(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ドレイン排水部材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20221212BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E04D13/04 J
E04F15/02 R
(21)【出願番号】P 2019086152
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】松元 陽子
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-136602(JP,A)
【文献】特開昭60-175659(JP,A)
【文献】特開2007-113180(JP,A)
【文献】特開2003-161006(JP,A)
【文献】特開2007-321337(JP,A)
【文献】特開2018-197434(JP,A)
【文献】特開2009-013786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設置される
長尺帯状のドレイン排水部材であって、
裏面層部と表面層部を有する樹脂製の帯状体を有し、
前記裏面層部が、発泡樹脂から構成され、前記表面層部が非発泡樹脂から構成されて
おり、
前記帯状体の表面には、幅方向両側に配置された左右一対の基面部と、前記基面部の内側に配置され且つ前記基面部よりも上方に突出された左右一対の土手部と、前記一対の土手部で挟まれた排水溝と、が形成されており、
前記表面層部の厚みが幅方向において不均等であり、前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚みが、最も大きい、ドレイン排水部材。
【請求項2】
前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚みが、前記土手部に対応する箇所における裏面層部の厚みよりも大きく、
前記排水溝に対応する箇所における表面層部の厚みが、前記排水溝に対応する箇所における裏面層部の厚みよりも小さい、請求項1に記載のドレイン排水部材。
【請求項3】
前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚み>前記基面部に対応する箇所における表面層部の厚み>前記排水溝に対応する箇所における表面層部の厚み、の関係を満たす、請求項1または2に記載のドレイン排水部材。
【請求項4】
前記裏面層部の厚みが幅方向において不均等であり、
前記帯状体が、表面を構成する前記表面層部と、裏面を構成する前記裏面層部と、幅方向両側端面を構成する一対の側面層部と、を有し、前記一対の側面層部が、非発泡樹脂から構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドレイン排水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機のドレインホースからの排水を所定の箇所に導く排水溝を形成するために、床面上に設置されるドレイン排水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅の共通廊下やベランダ等である屋外に設置されたエアコンなどの冷暖房機の室外機や、給湯機などで発生した水は、ドレインホースによってドレイン水として排水されている。ドレインホースから流れ出る排水が、マンションやアパートなどの集合住宅、オフィスビル、商業施設ビルなどの集合建築物のベランダや共用廊下などの床面上を直接的に流れると、排水の広がった場所に埃や砂等が付着して床面に汚れ、カビができたり、しみなどが生じる。また、排水により床面が濡れることにより、歩行者が歩き難いこともある。
これを防止するため、従来、ドレインホースから流れ出る排水を雨樋や側溝などの所定の箇所へ導くドレイン排水部材が、前記床面に施工されている。
かかる排水部材は、例えば、特許文献1に記載のように、軟質、半軟質、硬質等の任意の合成樹脂、好ましくは、塩化ビニル酢酸ビニル等のビニル系樹脂により成形された帯状貼着板からなり、帯状貼着板の表面長手方向に、両側の土手部を挟んで幅方向の略中央に排水溝が形成されている。
また、特許文献2に記載のように、帯状の排水処理用床部材に蓋部材が設けられたものも知られている。
このような帯状の排水部材は、通常、ロール状に巻き取って保管され、施工場所まで運搬された後、共用廊下などの床面に貼り付けて施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-046762号公報
【文献】特開2001-289459号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、排水部材を施工した後には、排水部材の上を人や、台車、ベビーカー、カート、車椅子、キャスター付きのスーツケースなどの車両などが通行するので(排水部材上を通行物が通行するので)、排水部材の表面に衝撃及び荷重が加わる。特に、排水部材の表面には、排水溝を形成するために、特許文献1などに記載のように凸条の土手部が形成されているが、かかる凸条の土手部に衝撃や荷重が加わり易い。衝撃や荷重が加わると、排水部材の表面が部分的に欠損或いは擦り減るので、強度面で耐久性に優れた排水部材が求められる。
一方、樹脂製の排水部材について強度を高めると、柔軟性が低下し、前記のように排水部材をロール状に巻くのが困難となる上、施工時の作業も難しくなる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、柔軟性及び耐久性に優れた樹脂製のドレイン排水部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床面上に設置される長尺帯状のドレイン排水部材であって、裏面層部と表面層部を有する樹脂製の帯状体を有し、前記裏面層部が、発泡樹脂から構成され、前記表面層部が非発泡樹脂から構成されており、前記帯状体の表面には、幅方向両側に配置された左右一対の基面部と、前記基面部の内側に配置され且つ前記基面部よりも上方に突出された左右一対の土手部と、前記一対の土手部で挟まれた排水溝と、が形成されており、前記表面層部の厚みが幅方向において不均等であり、前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚みが、最も大きい。
【0007】
本発明の好ましいドレイン排水部材は、前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚みが、前記土手部に対応する箇所における裏面層部の厚みよりも大きく、前記排水溝に対応する箇所における表面層部の厚みが、前記排水溝に対応する箇所における裏面層部の厚みよりも小さい。
本発明の好ましいドレイン排水部材は、前記土手部に対応する箇所における表面層部の厚み>前記基面部に対応する箇所における表面層部の厚み>前記排水溝に対応する箇所における表面層部の厚み、の関係を満たす。
本発明の好ましいドレイン排水部材は、前記裏面層部の厚みが幅方向において不均等であり、前記帯状体が、表面を構成する前記表面層部と、裏面を構成する前記裏面層部と、幅方向両側端面を構成する一対の側面層部と、を有し、前記一対の側面層部が、非発泡樹脂から構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のドレイン排水部材は、柔軟性に優れているので、保管・運搬し易く、また、容易に施工できる。さらに、本発明のドレイン排水部材は、耐久性に優れているので、床面に施工後、通行物が頻繁に通行しても表面が擦り減る或いは欠損し難く、長期間良好に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るドレイン排水部材を表面側から見た中途部省略平面図。
【
図7】
図6のVII-VII線で切断した拡大端面図。端面図は、切断面のみの形状を表し、切断面より奥側の形状を表していない図である。
【
図9】ドレイン排水部材をロール状に巻き取った状態を示す参考斜視図。
【
図10】第2実施形態に係るドレイン排水部材の拡大断面図。
【
図11】第3実施形態の第1例に係るドレイン排水部材の拡大断面図。
【
図12】第3実施形態の第2例に係るドレイン排水部材の拡大断面図。
【
図13】第3実施形態の第3例に係るドレイン排水部材の拡大断面図。
【
図14】第4実施形態のドレイン排水部材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、奥行き方向は、ドレイン排水部材の長手方向をいい、幅方向は、ドレイン排水部材の短手方向をいい、上下方向は、前記奥行き方向及び幅方向の双方に対して直交する方向をいう。「上方」は、上下方向における上側を指し、「下方」は、上下方向における下側を指す。また、本明細書において、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、床面に施工後のドレイン排水部材の上を、人、台車、ベビーカー、カート、車椅子、キャスター付きのスーツケースなどの車両などが通行するが、施工後のドレイン排水部材上を通行するものを総称して「通行物」という。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のドレイン排水部材1の平面図であり、
図2は、その右側面図であり、
図3は、その底面図(ドレイン排水部材1を裏面側から見た平面図)であり、
図4は、その正面図であり、
図5は、ドレイン排水部材1を幅方向に沿って切断した断面図である。以下、ドレイン排水部材を「排水部材」と記す。
本発明の排水部材1は、空調機のドレインホースから流れ出る排水を雨樋や側溝などの所定の箇所へ導くために、共用廊下などの床面上に設置される。
本発明の排水部材1は、樹脂製の帯状体2を有する。
【0012】
図1乃至
図3において、帯状体2(排水部材1)の全体的な形状は、奥行き方向に延びる長尺状であり、
図1の平面視による外形では、帯状体2(排水部材1)は、奥行き方向に延びる長尺帯状である。なお、
図1乃至
図3においては、同じ形状が連続した排水部材1の中途部を省略している。
本明細書において、長尺帯状は、奥行き方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。帯状体2(排水部材1)の奥行き方向長さは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、0.5m以上であり、好ましくは、1m~200mであり、より好ましくは、2m~50mである。なお、比較的長い排水部材1は、施工場所に応じて、適宜裁断して使用される。
排水部材1は、奥行き方向において、
図4に示す正面視形状(
図5に示す断面視形状)が連なって構成されている。このため、排水部材1は、奥行き方向のいずれの箇所で横方向に切断しても、同じ形状(
図5に示す断面視形状)が表れる。
【0013】
前記帯状体2は、表面層部3と裏面層部4の少なくとも2層の構造体から構成されている。
表面層部3は、帯状体2の表面形状を形作り、裏面層部4は、帯状体2の裏面形状を形作ると共に、表面層部3の下側に積層され且つ厚み方向(上下方向)において表面層部3を支持する。
厚み方向の構造において前記表面層部3及び裏面層部4を有する帯状体2(排水部材1)は、全体として柔軟性を有する。
帯状体2(排水部材1)の柔軟性の程度としては、例えば、標準状態下(23℃、1気圧、50%RH)で、直径10cmの芯材の周囲にロール状に巻き付けることができる。
【0014】
前記表面層部3は、非発泡樹脂で構成されており、前記裏面層部4は、発泡樹脂で構成されている。
非発泡樹脂は、発泡されていない樹脂であり、発泡樹脂は、発泡された樹脂である。非発泡樹脂は、実質的に気泡を含まず、発泡樹脂は、無数の気泡を含んでいる。なお、実質的に気泡を含まないとは、樹脂を意図的に発泡させることによって生じる気泡を含まないという意味であって、非発泡樹脂の製造時に不可避的に生じる又は取り込まれる気泡を含むことを許容する意味である。
発泡樹脂は、発泡されているので、非発泡樹脂よりも柔軟性に優れ、さらに、非発泡樹脂よりも樹脂成分の量が相対的に少なくなるので、非発泡樹脂よりも軽量化に優れ、材料コストが安くなる。一方、非発泡樹脂は、少なくとも気泡を含まないので、発泡樹脂よりも強度的に優れている。
【0015】
通行物が接触する表面層部3を非発泡樹脂にて構成することにより、表面層部3の強度が低下せず、耐久性に優れた帯状体2(排水部材1)を構成できる。他方、帯状体2の全部を非発泡樹脂で構成すると、剛性が高くなりすぎて柔軟性に劣り、材料コストも高くなる。この点、本発明では、裏面層部4を発泡樹脂にて構成することにより、前記非発泡樹脂の剛性を緩和し、全体的に柔軟性に優れた帯状体2(排水部材1)を構成できる。また、通行物から表面層部3に衝撃や荷重が加わった際、発泡樹脂の裏面層部4がクッションとなって衝撃を吸収し、表面層部3の耐久性を高めることができる。なお、裏面層部4には、通行物が接触しないので、裏面層部4を発泡樹脂で構成しても、帯状体2の耐久性が低下することもない。
【0016】
本実施形態の排水部材1においては、
図4及び
図5を参照して、帯状体2の内部構造の観点では、帯状体2は、表面を構成する表面層部3と、裏面を構成する裏面層部4と、幅方向両側端面を構成する一対の側面層部31,31と、を有する。
前記表面層部3及び一対の側面層部31,31は、非発泡樹脂から構成され、裏面層部4は、発泡樹脂から構成されている。なお、裏面層部4のうち、側面層部31に連続して内側に延びる側面近傍裏面層部41も、非発泡樹脂から構成されている。
従って、帯状体2の幅方向一方側においては、発泡樹脂からなる裏面層部4の一方側の側部を取り囲む断面視逆コの字状の層部であって、表面層部3、側面層部31及び側面近傍裏面層部41からなる断面視逆コ字状の層部が、非発泡樹脂から構成されている。
帯状体2の幅方向反対側においては、発泡樹脂からなる裏面層部4を取り囲む断面視コの字状の層部であって、表面層部3、側面層部31及び側面近傍裏面層部41からなる断面視コ字状の層部が、非発泡樹脂から構成されている。
このように表面層部3、側面層部31及び側面近傍裏面層部41が非発泡樹脂から構成されていることにより、帯状体2の幅方向両側の強度が向上し、通行物による荷重によって、帯状体2の幅方向両側の形状が型崩れし難くなる。
なお、
図5の断面図において、紙面左上から右下傾斜の間隔の狭いハッチングで表された部分が、非発泡樹脂から構成されており、紙面右上から左下傾斜の間隔の広いハッチングで表された部分が、発泡樹脂から構成されている(以下、他の断面図及び端面図も同様)。
【0017】
また、帯状体2の外形状の観点では、帯状体2の表面には、幅方向両側に配置された左右一対の基面部5,5と、前記基面部5の内側に配置され且つ前記基面部5よりも上方に突出された左右一対の土手部6,6と、前記一対の土手部6,6で挟まれた排水溝7と、が形成されている。また、排水溝7の一部分には、上方に突出された整流凸条71が形成されている。整流凸条71は、必要に応じて形成される。なお、内側は、幅方向において中央部に向かう側をいい、外側は、内側とは反対側をいう。
前記基面部5、土手部6、排水溝7及び整流凸条71は、いずれも帯状体2の表面形状を成している部位である。
前記基面部5は、幅方向両側端から内側に向かって延びる略水平な面又は滑らかな面である。なお、滑らかな面は、凹凸を有さない面をいい、全体的に水平に対して若干傾斜した面、水平に対して若干凸曲又は凹曲した面などが含まれる。
図示例では、左右一対の基面部5,5は、それぞれ略水平面とされている。基面部5,5が略水平面とされていることにより、後述するように排水部材1と床シート材を隣接して敷設し且つ両者を溶接棒などで接合する際、作業性に優れる。
【0018】
図4及び
図5を参照して、紙面左側の基面部5は、左側の側端面に連続して幅方向内側に延設され、紙面右側の基面部5は、右側の側端面に連続して幅方向内側に延設されている。
基面部5の表面レベルは、特に限定されず、例えば、排水溝7の表面レベルと略同じ、或いは、排水溝7の表面レベルよりも高い又は低くてもよい。
図示例のように、基面部5の表面レベルは、排水溝7の表面レベルよりも高く且つ土手部6の頂部6cよりも低いことが好ましい。また、基面部5の表面レベルは、後述する床シート材の表面と同じレベルであることが好ましい。床シート材の表面と同じに設定することにより、後述するように排水部材1と床シート材を隣接して敷設した際に、排水部材1と床シート材の間に段差が生じ難くなる。
【0019】
紙面左側の土手部6は、左側の基面部5の内側であってその基面部5に連続して上方に突設されている。紙面右側の土手部6は、右側の基面部5の内側であってその基面部5に連続して上方に突設されている。一対の土手部6,6は、基面部5及び排水溝7よりも上方に突出した凸部であり、その凸部が奥行き方向に延びている(つまり、凸条である)。
左右の土手部6,6は、断面視で、略三角形状に形成されている。詳しくは、土手部6は、基面部5に連続して内側に向かって緩やかに上向き傾斜した外側部6aと、頂部6cを介して前記外側部6aに連続して内側に向かって比較的急峻に下向き傾斜した内側部6bと、から画成されている。
図示例では、外側部6aは、傾斜面とされ、内側部6bは、弧状面とされている。なお、本明細書において、傾斜面は、断面視で略直線状であり、弧状面は、断面視で略弧状である。
前記外側部6aと内側部6bの接続部分である頂部6cは、角張っていてもよく、或いは、図示のように断面視で略弧状に形成されていてもよい。外側部6aと内側部6bの接続部分は略弧状に形成されていることが好ましく、通行物の衝撃や荷重が土手部6に加わった際に応力を分散でき、破損を効果的に防止できる。
【0020】
また、土手部6の頂部6cは、土手部6の幅方向中央を基準にして、それよりも幅方向内側寄りに形成されており、その頂部6cから連続して外側に向けて前記外側部6aが延在されている。排水部材1上を通行する通行物(特に車両)が外側から内側に向かって排水部材1に進入する際、前記土手部6の外側部6aの傾斜に従い、排水部材1に加わる衝撃が少なくなる。
なお、土手部6の外側部6a及び内側部6bは、傾斜面及び弧状面に限られず、適宜変更できる。例えば、土手部6の外側部6a(頂部6cを基準にして、土手部6の外側部分の表面)は、弧状面などであってもよい。また、土手部6の内側部6b(頂部6cを基準にして、土手部6の内側部分の表面)は、傾斜面又は上下方向と平行な平坦面などであってもよい。
【0021】
上述のように、内側部6bは、比較的急峻であることが好ましく、土手部6の外側部6a及び内側部6bの傾斜角度は、外側部6aの傾斜角度<内側部6bの傾斜角度の関係を満たしていることが好ましい。具体的な数値では、外側部6aの傾斜角度は、0度を越え50度以下とされ、好ましくは、10度~30度とされる。内側部6bの傾斜角度は、40度~90度とされ、好ましくは、70度~90度とされる。これによって、排水溝7の幅を小さくしつつ、排水の流れる流量を大きくすることもできる。
【0022】
前記外側部6a及び内側部6bの各傾斜角度は、外側部6a及び内側部6bの表面と水平面(帯状体2の幅方向及び奥行き方向の双方向を含む面)の成す角度をいう。
なお、外側部6a及び内側部6bが断面視で直線状である場合には前記角度は一義的に定まるが、外側部6a及び内側部6bが断面視で非直線状(略弧状など)である場合には前記角度を一義的に定め難い。このため、外側部6aが断面視で非直線状である場合には、外側部6aの傾斜角度は、断面視での外側部6aの点群に最小二乗法等を適用して求めた近似直線と水平面の成す角度とする。内側部6bが断面視で非直線状である場合には、内側部6bの傾斜角度は、断面視での内側部6bの点群に最小二乗法等を適用して求めた近似直線と水平面の成す角度とする。
【0023】
また、前記土手部6の断面視形状は、略三角形状に限られず、例えば、断面視略半円状、略半楕円状、略四角形状などであってもよい(図示せず)。
土手部6は、少なくとも排水溝7の表面レベルよりも高く突出されていればよく、さらに、排水溝7の表面レベル及び基面部5の表面レベルよりも高く突出されていればよい。排水溝7の表面レベルから土手部6の頂部6cまでの上下方向長さは、特に限定されないが、例えば、1mm~5mmであり、好ましくは、1.5mm~4mmである。
また、基面部5の表面レベルから土手部6の頂部6cまでの上下方向長さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~3mmであり、好ましくは、1mm~2mmである。
【0024】
排水溝7は、帯状体2の幅方向略中央領域において凹状に凹んだ部分である。排水溝7は、前記一対の土手部6,6の間に形成されている。排水溝7は、略水平な面とされており、奥行き方向に帯状に延びている。また、排水溝7は、土手部6よりも低くなるように形成されている。
整流凸条71は、排水溝7に沿って突出された凸部であり、その凸部が奥行き方向に延びている(つまり、凸条である)。整流凸条71は、水が奥行き方向に流れるように導くガイドとして機能する。整流凸条71は、1本でもよいが、図示例では、幅方向に所定間隔を開けて複数本(例えば3本)形成されている。整流凸条71が複数設けられていることにより、複数の整流凸条71の間に幅狭の小流量用排水路が形成されるので、排水が少量である場合でも、排水の高さが増し、円滑に流出させることができる。
【0025】
整流凸条71の突出高さは、特に限定されないが、土手部6よりも十分に低いことが好ましい。整流凸条71の突出高さは、特に限定されず、例えば、0.5mm~3mmであり、好ましくは、1mm~2mmである。整流凸条71の突出高さは、排水溝7の表面レベルから整流凸条71の頂部71cまでの上下方向長さをいう。整流凸条71を土手部6よりも十分に低くすることによって、排水が最小の流量である場合は、1つの小流量用排水路を通過し、排水が整流凸条71を越える程度に増加した場合は、隣接する小流量用排水路に排水が流れ込み、自然に大きい流量に対応することができる。これにより、排水をより円滑に流出させることができる。
【0026】
整流凸条71の断面視形状は、特に限定されず、例えば、略三角形状(略二等辺三角形状など)、断面視略半円状、略半楕円状、略四角形状などが挙げられる。本実施形態では、整流凸条71の断面視形状は、略三角形状に形成されており、排水が整流凸条71の頂部71cに滞留することなく流れ、清掃性に優れるので好ましい。また、整流凸条71が断面視略三角形状の場合、その頂部71cは、耐久性を向上させる観点から、断面視で略弧状に形成されていることがより好ましい。
【0027】
表面層部3の厚みは、幅方向において不均等であり、前記土手部6に対応する箇所における表面層部3の厚みが最も大きい。土手部6は、帯状体2の表面の中で最も上方に突出した部分であるので(土手部6の頂部6cが最も高い位置にあるので)、通行物が最も接触し易く且つ最も荷重が集中し易い部分である。この土手部6に対応する箇所において表面層部3の厚みが最大とされている、つまり、土手部6に対応する箇所における非発泡樹脂の厚みが最大とされていることにより、耐久性に優れた帯状体2(排水部材1)を構成できる。
さらに、前記基面部5に対応する箇所における表面層部3の厚みも比較的大きいことが好ましい。基面部5は、帯状体2の表面の中で幅方向両側に配置されている部分であるので、土手部6の次に通行物が接触し易く且つ荷重が加わる部分である。この基面部5に対応する箇所において表面層部3の厚みを比較的大きくする、つまり、基面部5に対応する箇所における非発泡樹脂の厚みを比較的大きくすることにより、耐久性に優れた帯状体2(排水部材1)を構成できる。なお、基面部5に対応する箇所における表面層部3の裏側にも、発泡樹脂からなる裏面層部4が位置しているので、通行物により基面部5に衝撃や荷重が加わった際、前記発泡樹脂の裏面層部4がクッションとなって衝撃を吸収し、基面部5の耐久性を高めることができる。
【0028】
他方、排水溝7は、一対の土手部6,6で挟まれた凹状部分であるので、通行物が接触し難く且つ荷重が殆ど加わらない部分である。この排水溝7に対応する箇所における表面層部3の厚みが小さくても、帯状体2(排水部材1)の耐久性に殆ど影響を与えない。また、非発泡樹脂の占める割合が大きくなるほど、柔軟性が低下し、さらに、材料コストも高くなる。かかる観点から、排水溝7に対応する箇所において表面層部3の厚みを比較的小さくする、つまり、排水溝7に対応する箇所における非発泡樹脂の厚みを比較的小さくすることにより、耐久性を低下させずに柔軟性及び材料コストに優れた帯状体2(排水部材1)を構成できる。好ましくは、排水溝7に対応する箇所において表面層部3の厚みを最も小さくする。
【0029】
従って、土手部6に対応する箇所における表面層部3の厚み>基面部5に対応する箇所における表面層部3の厚み>排水溝7に対応する箇所における表面層部3の厚み、の関係を満たすように、表面層部3の厚みを設定することにより、耐久性及び柔軟性に優れ、さらに安価に製造できる帯状体2(排水部材1)を構成できる。
なお、整流凸条71に対応する箇所における表面層部3の厚みは、土手部6に対応する箇所における表面層部3の厚み>整流凸条71に対応する箇所における表面層部3の厚み>基面部5に対応する箇所における表面層部3の厚み、の関係を満たしていることが好ましい。
以下、「土手部6に対応する箇所における表面層部3の厚み」を「土手表面厚」、「基面部5に対応する箇所における表面層部3の厚み」を「基部表面厚」、「排水溝7に対応する箇所における表面層部3の厚み」を「排水表面厚」、「整流凸条71に対応する箇所における表面層部3の厚み」を「整流表面厚」という。
【0030】
土手表面厚6Tは、
図5に示すように、表面層部3の裏面から土手部6の表面までの上下方向長さであり、基部表面厚5Tは、表面層部3の裏面から基面部5の表面までの上下方向長さであり、排水表面厚7Tは、表面層部3の裏面から排水溝7の表面までの上下方向長さであり、整流表面厚71Tは、表面層部3の裏面から整流凸条71の表面までの上下方向長さである。
なお、土手表面厚6T、基部表面厚5T、排水表面厚7T及び整流表面厚71Tが、1つの数値に定まらない場合には、最大値を採用するものとする。各表面厚がその最大値を意味しているところ、本実施形態の構成では、例えば、土手表面厚6Tは、表面層部3の裏面から土手部6の頂部6cまでの上下方向長さであり、例えば、整流表面厚71Tは、表面層部3の裏面から整流凸条71の頂部71cまでの上下方向長さである。
具体的な寸法では、土手表面厚6Tは、例えば、1.5mm~5.2mmであり、基部表面厚5Tは、2mm~3mmであり、排水表面厚7Tは、0.05mm~0.2mmである。
【0031】
本実施形態では、土手表面厚は、土手部6の頂部6cに対応して最も大きくなっており、幅方向外側に向かうに従って小さくなっている。換言すると、土手表面厚は、外側から内側(頂部6c)に向かうに従って大きくなっている。一方、裏面層部4は表面層部3の下側に積層されているので、表面層部3の厚みが大きい箇所では、相対的に裏面層部4の厚みが小さくなっており、表面層部3の厚みが小さくなっている箇所では、裏面層部4の厚みが相対的に大きくなる傾向にある。
通行物(特に車両)が排水部材1上をその幅方向に沿って横断するとき、通行物が一方の土手部6を外側から内側に向かって乗り越えた後、他方の土手部6を内側から外側に向かって乗り越えることとなる。土手部6の内側部6bは、外側部6aよりも水平面に対して切り立っているので、通行物が土手部6を内側から外側に向かって乗り越えるときの衝撃が大きくなる。土手部6に対応する裏面層部4の厚みは、外側にいくに従って大きくなっており、土手部6の外側部6aに対応する箇所の裏面層部4が大きくなっている。よって、通行物が土手部6を内側から外側に向かって乗り越えるときに、裏面層部4がクッションとなって土手部6が変形し、土手部6の破損を抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0032】
帯状体2の外形状の観点では、帯状体2の幅方向両側端面2a,2aは、水平面に対して直交する面とされていてもよく、或いは、下方に向かうに従って外側に張り出した傾斜面とされていてもよいが、好ましくは、下方に向かうに従って内側に入り込んだ傾斜面とされている。このように帯状体2の幅方向両側端面2a,2aが下向き内側傾斜状に形成されていることにより、排水部材1を施工する際に、大きな継ぎ目が生じ難くなる。
この下向き内側傾斜の側端面2aを構成する側面層部31は、上述のように、非発泡樹脂から構成されている。この側面層部31の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~1mmである。
同様に非発泡樹脂から構成されている側面近傍裏面層部41の厚みも、特に限定されないが、例えば、0.5mm~1mmである。
なお、側面層部31の厚み31Tは、
図5に示すように、側面層部31の幅方向長さであり、側面近傍裏面層部41の厚み41Tは、側面近傍裏面層部41の上下方向長さである。側面層部31の厚み31T及び側面近傍裏面層部41の厚み41Tが、1つの数値に定まらない場合には、最大値を採用するものとする。
【0033】
また、裏面層部4の厚みの観点では、裏面層部4は、幅方向において均等な厚みでもよく、或いは、幅方向において不均等な厚みであってもよい。
裏面層部4が占める割合を大きくできることから、
図4及び
図5に示すように、裏面層部4の厚みは幅方向において不均等であることが好ましい。
図示例では、排水溝7に対応する箇所の裏面層部4の厚みが最も小さく、排水溝7から幅方向両側に向かって徐々に裏面層部4の厚みが大きくなっている部分を有する。
また、裏面層部4の表面形状の観点では、
図5に示すように、排水溝7に対応する箇所における裏面層部4の表面47aは、略水平な面とされ、土手部6に対応する箇所における裏面層部4の表面46aは、幅方向両側に向かうに従って上方に傾斜した傾斜面とされ、基面部5に対応する箇所における裏面層部4の表面45aは、略水平な面とされている。
【0034】
前記非発泡樹脂と発泡樹脂の樹脂成分は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。非発泡樹脂と発泡樹脂の樹脂成分は、同種でもよいし、同じでもよいし、又は、異なっていてもよい。樹脂成分が同種とは、その樹脂成分の主たる繰り返し単位を構成するモノマーが同一であることを意味し、共重合モノマーを有する場合にはその共重合モノマーが異なる場合、及び/又は、重合度が異なる場合を含む。樹脂成分が同じとは、繰り返し単位(及び共重合モノマーを有する場合には、その共重合モノマーを含む)が同一であることを意味し、重合度が異なる場合を含む。
【0035】
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。優れた柔軟性を有し、さらに、加工し易いことから、非発泡樹脂及び発泡樹脂の少なくとも何れか一方は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とすることが好ましく、非発泡樹脂及び発泡樹脂の双方が、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とすることがより好ましい。非発泡樹脂及び発泡樹脂が何れも塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合、非発泡樹脂及び発泡樹脂の塩化ビニル系樹脂は、モノマーの種類及び重合度が同じでもよく、そのいずれかが異なっていてもよい。
【0036】
なお、本明細書において、主成分樹脂は、樹脂成分(ただし、添加剤を除く)の中で最も多い成分(重量比)をいう。主成分樹脂の量は、樹脂成分全体を100重量%とした場合、50重量%を超え、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
非発泡樹脂と発泡樹脂は、前記樹脂成分以外に任意の適切な添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、防黴剤などが挙げられる。なお、非発泡樹脂には、発泡剤は配合されていない。
前記充填剤としては、特に限定されず、例えば、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪砂、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリフェニル(TPP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジオクチルイソフタレート(DOIP)、ジイソノニルシクロヘキシルフタレート(DINCH)などが挙げられる。
【0038】
発泡樹脂の発泡方法は、特に限定されず、従来公知の化学発泡法又はガス発泡法(物理発泡法)を用いることができる。化学発泡剤としては、アゾ化合物、ヒドラジド化合物、ニトロソ化合物などを用いることができ、これらはそれ自身が分解してガスを発生するものである。また、化学発泡剤には、必要に応じて、酸化亜鉛などの発泡助剤を添加してもよい。ガス発泡剤としては、炭酸ガス、ブタンガス、フロンガスなどを用いることができる。また、ガス発泡剤として、マイクロカプセルを用いてもよい。
発泡樹脂の発泡倍率は、特に限定されないが、柔軟性及び耐久性の観点から、1.02倍~2.0倍が好ましく、1.05倍~1.3倍がより好ましい。
【0039】
非発泡樹脂及び発泡樹脂は、添加剤として充填剤を含んでいてもよく、或いは、充填剤を含んでいなくてもよい。優れた強度を有することから、非発泡樹脂は、充填剤を含まないか或いは少量の充填剤を含んでいることが好ましい。他方、発泡樹脂は、材料コストを抑制するために、比較的多量の充填剤を含んでいることが好ましい。
【0040】
上述のように、非発泡樹脂が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合の好ましい組成は、非発泡樹脂の全体を100重量として、塩化ビニル系樹脂を45重量%~90重量%、充填剤を0重量%~20重量%、可塑剤を10重量%~30重量%、添加剤(この添加剤は、充填剤、可塑剤及び発泡剤を含まない)を0重量%~5重量%含むものである。
発泡樹脂が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合の好ましい組成は、発泡樹脂の全体を100重量として、塩化ビニル系樹脂を20重量%~90重量%、充填剤を0重量%~70重量%、可塑剤を9.5重量%~30重量%、発泡剤を0.5重量%~5重量%、添加剤(この添加剤は、充填剤、可塑剤及び発泡剤を含まない)を0重量%~5重量%含むものである。なお、前記充填剤を0重量%や添加剤を0重量%は、充填剤や添加剤を含まないという意味である。
【0041】
非発泡樹脂にて前記表面層部3、側面層部31及び側面近傍裏面層部41を構成し、発泡樹脂にて前記裏面層部4を構成するように、非発泡樹脂及び発泡樹脂の各形成材料を押出し成形することにより、これらの層部が一体的に形成された上記帯状体2が得られる。
【0042】
次に、上記排水部材1の使用例を説明する。
図6は、床面Aに構築された排水処理構造Bを示す一部省略の参考斜視図であり、
図7は、その一部分の断面図である。
この排水処理構造Bは、床面Aに敷設された排水部材1と、前記排水部材1に取り付けられたドレインホース接続具92と、を有する。なお、符号91は、床面Aに敷設された床シート材を示す。
前記ドレインホース接続具92にドレインホース93が取り付けられることにより、ドレインホース93から流れ出る排水が、排水部材1の排水溝7を通じて側溝94などの所定の箇所に導かれる。
【0043】
床面Aは、例えば、マンションやベランダなどの構造物の共同廊下などが例示できるが、これに限定されるわけではない。床面Aには、側溝94に水を導くため勾配が付けられている。つまり、床面Aは、側溝94に向かって徐々に低くなった傾斜面とされている。かかる床面Aの傾斜は、水勾配とも呼ばれており、通常、1/50~1/100である。なお、1/50は、長さ50cmに対して1cm下がる勾配を意味する。従って、床面A上の水は、壁面95側から側溝94側へと水勾配に従い流れていくようになっている。
前記排水部材1は、例えば、その奥行き方向が側溝94に対して略直交するように床面A上に取り付けられている。
排水部材1の端部(壁面95側の端部)の排水溝7上に、前記ドレインホース接続具92が取り付けられる。そのドレインホース接続具92には、ドレインホース93の一端部が差し込まれて取り付けられ、ドレインホース93の他端部は、通常、空調機の室外機などに接続されている。
【0044】
排水部材1の裏面は、接着手段96を介して床面Aに固定されている。接着手段96は、特に限定されず、例えば、接着剤、両面粘着テープなどを用いることが挙げられる。図示例では、接着手段96として接着剤を表している。
排水部材1(帯状体2)の両側端面2a,2aには、床シート材91の側端面91aが接合されている。床シート材91は、合成樹脂を主体とする樹脂製のシート材を用いることができ、特に、少なくとも表面部分が塩化ビニル系樹脂からなるシート材を用いることができる。
床シート材91は、接着剤や両面粘着テープなどの接着手段96を介して床面Aに固定されている。排水部材1の側端面2aと床シート材91の側端面91aとの間に、継ぎ目埋め材97を設けて水密性を高めてもよい。前記継ぎ目埋め材97としては、樹脂製の溶接棒、シーリング材などを用いることができる。
前記溶接棒としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、EVAなどのポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂の細長い棒状体が挙げられる。
図7では、溶接棒で排水部材1の側端面2aと床シート材91の側端面91aを溶着した場合を例示している。
【0045】
溶接棒の施工方法は、従来公知の方法を採用できる。以下、溶接棒の施工方法について、簡単に説明する。
図8(a)に示すように、水部材1(帯状体2)の両側端面2aに床シート材91の側端面91aが密着するように位置決めして、床シート材91を敷設する。排水部材1(帯状体2)の両側端面2a,2aと、それに隣接する床シート材91の側端面91aの間には、いわゆる継ぎ目Cが存在する。この継ぎ目Cに沿って、同図(b)に示すように、床シート材91の側端面91aの上部及び排水部材1(帯状体2)の側端面2aの上部を、傾斜状に切り取る(いわゆる薄切り処理)。かかる切除によって生じる2つの切断面によって略V字状の凹部98が形成される。同図(c)に示すように、この凹部98に、所定温度(例えば、180℃~200℃)に加熱して軟化させた溶接棒971を、前記凹部98側に押さえ付けながら充填する。溶接棒971が冷えて固化した後、溶接棒971の余盛971aをナイフなどでカットすることにより、
図7に示すように、溶接棒971にて継ぎ目が埋められた排水処理構造Bが得られる。
【0046】
排水部材1の基面部5の表面レベルと床シート材91の表面は、高低差を有していてもよいが、好ましくは、排水部材1の基面部5と床シート材91の表面は、高低差を有さない同じ高さとされる。このように同じ高さとすることにより、排水部材1の側端面2aと床シート材91の側端面91aの間を溶接棒971で溶接する際、溶接棒の余分な樹脂である余盛971aをナイフなどでカットする作業が容易になり、仕上がりが綺麗になる。また、このように同じ高さとすることにより、排水部材1の基面部5と床シート材91の表面が連続して略水平面を成している。
なお、前記溶接棒の余盛971aをナイフなどでカットするとき、ナイフを床シート材91から基面部5の表面に沿って移動させることがあるが、施工者が誤ってナイフを土手部6にまで接触させても、土手部6が非発泡樹脂からなるので、土手部6が容易に破壊されることがない。
【0047】
上述のように、溶接棒971を施工する際には、床シート材91の側端面91aの上部と排水部材1(帯状体2)の側端面2aの上部を切除して凹部を形成するが、継ぎ目Cの幅が大きいと前記切除処理が困難となる。本実施形態の排水部材1は、帯状体2の両側端面2a,2aが、下方に向かうに従って内側に入り込んだ傾斜面とされているので、床シート材91を施工する際に、少なくとも上部において排水部材1の側端面2aと床シート材91の側端面91aの間に大きな継ぎ目が生じ難くなる。
さらに、本実施形態の排水部材1は、側面層部31が非発泡樹脂で構成されているので、例えば、継ぎ目埋め材97として樹脂製の溶接棒971(好ましくは、塩化ビニル系樹脂製の溶接棒)を用いた場合、溶接棒の樹脂が排水部材1の側端面2aに良好に接合するようになる。
【0048】
本発明の排水部材1は、柔軟性に優れているので、例えば、
図9に示すように、容易にロール状に巻き取ることができる。なお、
図9では、裏面側をロール内にして排水部材1を巻き取っているが、表裏面を反対にして、表面側をロール内にしても同様に排水部材1を巻き取ることができる。裏面側をロール内にして排水部材1を巻き取ることが好ましく、これによって、排水部材1を床面Aに敷設したとき、排水部材1の奥行き方向の端部が捲り上がることを抑制でき、また、運搬時などに排水部材1の表面側が傷付くことを防止することができる。
このようにロール状にした排水部材1は、保管し易く、また、施工場所へも簡易に運搬して搬入できる。さらに、柔軟性に優れた排水部材1は、床面Aへの施工作業も容易になる。
【0049】
本発明の排水部材1は、表面層部3が非発泡樹脂にて構成されているので、上述のように、通行物が接触しても、排水部材1の表面が型崩れし難く、耐久性に優れている。特に、突出した土手部6は、通行物が最も接触し易く且つ最も荷重が集中し易い部分であるが、非発泡樹脂からなる土手表面厚を最も大きくしているので、土手部6が擦り減る又は欠損することを防止できる。
本発明においては、通行物が接する表面層部3を強度に優れた非発泡樹脂で構成し、通行物が接触しない裏面層部4を柔軟性に優れた発泡樹脂で構成することにより、柔軟性及び耐久性の両立を図ることができる。
また、発泡樹脂は、通常、非発泡樹脂よりも樹脂の含有量が小さくなるので、全体を非発泡樹脂にて構成した場合に比して、安価な排水部材1を提供できる。
【0050】
以下、本発明の第2実施形態などの他の実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。
【0051】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、側面近傍裏面層部41が非発泡樹脂にて構成されているが、例えば、
図10に示すように、側面近傍裏面層部41を含む裏面層部4が、発泡樹脂にて構成されていてもよい。
また、上記第1実施形態では、側面層部31が非発泡樹脂にて構成されているが、側面層部31及び側面近傍裏面層部41を含む裏面層部4が、発泡樹脂にて構成されていてもよい(図示せず)。
【0052】
[第3実施形態]
さらに、上記各実施形態では、排水部材1は、帯状体2のみから構成されているが、例えば、
図11に示すように、排水部材1が、帯状体2と、前記帯状体2の排水溝7を覆う蓋体8と、を有するものでもよい。
この蓋体8は、帯状体2と一体的に形成されていてもよく、或いは、帯状体2と別体で形成され且つ排水溝7の上方に覆うように帯状体2に着脱可能に取り付けられていてもよい。
図11に示す蓋体8は、幅方向左端部において帯状体2から分離独立され、且つ、幅方向右端部において帯状体2に一体的に連結されている。蓋体8の左端部には、下方に延びる脚部81が形成され、この脚部81の下端部を排水溝7の縁部に当接させることにより、蓋体8と排水溝7の間に間隔を有した状態で、帯状体2の排水溝7が蓋体8にて覆われている。かかる蓋体8は、前記右端部をヒンジ部として左端部から捲り上げ、排水溝7を開放することができる。
【0053】
図12に示す蓋体8は、その全体が帯状体2から分離独立しており、排水溝7の上方に覆うように帯状体2に着脱可能に取り付けられる。この蓋体8は、幅方向両端部において帯状体2から分離独立されており、蓋体8の左端部及び右端部には、それぞれ脚部81,82が形成されている。
なお、必要に応じて、蓋体8と帯状体2が嵌合するような嵌合構造が形成されていてもよい。嵌合構造としては、代表的には凹凸嵌合が挙げられる。例えば、
図12に示すように、脚部81に凸部81aが形成され、且つ、土手部6の内側面に凹部61aが形成され、凸部81aと凹部61aが嵌合することにより、脚部81が帯状体2に固定される。また、もう一方の脚部82に凸部82aが形成され、且つ、土手部6の内側面に凹部62aが形成され、凸部82aと凹部62aが嵌合することにより、脚部82が帯状体2に固定される。なお、脚部81,82に凹部が形成され、土手部6の内側面に凸部が形成されていてもよい。また、
図11の脚部81に前記嵌合構造を付加してもよい。
【0054】
図13に示す蓋体8は、その全体が帯状体2と一体形成されているものである。この蓋体8は、幅方向両端部において帯状体2の土手部6の頂部6cに一体的に連結されている。
この蓋体8は、
図11及び
図12の蓋体8のように排水溝7を開閉できるタイプではなく、蓋体8と排水溝7の間に間隔を有した状態で、帯状体2の排水溝7を固定的に覆うタイプの蓋体8である。
本実施形態において、蓋体8は、上述の熱可塑性樹脂(好ましくは塩化ビニル形樹脂)から形成される。また、蓋体8は、発泡樹脂から構成されていてもよく、或いは、非発泡樹脂から構成されていてもよいが、強度面から、非発泡樹脂から構成されていることが好ましい。
【0055】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、排水溝7に対応する表面層部3の裏面は略水平であるが、例えば、
図14に示すように、整流凸条71に対応する箇所において、表面層部3の裏面が、整流凸条71に突出方向に沿うように、上方に突出していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 排水部材
2 帯状体
2a 帯状体の側端面
3 表面層部
4 裏面層部
5 基面部
6 土手部
7 排水溝
8 蓋体
A 床面
5T 基面部に対応する箇所における表面層部の厚み
6T 土手部に対応する箇所における表面層部の厚み
7T 排水溝に対応する箇所における表面層部の厚み