(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】吊りバケット装置
(51)【国際特許分類】
B66C 3/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B66C3/00
(21)【出願番号】P 2022083556
(22)【出願日】2022-05-23
【審査請求日】2022-09-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522202698
【氏名又は名称】大山 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100142941
【氏名又は名称】京和 尚
(72)【発明者】
【氏名】大山 章博
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特公昭34-004321(JP,B1)
【文献】実開昭62-157888(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0873028(KR,B1)
【文献】特開平04-116025(JP,A)
【文献】中国実用新案第213771055(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
B65G 7/08
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視において左右対称な容器形状に構成され、土砂等を積載可能なバケット本体と、
正面視において左右対称な門型形状に構成され、その脚部の下端部から左右に突出する一対の接続ピンが前記バケット本体の左右両側面に枢着された状態でその中央上部をクレーンフック等で吊り上げることにより前記バケット本体を吊り上げ可能な吊りフレームと、
正面視において前記バケット本体の両側面に左右一対設けられ、前記吊りフレームが上昇下降することのみにより前記バケット本体を運搬姿勢と排土姿勢とに上下反転可能な反転機構と、
を備えた、クレーン作業に用いられる吊りバケット装置であって、
前記反転機構は、
正面視において前記バケット本体の左右両側面に互いに平行となるよう配置され、前記接続ピンが回転可能かつスライド可能に嵌合されるスライド溝を備える接続プレートと、
側面視において前記バケット本体の中心線に近接し前記バケット本体の上下中心付近に設けられる枢支点で枢支され、前記バケット本体の上下反転に伴い前記接続プレートの面に沿って所定角度揺動し前記スライド溝に出没することで前記接続ピンのスライド方向をガイドする接続ピンガイドと、を備え、
前記接続プレートは、前記スライド溝が、
前記バケット本体の重心を通る上下方向の中心線上に形成された中心スライド溝と、
前記中心スライド溝の両端部から前記枢支点の側にレ状に折り返して形成された上下2つのオフセットスライド溝と、が上下対称となる形状に連続して形成され、
前記接続ピンガイドは、その中央部に前記枢支点で枢支される枢支部を含む二等辺三角形の板状のガイドプレート部と、当該ガイドプレート部の二等辺三角形の頂点方向に伸びる棒状の重力感知棒部と、とから構成され、
また、側面視において前記接続ピンガイドは、前記バケット本体の前後方向に配置され前記枢支点を中心として枢支されてバランスした状態において、常に前記重力感知棒部の重力による回転モーメントが前記ガイドプレート部の重力による回転モーメントよりも大きくなる性質を付与されることで、前記バケット本体の上下反転に伴い揺動した後に常にストッパにより所定位置で停止するよう構成され、
さらに、前記接続ピンガイドは、前記所定位置において、前記ガイドプレート部の二等辺三角形の底辺にあたる一方の端部が上側の前記オフセットスライド溝を閉鎖し、かつ前記中心スライド溝を開放する一方、前記ガイドプレート部の二等辺三角形の底辺にあたる他方の端部が下側の前記オフセットスライド溝を開放し、かつ前記中心スライド溝を閉鎖する形状に形成されており、
上述した前記吊りバケット装置が、以下の工程によって前記バケット本体が反転することを特徴とする
吊りバケット装置。
ステップ1:前記接続ピンが前記中心スライド溝の上側の端部にある状態で、前記吊りフレームによって前記バケット本体が吊り上げられている。
ステップ2:前記吊りフレームが降下することで前記バケット本体が接地したのち、前記吊りフレームがさらに降下すると、前記接続ピンが前記接続ピンガイドによってガイドされ、前記中心スライド溝に沿って下方へスライドする。
ステップ3:前記接続ピンが、前記中心スライド溝に突出する前記ガイドプレート部の前記他方の端部を押しのけて前記中心スライド溝の下側の端部に到達する。
ステップ4:前記吊りフレームが上昇することで、前記接続ピンが前記接続ピンガイドによってガイドされ、前記オフセットスライド溝に沿ってスライドしレ状に折り返された前記オフセットスライド溝の端部へ到達する。
ステップ5:前記吊りフレームがさらに上昇すると、前記接続ピンが前記バケット本体の重心に対しオフセットした位置にあるため、前記接続ピンを中心として前記バケット本体が反転し上下逆転する。
ステップ6:前記オフセットスライド溝に沿って前記接続ピンが前記中心スライド溝の反転後上側となった端部に到達するまで、反転した前記バケット本体が滑り落ちる。
ステップ7:前記接続ピンが前記中心スライド溝の反転後上側となった端部にある状態で、反転した前記バケット本体が前記吊りフレームによって吊り上げられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーン等に用いられる吊りバケット装置に関し、上下の移動操作のみで反転させ内容物を排出可能な吊りバケット装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤、ダムなどの建設工事現場、矢板を用いた掘削などの土木工事現場では、移動式クレーン等を用いた土砂等の運搬作業が行われる。その際の用具として、四角に吊環が取り付けられた正方形の土砂吊り上げ用金属ネット(「ワイヤーモッコ」と呼ばれる。)に土砂を積み込んで、その吊環をクレーンフックに掛け吊り上げ運搬する作業が古くから行われている。
【0003】
さらには、中身を排出できる反転型バケットも使用されている。反転型バケットでは、積み込んだ土砂を排出する際に、玉掛け補助者が容器に取り付けられているロックを手動で外して持ち上げる。すると、重心に対し偏芯した下方位置に吊手が取り付けられている容器が反転し、バケットの中身を排出できる。
【0004】
一方、玉掛け作業者が直接バケットに手を触れなくても土砂を排出できる吊りバケット装置が提案されている。例えば、実開昭62-157888(特許文献1)には、バッグ本体の左右両側面板の上下及び左右の両方向に偏位した4個所で吊りフレームをつかんでバッグ本体を吊り上げ可能とし、バケット本体の下側のピンに対し吊りフレームを摺動させることで上側のピンとの係合が解かれるとバケット本体が反転し土砂を排出できる、吊りバケット装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された吊りバケット装置であれば、クレーンフックを上下に動かすと共に、上側のピンと吊りフレームとの係合が解かれるよう水平方向にクレーンフックを動かした後、クレーンフックを上昇させることで、作業者が直接バケットに触れることなくバケットが反転し、内部の土砂を排出することができる。
【0006】
また、実公平7-32544(特許文献2)には、バッグ本体の側面に、重心を通る上下縦向きのスライド溝と、重心よりも下方位置における水平向きのスライド溝とが形成されることで、全体としてL字状の連続するスライド溝が形成され、吊持部材下端のスライドピンがL字状スライド溝の下方端部まで摺動したときに吊持部材を上昇させるとバッグ本体が反転し内容物を排出できる、ばら物運搬用の吊りバケット装置が記載されている。
【0007】
特許文献2に記載された吊りバケット装置であっても、クレーンのクレーンフックを上下に動かすと共に、吊持部材下端のスライドピンがL字状スライド溝の下方端部まで摺動するよう水平方向にクレーンフックを動かした後、クレーンフックを上昇させれば、直接作業者がバケットに触れることなくバケットが反転し、内部の内容物を排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭62-157888号公報
【文献】実公平7-32544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1と特許文献2に記載された吊りバケット装置は、共に、クレーンフックを上昇させバケット本体を反転する前に、クレーンフックをバケットに対し所定の水平方向に移動させる必要がある。そのため、クレーンオペレータにはクレーンフックを動かすべき水平向きの方向が分からなければならない。
【0010】
周知のように、移動式クレーン作業においてクレーンオペレータは常にクレーンフックを直接目視しながらクレーン操作できるわけではない。すなわち、クレーンフックを直接目視できない状況では、クレーンオペレータは、水平移動すべき方向を認識することができない。
【0011】
クレーンオペレータがクレーンフックを直接目視できない状態でバケット本体を反転させる必要がある現場においては、吊りバケット装置の近くに玉掛け作業者がいてクレーンフックを移動すべき水平方向を認識する必要がある。そして、玉掛け作業者がクレーンオペレータに対し、クレーンフックの水平移動の方向を無線電話等で伝える必要がある。この状況は、作業効率の低下を招き、安全上も好ましいものではなかった。
【0012】
また、クレーンフックには通常スラストベアリングが内装されており、フック本体に対し先端のフックは水平に360度自由に回転する。すなわち、吊上げ状態にある吊りバケット装置のクレーンフックを中心とする旋回方向をクレーンオペレータが記憶できるよう所定の方向に向けておくことは困難である。そのため、吊りバケット装置がクレーンフックを中心としてどの方向に向いているかに関係なく、上下方向の操作のみ(ウインチ操作のみ)でバケット本体を反転できることが望まれる。
【0013】
そこで、本発明は吊りフレームを上下に移動させることのみで、バケット本体を反転し、内部の土砂等を排出できる吊りバケット装置を提供する。すなわち、吊りバケット装置を直接目視できない現場においても、容易に積み込み・積み降ろし作業が可能な吊りバケット装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の吊りバケット装置は、正面視において左右対称な容器形状に構成され、土砂等を積載可能なバケット本体と、
正面視において左右対称な門型形状に構成され、その脚部の下端部から左右に突出する一対の接続ピンが前記バケット本体の左右両側面に枢着された状態でその中央上部をクレーンフック等で吊り上げることにより前記バケット本体を吊り上げ可能な吊りフレームと、
正面視において前記バケット本体の両側面に左右一対設けられ、前記吊りフレームが上昇下降することのみにより前記バケット本体を運搬姿勢と排土姿勢とに上下反転可能な反転機構と、を備えた、クレーン作業に用いられる吊りバケット装置である。
【0015】
そして、前記反転機構は、正面視において前記バケット本体の左右両側面に互いに平行となるよう配置され、前記接続ピンが回転可能かつスライド可能に嵌合されるスライド溝を備える接続プレートと、側面視において前記バケット本体の中心線に近接し前記バケット本体の上下中心付近に設けられる枢支点で枢支され、前記バケット本体の上下反転に伴い前記接続プレートの面に沿って所定角度揺動し前記スライド溝に出没することで前記接続ピンのスライド方向をガイドする接続ピンガイドと、を備え、
前記接続プレートは、前記スライド溝が、前記バケット本体の重心を通る上下方向の中心線上に形成された中心スライド溝と、前記中心スライド溝の両端部から前記枢支点の側にレ状に折り返して形成された上下2つのオフセットスライド溝と、が上下対称となる形状に連続して形成され、
前記接続ピンガイドは、その中央部に前記枢支点で枢支される枢支部を含む二等辺三角形の板状のガイドプレート部と、当該ガイドプレート部の二等辺三角形の頂点方向に伸びる棒状の重力感知棒部と、とから構成され、また、側面視において前記接続ピンガイドは、前記バケット本体の前後方向に配置され前記枢支点を中心として枢支されてバランスした状態において、常に前記重力感知棒部の重力による回転モーメントが前記ガイドプレート部の重力による回転モーメントよりも大きくなる性質を付与されることで、前記バケット本体の上下反転に伴い揺動した後に常にストッパにより所定位置で停止するよう構成され、さらに、前記接続ピンガイドは、前記所定位置において、前記ガイドプレート部の二等辺三角形の底辺にあたる一方の端部が上側の前記オフセットスライド溝を閉鎖し、かつ前記中心スライド溝を開放する一方、前記ガイドプレート部の二等辺三角形の底辺にあたる他方の端部が下側の前記オフセットスライド溝を開放し、かつ前記中心スライド溝を閉鎖する形状に形成されている吊りバケット装置である。
【0016】
上述した前記吊りバケット装置は、以下の工程によって前記バケット本体が反転することを特徴とする。
ステップ1:前記接続ピンが前記中心スライド溝の上側の端部にある状態で、前記吊りフレームによって前記バケット本体が吊り上げられている。
ステップ2:前記吊りフレームが降下することで前記バケット本体が接地したのち、前記吊りフレームがさらに降下すると、前記接続ピンが前記接続ピンガイドによってガイドされ、前記中心スライド溝に沿って下方へスライドする。
ステップ3:前記接続ピンが、前記中心スライド溝に突出する前記ガイドプレート部の前記他方の端部を押しのけて前記中心スライド溝の下側の端部に到達する。
ステップ4:前記吊りフレームが上昇することで、前記接続ピンが前記接続ピンガイドによってガイドされ、前記オフセットスライド溝に沿ってスライドしレ状に折り返された前記オフセットスライド溝の端部へ到達する。
ステップ5:前記吊りフレームがさらに上昇すると、前記接続ピンが前記バケット本体の重心に対しオフセットした位置にあるため、前記接続ピンを中心として前記バケット本体が反転し上下逆転する。
ステップ6:前記オフセットスライド溝に沿って前記接続ピンが前記中心スライド溝の反転後上側となった端部に到達するまで、反転した前記バケット本体が滑り落ちる。
ステップ7:前記接続ピンが前記中心スライド溝の反転後上側となった端部にある状態で、反転した前記バケット本体が前記吊りフレームによって吊り上げられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吊りバケット装置は、吊りフレーム(クレーンフック等)を上下に移動させることのみで、接続ピンガイドによって接続ピンがスライド溝を所定の位置までガイドされるので、吊りフレーム(クレーンフック等)を上昇させれば、バケット本体が反転し土砂等を排出できる。そのため、本発明の吊りバケット装置を用いるクレーン作業現場では、玉掛け作業者が不要となり、作業性の向上、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る吊りバケット装置の全体斜視図である。
【
図2】クレーンフックで吊り上げられている吊りバケット装置の側面図である。
【
図3】
図2のA矢視図であって、吊りバケット装置の側面図である。
【
図9】反転工程のステップ2からステップ4を説明する図である。
【
図10】反転工程のステップ5を説明する図である。
【
図11】反転工程のステップ6を説明する図である。
【
図12】反転工程のステップ7を説明する図である。
【
図13】矢板を用いた掘削作業現場で本実施の形態に係る吊りバケットを使用する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る吊りバケット装置1の全体斜視図である。
図1に示す吊りバケット装置1は、クレーンフック等で吊り上げる前であって、地面上に載置された状態を示している。以降、本実施の形態で吊りバケット装置1を説明するときの正面視と側面視については、
図1に記載する矢印の方向から見たものとする。
【0020】
図2は、クレーンフック5で吊り上げられている吊りバケット装置1の側面図である。
図3は、
図2のA矢視図であって、吊りバケット装置1の正面図である。本実施の形態で吊りバケット装置1を説明するときの上下、前後、左右については、
図2と
図3に記載する矢印で示す方向とする。
【0021】
吊りバケット装置1は、バケット本体2、吊りフレーム3、反転機構4から構成されている。
図3に示すように、バケット本体2は、正面視において左右対称な容器形状に構成され、土砂等を積載可能となっている。
【0022】
図3に示すように、吊りフレーム3は、正面視において左右対称な門型形状に構成されている。吊りフレーム3の脚部6の下端部から左右方向に中心に向いて突出する一対の接続ピン7がバケット本体2の左右両側面に枢着されている。吊りフレーム3の中央上部8をクレーンフック5等で吊り上げることによりバケット本体2を吊り上げ可能となっている。
【0023】
図3に示すように、反転機構4は、正面視においてバケット本体2の両側面に左右一対設けられている。後述するように、反転機構4の作用によって、バケット本体2に対して吊りフレーム3が上昇下降することのみにより、バケット本体2を運搬姿勢と排土姿勢とに上下反転させることができる。
【0024】
図4は、吊りフレーム3単体の正面図である。吊りフレーム3は、適宜の寸法に切断された一対の鋼管10、11を溶接することで、全体として左右対称な門型形状に構成されている。中央上部8は、クレーンフックが掛けられるように、上方に向け山形となっている。鋼管10、11には、補強用の鋼管12、14がさらに溶接により連結されることで、吊りフレーム3としての強度と剛性が確保されている。吊りフレーム3を構成する、鋼管10、11、12、14には、機械構造用鋼管などが用いられる。
【0025】
吊りフレーム3の脚部6には、鋼板13を介して一対の接続ピン7が溶接されている。一対の接続ピン7は、中心に向いて対抗するよう、同一線上に配置されている。接続ピン7の内側の端部にはフランジが設けられており、後述する接続プレートと組み合わされる。接続ピン7は、機械構造用合金鋼鋼材などが用いられ、機械加工により製作される。
【0026】
図5は、バケット本体2の側面図である。バケット本体2の全体形状は、側面視においても左右対称な容器形状となっている。左右の側面板20の下側の前後は大きな半径の円弧部21とされ、側面板20の下部には平坦部22が設けられている。前後の正面板24と下面板25は、左右の側面板20と端部同志で溶接され、全体として上部が開口した容器形状が構成されている。バケット本体2の上側開口部の縁部全周には、等辺山形鋼を使用した縁部材23が溶接されている。これにより、バケット本体2の上側開口部の強度と剛性が確保されている。バケット本体2を構成する部材には、一般構造用圧延鋼材又は、高張力鋼板などが使用される。
【0027】
なお、本発明の吊りバケット装置1については、バケット本体2の側面視における形状に関し、前後の対称形状は要件とされない。また、下部の前後が円弧状であること、及び下部に平端部が設けられることも要件とされない。本発明の吊りバケット装置の側面視形状は、本発明の機能を発揮できるものであれば他の形状であっても良い。
【0028】
以降、実施の形態に係る吊りバケット装置1の反転機構4の詳細な構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、正面視においてバケット本体2の左右両側面に互いに平行となるよう一対の接続プレート30が配置されている。接続プレート30は、縦長の長方形の板である。接続プレート30には、接続ピン7が回転可能かつスライド可能に嵌合されるスライド溝31が備えられている。
【0030】
図1に示すように、側面視においてバケット本体2の中心線に近接しバケット本体2の上下中心付近に設けられる枢支点32により接続ピンガイド50が枢支されている。接続ピンガイド50は、バケット本体2の上下反転に伴い接続プレート30の面に沿って所定角度揺動しスライド溝31に出没することで接続ピン7のスライド方向をガイドするものである。接続ピンガイド50の詳細な構成と作用については、後述する。
【0031】
図5に示すように、接続プレート30のスライド溝31は、バケット本体2の重心を通る上下方向の中心線34上に形成された中心スライド溝35と、中心スライド溝35の両端部から枢支点32の側にレ状に折り返して形成された上下2つのオフセットスライド溝36とを有している。スライド溝31は、枢支点32を通る前後方向の中心線42を中心とした上下対称となる形状に形成されている。また、スライド溝31は、一方のオフセットスライド溝36の端部から、中心スライド溝35を経て、他方のオフセットスライド溝36の端部までがほぼ同じ幅の連続する溝に形成されている。
【0032】
接続プレート30の裏側であって、側面板20との間には一対のストッパ41が配置されている。ストッパ41は、中心スライド溝35の前側であって、中心線42を中心とした上下対称となる位置に配置されている。ストッパ41は、後述する接続ピンガイドの揺動範囲を定めるためのものである。
【0033】
図6は、
図5のB-B矢視断面図である。接続プレート30は、連結板37を介して側面板20に対して平行に取り付けられている。側面板20、接続プレート30、連結板37によって断面が矩形の部屋38が形成されている。部屋38の前側には窓39が明けられており、接続ピンガイド33が前側から部屋38内に挿入可能となっている。中心スライド溝35を通って接続ピン7が部屋38内に挿入可能となっている。接続プレート30には、枢支点32となる枢支ピンが挿入される穴40が明けられている。接続プレート30は、接続ピン7との荷重伝達時の面圧を考慮した板厚とされる。また、接続プレート30には、接続ピン7の回転、スライドに対し十分な耐摩耗性等を有するよう高張力鋼板などが使用される。
【0034】
図7は、接続ピンガイド50単体を表す側面図である。接続ピンガイド50は、略二等辺三角形の板状のガイドプレート部51と、ガイドプレート部51の二等辺三角形の頂点方向(前方)に伸びる棒状の重力感知棒部52とから構成されている。ガイドプレート部51の中央部であって、二等辺三角形の中央部に枢支部53となる穴が明けられている。本実施の形態に係る接続ピンガイド50は、ガイドプレート部51と重力感知棒部52とが別部材で構成されており、両者は接続部54でボルトナットにより接続されている。なお、接続ピンガイド50のガイドプレート部51と重力感知棒部52とが一体となるよう同一部材で構成してもよいことはもちろんである。
【0035】
重力感知棒部52の先端には連結丸棒55が取り付けられている。
図3に示されるように、連結丸棒55は左右の接続ピンガイド50を連結している。この連結丸棒55によって連結されているので、左右の接続ピンガイド50は、同期して動作(揺動)する。なお、連結丸棒55は、本発明の反転機構4の機能には望ましい構成ではあるが、必須のものではない。
【0036】
図7に示した側面視において、接続ピンガイド50は、バケット本体2の前後方向に配置され枢支点32(枢支部53)を中心として枢支されてバランスした状態において(
図1参照)、常に重力感知棒部52の重力による左回り回転モーメントがガイドプレート部51の重力による右回り回転モーメントよりも大きくなる性質を付与されている。そのため、バケット本体2の上下反転に伴い揺動した後に、常に左回りした所定位置となる上側のストッパ41によって停止するよう構成されている。
【0037】
図7には、接続ピンガイド50が枢支部53によって枢支される接続プレート30を二点鎖線で記載している。この状態では、ガイドプレート部51の二等辺三角形の上側の斜辺がストッパ41に当接し所定位置で揺動停止している。
【0038】
図7に示すように、接続ピンガイド50は、所定位置において、ガイドプレート部51の二等辺三角形の底辺にあたる一方の端部56が上側のオフセットスライド溝36を閉鎖し、かつ中心スライド溝35を開放する形状寸法となっている。一方、ガイドプレート部51の二等辺三角形の底辺にあたる他方の端部57が下側のオフセットスライド溝36を開放し、かつ中心スライド溝35を閉鎖する形状寸法に形成されている。
【0039】
図7に示した接続プレート30のスライド溝へのガイドプレート部51の出没状況は、吊りバケット装置1が後述する反転工程を経て上下反転した際には、接続ピンガイド50が揺動することで、上述した出没状況はその時も上下で同じものとなる。
【0040】
なお、
図7で説明した接続ピンガイド50は、上下のオフセットスライド溝36でのガイドを1つのガイドプレート部51で行う場合を説明したが、ガイドプレート部51を上下で分離するようにしてもよい。その場合は、重力感知棒部52を上下でそれぞれ別に用意する。その際、重力感知棒部52を同じ前方又は後方に向けても良い。あるいは、オフセットスライド溝36をそれぞれ前方と後方とに向け、接続ピンガイドもそれぞれ前方と後方に向けるようにしてもよい。
【0041】
以上その構成を説明した実施の形態に係る吊りバケット装置1の運搬姿勢から排土姿勢までの反転動作の工程について、
図8~
図12を用いて説明する。なお、以下の工程については、吊りバケット装置1を移動式クレーンで吊る場合で説明する。
【0042】
ステップ1:接続ピン7が中心スライド溝35の上側の端部にある状態(運搬姿勢)で、吊りフレーム3によってバケット本体2が吊り上げられている。(
図8)
【0043】
ステップ2:ウインチを巻下げ、吊りフレーム3が降下することでバケット本体2が接地したのち、さらにウインチを巻下げると、吊りフレーム3のみがさらに降下する。すると、接続ピン7(黒丸で示す。)が接続ピンガイド50によってガイドされ、中心スライド溝35に沿って下方へスライドする。(
図9)
【0044】
ステップ3:接続ピン7(黒丸で示す。)が、中心スライド溝35に突出するガイドプレート部51の他方の端部57を押しのけて中心スライド溝35の下側の端部に到達する。(
図9)
【0045】
ステップ4:ここから、ウインチを巻上げ吊りフレーム3が上昇することで、接続ピン7(黒丸で示す。)が接続ピンガイド50によってガイドされ、オフセットスライド溝36に沿ってスライドしレ状に折り返されたオフセットスライド溝36の端部へ到達する。(
図9)
【0046】
ステップ5:継続してウインチを巻上げ吊りフレーム3がさらに上昇すると、接続ピン7がバケット本体2の重心よりも下方のオフセットした位置にあるため、接続ピン7を中心としてバケット本体2が反転し上下逆転する。そのときのバケット本体2の回転方向を矢印で示す。(
図10)
【0047】
ステップ6:オフセットスライド溝36に沿って接続ピン7(黒丸で示す。)が反転後上側となった中心スライド溝35の端部に到達するまで、持ち上がって反転したバケット本体2が滑り落ちる。(
図11)
【0048】
ステップ7:接続ピン7が反転後上側となった中心スライド溝35の端部にある状態(排土姿勢)で、反転したバケット本体2が吊りフレーム3によって吊り上げられている。(
図12)
【0049】
実施の形態に係る吊りバケット装置1の排土姿勢(
図12参照)から運搬姿勢(
図8参照)までの反転動作の工程は、
図11に接続ピン7(黒丸で示す。)の動きを示すように前後方向のみ異なるが基本的に
図9のものと同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0050】
図13は、本実施の形態に係る吊りバケット装置1をラフテレーンクレーン60のクレーンフック5で吊り上げ、矢板61を用いた掘削作業現場での土砂運搬作業に使用する状況を説明する図である。
【0051】
本実施の形態の吊りバケット装置1によれば、接続ピンガイド50によって接続ピン7がスライド溝31を所定の位置までガイドされるので(
図9等参照)、吊りフレーム3(クレーンフック5)を上下に移動させることのみでバケット本体2を反転させ内部の土砂等を排出できる。
【0052】
すなわち、
図13に示すような、移動式クレーン60のオペレータが吊りバケット装置1を直接目視できない作業現場においても、ウインチ操作のみで、バケット本体2を反転することができる。そのため、本発明の吊りバケット装置1を用いる作業現場では、玉掛け作業者が不要となり、作業性の向上、安全性の向上を図ることができる。
【0053】
なお、本発明の吊りバケット装置1は、クレーンフック5を介して吊り上げる必要はなく、その他の治具を用いて吊り上げてもよい。あるいは、直接ワイヤーロープで吊り上げても良い。また、吊り上げるための作業機は移動式クレーンに限られない。ショベル等のアームで吊り上げるものであって、ウインチを用いないものでも構わない。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0055】
1:吊りバケット装置
2:バケット本体
3:吊りフレーム
4:反転機構
5:クレーンフック
6:脚部
7:接続ピン
8:中央上部
30:接続プレート
31:スライド溝
32:枢支点
34:中心線
35:中心スライド溝
36:オフセットスライド溝
41:ストッパ
50:接続ピンガイド
51:ガイドプレート部
52:重力感知棒部
56:一方の端部
57:他方の端部
【要約】
【課題】 吊りフレームを上下に移動させることのみで、バケット本体を反転し、土砂等を排出できる吊りバケット装置を提供する。
【解決手段】 正面視において左右対称な容器形状に構成され、土砂等を積載可能なバケット本体2と、正面視において左右対称な門型形状に構成され、その脚部の下端部から左右に突出する一対の接続ピン7が前記バケット本体2の左右両側面に枢着された状態でその中央上部をクレーンフック等で吊り上げることにより前記バケット本体2を吊り上げ可能な吊りフレーム3と、正面視において前記バケット本体2の両側面に左右一対設けられ、前記吊りフレーム3が上昇下降することのみにより前記バケット本体2を運搬姿勢と排土姿勢とに上下反転可能な反転機構4と、を備える。
【選択図】
図1