(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料およびその調製と使用
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20221212BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20221212BHJP
C07C 255/58 20060101ALI20221212BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221212BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20221212BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
C09K11/06 620
C07C253/30
C07C255/58
C09K11/06 640
H05B33/14 B
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021568348
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(86)【国際出願番号】 CN2020070205
(87)【国際公開番号】W WO2020228359
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】201910396951.8
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】唐 本忠
(72)【発明者】
【氏名】秦 安軍
(72)【発明者】
【氏名】韓 鵬博
(72)【発明者】
【氏名】馬 東閣
(72)【発明者】
【氏名】徐 増
(72)【発明者】
【氏名】趙 祖金
(72)【発明者】
【氏名】胡 蓉蓉
(72)【発明者】
【氏名】王 志明
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220298(JP,A)
【文献】特開平8-259940(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/081873(JP,A1)
【文献】国際公開第2016/199743(WO,A1)
【文献】特開2003-048868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C07C 253/30
C07C 255/58
H01L 51/50
B01J 31/24
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造式を有し、
【化1】
前記R
1
は
【化2】
であり、
ここで、R’は水素原子、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは1~10の自然数であり、*は置換の位置であり、
前記R
2は
【化3】
であり、
ここで、R’’は、水素原子、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であり、*は置換位置である、ことを特徴とする、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料。
【請求項2】
前記アルキル鎖は、1~20個の炭素原子を有する、直鎖、分岐または環状アルキル鎖であるか、または1つ以上の炭素原子が酸素原子、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボニル、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、シアノ基、ニトロまたはエステル基で置換されたアルキル鎖であるか、または1つ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されたアルキル鎖であることを特徴とする、請求項
1に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の調製方法であって、
1,4-ジブロモ-2,5-テルフェニルおよびR
2で置換されたフェニルボロン酸を原料として、鈴木反応によりR
2を含む芳香族環化合物を得る段階と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒の作用により、R
2を含む芳香族環化合物をR
1で置換されたフェニルボロン酸またはホウ酸塩と反応させて、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料を得る段階とを含み、
上記調製方法の反応式は次のとおりであることを特徴とする、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の調製方法。
【化4】
【請求項4】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける請求項
1または
2に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電材料の分野に属し、具体的には、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料およびその調製と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクス産業の台頭と活発な発展に伴い、有機光電材料は有機エレクトロルミネッセンスダイオードの分野で広く使用されており、その重要な科学的研究価値と幅広い商業的応用の見通しにより、急速に成長する1つの材料科学の分野になってきた。より優れた性能、高い発光効率、および調整可能な発光波長を備えた有機発光材料の探索と開発は、研究者の急務となっている。しかし、従来の材料は凝集状態で発光を消光するため、高効率の発光材料の開発は非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の上記の欠点および欠陥を考慮して、本発明の主な目的は、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料を提供することである。テトラフェニルベンゼンの分子構造は単純で、化学修飾や官能基化に便利である。本発明は、テトラフェニルベンゼンを使用して、高い固体発光効率を有する材料を構築する。テトラフェニルベンゼンを正孔輸送材料および電子輸送材料と組み合わせると、高い固体発光効率と二段輸送特性を備えた発光材料を得ることができる。これらの材料は、有機光電の分野で優れた性能を示している。一般に、テトラフェニルベンゼンは、構造が単純で、凝集誘起発光特性を備えた優れた性能を備えた官能基であり、有機光電材料の構築に幅広い応用が期待されている。
【0004】
本発明の別の目的は、上記のテトラフェニルベンゼン含有有機発光材料を調製するための方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける上記のテトラフェニルベンゼン含有有機発光材料の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術案を通じて達成される。
【0007】
式Iに示す構造式を有するテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料であり、
【化1】
ここで、R
1は芳香環誘導体の電子供与基であり、R
2は芳香環誘導体の電子吸引基である。
【0008】
さらに、前記R
1は次の1~20の置換基の1つであり、
【化2】
ここで、R’は水素原子、tert-ブチル基、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であり、*は置換の位置であり、
前記R
2は、以下のa~o置換基のうちの1つであり、
【化3】
ここで、R
’’は水素原子、tert-ブチル基、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であり、*は置換位置である。
【0009】
さらに、前記アルキル鎖は、1~20個の炭素原子を有する、直鎖、分岐または環状アルキル鎖であるか、または1つ以上の炭素原子が酸素原子、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボニル、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、シアノ基、ニトロまたはエステル基で置換されたアルキル鎖であるか、または1つ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されたアルキル鎖である。
【0010】
上記テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料を調製するための方法は、
1,4-ジブロモ-2,5-テルフェニルおよびR
2で置換されたフェニルボロン酸を原料として、鈴木反応によりR
2を含む芳香族環化合物を得る段階と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒の作用により、R
2を含む芳香族環化合物をR
1で置換されたフェニルボロン酸またはホウ酸塩と反応させて、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料を得る段階とを含む。
上記調製方法の反応式は次のとおりである。
【化4】
【0011】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける上記テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の用途である。
【0012】
本発明では、テトラフェニルベンゼン誘導体のキャリア輸送性能を十分に調整するために、異なる電子供与基および電子吸引基をテトラフェニルベンゼンに接続させる。得られた構造はねじれており、凝集状態では強いπ-π相互作用が発生しにくい。さらに、このねじれた分子構造は、材料の三重項エネルギーレベルを高めるのに有益であるため、得られた材料を異なる色の発光ボディ材料とすることができる。有機エレクトロルミネッセンスデバイスの特性データから、本発明のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料が発光層として使用できるだけでなく、リン光ホスト材料としても使用でき、それによって良好な光電性能シンプルな構造、コスト低いエレクトロルミネッセンスデバイスを調製できることを示すことができる。有機エレクトロルミネッセンスの分野で幅広い用途が見込まれており、フラットパネルディスプレ固体照明で広く使用されることが期待されている。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比較して、本発明は、以下の利点および有益な効果を有する。
(1)本発明のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料は、高効率の固体発光および双極性の特徴を有し、高効率、低効率のロールオフ、ドープされていない青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを生成することができる。
(2)本発明のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料は、合成方法が簡単で、原料が入手しやすく、収率が高く、構造が安定しており、保管が簡単である。
(3)本発明のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料は、優れたエレクトロルミネッセンス性能を有し、有機エレクトロルミネッセンスおよび他の分野で広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
【
図2】実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。
【
図3】実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製された混合白色光OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
【
図4】実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製された混合白色光 OLEDsデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。
【
図5】実施例2のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
【
図6】実施例2のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施例および図面を参照してさらに詳細に説明するが、本発明の実施例はこれに限定されない。
【0016】
(実施例1)
本実施例は、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(TPA-TPB-CN)の調製を例示する。
【化5】
【0017】
【0018】
(1)p-ブロモテルフェニル(化合物1)(6g,15.5mmol)、4-シアノフェニルボロン酸(化合物2)(2.50g,17.0mmol)、無水炭酸カリウム(6.4g,46.5mmol)およびPd(PPh3)4(895mg,0.8mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、105mLのTHFおよび15mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体3が73%の収率で得られた。
【0019】
(2)中間体3(2.136g,1.5mmol)、4-フェニルボロン酸トリフェニルアミン(化合物4)(1.6g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体TPA-TPB-CNが得られ、収率は85%である。製品識別データは次のとおりである。
1H NMR(MHz):δ(TMS,ppm):7.59(s,1H),7.55(t,1H),7.53(t,1H),7.51(d,3H),7.48(d,2H),7.37(t,1H),7.35(t,1H),7.26(m,14H),7.22(m,2H),7.10(m,6H),7.03(m,2H)。
【0020】
(実施例2)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(Cz-TPB-CN)の調製を例示する。
【化7】
【0021】
【0022】
中間体3(2.136g,1.5mmol)、4-ボロン酸カルバゾール(化合物5)(1.119g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体Cz-TPB-CNが得られ、収率は86%である。製品識別データは次のとおりである。
1H NMR(500MHz,CD2Cl2),δ(TMS,ppm):8.16(m,1H),8.14(m,1H),7.69(s,1H),7.58(d,2H),7.56(m,1H),7.47(d,4H),7.45-7.38(m,6H),7.35-7.25(m,12H)。
【0023】
(実施例3)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(3PhCz-TPB-CN)の調製を例示する。
【化9】
【0024】
【0025】
中間体3(2.136g,1.5mmol)、化合物6(1.415g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体3PhCz-TPB-CNが得られ、収率は84%である。製品識別データは次のとおりである。
1H NMR(500MHz,CDCl3),δ(TMS,ppm):8.35(d,1H),8.18 (m,1H),7.59-7.66(m,8H),7.50(d,3H),7.47(m,4H),7.27-7.45(d,13H),7.29(m,2H)。
【0026】
(実施例4)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(AD-TPB-CN)の調製を例示する。
【化11】
【0027】
【0028】
中間体3(2.136g,1.5mmol)、化合物7(1.283g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体AD-TPB-CNが得られ、収率は87%である。製品識別データは次のとおりである。
1H NMR(400MHz,):δ(TMS,ppm):7.69(s,1H),7.58(d,2H),7.56(t,1H),7.47(t,4H),7.40(t,1H),7.38(t,1H),7.33-7.25(m,10H),7.22(d,1H),7.20(s,1H),6.97(m,4H),6.26(m,2H),1.66(m,6H)。
【0029】
(実施例5)
本実施例テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(CzPh-TPB-CN)の調製を例示する。
【化13】
【0030】
【0031】
中間体3(2.136g,1.5mmol)、化合物8(1.416g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体CzPh-TPB-CNが得られ、収率は89%である。
【0032】
(実施例6)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(DPA-TPB-CN)の調製を例示する。
【化15】
【0033】
【0034】
中間体3(2.136g,1.5mmol)、化合物9(1.127g,3.9mmol)、無水炭酸カリウム(1.616g,11.7mmol)およびPd(PPh3)4(225mg,0.195mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、10mLのTHFおよび5mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体DPA-TPB-CNが得られ、収率は88%である。
【0035】
(実施例7)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(Cz-TPB-3Q)の調製を例示する。
【化17】
【0036】
【0037】
(1)p-ブロモテルフェニル(化合物1)(5.43g,14.0mmol)、カルバゾールフェニルボロン酸(化合物10)(4.82g,16.8mmol)、無水炭酸カリウム(5.8g,42.0mmol)およびPd(PPh3)4(809mg,0.7mmol)を250mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、90mLのTHFおよび21mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体11が得られ、収率は91%である。
【0038】
(2)中間体11(1.10g,2mmol)、4ボロン酸-1,3,5トリフェニルトリアジン(化合物12)(847mg,2.4mmol)、無水炭酸カリウム(828mg,6.0mmol)およびPd(PPh3)4(116mg,0.10mmol)を125mLの反応フラスコに加え、窒素の保護下で、14mLのTHFおよび3mLの水を加え、一晩還流した。反応を冷却した後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、次に、粉末化して、クロマトグラフィー分離を行った。白色の固体TPA-TPB-3Qが得られは、収率は84%である。
【0039】
(実施例8)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(TPA-TPB-CN)の青色OLEDの性能をテストする。
【0040】
実施例1で調製されたテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料TPA-TPB-CN(固体蛍光量子収率=93.2%)を発光材料として用いて、ドープされていない青色デバイスを調製し、そのデバイス性能をテストして評価した。結果を
図1~2に示す。
【0041】
デバイス構造:ITO/HAT-CN(5nm)/TAPC(50nm)/TCTA(5nm)/TPA-TPB-CN(20nm)/TmPyPB(40nm)/LiF(1nm)/Al。
【0042】
図1は、実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、TPB-CNに基づくドープされていないデバイスの最大輝度が高く、始動電圧が低く、3945cd/m
2,2.8Vであることがわかる。
【0043】
図2は、実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。図から、TPB-CNに基づくドープされていないデバイスは効率が良く、効率のロールオフが低下しており、最大外部量子効率は6.8%である。輝度が1000cd/m
2の場合、外部量子効率は依然として6.33%に維持され、発光波長は446nmであることがわかる。
【0044】
(実施例9)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(TPA-TPB-CN)の混合白色光OLEDsデバイスの性能をテストする。
【0045】
実施例1で調製したテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料TPA-TPB-CNを青色発光層および黄色リン光ホストとして使用して、2色白色デバイスを調製し、そのデバイスをテストして評価した。その結果は
図3~4に示す。
【0046】
デバイス構造:ITO/HAT-CN(5nm)/TAPC(50nm)/TCTA(5nm)/TPA-TPB-CN(8nm)/TPA-TPB-CN:3%PO-01(12nm)/TmPyPB (40nm)/LiF(1nm)/Al。
【0047】
図3は、実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(TPA-TPB-CN)の混合白色光OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、得られたデバイスの最大輝度が高く、始動電圧が低く、51393cd/m
2,2.8Vであることがわかる。
【0048】
図4は、実施例1のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(TPA-TPB-CN)の2色白色光OLEDsデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。図から、得られた2色白色光デバイスは効率が良く、効率のロールオフが低下しており、最大電力効率と外部量子効率はそれぞれ60.7lm/Wと19.1%である。輝度が1000cd/m
2の場合、外部量子効率は18.7%であることがわかる。
【0049】
(実施例10)
本実施例では、テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料(Cz-TPB-CN)のドープされていない青色OLEDsデバイスの性能をテストする。
【0050】
実施例2で調製されたテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料Cz-TPB-CN(固体蛍光量子収率=99.9%)を発光材料とし、ドープされていない青色デバイスを調製し、そのデバイスをテストして評価した。その結果は、
図5~6に示す。
【0051】
デバイス構造:ITO/HAT-CN(5nm)/TAPC(50nm)/mCP(5nm)/Cz-TPB-CN(20nm)/TmPyPB(40nm)/LiF(1nm)/Al。
【0052】
図5は、実施例2テトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料で調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、得られたデバイスの最大輝度および始動電圧はそれぞれ709cd/m
2と3.4Vである。
【0053】
図6は、実施例2のテトラフェニルベンゼンを含む有機エレクトロルミネッセンス材料を使用して調製されたドープされていない青色OLEDsデバイスの効率の変化を輝度の関数として示したグラフである。図から、得られたデバイスの効率が良く、効率のロールオフが低下し、最大外部量子効率は4.17%であることがわかる。輝度が100cd/m
2の場合、外部量子効率は3.80%である。
【0054】
上記のデータは、本発明がテトラフェニルベンゼンに異なる電子供与基を結合することにより、AIE性能と深青色発光の両方を備えた分子を取得し、このような材料を発光層として調製されたドープされていないOLEDsデバイスの効率高い、効率のロールオフが低下することを示している。このような材料をベースにしたシンプルな構造の非ドープOLEDは、始動電圧が低く、効率が高く、効率のロールオフがより低くなる。同時に、このような材料がホストとして使用され、2色の白色光デバイスを調製するために、得られたデバイスは高効率で低ロールオフを持っている。一言で言えば、この種の材料は、有機エレクトロルミネッセンスの分野で非常に幅広い用途の見通しを持っている。
【0055】
上記の実施例は、本発明の好ましい実施例であるが、本発明の実施例は、それに限定されるものではなく、本発明の要旨および原理から逸脱することなく行われた変更、修正、置換、組み合わせ、または簡略化したもの、または同等の代替品も、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0056】
(付記)
(付記1)
式Iの構造式を有し、
【化19】
R
1は芳香環誘導体の電子供与基であり、R
2は芳香環誘導体の電子吸引基である、ことを特徴とする、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料。
【0057】
(付記2)
前記R
1は次の1~20の置換基の1つであり、
【化20】
ここで、R’は水素原子、tert-ブチル基、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であり、*は置換の位置であり、
前記R
2は、以下のa~o置換基のうちの1つであり、
【化21】
ここで、R’’は水素原子、tert-ブチル基、メトキシ基、シアノ基、フッ素原子またはアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であり、*は置換位置であることを特徴とする、付記1に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料。
【0058】
(付記3)
前記アルキル鎖は、1~20個の炭素原子を有する、直鎖、分岐または環状アルキル鎖であるか、または1つ以上の炭素原子が酸素原子、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボニル、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、シアノ基、ニトロまたはエステル基で置換されたアルキル鎖であるか、または1つ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されたアルキル鎖であることを特徴とする、付記2に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料。
【0059】
(付記4)
付記1、2または3に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の調製方法であって、
1,4-ジブロモ-2,5-テルフェニルおよびR
2で置換されたフェニルボロン酸を原料として、鈴木反応によりR
2を含む芳香族環化合物を得る段階と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒の作用により、R
2を含む芳香族環化合物をR
1で置換されたフェニルボロン酸またはホウ酸塩と反応させて、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料を得る段階とを含み、
上記調製方法の反応式は次のとおりであることを特徴とする、テトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の調製方法。
【化22】
【0060】
(付記5)
有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける付記1、2または3に記載のテトラフェニルベンゼンを含む有機発光材料の用途。