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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】内燃機関の消音装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F02M35/12 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018221053
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020084894
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】中屋 翔揮
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭平
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078397(JP,A)
【文献】特開平10-153152(JP,A)
【文献】米国特許第06474318(US,B1)
【文献】特開2000-154725(JP,A)
【文献】実開昭62-040269(JP,U)
【文献】実開昭58-193017(JP,U)
【文献】特開昭60-093123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00 - 35/16
F02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に連結された吸気マニホールドと、
該吸気マニホールドに吸気を導入する吸気通路に配設された過給機と、
前記吸気通路に配設され、吸気音を消音する消音器と、を備えた内燃機関の消音装置において、
前記消音器は、
前記吸気通路の一部を構成し、周壁に貫通孔を有する筒状の連通部と、
該連通部の外部に設けられ、前記貫通孔を介して前記連通部の内部と連通する共鳴室を形成する共鳴用ハウジングと、
前記吸気マニホールド内と前記共鳴ハウジング内とを連通する通気管と、
前記連通部と前記共鳴用ハウジングとの間に配置され、前記通気管を介して前記共鳴用ハウジング内に導入される吸気の過給圧が所定値以上の場合に、前記連通部に対して周方向又は筒軸方向に移動して前記貫通孔を開放する開放位置から前記貫通孔を閉塞する閉塞位置に変位する可動部材と、
該可動部材を前記開放位置に保持するように付勢する付勢部材と、を備え
前記可動部材は、前記連通部の外周面と間隔をあけて前記連通部の全周を覆う筒状に形成され、その内周面から前記連通部の外周面まで延びる可動壁部を有し、
前記消音器は、前記連通部の外面と、前記可動部材の内周面及び前記可動壁部とによって区画される空気室を有し、前記通気管を介して前記空気室内に導入される吸気の圧力により前記可動壁部を押圧して前記可動部材を前記閉塞位置に移動させることを特徴とする内燃機関の消音装置。
【請求項2】
前記連通部は、周壁に複数の貫通孔を有し、
前記可動部材は、前記開放位置で全ての貫通孔を開放し、前記閉塞位置で全ての貫通孔を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の消音装置に関し、特に、過給機により吸気を過給する内燃機関に適用される消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、エンジン(内燃機関)の出力を増大するために、エンジンへの吸気を過給するターボチャージャ等の過給機が搭載されている。過給機を搭載した車両では、過給時に過給機による圧縮空気が上流側へ逆流し、吸気管や吸気口から放射される気流音が乗員に異音として認識されることから、吸気装置に気流音を抑制するための消音器が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンの吸気装置に消音器であるレゾネータを配設したものが記載されている。この吸気装置では、エンジンの吸気通路に上流側から順に、エアクリーナ、レゾネータ、過給機であるターボチャージャ及び吸気マニホールドが配設されており、エアクリーナ及びレゾネータを通ってターボチャージャにより過給された吸入空気は、吸気マニホールドを通ってエンジンに導入される。
【0004】
レゾネータは吸気通路の内部と連通する共鳴室を形成する共鳴用ハウジングを備えており、この共鳴室によって吸入空気の流れを制御し、共鳴室で共鳴を発生させることにより過給時の気流音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-093123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の吸気装置では、レゾネータを設けたことにより吸気の圧力損失が増加し、エンジンの出力低能が抑制されてしまうという問題があり、特に、高い出力性能が求められるエンジンの高回転時、すなわち過給圧が高くなる高過給領域において、レゾネータによる圧力損失により、所望の出力性能が得られなくなることが問題になっていた。
【0007】
一方、高過給領域では、エンジン音の増加などにより、吸気音が乗員に異音として認識され難くなる。それ故、高過給領域でレゾネータによる圧力損失を抑えて、高い出力性能を発揮することができる構造が求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって低過給圧領域で発生する気流音を低減でき、高過給領域で高い出力性能を得ることができる内燃機関の消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、内燃機関に連結された吸気マニホールドと、該吸気マニホールドに吸気を導入する吸気通路に配設された過給機と、前記吸気通路に配設され、吸気音を消音する消音器と、を備えた内燃機関の消音装置において、前記消音器は、前記吸気通路の一部を構成し、周壁に貫通孔を有する筒状の連通部と、該連通部の外部に設けられ、前記貫通孔を介して前記連通部の内部と連通する共鳴室を形成する共鳴用ハウジングと、前記吸気マニホールド内と前記共鳴ハウジング内とを連通する通気管と、前記連通部と前記共鳴用ハウジングとの間に配置され、前記通気管を介して前記共鳴用ハウジング内に導入される吸気の過給圧が所定値以上の場合に、前記連通部に対して周方向又は筒軸方向に移動して前記貫通孔を開放する開放位置から前記貫通孔を閉塞する閉塞位置に変位する可動部材と、該可動部材を前記開放位置に保持するように付勢する付勢部材と、を備え、前記可動部材は、前記連通部の外周面と間隔をあけて前記連通部の全周を覆う筒状に形成され、その内周面から前記連通部の外周面まで延びる可動壁部を有し、前記消音器は、前記連通部の外面と、前記可動部材の内周面及び前記可動壁部とによって区画される空気室を有し、前記通気管を介して前記空気室内に導入される吸気の圧力により前記可動壁部を押圧して前記可動部材を前記閉塞位置に移動させることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、通気管を介して吸気マニホールドから消音器の共鳴用ハウジング内に導入される吸気の過給圧が所定値未満の場合、すなわち、過給圧が低くなる低過給領域の場合に、消音器の貫通孔を開放状態にし、吸入空気を消音器の共鳴室内に流入させて、吸気音を低減することができる。また、通気管を介して吸気マニホールドから消音器の共鳴用ハウジング内に導入される吸気の過給圧が所定値以上の場合、すなわち、過給圧が高くなる高過給領域の場合に、消音器の貫通孔を閉塞状態にし、吸入空気の共鳴室内への流入を防止して吸気の圧力損失を防止することができる。これにより、高過給領域において高い出力性能を得ることができる。
【0012】
この構成によれば、通気管を介して消音器に形成された空気室に導入される吸気の圧力により可動部材を移動させることができるので、複雑な制御を要することなく、簡易な構造で可動部材を移動させることができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の消音装置において、前記連通部は、周壁に複数の貫通孔を有し、前記可動部材は、前記開放位置で全ての貫通孔を開放し、前記閉塞位置で全ての貫通孔を閉塞することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、高過給領域において可動部材によって全ての貫通孔を閉塞して高い出力性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る内燃機関の消音装置によれば、低過給圧領域で発生する気流音を低減できるとともに、高過給領域で高い出力性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態である内燃機関の消音装置を示す説明図。
図2】可動部材が開放位置にある消音器の側面図。
図3図2のA-A線に沿う断面図。
図4図2に示す消音器の縦断面図。
図5】消音器20の上流側を図3のB-B線の位置で筒軸方向に切断した断面図。
図6】可動部材が閉塞位置にある消音器の側面図。
図7図6のC-C線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態である内燃機関の消音装置を示す説明図である。本発明に係る消音装置10は自動車等の車両に適用され、エンジン(内燃機関)12に導入される吸入空気の吸気音を低減する消音器20を備えている。本実施の形態の消音装置10は、エンジン12と、エンジン12に吸入空気を導入する吸気装置14と、エンジン12の排気を排出する排気装置16とを備え、消音器20は吸気装置14に設けられている。
【0018】
エンジン12は、過給機によって吸入空気を過給して、高出力化や低燃費化を実現し得るものであり、例えば、排気量の小さな小型エンジンや、排気量の大きな大型エンジン等とすることができる。さらに、エンジン形式についても限定されることはなく、例えば、水平対向エンジン、直列エンジン、V型エンジン等とすることができる。
【0019】
吸気装置14は、吸気通路40を形成する吸気管41を備え、吸気管41には、上流側から順に、エアクリーナ42、エアフローメータ44、過給機であるターボチャージャ50、消音器20、スロットルバルブ45、インタークーラ46、吸気マニホールド48などが配設されている。
【0020】
エアクリーナ42は、吸入空気を濾過して空気中の塵などを取り除くフィルタである。エアフローメータ44は、エアクリーナ22の出口近傍に設けられ、吸気管41内を通過する吸入空気量を計測するものである。
【0021】
ターボチャージャ50は、吸気管41と排気装置16の排気管61との間に配置され、エンジン12の排気のエネルギーを利用して、吸入空気を圧縮し、過給する過給機である。ターボチャージャ50は、排気管61に設けられたタービン52と、タービン52と回転軸53で連結され、吸気管41に設けられたコンプレッサ54とを有する。ターボチャージャ50は、エンジン12の排気によってタービン52を回転駆動することにより、同軸のコンプレッサ54を駆動して吸入空気を圧縮する。
【0022】
消音器20は、吸入空気の吸気音を低減するものであり、具体的には、共鳴を発生させることによって気流音を消音するレゾネータである。この消音器20は、ターボチャージャ50の近傍の吸気通路40に設けられ、本実施の形態では、ターボチャージャ50より下流側であって、スロットルバルブ45よりも上流側の吸気通路40に配置されている。
【0023】
図2は消音器20の側面図、図3図2のA-A線に沿う断面図、図4図2に示す消音器20の縦断面図、図5は消音器20の上流側を図3のB-B線の位置で筒軸方向に切断した断面図である。消音器20は、吸気通路40の一部を構成して周壁に外部と連通する少なくとも一つの連通孔(貫通孔)22を有する筒状の連通部21と、連通孔22を介して連通部21内と連通する共鳴室28を形成する共鳴用ハウジング25とを備えるとともに、連通孔22を開閉するための開閉機構を備えている。なお、図2及び後述する図6では、開閉機構が理解されやすいように、共鳴用ハウジング25を二点鎖線で記載している。開閉機構は、可動部材31と、付勢部材36と、通気管38とを備えている。
【0024】
連通部21は、吸気通路40を形成する吸気管41の一部であり、連通孔22は、連通部の周壁を貫通する孔である。本実施の形態において、連通部21の外周面21aには、径方向外側に突出して筒軸方向に延びる4つの突出部23が形成されており、各突出部23に筒軸方向に並んで4つの連通孔22が形成されている。なお、連通部21において、連通孔22の数、連通孔22の長さ、連通孔22の開口面積の大きさ等は、消音する吸気音の周波数帯に応じて適宜設定することができる。
【0025】
共鳴用ハウジング25は、連通部21の外部に設けられる筐体であり、その内部に連通部21の内部と連通可能な共鳴室28を有している。本実施の形態において共鳴用ハウジング25は、全ての連通孔22を外側から覆うように、連通部21を全周に亘って囲む筒状に形成されており、筒状の周囲壁部26aと、周囲壁部26aの上流側の端部開口を塞ぐ第1の端部壁部26bと、周囲壁部26aの下流側の端部開口を塞ぐ第2の端部壁部26cとを有している。なお、本実施の形態では、連通部21及び共鳴用ハウジング25を略円筒状に形成しているが、断面形状は円形に限られず、楕円形状や多角形状であってもよい。
【0026】
開閉機構を構成する可動部材31は、共鳴用ハウジング25と連通部21との間に配置され、連通部21の全ての連通孔22を開閉可能となるように、連通部21に対して移動可能に構成される。
【0027】
本実施の形態において可動部材31は、連通部21の全周を囲む筒状に形成されている。可動部材31の両端部は、共鳴用ハウジング25の第1端部壁部26b及び第2端部壁部26cの内面に摺動可能に当接しており、可動部材31は連通部21及び共鳴用ハウジング25に対して、周方向に回動可能に構成されている。図3及び図4に示すように、連通部21の突出部23の頂面は、可動部材31の内周面と当接しており、可動部材31の周壁には、連通部21の連通孔22と対応する位置に、それぞれ貫通孔32が形成されている。可動部材31は、周方向に回動することにより、各貫通孔32が連通部21の各連通孔22と重なって全ての連通孔22が開放状態となる開放位置(図2図4を参照)と、全ての連通孔22を閉塞する閉塞位置(図6及び図7を参照)とに変位する。
【0028】
可動部材31の内部には、可動部材31の内周面31aから連通部21の外周面21aまで突出する可動壁部33が形成されている。本実施の形態において、可動壁部33は、連通部21の突出部23とほぼ平行に筒軸方向に延びており、両端部が共鳴用ハウジング25の第1端部壁部26b及び第2端部壁部26cの内面に摺動可能に当接している。図3に示すように、連通部21と可動部材31との間には、可動部材31の内周面31a及び可動壁部33と、連通部21の外面である外周面21a及び突出部23とによって区画された室が形成されている。図示例では、周方向で隣り合う突出部23の間に、可動壁部33で仕切られた第1室(空気室)34と第2室35とがそれぞれ形成されている。
【0029】
付勢部材36は、可動部材30を開放位置に保持するように可動部材30に付勢力を付与するものである。図3に示すように、本実施の形態の付勢部材36はコイルばねであって各第1室34に配設されている。このコイルばねは、一端が連通部21の突出部23に連結され、他端が可動壁部33に連結されており、コイルばねの伸縮に伴って可動部材30は周方向に回動する。
【0030】
通気管38は、吸気マニホールド48内と共鳴用ハウジング25内に形成された第1室34とを連通する管である。図2及び図5に示すように、通気管38は、共鳴用ハウジング25側の端部が複数に分岐しており、各分岐通路は、消音器20内の各第1室34に連通し、第2室35とは連通していない。なお、図5では第1室34内の付勢部材36の記載を省略している。インタークーラ46を通って吸気マニホールド48に流入した吸気の一部は、通気管38内を通って消音器20の第1室34に導入される。
【0031】
付勢部材36のばね定数は、第1室34の内圧が所定値以上となった場合、具体的には、ターボチャージャ50によって過給された吸気の過給圧が所定値以上となった場合に、室内の圧力により可動壁部33が付勢部材36の付勢力に抗して第2室34側へ押圧され、可動部材31が閉塞位置に移動するように設定されている。なお、可動部材31が移動する基準となる過給圧の値は、使用するターボチャージャ50に応じて適宜設定することができる。
【0032】
スロットルバルブ45は、吸入空気量を調節するものであり、消音器20の下流側に配置される。スロットルバルブ45は、ドライバによるアクセルペダル操作等に応じて、図示していないアクチュエータによりスロットル開度が調節される。
【0033】
インタークーラ46は、コンプレッサ54の下流側に配置され、コンプレッサ54により圧縮されて高温になった空気を冷却する熱交換器である。なお、図示例では、スロットルバルブ45の下流側にインタークーラ46を配置しているが、インタークーラ46を消音器46とスロットルバルブ45の間に配置してもよい。
【0034】
排気装置16は、排気通路60を形成する排気管61を備えており、上流側(エンジン12側)から順に、排気マニホールド62、タービン52などが配設される。排気装置16は、さらに、タービン52の上流側と下流側とを連通する排気バイパス管64を有する。排気バイパス管64には、ウエストゲートバルブ65と、ウエストゲートバルブ65の開度を調節するアクチュエータ66とが設けられており、ウエストゲートバルブ65の開度を調節して、排気バイパス管64を通過する排気量を調節することにより、過給圧を制御することができる。
【0035】
上述した消音装置10では、エアクリーナ42を通って吸入された空気が、ターボチャージャ50により過給され、消音器20を通過した後、スロットルバルブ45により絞られ、インタークーラ46により冷却される。冷却された吸気は、吸気マニホールド48を介してエンジン12に導入され、エンジン12に形成された各シリンダに吸入される。各シリンダでは、吸入空気と燃料との混合気が燃焼し、燃焼後の排気ガスは、排気マニホールド62を介して排気管61に排出される。
【0036】
次に、消音装置10の消音器20の動作について説明する。
【0037】
消音器20は、過給されていない場合又はターボチャージャ50による過給圧が所定値未満となっている低過給圧領域の場合に、付勢部材36により可動部材31が開放位置側に保持され、連通孔22及び貫通孔32を介して連通部21内と共鳴室27とが連通状態となる。これにより、消音器20は図2図4に示すオン状態となり共鳴作用によって吸気音を消音する。
【0038】
ターボチャージャ50による過給時の吸気音(ターボ気流音)は、特に、過給圧の立ち上がり時に乗員に異音として知覚されやすい。消音装置10は低過給領域でオン状態となるため、このターボ気流音を適切に消音することができる。
【0039】
一方、ターボチャージャ50による過給圧が所定値以上となる高過給圧領域の場合、消音器20は、吸気マニホールド48から通気管38を通って第1室34内に導入された吸気の圧力によって、第1室34が膨張するように可動壁部33を第2室35側へ押圧する。その結果、可動部材31は付勢部材36の付勢力に抗して閉塞位置まで移動し、消音器20は図6及び図7に示すように、全ての連通孔21が閉塞されたオフ状態となる。オフ状態では、吸気マニホールド48から第1室34に導入された吸気が、貫通孔32を介して共鳴室28内にも導入される。なお、第2室35は、第1室34の容積膨張に伴って容積が縮小する。消音器20がオフ状態となることで、消音器20での吸気の圧力損失が防止され、エンジン12の出力性能が高く保たれる。
【0040】
過給圧が立ち上がってエンジン12が高回転となる高過給領域では、ターボ気流音以外にも車両の動力音が発生するため、ターボ気流音が乗員に異音として知覚され難くなる。消音装置10は、この高過給領域において消音器20をオフ状態とし、エンジン12の出力性能を優先させることで、高い出力性能を得ることができる。
【0041】
上述のとおり、消音装置10は過給圧を利用して消音器20のオン・オフを切り替えることができるので、複雑な制御を要せず、簡易な構造で消音性能と出力性能の両立を図ることが可能である。近年では、内燃機関を小型化(排気量を低減)しつつ、過給機によって過給して燃費を向上させる、所謂ダウンサイジングターボの技術が注目されており、消音装置10は、このような過給機を備えた内燃機関に好適に用いることができる。
【0042】
また、消音装置10は、可動部材31が開放位置から閉塞位置まで移動する際に、連通孔22の開度が過給圧に応じて段階的に変化するように、付勢部材36のばね定数や連通孔22及び貫通孔32の配置を適宜調節することができる。これにより、消音器20の有効周波数を過給圧に応じて変化させることができ、消音性能をより向上することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、消音器20は、ターボチャージャ50より上流側の吸気通路40に配置してもよく、図1に示す吸気装置14において、エアフローメータ44とコンプレッサ54の間に配置する構成であってもよい。
【0045】
また、可動部材30は、空気室37の形状や付勢部材36の配置を適宜変更することにより、連通部21の筒軸方向に移動して貫通孔22を開閉する構造とすることができる。
【0046】
また、上述の実施の形態では、過給機としてターボチャージャ50を用いたが、これに代えて、例えば、スーパーチャージャ等の他の形式の過給機を用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 消音装置
12 エンジン(内燃機関)
14 吸気装置
16 排気装置
20 消音器
22 連通孔(貫通孔)
25 共鳴用ハウジング
28 共鳴室
31 可動部材
32 貫通孔
33 可動壁部
34 第1室(空気室)
35 第2室
36 付勢部材
38 通気管
40 吸気通路
48 吸気マニホールド
50 ターボチャージャ(過給機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7