとを定期的に交代させるように制御してもよい。これにより、開弁状態を維持する際に、モータ15A、15Bを常に駆動させるのではなく、定期的に一方を休ませることができ、モータ15A、15Bの長寿命化を図ることができる。
【0041】
<変形例4>
図7は、変形例4の遮断弁104の構成を示す図である。本変形例の遮断弁104は、第一の実施形態の遮断弁10と比べて、ダンパ18を設けてラックギア13の下降する速度を抑えるようにした構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0042】
図7に示すように、本変形例では、ラックギア13と並行にダンパ18が設けられ、ラックギア13の側面上部にダンパ18の上端と係合する係合部139が設けられている。係合部139は、ラックギア13が開弁状態から閉弁状態まで下降する際の途中(例えば中央)の位置でダンパ18の上端と係合し、更にラックギア13が下降する際にダンパ18を押し縮める。
【0043】
ダンパ18は、例えばエアダンパ、オイルダンパ等であり、押し縮める際の抵抗により、ラックギア13、即ち弁体12が下降する速度を低下させる。これにより、弁体12及びラックギア13は、開弁状態から、係合部139がダンパ18に係合するまでの間、第一の実施形態と同じ速度で下降し、係合部139がダンパ18を押し縮めながら下降する間は、第一の実施形態よりも遅い速度で下降する。従って本変形例の遮断弁104では、閉弁する際のウォータハンマの影響を更に抑えることができる。
【0044】
<変形例5>
図8は、変形例5に係る遮断弁105の開弁状態を示す図、図9は、変形例5に係る遮断弁105の閉弁状態を示す図である。本変形例の遮断弁105は、変形例1の遮断弁101と比べて、錘16の下降に伴って弁体12を開弁状態から閉弁状態へ駆動する構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度
の説明を省略する。
【0045】
図8図9に示すように、本変形例では、ラックギア13、ピニオンギア14、錘16、リンク131,132、摺動溝133、ロッド134を連動部として備えている。
【0046】
リンク131は、回動軸131Aによってラックギア13に接続され、ラックギア13に対して回動軸131Aを中心に回動可能となっている。リンク131の回動軸131Aと反対側の端部には、摺動ピン131Bが設けられている。摺動ピン131Bは、摺動溝133に嵌められ、摺動溝133に沿って摺動可能になっている。摺動溝133は、連動部を覆う筐体(不図示)等に設けられている。
【0047】
リンク132は、回動軸132Aによってリンク131の中間部に接続され、リンク131に対して回動軸132Aを中心に回動可能となっている。リンク132の回動軸131Aと反対側の端部には、回動軸132Bが設けられている。回動軸132Bは、連動部を覆う筐体(不図示)等に固定されており、リンク132が当該回動軸132Bを中心に回動可能となっている。
【0048】
ロッド134は、一端が摺動ピン131Bと接続され、他端が弁体12と接続され、摺動ピン131Bの摺動に伴って、弁体12を水平に進退動させる。このため、本変形例では、弁体12が進退動する空間11aが水平方向へ長手に形成されており、弁箱11は、第一の実施形態における上部筐体11bに代えて、水平方向へ張り出した横部筐体11cを有している。
【0049】
本変形例の遮断弁105において、モータ15が錘16を上方へ駆動すると、図8に示すように、リンク131の回動軸131Aが引き上げられ、リンク132によってリンク131の下端が流路から離れる方向、即ち図8の矢印135の方向へ回動されるので、摺動ピン131Bが摺動溝133に沿って、矢印135の方向へ移動する。これに伴い摺動ピン131Bに、ロッド134を介して接続された弁体12も流路から離れる方向へ移動され、開弁状態となる。
【0050】
また、遮断弁105において、モータ15への電力の供給が停止されると、錘16を上方に維持する駆動力が働かなくなるため、錘16及びラックギア13が下方へ移動し、図9に示すように、リンク131の回動軸131Aが下げられ、リンク132によってリンク131の下端が流路へ向かう方向、即ち図9の矢印136の方向へ回動されるので、摺動ピン131Bが摺動溝133に沿って、矢印136の方向へ移動する。これに伴い摺動ピン131Bに、ロッド134を介して接続された弁体12も流路に向かって移動され、閉弁状態となる。
【0051】
このように本変形例5の遮断弁10は、弁体12の自重ではなく、錘16が下降する力によって弁体12を駆動し、流路を閉じることができる。このため、弁体12の移動方向を上下方向以外(本例では水平方向)にすることができ、遮断弁105の直上にラックギア13を設けるスペースが確保できない場合でも、遮断弁105を設置することができる。
【0052】
なお、上記第一の実施形態及び変形例1~5では、遮断弁をゲート弁とした例を示したが、これに限らず、遮断弁をバタフライ弁やボール弁としてもよい。この場合、連動部が、ラックギア13を上下させる力をバタフライ弁やボール弁の弁体を開閉する回動軸(以下、開閉軸とも称す)へ伝達することで、当該開閉軸を回動させる構成とし、その他の構成は、第一の実施形態や変形例1~5と同じとする。例えば、図4の変形例1のように錘16をラックギア13に設け、ピニオンギア14の回転を他のギアを介して開閉軸へ伝え
る構成とし、錘16及びラックギア13をモータ15で上方へ駆動した際、このラックギア13の移動に伴うピニオンギア14の回転によって、開閉軸を回転させて開弁状態とする。そして、モータ15への電力の供給が停止されると、錘16を上方に維持する駆動力が働かなくなるため、錘16及びラックギア13が下方へ移動し、このラックギア13の移動に伴うピニオンギア14の回転によって、開閉軸を回転させて閉弁状態とする。
【0053】
<第二の実施形態>
第二の実施形態は、前記第一の実施形態と比べて、ラックギアを係止する係止部と地震を検出する地震検出部とを備えた構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。図10は、第二の実施形態に係る遮断弁20において、係止部がラックギアを係止している状態を示す図、図11は、第二の実施形態に係る遮断弁20において、係止部がラックギアを係止していない状態を示す図である。
【0054】
図10に示すように、本実施形態に係る遮断弁20は、係止部21と地震検出部22を備えている。係止部21は、係止爪211と、係止爪211を回動軸212を中心に回動させる回動部213とを有する。係止爪211は、先端部がラックギア13側に屈曲した鉤状の部材である。回動部213は、連動部を覆う筐体(不図示)に設置されており、当該筐体が弁箱11に対して固設されているため、回動部213は、弁箱11に対する位置が固定されている。
【0055】
地震検出部22は、遮断弁20が設置された場所の揺れを検出する揺れ検出部であり、例えば、地震計や振動センサなど、所定以上の揺れを検出するセンサや、他の装置から地震の発生を示す情報、例えば緊急地震速報を受信する受信部であってもよい。地震検出部22は、例えば、所定値以上の振動を検出した場合に地震が発生したと検出する。また、地震検出部22は、緊急地震速報や他の地震計からの情報を受信し、所定の震度以上を示す情報または緊急地震速報であった場合に地震が発生したと検出する。
【0056】
駆動制御部153は、地震検出部22の検出結果に基づいて係止部21の回動部213を制御し、係止爪211をラックギア13側へ回動させてラックギア13と係合した係合状態とする、又は係止爪211をラックギア13と反対側へ回動させてラックギア13と係合しない非係合状態とする。即ち、本実施形態の駆動制御部153は、係止部21の位置を制御する係止制御部としても機能する。
【0057】
駆動制御部153が、地震検出部22が地震の発生を検出していない、即ち所定値以上の揺れを検出していない場合、モータ15によりラックギア13を上方へ駆動し、開弁状態となる位置としたときに、係止部21の回動部213により係止爪211をラックギア13側へ回動させる。これにより係止部21は、係止爪211の先端がラックギア13の歯の間に挿入され、ラックギア13と係合した係合状態となる。この状態で、駆動制御部153は、モータ15への電力の供給を停止する。即ちモータ15によりラックギア13を上方へ持ち上げる駆動力が働かなくなるが、係止爪211がラックギア13の下降を係止する。従って、地震が発生していないとき(平常時)に、モータ15への電力を供給しなくても開弁状態が維持できる。
【0058】
そして、駆動制御部153は、地震検出部22が地震を検出した場合、モータ15の駆動を開始させると共に、図11に示すように係止部21の回動部213により係止爪211をラックギア13から離れる方向へ回動させ、係止爪211の先端をラックギア13の歯間から退避させて、係止爪211を非係合状態とする。即ち、駆動制御部153は、モータ15の駆動力によって開弁状態を維持するように制御する。このため、地震によって停電し、モータ15への電力が停止した場合には、ラックギア13及び弁体12が下降し
て給水の流路を閉じる。
【0059】
なお、駆動制御部153は、地震の発生を検出してから所定時間経過した場合には、係止部21をラックギア13と係合させ、モータ15への電力の供給を停止させて平常時の制御に戻る。また、駆動制御部153は、地震の発生を検出した後、停電せずに所定時間経過した場合には、平常時の制御に戻り、地震の発生を検出した後、停電した場合には、電力が回復してもモータ15への電力供給を再開せず、閉弁状態を維持してもよい。この場合、漏水が発生していないことを管理者等が確認して、初期化操作、例えばリセット信号の入力を行った場合に、モータ15への電力の供給を再開し、開弁状態で係止部21をラックギア13に係合させ、モータ15への電力の供給を停止させて平常時の制御に戻る。また、遮断弁10が、通信モジュールを有する場合、他の装置、例えば管理者が用いる管理者端末からリセット信号を受信した場合に、平常時の制御に戻るようにしてもよい。
【0060】
このように、本実施形態によれば、地震の発生を検出していない場合、係止部21によって開弁状態が維持されるため、電力の消費が抑えられると共に、モータ15の長寿命化が図れる。
【0061】
そして、地震が発生した場合には、モータ15の駆動力により開弁状態を維持するので、この地震によって停電が発生した場合、弁体12が自重によって下降し、給水の流路を閉じることができる。
【0062】
また、地震の発生を検出していないときに、停電が発生した場合には、係止部21によって開弁状態が維持されたままとなるので、給水の流路は開いた状態が維持される。このため、火災等、地震以外の原因によって停電が発生した場合には、給水の流路を閉じずに、開弁状態を維持できる。即ち、地震の発生の有無に応じて停電時に流路を閉じるか否かを変えることができ、地震が発生していない状況では、給水管や排水管が損傷している可能性が低いため、停電が発生しても開弁状態を維持する。
【0063】
<第三の実施形態>
次に、前記遮断弁を備えた漏水管理システムについて説明する。図12は、第三の実施形態に係る漏水管理システム全体の構成を説明する図である。漏水管理システムは、給水弁63,64や、サーバ2、制御装置6、漏水センサ142eを有し、これらがインターネット等のネットワーク5を介して管理者端末3や通知先サーバ4と接続している。なお、本実施形態で用いる給水弁63,64は、電力の供給が停止した場合に給水の流路を閉じる弁であり、例えば、前記第一の実施形態や第二の実施形態、変形例1~5に係る遮断弁の何れであってもよい。
【0064】
トイレ1は、例えば百貨店等の商業施設や駅等に備えられた公衆が利用するトイレである。図13は、建物50に設けられたトイレ1の一例を示す図である。なお、図13では1つの建物50に設けられたトイレ1を示しているが、本システムが管理するトイレ1は、複数の建物の各々に備えられても良い。また、トイレ1は、トイレ内に設けられたセンサ等によりデータを取得し、例えば所定の間隔でサーバ2に送信する。
【0065】
サーバ2は、トイレ1から情報を収集したり、トイレ1に設けられた機器の設定を変更するための情報を送信したりする。また、管理者端末3は、トイレ1に関するサービスの提供者がシステムに接続するためのコンピュータである。サーバ2が収集したデータは、例えば、管理者端末3によって読み出され、集計されたり、異常がないか検証される。また、トイレ1に設けられた機器の設定を、ネットワーク5を介して変更できるようにしてもよい。例えば、管理者端末3からサーバ2へ設定の変更を指示する情報を登録しておき、所定のタイミングでサーバ2からトイレ1へ変更を反映させるための情報を送信する。
【0066】
また、通知先サーバ4は、トイレ1において異常が検知された場合にその旨を通知する宛先のコンピュータである。トイレ1において所定の状態が検知された場合、その都度トイレ1からサーバ2へ情報を送信し、サーバ2が例えば電子メールを通知先サーバ4へ送信する。なお、サーバ2、管理者端末3及び通知先サーバ4は、それぞれ1つに限らず複数設けられてもよい。
【0067】
図14は、トイレ1のトイレブース部分を示す斜視図、図15は、トイレ1のトイレブース部分を示す断面図、図16は、トイレ1の一部を示す平面図である。トイレ1は、建物50の複数階に設置され、各階のトイレ1へ水を供給する給水管61や、各階のトイレ1からの排水を排出する排水管62が配管スペース51に配設されている。給水管61は、外部の給水源と接続され、配管スペース51に設けられた給水縦管611や、給水縦管611から各階のトイレ1へ分岐して設けられた給水枝管612を有している。給水縦管611の上流部には給水弁63が設けられ、各給水枝管612の上流部、即ち給水縦管611から分岐した直後の部分には給水弁64が設けられている。給水弁63,64は、制御装置6によって弁の開閉が制御され、給水及び止水の切り換えが可能である。このため、給水弁64を止水に切り替えることで、当該給水弁64が設けられた階のトイレ1への水の供給を停止し、給水弁63を止水に切り替えることで全てのトイレ1への水の供給を停止することができる。
【0068】
また、排水管62は、外部の排水本管と接続され、配管スペース51に設けられた排水縦管621や、各階のトイレ1に設けられ、排水縦管621と接続された排水枝管622を有している。
【0069】
この配管スペース51下部の床面上には、漏水センサ142eを備えている。これにより、給水縦管611や排水縦管621から水が漏れ、床面上に達した場合に、漏水センサ142eが漏水を検出する。なお、漏水センサ142eの設置位置は、床面上に限らず、給水縦管611や排水縦管621から漏れた水が流れる場所であれば、壁面や、給水縦管611又は排水縦管621の外面であってもよい。また、最下部だけでなく、給水縦管611や排水縦管621の各階に応じた途中部に設置し、各漏水センサ142eの識別情報と配置場所を示す情報とを対応付けて記憶しておき、漏水を検出した漏水センサ142eの識別情報と対応する配置場所を参照することにより、どこで漏水が生じたのかを検出できるようにしてもよい。
【0070】
図15図16に示すように、各階のトイレ1では、便器の設置面となる内壁72をトイレ1の壁面71から所定の距離を隔てて設置し、ライニング(配管スペース)73を形成して、このライニング73内に給水枝管612や排水枝管622を配設している。また、図15の例では、床下にも排水枝管622を通し、床面75上に水が流れると、この水が床面75に設けたスリット状の開口部751から排水細管623を介して排水枝管622へ流れる構成としている。
【0071】
図15図16に示すライニング73内の給水枝管612や排水枝管622の下方の床面上には、漏水センサ142eが備えられている。これにより、給水枝管612や排水枝管622から水が漏れ、床面上に達した場合に、漏水センサ142eが漏水を検出する。なお、漏水センサ142eの設置位置は、床面上に限らず、給水枝管612や排水枝管622から漏れた水が流れる場所であれば、壁面や、給水枝管612又は排水枝管622の外面であってもよい。例えば、漏水センサ142eを給水枝管612及び排水枝管622に巻き付けて設置しても、下面に貼付して設置してもよい。
【0072】
図17は、漏水センサ142eの構成を示す図、図18は、漏水センサ142eの電極
部分を示す図である。漏水センサ142eは、帯状に形成された電極部41と、電極部41に水が触れた際の電気的変化を検出する検出部42と、電極部41と検出部42とを接続するケーブル43とを有している。検出部42は、不図示のコネクタを介して電極部41と接続している。
【0073】
図17では、複数の電極部41を並列に接続し、何れかの電極部41に水が触れた場合に漏水と検出する例を示している。なお、これに限らず、複数の電極部41を直列に接続しても、電極部41を一つのみ接続してもよい。また、検出部42は、複数のコネクタを備え、複数の電極部41が接続されても良い。検出部42は、コネクタ毎に識別情報を割り当て、漏水を検出した場合に、漏水を検出した電極部41の識別情報を制御装置6へ通知してもよい。
【0074】
電極部41は、一対の電極部411が空隙412を間に挟んで電気的に離間して対向配置されている。この一対の電極部411間に水が触れ、例えば一対の電極部411が導通した場合に検出部42が水の存在を検出する。なお、空隙412は、単なる空間に限らず、網やスポンジ等、毛細管現象で水を保持する部材を有してもよい。
【0075】
また、漏水センサは、図17図18に示した電極部411の導通を検知する方式に限らず、漏水を検出し、電気信号として制御装置6に入力可能であれば、他の方式のセンサであっても良い。例えば、便器、洗面台、オストメイト等、給水又は排水の流路となる器具の使用状態と給水管に設けた流量計で検出した流量から漏水を推定しても良い。例えば、当該測定対象の器具が給水を利用していない状態(停止状態)、即ち便器であれば洗浄水を流していない状態のときに、給水管に設けた流量計で水が流れていることが検出された場合、漏水が有ると検出する。また、給水管に流量計を設けることに限らず、排水管に流量計を設け、対象機器が停止状態のときに排水が流れている場合に漏水が有ると検出してもよい。
【0076】
図15図16に示すように床下に排水管62(排水細管623、排水枝管622)を設けた場合、この排水管62に流量計や水位計を設け、この排水管62(排水細管623、排水枝管622)に排水が流れたことを流量計や水位計検出した場合に漏水が有ると検出して制御装置6に入力しても良い。これにより、便器等から床に水が溢れて排水管62(排水細管623、排水枝管622)に流れた場合に、漏水として検出できる。なお、床下に排水管62に設けた流量計や水位計は、床に水を流して掃除する際は漏水の検出をOFFにし、掃除以外で排水が流れて水位や水量を検出した場合に漏水として検出しても良い。
【0077】
制御装置6は、マイクロコントローラやCPU(Central Processing Unit)等のよう
な、プログラムを実行する処理装置であり、本実施の形態に係る処理を制御する。制御装置6は、図示していないデータ記憶部130と接続されており、データの読み出しや書き込みを行うことができる。制御装置6は、本発明における情報収集手段や、給水制御手段、漏水判定手段に相当する。
【0078】
情報収集手段は、トイレ内に設置されたセンサが出力するセンシングデータを取得して記憶部に記憶させる。例えば、情報収集手段は、人感センサが人物を検知した回数又は流量センサが検知した洗浄水の流量をセンシングデータとして取得し、また、トイレのドアの施錠を検知するドアロックセンサ及び便座への着座を検知する着座センサの少なくとも一方からセンシングデータを取得し、記憶部に記憶させる。
【0079】
漏水判定手段は、漏水センサの検出結果に基づいて漏水を判定する。給水制御手段は、漏水の判定結果に基づき、例えば漏水が所定量以上有ると判定された場合に、給水弁を制
御して止水させる。
【0080】
また、制御装置6は、ネットワーク通信部120を備えている。ネットワーク通信部120は、携帯電話回線網又はイントラネット等を介してネットワーク5に接続するためのネットワークアダプタである。例えば、ネットワーク通信部120とサーバ2とは、携帯電話回線の3G(3rd Generation)を利用して、HTTP通信を行う。ネットワーク通信部120は、本発明における通信手段に相当する。ネットワーク通信部120は、漏水の判定結果に基づき、当該漏水の情報を前記ネットワークを介して所定のコンピュータ、本例ではサーバ2に送信し、サーバ2が通知先サーバ4へ漏水の情報を送信する。なお、これに限らず、ネットワーク通信部120が、漏水の情報を管理者端末3や通知先サーバ4へ通知しても良い。
【0081】
トイレ1はトイレブース140を備えている。トイレブース140は、便器等の機器を備える空間であり、例えば個室状に仕切られている。なお、男性用の小便器の周囲の空間を、トイレブース140としてもよい。また、トイレ1は、トイレブース140を複数備えていてもよく、1つの制御装置6が、同一フロアの男性用トイレ、女性用トイレ及び多目的トイレ等、周辺の領域に存在する複数のトイレブース140を制御するようにしてもよい。
【0082】
トイレブース140には、制御部141と、センサ142(例えば、人感センサ142a、流量センサ142b、ドアロックセンサ142c、着座センサ142d及び漏水センサ142e)と、図示していないデータ記憶部143が設けられている。制御部141は、センサ142が検知した情報をデータ記憶部143に記憶させる。データ記憶部143は、本発明における設定記憶部としても働き、データ記憶部143に記憶されている設定に基づいて、トイレブース140に備えられている機器が動作する。例えば、データ記憶部143に記憶されている、便座温度、温水洗浄便座の水勢、水温、ノズル位置又は方向、トイレ用擬音装置の音、芳香剤の種類等の情報に基づいて、便座ヒータ、温水洗浄便座、トイレ用擬音装置、芳香剤拡散装置等が動作する。なお、センサ142として、水位センサ等を備えていてもよい。
【0083】
ここで、人感センサ142aは、赤外線等により人が所定の距離内に近づいたことを検知することができる。また、流量センサ142bは、洗浄水の流量を測定する。流量センサ142bは、例えば、洗浄水の放流に伴い回転する回転翼車の回転数を計数し、当該回転数に基づいて流量を算出する。流量センサ142bは、複数の便器に洗浄水を供給する給水管(給水路)や、各便器に個別に接続された給水管や洗浄水を放流するフラッシュバルブ78等の複数個所に設けられてもよい。また、流量センサ142bは、排水管に設けられ、排水の流量を測定してもよい。ドアロックセンサ142cは、ドアの施錠又は開錠を検知する。着座センサ142dは、例えば便座上に設けられた赤外線センサ等の人感センサ又は便座に設けられた圧力センサであり、トイレの利用者が便座に座ったことを検知する。
【0084】
また、制御部141は、トイレ1の制御装置6と有線又は無線により接続されており、制御部141は、データ記憶部143に記憶されている情報を制御装置6に送信する。トイレブース140の制御部141とトイレ1の制御装置6とは通信ケーブル(例えば、多対多の通信が可能なRS485インターフェイス)、いわゆるLANケーブルのようなツイストペアケーブル、その他の有線ケーブル、無線LANやBluetooth(登録商標)等の
ような無線通信方式により接続することができる。また、各トイレブース140の制御部141には少なくともトイレ1内で一意の識別情報が設定され、制御装置6は任意の制御部141と通信することができる。
【0085】
図19に、トイレ1の機能ブロック図を示す。トイレ1は、制御装置6と、ネットワーク通信部120と、データ記憶部130と、トイレブース140とを有する。制御装置6は、上述した処理装置であり、本実施の形態に係る処理を制御する。また、ネットワーク通信部120は、上述したネットワークアダプタであり、ネットワーク5を介してサーバ2と通信を行う。データ記憶部130は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置であり、センサ142が出力したデータを収集して記憶する。なお、トイレ1は、トイレブース140を複数備えていてもよい。
【0086】
また、トイレブース140は、制御部141と、センサ142と、データ記憶部143とを有する。なお、センサ142を複数備えていてもよい。制御部141は、センサから出力された情報をデータ記憶部143に記憶させ、所定のタイミングで制御装置6に出力する。また、制御部141は、トイレの機器に関する設定情報を制御装置6から受信し、データ記憶部143に記憶させることにより設定を変更する。
【0087】
図20に、コンピュータの装置構成図の一例を示す。サーバ2、制御装置6、管理者端末3及び通知先サーバ4は、図20に示すようなコンピュータである。コンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)1001、主記憶装置1002、補助記憶
装置1003、通信IF(Interface)1004、入出力IF(Interface)1005、ドライブ装置1006、通信バス1007を備えている。CPU1001は、プログラムを実行することにより本実施の形態で説明する処理を行う。主記憶装置1002は、CPU1001が読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、CPUの作業領域を展開したりする。主記憶装置は、具体的には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。補助記憶装置1003は、CPU1001により実行されるプログラムや、本実施の形態で用いる設定情報などを記憶する。補助記憶装置1003は、具体的には、HDDやSSD、フラッシュメモリ等である。通信IF1004は、他のコンピュータ装置との間でデータを送受信する。通信IF1004は、具体的には、有線又は無線のネットワークカード等である。入出力IF1005は、入出力装置と接続され、コンピュータのユーザから入力を受け付けたり、ユーザへ情報を出力したりする。入出力装置は、具体的には、キーボード、マウス、ディスプレイ又はタッチパネル等である。ドライブ装置1006は、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等の記録媒体に記録されたデータを読み出したり、記録媒体にデータを書き込んだりする。以上のような構成要素が、通信バス1007で接続されている。なお、これらの構成要素は複数設けられていてもよいし、一部の構成要素(例えば、ドライブ装置1006)を設けないようにしてもよい。また、入出力装置がコンピュータと一体に構成されていてもよい。
【0088】
<漏水検出処理>
次に、システムが実行する漏水検出処理について説明する。図21は、トイレ1の制御装置6が実行する漏水検出処理の一例を示す処理フローである。制御装置6は図210の漏水検出処理を定期的に或は所定のタイミングで繰り返し実行する。
【0089】
図21の漏水検出処理を開始すると、制御装置6は、先ず、漏水センサ142eの検出結果を取得し(ステップS20)、漏水の有無を判定する(ステップS30)。即ち、給水管61や排水管62から水が漏れて漏水センサ142eに達し、漏水センサ142eが水の存在を検出した場合に、漏水有りと判定する。ここで、漏水有りと判定した場合には(ステップS30、Yes)、ステップS35へ移行する。
【0090】
ステップS35において、制御装置6は、漏水センサ142eの閾値を第二の閾値に変えて検出結果を再度取得する。そして、漏水センサ142eの検出結果が第二の閾値を超
えた場合に、所定量以上の漏水が有ると判定する(ステップS40)。例えば、漏水センサ142eの電極部411間に水が接触して導通し、電極部411間の電気伝導度や抵抗値が第一の閾値を超えた場合に漏水有りと判定し(ステップS30)、第二の閾値を超えた場合に所定量以上の漏水が有ると判定する(ステップS40)。なお、第一の閾値、第二の閾値は、電極部411間の導通の程度を示す値であり、第二の閾値は、第一の閾値とくらべて、導通の程度が高い値、即ち、漏水の量が多く、電極部411間の電流が流れやすい状態を示す値である。各閾値より電気が流れやすい状態となった場合に当該閾値を超えたと判定する。例えば、第二の閾値は、第一の閾値とくらべて、低い抵抗値や、高い電気伝導度である。また、第二の閾値を超えた場合、制御装置6は、第一の閾値を超えてから第二の閾値を超えるまでの時間に基づいて緊急度を求めても良い。例えば、第一の閾値を超えてから第二の閾値を超えるまでの経過時間が短ければ、緊急度が高く、当該経過時間が長ければ緊急度低くなるように、経過時間に応じた緊急度を求める。
【0091】
制御装置6は、漏水センサ142eの検出結果が第二の閾値を超え、所定量以上の漏水が有ると判定した場合(ステップS40、Yes)、給水弁63又は給水弁64への電力の供給を停止し、漏水している箇所の給水を停止する(ステップS50)。ここで、制御装置6は、漏水を検出した漏水センサ142eの設置位置に基づいて漏水した場所を求め、特定の階のトイレ1で漏水を検出した場合には、当該階の給水弁64を止水に切り替える。一方、給水縦管611や排水縦管621の全トイレ1に係る箇所で漏水が発生した場合には、給水弁63を止水に切り替える。
【0092】
なお、ステップS40で所定量以上の漏水が無いと判定した場合(ステップS40、No)、制御装置6は、止水せずにステップS60へ移行する。
【0093】
そして、制御装置6は、漏水の位置や、漏水の量(第2の閾値を超えたか否か)、止水の有無、止水を行った場合に止水した位置、緊急度などを漏水の情報としてサーバ2へ送信する(ステップS60)。なお、サーバ2は、この漏水の情報を管理者端末3や通知先サーバ4へ送信する。
【0094】
また、制御装置6は、ステップS30にて、漏水を検出していない場合、即ち漏水が無いと判定した場合には(ステップS30、No)、漏水を検出していないことを示す情報をサーバ2へ送信して図21の処理を終了する(ステップS70)。
【0095】
このように本実施形態では、漏水が発生した場合でも、この漏水を漏水センサ142eで検出し、給水弁63,64を閉じることで、漏水による被害を抑えることができる。また、これらの情報をサーバ2から、管理者端末3を用いている管理者や通知先サーバ4の担当者へ通知できる。
【0096】
なお、制御装置6は、電力によって動作するので、大規模な地震等によって停電した場合には、図21の処理を実行することができない。しかし、本実施形態では、給水弁63,64として、前記第一の実施形態や第二の実施形態、変形例1~5のように、電力の供給が停止した場合に、弁体又は錘の自重によって閉弁状態となる遮断弁を採用しているので、大規模地震によって給水管や排水管の破損と共に停電が発生した場合であっても、漏水を抑えることができる。即ち、電力が供給されているとき(平常時)には制御装置6が漏水の発生に応じて給水弁63,64を閉じ、的確に漏水による被害を抑え、停電時には給水弁63,64の弁体又は錘の自重によって閉弁することで漏水による被害を抑えることができる。
【0097】
また、制御装置6は、図21に示したように、定期的に、漏水を検出していないこと、又は漏水を検出したことをサーバ2へ通知しているので(ステップS60,S70)、停
電により何れの通知も行われなくなると、異常が発生したこと、即ち停電により給水弁63,64が閉弁した可能性があることをサーバ2が認識できる。
【0098】
また、管理者端末3を用いている管理者、及び通知先サーバ4の担当者は、遠隔地からトイレ1の状況を詳細に把握できる。特に、漏水の発生を直ちに知ることができ、迅速な対応が可能になる。
【0099】
<給水弁動作確認処理>
上記のように、本実施形態では、所定量以上の漏水が生じた場合に給水弁63,64を止水に切り替えるが、給水弁63,64は、長期間動作させないと錆やミネラルが堆積して弁体が固着し、開閉できなくなることがある。給水弁63,64が閉じられない状態になっていると、漏水を検知しても止水に切り替えることができないため、本実施形態では、夜間や休日など、定期的に給水弁63,64の動作を確認する処理を行う。即ち図22の動作を行う。
【0100】
図22の動作を開始すると、制御装置6は、確認対象の給水弁63,64への電力の供給を停止して止水に切り替える(ステップS120)。なお、給水弁63,64は、1つずつ確認対象としてもよいし、並列に接続されている給水弁64を同時に確認対象としてもよい。
【0101】
次に、制御装置6は、確認対象の給水弁63,64が設けられた給水管61に接続されているフラッシュバルブ78を制御して洗浄水を流す動作をさせ(ステップS130)、フラッシュバルブ78の流量計により、洗浄水の流量を検出し(ステップS140)、洗浄水が流れるか否かを判定する(ステップS150)。ここで、洗浄水の流量が所定値以下の場合、即ち洗浄水が流れない状態であれば、正常に止水が行われているので、図22の処理を終了する(ステップS150、No)。一方、洗浄水の流量が所定値以上の場合、即ち洗浄水が流れる状態であれば、正常に止水が行われていないので(ステップS150、Yes)、動作不良であることをサーバ2に送信する(ステップS160)。
【0102】
このように、確認処理を定期的に実行し、給水弁63,64を開閉させることで、錆やミネラルの堆積を抑え、開閉可能な状態を維持することで、漏水の発生時又は停電時に給水弁63,64を閉じることができないというトラブルを防止することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 トイレ
2 サーバ
3 管理者端末
3 変形例
4 通知先サーバ
5 ネットワーク
6 制御装置
11 弁箱
12 弁体
13 ラックギア
13a 歯
14,14A,14B ピニオンギア
15 モータ
151,152,153 駆動制御部
15 モータ
16 錘
17A,17B ギア
18 ダンパ
21 係止部
22 地震検出部
図1
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