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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20221212BHJP
   H01R 13/516 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01R13/52 D
H01R13/516
H01R13/52 301H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020136541
(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公開番号】P2022032604
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悟己
(72)【発明者】
【氏名】近松 靖和
(72)【発明者】
【氏名】石川 歩
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-060452(JP,A)
【文献】特開2016-071982(JP,A)
【文献】特開平10-199611(JP,A)
【文献】特開平10-032038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に取り付けられた端子金具と、
前記端子金具を内方に収容させ、かつ、相手方壁体の孔状の相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させる嵌合部が設けられたハウジングと、
前記相手方嵌合部に対する前記嵌合部の挿入方向とは逆側での前記ハウジングにおける前記相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆う筒部、前記筒部の外周面よりも外方に突出させ、かつ、前記相手方壁体の壁面に間隔を空けて対向配置させるフランジ部、及び、前記フランジ部の端部から折り曲げられ、前記相手方壁体の端面に固定される被固定部を有するシールドシェルと、
前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間で押し潰される環状の止水部材と、
を備え、
前記シールドシェルには、前記フランジ部と前記被固定部との間の屈曲部に、その内方と外方とを連通させる貫通孔を設け、
前記貫通孔は、前記屈曲部における折り曲げ線を起点にした前記フランジ部側の第1孔部と、前記折り曲げ線を起点にした前記被固定部側の第2孔部と、を有し、
前記止水部材における前記フランジ部への取付面側は、前記第1孔部における少なくとも一部から露出させ、
前記止水部材の外周面は、前記被固定部の内壁面に対して隙間を空けて配置され、
前記止水部材は、スポンジ状のシート部材であり、接着剤又は接着部材を用いて前記フランジ部に貼り付け、
前記接着剤又は前記接着部材は、前記止水部材における前記フランジ部への前記取付面に設ける一方、少なくとも前記止水部材の前記外周面における前記被固定部の前記内壁面との対向配置箇所には設けないことを特徴としたコネクタ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記フランジ部まで延在させ、かつ、前記被固定部まで延在させることを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記貫通孔は、該貫通孔が形成される前の前記屈曲部の曲げの内側における前記止水部材との間の距離が最短になる場所に設けることを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとしては、相手方壁体に設けられた孔状の相手方嵌合部に嵌合部が挿入嵌合されるハウジングと、このハウジングにおける相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆うシールドシェルと、を備えたシールドコネクタが知られている。このコネクタにおいては、シールドシェルが相手方壁体に固定される。例えば、そのシールドシェルとしては、ハウジングの突出部分を外方から覆う筒部と、相手方壁体の壁面に対向配置させるフランジ部と、このフランジ部の端部から折り曲げられ、相手方壁体の端面に固定される被固定部と、を有するものが知られている。この種のコネクタについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-71982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、そのような従来のコネクタにおいては、シールドシェルにおけるフランジ部と被固定部との間の屈曲部の曲げ内側に水等の液体が存在していると、その液体がフランジ部と相手方壁体の壁面との間を介して嵌合部と相手方嵌合部との間に伝わってしまう可能性がある。例えば、上記特許文献1のコネクタにおいては、屈曲部の曲げ内側に液体が溜まらぬように、フランジ部又は被固定部における屈曲部との近接部分に液抜き用の貫通孔を設けている。しかしながら、このコネクタにおいては、屈曲部の曲げ内側の液体が貫通孔から外へと抜け出る前に、その液体がフランジ部と相手方壁体の壁面との間に入り込んでしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、屈曲部の曲げ内側の液体の排出を促すと共に、その液体の嵌合部間への流入を抑えることが可能なコネクタを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、電線の端末に取り付けられた端子金具と、前記端子金具を内方に収容させ、かつ、相手方壁体の孔状の相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させる嵌合部が設けられたハウジングと、前記相手方嵌合部に対する前記嵌合部の挿入方向とは逆側での前記ハウジングにおける前記相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆う筒部、前記筒部の外周面よりも外方に突出させ、かつ、前記相手方壁体の壁面に間隔を空けて対向配置させるフランジ部、及び、前記フランジ部の端部から折り曲げられ、前記相手方壁体の端面に固定される被固定部を有するシールドシェルと、前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間で押し潰される環状の止水部材と、を備え、前記シールドシェルには、前記フランジ部と前記被固定部との間の屈曲部に、その内方と外方とを連通させる貫通孔を設け、前記貫通孔は、前記屈曲部における折り曲げ線を起点にした前記フランジ部側の第1孔部と、前記折り曲げ線を起点にした前記被固定部側の第2孔部と、を有し、前記止水部材における前記フランジ部への取付面側は、前記第1孔部における少なくとも一部から露出させ、前記止水部材の外周面は、前記被固定部の内壁面に対して隙間を空けて配置され、前記止水部材は、スポンジ状のシート部材であり、接着剤又は接着部材を用いて前記フランジ部に貼り付け、前記接着剤又は前記接着部材は、前記止水部材における前記フランジ部への前記取付面に設ける一方、少なくとも前記止水部材の前記外周面における前記被固定部の前記内壁面との対向配置箇所には設けないことを特徴としている。
【0008】
また、前記貫通孔は、前記フランジ部まで延在させ、かつ、前記被固定部まで延在させることが望ましい。
【0009】
また、前記貫通孔は、該貫通孔が形成される前の前記屈曲部の曲げ内側における前記止水部材との間の距離が最短になる場所に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコネクタは、フランジ部と相手方壁体の壁面との間に止水部材を備えることによって、その間を経て嵌合部と相手方嵌合部との間に入り込む液体の流入量を減少させることができる。更に、本発明に係るコネクタは、シールドシェルの屈曲部に貫通孔を設けることによって、その屈曲部の曲げ内側の液体を外方に排出させることができる。このように、本発明に係るコネクタは、屈曲部の曲げ内側の液体の排出を促すと共に、その液体の嵌合部と相手方嵌合部との間への流入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態のコネクタを示す斜視図である。
図2図2は、実施形態のコネクタを別角度から見た斜視図である。
図3図3は、図2のX-X線断面図である。
図4図4は、実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを図1から図4に基づいて説明する。
【0014】
図1から図4の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、内周壁面521aを有する孔状の相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合されて、相手方端子金具510に電気接続させる(図1)。コネクタ1は、その孔状の相手方嵌合部521に対して、この相手方嵌合部521の孔軸方向に沿って挿抜させる。相手方嵌合部521は、例えば、孔軸方向に対する直交断面が円形又は長円形を成すものとして形成されている。
【0015】
例えば、このコネクタ1は、相手方機器500の相手方端子金具510に電気接続させることによって、この相手方機器500と電線Weの先の機器(図示略)との間を電気接続させる(図1)。その相手方機器500は、金属製の筐体501を備えており、この筐体501の壁体(以下、「相手方壁体」という。)502に形成された貫通孔を相手方嵌合部521として利用する。その相手方嵌合部521は、相手方壁体502の平面状の壁面502a(図1から図3)に対する直交方向を孔軸方向とするものであり、その孔軸方向に沿ってコネクタ1を挿抜させる。また、この相手方機器500は、その筐体501の内部に端子台又は相手方コネクタ(図示略)を備えている。相手方端子金具510は、その端子台又は相手方コネクタが備えるものである。よって、コネクタ1は、相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合され、筐体501の内部で端子台又は相手方コネクタの相手方端子金具510に電気接続させる。
【0016】
以下において、特段の言及も無く単に挿入方向と記した場合、その挿入方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の挿入方向のことを示している。また、特段の言及も無く単に抜去方向と記した場合、その抜去方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の抜去方向のことを示している。また、特段の言及も無く単に挿抜方向と記した場合、その挿抜方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の挿抜方向のことを示している。
【0017】
このコネクタ1は、端子金具10とハウジング20とシールドシェル30とを備える(図1から図4)。
【0018】
端子金具10は、金属等の導電性材料で成形される。例えば、この端子金具10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。この端子金具10は、電線Weに対して電気接続させるべく、この電線Weの端末に取り付けられる。また、この端子金具10は、相手方端子金具510に電気接続させる。よって、この端子金具10は、相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる端子接続部11と、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続部12と、を有する(図4)。
【0019】
ここで示す端子接続部11は、片体状に形成される(図1から図4)。そして、この端子接続部11には、貫通孔11aが形成されている(図1図2及び図4)。この端子接続部11は、その貫通孔11aを介して相手方端子金具510に例えば螺子止め固定させることによって、この相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる。尚、この端子金具10と相手方端子金具510の接続形態は、必ずしも、そのような螺子止め構造を採らずともよい。例えば、端子金具10と相手方端子金具510は、互いに嵌合接続可能な形状のものであり、その内の一方が雌端子形状に成形され、その内の他方が雄端子形状に成形されたものであってもよい。
【0020】
電線接続部12は、電線Weの端末の芯線に対して、例えば、圧着又は溶着させることによって、この電線Weに対して物理的且つ電気的に接続させる。ここで示す電線接続部12は、2枚のバレル片を剥き出しの芯線に加締め接続させることによって、その芯線に圧着させている。
【0021】
この例示の端子金具10は、その端子接続部11と電線接続部12を直線上に配置したストレート形状のものとして成形されている。よって、電線Weは、その直線に沿う端子金具10の延在方向に電線接続部12から引き出される。但し、この端子金具10は、端子接続部11と電線接続部12を直交配置させるなど、これらを交差させて配置したものであってもよい。
【0022】
ここで示すコネクタ1は、その対になる端子金具10と電線Weの組み合わせを2組備えている。
【0023】
ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング20は、端子金具10と電線Weを内方に収容させる。そして、このハウジング20においては、その端子金具10が収容状態のまま保持され、かつ、その電線Weが内方から外方に引き出される。
【0024】
このハウジング20は、端子金具10を内方に収容させ、かつ、相手方壁体502の孔状の相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させる嵌合部21を有する(図1図3及び図4)。その嵌合部21は、挿入方向に沿って相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させ、これとは逆向きの抜去方向に沿って相手方嵌合部521の内方から抜き取られる。この嵌合部21は、相手方嵌合部521に対する挿抜方向(挿入方向、挿抜方向)を筒軸方向とする筒状に形成される。よって、以下においては、挿抜方向に替えて筒軸方向と記すことがある。ここで示す嵌合部21は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成され、その長円の長手方向に沿って2つの端子金具10を並列に配置させる。また、ここで示す嵌合部21は、その内方で端子接続部11を保持し、この端子接続部11における貫通孔11a側の端部を内方から外方に突出させる。そして、ここで示す嵌合部21は、その内方に、端子接続部11における電線接続部12側と電線接続部12における端子接続部11側を収容させる。この嵌合部21の内方には、隣り合う端子金具10の間に間仕切り壁(図示略)が設けられている。
【0025】
このハウジング20は、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で、この嵌合部21よりも抜去方向側を相手方嵌合部521から突出させている。このハウジング20は、その抜去方向側での相手方嵌合部521からの突出部分として、電線Weを内方に収容させる筒状の電線収容部22を有する(図1図2及び図4)。ここで示す電線収容部22は、円筒状に形成され、かつ、電線We毎に設けられている。それぞれの電線収容部22は、2つの端子金具の配列方向に並べられている。このハウジング20は、嵌合部21とそれぞれの電線収容部22の間に、嵌合部21の筒軸と同軸で、かつ、この嵌合部21の外周壁面21aよりも外側に設けた筒部23を有する(図1図3及び図4)。ここで示す筒部23は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されており、嵌合部21の外周壁面21aに対して環状の隙間を空けて配置されている。
【0026】
このハウジング20においては、その電線収容部22の開口22aから端子金具10付きの電線Weが挿入されていく(図4)。よって、電線Weは、その開口22aから外方に引き出されている。ここで、この電線収容部22と電線Weとの間には、円環状の隙間が形成される。そこで、このコネクタ1においては、円環状の止水部材(以下、「内側止水部材」という。)41(図4)に電線Weを先通ししておき、電線Weと共に内側止水部材41を電線収容部22に挿入していくことによって、電線収容部22と電線Weとの間の円環状の隙間を塞いでいる。その内側止水部材41とは、所謂ゴム栓のことである。
【0027】
コネクタ1は、このハウジング20の嵌合部21の先端(挿入方向側の端部)が内方に挿入されるフロントホルダ51を備える(図1図3及び図4)。このフロントホルダ51は、その嵌合部21等と共に収容された端子金具10のハウジング20における保持状態を維持させるものである。このフロントホルダ51は、挿抜方向を筒軸方向とする筒部51aを有しており、この筒部51aの内方に嵌合部21の先端を挿入させる(図3及び図4)。ここで示す筒部51aは、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されている。
【0028】
このコネクタ1においては、そのフロントホルダ51の筒部51aにおける抜去方向側の環状の端面とハウジング20の筒部23における挿入方向側の端面とを挿抜方向で間隔を空けて対向配置させる。よって、このコネクタ1においては、そのそれぞれの筒部23,51aの端面の間に、嵌合部21の外周壁面21aを溝底とする環状溝が形成される。このコネクタ1においては、その環状溝に環状の止水部材(以下、「第1外側止水部材」という。)42を設けている(図1図3及び図4)。
【0029】
第1外側止水部材42は、その環状溝の溝底に内周面側を密着させ、かつ、相手方嵌合部521の内周壁面521aに外周面側を密着させ、その環状溝の溝底と相手方嵌合部521の内周壁面521aとの間の環状の隙間を塞ぐことによって、嵌合部21と相手方嵌合部521との間から筐体501の内方への水等の液体の浸入を抑える。そこで、この第1外側止水部材42は、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で成形される。
【0030】
この第1外側止水部材42は、筒状の基部42aと、この基部42aの内周面から突出させた同軸の環状のリップ(以下、「内周リップ」という。)42bと、この基部42aの外周面から突出させた同軸の環状のリップ(以下、「外周リップ」という。)42cと、を有する(図4)。この第1外側止水部材42においては、基部42aの筒軸方向に、内周リップ42bと外周リップ42cが各々複数並べられている。ここで示す第1外側止水部材42は、その内周リップ42bと外周リップ42cが2つずつ設けられている。また、ここで示す基部42aは、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されている。そして、ここで示す内周リップ42bと外周リップ42cは、その基部42aの筒軸に対する直交断面が長円形の環状に形成されている。
【0031】
また、このコネクタ1においては、電線収容部22の開口22aと内側止水部材41との間に、電線Weの屈曲を抑えつつ当該電線Weを保持するリアホルダ52が組み付けられている(図2及び図4)。この例示のリアホルダ52は、第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bの二分割構造を採っており、この第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bとでそれぞれの電線Weを挟み込んで保持する。それぞれの電線Weは、このリアホルダ52を介して開口22aから外方に引き出される。このリアホルダ52は、詳述はしないが、電線収容部22に設けた爪部に第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bに各々設けた係止部を引っ掛けることによって、それぞれの電線収容部22に保持される。第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bは、例えば、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。
【0032】
シールドシェル30は、抜去方向側でのハウジング20における相手方嵌合部521からの突出部分(それぞれの電線収容部22)を外方から覆うことによって、内方の電線Weに対する外部からのノイズの侵入を抑える。よって、このシールドシェル30は、金属材料(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)で成形されている。ここで示すシールドシェル30は、金属板を母材にしてプレス成形されている。
【0033】
このシールドシェル30は、それぞれの電線収容部22を外方から覆う筒部31を有する(図1から図4)。その筒部31は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成され、その長円の長手方向に沿って2つの電線収容部22を並列に配置させる。
【0034】
また、このシールドシェル30は、その筒部31の外周面よりも外方に突出させ、かつ、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で、相手方壁体502の壁面502aに間隔を空けて対向配置させるフランジ部32と、このフランジ部32の端部から折り曲げられ、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で、相手方壁体502の端面502bに固定される被固定部33と、を有する(図1から図4)。
【0035】
フランジ部32は、筒部31の筒軸と同軸で、かつ、この筒部31の外周面よりも外側に突出させた環状で且つ平板状に形成される。このフランジ部32は、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で、一方の平面32aを相手方壁体502の壁面502aに間隔を空けて対向配置させる(図3)。
【0036】
ここで、相手方壁体502の端面502bは、壁面502aに対して直交状態で連接させた平面であり、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で、平板状の被固定部33における一方の平面33aを対向配置させる(図3)。ここで示す被固定部33は、フランジ部32に対して直交させるべく、このフランジ部32の端部から90度折り曲げられている。また、ここで示す被固定部33は、螺子止め固定によって、相手方壁体502の端面502bに固定される。よって、相手方壁体502の端面502bには、被固定部33を固定させるための雌螺子部としての固定部502cが形成されている(図1)。ここで示す固定部502cは、相手方壁体502の端面502bから突出させた円環状のスペーサ部502dを有している。被固定部33における一方の平面33aは、相手方壁体502の端面502bに対してスペーサ部502dの厚さ分だけオフセットさせられる。その被固定部33には、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で固定部502cに対向配置され、かつ、その固定部502cに螺合させる雄螺子部(図示略)を挿通させる貫通孔33bが形成されている(図1及び図2)。ここでは、その対になる貫通孔33bと固定部502cが2組設けられている。
【0037】
このコネクタ1は、シールドシェル30の筒部31の外周面とそれぞれの電線収容部22の開口22aから外方に引き出された電線Weとを覆う編組(図示略)を備える。その編組は、金属材料で筒状且つ網目状に編み込まれた部材であり、それぞれの開口22aから外方に引き出された電線Weに対するノイズの侵入を抑える。この編組は、筒状の接続部材35(図1図2及び図4)を用いて筒部31の外周面に圧接させる。
【0038】
ところで、このコネクタ1においては、先に示した第1外側止水部材42によって、嵌合部21と相手方嵌合部521との間から筐体501の内方への水等の液体の浸入を抑えている。そして、このコネクタ1においては、その間での液密性を考えるのであれば、嵌合部21と相手方嵌合部521との間に入り込む液体の流入量を減少させることが望ましい。そこで、このコネクタ1は、シールドシェル30のフランジ部32に取り付けられ、このフランジ部32と相手方壁体502の壁面502aとの間で押し潰される環状の止水部材(以下、「第2外側止水部材」という。)43を備えている(図1から図4)。
【0039】
その第2外側止水部材43は、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で成形される。より具体的に、第2外側止水部材43は、スポンジ状のシート部材を利用して成形される。ここで示す第2外側止水部材43は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を用いて、シールドシェル30の筒部31と同軸で、かつ、その筒軸に対する直交断面が長円形の環状に成形されている。この第2外側止水部材43は、その環状体における抜去方向側の環状の壁面がフランジ部32への取付面であり、その取付面が接着剤又は接着部材(両面テープ等)を用いてフランジ部32の一方の平面32aに貼り付けられる。この第2外側止水部材43は、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態のときに、フランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間で押し潰されて、その間への外方からの液体の浸入を抑える。
【0040】
更に、このコネクタ1においては、そのフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間への液体の流入量をも減少させることによって、その間における第2外側止水部材43による液密性を向上させ、これに伴い、嵌合部21と相手方嵌合部521との間における液密性をより向上させることができる。しかしながら、このコネクタ1においては、シールドシェル30におけるフランジ部32と被固定部33との間が折り曲げられており、その屈曲部30a(図1から図4)の曲げ内側に水等の液体が浸入してきたり、この屈曲部30aの曲げ内側で結露が生じたりすると、この屈曲部30aの曲げ内側に液体が溜まる可能性がある。例えば、このコネクタ1においては、液体が被固定部33における一方の平面33aを伝って屈曲部30aの曲げ内側に流入してくる可能性が考えられる。そして、このコネクタ1においては、その屈曲部30aの曲げ内側の液体が第2外側止水部材43に触れるまで溜まったり、その屈曲部30aの曲げ内側に溜まった液体が車両の走行振動等で第2外側止水部材43に伝わったりしてしまうと、その液体がフランジ部32の一方の平面32aと第2外側止水部材43との間に入り込んだり、相手方壁体502の壁面502aと第2外側止水部材43との間に入り込んだりしてしまう可能性がある。
【0041】
そこで、このコネクタ1においては、その屈曲部30aの曲げ内側の液体を外方に排出させる。具体的に、シールドシェル30には、その屈曲部30aに、その内方と外方とを連通させる貫通孔34を設ける(図1から図4)。その貫通孔34は、屈曲部30aの曲げ内側の液体を外方に排出させる液抜き孔であり、屈曲部30aにおける折り曲げ線を起点にしたフランジ部32側の第1孔部と、その折り曲げ線を起点にした被固定部33側の第2孔部と、を有している。これにより、このコネクタ1においては、屈曲部30aの曲げ内側に液体が溜まる前に屈曲部30aの曲げ内側の液体を貫通孔34から外方に排出させたり、屈曲部30aの曲げ内側に液体が溜まったとしても、その液体を貫通孔34から外方に排出させたりすることができる。
【0042】
第2外側止水部材43におけるフランジ部32への取付面側は、貫通孔34の第1孔部における少なくとも一部から露出させることが望ましい。つまり、その貫通孔34の第1孔部は、挿抜方向で第2外側止水部材43との間に空間(シールドシェル30の内側の空間)を介在させずに対向配置させることが望ましい。更に、第2外側止水部材43の外周面は、被固定部33の内壁面である一方の平面33aに対して隙間を空けて配置されることが望ましい。この第2外側止水部材43の外周面は、第2外側止水部材43におけるフランジ部32への取付面側を貫通孔34の第1孔部における少なくとも一部から露出させているので、被固定部33における一方の平面33aに対して隙間を空けて配置させることによって、貫通孔34の第2孔部から露出させている部分がその第2孔部に対して空間(シールドシェル30の内側の空間)を介して対向配置されることになる。よって、貫通孔34と第2外側止水部材43は、第1孔部における第2外側止水部材43との対向配置箇所を除いて、その相互間に空間(シールドシェル30の内側の空間)を介在させるものとして形成及び配置されていることが望ましい。これにより、このコネクタ1においては、屈曲部30aの曲げ内側で第2外側止水部材43に触れるまで溜まったり、その曲げ内側で第2外側止水部材43に伝わったりしてきた液体を、フランジ部32の内壁面である一方の平面32aと第2外側止水部材43におけるフランジ部32への取付面側との間に入り込ませる前に貫通孔34から外方に排出させることができる。そして、その液体の排出効果を高めるべく、貫通孔34は、フランジ部32まで延在させ、かつ、被固定部33まで延在させることが望ましい。これにより、このコネクタ1においては、被固定部33における一方の平面33aを伝ってきた液体を早い段階で貫通孔34から外方に排出させた上で、その液体の一部が第2外側止水部材43における第1孔部との対向配置面に伝わったとしても、フランジ部32の一方の平面32aと第2外側止水部材43におけるフランジ部32への取付面側との間への液体の伝わりを抑えることができる。
【0043】
ここで、先に示した接着剤又は接着部材は、第2外側止水部材43におけるフランジ部32への取付面に設けるが、少なくとも第2外側止水部材43の外周面における被固定部33の一方の平面33aとの対向配置箇所には設けないことが望ましい。何故ならば、その第2外側止水部材43の対向配置箇所にまで接着剤等が設けられている場合には、第2外側止水部材43がスポンジ状のシート部材であることから伸縮可能なので、第2外側止水部材43をフランジ部32の所定位置に正しく取り付けたとしても、その取付作業を行う際に、その対向配置箇所が被固定部33の一方の平面33aに貼り付いて貫通孔34の第2孔部を塞いでしまう可能性があるからである。よって、このコネクタ1においては、その第2外側止水部材43の対向配置箇所に接着剤等を設けないことによって、第2外側止水部材43が貫通孔34の第2孔部を塞いでしまう不都合を回避できると共に、第2外側止水部材43をフランジ部32に取り付ける際の取付作業性の低下を抑えることができる。
【0044】
また、貫通孔34は、この貫通孔34が形成される前の屈曲部30aの曲げ内側における第2外側止水部材43との間の距離が最短になる場所に設けることが望ましい。液体は、そのような場所で最も溜まり易いので、かかる場所に貫通孔34を設けることによって、屈曲部30aの曲げ内側に溜まることなく、その貫通孔34から外方に排出させることができる。
【0045】
以上示したように、本実施形態のコネクタ1は、フランジ部32と相手方壁体502の壁面502aとの間に第2外側止水部材43を備えることによって、その間を経て嵌合部21と相手方嵌合部521との間に入り込む液体の流入量を減少させることができる。特に、このコネクタ1は、嵌合部21と相手方嵌合部521との間に第1外側止水部材42を設けているので、その間への液体の流入量を抑えることによって、第1外側止水部材42による嵌合部21と相手方嵌合部521との間の液密性を保つことができる。更に、本実施形態のコネクタ1は、シールドシェル30の屈曲部30aに貫通孔34を設けることによって、その屈曲部30aの曲げ内側の液体を外方に排出させることができる。このように、本実施形態のコネクタ1は、屈曲部30aの曲げ内側の液体の排出を促すと共に、その液体の嵌合部21と相手方嵌合部521との間への流入を抑えることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 コネクタ
10 端子金具
20 ハウジング
21 嵌合部
30 シールドシェル
30a 屈曲部
31 筒部
32 フランジ部
33 被固定部
34 貫通孔
43 第2外側止水部材(止水部材)
502 相手方壁体
502a 壁面
502b 端面
521 相手方嵌合部
We 電線
図1
図2
図3
図4