(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ジグソーパズルの製造に用いられる粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートとそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221212BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221212BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20221212BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221212BHJP
A63F 9/10 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/34
B32B7/06
C09J7/30
A63F9/10 D
(21)【出願番号】P 2021193900
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2018169067の分割
【原出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2017179147
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503308298
【氏名又は名称】有山 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有山 賢三
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256037(JP,A)
【文献】実開昭63-084335(JP,U)
【文献】特開2005-146458(JP,A)
【文献】特開2003-336182(JP,A)
【文献】特開2009-279829(JP,A)
【文献】特開2013-237846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/50
A63F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再剥離型粘着剤からなる貼着面を一面に設けた樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの貼着面
の上に
形成した共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層
と、該粉末樹脂層の表面に
設けた剥離紙
とからなることを特徴とする
粉末樹脂層付きリタックシート。
【請求項2】
樹脂フィルムの一面に再剥離型粘着剤からなる貼着面を形成する工程、
前記貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層を形成する工程、
該粉末樹脂層の上に仮止めした剥離紙を設ける工程、
を備えることを特徴とする粉末樹脂層付きリタックシートの製造方法。
【請求項3】
再剥離型粘着剤からなる貼着面を一面に設けた樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの貼着面
の上に
形成した共重合ポリアミド樹脂からなる透明樹脂層
と、該透明樹脂層の表面に
設けた剥離紙
とからなることを特徴とする
透明樹脂層付きリタックシート。
【請求項4】
樹脂フィルムの一面に再剥離型粘着剤からなる貼着面を形成する工程、
前記貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層を形成する工程、
該粉末樹脂層の上に剥離紙を設ける工程、
前記粉末樹脂層を前記樹脂フィルムと前記剥離紙とで挟んだ状態で加熱圧着し、前記粉末樹脂層を溶融させて透明樹脂層を得る工程、
を備えることを特徴とする透明樹脂層付きリタックシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジグソーパズルの製造に用いられる粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートとそれらの製造方法に関し、詳細には、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることのできるジグソーパズルの製造に用いられる粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートとそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジグソーパズルは、少なくとも一面に絵柄を付した台紙を縦横に凹凸を設けて切断して複数個のパズルピースを形成し、ばらばらに分離した個々のパズルピースをその各辺の凹凸を合わせながら嵌め込んで台紙の絵柄を完成させるものである。そして、このジグソーパズルには、その台紙の絵柄を完成させるためのパズルである遊戯具としての機能と、完成させた絵柄を額縁やパネル等のホルダに保持して室内を装飾する室内装飾品としての機能を有している。
【0003】
ジグソーパズルのモチーフとしては、独自のモチーフでジグソーパズルゲームを楽しむため、例えば、特許文献1には、無地の平板をジグソーパズル状に切り抜き、これらの切り抜かれた多数のパズルピースを元の形が復元するように組み合せた状態で所望のモチーフを自由に形成してオリジナルジグソーパズルを作成することが開示されている。
【0004】
しかし、オリジナルジグソーパズルの絵柄作成作業において、ジグソーパズルを持ち運ぶ時、小さい衝撃でも簡単に各パズルピースが載置したプレート(底板)から飛び散り、再度嵌め合わせる際には多大な時間と労力を要していた。また、オリジナルジグソーパズルは、嵌め合わせ時の作業を考慮せずに独自モチーフの画像が用いられることが多い。このため、少ない色で表現される空などのパズルピースが多いと、嵌め合わせる際の情報としてはパズルピースの形状しか利用できず、嵌め合わせ作業が非常に困難であった。特に、数百ピース以上のジグソーパズルでは、各パズルピースを一度ばらばらに分離させた場合には、組み立てることができずに放置されたり捨てられるおそれがあった。
【0005】
このため、発明者は、特許文献2に開示されるように、パズルピースの表面に、絵柄画像とともにパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像を形成することによって、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることができるジグソーパズルおよびその製造方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3007219号公報
【文献】特開2017-136152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図20は、特許文献2に開示されたジグソーパズルの製造方法によって作製されたジグソーパズルを示す図である。このジグソーパズル120では、ジグソーパズル120の表面からリタックシート110を剥がして、ジグソーパズル120表面のトナー画像130を見た場合、トナー画像130に紫外線を照射しなくても、光源と目の位置によってトナー画像130に形成した紫外線可視化画像が視認できる場合があった。
【0008】
このため、ジグソーパズルのパズルピースをばらして組み立てようとするユーザにとって、光源の方向によってはパズルピースに形成した位置情報が見えることがあるため、パズルとしての組み立てる際の面白さを損なうという問題があった。また、嵌め合わせた後のジグソーパズルについても、絵柄画像の他に位置情報が見えることがあるため、室内装飾品としての価値の低下を招くという問題があった。
【0009】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることのできるジグソーパズルの製造に用いられる粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートであって、紫外光照射時のみに、パズルピースに形成した位置情報を示す紫外線可視化画像を視認できるようにしたジグソーパズルの製造に用いられる粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートとそれらの製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例1)は、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上にしたパズルピースの表面に、所要の絵柄画像が形成されたジグソーパズルであって、各前記パズルピースの表面に、前記絵柄画像とともに、各前記パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像が形成されており、前記絵柄画像と前記紫外線可視化画像の表面側の前記パズルピースの全面に、透明のオーバーコート層を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例2)は、参考例1のジグソーパズルにおいて、前記紫外線可視化画像は、前記絵柄画像の表面側に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例3)は、参考例1または参考例2のジグソーパズルにおいて、前記ジグソーパズルは、複数の前記パズルピースを内側に位置決めする枠部を有し、該枠部の表面に前記パズルピースの位置情報に対応する座標情報を示す紫外線可視化画像と、該紫外線可視化画像の表面側の前記枠部の全面に透明のオーバーコート層を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例4)は、参考例1から3のいずれか1のジグソーパズルにおいて、前記オーバーコート層の表面に、前記パズルピースの飛び散り防止用の透明樹脂フィルムをさらに有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例5)は、参考例1から4のいずれか1のジグソーパズルにおいて、前記絵柄画像、前記紫外線可視化画像は、レーザプリンタあるいは複写機によって形成されるトナー画像であり、前記オーバーコート層は、レーザプリンタあるいは複写機によって形成されるトナー画像、または、熱によって再転写可能な透明ホットメルト画像であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズル(参考例6)は、参考例1から4のいずれか1のジグソーパズルにおいて、前記絵柄画像、前記紫外線可視化画像、および、前記オーバーコート層は、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明をより良く理解するための参考例(参考例7)は、ジグソーパズルの製造方法であって、吸水性の支持体に形成した水溶層の表面に、所要の絵柄の非反転画像とパズルピースに分割された際の位置情報を示す紫外線可視化画像からなる画像を形成し、該画像の表面を透明なオーバーコート層で被覆したオーバーコート層被覆画像を形成する画像形成工程と、前記オーバーコート層被覆画像の上にリタックシートを貼り付けるリタックシート貼り付け工程と、前記支持体に水を含ませることにより前記水溶層を水で溶かして前記支持体を剥離し、前記オーバーコート層被覆画像を前記リタックシートに転移させる支持体剥離工程と、前記オーバーコート層被覆画像の面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、前記オーバーコート層被覆画像を転移させた前記リタックシートを重ね合わせ、該リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧する転写工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明をより良く理解するための参考例(参考例8)は、ジグソーパズルの製造方法であって、吸水性の支持体に形成した水溶層の表面に、所要の絵柄の非反転画像とパズルピースに分割された際の位置情報を示す紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、前記画像の上に、溶融することによって透明のオーバーコート層となる共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層を貼着面に形成したリタックシートを、前記粉末樹脂層を前記画像に重ね合せた状態で、前記粉末樹脂層を加熱圧着して溶融させつつ、前記支持体の前記画像に貼り付けるリタックシート貼り付け工程と、前記支持体に水を含ませることにより前記水溶層を水で溶かして前記支持体を剥離し、前記画像を前記リタックシートの前記樹脂粉末が溶融したオーバーコート層の上に転移させる支持体剥離工程と、前記画像の面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させた前記リタックシートを重ね合わせ、該リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧する転写工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0018】
本発明をより良く理解するための参考例(参考例9)は、ジグソーパズルの製造方法であって、吸水性の支持体に形成した水溶層の表面に、所要の絵柄の非反転画像とパズルピースに分割された際の位置情報を示す紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、前記画像の上に、透明のオーバーコート層を形成したリタックシートを、前記オーバーコート層を前記画像に対向させた状態で加熱圧着して、前記支持体の前記画像に貼り付けるリタックシート貼り付け工程と、前記支持体に水を含ませることにより前記水溶層を水で溶かして前記支持体を剥離し、前記画像を前記リタックシートの前記樹脂粉末が溶融したオーバーコート層の上に転移させる支持体剥離工程と、前記画像の面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させた前記リタックシートを重ね合わせ、該リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧する転写工程と、を備え、前記オーバーコート層を形成した前記リタックシートは、樹脂フィルムに設けた再剥離型粘着剤の面に共重合ポリアミド粉末樹脂を塗布し、さらに剥離紙を設けたものを加熱圧着して、前記共重合ポリアミド粉末樹脂を溶融させることで透明の前記オーバーコート層としたものであることを特徴とするものである。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、粉末樹脂層付きリタックシートであって、再剥離型粘着剤からなる貼着面を一面に設けた樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの貼着面の上に形成した共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層と、該粉末樹脂層の表面に設けた剥離紙とからなることを特徴とするものである。
【0020】
請求項2の発明は、粉末樹脂層付きリタックシートの製造方法であって、樹脂フィルムの一面に再剥離型粘着剤からなる貼着面を形成する工程、前記貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層を形成する工程、該粉末樹脂層の上に仮止めした剥離紙を設ける工程、を備えることを特徴とするものである。
【0021】
請求項3の発明は、透明樹脂層付きリタックシートであって、再剥離型粘着剤からなる貼着面を一面に設けた樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの貼着面の上に形成した共重合ポリアミド樹脂からなる透明樹脂層と、該透明樹脂層の表面に設けた剥離紙とからなることを特徴とするものである。
【0022】
請求項4の発明は、透明樹脂層付きリタックシートの製造方法であって、樹脂フィルムの一面に再剥離型粘着剤からなる貼着面を形成する工程、前記貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層を形成する工程、該粉末樹脂層の上に剥離紙を設ける工程、前記粉末樹脂層を前記樹脂フィルムと前記剥離紙とで挟んだ状態で加熱圧着し、前記粉末樹脂層を溶融させて透明樹脂層を得る工程、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルによれば、パズルピース表面に形成した位置情報を示す紫外線可視化画像は、パズルピースに紫外光を照射した際にのみ可視化されるため、遊戯具としての機能を損なうことなくパズルピースを嵌め合わせることができ、また、紫外光を照射することによって位置情報を参考にしてパズルピースを簡単に嵌め合せることができる。また、嵌め合わせた後のジグソーパズルについても、装飾品としての機能を損なうことがない。さらに、パズルピースを嵌め合わせる際にも、ユーザはオーバーコート層には触れるが、蛍光物質を含んだ画像に直接触れることがないため、安全な遊戯具として提供できる。また、本発明によれば、ジグソーパズルの製造に用いられる好適な粉末樹脂層付きリタックシートおよび透明樹脂層付きリタックシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルの製造方法に用いる絵柄形成紙の一例の断面図である。
【
図2】本発明をより良く理解するための参考例の一形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
【
図3】
図2の絵柄形成紙にリタックシートを貼り付けた状態を示す断面図である。
【
図4】
図3の絵柄形成紙に形成した非反転画像をリタックシートに転移させた状態を示す図である。
【
図5】ジグソーパズル素材をカットして複数個のパズルピースを作製する工程を示す図である。
【
図6】本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルで用いる無地のジグソーパズルの一例を示す図である。
【
図7】転写工程で、ジグソーパズルと絵柄転写シートとを重ね合わせた際のパズルピースのカット溝凹部と絵柄転写シートとの関係を示す断面図である。
【
図8】転写工程において絵柄転写シートをパズルピースの表面に対して加熱押圧する様子を示す図である。
【
図9】定着工程において絵柄転写シートをパズルピースの表面に対して加熱押圧した際のパズルピースのカット溝凹部とリタックシートとの関係を示す断面図である。
【
図10】定着工程終了後のジグソーパズルの状態を示す平面図である。
【
図11】本発明をより良く理解するための参考例の一形態のジグソーパズルからリタックシートを剥す際の状態を示す図である。
【
図12】本発明をより良く理解するための参考例の一形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。
【
図13】本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルに紫外光を照射した際の図である。
【
図14】本発明をより良く理解するための参考例の他の形態のジグソーパズルの断面図であり、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像を用いた際の断面図である。
【
図15】本発明をより良く理解するための参考例の他の形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
【
図16】本発明をより良く理解するための参考例の他の形態において用いる本発明の
粉末樹脂層付きリタックシート
(透明樹脂層付きリタックシート)の断面図である。
【
図17】
図16に示す本発明の
粉末樹脂層付きリタックシートの一実施形態を示す断面図である。
【
図18】
図16に示す本発明の
透明樹脂層付きリタックシートの
一実施形態を示す断面図である。
【
図19】
図15に示す絵柄形成紙に
図16に示す本発明の
粉末樹脂層付きリタックシート
(透明樹脂層付きリタックシート)を貼り付けた状態を示す断面図である。
【
図20】従来のジグソーパズルの製造方法によって作製されたジグソーパズルを示す図である。
【
図21】ジグソーパズルの表面における反射の影響を説明するための図である。
【
図22】ジグソーパズルの表面における反射の影響を抑制する手段を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルに係る好適な形態について最初に説明し、続けて本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0026】
まず、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルにおける課題の解決のための手段の原理について説明する。
図21は、ジグソーパズルの表面における反射の影響を説明するための図であり、
図22は、ジグソーパズルの表面における反射の影響を抑制する手段を説明するための図である。
【0027】
図21に示すジグソーパズルでは、白紙100の表面に絵柄トナー画像101を形成し、この絵柄トナー画像101の表面に蛍光剤入りのUVトナー画像102が形成されている。この場合、絵柄トナー画像101のみの箇所では白紙100の表面の微小な凹凸や色合いおよびその色の諧調性等による影響を受けやすく、光の照射によって拡散反射を起こす。一方、絵柄トナー画像101の上に形成されたUVトナー画像102は、定着時の加熱によりUVトナー表面が一時的に溶融状態になるので、白紙100の表面の凹凸の影響を受けることなく、その表面がほぼ鏡面状となり、光の照射によって鏡面反射を起こす。このため、光源からの光で、絵柄トナー画像101やUVトナー画像102で吸収されない光は、目視の方向によって拡散反射の箇所と鏡面反射の箇所でその強さが異なり、UVトナー画像102が光沢をもって見えるため、UVトナー画像102が光沢差によって視認可能となると考えられる。
【0028】
これを防止するために、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルでは、パズルピース表面で拡散反射の箇所と鏡面反射の箇所が生じるのを防止している。具体的には、
図22に示すように、白紙100の表面と、絵柄トナー画像101とUVトナー画像102の表面に、透明なオーバーコート層103を設けている。このオーバーコート層103は表面がほぼ平らな鏡面状で光沢がある。光源からの光で、オーバーコート層103を通して、白紙100、絵柄トナー画像101、および、UVトナー画像102で吸収されない光は、オーバーコート層103の表面で鏡面反射を起こすため、目視の方向によって、UVトナー画像102が視認可能となることはなくなる。これは、写真画像の表面フェロ仕上げ加工に類似している。
なお、紫外線可視化画像を白紙100に浸透するような粘度の低いインクで形成した場合は、紫外線可視化画像の表面が拡散反射を起こすため、視認可能となることはなく、絵柄トナー画像101の上に形成したUVトナー画像102で生じるような不都合は生じない。
【0029】
(参考例に係る第1の形態)
以下に、参考例に係る第1の形態として、トナー画像を用いて本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルを作成する方法について説明する。
図1は、本形態のジグソーパズルの製造方法に用いる絵柄形成紙の一例の断面図である。絵柄形成紙1は、支持体2の表面に水溶層3を設けたものである。支持体2は、吸水性のよい材質、例えば、紙、合成紙、ポリビニルアルコール等の水溶性フィルムなどから作製し、水溶層3は、水分を加えることによって溶ける材質、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、デキストリン等の水溶性物質から作製することができる。
【0030】
次に、絵柄形成紙1に画像を形成し、それを貼着対象物である無地のジグソーパズルの台紙表面に貼着する方法について説明する。本形態では、絵柄形成紙1に形成した画像をリタックシート
7に転移し、さらにジグソーパズルの台紙上に転写している。
まず、画像形成工程として、
図2で示すように、例えば、図示しないパーソナルコンピュータによって作成された画像データを、レーザプリンタやMFPを用いて絵柄形成紙1上にトナー画像4を形成する。この場合、絵柄形成紙1に形成する絵柄は反転させる必要はなく、正像である非反転画像を形成する。
【0031】
ここで、本形態では、トナー画像4として形成される画像に特徴を有している。トナー画像4は、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像4aと、この画像4aの表面全面にさらに重ね合せた透明なオーバーコート層4bを有している。紫外線可視化画像は、紫外線や近紫外線を照射すると弱い蛍光によって発光するため見ることができるが、通常の太陽光や電灯の下では見えず、紫外光やブラックライトなどを照射した際に発光して像が現れ視認することができる。また、オーバーコート層4bは光沢を有している。
【0032】
所要の絵柄画像と紫外線可視化画像を重畳した画像4aと、この画像4aにオーバーコート層4bを設けたトナー画像4を形成するためには、例えば、カラートナー像に対応して、透明トナー像をカラートナー像上に重ね合せる透明トナー像形成手段を有する画像形成装置(例えば、特開2002-82508号公報参照。)を用い、透明トナーとして、可視光では見えないが紫外光を当てると発光するUVトナーを用いることによって紫外線可視化画像を重畳して作製することができる。UVトナーは紫外光に反応し、不可視トナーとも呼ばれ、通常の太陽光下では見えない。そして、UVトナーによって形成する画像は、後述するように、パズルピースの位置情報を示す画像であって、予め使用するジグソーパズルの各パズルピースの配置データに基づいて各パズルピースに付与した位置情報データを作成しておき、これを情報処理装置(パソコン)に取り込み、絵柄画像のデータとともに印刷すればよい。
【0033】
さらに、オーバーコート層4bを設けるためには、市販の透明ホットメルト転写紙により、透明ホットメルト材(厚さは10~50μm)4bを
図2で示す状態で、熱転写するか、あるいは、上記の透明トナー画像形成手段を用いることができる。このため、トナー画像形成ユニットとしては、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、透明UVトナー(UV)、および、透明トナー(T)の各色(または無色)の6ユニットを並設して構成すればよい。なお、画像形成装置のトナー画像形成ユニットの数が足りない場合は、例えば、最初に絵柄画像を絵柄形成紙1に形成し、その後、画像形成装置のユニットを入れ替えて、透明UVトナー(UV)による紫外線可視化画像と、透明トナー(T)によるオーバーコート層4bを形成してもよい。透明トナー(T)はクリアトナーとも呼ばれる。以降の
参考例に係る第1の形態の説明では、トナー画像4は、上記で説明したように、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像4aの表面全面にさらに透明なオーバーコート層4bを形成した画像であるとして説明する。
【0034】
次に、
図3で示すように、リタックシート貼り付け工程として、絵柄形成紙1に形成したトナー画像4の上にリタックシート7を重ね空気を抜きながら、ヘラによる圧着またはラミネータ等の熱ローラによって加熱圧着して貼り付ける。リタックシート7としては、透明な樹脂フィルム5の表面に再剥離型粘着剤6を設けたものを用いることができるが、後述するように.樹脂フィルム5としては熱可塑性に富んだポリ塩化ビニル(PVC)を用いたものが好適である。
【0035】
そして、
図3で示す状態で、支持体剥離工程として、絵柄形成紙1の支持体2にスプレーなどを用いて水を含ませる。これにより、吸水性の支持体2の表面に塗布された水は、支持体2に浸透して水溶層3に達する一方、支持体2の表面から絵柄形成紙1の側面を伝わって水溶層3に側面側からも浸透する。
【0036】
水溶層3は、水分を加えることによって溶ける材質の物質から構成されているため、浸透した水によって溶解する。このため、支持体2がリタックシート7から剥離し、その際、水溶層3上に形成されていたトナー画像4は、リタックシート7の再剥離型粘着剤6に転移する。
【0037】
図4は、
図3の絵柄形成紙に形成した非反転画像をリタックシートに転移させた状態を示す図であり、
図4(A)はその断面図を、また、
図4(B)は
図4(A)をリタックシート側から見た平面図を示す。支持体剥離工程によって、リタックシート7上にトナー画像4が転移した絵柄転写シート10を得ることができる。支持体剥離工程の後は、必要に応じて、絵柄転写シート10に残置している水分や水溶性物質を除去し乾燥させる。
【0038】
次に、絵柄転写シート10のトナー画像4の貼着対象物であるジグソーパズルの台紙を準備する。ジグソーパズルの台紙としては、無地の台紙を型抜きすることにより、各辺に所要形状の凹凸を有するパズルピースを複数個分離形成し、各パズルピースの凹凸を嵌め合わせて平面状にしたジグソーパズルが用いられる。
【0039】
このジグソーパズルの製造方法としては、まず、
図5に断面を示すように、片面に白紙21を貼着したダンボール紙22を2枚、枠部26となる周囲部分のみにホットメルト型接着剤23を設けて、白紙21側が外側になるように貼りあわせたジグソーパズル素材24を作製する。ここで、上側の白紙21を貼着したダンボール紙22が本形態の無地の台紙に相当する。そして、台紙としては、ダンボール紙22にかかわらず、他の紙類のほか、コルク材,木板を用いてもよく、白紙21を設けることも必須ではない。なお、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルで無地とは、表面に絵柄のない状態のものを意味するものであり、和紙やコルクなどの地模様があるものも無地に含まれる。
【0040】
その後、
図5に示すように、このジグソーパズル素材24をカット台31の上面に所定位置を合わせた状態で載置し、カット台31を、上部のパズルピースをカット処理するための刃物台32に向けて、矢印33の方向に上下移動することで、上側の白紙21とダンボール紙22のみを所定形状に型抜きして、パズルピース25と枠部26とに分割する。
【0041】
図6は、このようにして作製された無地のジグソーパズルを示す図であり、
図6(A)に平面図を、
図6(B)に一部断面図を示す。
ジグソーパズル20は、無地の台紙が型抜きされて複数のパズルピース25に分割されている。個々のパズルピース25は各辺に所要形状の凹凸を有し、パズルピース25はバラバラに分離した後でもこれらの凹凸を嵌め合わせることによって平面状にすることができる。また、周辺部は下側のダンボール紙22と接着されて枠部26を形成することになる。下側のダンボール紙22は底板28として、枠部26とともに、分離されたパズルピースを組み合わせる際の作業プレートあるいはホルダとして機能する。また、個々のパズルピース25の相互間およびパズルピース25と枠部26との間には、型抜きによって生じたカット溝凹部27が形成されている。
【0042】
次に、リタックシート7に転移した画像をジグソーパズル20の台紙上に転写する転写工程について説明する。まず、ジグソーパズル20のパズルピース25の表面側に絵柄転写シート10のトナー画像4側が来るように、ジグソーパズル20上に絵柄転写シート10を位置合わせしながら重ね合わせる。
図7は、ジグソーパズル20と絵柄転写シート10とを重ね合わせた状態を示す図であり、この状態では、絵柄転写シート10は平面上であり、トナー画像4は絵柄転写シート10側に保持されたままである。
【0043】
この状態で、絵柄転写シート10をパズルピース25の表面に対して加熱押圧する。加熱押圧の方法としては、例えば、
図8に示すように、濡らした布41を絵柄転写シート10の上に当てて、その上から、アイロン40を用いて絵柄転写シート10に熱と圧力を加える方法を用いることができる。なお、濡らした布41に代えて、軟性シリコンゴム発泡体シートなどを用いてもよい。
【0044】
図9は、定着工程において絵柄転写シート10をパズルピース25の表面に対して加熱押圧した際の、パズルピース25のカット溝凹部27と絵柄転写シート10との関係を示す断面図である。絵柄転写シート10に熱と圧力を加えることにより、熱可塑性に富んだ絵柄転写シート10が熱膨張し、熱膨張の応力によって絵柄転写シート10がパズルピース25のカット溝凹部27の奥部まで入り込もうとして、カット溝凹部27のパターンに沿って皺寄せ状態になる。
【0045】
一方、絵柄転写シート10に保持されているトナー画像4は加熱されてパズルピース25に押圧されるため、トナー画像4はパズルピース25の表面に再融着(再定着)され、絵柄転写シート10からジグソーパズル20へのトナー画像4の融着力の差で転写が行われる。その際、絵柄転写シート10は、パズルピース25のカット溝凹部27の奥部まで入り込もうとするため、絵柄転写シート10に保持されたカット溝凹部27部分のトナー画像4もパズルピース25のカット溝凹部27の入り口部分、すなわちパズルピース25の外周辺のコーナ部分にまで良好に再定着される。
【0046】
このように、熱可塑性に富んだ絵柄転写シート10の樹脂フィルム5は熱によって膨張する材料であって、トナー画像4の再定着温度によっては溶融しない材質のものを用いることによって、カット溝凹部27までトナー画像を転写することができる。このような材料としては、例えばポリ塩化ビニルが好適である。なお、
図9に示す状態において、絵柄転写シート10のトナー画像4のうち、カット溝凹部27部分でパズルピース25に接触していない部分のトナー画像4は、パズルピース25へは転写されず絵柄転写シート10側に残ることになる。
【0047】
上記形態では、絵柄転写シート10を加熱押圧するために、アイロン40を用いて加熱押圧したが、アイロン40に限らず、例えば、絵柄転写シート10を重ね合わせたジグソーパズル20を一対の挟持体で挟み、一定の圧力を加えて加熱押圧するようにしてもよい。この挟持体としては、軟性シリコンゴム発泡体で構成し、少なくとも一方の挟持体に発熱体を設けておくとよい。また、挟持体として一対のローラを用いてもよい。
【0048】
図10は、定着工程終了後のジグソーパズルの状態を示す平面図であり、正像の絵柄を形成したジグソーパズル20の表面に、透明なリタックシート7を有する絵柄転写シート10を貼り付けた状態のジグソーパズル20を得ることができる。以上のようにして得られたジグソーパズル20は、部屋のインテリヤ装飾用品として利用することができ、複数のパズルピース25と枠部26の表面にはリタックシート7が貼り付けられているため、各パズルピース25がバラバラになって飛び散ることがない。また、以上のようにして得られたジグソーパズル20をゲーム用パズルとして用いる場合は、リタックシート7を剥すことによって、各パズルピース25をバラバラに分離することができる。本形態では、リタックシート7は、パズルピースの飛び散り防止用の透明樹脂フィルムとして機能している。
【0049】
図11は、本形態のジグソーパズルからリタックシートを剥す際の状態を示す図であり、
図12は、本形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。ジグソーパズル20のパズルピース25の表面には、転写され再定着したトナー画像4が形成されており、各パズルピース25はカット溝によってバラバラに分離可能な状態になっている。一方、絵柄転写シート10側には、転写工程でパズルピース25の表面に転写されなかったトナー画像4の一部のトナー画像4’が残存している。この残存しているトナー画像4’は、ジグソーパズル20の各パズルピース25の分カット溝部分、すなわち、各パズルピースの凹凸を嵌め合わせて形成されたカット溝部部分に沿った模様となる。
【0050】
このように、ジグソーパズル20からリタックシート7を剥した際に、トナー画像4の一部はリタックシート7側に奪われることになるが、奪われるトナー画像4’はカット溝部分に沿ったトナー画像4であることからその影響は小さい。そして、各パズルピース25の表面の外周辺のコーナ部分にまで良好にトナー画像4が再定着されているため、再度パズルピース25の凹凸を嵌め合わせて絵柄を再現した際も、良好な絵柄を再現することが可能となる。
【0051】
そして、トナー画像4は、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像を重畳した画像の上に、さらに透明なオーバーコート層を有した画像となっている。このため、可視光の下では、紫外線可視化画像は肉眼視することはできないが、ジグソーパズル20に紫外光を照射した際に、紫外線可視化画像として形成したパズルピース25の位置情報を見ることができる。
【0052】
図13は、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルに紫外光を照射した際の図である。紫外光の照射範囲はスポットSとしている。そして、紫外光を照射されたパズルピース25には、各パズルピース25の位置情報53が可視化されて現れるため見ることができる。各パズルピース25の位置情報53としては種々のものを用いることができるが、本形態では、ジグソーパズル20の枠部26に、座標情報として、A、B、C、D・・・の行情報51と01、02、03、04・・・の列情報52を紫外線可視化画像として形成し、これらの行情報と列情報の組み合わせであるA01、A02、A03、A04・・・を各パズルピース25の位置情報53として用いている。
【0053】
したがって、ジグソーパズル20からリタックシート7を剥し、各パズルピース25がばらばらに分離された状態となっても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、パズルピース表面に形成した紫外線可視化画像による位置情報とさらに枠部に形成した座標情報を参考にしてパズルピース25を簡単に嵌め合せることができる。
【0054】
なお、パズルピースに形成する位置情報を示す紫外線可視化画像は、紫外光を照射した際に見やすくするために、絵柄画像よりも上面に形成されるのが望ましい。このため、レーザプリンタやMFPを用いてトナー画像を形成する場合は、絵柄形成紙1の表面でUVトナーによる位置情報を示す画像が絵柄画像よりも上面になるようにし、さらに、最上層に透明トナーによるオーバーコート層4bを形成する必要から、カラートナー、UVトナー、および、透明トナーが絵柄形成紙に転写される順序を考慮して、各トナーの転写ベルトに対する配置関係を定めておくことが望ましい。
なお、場合によっては、画像形成処理を2回行うこととし、絵柄画像を絵柄形成紙1の上面に形成し、さらにUVトナーによる位置情報を示す画像とオーバーコート層をその上に形成するようにしてもよい。
【0055】
また、先述した形態では、トナー画像4として、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とさらにオーバーコート層を重畳した画像を形成したが、
図6に示す無地のジグソーパズル(白パズル)の表面に、各パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とその表面にオーバーコート層を設けた絵柄画像のないトナー画像4を転写して、位置情報を示す紫外線可視化画像付きの無地のジグソーパズルを作製してもよい。そして、この無地のジグソーパズルに所望の絵柄を描くようにしてもよい。この場合、無地のジグソーパズルの段階で各パズルピースがバラバラになったとしても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、位置情報を参考にしてパズルピース25を簡単に嵌め合せることができる。また、絵柄の描画後であっても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、絵柄の下に紫外線可視化画像が来るため視認性は劣るものの位置情報を見ることができるため、従来のジグソーパズルよりもはるかに簡単に嵌め合わすことが可能になる。
【0056】
(参考例に係る第2の形態)
参考例に係る第1の形態では、絵柄画像、紫外線可視化画像、および、透明なオーバーコート層を、レーザプリンタあるいは複写機によって形成されるトナー画像として形成したが、これらの画像や層は、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像であってもよい。
図14は、本発明をより良く理解するための参考例の他の形態のジグソーパズルの断面図であり、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像4”を用いた際の断面図である。所要の絵柄画像と紫外線可視化画像を重畳した画像4a’と、この画像4a’の上に設けたオーバーコート層4b’は、ともにインクジェットプリンタによって形成されるインク画像4”となっている。
この場合、インクジェットプリンタのインクとしては、例えば、紫外線硬化型のUV硬化インクを用いることができる。UV硬化インクは、紫外線を照射することで瞬時に硬化、定着するインクであり、定着までの時間が短い特徴を有している。
【0057】
本形態の場合は、絵柄画像を形成するためのカラーUV硬化インク、紫外線可視化画像を形成するための蛍光剤入り透明UVインク、および、オーバーコート層を形成するための透明UVインクを用い、
図6に示す無地のジグソーパズル(白パズル)20の表面に、ジグソー絵柄画像、紫外線可視化画像、および、オーバーコート層の順番で、各インクが定着して印刷されるように、インクジェットプリンタの各インクのインクヘッドのノズルの配置関係を定めておけばよい。なお、本形態においても、無地のジグソーパズル(白パズル)20の表面に、紫外線可視化画像とオーバーコート層のみを形成したジグソーパズルを作製することも可能である。
【0058】
また、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像の場合、トナー画像を用いた際のリタックシート7のようなパズルピースの飛び散り防止機能を有する部材がない。このため、リタックシート7と同様な透明な樹脂フィルム5の表面に再剥離型粘着剤6を設けた透明樹脂フィルムを設けてもよい。
【0059】
以上、本発明の参考例に係る形態について説明したが、例えば、参考例に係る第1の形態では、絵柄形成紙1上に非反転画像としてトナー画像4を形成する代わりに、熱によって再転写可能なインク画像を形成するようにしてもよい。また、参考例に係る第2の形態の変形例として、一般に市販されている印刷画像を有するジグソーパズルの表面に、パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とオーバーコート層を印刷するようにしてもよい。
なお、参考例に係る第1の形態および第2の形態では、紫外線可視化画像に蛍光剤入りの透明トナー又はインクを使用しているが、他の材料として、暗闇でも、紫外光の照射でも発光する、蓄光剤入りの透明トナー又はインクを用いてもよい。
さらに、絵柄画像としてカラー画像を前提に説明したが、絵柄画像は、モノクロ画像、2値画像、エッジ画像などでの任意の画像であってよい。
【0060】
(参考例に係る第3の形態)
参考例に係る上記の形態では、
図2に示すように、絵柄形成紙1の上に、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像4aと、この画像4aの表面全面に透明なオーバーコート層4bを設けていたが、本形態では、絵柄形成紙1の上に、所要の絵柄画像と紫外線可視化画像とを重畳した画像4aのみを形成し、リタックシート
7にオーバーコート層となる層あるいはオーバーコート層を設け、リタックシート
7に形成したオーバーコート層あるいはオーバーコート層を画像4aに貼り付けている。
【0061】
図15は、本発明をより良く理解するための参考例の他の形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図であり、
図16は、本発明をより良く理解するための参考例の他の形態において用いる本発明の
粉末樹脂層付きリタックシート
(透明樹脂層付きリタックシート)の断面図である。本形態では、
図15に示すように、支持体2の表面に水溶層3を設けた絵柄形成紙1の上に、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像4aのみを形成し、オーバーコート層4bは形成しない。したがって、トナー画像としては画像4aのみが含まれる。なお、トナー画像である画像4aの代わりに、参考例に係る第2の形態で説明したような、無地のジグソーパズル(白パズル)20の表面に
図14の如く、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像4a’のみを形成し、オーバーコート層4b’は形成しないようにすればよい。一方、本形態では、
図16に示す
粉末樹脂層付きリタックシート7’(
透明樹脂層付きリタックシート7”)側に、オーバーコート層となる層あるいはオーバーコート層を設けている。
【0062】
本発明をより良く理解するための参考例となる
ジグソーパズルには、粉末樹脂層付きリタックシート7’と透明樹脂層付きリタックシート7”
のいずれを用いてもよい。
(
本発明の実施形態
1)
以下に、
本発明の粉末樹脂層付きリタックシート7’の一実施形態として、粉末樹脂層付きリタックシート7’を作製する方法について説明する。粉末樹脂層付きリタックシート7’は、樹脂フィルム5の一面に再剥離型粘着剤6からなる貼着面を形成する工程と、この貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層4cを塗布する工程によって作製される。この粉末樹脂層付きリタックシート7’は、取扱いを容易にするために、
図17に示すように粉末樹脂層4cの露出面の上に剥離紙8を設け、周囲を仮止めテープ9で固定してもよい。
【0063】
粉末樹脂層付きリタックシート7’を使用する場合は、粉末樹脂層付きリタックシート7’から剥離紙8を剥がし、
図19に示すように、リタックシート貼り付け工程として、粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4c側を絵柄形成紙1上の画像4aの上に重ね合せる。この状態で、粉末樹脂層4cを加熱圧着して溶融させ、絵柄形成紙1上の画像4aに
粉末樹脂層付きリタックシート7’を貼り付ける。共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層4cは加熱、溶融することによって、オーバーコート層となる透明樹脂層4c’に変更される。
【0064】
以降、参考例に係る第1の形態と同様に、支持体2に水を含ませることにより水溶層3を水で溶かして支持体2を剥離し、画像4aを粉末樹脂層付きリタックシート7’のオーバーコート層となる透明樹脂層4c’の上に転移させる支持体剥離工程と、画像4aの面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、さらに、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、オーバーコート層の上に画像4aを転移させた粉末樹脂層付きリタックシート7’を重ね合わせ、粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピースの表面に対して加熱押圧する転写工程を経て、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルを得る。
【0065】
(
本発明の実施形態
2)
次に、
本発明の透明樹脂層付きリタックシート7”の一実施形態として、透明樹脂層付きリタックシート7”を作製する方法について説明する。まず、透明樹脂層付きリタックシート7”は、樹脂フィルム5の一面に再剥離型粘着剤6からなる貼着面を形成する工程と、この貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層
4cを塗布する工程と、この粉末樹脂層
4cの上に剥離紙8を設ける工程と、粉末樹脂層
4cを樹脂フィルム5と剥離紙8とで挟んだ状態で加熱圧着し、粉末樹脂層
4cを溶融させて透明樹脂層4c’を得る工程によって作製される。透明樹脂層付きリタックシート7”は、取扱いを容易にするために、
図18に示すように、周囲を仮止めテープ9で固定してもよい。透明樹脂層付きリタックシート7”の透明樹脂層4c’はオーバーコート層として機能する。
【0066】
このように作製された透明樹脂層付きリタックシート7”から剥離紙8を剥がし、
図19に示すように、リタックシート貼り付け工程として、透明樹脂層付きリタックシート7”の透明樹脂層4c’側を絵柄形成紙1上の画像4aの上に重ね合せる。この状態で、透明樹脂層4c’を加熱圧着して、絵柄形成紙1上の画像4aに
透明樹脂層付きリタックシート7”を貼り付ける。
【0067】
以降、参考例に係る第1の形態と同様に、支持体2に水を含ませることにより水溶層3を水で溶かして支持体2を剥離し、画像4aを透明樹脂層付きリタックシート7”のオーバーコート層となる透明樹脂層4c’の上に転移させる支持体剥離工程と、画像4aの面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、さらに、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、オーバーコート層の上に画像4aを転移させた透明樹脂層付きリタックシート7”を重ね合わせ、透明樹脂層付きリタックシート7”をパズルピースの表面に対して加熱押圧する転写工程を経て、本発明をより良く理解するための参考例となるジグソーパズルを得る。
【0068】
本発明の実施形態1および実施形態2によれば、オーバーコート層をトナー画像あるいはインク画像として設ける必要がなくなるため、使用するレーザプリンタのトナーカートリッジ数やインクジェットプリンタのインクカートリッジ数が少ないものを用いることができる。また、本発明の粉末樹脂層付きリタックシート7’あるいは透明樹脂層付きリタックシート7”は、ジグソーパズルの製造に用いる以外に、絵柄の表面に透明樹脂層を形成する際の他の用途に用いることができる。なお、粉末樹脂層付きリタックシート7’あるいは透明樹脂層付きリタックシート7”は、オーバーコート層を転写剥離後、樹脂フィルム5と再剥離型粘着剤6からなるリタックシート7として再使用(リユース)可能であるとともに、再剥離型粘着剤6に粉末樹脂層4cを塗布することによって、粉末樹脂層付きリタックシート7’として、あるいは、粉末樹脂層4cを加熱圧着して透明樹脂層4c’とした透明樹脂層付きリタックシート7”とすることで再使用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…絵柄形成紙、2…支持体、3…水溶層、4、4'…トナー画像、4”…インク画像、4a、4a’…画像、4b、4b’…オーバーコート層、4c…粉末樹脂層、4c’…透明樹脂層、5…樹脂フィルム、6…再剥離型粘着剤、7…リタックシート、7’…粉末樹脂層付きリタックシート、7”…透明樹脂層付きリタックシート、8…剥離紙、9…仮止めテープ、10…絵柄転写シート、20…ジグソーパズル、21…白紙、22…ダンボール紙、23…ホットメルト型接着剤、24…ジグソーパズル素材、25…パズルピース、26…枠部、27…カット溝凹部、28…底板、31…カット台、32…刃物台、33…矢印、40…アイロン、41…布、51…行情報、52…列情報、53…位置情報、100…白紙、101…絵柄トナー画像、102…UVトナー画像、103…オーバーコート層、110…リタックシート、120…ジグソーパズル、130…トナー画像。