(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H01L21/60 301J
(21)【出願番号】P 2021539173
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027307
(87)【国際公開番号】W WO2021029174
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019148522
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富山 俊彦
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217385(WO,A1)
【文献】特開2011-49498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが挿通するボンディングツールが先端に取付けられる超音波ホーンと、
前記超音波ホーンが取付けられるボンディングアームと、を備え、
前記ボンディングツールをボンディング対象に接離させて前記ワイヤを前記ボンディング対象にボンディングするワイヤボンディング装置であって、
前記ボンディングアームから長手方向に突出して前記ワイヤを把持するクランプアームと、前記ボンディングアームの上側に取付けられて前記クランプアームを開閉動作させるアクチュエータを収容する基体部と、を有するワイヤクランパと、
前記ワイヤクランパの前記アクチュエータの開閉動作を調整する制御部と、を含み、
前記制御部は、
ボンディングの際に前記ワイヤクランパの前記アクチュエータによって前記クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記制御部は、
ボンディングの際に前記ワイヤクランパの前記アクチュエータによって前記クランプアームを前記クランプアームの共振周波数の80%~120%の周波数で開閉方向に駆動すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤクランパの前記クランプアームの長さは前記超音波ホーンの長さの80%~120%の長さであること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項4】
請求項2に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤクランパの前記クランプアームの長さは前記超音波ホーンの長さの80%~120%の長さであること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤクランパは、前記アクチュエータに所定の開放電圧が印加されると前記クランプアームが開放状態となり、前記アクチュエータに電圧が印加されない場合には前記クランプアームが閉状態となり、
前記制御部は、
前記アクチュエータに所定の前記開放電圧と同一又は所定の前記開放電圧より低いベース電圧を中心として所定の電圧幅で変動する変動電圧を印加することにより、前記クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記ベース電圧は、所定の前記開放電圧の80%~100%の電圧であり、
所定の前記電圧幅は、所定の前記開放電圧の8%~30%の電圧であること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のボンディング装置であって、
前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させる超音波振動子を含み、
前記制御部は、
前記超音波振動子の駆動を調整し、
ボンディングの際に前記ワイヤクランパの前記アクチュエータによって前記クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させると同時に、前記超音波振動子を超音波振動させて前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項8】
請求項5に記載のボンディング装置であって、
前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させる超音波振動子を含み、
前記制御部は、
前記超音波振動子の駆動を調整し、
ボンディングの際に前記ワイヤクランパの前記アクチュエータによって前記クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させると同時に、前記超音波振動子を超音波振動させて前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項9】
請求項6に記載のボンディング装置であって、
前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させる超音波振動子を含み、
前記制御部は、
前記超音波振動子の駆動を調整し、
ボンディングの際に前記ワイヤクランパの前記アクチュエータによって前記クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させると同時に、前記超音波振動子を超音波振動させて前記超音波ホーンを長手方向に超音波振動させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤをボンディング対象にボンディングするボンディング装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイの電極とリードフレームのリードとの間をワイヤで接続するワイヤボンディング装置が多く用いられている。ワイヤボンディング装置は、キャピラリによってワイヤを電極の上に押し付けた状態でキャピラリを超音波振動させてワイヤと電極とを接合した後、ワイヤをリードまで掛け渡し、掛け渡したワイヤをリードの上に押しつけた状態でキャピラリを超音波させてワイヤとリードとを接続するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ワイヤボンディング装置では、キャピラリの超音波振動の方向は、超音波ホーンの伸びる方向(以下、Y方向という)である。このため、ワイヤと電極との接合部分或いはワイヤとリードとの接合部分の形状がキャピラリの超音波振動の方向であるY方向に延びた形状となってしまい接合不良を招く場合があった。
【0004】
そこで、超音波ホーンと超音波ホーンのアクチュエータとの間を弾性変形可能なフレキシブル連結フレームで構成し、キャピラリをアクチュエータの振動方向であるY方向とともにY方向に直交するX方向に振動させる構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際出願公開第2017/217385号
【文献】特許第6073991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボンディングは、10msec程度の非常に短い時間で行うことが求められている。このため、ボンディングの際にキャピラリの先端を高い周波数でX方向に振動させることが求められる。この点に関し、引用文献2に記載された構成では、フレキシブル連結フレームと超音波ホーンとが一体となってX方向に振動するので、X方向に振動する質量が大きく、高い周波数で超音波ホーンをX方向に振動させることが難しかった。このため、短時間でボンディングする際には、ボンディング中のキャピラリの先端の振動回数が少なくなってしまい、ボンディング品質が低下する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、ワイヤボンディング装置においてボンディング品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイヤボンディング装置は、ワイヤが挿通するボンディングツールが先端に取付けられる超音波ホーンと、超音波ホーンが取付けられるボンディングアームと、を備え、ボンディングツールをボンディング対象に接離させてワイヤをボンディング対象にボンディングするワイヤボンディング装置であって、ボンディングアームから長手方向に突出してワイヤを把持するクランプアームと、ボンディングアームの上側に取付けられてクランプアームを開閉動作させるアクチュエータを収容する基体部と、を有するワイヤクランパと、ワイヤクランパのアクチュエータの開閉動作を調整する制御部と、を含み、制御部は、ボンディングの際にワイヤクランパのアクチュエータによってクランプアームを開放状態で開閉方向に振動させること、を特徴とする。
【0009】
ボンディングの際に、軽量のクランプアームを開放方向であるX方向に振動させることにより、高い周波数でクランプアームを振動させることができる。そして、クランプアームで発生した高い周波数の振動を超音波ホーンの先端に伝達してボンディングの際にボンディングツールを高周波でX方向に振動させることができる。これにより、短時間でボンディングを行う場合でもボンディング中におけるボンディングツールの先端のX方向の振動回数を多くすることができ、ボンディング品質を向上させることができる。
【0010】
本発明のワイヤボンディング装置において、制御部は、ボンディングの際にワイヤクランパのアクチュエータによってクランプアームをクランプアームの共振周波数の80%~120%の周波数で開閉方向に駆動してもよい。
【0011】
これにより、少ない入力エネルギーでクランプアームを大きく振動させることができ、ボンディングの際にボンディングツールを十分にX方向に振動させることができる。これにより、ボンディング品質を向上させることができる。
【0012】
本発明のワイヤボンディング装置において、ワイヤクランパのクランプアームの長さは超音波ホーンの長さの80%~120%の長さとしてもよい。
【0013】
これにより、クランプアームのX方向の共振周波数と超音波ホーンのX方向の共振周波数とが略同一の周波数となり、クランプアームのX方向の共振に対応して超音波ホーンがX方向に共振する。このため、クランプアームの共振による振動がスムースに超音波ホーンに伝達され、超音波ホーンの先端に取付けられたキャピラリを十分にX方向に振動させることができる。これにより、ボンディング品質を向上させることができる。
【0014】
本発明のワイヤボンディング装置において、ワイヤクランパは、アクチュエータに所定の開放電圧が印加されるとクランプアームが開放状態となり、アクチュエータに電圧が印加されない場合にはクランプアームが閉状態となり、制御部は、アクチュエータに所定の開放電圧と同一又は所定の開放電圧より僅かに低いベース電圧を中心として所定の電圧幅で変動する変動電圧を印加することにより、クランプアームを開放状態で開閉方向に振動させてもよい。この際、ベース電圧は、所定の開放電圧の80%~100%の電圧であり、所定の電圧幅は、所定の開放電圧の8%~30%の電圧としてもよい。
【0015】
これにより、クランプアームがワイヤに接触しない開放状態を保ちながらクランプアームを振動させることができる。このため、クランプアームの振動周波数を共振周波数或いは共振周波数の近傍の周波数とすることができる。
【0016】
本発明のワイヤボンディング装置において、超音波ホーンを長手方向に超音波振動させる超音波振動子を含み、制御部は、超音波振動子の駆動を調整し、ボンディングの際にワイヤクランパのアクチュエータによってクランプアームを開放状態で開閉方向に振動させると同時に、超音波振動子を超音波振動させて超音波ホーンを長手方向に超音波振動させてもよい。
【0017】
この構成により、ボンディングツールの先端をXY方向に振動させた状態でボンディングを行ことができる。これにより、ワイヤの接合部分に形状がY方向に延びた変形形状となって接合不良となることを抑制でき、ボンディング品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ワイヤボンディング装置においてボンディング品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のワイヤボンディング装置の側面と制御系統を示す系統図である。
【
図2A】
図1に示すワイヤボンディング装置のボンディングアームと超音波ホーンとを示す底面図である。
【
図2B】
図1に示すワイヤボンディング装置のボンディングアームとワイヤクランパとを示す平面図である。
【
図3】ワイヤクランパへの印加電圧とクランプアーム先端の開寸法Gとの関係を示すグラフである。
【
図4】
図3に示す印加電圧Vが開放電圧V0、印加電圧VB1、印加電圧VB2の際のクランプアーム先端の開寸法Gを示す平面図である。
【
図5A】ボンディング前にワイヤの下端をフリーエアボールに成形した際の超音波ホーンとワイヤクランパとの状態を示す立面図である。
【
図5B】半導体素子にワイヤをボンディングする際の超音波ホーンとワイヤクランパとの状態を示す立面図である。
【
図5C】基板にワイヤをボンディングする際の超音波ホーンとワイヤクランパとの状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、実施形態のワイヤボンディング装置100について説明する。以下の説明では、超音波ホーン10及びボンディングアーム20の延びる方向、或いは、ボンディングアーム20及び超音波ホーン10の長手方向で、ボンディングアーム20から超音波ホーン10に向かう方向をY方向、上方向をZ方向、Y方向及びZ方向と直交する方向をX方向として説明する。また、Y方向プラス側を先端側、Y方向マイナス側を根元側、Z方向プラス側を上側、Z方向マイナス側を下側、X方向プラス側を右側、X方向マイナス側を左側として説明する。
【0021】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置100は、超音波ホーン10と、ボンディングアーム20と、ワイヤクランパ30と、制御部60と、ボンディング対象である基板52或いは半導体素子53とを保持するボンディングステージ51とを含んでいる。
【0022】
図1、
図2Aに示すように、超音波ホーン10は、ホーン本体11と、ホーン本体11のY方向マイナス側(以下、根元側という)に形成されたベース部12と、ベース部12の中に形成された開口13と、開口13の中に収容された超音波振動子16とを備えている。ベース部12は、X方向に張り出したフランジ14を備えている。根元側のフランジ14は、ボルト15によってボンディングアーム20のY方向プラス側端21(以下、先端21という)に取付けられている。ボンディングアーム20の先端21に固定される超音波ホーン10のフランジ14からホーン本体11のY方向プラス側端までの長さは、長さLhとなっている。超音波ホーン10のホーン本体11のY方向プラス側端には、ボンディングツールであるキャピラリ41が取付けられている。キャピラリ41は、中心に貫通孔を有する先端が尖った円筒形部材である。キャピラリ41の中心孔には、ワイヤ45が挿通されている。
【0023】
超音波振動子16が所定の周波数でY方向に超音波振動すると、ホーン本体11はY方向に共振して縦振動し、ホーン本体11の先端側に取付けられているキャピラリ41をY方向に振動させる。
【0024】
図1に示すように、ボンディングアーム20は、基板52或いは半導体素子53の上面と略同一高さに配置された回転中心26で矢印90に示す方向に回転自在に支持されている。後端部には、超音波ホーン10の先端に接続されたキャピラリ41をZ方向に駆動するZ方向モータ27と、Z方向モータ27が搭載されたベース28をXY方向に駆動するXY駆動機構29とが取付けられている。また、ボンディングアーム20の先端側の上面には、圧電素子17がボルト18によって取付けられている。圧電素子17は、キャピラリ41の基板52又は半導体素子53への押圧力を検出する。
【0025】
図1、
図2Bに示すように、ボンディングアーム20の上側には、ワイヤクランパ30が取付けられている。ワイヤクランパ30は、クランプアーム31と、基体部32とを含んでいる。基体部32は、ボンディングアーム20の上側の座24の上にボルト25で固定されている。基体部32は中央に四角い開口33を有し、開口33の中にはアクチュエータ34が収容されている。アクチュエータ34は、例えば、ピエゾ素子で構成されてもよい。
【0026】
基体部32のY方向プラス側には先端側に向かって延びる左右のアーム取付け部36が設けられている。アーム取付け部36には、クランプアーム31がボルト35で固定されている。クランプアーム31は先端がボンディングアーム20の先端21からY方向に突出してワイヤ45を把持する。また、左右のアーム取付け部36の間には、凹部38が設けられている。凹部38によりアーム取付け部36の根元部には、Z方向軸の周りに回転する弾性ヒンジ37が形成される。弾性ヒンジ37からクランプアーム31の先端までの長さは、長さLcである。長さLcは、ボンディングアーム20の先端21に固定される超音波ホーン10のフランジ14からホーン本体11のY方向プラス側端までの長さLhと略同様の長さとなっている。
【0027】
次に、
図3、
図4を参照しながら、ワイヤクランパ30のアクチュエータ34への印加電圧Vとクランプアーム31の開寸法Gの関係について説明する。
図3に示すように、アクチュエータ34に所定の電圧が印加されていない場合は、クランプアーム31の開寸法Gはゼロとなり、ワイヤクランパ30は閉状態となる。この際、左右のクランプアーム31の間にワイヤ45がある場合には、クランプアーム31はワイヤ45を把持する。
【0028】
アクチュエータ34に所定の開放電圧V0が印加されるとクランプアーム31は弾性ヒンジ37の周りに回転し、
図4に実線で示すようにクランプアーム31の先端が開閉方向であるX方向に開き、開寸法Gは全開寸法G0となる。全開寸法G0は、ワイヤ45の直径dよりも大きいので、クランプアーム31はワイヤ45を開放する。
【0029】
図3の実線aに示すように、アクチュエータ34への印加電圧Vとクランプアーム31の先端の開寸法Gとは略比例関係にあり、印加電圧Vを大きくするとそれに従ってクランプアーム31の先端の開寸法Gも大きくなっていく。
図3に示すように、印加電圧Vを開放電圧V0よりも少し低い印加電圧V1とした場合、クランプアーム31の先端の開寸法Gは、
図4に破線で示すクランプアーム31のように全開寸法G0よりもすこし小さい大開寸法G1となる。また、印加電圧Vを印加電圧VB1よりも低い印加電圧VB2とすると、クランプアーム31の先端の開寸法Gは、
図4に一点鎖線で示すクランプアーム31のように大開寸法G1よりも小さい小開寸法G2となる。小開寸法G2はワイヤ45の直径dよりも大きいので、クランプアーム31の先端の開寸法Gが小開寸法G2の場合もクランプアーム31はワイヤ45に当たらず、ワイヤクランパ30は開放状態を保つ。従って、印加電圧Vを印加電圧VB1とVB2との間で変動させると、ワイヤクランパ30の開放状態を保ったまま、クランプアーム31の先端の開寸法Gを大開寸法G1と小開寸法G2との間で変動させることができる。ここで、印加電圧Vを印加電圧VB1と印加電圧VB2との間の変動電圧とするには、印加電圧VB1と印加電圧VB2の中央値をベース電圧VBとし、ベース電圧VBを中心に電圧幅ΔVだけ印加電圧Vを増減させてもよい。ベース電圧VB、電圧幅ΔVは自由に選択することができるが、例えば、ベース電圧VBは、開放電圧V0の80%~100%の電圧とし、電圧幅ΔVは、開放電圧V0の8%~30%の電圧としてもよい。
【0030】
制御部60は、クランパ制御部61と、ボンディング制御部62とを含んでいる。クランパ制御部61は、ワイヤクランパ30のアクチュエータ34の印加電圧Vを調整してクランプアーム31を開閉動作させる。ボンディング制御部62は、圧電素子17からの信号が入力され、Z方向モータ27を調整してキャピラリ41の先端を基板52或いは半導体素子53に対して接離方向に駆動する。また、XY駆動機構29を制御してキャピラリ41のXY方向の位置を調整する。また、超音波ホーン10の超音波振動子16を駆動してホーン本体11をY方向に超音波振動させる。
【0031】
次に
図5A~
図5C、
図6B、
図6Bを参照しながら、以上のように構成されたワイヤボンディング装置100のボンディング動作について説明する。
【0032】
図5Aに示すように、クランパ制御部61は、ワイヤクランパ30のアクチュエータ34の印加電圧Vをゼロとしてワイヤクランパ30を閉状態としワイヤクランパ30にワイヤ45を把持させる。ボンディング制御部62は、図示しないトーチ電極とキャピラリ41の先端から延出したワイヤ45との間でスパークを発生させてワイヤ45の下端をフリーエアボール50に成形する。
【0033】
図5Bに示すように、クランパ制御部61は、ワイヤクランパ30のアクチュエータ34への印加電圧Vを
図3に示すベース電圧VBを中心に電圧幅ΔVの範囲において周波数f0で振動させる。
【0034】
これにより、アクチュエータ34への印加電圧Vは、
図3に示す印加電圧V1と印加電圧V2の範囲で周波数f0で振動し、クランプアーム31の先端の開寸法Gは
図4に示すように大開寸法G1と小開寸法G2との間で周波数f0で振動する。このように、クランパ制御部61は、ワイヤクランパ30の開放状態を保ったまま、クランプアーム31を周波数f0で振動させる。ここで、周波数f0をクランプアーム31がX方向に振動する共振周波数f1に近い周波数とすると、
図6Bに矢印96で示すように、クランプアーム31は、共振により弾性ヒンジ37を中心にX方向に横振動する。周波数f0は、クランプアーム31のX方向の振動の共振周波数f1に近い周波数であればよい。クランプアーム31の共振周波数が、例えば、略2kHzの場合には2kHzの近傍周波数、例えば、1.9kHz~2.0kHz程度の周波数としてもよい。クランプアーム31は軽量であることからこのような高周波でも十分にX方向に振動可能である。これにより、短時間でボンディングを行う場合でもボンディング中のキャピラリ41の先端のX方向の振動回数を多くすることができる。なお、周波数f0は、クランプアーム31がX方向に共振する周波数であれば、例えば、f1/√2<f0<f1×√2のような範囲から選択してもよいし、クランプアーム31のX方向の共振周波数f1の80%~120%の範囲の周波数から選択するようにしてもよい。
【0035】
クランプアーム31が共振するとクランプアーム31のX方向の振動は、ボンディングアーム20から超音波ホーン10に伝達される。ここで、ワイヤクランパ30の弾性ヒンジ37からクランプアーム31の先端までの長さLcは、ボンディングアーム20の先端21に固定される超音波ホーン10のフランジ14からホーン本体11のY方向プラス側端までの長さLhと略同様の長さとなっている。このため、超音波ホーン10のX方向の共振周波数f2は、クランプアーム31のX方向の共振周波数f1に近い周波数となる。このため、ボンディングアーム20から伝達されたクランプアーム31のX方向の共振振動により、
図6Aに矢印97で示すように超音波ホーン10がX方向に共振し、ホーン本体11の先端がX方向に横振動する。これにより、ホーン本体11の先端に取付けられているキャピラリ41がX方向に振動する。
【0036】
一方、ボンディング制御部62は、超音波ホーン10の超音波振動子16に所定の電圧を印加して超音波振動子16を超音波振動させる。ホーン本体11にはY方向の超音波共振が発生し、これにより、
図5Bの矢印92に示すように、キャピラリ41の先端がY方向に振動する。
【0037】
このように、クランパ制御部61はクランプアーム31を振動させて、超音波ホーン10及びキャピラリ41の先端をX方向に振動させ、ボンディング制御部62が超音波振動子16を駆動してキャピラリ41の先端をY方向に振動させる。このように、キャピラリ41の先端がXY方向に振動した状態で、ボンディング制御部62はZ方向モータ27を動作させて、
図5Bの矢印91に示すようにキャピラリ41を半導体素子53の電極に押し付けてフリーエアボール50を半導体素子53の電極にボンディングする。
【0038】
半導体素子53へのボンディングが終了したら、ボンディング制御部62は、Z方向モータ27を動作させてキャピラリ41を上昇させる。また、クランパ制御部61はアクチュエータ34の印加電圧Vをゼロとしてクランプアーム31でワイヤ45を把持する。そしてボンディング制御部62は、Z方向モータ27とXY駆動機構29とを動作させて
図5Cに示す矢印93のようにキャピラリ41の先端をルーピングさせて基板52の電極の上に導く。
【0039】
ここで、クランパ制御部61は、フリーエアボール50のボンディングの際と同様、ワイヤクランパ30のアクチュエータ34の印加電圧Vをクランプアーム31のX方向の振動の共振周波数f1に近い周波数f0で振動させる。これにより、クランプアーム31は
図6Bに矢印96で示すように、共振により弾性ヒンジ37を中心にX方向に横振動する。また、
図6Aに矢印97で示すように、ホーン本体11の先端がX方向に横振動してキャピラリ41の先端がX方向に振動する。また、ボンディング制御部62は、超音波振動子16を駆動して
図5Cの矢印95に示すようにキャピラリ41の先端をY方向に振動させる。そして、キャピラリ41の先端がXY方向に振動した状態で、ボンディング制御部62はZ方向モータ27を駆動して
図5Cの矢印94に示すようにキャピラリ41の先端を基板52の電極に押し付けて基板52の電極にワイヤ45をボンディングする。
【0040】
以上説明したワイヤボンディング装置100では、ワイヤクランパ30の弾性ヒンジ37からクランプアーム31の先端までの長さLcと、超音波ホーン10のフランジ14からホーン本体11のY方向プラス側端までの長さLhと略同様の長さなっている。このため、クランプアーム31のX方向の共振周波数f1と超音波ホーン10のX方向の共振周波数f2とが同様の振動数となっている。この構成により、クランプアーム31のX方向の共振振動により超音波ホーン10をX方向に共振振動させてキャピラリ41の先端をX方向に振動させることができる。また、超音波振動子16によって超音波ホーン10のホーン本体11をY方向に共振させてキャピラリ41の先端をY方向に振動させることができる。このため、キャピラリ41の先端をXY方向に振動させた状態でワイヤ45を半導体素子53の電極或いは基板52の電極にボンディングすることができる。これにより、ワイヤ45の接合部分に形状がY方向に延びた変形形状となって接合不良となることを抑制でき、ボンディング品質を向上させることができる。また、ワイヤ45と半導体素子53の電極或いは基板52の電極との接合強度を高くすることができる。
【0041】
なお、クランプアーム31のX方向の共振振動により超音波ホーン10をX方向に共振振動させてキャピラリ41の先端をX方向に振動させることができれば、長さLcと長さLhが略同様の長さではなく、例えば、長さLcを長さLhの80%~120%の範囲としてもよい。
【0042】
また、クランプアーム31のX方向の共振周波数f1、超音波ホーン10のX方向の共振周波数f2は、例えば、2kHz近傍の高い周波数であることから、キャピラリ41先端を高周波でX方向に振動させることができ、短時間でボンディングを行う場合でもボンディング中のキャピラリ41の先端のX方向の振動回数を多くすることができる。これにより、ボンディングの品質を向上させることができる。
【0043】
更に、ベース電圧VBを開放電圧V0の80%~100%の電圧とし、電圧幅ΔVを開放電圧V0の8%~30%の電圧とすることにより、確実にワイヤクランパ30を開放状態に保ったまま、クランプアーム31をX方向に振動させることができる。これにより、振動中にクランプアーム31がワイヤ45に触れてX方向の振動が乱れることを抑制でき、ボンディング品質を向上させることができる。
【0044】
また、以上説明した実施形態のワイヤボンディング装置100では、キャピラリ41の先端をXY方向に振動させてボンディングを行うこととして説明したが、これに限らず、超音波振動子16を駆動せず、クランプアーム31のみをX方向に振動させることによりキャピラリ41の先端をX方向にのみ振動させてボンディングを行うようにしてもよい。この場合でも、実施形態のワイヤボンディング装置100では、高い周波数でキャピラリ41の先端をX方向に振動させることができるので、短時間でボンディングを行う際にもキャピラリ41の振動の回数を多くすることができ、ボンディング品質を維持することができる。
【0045】
また、ワイヤ45の太さやボンディング条件によっては、半導体素子53の電極にフリーエアボール50をボンディングする際にはクランプアーム31をX方向に振動させずに超音波振動子16のみを駆動してキャピラリ41の先端をY方向に超音波振動させ、基板52の電極にワイヤ45をボンディングする際には、超音波振動子16を駆動せずにクランプアーム31のみをX方向に振動させてキャピラリ41の先端をX方向に振動させてもよい。これにより、ボンディングの際の圧着ボールの潰れを抑制してボンディング品質を向上させることができる。
【0046】
また、以上説明したワイヤボンディング装置100では、超音波ホーン10は、ホーン本体11の根元側のフランジ14がボンディングアーム20の先端に取付けられることとして説明したが、これに限らず、ホーン本体11の根元以外の部分をボンディングアーム20の中央部或いは、先端近傍に取付けられるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波ホーン、11 ホーン本体、12 ベース部、13,33 開口、14 フランジ、15,18,25,35 ボルト、16 超音波振動子、17 圧電素子、20 ボンディングアーム、21 先端(Y方向プラス側端)、24 座、26 回転中心、27 Z方向モータ、28 ベース、29 XY駆動機構、30 ワイヤクランパ、31 クランプアーム、32 基体部、34 アクチュエータ、36 アーム取付け部、37 弾性ヒンジ、38 凹部、41 キャピラリ、45 ワイヤ、50 フリーエアボール、51 ボンディングステージ、52 基板、53 半導体素子、60 制御部、61 クランパ制御部、62 ボンディング制御部、100 ワイヤボンディング装置。