(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】交換式先端を備える鑷子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/30 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61B17/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116882
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504462571
【氏名又は名称】サクラ ファインテック ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア グリーンリー
(72)【発明者】
【氏名】エリコ フォン ビューレン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェフリー シェパード
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第1714822(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/30
B25B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち鑷子であって、
胴部と、一端部では結合された前記胴部の基底から延出するとともに第2端部では互いから分離される第1アーム及び第2アームとを包含する本体と、
前記本体に配設されるロッドであって、前記第1アームに配置される第1端部と、前記第2アームに配置される第2端部とを包含して前記胴部に頂部を形成するロッドと、
前記胴部において前記ロッドの前記頂部の周囲に配設される圧縮バネと、
前記ロッドの前記頂部に結合されて前記胴部の開口から突出するボタンと、
を包含し、
前記第1端部と前記第2端部とが当該第1端部及び当該第2端部の端に先端を受容するように前記アームと作動可能である第1位置と、前記先端を当該第1端部または第2端部から分離するように作動可能である第2位置とを前記ロッドが有し、
前記胴部の前記開口への前記ボタンの押下により前記第1位置から前記第2位置へ移動するように前記ロッドが作動可能であって、
前記圧縮バネにより前記ロッドが前記第1位置へ付勢される、手持ち鑷子。
【請求項2】
前記胴部が、端部の前記開口と棚部とにより画定される容積を中に包含し、前記圧縮バネの一端部が前記棚部と接触し、前記ボタンが前記バネの周囲に配設される、請求項1に記載の手持ち鑷子。
【請求項3】
前記第2位置において、前記ロッドの前記第1端部と前記第2端部とが前記第1アーム及び前記第2アームの当該端部から長い距離に配設される、請求項
1に記載の手持ち鑷子。
【請求項4】
前記本体の前記第1アームに第1先端を、前記第2アームに第2先端を押入することと、
前記ロッドにより前記第1先端を前記第1アームから、前記第2先端を前記第2アームから離脱させるように前記ボタンを押下することと、
を包含する、請求項1から請求項
3のいずれかに記載の手持ち鑷子を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鑷子および鑷子用の交換式先端に関する。
【背景技術】
【0002】
身体部分の除去/切除あるいは生検により得られた組織試料を準備して、組織学、遺伝分析、組織化学、その他の処理を行うための病理グロシングツールは、当該技術において周知である。一つのグロシングツールは、鑷子、特に母指鑷子である。母指鑷子は、一般的には一端部で接続されて反対端部が一対の反対把持端部を画定する2本のアーム(つかみ)を有する鑷子である。母指鑷子は一般的に、片手の母指と2または3本の指に保持される。把持端部を合致させ小型の物体又は組織を把持して組織を移動および保持または解放するように母指および指により圧力が印可されるまで、接続端部のバネ張力が把持端部を離間状態に保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図8】鑷子のアームにスリーブを含まない
図1の鑷子の分解図を示す。
【
図9】ロッドを含まない
図1の鑷子の分解図を示す。
【
図10】
図1の鑷子のF‐F’線における断面を示す。
【
図11】
図1の鑷子のアームの端部の分解図を示し、軸方向突出部の長さにわたって延在して先端の凹溝と係合可能であるタブまたはキーを示す。
【
図12】
図1の鑷子のアームに接続されうる鋸歯状先端を示す。
【
図13】
図1の鑷子のアームに接続されうるグロシング先端を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
手持ち鑷子とその使用が開示される。具体的には、交換式先端を把持端部に収容しうる手持ち鑷子が開示される。手持ち鑷子は、胴部と、一端部では結合された胴部の基底から延出して第2端部では互いから分離される第1アームおよび第2アームとを包含する本体を含む。本体にはロッドが配設され、ロッドは、第1アームに配置される第1端部と第2アームに配置される第2端部とを含む。ロッドは胴部の形状に適合して胴部に頂部を画定する。ロッドの頂部の周囲において胴部には圧縮バネが配設される。ボタンがロッドの頂部に接続され、胴部の開口から突出する。交換式(例えば使い捨ての)先端が第1アームおよび第2アームの各々の端部に載置されうる。ボタンが押下されるとロッドをアームの方へ前進させ、アームからの先端の変位または排出を起こしうる。このようにして、直接の物理的接触を伴わずに先端が取り外されうる。交換式先端特徴により、鑷子は、病理学研究所での異なるグロシング用途など反復的に使用されうる。
【0006】
図1から11は、病理学研究所におけるグロシング用途での使用に適した手持ち鑷子またはその部分を示す。
図1、
図2、
図8、
図9を参照すると、鑷子100は、アーム120とアーム125とが延出する胴部115を含む本体110を含む。胴部115とアーム120および125とは、炭素鋼など、ステンレス鋼またはプラスチックなど、耐久性材料から製作されうる。
【0007】
手持ち鑷子100の胴部115は、概ね管形の形状を有し、概ね中空でありうるか、内容積または空間を少なくとも画定する。胴部115の上位または上部の表面は容積または空間への開口118を画定する。胴部115は単一のユニットで、あるいは合致して接合(例えば接着剤、溶接)により単一ユニットを形成する二つの半体から形成されうる。胴部115の両面は、下で説明されるように開口118から挿入されるボタンの行程を画定するように機能しうる整合開口またはスロット117を含みうる。
【0008】
見ての通り、アーム120および125は胴部115の両側で胴部の基底から延出する。アーム120および125は接合(例えば溶接)により胴部115に接続されうる。図に示されている開位置において、アーム120およびアーム125の各々は、胴部115の軸線から20°から30°の角度などの角度で胴部115の基底から突き出る(
図1で軸線は破線で記されている)。アーム120および125は、一方に向けられる内向力がアームを軸線および他方のアームに近づけて閉止または把持位置を画定するように、反対向きである。力を取り除くとアームは開位置に戻る。アーム120およびアーム125は、開位置から閉位置へ移動させる力が人の手の指により印可されうるように構築されうる。アーム120およびアーム125は概ね管形の形状を有して、概ね中空であるかu字状、v字状、または放物線形状を有し、一方のアームの開口(u字状、v字状、または放物線形状の頂部)が他方のアームの開口に向かう方向に突き出ている。
図8および
図9は、上記のu字状、v字状、または放物線形状のアームを示す。アーム120および125の基底または遠位端部分(胴部115の遠位)は突部または軸方向突出部を含みうる。
図8および
図9は、アームの端部分の近くでのアーム120の突部または軸方向突出部122と、やはり端部分の近くでのアーム125の突部または軸方向突出部126とを示す。下で説明するように、突部または軸方向突出部122および126は、アーム120および125に先端が載置される(例えば手で載置される)ための抵抗または静止摩擦を提供する。アーム120および125の端部分は、アームの端部分の近くに突出タブまたはキーも含みうる(
図3の長手方向延出タブまたはキー129を参照)。タブまたはキー129は、先端がアームに対して正しい配向に載置されて鑷子の使用中ずっとこの配向にあるように先端がアームに載置されるための方向性配向を提供しうる。
【0009】
アーム120に配設されるのはスリーブ165であって、アーム125に配設されるのはスリーブ170である。スリーブ165および170の各々は、アームの形状に適合するように嵌合によって当該アームに載置されうる管形の形状を有する変形可能なプラスチック材料(例えばポリプロピレン)でありうる。スリーブ165およびスリーブ170は、鑷子100の使用時に指にクッションを提供しうる。
【0010】
図4、
図8、
図9に示されているように、鑷子100の本体110(胴部115およびアーム120,125)に配設されるのはロッド130である。ロッド130は、アーム120に配置される第1端部と、アーム125に配置される第2端部とを有する。ロッド130は、ロッドの中央区分または部分が胴部115に配設されるように鑷子100の本体の形状に適合する形状を有する。ロッド130の中点は、ロッドのおよそ180°の屈曲部である頂部を胴部115に画定する。アーム120およびアーム125がu字状、v字状、または放物線形状を有する際には、その開口からロッド130が各アームに配置され、それからロッド130の中央区分または部分が胴部115に(例えば上向きに)押入されうる。胴部115が二部品ユニットである際には、胴部115の部品が接合される前にロッド130の中央区分または部分が胴部115に配置されうる。
図10は、
図1のF‐F’線での断面を示し、u字状、v字状、または放物線形状(例えば逆向きc形状)を有するアーム120を図示し、その開口にロッド130が配置されている。
図4および
図7に示されているように、本体110に設置される時に、ロッド130は、端部がそれぞれアーム120および125の長さと同じか若干長くなるような長さを有しうる。
図4および
図7は、ロッド130の両端部がアーム120およびアーム125の各端部から若干(例えば約10から20ミリメートル)突出する例を示す。
【0011】
ロッド130の部分の中央区分の一部分の周囲に配置されるのは圧縮バネ140である。圧縮バネ140は鋼などの耐久性材料でありうる。ロッド130が胴部115に載置されると、圧縮バネ140が開口118から導入されてロッド130を囲繞しうる。
図5および
図6に示されているように、胴部115は、バネ140の基底のための停止部を形成する内向き突出棚部116を含む。
図5および
図6に示されているように、棚部116は両側で二分割されて、ロッド130を収容する二つの両側棚部を棚部(複数の棚部)の各側に画定する。
【0012】
胴部115の開口118に配置されるのはボタン150である。ボタン150は、炭素鋼または硬質プラスチックなどの耐久性材料による概ね円筒形の中実ユニットでありうる。
図5および
図6に図示されているように、ボタン150の基底は、ロッド130の中点を含むロッド130の中央区分または部分の一部分を収容する大きさの凹溝または切欠き155を含む。ロッド130が胴部115に配置されると、ボタン150は、ロッド130の部分の中央区分の一部分を拘束する距離だけ胴部115の開口118へ導入されうる。ボタン150の基底はバネ140の上部表面と接触する。そして炭素鋼などの耐久性材料のピン160が、胴部115の開口またはスロット117から挿入されうる。ピン160はロッド130の屈曲部で横向きに延在して開口またはスロット117にロッド130を保持する(
図6参照)。ピン160は、胴部115の開口またはスロット117にその端部が延在するような長さを有しうる。例えば母指または指でボタン150の上部表面を開口118へ(例えば下向きの力で)押下すると、胴部内の第1位置から胴部115内で下向きに、圧縮バネ140からの抵抗を受ける第2位置へ、ボタンおよびロッド130を移動させる。下向き移動は、胴部115の開口またはスロット117の長さに制限される。ボタン150への圧力を解除するとロッド130が第1位置へ戻ってボタン150が非押下位置へ戻るように、ロッド130はバネ140により第1位置へ付勢されている。
【0013】
鑷子100は、手で設置される先端をアーム120およびアーム125の各々の端部に収容するように設計される。この設計により、先端は、一回または数回の使用の後で取り外されて交換されうる。
図1~4,7,8~9は先端190を示している。先端190は、アーム120およびアーム125の端部の形状に適合する開口を有する形状を上位または上方の端部に有する耐久性プラスチック材料でありうる。反対端部は、鑷子の使用予定に応じて矩形(スペード)形状、先鋭端、または他の形状を有しうる。アームへ、そしてアーム120の突部または軸方向突出部122あるいはアーム125の突部または軸方向突出部126に押圧することにより、アーム120またはアーム125に先端が載置される。突部または軸方向突出部122および126は、先端190をアームに固定するように機能する(
図7参照)。各先端は、アームの端部分のタブまたはキー(例えば
図3のタブまたはキー129)と係合してアーム上で先端を配向する開口または凹溝191(
図9参照)を有しうる。
図11は、アーム120の端部の分解図を示し、軸方向突出部122の長さにわたって延在して先端190の(タブまたはキー129に類似した幅および長さを有する)凹溝191と係合できるタブまたはキー129を示す。先端が設置されると、鑷子100は、12cmから15cmなど10センチメートル(cm)から20cm程度である代表的な長さと、2cmから3cmなど1cmから4cmである(アーム120またはアーム125のいずれも他方に押圧されない)開位置の基底での代表的な幅とを有しうる。
【0014】
アーム120およびアーム125の各々から先端190を取り外すために、鑷子100のユーザはボタン150を(例えば親指または指で)押下する。ボタン150を押下するとロッド130を下向きに前進させる。ロッド130の下向き前進により、ロッドの両端部は先端190に力を印可し、アーム120および125の端部から先端を押し出す(例えば、アームの突部または軸方向突出部122および126により提供される弾性装着を克服するのに充分な力である)。アーム120およびアーム125の端部から先端が押し出されると、ボタン150への押下力が解除され、先端190がアーム120および125に設置されうる位置へ圧縮バネ140がロッド130を前進させる。
【0015】
図12および13は、鑷子100とともに使用されうる先端190の例を示す。
図12および13は、先端190の正面図および側面図を示す。
図12は鋸歯状先端を示し、
図13はグロシング先端を示す。これらが適当な先端の二つの例を示すことと、他の形状または特性を有する先端を鑷子100が収容しうることとが理解される。
【0016】
態様1
胴部と第1アームおよび第2アームとを包含する本体であって、第1アームおよび第2アームの各々が第1端部で胴部に結合され、胴部の基底から延出し、第2端部で互いから分離される、本体と、
本体に配設されるロッドであって、第1アームに配置される第1端部と、第2アームに配置されて胴部に頂部を形成する第2端部とを包含するロッドと、
胴部においてロッドの頂部の周囲に配設される圧縮バネと、
ロッドの頂部に結合されて胴部の開口から突出するボタンと、
を含む手持ち鑷子。
【0017】
態様2
端部の開口と棚部とにより画定される容積を胴部が包含し、圧縮バネの一端部が棚部と接触し、バネの周囲にボタンが配設される、態様1の手持ち鑷子。
【0018】
態様3
第1端部と第2端部とがアームとともに作動可能であって当該第1端部と当該第2端部の端に先端を受容する第1位置と、当該第1端部または第2端部から先端を分離するように作動可能な第2位置とをロッドが有する、態様1または2の手持ち鑷子。
【0019】
態様4
第2位置において、ロッドの第1端部および第2端部が第1アームおよび第2アームの当該端部から長い距離に配設される、態様3の手持ち鑷子。
【0020】
態様5
胴部の開口へのボタンの押下により第1位置から第2位置へ移動するようにロッドが作動可能である、態様3の手持ち鑷子。
【0021】
態様6
圧縮バネによりロッドが第1位置へ付勢される、態様3の手持ち鑷子。
【0022】
態様7
本体の第1アームへ第1先端を、第2アームへ第2先端を押入することと、ボタンを押下して、ロッドにより第1先端を第1アームから、第2先端を第2アームから外すこととを包含する、態様1~6のいずれかの手持ち鑷子の使用方法。
【0023】
本発明の具体的な態様が詳細に記載されたが、これらの詳細についての様々な変形例および代替例が開示の教示全体を考慮して考案されうることが当業者には理解されるだろう。したがって、開示された特定の構成は単に例示的であって、添付の請求項および態様の全体とその同等物のいずれかおよび全てが含まれる本発明の範囲について限定的であることは意味していない。
【符号の説明】
【0024】
100 鑷子
110 本体
115 胴部
116 棚部
117 スロット
118 開口
120,125 アーム
122,126 突部または軸方向突出部
129 タブ/キー
130 ロッド
140 圧縮バネ
150 ボタン
155 凹溝/切欠き
160 ピン
165,170 スリーブ
190 先端
191 開口/凹溝