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  • 特許-インターロッキングブロック舗装 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】インターロッキングブロック舗装
(51)【国際特許分類】
   E01C 5/06 20060101AFI20221212BHJP
   E01C 3/00 20060101ALI20221212BHJP
   E01C 7/00 20060101ALI20221212BHJP
   E01C 11/24 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E01C5/06
E01C3/00
E01C7/00
E01C11/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018232276
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094376
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】岸良 竜
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 聡
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-011811(JP,A)
【文献】特開2001-011810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 5/06
E01C 3/00
E01C 7/00
E01C 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、上から順に、厚さが6~8cmのインターロッキングブロック(ただし、透水性インターロッキングブロックを除く。)層、敷砂の粒径が0.075~5.0mmで、厚さが2~3cmの敷砂層、厚さが0.3~3.0mmの不織布層、並びに、厚さが7~15cmで、モルタル粗骨材空隙比(Km)が0.4~0.8、およびペースト細骨材空隙比(Kp)が5~11のポーラスコンクリート層からなる多層構造を有するインターロッキングブロック舗装。
【請求項2】
さらに、ポーラスコンクリート層の下に、順に路盤および路床を含む、請求項1に記載のインターロッキングブロック舗装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水性に優れたインターロッキングブロック舗装に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロッキングブロック舗装は、加重がかかった際に目地を介してブロック同士が噛み合うこと(インターロック)により加重が分散する構造を有し、インターロッキングブロックの間の目地が透水性を有することから、ゲリラ豪雨等の都市型水害の対策として、歩道、広場、および駐車場等の軽荷重の舗装に用いられている。
インターロッキングブロック舗装の用途が、おもに軽荷重の舗装に限定されるのは、インターロッキングブロックを車道に用いると、雨水が敷砂や路盤を通過・滞留して、これらの層が軟弱化し、わだち掘れが発生するからである。
そこで、インターロッキングブロックを車道に用いることができれば、インターロッキングブロックの更なる普及に資すると期待される。
【0003】
このような期待から、特許文献1では、ポーラスコンクリートブロック(表層)、クッション層、ポーラスアスファルト処理混合物(基層)、および、特定の透水係数を有するセメント安定処理物(路盤)から構成される舗装構造が提案されている。しかし、当該舗装は、透水性の舗装構造であるため、わだち掘れの抑制は十分とは云えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-011810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、インターロッキングブロック舗装の下の層の敷砂に侵入した雨水を速やかに排出して、雨水の滞留を防ぐことにより、インターロッキングブロック舗装の不陸や沈下を抑制できるインターロッキングブロック舗装を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、インターロッキングブロック層、敷砂層、不織布層、およびポーラスコンクリートからなる多層層構造を有するインターロッキングブロック舗装は、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を有するインターロッキングブロック舗装である。
【0007】
[1]少なくとも、上から順に、厚さが6~8cmのインターロッキングブロック(ただし、透水性インターロッキングブロックを除く。)層、敷砂の粒径が0.075~5.0mmで、厚さが2~3cmの敷砂層、厚さが0.3~3.0mmの不織布層、並びに、厚さが7~15cmで、モルタル粗骨材空隙比(Km)が0.4~0.8、およびペースト細骨材空隙比(Kp)が5~11のポーラスコンクリート層からなる多層構造を有するインターロッキングブロック舗装。
[2]さらに、ポーラスコンクリート層の下に、順に路盤および路床を含む、前記[1]に記載のインターロッキングブロック舗装。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインターロッキングブロック舗装は、インターロッキングブロック舗装の下の層の敷砂に侵入した雨水を、ポーラスコンクリート層を通して速やかに排出して、雨水の滞留を防ぐことにより、インターロッキングブロック舗装の不陸や沈下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のインターロッキングブロック舗装の一例を示す概略図であり、上から順に、インターロッキングブロック層、敷砂層、不織布層、ポーラスコンクリート層、路盤、および路床からなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記のとおり、少なくとも、上から順に、インターロッキングブロック層、敷砂層、不織布層、およびポーラスコンクリート層からなる多層構造を有するインターロッキングブロック舗装である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
1.インターロッキングブロック
本発明のインターロッキングブロック舗装で用いるインターロッキングブロックの厚さは、好ましくは6~12cmである。厚さが6cm未満では割れやすく、12cmを超えるとブロックの充填率が低下する傾向がある。なお、インターロッキングブロックの厚さは、より好ましくは7~11cm、さらに好ましくは8~10cmである。
また、インターロッキングブロックの配合は通常の配合でよく、例えば、単位水量108kg/m、単位セメント量360kg/m、単位細骨材量950kg/m、単位粗骨材量954kg/mである。
【0012】
2.敷砂
本発明のインターロッキングブロック舗装の敷砂層に用いる砂は、川砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂等が使用でき、粒径は0.075~5.0mmである。粒径が0.075mm未満では排水性が低く、5.0mmを超えるとインターロッキングブロック舗装の平滑性が低下する。また、前記敷砂層の厚さは、好ましくは2~3cmである。厚さが該範囲であれば、排水性とインターロッキングブロック舗装の平滑性は良好である。
【0013】
3.不織布
本発明のインターロッキングブロック舗装の不織布層に用いる不織布の厚さは、好ましくは0.3~3.0mmである。厚さが0.3mm未満では破れ易くて砂の降下を防止できず、3.0mmを超えると平坦性が低下する傾向がある。なお、不織布の厚さは、より好ましくは0.7~2.1mm、さらに好ましくは1.2~1.5mmcmである。
また、前記不織布の材質は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、およびビニロン繊維から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
4.ポーラスコンクリート
本発明のインターロッキングブロック舗装で用いるポーラスコンクリートは、ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、水、および高性能AE減水剤を含む。ここで、ポルトランドセメントは、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が使用できる。これらの中でも、強度発現性やコストの観点から、普通ポルトランドセメント、または早強ポルトランドセメントが好ましい。
また、細骨材は、川砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂等が使用できる。また、粗骨材は、川砂利、海砂利、砕石等を使用できる。これらの中でも、強度発現性やコストの観点から、粗骨材は砕石7号が好ましい。また、水は水道水等を使用できる。
高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸系化合物やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩を使用できる。
また、ポーラスコンクリート層の厚さは、好ましくは5~30cmである。厚さが5cm未満では、車両の走行により割れが生じる可能性が高くなり、30cmを超えると充填率が低下する可能性がある。なお、ポーラスコンクリート層の厚さは、より好ましくは7~15cm、さらに好ましくは10~20cmである。
【0015】
前記ポーラスコンクリートの配合は、好ましくはポルトランドセメントの単位量が130~500kg/m、細骨材の単位量が40~300kg/m、粗骨材の単位量が1100~1900kg/m、水の単位量が40~150kg/m、および高性能AE減水剤の単位量が0.7~15.0kg/mである。
なお、前記ポーラスコンクリートは、前記材料以外に、任意成分として空気量調整剤を、ポルトランドセメント100質量部に対して0.02質量部以下含むことができ、さらに、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム等のセメント混和材も含むことができる。
【0016】
前記ポーラスコンクリートのモルタル粗骨材空隙比(Km)は、好ましくは0.4~0.8である。モルタル粗骨材空隙比は、ポーラスコンクリートの配合特性を表す指標の一つであって、粗骨材を締め固めた状態における粗骨材間の空隙量に対する、モルタルの体積の比を表す。
また、前記ポーラスコンクリートのペースト細骨材空隙比(Kp)は、好ましくは5~11である。ペースト細骨材空隙比も、ポーラスコンクリートの配合特性を表す指標の一つであって、細骨材を締め固めた状態における細骨材間の空隙量に対する、セメントペーストの体積の比を表す。
【0017】
なお、施工に際し、ポーラスコンクリートの敷均し、および締固めにはバイブ式のアスファルトフィニッシャーを使用するとよい。また、該敷均しや締固めの後、ゴム巻きの振動ローラーを使用して、さらに締固めと平坦仕上げを行うとよい。
【実施例
【0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(a)ポーラスコンクリートの使用材料および配合
表1にポーラスコンクリートの使用材料を示し、表2にポーラスコンクリートの配合を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
(b)施工
(実施例)
路盤上に、空隙率が17.5%に揃えた表2の配合のポーラスコンクリートを厚さ10cmで施工した。バイブ式のアスファルトフィニッシャーでポーラスコンクリートを敷均した後に、ゴム巻きの振動ローラーで締固めて仕上げを行った。その後、速やかに、ポーラスコンクリートの表面にビニルシートを敷設して材齢3日まで養生した。
次に、ポーラスコンクリート表面に不織布(ユニチカ製、商品名「アピール」、厚さ1.2mm)を設置した後、不織布の上に陸砂(最大粒径4.75mm)を厚さが3cmとなるように敷設した。さらに、陸砂の上にインターロッキングブロック(太平洋プレコン工業社製、商品名「タマパーム」、厚さ8cm)を隣接するインターロッキングブロックとの間(目地)の寸法が2mmとなるように敷設した。インターロッキングブロックを敷設した後、珪砂(最大粒径2.0mm)を目地砂として目地に充填し、インターロッキングブロック舗装を形成した。
【0022】
(比較例1)
ポーラスコンクリート層の替わりにポーラスアスファルト(空隙率15%、厚さ5cm)層を設ける以外は、実施例と同じ方法でインターロッキングブロック舗装を形成した。
(比較例2)
ポーラスコンクリート層と不織布を設けない以外は実施例と同様な方法でインターロッキングブロック舗装を形成した。
【0023】
(c)試験概要
前記舗装路面に対して、雨水を想定して20ml/hrの水を180日間散水した。1日あたりの散水時間は5時間とした。その後、路面上に「JIS A 1215(道路の平板載荷試験方法)」に準拠して、荷重強さが35kN/mとなるように100万回載荷を繰り返した後、舗装の沈降量をたわみ量として測定した。
【0024】
(d)試験結果
路面の沈降量の測定結果を表3に示す。沈降量は、比較例1および比較例2では、「道路維持修繕要綱」(社団法人日本道路協会)に示される維持修繕の要否の判断の目安となる30mm以上であったが、実施例では21mmであり30mmより小さかった。
【0025】
【表3】

図1