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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/02 20060101AFI20221212BHJP
   A47C 7/16 20060101ALI20221212BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A47C7/02 Z
A47C7/16
A47C9/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022062545
(22)【出願日】2022-04-04
【審査請求日】2022-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521279435
【氏名又は名称】高千穂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 光一
(72)【発明者】
【氏名】早▲崎▼ 和裕
(72)【発明者】
【氏名】寺田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】毎床 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直紀
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-272030(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207492(JP,U)
【文献】特開2019-217181(JP,A)
【文献】特開2000-253954(JP,A)
【文献】特開2009-112449(JP,A)
【文献】特開2016-002439(JP,A)
【文献】特開2007-244409(JP,A)
【文献】登録実用新案第3121260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00 - A47C 16/02
A61G 1/00 - A61G 5/14
A61G 13/00 - A61G 15/12
A61F 5/00 - A61F 5/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後左右に設けられた四本の脚と、座面を有し、前後方向に対称に構成された椅子であって、
前記座面を構成し、長手方向を使用者の前後方向とし、前記前後方向に直線である複数の座面板と、
前記複数の座面板を、前記座面が下に凸となる曲線で支持し、前記四本の脚の内の前の二本の脚を連結する前方支持部材と、
前記複数の座面板を前記座面が下に凸となる曲線で支持し、前記四本の脚の内の後ろの二本の脚を連結する後方支持部材と、
を有し、
前記前方支持部材と前記後方支持部材の座面が下に凸となる曲線は、
前記前方支持部材と前記後方支持部材の長手方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる左右対称の楕円の一部である
椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の椅子であって、
前記楕円の焦点間隔は、前記座面の左右方向の座面幅である
椅子。
【請求項3】
請求項1に記載の椅子であって、
前記座面が下に凸となる曲線は、
前記前方支持部材と前記後方支持部材の両端において、曲率半径が座面の左右方向の座面幅の1/5以下である
椅子。
【請求項4】
請求項に記載の椅子であって、
前記複数の座面板の内、前記座面の中心線付近の座面板の幅は、前記座面の左右端付近の座面板の幅より大きい
椅子。
【請求項5】
請求項1からの何れかに記載の椅子であって、
前記座面板は杉の無垢材により構成されている
椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。特に、骨盤を立てた正しい姿勢の維持を促すための椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な椅子では、床面に両足を着地させ、両足をほぼ直角に曲げた状態で、臀部を椅子の座面に載せ、上半身を背もたれに預けるような姿勢で着座させる。
【0003】
このような、椅子では、着座する人は、背もたれに上半身を預けることにより、或いは、テーブルなどに向かって飲食する際に、自ずと上半身がテーブルの方に曲がることにより、脊髄が曲げられ姿勢そのものが悪くなる。また、脊髄が曲げられた状態で、長時間着座すると、内臓が圧迫され、疲労やストレスの原因となる。
【0004】
例えば、特許文献1では、骨盤を立てて背筋を伸ばした正しい姿勢で座れるとともに、すねが痛くならないような椅子を提供するため、尻が接触する着座部と、すねが接触するすね当て部と、着座部とすね当て部とを支持する椅子本体部と、足の裏を載置する足載せ部とから構成される椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-74874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、骨盤を立たせて背筋を伸ばした正しい姿勢で着座させるため、着座部を前方に傾斜させている。そして着座部を前方に傾斜させたことにより、すね当て部に当たるすねが痛くなることを防止するため、すね当て部に集中していた荷重を、すね当て部と足載せ部とに分散させている。
【0007】
しかしながら、着座部を前方に傾斜させていることに変わりなく、すね当て部には一定の荷重がかかり、すね当ての痛みを完全に解消するのは難しい。そのため、長時間の着座は体に負担をかける。
【0008】
また、上記特許文献1では、使用者の前後の重心については考慮されているものの、使用者が着座部に座っただけで、無意識に前後、左右の重心バランスを取ることについては、考慮されていない。
【0009】
本発明が解決する課題は、使用者が着座部に座っただけで、無意識に前後、左右の重心バランスを取り、自然に骨盤を立てた姿勢を促し、その姿勢を維持する椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、椅子の一態様は、前後左右、少なくとも四本の脚と座面を有する椅子であって、座面を構成し、長手方向を使用者の前後方向とする複数の座面板と、複数の座面板を、座面が下に凸となる曲線で支持し、四本の脚の内の前の二本の脚を連結する前方支持部材と、複数の座面板を前記座面が下に凸となる曲線で支持し、四本の脚の内の後ろの二本の脚を連結する後方支持部材と、を有し、
前記座面は、
前記前方支持部材と前記後方支持部材の長手方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線であって、前記複数の座面板の隣り合う座面板における前記前方支持部材と前記後方支持部材の上部形状の曲率が、前記前方支持部材と前記後方支持部材の長手方向の中心から、前記椅子の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、使用者は、椅子に着座することで、「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導し、その姿勢を保持し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の椅子を上方から見た斜視図である。
図2】椅子に正しい姿勢で着座した様子を示す図である。
図3】骨盤の主要個所の寸法を説明する図である。
図4】本実施例の椅子の座面の寸法を説明する図である。
図5】体格の相違による座面部分の楕円を示した図である。
図6A】本実施例の椅子の座面を表す図である。
図6B】本実施例の椅子の座面であって、2種類の座面板で構成された座面を示す図である。
図6C】本実施例の椅子の座面であって、同じ幅の座面板の数が奇数となる場合の例を示す図である。
図7】本実施例の椅子の座面の反力を説明する図である。
図8】本実施例の椅子の座面の反力方向を説明する図である。
図9】本実施例の椅子の平面図(a)、側面図(b)、正面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の椅子は、着座すると、自然に骨盤を立てた姿勢を促し、その姿勢を維持する。
【0014】
「骨盤を立てた姿勢」とは、「骨盤が正しい位置にある」ということである。つまり、骨盤を立てることで、正しい姿勢を作ることができる。椅子に座った状態でも、骨盤を立たせることで、骨盤が正しい位置にある姿勢で座ることができる。
【0015】
「骨盤を立てた姿勢」とは、以下の(a)(b)の状態である。
【0016】
(a)骨盤が左右水平になっている状態である。通常、椅子に座った状態で、意識して膝の位置が左右対称になっている姿勢を作る必要がある。
【0017】
(b)骨盤がまっすぐ立っている状態である。図2に、椅子に座った状態で、骨盤が立った状態を示す。図2に示す通り、横から骨盤を見ると、前傾でもなく後傾でもなく、ちょうどまっすぐ立った状態である。腰骨の出っ張りと恥骨のラインがまっすぐの状態の時、骨盤の立った正しい位置にある。
【0018】
骨盤が立っていない状態で、着座姿勢を続けると、骨盤に負担がかかり、そこから連鎖反応のように頭痛、肩こり、疲労などの原因となる。また、骨盤が歪んでしまう危険性がある。
【0019】
椅子に着座する際に、骨盤を立てた姿勢を維持しないと、骨盤が後ろに傾いた状態となり、重たい上半身を支えることが難しくなる。そのため背骨をまるめることで頭を前にし、バランスを取ることになる。こういった状態が正しくない「悪い姿勢」を作ってしまう。姿勢が悪い状態で仕事をするのが習慣化してしまうと、骨盤や背骨の歪みにつながり、骨盤や背骨の歪みが深刻化してしまうと矯正することが難しくなってしまう。
【0020】
特に、太りやすい体型の方は、骨盤は内蔵を支えている。つまり骨盤の上に内蔵が乗っかっている状態にある。骨盤を立てる座り方をせずに、身体に負担のかかる姿勢を続けていると前述したように骨盤が歪んでしまう。骨盤が歪んでしまうと、骨盤の上に乗っている内蔵が下へストンと落ちてしまい、骨盤の中に内蔵が集合してしまう状態となる。その結果、代謝や血流が悪くなり、「太りやすい体型」や「下半身太り」を引き起こす。逆に、正しい骨盤を立てる座り方をすることでダイエット効果も期待できる。また、呼吸もしやすくなり、ストレスを解消することができる。
【0021】
骨盤を立てた状態で着座するためには、椅子に深く座り、背筋を伸ばして椅子に座った時に座骨がしっかり椅子の座面にあたっている状態となるように意識し、さらに、肩、膝の左右水平に保つことを意識する、必要がある。
【0022】
つまり、椅子に座る者(使用者)が、「骨盤を立てた姿勢」、つまり、正しい姿勢となるように意識する必要がある。着座して暫くの間は、正しい姿勢を意識することは可能であるが、長時間の着座や机上で作業する場合には、正しい姿勢を意識し続けることは実際には難しい。
【0023】
本実施例の椅子は、椅子に着座することで、意識することなく、使用者を「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導し、その姿勢を保持し続けることができる。
【0024】
また、本実施例の椅子は、正しい姿勢を維持することで、使用者の姿勢筋のバランスを整え、使用者の体幹を鍛えることできる。
【0025】
また、本実施例の椅子は、使用者の姿勢筋や体幹が鍛えられることで、歩く力を鍛えることができる。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
以下、図面を参照して実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1の椅子を斜め上方から見た斜視図である。
【0029】
本実施例の椅子1は、脚10、脚11、脚12、脚13(図示せず)の4本の脚を有する。正面から見た左側の脚10、脚11は、左側下方支持部材14と、ひじ掛けの役割も担う上方支持部材18とによりにより連結され、支持されている。この脚10、脚11、下方支持部材14、上方支持部材18とで構成される部材を左側A型フレームと呼ぶ。A型フレームの形状は、良く知られたように、椅子の側面から見て、二本の脚が左右対象となる形状である。
【0030】
正面から見た右側の脚12と、脚13と、脚12と脚13とを支持する右側下方支持部材15と、ひじ掛けの役割も担う上方支持部材20とにより、連結され、支持されている。この脚12、脚13、下方支持部材15、上方支持部材20とで構成される部材を右側A型フレームと呼ぶ。
【0031】
左側A型フレームと右側A型フレームは、前方支持部材16、後方支持部材17により連結され、支持されている。
【0032】
左側A型フレームは、椅子の横方向から見て左右対称に構成し、脚10、脚11の間隔は、下方ほど広く、上方ほど狭くなっている。つまり、脚10、脚11は、正面左側で前後に均等に傾斜する。脚10の長手方向の中心線と脚11の長手方向の中心線との交点A(図示せず)の位置は、使用者が椅子1に着座した際、使用者の頭部の高さに対応する。
【0033】
右側A型フレームも左側A型フレームと同様であり、椅子1は椅子の横方向から見て左右対称に構成する。脚12、脚13の間隔は、下方ほど広く、上方ほど狭くなっている。つまり、脚12、脚13は、正面右側で前後に均等に傾斜する。脚12の長手方向の中心線と脚13の長手方向の中心線との交点B(図示せず)の位置は、使用者が椅子1に着座した際、使用者の頭部の高さに対応する。
【0034】
交点Aと交点Bの高さが、使用者が着座した際の頭部の高さとなることで、椅子1の前後のバランスを必要最小限の材料(脚の長さ)で構成することができる。即ち、脚10、脚11の傾きを大きくすると、脚の長さが長くなり、椅子の重量を増加させてしまう。一方、脚10、脚11の傾きが小さい場合、椅子1の前後のバランス維持が難しく、転倒しやすい椅子となってしまう。また、脚10、脚11の適度な傾きは、使用者の前後、左右のバランスの維持を促す。
【0035】
前方支持部材16、後方支持部材17は、左側A型フレームと右側A型フレームを連結し、支持することの他、座面を構成する複数の座面板19を支持する役割を担う。座面板19は、長手方向に所定の幅をもった直線状の板である
前方支持部材16と後方支持部材17の上面は、下に凸の形状、より詳しくは、前方支持部材16と後方支持部材17の長手方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線である。この曲線についての詳細は、後述する。
【0036】
前方支持部材16は、複数の座面板19の前方(正面)の一端付近で、座面が下に凸となる左右対称の曲面となるように複数の座面板19を支持し、四本の脚の前方の二本の脚(脚10、脚12)に、それぞれ連結する。
【0037】
後方支持部材17は、複数の座面板19の後方の他端付近で、座面が下に凸となる左右対称の曲面となるように複数の座面板19を支持し、四本の脚の後方の二本の脚(脚11、脚13)に、それぞれ連結する。前方支持部材16と後方支持部材17の上面の形状や座面板19については、図3から図8を用いて詳細に説明する。尚、本実施例では、四本の脚で説明したが、脚の本数は、これに限るものではない。この場合、前方支持部材16と後方支持部材17は、座面を構成する座面板19を曲面上に支えるための構造体として機能する。
【0038】
前方支持部材16と後方支持部材17の上面の形状、即ち、座面板19が設置される前方支持部材16と後方支持部材17の形状を説明するにあたり、人の骨盤における主要な個所の寸法を説明する。図3に示す通り、左右の腸骨の左右端の距離をDx、腸骨の上端から坐骨の下端までの距離をDy、左右の坐骨の下端の距離をDzとする。
【0039】
以下、前方支持部材16と後方支持部材17の上部形状は、前方支持部材16と後方支持部材17の長手方向(椅子1の横方向)の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線であって、左右の隣り合う座面板(例えば、座面板の中心)における前方支持部材16と後方支持部材17の上部形状の曲率が、異なる曲線であり、前方支持部材16と後方支持部材17の上部の曲率は、椅子1の横方向の中心から、椅子1の左右端に近づくにしたがって大きくなる。より詳しくは、曲率半径rは、椅子1の横方向の中心で無限大に近い値となり、座面の両端では座面幅WのW/5以下の値、即ち、座面幅Wの20%以下とする。以下、この曲線を、左右対称の下に凸となる曲線として、楕円を例に説明するが、前方支持部材16と後方支持部材17の上部形状は、楕円に限定されるものではない。
【0040】
前方支持部材16と後方支持部材17の上面の楕円は、前方支持部材16と後方支持部材17の中心線上を中心とする左右対称の楕円である。前方支持部材16と後方支持部材17とは、基本的に同一形状となり、その上面の楕円形状は、上記Dx、Dy、Dzによって、最適値が決まる。尚、楕円形状を決定する上で、複数の座面板19から構成される座面の幅Wを考慮しても良い。
【0041】
図4は、本実施例の椅子の座面の寸法を説明する図である。前方支持部材16と後方支持部材17の上面は、図4の式1で表される楕円で構成される。ここで、楕円は、x方向(長軸の長さ)2a、y方向(短軸の長さ)2bである。楕円の2つの焦点F1、F2の距離2cは、図4の式2で表される。
【0042】
本実施例では、焦点F1、F2の距離2cを、椅子1の座面の幅Wとの関係を、図4の式3とする。つまり、焦点F1、F2の距離2cは、座面の幅Wと等しいか、Wの1.15倍以下の範囲とする。
【0043】
焦点F1、F2より中心側と外側では曲率が大きく変化する。焦点距離が短すぎる場合、例えば、焦点が座面端より内側に入ると、使用者が着座する際に窮屈に感じる。そればかりか、太ももが内側に回転する力を受けることとなり、適正な体圧分散ができなくなり、利用者の着座姿勢の前後バランスを維持できなくなる。そのため、姿勢が崩れた態勢になり圧迫されるように感じ疲れやすくなってしまう。
【0044】
一方、焦点距離が長すぎると、座面は平面に近くなり、座骨結節点付近に体圧が集中しやすくなるので、底付き間を感じやすくなり、お尻を傷める原因となるばかりか、座面形状により椅子の利用者の左右のバランスを維持する作用を期待できなくなるためである。
【0045】
一般的な、椅子の座面幅は、利用者の一般的な体型を考慮し、40から45cmであるため、本実施例では、椅子の座面幅を45cmとして説明する。座面幅を45cmとすると、焦点F1、F2の間も同様、45cmとなる。但し、座面幅を45cmに限定するものではなく、利用者の体型に応じて適宜定められるものである。尚、本実施例においては、焦点F1、F2の距離を、椅子1の座面の幅Wとしたが、焦点F1、F2の距離が、座面の幅Wとほぼ一致(W≦2c≦1.15W)であれば、骨盤を立たせる姿勢に誘導するという効果が得られる。
【0046】
左右の腸骨の左右端の距離Dx、腸骨の上端から坐骨の下端までの距離Dy、左右の坐骨の下端の距離Dzを説明する上で、利用者の平均値を採用して、Dxは28cm、Dyは21cm、Dzは7cmとして説明する。
【0047】
楕円の最下点から焦点F1、F2のy方向の長さを腸骨の上端から坐骨の下端までの距離Dyとする。つまり、短軸の長さの半分であるbは、椅子1の使用者の腸骨の上端から坐骨の下端までの距離Dyに応じて決定される。
【0048】
発明者らは、種々の検討を繰り返し、椅子の正面から見た座面の左右形状を、
楕円の短軸の距離の半分bを腸骨の上端から坐骨の下端までの距離Dyとし、(2)楕円の焦点F1、F2の距離を座面幅W(焦点F1、F2の距離を座面幅Wとほぼ一致させる(W≦2c≦1.15W))とする、左右対称の楕円の一部とした。
【0049】
これにより、座骨結節点付近を中心に体圧が分散させやすいことを見出した。椅子の正面から見た座面の左右形状を上述の通りとすると、人間の骨格は左右対称であるため、使用者自身の体重で、自然に骨盤、姿勢筋等の前後左右をバランスさせることができる。また、使用者の姿勢筋の左右のバランスを効果的に整えるには、座面は、左右対称の楕円の一部とした他、椅子の正面から見た座面の前後方向は直線とすることが最も効果的であることを見出した。
【0050】
つまり、椅子の正面から見た座面の前後形状を直線とすることで、前後方向に余計な反力が発生しないため、左右対称の楕円の一部とした効果が最大限に発揮され、使用者を「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導し、その姿勢を保持し続けることができる。
【0051】
以上の前提より、長軸と短軸を求めると、長軸2aの距離は58.56~62.36cmとなり、aは約30cmとなる。
【0052】
aを30cm、bを21cm、焦点間の距離を45cmとした楕円で、前方支持部材16の上面を構成する。後方支持部材17の上面は前方支持部材16と同一形状であり、同様に楕円形状とする。正確には、複数の座面板19の厚さを考慮しなければならず、前方支持部材16と後方支持部材17に載置される複数の座面板19の上面が、aを30cm、bを21cm、焦点間の距離を45cmとなる楕円を構成する。
【0053】
尚、上記寸法は、使用者の腸骨の上端から坐骨の下端までの距離Dyによって、最適値は変動する。即ち、Dyを17cmとすると、aは28.2cmとなる。また、Dyを25cmとすると、aは33.6cmとなる。
【0054】
図5は、体格の相違による座面部分の楕円を示した図である。Dyを17cmとした場合(体格が)を楕円51、Dyを21cmとした場合を楕円52、Dyを25cmとした場合を楕円53として示した。尚、楕円51、53については、座面幅Wを焦点間の距離2aとする条件は、適応していない。図5に示す通り、Dyの違い、即ち椅子の使用者の体格の相違に拘わらず、前方支持部材16と後方支持部材17の上面の形状は、略一致する。そのため、前方支持部材16と後方支持部材17の上面の形状は、基本体形であるDy(=b)を21cmとし、座面幅Wを二つの焦点間距離(2a)とする楕円形状とすることで、どのような体系の使用者にもある程度対応させることができる汎用的な椅子を構成することができる。
【0055】
また、標準体型のDyを21cmとし、座面幅Wを45cmとすることを前提として、楕円の短軸の長さの2bと、座面幅Wと、座面の高さHとを略同じ値(±5cm)とすれば、使用者の体形に拘わらず、使用者に「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導し、その姿勢を保持し続けるという効果を期待できる。
【0056】
但し、椅子の利用者が子供の場合、座面の幅W’は36cm、Dy(=b)は、およそ18~21cmとなるため、異なる楕円により座面を構成する必要があり、図4の式2、式3から適切な値をとることとなる。
【0057】
また、椅子の利用者が幼児の場合、座面の幅W’’は26.5cm、Dy(=b)は、およそ15cm程度となるため、異なる楕円により座面を構成する必要があり、図4の式2、式3から適切な値をとることとなる。
【0058】
椅子の利用者が、大人の他に子供や幼児の場合を含めて、座面の左右両端の曲率半径r1は、座面幅Wの1/5以下となる。図4の式4は、楕円の曲率半径rを求める式である。
【0059】
この式4に、上述した拘束条件、即ち、2c=W、b=Dy、焦点のx座標(図3の式2の関係から求める)を代入して計算すると、座面端の曲率半径r1は、61.5mmとなる。
【0060】
座面幅Wを用いて、座面端の曲率半径r1を近似すると、W/7となる。
【0061】
一般的な椅子の寸法として、種々のDyや座面幅Wの値を代入して、座面端における曲率半径r1を座面幅Wで近似すると、W/10<r1<W/5の範囲である。
【0062】
以上のように、複数の座面板19を支持する前方支持部材16と後方支持部材17が構成する曲線は、座面が下に凸となる曲線であり、前方支持部材16と後方支持部材17の長手方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線である。また、より好ましくは、前方支持部材16と後方支持部材17が構成する曲線は、複数の座面板19の隣り合う座面板における前方支持部材16と後方支持部材17の上部形状の曲率が、前方支持部材16と後方支持部材17の長手方向の中心から、椅子の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線である。そのための好適な形状が、前方支持部材16と後方支持部材17が構成する曲線を楕円で構成し、座面の楕円の曲率半径rを中心部の無限大に近い値から座面端に近づくに従い徐々に小さくする。曲率半径rの範囲は、W/10<r<無限大ということになる。
【0063】
骨盤を立たせることの効用として、精神が明瞭になる、主体性が確立する、健康になる、と言われている。つまり、精神が明瞭になることとして、頭がはっきりして、何事にも専念できるようになり、判断力が付き、実践的知恵が身につく、心が引き締まり、やる気がわいてくる。主体性が確立することとして、集中力が付き、持続ができるようになり、進んで仕事に取組み、積極的になり、粘り強く耐える力が付き、実践力が身につく。健康になることとして、正しい姿勢によって、内臓の圧迫がなくなり、食欲不振がなくなり、動作が俊敏になる。
【0064】
本実施例の椅子によると、座っただけで使用者が意識することなく、自然と骨盤を立たせた姿勢に誘導する。
【0065】
尚、複数の座面板19により構成される座面の形状が、使用者が椅子に着座した際に骨盤を立たせるための重要な要素の一つである。そのため、前方支持部材16と後方支持部材17は、複数の座面板19を下に凸状の形状で支持して座面を構成できれば種々の変形例を採用することができる。例えば、複数の座面板19で構成される座面は、椅子1の横方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線であって、隣り合う座面板における曲率が、椅子1の横方向の中心から、椅子1の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線である。好ましくは、椅子1の横方向の中心の曲率半径r0が無限大に近い値、座面の左右両端の曲率半径r1が座面幅W/5以下の値とする。この座面を作成する上で、最も効率的な形状が楕円ということになる。
【実施例2】
【0066】
実施例2においても、実施例1と同様、複数の座面板19で構成される座面は、椅子1の横方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線であって、隣り合う座面板における曲率が、椅子1の横方向の中心から、椅子1の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線である。好ましくは、椅子1の横方向の中心の曲率半径r0が無限大に近い値、座面の左右両端の曲率半径r1が座面幅W/5以下の値とする。このような座面を複数の座面板19で構成するため、前方支持部材16や後方支持部材17の上面の形状は、実施例1で述べた通りの構成となる。
【0067】
図6Aは、実施例2の椅子の座面を上方から見た図である。図1では、幅が同じ座面板19を用いているが、図6Aでは、幅が3種類の座面板19を6枚用いて、座面を構成している。座面端付近に載置される座面板19aと座面板19fとは、同じ幅w1(左右方向)を有し、座面板19bと座面板19eとは、同じ幅w2(左右方向)を有し、座面の中心線61付近の座面板19cと座面板19dとは、同じ幅w3(左右方向)を有する。座面板19の幅については、w1≦w2<w3の関係を有する。これは、使用者が椅子1に着座した際に、中心線61付近ほど大きな荷重が加わるため、座面板19の強度を確保すると共に、使用者の坐骨の下端の距離Dzの相違を吸収するためである。即ち、複数の座面板19の内、座面の中心線61付近の二つの座面板19c、19dの幅は、使用者の坐骨の位置によって決定される。
【0068】
一方、座面端付近では、大きな荷重がかからないが、使用者の姿勢が左右に崩れた際に、使用者に働く反力(圧力)をより感じやすくするため、座面板の幅は小さくなっている。
【0069】
また、座面の中心線61付近の座面板19cと座面板19dのそれぞれの中心線62、63の中心54、55は、使用者が椅子1に着座した際に、坐骨の位置と一致することが好ましい。坐骨の幅を7cmと仮定すると、中心点54と中心点55の距離は7cmである。
【0070】
尚、各座面板19は、長さ350mm、幅w1、w2、w3の板であり、6枚の座面板19の両端を、前方支持部材16や後方支持部材17の上面にそれぞれ平行に載置する。従って、座面の前後方向の断面は直線となり、よくある椅子のように臀部を凹ませたような曲線とならない。これは、骨盤が左右均等の構成であり、骨盤を立たせるためには、左右均等の反力(楕円の接線に対する法線ベクトルの反力として後述する)を維持し、左右バランスを整えることが効果的との知見に基づくものである。つまり、臀部を前後に凹ませた形状とすると、却って左右のバランスを図る作用が阻害される、という知見に基づくものである。そのため、座面板19を用い、座面の前後方向の断面は直線としている。
【0071】
尚、図6Aでは、座面板19を3種類の座面板で座面を構成した例を示したが、図座面板の枚数は、偶数であればよい。また、座面板の19の枚数に拘わらず、座面の左右端に近づくにつれて、座面板の幅が小さくなるようにする。あるいは、座面の両端の2枚の座面板の幅を他の座面板より小さくなるようにしても良い。
【0072】
また、座面を構成する他の例として図6Bのように、2種類の座面板で座面を構成することができる。使用者の坐骨の下端の距離Dzの相違を吸収するため、座面の中心の2枚の座面板の幅w4は、その他の座面板の幅w5よりも大きい。座面の中心に幅の広い座面板を用いることで、効率よく、使用者の坐骨位置の相違を吸収し、使用者の坐骨を確実に一枚の座面板で支えることができると共に、幅w5を標準杉板の幅とすれば、座面を構成する多くの座面板に標準杉板を利用することができる。
【0073】
図6Bの例では、8枚の座面板により座面を構成したが、座面板の枚数はこれに限ったものではなく、例えば、6枚や10枚であっても良く、各座面板が十分な強度を得られ、左右端の座面板から使用者が感じる圧力を考慮しなければ、同一の幅を有する複数の座面板を用いることができる。
【0074】
図6Cに、同じ幅w6の座面板の数が奇数となる場合の例を示している。
【0075】
座面板19の幅は、標準杉板の幅45mmであり、座面の中心に幅w6の座面板19aが位置し、座面板19aの左右において隣接する座面板19b、19cの幅w6により、使用者の坐骨の下端の相違を吸収することができる。座面板19b、19cのそれぞれの左右方向の中心線は、使用者が椅子1に着座した際に、坐骨の位置と一致することが好ましい。このような構成をとることで、使用者の坐骨位置の相違を吸収し、使用者の坐骨を確実に一枚の座面板で支えることができる。また、標準杉板の幅を活かして座面を構成することができるので、加工コストを削減し、製造効率を向上させることができる。
【0076】
図7は、実施例1及び2の椅子の座面の反力の一例を説明する図である。
【0077】
座面を構成する座面板19には、使用者の体重により荷重71が働く、荷重71を座面板19の法線方向と水平方向のベクトルで表すと、法線ベクトル72と水平ベクトル73で表すことができる。法線方向は、前方支持部材16や後方支持部材17の上面の楕円の接線に対する法線であり、法線ベクトル72の反力は、椅子1の座面の中心線に向かって、左右均等に作用する。
【0078】
図8は、本実施例の椅子の座面の反力方向を説明する図である。
【0079】
楕円の短軸上、つまり、楕円とその接線との接点Sでは、法線ベクトルの反力はy軸に沿って働くこととなる。接点Sから少し外側に離れた楕円と接線との接点Tでは、法線ベクトルの反力は、y軸上と交点Pで交わる。接点Tから更に外側に離れた楕円と接線との接点Uでは、法線ベクトルの反力は、y軸上と交点Qで交わる。また、接点Uから更に外側の、長軸上では、法線ベクトルの反力は、x軸上、つまりは楕円の中心Oに向かう。
【0080】
このように、楕円の外側に向かうに従って、法線ベクトルの反力とy軸との交点は、y軸上の無限遠から楕円の中心Oに近づくこととなる。これは、使用者が椅子1に姿勢正しく座っている際には、y軸にそって反力を受けることとなり、疲労しづらい。そのため、使用者は無意識に、この楽な姿勢を維持するので、姿勢筋のバランスが整う。使用者の姿勢が左右に傾くと、傾きに応じて、法線ベクトルの反力が発生し、自然と左右のバランスが取れた状態に誘導する。
【0081】
また、使用者の臀部を左右から挟むように均等に支持するので、使用者は、椅子に着座することで、意識することなく、「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導され、その姿勢を保持し続けることができる。
【0082】
また、正しい姿勢を維持することで、使用者の体幹を鍛えることできる。
【0083】
また、使用者の体幹が鍛えられることで、歩く力を鍛えることができる。即ち、姿勢筋と呼ばれる腹筋群、腸腰筋、大腿四頭筋、腎筋、脊柱起立筋をバランスよく鍛えることができる。また、正しい姿勢を維持することで、姿勢筋の他、ハムストリング、僧帽筋もバランスよく鍛えることができ、座った状態だけでなく、立ち姿勢もバランスが良くなり、結果として、長時間歩いても疲れにくいバランスの取れた体を維持することができる。
【0084】
尚、座面端における法線ベクトルの反力とy軸との交点Qの高さは、利用者が椅子に着座した際の上半身の重心付近となる。
【0085】
椅子1を構成する材料は、全て杉の無垢材を用いる。杉を用いることで、杉の特性である保湿性、保温性、抗菌作用を得ることができ、椅子全体の軽量化に寄与でき、使用者はアーシングされる。正しい姿勢を維持することに加えて、杉の香による疲労回復、ストレス解消の他、アーシング作用により静電気による体調不良を防止することができる。特に、座面板19に杉材を用いると、杉による適度な摩擦が使用者の正しい姿勢を長時間の維持することに貢献する。
【0086】
尚、上記実施例では、Dx、Dy、Dz、Wによって、椅子の前方支持部材16と後方支持部材17の上面の楕円の最適値を示したが、椅子の前方支持部材16と後方支持部材17の上面の楕円は最適値限定されるものではなく、座面の中心から左右対称で下に凸の形状(椅子1の横方向の中心に対し、左右対称の下に凸となる曲線であって、隣り合う座面板における曲率が、椅子1の横方向の中心から、椅子1の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線)、例えば、放物線によって構成しても一定の効果を期待することができる。
【0087】
以上の通り、本実施例の椅子によれば、座面を下に凸の曲面で、使用者の臀部を左右から挟むように均等に支持することで、使用者は、椅子に着座することで、意識することなく、「骨盤を立てた姿勢(正しい姿勢)」に誘導され、その姿勢を保持し続けることができる。
【0088】
また、使用者の左右の坐骨をそれぞれ一枚の座面板によって確実に支えることができる。
【実施例3】
【0089】
図9は、実施例1の椅子1の平面図(a)、側面図(b)、正面図(c)を、その具体的数値を用いて説明する。
【0090】
本実施例では、前方支持部材16、後方支持部材17の上面において、下に凸の曲線に支持される。この下に凸の曲線は、実施例1で説明したように、前方支持部材16と後方支持部材17の上部形状の曲率が、椅子1の横方向の中心から、椅子1の左右端に近づくにしたがって、大きくなる曲線であり、楕円も含まれる。
【0091】
座面の幅は45cm、座面の高さも45cmと、座面の左右端の曲率半径r1は同じ値としている。使用者の体の大きさにより、寸法自体は調整する必要があるが、座面の高さ、座面の幅と、座面の左右端の曲率半径r1をW/2以下とすることにより、使用者が椅子に座った際に、使用者の上半身を前後左右にバランスさせ、一番心地よいと感じるよう構成している。
【0092】
図9(b)に示すように、脚10、脚11、左側下方支持部材14、左側上方支持部材18とで構成される部材により左側A型フレームを構成する。同様に、脚12、脚13、右側下方支持部材15、右側上方支持部材20とで構成される部材により右側A型フレームを構成する。
【0093】
図9(a)(c)に示すように、9枚の座面板19は、前方支持部材16、後方支持部材17の上面において、下に凸の曲線に支持される。前方支持部材16、後方支持部材17の中心から左側A型フレーム96、右側A型フレーム97に近づくにつれ、傾きが大きくなる。右側A型フレーム、左側A型フレームに近づくにつれ、使用者の体重の反力が、前方支持部材16、後方支持部材17の上面の曲線(楕円)の中心、即ち、使用者が着座した際の上半身の重心に向けられる。
【0094】
本実施例では、使用者の体形に合わせて、座面の高さ、座面の幅、座面の円弧の直径等が同じ値となるように変更する。
【0095】
この座面を下に凸の曲線で、使用者の臀部を左右から挟むように均等に支持することで、使用者は、椅子に着座することで、意識することなく、正しい姿勢に誘導され、その姿勢を保持し続けることができる。下に凸の曲線には、楕円、放物線、円を含む。
【0096】
左側A型フレームにおいて、脚10、脚11、左側下方支持部材14、左側上方支持部材18を固定するため、ダボ95が設けられている。右側A型フレームも同様である。
【0097】
図9(a)において、脚10、脚11、脚12、脚13の厚み(横方向)は、約30mmで、左側A型フレームと右側A型フレームは、450mmの間隔を有する。
【0098】
図9(b)の側面図を参照する。左右のA型フレームの上端部の長さは、約315mm、下方支持部材12は、地面より高さ26は、約250mmのところに設置され、脚10と脚11とを連結する。脚10、脚11、下方支持部材12の幅は、45mmで構成される。
【0099】
図9(b)において、脚10、脚11、脚12、脚13に対する、前方支持部材16、後方支持部材17の固定方法を説明する。基本的に全ての脚に対して固定方法は共通するので、脚10に対する前方支持部材16の固定について説明する。前方支持部材16は、二つのダボ95d、95eにより脚10に固定されている。二つのダボ95d、95eは、垂直方向に並んで設けられているため、座面が受けた荷重を垂直に脚10に伝えるため、二つのダボによる荷重が均等に分散されて、脚10に伝わる。脚11に対しても後方支持部材17は、垂直に並ぶ二つの場度により固定され、脚12、13に対しても二つのダボによりそれぞれ前方支持部材16、後方支持部材17に固定されている。
【0100】
また、図9(b)に示したように、左側A型フレームの脚10、11は、左右対称(図9(a)では前後対象)で、下方ほど脚10、11の距離が大きく、上方ほどその距離が狭い。脚10、11の長手方向の中心線を延長した交点の位置は、使用者が椅子1に着座した際の使用者の頭部の高さとなる。
【0101】
尚、実施例3で示した座面の高さHと、座面の幅Wと、座面の左右端の曲率半径r1を座面の幅W/5とする(±10%を含む)こと、脚と座面を支持する前方支持部材や後方支持部材のダボによる固定、椅子1の左右において二本の脚の長手方向の中心線を延長した交点については、実施例1に適応することができる。
【0102】
以上の通り、各実施例の椅子によれば、正しい姿勢を維持することで、使用者の体幹を整えることができる。
【0103】
また、使用者の体幹が鍛えられることで、歩く力を鍛えることができる。即ち、姿勢筋と呼ばれる腹筋群、腸腰筋、大腿四頭筋、腎筋、脊柱起立筋のバランスを整えることができる。
【0104】
また、長時間にわたり、正しい姿勢に誘導することで、使用者が疲れにくく、使用者の集中力を長時間持続させることができる。
【0105】
また、正しい姿勢を維持することで、姿勢筋の他、ハムストリング、僧帽筋もバランスよく鍛えることができ、座った状態だけでなく、立ち姿勢もバランスが良くなり、結果として、長時間歩いても疲れにくいバランスの取れた体を作り出すことができる。また、姿勢を正すことにより、呼吸が楽になる。
【0106】
また、本実施例の椅子によれば、杉という素材も相俟って、骨盤を立てた、正しい姿勢に誘導し、これを長時間維持することで、使用者の姿勢を正し、姿勢筋のバランスを整えることができる。長時間の着座により、立ち姿勢もバランスが良くなり、長時間歩いても疲れにくいバランスの取れた体を作り出すことができる。
【0107】
本実施例の椅子を使用すると、体が正しい姿勢で着座することを記憶するため、他の一般的な椅子を使用した場合でも、正しい姿勢により着座するようになる。
【0108】
そのため、本実施例の椅子は、病院の待合室や、リハビリセンタで利用されると、患者を効率よく正しい姿勢とすることができる。患者の付き添いや看護婦の労力を軽減することができる。
【0109】
また、本実施例による椅子は、呼吸を整え、骨盤を立たせる効果がある。骨盤を立たせると、精神が明瞭になる、主体性が確立する、健康になる、と言われている。つまり、精神が明瞭になることとして、頭がはっきりして、何事にも専念できるようになり、判断力が付き、実践的知恵が身につく、心が引き締まり、やる気がわいてくる。主体性が確立することとして、集中力が付き、持続ができるようになり、進んで仕事に取組み、積極的になり、粘り強く耐える力が付き、実践力が身につく。健康になることとして、正しい姿勢によって、内臓の圧迫がなくなり、食欲不振がなくなり、動作が俊敏になる。本実施例の椅子によると、集中力の増加や継続効果を発揮するため、保育園、学校、学習塾で使用することで、発育促進、学力向上が期待できる。
【0110】
椅子1を構成する材料は、全て杉の無垢材を用いる。杉を用いることで、杉の特性である保湿性、保温性、抗菌作用を得ることができ、椅子全体の軽量化に寄与でき、使用者はアーシングされる。正しい姿勢を維持することに加えて、杉の香による疲労回復、ストレス解消の他、アーシング作用により静電気による体調不良を防止することができる。特に、座面板19に杉材を用いると、杉による適度な摩擦が使用者の正しい姿勢を長時間の維持することに貢献する。
【0111】
本発明者らは、本発明による椅子により、杉の無垢材を身近な家具である椅子に利用する新たな需要を喚起し、地方の林業等の地場産業の復興、日本に継承される木工加工の伝統を構成に伝えることが期待するものである。
【符号の説明】
【0112】
1 :椅子
10:脚
11:脚
12:脚
13:脚
14:左側下方支持部材
15:右側下方支持部材
16:前方支持部材
17:後方支持部材
18:左右連結部材
19:座面板
【要約】
【課題】
使用者が着座部に座っただけで、無意識に前後・左右の重心バランスを取り、自然に骨盤を立てた姿勢を促し、その姿勢を維持する椅子を提供する。
【解決手段】
前後左右四本の脚と座面を有する椅子であって、座面を構成し、長手方向を使用者の前後方向とする複数の座面板と、座面が下に凸となる楕円で複数の座面板を支持し、四本の脚の内の前の二本の脚を連結する前方支持部材と、座面が下に凸となる楕円で複数の座面板を支持し、四本の脚の内の後ろの二本の脚を連結する後方支持部材と、を有する。座面の曲線は、前記前方支持部材と前記後方支持部材の長手方向の中心から、前記椅子の左右端に近づくにしたがって、曲率が大きくなる曲線である。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9