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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱風溶接器の仮置き構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/26 20060101AFI20221212BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B29C65/26
E04G21/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019057653
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157531
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 薫人
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103760(JP,A)
【文献】実開昭60-125067(JP,U)
【文献】実開昭58-053610(JP,U)
【文献】実開昭57-138619(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/26
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に熱風の吹出口が設けられた本体部及び該本体部に固定された持ち手部を有し、該本体部から該持ち手部にかけて屈曲した形状をなす熱風溶接器を、仮置き具を用いて仮置きしてなる熱風溶接器の仮置き構造であって、
前記仮置き具は、
所定の被係止対象に対し係止可能なフック部と、
前記熱風溶接器の前記本体部をその先端側から挿通可能に構成された筒状の保持部と、
前記フック部及び前記保持部を連結する連結部とを備え
前記フック部が前記被係止対象に係止されて吊り下げられた状態にある前記保持部に対し前記本体部が挿通された状態となることで、前記保持部が鉛直方向に対し傾いた状態で前記熱風溶接器が前記保持部によって保持されることを特徴とする熱風溶接器の仮置き構造
【請求項2】
前記保持部により前記熱風溶接器保持された状態において、前記保持部が鉛直方向に対し斜めに傾き、該保持部の中心軸を含む断面における該中心軸及び水平面のなす角のうち鋭角の角度が30°以上60°以下となることを特徴とする請求項1に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【請求項3】
前記熱風溶接器を保持したときに、該熱風溶接器の前記吹出口が前記保持部の内部に収容された状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【請求項4】
前記連結部は、前記保持部の外周面に接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂の溶接に用いられる、先端部から熱風を噴出可能な熱風溶接器を、仮置き具を用いて仮置きしてなる熱風溶接器の仮置き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂で形成されたダクト、大径配管などの作業対象に対し、溶接作業を行うことがある。溶接作業では、塩化ビニル樹脂等からなる溶接棒を作業対象に接触させつつ該溶接棒へと熱風を吹き当てて、該溶接棒を溶融させるといったことが行われる。また、このような溶接作業は、例えば天井などに配設された吊込みダクト等を作業対象とした、高所での作業になることもある。
【0003】
上記のような溶接作業では、熱風を吹出可能な熱風溶接器が用いられる。一般に熱風溶接器は、先端部に熱風の吹出口(吹出ノズル)が設けられた本体部と、該本体部の後端側の側方から突出した状態で該本体部に固定された持ち手部とを有し、全体として略直角に屈曲した形状(いわゆるL字状)をなしている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第2604821号公報
【文献】特開平7-314557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高所での溶接作業中において、被溶接物や新規溶接棒などの材料などを取ったり、溶接段取りのためのクランプなどを設置したり、場所を変えたりするときに、熱風溶接器から一時的に手を離して、熱風溶接器を仮置きしたいといったときがある。しかしながら、通常、手近の高所位置に、熱風溶接器を安定して仮置きできるような大きな面を有する仮置き場は存在していない。このようなとき、例えば手近にある設備上に熱風溶接器を仮置きするといったことが思いつくところではあるが、このようなことを行ってしまうと、熱風溶接器の落下や、熱風溶接器の有する熱に起因する不具合の発生が懸念される。そこで、溶接作業を行う作業者と、熱風溶接器の仮保持などを行うための作業者とが対となって作業を行うといったことが考えられる。しかし、溶接作業に直接的に寄与しない作業者を別途用意することは、人的資源の浪費を招き、作業に係るコストの増大を生じさせてしまうおそれがある。
【0006】
また、高所作業中のみならず、床上などの低所において熱風溶接器を仮置きする場合にも次のような不具合が生じるおそれがある。すなわち、作業現場がクリーンルームなどのときには、内装の保護を図る、又は居ぬき作業中では製造工程への工事起因の静電防止を図る等の目的で熱風溶接器などの工具を床に直接置くことは禁止されるため、樹脂からなる静電シートと呼ばれるシートが床に敷かれ、この静電シート上に工具を置くことになる。しかし、静電シート上に熱風溶接器を仮置きすると、熱風溶接器の有する熱に起因する静電シートの損傷等のダメージ等が懸念される。これに対し、例えば床上に設置された金属製の台車や工具箱などの金属体に熱風溶接器を仮置きするといったことが考えられるが、この場合には、熱風溶接器を安定した状態で保持することが難しく、熱風溶接器の落下等による不具合も懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱風溶接器を安定した状態で仮置きすることができる熱風溶接器の仮置き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.先端部に熱風の吹出口が設けられた本体部及び該本体部に固定された持ち手部を有し、該本体部から該持ち手部にかけて屈曲した形状をなす熱風溶接器を、仮置き具を用いて仮置きしてなる熱風溶接器の仮置き構造であって、
前記仮置き具は、
所定の被係止対象に対し係止可能なフック部と、
前記熱風溶接器の前記本体部をその先端側から挿通可能に構成された筒状の保持部と、
前記フック部及び前記保持部を連結する連結部とを備え
前記フック部が前記被係止対象に係止されて吊り下げられた状態にある前記保持部に対し前記本体部が挿通された状態となることで、前記保持部が鉛直方向に対し傾いた状態で前記熱風溶接器が前記保持部によって保持されることを特徴とする熱風溶接器の仮置き構造
【0010】
上記手段1によれば、例えば安全帯のフックを掛けるための親綱や既設設備の吊金物などの被係止対象へとフック部を係止することで、高所作業に対応する位置などに仮置き具を容易に設置することができる。そして、連結部を介して吊り下がった状態の保持部に対し、熱風溶接器の本体部をその先端側(つまり、熱風の吹出口が存在する側)から挿通する(差し込む)という比較的シンプルな作業のみで、該保持部によって熱風溶接器を保持して、熱風溶接器を仮置きすることができる。従って、先端部が高温となる本体部を床側から浮かせつつ保持部内に収めた状態で、熱風溶接器を安定して保持することができる。これにより、熱風溶接器の落下や、熱風溶接器の有する熱に起因する不具合等の発生をより確実に防止することができる。また、熱風溶接器の仮保持などを行うための作業者を別途用意する必要がなくなるため、人的資源の有効活用を図ることができ、作業に係るコストの削減を図ることができる。さらに、高所にいながら熱風溶接器の仮置きを行うことができるため、仮置きのために低所に移動する必要はなく、作業者にとっての利便性を向上させることができる。
【0011】
手段2.前記保持部により前記熱風溶接器保持された状態において、前記保持部が鉛直方向に対し斜めに傾き、該保持部の中心軸を含む断面における該中心軸及び水平面のなす角のうち鋭角の角度が30°以上60°以下となることを特徴とする手段1に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【0012】
上記手段2によれば、吊り下げられた保持部により熱風溶接器を保持したときに、保持部が鉛直方向に対し斜めに傾いて、保持部の中心軸及び水平面のなす角のうち鋭角の角度が30°以上60°以下とされる。前記角度が60°以下とされることによって、仮置きされた熱風溶接器における持ち手部を連結部や保持部から水平方向に沿って十分に突き出たような状態とすることができ、持ち手部を非常に持ちやすい状態とすることができる。その結果、仮置きされた熱風溶接器を取出すことが容易となり、溶接に係る作業性をより向上させることができる。一方、前記角度が30°以上とされることよって、保持部によって本体部をより安定した状態で保持することができ、保持部から熱風溶接器(本体部)が抜けて落下することをより確実に防止できる。
【0013】
尚、上記手段2は、例えば熱風溶接器の形状や重量バランスなどを考慮して、保持部や連結部における形状や重量などの要素を調節することにより実現可能である。
【0014】
手段3.前記熱風溶接器を保持したときに、該熱風溶接器の前記吹出口が前記保持部の内部に収容された状態となることを特徴とする手段1又は2に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【0015】
上記手段によれば、保持部によって熱風溶接器を保持したときに、高温となる熱風溶接器の吹出口が外部に露出しない状態となるため、作業者にとっての安全性をより高めることが可能となる。
【0016】
尚、上記手段を採用する場合には、熱風溶接器を保持する保持部の内面と該熱風溶接器の吹出口とが離間した状態となるように構成することが好ましい。このように構成することで、熱風溶接器の熱が保持部に伝わることをより確実に防止できる。
手段4.前記連結部は、前記保持部の外周面に接合されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の熱風溶接器の仮置き構造。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態において、仮置き具を用いた高所作業の様子を示すための図である。
図2】第1実施形態における仮置き具の斜視図である。
図3】第1実施形態において、熱風溶接部を仮置きした状態における仮置き具などの斜視図である。
図4】第1実施形態において、熱風溶接器を仮置きしたときにおける保持部の傾きの程度について説明するための断面図である。
図5】第2実施形態における仮置き具の斜視図である。
図6】第2実施形態において、保持部の傾きの程度について説明するための断面図である。
図7】第2実施形態において、熱風溶接部を仮置きした状態における仮置き具などの斜視図である。
図8】熱風溶接器の概略構成を示すための一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本第1実施形態における仮置き具1は、高所作業を行う際に、所定の被係止対象122から吊り下げられるものであって、熱風溶接器100の仮置きのために用いられる。被係止対象122は、例えば安全帯のフックを掛けるための親綱や既設設備の吊金物などであるが、勿論、これらに限定されるわけではなく、仮置き具1を安定した状態で設置可能なものであればよい。
【0019】
また、熱風溶接器100は、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる作業対象121の溶接を行うためのものである。図1に示す例では、作業対象121は、比較的高所に設置された、塩化ビニル樹脂等からなる吊込みダクトであり、作業者P1は、一方の手に熱風溶接器100を持ち、他方の手に塩化ビニル樹脂等からなる樹脂棒110を持った状態で溶接作業を行う。尚、作業対象は、吊込みダクト以外の熱可塑性樹脂からなる製品であってもよい。
【0020】
さらに、熱風溶接器100は、図8に示すように、本体部101及び持ち手部102を有しており、該本体部101から該持ち手部102にかけてほぼ直角に屈曲した形状(いわゆるL字状)をなしている。本体部101の先端部には、細筒状の吹出ノズル101aが設けられている。
【0021】
また、図示は省略するが、持ち手部102における本体部101とは反対側の端部には、送風や通電のためのケーブルが接続されている。本実施形態における熱風溶接器100は、加熱手段やコンプレッサ等を有する図示しない熱風生成装置から前記ケーブルを介して熱風が送られるようになっており、送られた熱風を前記吹出ノズル101aの先端に位置する吹出口101bから噴出可能に構成されている。尚、熱風溶接器100は、例えば本体部101内に電気ヒータ等の加熱手段を備え、該加熱手段によって空気を加熱して熱風を生成可能なものであってもよい。
【0022】
次いで、仮置き具1について説明する。仮置き具1は、図2に示すように、フック部2、連結部3及び保持部4を備えている。
【0023】
フック部2は、被係止対象122に対し係止されるものであり、フック本体部21及びアーム部22を備えている。フック本体部21は、取付孔211aの貫通形成された被連結部211と、一部が途切れた環状をなすリング状部212とを一体的に備えている。尚、被係止対象122は、例えば高所作業時に作業員の安全を確保するために設置される親綱であり、親綱の場合は、作業者P1は自身が着用している安全帯のフックをこれに係止するのである。被係止対象122は、例えば別な用途のための手すり等であってもよく、安全に落下することなく仮置き具1を受け止めるものであればよい。
【0024】
アーム部22は、前記リング状部212における途切れ部分に対応して設けられている。アーム部22の一端部は前記リング状部212に軸支されており、アーム部22はリング状部212の環状部分中心側へと回動可能とされ、図示しない付勢部材でリング状部212へ付勢されている。
【0025】
フック部2を被係止対象122へと係止する際には、アーム部22を被係止対象122へと押し当てることで該アーム部22を回動させつつ、リング状部212における前記途切れ部分を通して該リング状部212の内側に被係止対象122を配置することで、フック部2を被係止対象122へと前記アーム部22の前記付勢部材により外れ防止した状態で係止することが可能である。
【0026】
連結部3は、フック部2及び保持部4を連結するためのものであり、例えばチェーンやロープ、ワイヤなどの比較的容易に変形可能なもの(本実施形態では金属製のチェーン)により構成されている。連結部3の一端部は、前記取付孔211aを利用してフック部2に連結されており、連結部3の他端部は、保持部4の一端側外周面に接合(例えば溶接)されている。
【0027】
保持部4は、熱風溶接器100を保持するためのものであり、一定の内径及び外径を有する金属製の円筒パイプ(例えばステンレス製の硬管など)により構成されている。保持部4は、熱風溶接器100の本体部101をその先端側から挿通可能に構成されており、本体部101が挿通されることで熱風溶接器100を保持する。また、保持部4は、熱風溶接器100を保持した状態において、該熱風溶接器100の吹出口101bが自身の内部に収容された状態となるように十分な長さを有している。尚、本実施形態では、保持部4により熱風溶接器100を保持した状態において、該保持部4の内面と該熱風溶接器100の吹出口101b(吹出ノズル101a)とが離間した状態となるように構成されており、熱風溶接器100の熱が保持部4に伝わることをより確実に防止可能とされている。
【0028】
仮置き具1は上記のように構成されているところ、高所作業を行う際には、フック部2を被係止対象122へと係止することで、該被係止対象122から保持部4が吊り下げられた状態とされる。そして、吊り下げられた保持部4に対し熱風溶接器100の本体部101をその先端側から挿通することで、図3に示すように、保持部4によって熱風溶接器100を保持して、熱風溶接器100を仮置きすることができるようになっている。
【0029】
また、熱風溶接器100を仮置きした状態では、保持部4が鉛直方向に対し斜めに傾くようになっている。特に本実施形態では、熱風溶接器100の形状や、前記ケーブルなどを含めた熱風溶接器100における重量バランスなどを考慮して、保持部4や連結部3における形状や重量などの要素を調節することにより、熱風溶接器100を仮置きしたときに、図4に示すように、保持部4の中心軸CL1を含む断面における該中心軸CL1及び水平面SSのなす角のうち鋭角の角度α1が30°以上60°以下となるように設定されている。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態によれば、被係止対象122へとフック部2を係止することで、高所作業に対応する位置などに仮置き具1を容易に設置することができる。そして、連結部3を介して吊り下がった状態の保持部4に対し、熱風溶接器100の本体部101をその先端側(つまり、熱風の吹出口101bが存在する側)から挿通する(差し込む)という比較的シンプルな作業のみで、該保持部4によって熱風溶接器100を保持して、熱風溶接器100を仮置きすることができる。従って、先端部が高温となる本体部101を床側から浮かせつつ保持部4内に収めた状態で、熱風溶接器100を安定して保持することができる。これにより、熱風溶接器100の落下や、熱風溶接器100の有する熱に起因する不具合等の発生をより確実に防止することができる。また、熱風溶接器100の仮保持などを行うための作業者を別途用意する必要がなくなるため、人的資源の有効活用を図ることができ、作業に係るコストの削減を図ることができる。さらに、高所にいながら熱風溶接器100の仮置きを行うことができるため、仮置きのために低所に移動する必要はなく、作業者にとっての利便性を向上させることができる。
【0031】
さらに、吊り下げられた保持部4により熱風溶接器100を保持したときに、保持部4が鉛直方向に対し斜めに傾いて、保持部4の中心軸CL1及び水平面SSのなす角のうち鋭角の角度α1が30°以上60°以下となるように構成されている。角度α1が60°以下とされることによって、仮置きされた熱風溶接器100における持ち手部102を連結部3や保持部4から水平方向に沿って十分に突き出たような状態とすることができ、持ち手部102を非常に持ちやすい状態とすることができる。その結果、仮置きされた熱風溶接器100を取出すことが容易となり、溶接に係る作業性をより向上させることができる。一方、角度α1が30°以上とされることよって、保持部4によって本体部101をより安定した状態で保持することができ、保持部4から熱風溶接器100(本体部101)が抜けて落下することをより確実に防止できる。
【0032】
また、保持部4によって熱風溶接器100を保持したときに、高温となる熱風溶接器100の吹出口101bが外部に露出しない状態となるため、作業者にとっての安全性をより高めることが可能となる。さらに、保持部4は熱風溶接器100における本体部101の先端部以外と接触するだけなので、保持部4が金属であっても保持部4に対する吹出口101b周辺の高温の伝熱が起きない。そのため、保持部4は低温のままとなり、保持部4を触っても火傷の心配がない。
【0033】
加えて、本実施形態において、連結部3は保持部4の外周面に接合されているため、連結部3を保持部4の端面や内周面に接合する場合と比較して、熱風溶接器100を仮置きする際に連結部3が邪魔となりにくくなり、作業者にとって都合がよい。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態(但し、参考例)について説明する。上記第1実施形態における仮置き具1は、基本的には高所作業時に吊り下げ状態で用いられるものである。これに対し、本第2実施形態における仮置き具6は、床面などの平面に設置された状態で用いられるものである。尚、本第2実施形態において、溶接作業を行う作業現場は例えばクリーンルームなどであり、床面には、静電シート等、内装を保護するためのシート(不図示)が敷かれるようになっている。
【0034】
仮置き具6は、図5に示すように、土台部7、支柱部8及び保持部9を備えている。
【0035】
土台部7は、床面などの平面に設置されることで、仮置き具6の土台として機能するものである。土台部7は、4本の金属製のパイプ(例えばステンレス等からなる硬管)を矩形状に接合してなるベース部71と、該ベース部71を構成する4本のパイプのうちの相対向する2本のパイプの長手方向中心同士を連結するようにしてこれらに接合された中心連結部72とを備えている。
【0036】
また、ベース部71の四隅には、足部73が1本ずつ設けられている。足部73は、土台部7を床面などの平面に設置したときに、該平面と接触する部位である。各足部73は、有底円筒状をなす樹脂製のカバーで覆われており、各足部73における前記平面と接触する下面部は、表面が滑らかな下方に向けて凸の湾曲面状とされている。
【0037】
支柱部8は、保持部9を支持するためのものであり、例えば金属製のパイプや棒などにより構成されている。支柱部8は、自身の一端部が前記中心連結部72に接合されることで、土台部7に立設されている。さらに、支柱部8は、その中間部分に鈍角状に屈曲した屈曲部分を備えており、この屈曲部分が設けられることによって、支柱部8の一端側部分が中心連結部72に対し直交した状態となっているのに対し、支柱部8の他端側部分が中心連結部72に対し斜めに交差する方向に延びる状態となっている。
【0038】
保持部9は、上記第1実施形態における保持部4と同様に、金属製の円筒パイプ(例えばステンレス製の硬管など)により構成されており、熱風溶接器100の本体部101がその先端側から挿通されることで熱風溶接器100を保持するためのものである。保持部9は、その端部外周面が支柱部8の先端部に接合されることによって、支柱部8の先端部に固定されている。
【0039】
また、支柱部8に対し上述のように屈曲部分を設けることにより、床面などの水平な平面に土台部7を載置した状態において、保持部9は、鉛直方向に対し斜めに傾くようになっている。特に本実施形態では、図6に示すように、水平な平面に土台部7を載置したときに、保持部9の中心軸CL2を含む断面における該中心軸CL2及び水平面SSのなす角のうち鋭角の角度α2が30°以上60°以下となるように設定されている。
【0040】
さらに、本第2実施形態において、保持部9は比較的短いものとされており、保持部9により熱風溶接器100を保持したときに、該熱風溶接器100の吹出口101bが保持部4から露出した状態となるように構成されている(図7参照)。このように構成することで、熱風溶接器100を仮置きしつつ、吹出口101bの状態確認などを行うことが可能となっている。
【0041】
上記のように構成された仮置き具6は、例えば、使用後の熱風溶接器100を仮置きして冷却する場合など、基本的には床面付近などの低所にて熱風溶接器100を仮置きする場合に用いられる。仮置き具6は、足部73を下にした状態で土台部7を床面などの平面に載置することにより設置することができる。そして、設置された仮置き具6における保持部9に対し本体部101をその先端側から挿通することで、図7に示すように、保持部9によって熱風溶接器100を保持して、熱風溶接器100を仮置きすることが可能となる。
【0042】
以上、本第2実施形態によれば、床面(本実施形態では、静電シートの敷かれた床面)などの平面に土台部7を載置することで、仮置き具6を容易に設置することができる。そして、仮置き具6を水平な平面に設置した状態においては、保持部9が鉛直方向に対し斜めに傾いた状態となるところ、この保持部9に対し熱風溶接器100の本体部101をその先端側(つまり、高温となる熱風の吹出口101bが存在する側)から挿通する(差し込む)という比較的シンプルな作業だけで、保持部9によって熱風溶接器100を保持して、熱風溶接器100を仮置きすることができる。従って、先端部が高温となる本体部101を床側から浮かせつつ保持部9内に収めた状態で、熱風溶接器100を安定して保持することができる。これにより、熱風溶接器100の有する熱による静電シートの損傷等をより確実に防ぐことができる。さらに、保持部9が鉛直方向に対し斜めになっているため、保持部9が鉛直方向に延びる場合と比較して、保持部9に対する本体部101の挿通(差し込み)や保持部9からの熱風溶接器100の取出しをより容易に行うことが可能となり、利便性の向上を図ることができる。
【0043】
また、足部73の下面部は、表面が滑らかな下方に向けて凸の湾曲面状をなしているため、床面などの平面に仮置き具6を設置したときに、該平面に傷がつくことをより確実に防止できる。
【0044】
さらに、角度α2が30°以上60°以下とされることで、上記第1実施形態と同様に、溶接に係る作業性をより向上させつつ、保持部9によって本体部101をより安定した状態で保持することができる。
【0045】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0046】
(a)上記第1実施形態において、保持部4は、熱風溶接器100を保持した状態において、該熱風溶接器100の吹出口101bが自身の内部に収容された状態となるように構成されており、一方、上記第2実施形態において、保持部9は、熱風溶接器100を保持した状態において、該熱風溶接器100の吹出口101bが自身から露出した状態となるように構成されている。これに対し、上記第1実施形態に係る保持部4の構成を、上記第2実施形態に係る仮置き具6に適用し、上記第2実施形態に係る保持部9の構成を、上記第1実施形態に係る仮置き具1に適用してもよい。
【0047】
(b)上記第2実施形態における土台部7は一例であって、土台部7の構成を適宜変更してもよい。例えば、土台部7は、板状のものであってもよいし、立方体状や円錐台状、多角柱状などをなすものであってもよい。また、土台部7は、内部に水や砂などの重量物が充填されるものであってもよい。さらに、土台部7は、足部73を備えないものであってもよい。
【0048】
加えて、上記第2実施形態のように複数のパイプを用いて土台部7を構成する場合には、例えば各パイプにおける連結及び連結解除を可能に構成することで、土台部7を分解可能としてもよい。この場合には、仮置き具6の持ち運びをより容易なものとすることができる。
【0049】
(c)上記第2実施形態において、保持部9は、支柱部8の先端部に対し一定の角度で接合されており、支柱部8に対する保持部9の傾斜角度は不変であるが、例えば、支柱部8の先端部に対し保持部9を回動可能な状態で配設し、支柱部8に対する保持部9の傾斜角度を変更可能に構成してもよい。尚、この場合、水平な平面に土台部7を載置した状態において、保持部9が鉛直方向に対し斜めに傾くことが可能であればよい〔下記(d)の場合も同様〕。
【0050】
(d)上記第2実施形態において、支柱部8は金属製のパイプや棒により構成されているが、支柱部8を、柔軟に変形可能である一方、保持部9を十分に支持可能なフレキシブルアームなどによって構成してもよい。この場合には、保持部9の配置位置をある程度自由に変更することができ、利便性をより高めることができる。
【0051】
また、上記第1実施形態における連結部3についても、フレキシブルアームなどによって構成してもよい。
【0052】
(e)上記第2実施形態において、足部73は計4本設けられているが、足部73の数は3本以上であればよく、土台部7の形状などに応じて足部73の数を適宜変更してもよい。
【0053】
(f)上記実施形態において、保持部4,9は円筒状の金属パイプにより構成されているが、保持部4,9の形状や構成材料については適宜変更してもよい。例えば、保持部を矩形筒状や多角筒状などとしてもよい。また、保持部を、耐熱性に優れる難燃性の樹脂などにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,6…仮置き具、2…フック部、3…連結部、4,9…保持部、7…土台部、8…支柱部、73…足部、100…熱風溶接器、101…本体部、101b…吹出口、102…持ち手部、120…被係止対象、CL1,CL2…(保持部の)中心軸、SS…水平面。
図1
図2
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図5
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図8