(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用分離膜、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20221212BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20221212BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221212BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20221212BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221212BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221212BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20221212BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20221212BHJP
H01M 50/497 20210101ALI20221212BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20221212BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M4/66 A
H01M4/134
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/497
H01M50/403 D
H01M50/446
(21)【出願番号】P 2021504381
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2020006719
(87)【国際公開番号】W WO2020235971
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060704
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0055842
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンウン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヘジン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コン・ユン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-319634(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0052249(KR,A)
【文献】特開2004-087402(JP,A)
【文献】特表2009-517810(JP,A)
【文献】特表2008-503049(JP,A)
【文献】特表2008-524824(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0011932(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1365300(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1027120(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/451
H01M 50/443
H01M 4/66
H01M 4/134
H01M 10/052
H01M 4/38
H01M 50/434
H01M 50/426
H01M 50/497
H01M 50/403
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の第1空隙が形成された基材、
前記基材の表面に位置し、無機粒子およびバインダを含み、複数の第2空隙が内部に形成されたコート層、および
前記第1空隙の全部を埋めるイオン伝導性ポリマー、を含む、
リチウム二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記イオン伝導性ポリマーは、フッ素系イオノマー(F-アイオノマー)である、請求項
1に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記フッ素系イオノマーはナフィオン(Nafion)系物質である、請求項
2に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項4】
20~30℃で、前記分離膜のイオン伝導度は5.0×10
-4S/cm以上である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項5】
内部に複数の第1空隙を含む基材を準備する第1段階、
前記基材の表面に、無機粒子、バインダ、および複数の第2空隙を含むコート層を形成する第2段階、および
前記第1空隙の全部をイオン伝導性ポリマーで埋める第3段階、を含む、リチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記第3段階は、
前記第1段階以後および前記第2段階以前に行われ、
前記第1段階の基材を、イオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬させる段階、および
前記イオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬された第1段階の基材を回収して乾燥する段階、を含む、請求項
5に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記第2段階は、
前記第3段階により収得された基材を、無機粒子およびバインダを含む溶液に浸漬させる段階、および
前記無機粒子およびバインダを含む溶液に浸漬された基材を回収して乾燥する段階、を含む、請求項
6に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項8】
負極、
正極、および
前記負極および前記正極の間に位置する請求項1に記載の分離膜、を含む、リチウム二次電池。
【請求項9】
前記負極は、
銅集電体のみからなるリチウムフリー負極(Li free anode)、または
銅集電体;および前記銅集電体上に位置するリチウム金属層;を含むリチウム金属負極である、請求項
8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記リチウム二次電池は、20~30℃の温度範囲で、0.1Cの定電流で3Vに到達するまで充電した後0.5Cの定電流で4.25Vに到達するまで放電することを1回の充放電サイクルとする時、下記式1による容量維持率が80%に到達する時点のnが50以上であり、
[式1]
容量維持率(%)=100×{nサイクル後の放電容量}/{1サイクル後の放電容量}
である、請求項
8または9に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2019年5月23日付韓国特許出願第10-2019-0060704号および2020年5月11日付韓国特許出願第10-2020-0055842号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用分離膜、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急激な増加によって代替エネルギやクリーンエネルギの使用に対する要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を利用した発電、蓄電分野である。
【0004】
現在このような電気化学的エネルギを利用する電気化学素子の代表的な例として二次電池が挙げられ、ますますその使用領域が拡大している傾向である。
【0005】
最近では携帯用コンピュータ、携帯電話機、カメラ等の携帯用機器に対する技術開発と需要の増加に伴いエネルギ源としての二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池の中で、高い充放電特性と寿命特性を現わして環境に優しいリチウム二次電池に対する多くの研究が行われてきており、また商用化されて広く使用されている。
【0006】
電池ケースに内蔵される電極組立体は正極/分離膜/負極の積層構造からなる充放電が可能な発電素子として、活物質が塗布された長いシート型の正極と負極の間に分離膜を介在して巻き取りしたジェリーロール型と、所定の大きさの多数の正極と負極を分離膜が介在した状態で順次積層したスタック型、これらの組み合わせとして、正極、負極、および分離膜を含むバイセル、またはフルセルが長いシート型の分離フィルムで巻き取りした形態のスタック/フォールディング型、および前記バイセルまたはフルセルをラミネーションした後積層するラミネーション/スタック型に分類される。
【0007】
一方、一般的にリチウム二次電池は正極と負極および多孔性分離膜からなる電極組立体に非水系電解液が含浸されている構造からなっている。正極は一般的に正極活物質を含む正極合剤をアルミニウム箔にコートして製造され、負極は負極活物質を含む負極合剤を銅箔にコートして製造される。
【0008】
普通正極活物質はリチウム遷移金属酸化物であり、負極活物質はカーボン系物質を使用する。しかし、最近負極活物質として、リチウム金属自体を使用するリチウム金属電池が商用化されている。
【0009】
リチウム金属電池は、一般的に炭素系物質(理論容量:372mAh/g)負極活物質とするリチウムイオン電池に比べて、リチウム金属(理論容量:3600mAh/g)を負極活物質として使用することにより、理論的に10倍以上増加したエネルギ容量を有する利点がある。
【0010】
このようなリチウム金属電池は、銅集電体それ自体またはその表面にリチウム金属が付着したものを負極とし、このような負極表面から脱離したリチウム金属がイオン化されて電解質を介して正極に移動し(放電)、正極で電子を失ったリチウムイオンが電解質を介して負極に移動して負極の表面で還元および電着する(充電)電気化学的反応を利用して放電および充電される。
【0011】
一方、前記リチウム二次電池は様々な要因によって短絡が発生し得る。一例として、正極活物質から溶出された遷移金属が負極表面に電着する地点が金属柱の開始点になり、その開始点にリチウム金属が追加的に電着し、その結果金属柱が分離膜の空隙(pore)を突き抜けて成長して正極と当接して局部短絡(micro-short)を起こし得る。
【0012】
このような局部短絡はリチウム金属が炭素系物質に比べて高い反応性を有することによって、リチウム金属電池でより危険である。
【0013】
このような局部短絡は、リチウム二次電池の寿命を短縮させる原因になることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一実施形態では、分離膜の空隙(pore)を埋めることによって、負極表面で成長できる金属柱が正極方向に進むことを物理的に抑制し、リチウム二次電池の局部短絡を抑制させ、究極的にはリチウム二次電池の寿命を改善する。
【0015】
また、前記分離膜の空隙を埋める形態と、これを埋める高分子の種類を制御することによって、前記リチウム二次電池の出力特性を確保および向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。本願明細書の全体で使用される「約」、「実質的に」等という用語は、言及された意味に固有な製造および物質許容誤差が提示される時その数値でまたはその数値に近接する意味として使用され、本願の理解を深めるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。本願明細書全体で使用される「~(する)段階」または「~の段階」という用語は「~のための段階」を意味しない。
【0017】
本明細書で、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語はマーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものとして、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0018】
上記のような定義に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これらは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず本発明は後述する請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【0019】
リチウム二次電池用分離膜
本発明の一実施形態では、内部に複数の第1空隙が形成された基材;前記基材の表面に位置し、無機粒子およびバインダを含み、複数の第2空隙が内部に形成されたコート層;および前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方を選択的に埋めるイオン伝導性ポリマー(F-アイオノマー);を含む、リチウム二次電池用分離膜を提供する。
【0020】
前記一実施形態は、1)安定性強化分離膜(safety reinforced separator,SRS)を基盤とするものの、2)この空隙を埋めることによってリチウム二次電池の局部短絡(micro-short)の問題を解決し、究極的には電池の寿命特性を改善する。
【0021】
ここで、3)リチウムイオン移動通路を確保するために、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部を埋めず、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方を選択的に埋める。4)また、前記基材および前記コート層のうちいずれか一方に形成された空隙を選択的に埋める手段としてイオン伝導性ポリマー、さらに、特にフッ素系イオノマーを使用することによって、前記基材および前記コート層のすべての空隙が開いている場合と類似する水準のイオン伝導性を確保する。
【0022】
1)具体的には、前記一実施形態の分離膜は、基材の表面が無機粒子でコートされて熱安定性、機械的安定性等が強化された、いわゆる安定性強化分離膜(safety reinforced separator,SRS)を基盤とする。
【0023】
前記基材は内部に複数の空隙が形成された多孔性基材であり得る。また、前記無機粒子は、バインダを媒介として前記基材の表面、互いに異なる無機粒子等に固定され得る。また、前記コート層の内部で、前記無機粒子と前記基材の間、前記互いに異なる無機粒子の間にも複数の空隙が形成されることができる。
【0024】
このような構造的特徴を強調するために、前記基材の内部に形成された複数の空隙を第1空隙、前記コート層の内部に形成された空隙を第2空隙という。
【0025】
2)前記第1および第2空隙は、リチウム二次電池内で電解質に含浸されてリチウムのイオン通路を提供する空間になるが、負極表面で成長した金属柱が正極方向に継続して成長できる空間になる。
【0026】
先立って説明したように、負極表面で成長した金属柱は、分離膜の弱い部分を突き抜けて正極に至って局部短絡(micro-short)を起こし得る。前記安定性強化分離膜(SRS)において、弱い部分は前記第1および第2空隙になる。
【0027】
そこで、前記一実施形態では、前記負極表面で成長した金属柱がこれ以上正極方向に成長することができず、正極方向に対して垂直方向にその成長方向が変わるように、前記安定性強化分離膜(SRS)の弱い部分を埋めることにした。
【0028】
3)ただし、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部を埋める場合、局部短絡は防止することができても、分離膜を介したリチウムイオン伝導が抑制され、リチウム二次電池が正常に駆動されない。これとは異なり、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の一部のみ埋める場合や、前記第2空隙の全部および前記第1空隙の一部のみ埋める場合、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部が開いている場合と同様に、局部短絡が発生し得る。
【0029】
したがって、前記一実施形態では、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方のみを選択的に埋めることによって、それを含む分離膜を介したリチウムイオン伝導およびリチウム二次電池の正常な駆動を確保することにした。
【0030】
4)一方、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方を選択的に埋めても、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部がすべて開いている場合に比べてリチウムイオン伝導性が低くなる。
【0031】
そこで、前記一実施形態では、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方を選択的に埋める手段として、リチウムイオン伝導性に優れたイオン伝導性ポリマーを使用することによって、前記基材および前記コート層のすべての空隙が開いている場合と類似する水準のイオン伝導性を確保することにした。前記イオン伝導性ポリマー中、特にフッ素系イオノマーはフッ素を含むので難燃性改善が可能であり、カーボン鎖に結合されたF元素が相対的に結合力が強く電気化学的安定性を有する利点もある。
【0032】
以下、前記一実施形態の分離膜についてより詳細に説明する。
【0033】
コート層の構造
前記コート層は、当業界に知られているコーティング方法によって前記基材の一面または両面の表面にコートされたものであり得る。当業界に知られているコーティング方法としては、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング等がある。
【0034】
前記ディップコート方式を利用する場合、前記コート層は、前記基材の一面または両面に位置すると同時に、前記基材の内部にも位置し得る。ここで、前記基材の内部に位置するコート層は、前記第1空隙の一部を前記無機粒子および前記バインダで埋め、前記第1空隙の残りの一部に前記第2空隙を位置させ得る。
【0035】
前記ディップコート方式は後述する実施例でも使用されたが、無機粒子、バインダおよび溶媒を含む溶液(以下、場合によっては「コート層形成溶液」という)に基材を浸漬させた後乾燥する方式である。
【0036】
前記浸漬過程において、前記コート層形成溶液は前記基材の表面に塗布されるだけでなく、前記基材内部の第1空隙に前記コート層形成溶液が含浸され得る。その後、前記コート層形成溶液に浸漬された基材を回収して乾燥すると、前記第1空隙に含浸されたコート層形成溶液中の溶媒は除去され、無機粒子およびバインダのみ残され得る。
【0037】
ただし、前記無機粒子および前記バインダの粒径が前記第1空隙と同一であるかまたは大きい場合が一般的であるから、前記基材の表面に隣接する領域で前記第1空隙と同一であるかまたは小さい無機粒子およびバインダのみ前記第1空隙に残されると推論される。
【0038】
分離膜の空隙を埋める物質
前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方を選択的に埋める手段としてイオン伝導性ポリマーが使用されることができる。
【0039】
当業界に知られている多様なイオン伝導性ポリマーを使用するものであれば、限定されないが、具体的には、難燃性および安定性等の目的で具体的にはフッ素系イオノマーを使用することがより好ましい。
【0040】
より具体的には、前記フッ素系イオノマーで、下記化学式1で表されるナフィオン(Nafion)系物質を使用することができる:
【0041】
【0042】
前記化学式1において、mは0または1であり、3≦n≦5であり、1.5≦x≦14である。前記yの場合、当業界の技術常識に基づいて、適用溶媒、製造工程等によって自由に調節することができ、前記一実施形態ではこれを特に制限しない。
【0043】
前記化学式1で表されるナフィオン(Nafion)系物質は、ポリテトラフルオロエチレンの骨格にスルホン酸基を導入したポリマーの一種であり、熱的で安定し、耐薬品性が高く、イオン伝導度が高い。
【0044】
分離膜の気孔度
前記一実施形態の分離膜は、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方が選択的に埋められることによって、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部が開いた場合より減少した気孔度を有し得る。
【0045】
具体的には、前記一実施形態の分離膜は、下記計算式により計算される気孔度が25%以下(ただし、0%以上)、具体的には0%以上~20%以下、例えば0%以上~10%以下であり得、この範囲で負極表面で成長した金属柱が正極方向に進むことを物理的に抑制することができる:
気孔度(%)=(1-(前記分離膜の測定密度/前記分離膜の理論密度))×100
【0046】
ここで、前記分離膜全体の測定質量を測定面積と測定厚さの積で除した値が「前記分離膜の測定密度」になり;「前記分離膜の理論密度」は、コート層の理論密度および基材の理論密度にそれぞれの体積分率を乗じた後平均した値になる。
【0047】
前記計算方法でわかるように、前記分離膜の測定密度だけでなく前記分離膜の理論密度は分離膜組成により変わる。
【0048】
分離膜のイオン伝導度
一方、先立って述べたように、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部を埋める場合、分離膜を介したリチウムイオン伝導が抑制され、リチウム二次電池が正常に駆動されないこともある。実際に、後述する実験例でこのような分離膜(比較例2)のイオン伝導度を測定した時、20~30℃でイオン伝導度が1×10-4S/cmに過ぎないことが確認された。
【0049】
これに対し、同じ条件で進行された実験例で、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部のうちいずれか一方の空隙を選択的に埋めた分離膜のイオン伝導度は5.0×10-4S/cm以上、具体的には5.5×10-4S/cm、より具体的には5.8×10-4S/cm、例えば第1空隙を埋めた分離膜のイオン伝導度が6.0×10-4S/cm以上であることが確認された。
【0050】
特に、前記第1空隙の全部を選択的に埋めた分離膜のイオン伝導度は9.1×10-4S/cmで、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の全部が開いた分離膜のイオン伝導度(10.5×10-4S/cm)に近接することが確認された。ここで、前記第2空隙の全部を選択的に埋めた分離膜に比べて前記第1空隙の全部を選択的に埋めた分離膜のイオン伝導度がさらに高いのは、空隙が埋められた層が占める体積(portion)が小さいからである。
【0051】
ただし、前記第2空隙の全部を選択的に埋めても分離膜のイオン伝導度を確保するのに充分である。この場合、前記イオン伝導性ポリマーを含むコート層の全体体積(100体積%)中、前記イオン伝導性ポリマーおよび前記バインダが占める体積合計は50体積%以上~100体積%以下に制御することができる。もし、この範囲を満たさないと、前記第2空隙の一部のみ選択的に埋められ、前記第1空隙の全部および前記第2空隙の一部が開いた構造になる。
【0052】
前記分離膜の空隙を埋める形態とは関係がなく、前記イオン伝導性ポリマーおよび前記バインダの体積比は、特に限定されず、1:99~99:1(記載順序はイオン伝導性ポリマー:PVdF)の範囲内で自由に制御することができる。
【0053】
無機粒子
前記分離膜の空隙を埋める形態とは関係がなく、前記無機粒子は特に制限されない。すなわち、無機物からなっており、リチウム二次電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準として0~5V)で酸化および/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。ただし、目的とするリチウム二次電池の特性を考慮し、無機粒子の種類を選択することができる。
【0054】
例えば、イオン伝達能力に優れた無機粒子を使用するほど、リチウム二次電池内のイオン伝導度を高め、電池の出力特性を向上させることができる。また、密度が低い無機粒子を使用するほど、溶媒に対する分散性が高いためコート層の形成が容易であるだけでなく電池製造時重量減少および重量当たり容量増加に有利である。誘電率が高い無機粒子を使用する場合、電解質内リチウム塩の解離度増加に寄与してイオン伝導度をより向上させることに寄与する。
【0055】
前記事項を考慮し、誘電率定数が5以上、例えば10以上である高誘電率無機粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機粒子、圧電性(piezoelectricity)を有する無機粒子またはこれらの混合体を使用することができる。
【0056】
前記誘電率定数5以上である無機粒子の非制限的な例としては、Al2O3、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、TiO2、SiO2、SiCおよびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つが挙げられる。前述した高誘電率無機粒子、圧電性を有する無機粒子とリチウムイオン伝達能力を有する無機粒子を混用する場合、これらの上昇効果は倍加される。
【0057】
本発明における前記リチウムイオン伝達能力を有する無機粒子は、リチウム元素を含有するもののリチウムを貯蔵せずリチウムイオンを移動させる機能を有する無機粒子を指し、前記リチウムイオン伝達能力を有する無機粒子は粒子構造の内部に存在する一種の欠陥(defect)によりリチウムイオンを伝達および移動させることができるため、電池内のリチウムイオン伝導度が向上し、これによって電池性能向上を企てることができる。前記リチウムイオン伝達能力を有する無機粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3,0<x<2,0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3,0<x<2,0<y<1,0<z<3)、14Li2O-9Al2O3-38TiO2-39P2O5等のような(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4,0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3,0<x<2,0<y<3)、Li3.25Ge0.25P0.75S4等のようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4,0<y<1,0<z<1,0<w<5)、Li3N等のようなリチウムニトリド(LixNy、0<x<4,0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2等のようなSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3,0<y<2,0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5等のようなP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3,0<y<3,0<z<7)およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つが挙げられる。
【0058】
前記圧電性(piezoelectricity)無機粒子は、常圧では不導体であるが、一定の圧力が印加された場合は内部構造変化によって電気が通じる物性を有する物質を意味し、誘電率定数が100以上である高誘電率特性を現わすだけでなく一定の圧力を印加して引張または圧縮される場合は電荷が発生して一面は正に、反対側は負にそれぞれ帯電することによって、両側面間に電位差が発生する機能を有する無機粒子であり得る。
【0059】
前記のような特徴を有する無機粒子を前記無機物コート層の成分として使用する場合、局所的なつぶれ(Local crush)、釘(Nail)等の外部衝撃によって正極および負極の内部短絡が発生する場合、前記分離膜にコートされた前記無機粒子によって正極と負極が直接接触しないだけでなく、前記無機粒子の圧電性により粒子内電位差が発生し、これによって正極および負極間の電子移動、すなわち微細な電流の流れが行われることによって、緩慢な電池の電圧減少およびこれによる安全性向上を企てることができる。
【0060】
前記圧電性を有する無機粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT,0<x<1,0<y<1)、Pb(Mg3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハプニア(hafnia,HfO2)およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つが挙げられる。
【0061】
前記分離膜において、前記無機粒子の大きさ、無機粒子の含有量および無機粒子の組成比を調節することによって、前記基材に含まれた第1空隙とともに前記コート層の第2空隙を形成することができ、また、前記第1および第2空隙の大きさおよびこれらによる気孔度を共に調節することができる。
【0062】
前記無機粒子の大きさは制限がないが、均一な厚さのコート層の形成および適切な気孔度を確保するために、0.001~10μm範囲内であるものを使用することができる。前記無機粒子の大きさが0.001μm未満である場合、分散性が低下して前記無機物コート層の物性調整が難しく、10μmを超える場合は同じ固形分含有量で製造される前記分離膜の厚さが増加して機械的物性が低下し得、過度に大きい気孔の大きさによって電池充放電時の内部短絡が起きる確率が高くなる。
【0063】
バインダ
前記分離膜の空隙を埋める形態とは関係がなく、前記バインダも特に制限されない。前記バインダの場合、互いに異なる無機粒子を互いに接着させ、無機粒子と基材を接着させる機能を有する物質であれば、特に制限されない。
【0064】
ただし、前記バインダがイオン伝導能力を有する高分子である場合、前記リチウム二次電池の性能をより向上させることができる。
【0065】
このような高分子の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)、ポリイミド(polyimide)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つが挙げられる。その他にも上述した特性を含む物質であればいかなる材料でも単独または混合して使用することができる。
【0066】
コート層内の無機粒子およびバインダの体積比
前記分離膜の空隙を埋める形態とは関係がなく、前記コート層内の無機粒子およびバインダの体積比も特に制限されない。
【0067】
ただし、前記コート層内の適切な大きさの第2空隙を形成してイオン伝導度を確保するために、前記無機粒子およびバインダの体積比を1:99~99:1の範囲内で調節することができ、例えば40:60~60:40に制御することができる。この範囲で前記バインダに対する前記無機粒子の体積が増加するほど前記分離膜の気孔度が増加し、これは前記分離膜の厚さが増加する結果を招く。また、前記無機粒子の間の第2空隙の大きさが増加するが、このとき前記無機粒子の大きさ(粒径)が大きくなるほど無機粒子の間の間隔(interstitial distance)が大きくなるので第2空隙の大きさも増加する。
【0068】
前記コート層は前記無機粒子および前記バインダ以外に、通常知られている添加剤をさらに含み得る。
【0069】
基材
前記一実施形態において、前記基材は特に制限されず、多孔性膜形態であり得る。具体的には、前記基材はポリオレフィン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、レーヨン、ガラス繊維、およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つを含むか、またはこれらの多層膜であり得る。より具体的には、前記多孔性基材はエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体であり得る。
【0070】
また、前記基材は、前記イオン伝導性ポリマーが埋められていない状態で、前記基材全体体積に対して20~80体積%の気孔度を有するものであり得る。前記基材の気孔度が20体積%未満であれば気孔(Pore)が急激に減少し、かつLiイオン伝達が難しくなって基材の抵抗が大きくなる問題があり得、80体積%を超えると分離膜の機械的強度が低下してセル組み立て時破れる問題が発生し得る。
【0071】
また、前記基材は前記基材内にD50が1nm~200nmの第1空隙を含み得る。前記第1空隙のD50が1nmであれば前記コート層の形成が容易でないか、前記コート層の形成による改善効果が微小であり、前記第1空隙のD50が200nmを超えると分離膜自体の機械的強度低下の恐れがある。
【0072】
リチウム二次電池用分離膜の製造方法
本発明の他の一実施形態では、内部に複数の第1空隙を含む基材を準備する第1段階;前記基材の表面に、無機粒子、バインダ、および複数の第2空隙を含むコート層を形成する第2段階;および前記第1空隙の全部をイオン伝導性ポリマーで埋める、または、前記第2空隙の全部をイオン伝導性ポリマーで埋める第3段階;を含む、リチウム二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【0073】
前記一実施形態の製造方法で、前記第1および第2段階は安定性強化分離膜(safety reinforced separator,SRS)の製造方法に基づいて、前記第3段階によりはじめて前述した一実施形態の分離膜が製造されることができる。
【0074】
以下、前記第3段階を中心に、前記一実施形態の製造方法を詳細に説明する。
【0075】
第1空隙の全部を選択的に埋める場合
前記第1空隙の全部を選択的に埋めた分離膜を製造するための第3段階は、前記第1段階以後および前記第2段階以前に行われ得る。
【0076】
具体的には、この場合の第3段階は、前記第1段階の基材を、イオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬させる段階;および前記イオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬された第1段階の基材を回収して乾燥する段階;を含み得る。
【0077】
前記イオン伝導性ポリマーを含む溶液は、1~30体積%のイオン伝導性ポリマーおよび残部の溶媒を含むこともできる。
【0078】
前記第2段階は、前記第3段階により収得された基材を、無機粒子およびバインダを含む溶液に浸漬させる段階;および前記無機粒子およびバインダを含む溶液に浸漬された基材を回収して乾燥する段階;を含み得る。
【0079】
第2空隙の全部を選択的に埋める場合
一方、前記第1空隙の全部を選択的に埋めた分離膜を製造するための第3段階は、前記第2段階と同時に行われ得る。
【0080】
具体的には、この場合の第3段階は、前記第1段階の基材を、無機粒子、バインダ、およびイオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬させる段階;および前記無機粒子、バインダ、およびイオン伝導性ポリマーを含む溶液に浸漬された第1段階の基材を回収して乾燥する段階;を含み得る。
【0081】
ここで、前記溶液の固形分中、有機物(前記イオン伝導性ポリマーおよび前記バインダの合計)と無機物の体積比が50:50~99:1であり得,この範囲で前記第2空隙の全部が効果的に埋められる。前記溶液中の固形分含有量は、10~70体積%であり得る。
【0082】
リチウム二次電池
本発明のまた他の一実施形態では、負極;正極;および前記負極および前記正極の間に位置する前述した一実施形態の分離膜;を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0083】
前記リチウム二次電池は、20~30℃の温度範囲で、0.1Cの定電流で4.25Vに到達するまで充電した後0.5Cの定電流で3Vに到達するまで放電することを1回の充放電サイクルとする時、下記式1による容量維持率が80%に到達する時点のnが50以上、具体的には55以上、より具体的に60以上であり得る:
[式1]容量維持率(%)=100×{nサイクル後の放電容量}/{1サイクル後の放電容量}
【0084】
前記一実施形態のリチウム二次電池に適用される分離膜に係る説明は前述したとおりであり、以下では分離膜以外の電池構成要素を詳細に説明する。
【0085】
負極
一般的に負極は、負極集電体および前記負極集電体上に位置する負極合剤層を含み得る。
【0086】
前記負極は活物質およびバインダ、場合によっては導電材、充填材等を溶媒中で混合してスラリー上の電極合剤に製造し、この電極合剤をそれぞれの負極集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は当該分野に広く知られた内容であるため本明細書での詳細な説明は省略する。
【0087】
前記負極集電体は一般的に3~500マイクロメーターの厚さに作られる。このような負極集電体は当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有したものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用されることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用されることができる。
【0088】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素等の炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn,Fe,Pb,Ge;Me’:Al,B,P,Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)等の金属複合酸化物;リチウムチタン酸化物、リチウム金属;リチウム合金;けい素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、およびBi2O5等の金属酸化物;ポリアセチレン等の導電性高分子;Li-Co-Ni系材料等を使用することができる。
【0089】
前記バインダは活物質とその他固形分等の結合と集電体に対する結合に助力する成分として、通常負極活物質を含む負極合剤の全体重量を基準として0.1~30重量%で添加される。このようなバインダの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体等が挙げられる。
【0090】
前記導電材は通常負極活物質を含む負極合剤の全体重量を基準として0.1~30重量%で添加される。前記導電材は当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウイスキー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用されることができる。
【0091】
一方、前記負極は、銅集電体それ自体またはその表面にリチウム金属が付着したリチウム金属負極であり得、このようなリチウム金属負極を含むリチウム金属電池は、このような負極表面から脱離したリチウム金属がイオン化されて電解質を介して正極に移動し(放電)、正極で電子を失ったリチウムイオンが電解質を介して負極に移動して負極の表面で還元および電着する(充電)電気化学的反応を利用して放電および充電される。
【0092】
この時、前記銅集電体は一般的に3~500μmの厚さに作る。このような銅集電体それ自体(Liフリー負極(Li free anode))を負極にすることができる。もし銅集電体表面にリチウム金属が付着したものを負極とする場合、リチウム金属の付着方法として蒸着、電解メッキ、圧延等当業界に広く知られた方式を用いることができる。
【0093】
正極
前記正極は、正極集電体および前記正極集電体上に位置する正極合剤層を含み得る。
【0094】
前記正極は活物質およびバインダ、場合によっては前記のような導電材、充填材等を溶媒中で混合してスラリー上の電極合剤に製造し、この電極合剤をそれぞれの正極集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は当該分野に広く知られた内容であるため本明細書での詳細な説明は省略する。前記正極活物質の場合、リチウムイオンの可逆的な挿入および脱離が可能な物質であれば、特に制限されない。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属;およびリチウム;の複合酸化物のうち1種以上を含むものであり得る。より具体的な例としては、前記正極活物質として、下記化学式のいずれか一つで表される化合物を使用することができる。LiaA1-bRbD2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);LiaE1-bRbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,および0≦c≦0.05である);LiE2-bRbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobRcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5および0≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);およびLiFePO4。
【0095】
前記化学式において、AはNi、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;RはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;DはO、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;EはCo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;ZはF、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;QはTi、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;TはCr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0096】
もちろんこの化合物表面にコート層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコート層を有する化合物を混合して使用することもできる。前記コート層はコーティング元素化合物として、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートまたはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含み得る。これらコート層をなす化合物は非晶質または結晶質であり得る。前記コート層に含まれるコーティング元素としてはMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コート層の形成工程は前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法、例えばスプレーコーティング、浸漬法等でコートできる方法であればいかなるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する者によく理解され得る内容であるため詳しい説明は省略する。
【0097】
前記正極集電体は一般的に3~500μmの厚さに作る。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用されることができる。集電体はそれの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態が可能である。
【0098】
前記バインダおよび導電材等に係る説明は前記負極で説明したとおりである。
【0099】
電解質
前記リチウム二次電池の電解質は、液体電解質(すなわち、電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。
【0100】
前記リチウム二次電池の電解質が液体電解質である場合、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0101】
前記非水性有機溶媒は電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割をする。前記非水性有機溶媒としてはカーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としてはジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等が使用され得、前記エステル系溶媒としてはメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)等が使用され得る。前記エーテル系溶媒としては1,2-ジメトキシエタン(1,2-DIMETHOXYETHANE)、DME)、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン等が使用され得、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノン等が使用され得る。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコール等が使用され得、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(RはC2~C20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向の環またはエーテル結合を含み得る)等のニトリル類ジメチルホルムアミド等のアミド類、1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類スルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。
【0102】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用し得、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適宜調整し得、これは当該分野に従事する者に広く理解され得る。
【0103】
また、前記カーボネート系溶媒の場合は環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用した方が良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが優れた電解液の性能を現す。
【0104】
前記非水性有機溶媒は前記カーボネート系溶媒に前記芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と前記芳香族炭化水素系有機溶媒は約1:1~約30:1の体積比で混合され得る。
【0105】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては下記化学式1の芳香族炭化水素系化合物が使用され得る。
【0106】
【0107】
前記化学式1において、R1~R6はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~C10のアルキル基、C1~C10のハロアルキル基またはこれらの組み合わせである。
【0108】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒は、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、1,2-ジフルオロトルエン、1,3-ジフルオロトルエン、1,4-ジフルオロトルエン、1,2,3-トリフルオロトルエン、1,2,4-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、1,2-ジクロロトルエン、1,3-ジクロロトルエン、1,4-ジクロロトルエン、1,2,3-トリクロロトルエン、1,2,4-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、1,2-ジヨードトルエン、1,3-ジヨードトルエン、1,4-ジヨードトルエン、1,2,3-トリヨードトルエン、1,2,4-トリヨードトルエン、キシレンまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0109】
前記非水性電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式2のエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0110】
【0111】
前記化学式2において、R7およびR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)またはC1~C5のフルオロアルキル基であり、前記R7とR8のうち少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)またはC1~C5のフルオロアルキル基である。
【0112】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。前記ビニレンカーボネートまたは前記エチレンカーボネート系化合物をより使用する場合、その使用量を適宜調整して寿命を向上させることができる。
【0113】
前記リチウム二次電池の電解液において、前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解し、リチウムイオンの供給源として作用して前記一実施形態のリチウム二次電池の基本的な作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオン移動を促進する役割をすることができる。
【0114】
前記リチウム塩は一般的に電解液に広く適用されるリチウム塩を使用することができる。例えば、後述する実験例のようにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Lithium bis(fluorosulfonyl) imide,LiFSI)を使用できるが、この他にもLiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)またはこれらの組み合わせを使用できるが、これに制限されない。
【0115】
また、前記電解液において、リチウム塩の濃度は0.1~5.0M範囲内に制御することができる。この範囲で、前記電解液が適切な伝導度および粘度を有することができ、前記一実施形態のリチウム二次電池内でリチウムイオンが効果的に移動することができる。ただし、これは例示だけであり、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0116】
前記電解液は、前記負極および前記正極の間に位置する多孔性分離膜に含浸された形態であり得る。ここで、多孔性分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供し、リチウム電池で通常使用されるものであればすべて使用可能である。すなわち、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能力に優れるものが使用される。
【0117】
例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの調合物の中から選択されたものとして、不織布または織布形態でもよい。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレン等のようなポリオレフィン系高分子分離膜が主に使用され、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用されることができる。
【0118】
これとは異なり、前記リチウム二次電池の電解質が固体電解質である場合において、使用できる固体電解質は特に制限されない。
【0119】
前記一実施形態のリチウム二次電池は小型デバイスの電源として使用される単位セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても使用することができる。さらに、前記電池モジュールを含む電池パックが構成されることができる。
【発明の効果】
【0120】
前記一実施形態の分離膜は、安定性強化分離膜を基盤として優れた熱安定性および機械的安定性を有し、前記基材および前記コート層のうちいずれか一方の構成要素の空隙がイオン伝導性ポリマーで埋められてリチウム二次電池の局部短絡(micro-short)抑制、寿命特性改善等に寄与し、かつイオン伝導性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】実施例1~3および比較例1~4の各リチウム二次電池について、電気化学的特性を評価した結果を示す図である。
【
図2】比較例1のリチウム二次電池の駆動中に回収された分離膜を観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下、本発明の好ましい実施例、これに対比される比較例、これらを評価する試験例を記載する。しかし、下記実施例は本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0123】
実施例1(第2空隙の全部をF-アイオノマーで埋めた分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
ポリエチレン基材(横×縦×厚さ:40mm×60mm×5μm、気孔度40%)を準備した。
【0124】
無機粒子としてはD50粒径が500nmであるAl2O3粉末を使用し、バインダとしてはPVdFを使用し、F-アイオノマーとしてはナフィオン(Nafion)系物質の一種である製品(商品名:ACIPLEX-S、Asahi Chemial)を購入して使用した。
【0125】
溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-Methyl-2-pyrrolidone)内で前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを1:1:1の体積比で混合してコーティング溶液を製造した。前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液総量(100重量%)中、固形分の含有量は50重量%とした。
【0126】
前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液に前記基材を3分間浸漬させた後、これを取り出して80℃で180分間乾燥して実施例1の分離膜を収得した。
【0127】
(2)リチウム二次電池の製造
断面積が17cm2の四角形(厚さ:10μm)である銅集電体を負極として使用した(Liフリー負極(Li free anode))。
【0128】
正極活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、導電材としてカーボンブラック、およびバインダとしてポリビニリデンフルオライド(PVDF)をそれぞれ使用し、正極活物質:導電材:バインダの重量比を94:2:4として混合した混合物に、溶剤であるNMPに添加して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体(厚さ:10μm)の一面に79μmの厚さでコートし、これを乾燥および圧延した後一定の大きさでパンチングして正極を製造した。
【0129】
前記負極および前記正極の間に、前記実施例1の分離膜を介在させたバイセルを製造した。3.5Mのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI:Lithium bis(fluorosulfonyl)imide)が1,2-ジメトキシエタン(1,2-Dimethoxyethane,C4H10O2)に溶解したものを電解液として使用し、前記バイセルに注液した。
【0130】
残りは当業界に知られている工程を利用した。
【0131】
実施例2(第1空隙の全部をF-アイオノマーで埋めた分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
基材、無機粒子、バインダ、F-アイオノマー、および溶媒は、前記実施例1と同じものを準備した。
【0132】
前記F-アイオノマーをNMP溶媒内に分散させ、F-アイオノマー溶液(溶液100重量%中、F-アイオノマー含有量20重量%)を製造した。前記F-アイオノマー溶液に前記基材を3分間浸漬させた後、これを取り出して80℃で180分間乾燥した。これにより、前記F-アイオノマーによって第1空隙が埋められた基材を収得した。
【0133】
これとは独立して、NMP溶媒内で前記無機粒子および前記バインダを5:1の体積比で混合してコーティング溶液を製造した。前記無機粒子および前記バインダを含むコーティング溶液総量(100重量%)の中で、固形分の含有量は40重量%とした。
【0134】
前記無機粒子および前記バインダを含むコーティング溶液に、前記F-アイオノマーによって第1空隙が埋められた基材を3分間浸漬させた後、これを取り出して80℃で180分間乾燥して実施例2の分離膜を収得した。
【0135】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記実施例2の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0136】
実施例3(第2空隙の全部をF-アイオノマーで埋めた分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液組成を除いては、前記実施例1と同様の方法で実施例3の分離膜を製造した。
【0137】
具体的には、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-Methyl-2-pyrrolidone)内で前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを1:1:2の体積比で混合してコーティング溶液を製造した。前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液総量(100重量%)中、固形分の含有量は60重量%とした。
【0138】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記実施例3の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0139】
比較例1(第1空隙の全部および第2空隙の全部が開いている分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
基材、無機粒子、バインダ、および溶媒は、前記実施例1と同じものを準備した。
【0140】
溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-Methyl-2-pyrrolidone)内で前記無機粒子(Al2O3)および前記バインダ(PVdF)を5:1の体積比で混合してコーティング溶液を製造した。前記無機粒子(Al2O3)および前記バインダ(PVdF)を含むコーティング溶液総量(100重量%)中、固形分の含有量は40重量%とした。
【0141】
前記無機粒子(Al2O3)および前記バインダ(PVdF)を含むコーティング溶液に前記基材を3分間浸漬させた後、これを取り出して80℃で180分間乾燥して比較例1の分離膜を収得した。
【0142】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記比較例1の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0143】
比較例2(第1空隙の全部および第2空隙の全部をF-アイオノマーで埋めた分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
前記実施例2と同様の方法でF-アイオノマー溶液(溶液100重量%中、F-アイオノマー含有量30重量%)を製造した。
【0144】
これとは独立して、前記比較例1と同様の方法で第1および第2空隙がすべて開いている分離膜を製造した。
【0145】
前記F-アイオノマー溶液に、前記第1および第2空隙がすべて開いている分離膜を3分間浸漬させた後、これを取り出して80℃で180分間乾燥して比較例2の分離膜を収得した。
【0146】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記比較例2の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0147】
比較例3(第2空隙の一部をF-アイオノマーで埋め、第1空隙の全部および第2空隙の一部が開いている分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液組成を除いては、前記実施例1と同様の方法で比較例3の分離膜を製造した。
【0148】
具体的には、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-Methyl-2-pyrrolidone)内で前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを3:1:1の体積比で混合してコーティング溶液を製造した。前記無機粒子(Al2O3)、前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマーを含むコーティング溶液総量(100重量%)中、固形分の含有量は40重量%とした。
【0149】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記比較例3の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0150】
比較例4(第1空隙と第2空隙を埋めるが、洗浄を行って空隙壁にのみコート層を形成した分離膜の製造)
(1)分離膜の製造
比較例2のF-アイオノマー溶液に、前記第1および第2空隙がすべて開いている分離膜を3分間浸漬させた後、これを取り出して1分間水で洗浄した後、乾燥したことを除いては、比較例2と同様の方法で比較例4の分離膜を製造した。
【0151】
(2)リチウム二次電池の製造
前記実施例1の分離膜の代わりに前記比較例4の分離膜を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0152】
実験例1(リチウム二次電池の電気化学的特性評価)
次のような条件で、前記実施例1~3および比較例1~4の各リチウム二次電池に対する充放電サイクル(Cycle)を行った。各リチウム電池の充放電サイクルによる放電容量を一回目のサイクルの放電容量として正規化(Normalize)し、その結果を
図1に示した。
【0153】
充電(Charge):0.1C、CC/CV、4.25V、1/20Cカットオフ(cut-off)
放電(Discharge):0.5C、CC、3.0V、カットオフ(cut-off)
【0154】
ここで、実験結果の信頼性を高めるために、各リチウム二次電池に対する充放電実験を5回実施し、局部短絡が2回以上発生した場合、下記表1で「局部短絡発生の有無:有」と表示した。また、「0.1C充電/0.5C放電時容量維持率80%到達地点のサイクル数」の場合、前記充放電実験5回によって得られた結果を算術平均し、下記表1に記録した。
【0155】
これと独立して、4.25Vまで0.1Cで充電した後、定電流(CC)条件で2.5Vまで0.1Cで放電し、その放電容量を測定した結果も表1に示した。
【0156】
【0157】
前記表1および
図1を参照すると第1空隙の全部および第2空隙の全部が開いている分離膜(比較例1)を使用した場合、局部短絡が発生したことを確認することができる。
【0158】
これに対し、第1空隙の全部および第2空隙の全部のうち一つを埋めた場合(実施例1~3)と第1空隙の全部および第2空隙の全部を埋めた場合(比較例2)には、局部短絡が発生しなかったことを確認することができる。
【0159】
これにより、リチウム二次電池の駆動中の金属柱の成長による局部短絡を防止するためには、分離膜中の金属柱の攻撃に脆弱な部分である空隙(第1および第2空隙)を埋める必要があることがわかる。
【0160】
ただし第1空隙の全部および第2空隙の全部を埋めた場合(比較例2)に比べて、第1空隙の全部および第2空隙の全部のうち一つを埋めた場合(実施例1~3)、0.1C放電容量がより大きく、0.1C充電/0.5C放電時より多くのサイクルが進行された後容量維持率80%に到達することを確認することができる。
【0161】
これにより、リチウム二次電池の駆動中の金属柱の成長による局部短絡を防止し、かつリチウムイオン移動通路を確保して適切な放電容量および寿命を確保するためには第1空隙の全部および第2空隙の全部を埋めず、これらのうちいずれか一方を選択的に埋める必要があることがわかる。
【0162】
一方、第1空隙の全部と第2空隙の一部が開いている場合(比較例3)と第1空隙と第2空隙を埋めても洗浄により空隙内部壁にのみコートした分離膜(比較例4)を使用する場合には第1空隙の全部および第2空隙の全部が開いている分離膜(比較例1)と同様に局部短絡が発生することを確認することができる。
【0163】
これにより、前記第1および第2気孔のうちいずれか一方を選択的に埋める場合にも、その選択された気孔の全部を埋めることが重要であることがわかる。特に、前記第2気孔を選択的に埋めようとする場合、有機成分(前記バインダ(PVdF)、および前記F-アイオノマー)と無機成分(無機Al2O3)の配合比を適切な範囲に制御することによって前記選択された第2気孔の全部を埋めることができる。
【0164】
実験例2(局部短絡発生有無の観察)
前記実験例1により駆動された比較例1のリチウム二次電池の20回目のサイクルで内部短絡が発生したセルを分解して分離膜を回収した。そのため回収された比較例1の分離膜をデジタルカメラとデジタル顕微鏡(Dino-Lite Digital Microscope)でそれぞれ撮影し、それぞれの撮影イメージを
図1に示した。
【0165】
具体的には、前記回収された比較例1の分離膜について、厚さの中心を基準として両面を分離した後デジタルカメラで写真を撮影して
図3Aに示した。
図1の左側から右側の順に、前記回収された分離膜の両面のうち負極と当接する面の外部および内部、正極と当接する面の内部および外部に該当する。
図1の挿入図面は、前記正極と当接する面の内部のうち円で表した部分をデジタル顕微鏡で撮影したイメージに該当する。
【0166】
比較例1の分離膜は第1空隙の全部および第2空隙の全部が、すべて開いており、負極から成長した金属柱の攻撃に脆弱であることがわかる。そのため攻撃を受けた部分が
図1の挿入図面で観察された。
【0167】
実験例3(分離膜のイオン伝導度評価)
実施例1~3および比較例1~4の各分離膜を円形(断面積:1.7671cm2)に切断した後、2枚のステンレススチール(SUS)の間に配置してコインセルを製作した。分析装置(VMP3,Bio logic science instrument)を用いて60℃で振幅(amplitude)10mVおよびスキャン範囲(scan range)10Khz~100KHz条件で電気化学的インピーダンス分析(Electrochemical Impedance Spectroscopy)を実施し、これに基づいてイオン伝導度を計算して下記表2に示した。
【0168】
【0169】
前記表2によれば、イオン伝導性の側面では第1空隙の全部および第2空隙の全部が開いている分離膜(比較例1)、または第1空隙の全部と第2空隙の一部が開いている場合(比較例3)と第1空隙と第2空隙を埋めても洗浄により空隙内部壁にのみコートした分離膜(比較例4)が有利であるが、電池の20回目~40回目サイクルで局部短絡が発生する場合が多数発生する結果から、このような分離膜は短絡(short)がよく発生しない電池構成では商用化が可能でも短絡(short)がよく発生する電池構成では商用化できないと評価される。
【0170】
これに対し、第1空隙の全部および第2空隙の全部を埋める場合(比較例2)、これらのうちいずれか一方を埋めた場合(実施例1~3)に比べてイオン伝導度が顕著に低下し、これによって電池の寿命が減少することが確認される。これは第1空隙の全部および第2空隙の全部を埋める場合、リチウム二次電池内で電解質に含浸されてリチウムのイオン通路を提供する空間が顕著に減少したことと合致する。
【0171】
一方、第1空隙の全部および第2空隙の全部が開いている分離膜(比較例1)と、これらのうちいずれか一方を埋めた場合(実施例1~3)のイオン伝導度や寿命特性は類似する水準である。これは第1空隙の全部および第2空隙の全部のうちいずれか一方の空隙を選択的に埋める手段としてイオン伝導度に優れたイオン伝導性ポリマー、特にF-アイオノマーを使用したことに起因する。
【0172】
第1空隙の全部および第2空隙の全部のうちいずれか一方の空隙を埋めた場合(実施例1~3)においては、前記第1空隙の全部を選択的に埋めた実施例2のイオン伝導度および寿命特性に最も優れたことが確認される。
【0173】
前記第2空隙の全部を選択的に埋めた分離膜に比べて前記第1空隙の全部を選択的に埋めた分離膜のイオン伝導度がさらに高いのは、空隙が埋められた層が占める体積(portion)が小さいからである。
【0174】
ただし、前記第2空隙の全部を選択的に埋めても分離膜のイオン伝導度を確保するには充分である。もちろん、前記第1空隙、2空隙の全部を埋めること(比較例2)は、イオン伝導度および寿命特性の側面からいずれも不利である。