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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/40 20120101AFI20221212BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20221212BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F16H48/40
F16H1/28
F16H48/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020570374
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044222
(87)【国際公開番号】W WO2020161979
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019022136
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】忍足 俊一
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-240254(JP,A)
【文献】特開平11-344100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/40
F16H 1/28
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星ギアのキャリアとデファレンシャルギアのデファレンシャルケースとが一体形成された動力伝達装置であって、
前記遊星ギアはピニオンギアを支持するピニオン軸を挿入するピニオン軸挿入孔を有し、
前記デファレンシャルケースは、一対の傘歯車を支持する傘歯車軸を挿入する傘歯車軸挿入孔を有し、
前記遊星ギアの軸方向と交差する方向から見た断面視において、前記傘歯車軸挿入孔と、前記ピニオン軸挿入孔が形成された側板部と、は前記傘歯車軸挿入孔を貫通する仮想の直線の方向に沿って並んでいる共に、前記傘歯車軸が複数のピニオン軸挿入孔を結ぶ円の中心を通り、
記軸方向からみたときに、前記ピニオン軸は前記一対の傘歯車と噛合するサイドギアとオーバーラップせず、
前記軸方向からみたときに、前記サイドギアは前記ピニオン軸よりも内周に位置し、
前記軸方向からみたときに、前記傘歯車軸挿入孔を貫通する直線が前記ピニオン軸挿入孔のいずれも通らない位置に、前記傘歯車軸挿入孔が配置されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記遊星ギアの径方向からみたときに、前記ピニオンギアは、前記一対の傘歯車と噛合するサイドギアの歯部とオーバーラップする、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記傘歯車軸挿入孔を貫通する直線が、一の前記ピニオン軸挿入孔の隣の領域と、他の一の前記ピニオン軸挿入孔の隣の領域と、を通る、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記キャリアと前記デファレンシャルケースとが一体形成されている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記遊星ギアの上流にモータが接続され、
前記デファレンシャルギアの下流に、前記モータの内周を貫通して配置されるドライブシャフトが接続されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3には、動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-221566号公報
【文献】特開2016-89860号公報
【文献】特開2018-103676号公報
【0004】
特許文献1の動力伝達装置は、回転伝達に関与する3つの回転軸が並列に並んでおり、縦方向(重力方向)にサイズアップしやすい(以下、3軸タイプと呼ぶこととする)。
【0005】
特許文献2の動力伝達装置は、モータのロータが中空軸となっており、この中空軸の内部をドライブシャフトが貫通している。そのため、3軸タイプと比較して縦方向のサイズダウンが可能となるが、大きなカウンタギアを配置しているため、縦方向にサイズアップしてしまう(以下、2軸タイプと呼ぶこととする)。
【0006】
特許文献3の動力伝達装置は、カウンタギアではなく、段付きピニオンを有する遊星減速ギアを用いており、2軸タイプと比較して縦方向のサイズダウンが可能となる(以下、1軸タイプと呼ぶこととする)。
【0007】
特許文献3の一軸タイプの遊星減速ギアの出力要素は、リングギアであるが、出力要素をキャリアにすることも考えられる。
キャリア出力の遊星減速ギアと差動装置とを有する動力伝達装置のダウンサイジングが求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
遊星ギアのキャリアとデファレンシャルギアのデファレンシャルケースとが一体形成された動力伝達装置であって、
前記遊星ギアはピニオンギアを支持するピニオン軸を挿入するピニオン軸挿入孔を有し、
前記デファレンシャルケースは、一対の傘歯車を支持する傘歯車軸を挿入する傘歯車軸挿入孔を有し、
前記遊星ギアの軸方向と交差する方向から見た断面視において、前記傘歯車軸挿入孔と、前記ピニオン軸挿入孔が形成された側板部と、は前記傘歯車軸挿入孔を貫通する仮想の直線の方向に沿って並んでいる共に、前記傘歯車軸が複数のピニオン軸挿入孔を結ぶ円の中心を通り、
記軸方向からみたときに、前記ピニオン軸は前記一対の傘歯車と噛合するサイドギアとオーバーラップせず、
前記軸方向からみたときに、前記サイドギアは前記ピニオン軸よりも内周に位置し、
前記軸方向からみたときに、前記傘歯車軸挿入孔を貫通する直線が前記ピニオン軸挿入孔のいずれも通らない位置に、前記傘歯車軸挿入孔が配置されている。
【0009】
本発明によれば、動力伝達装置の軸方向のダウンサイジングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図2】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
図3】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
図4】動力伝達装置の差動装置周りの拡大図である。
図5】減速機構と差動装置の配置の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する図である。
図2および図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア5周りの拡大図である。
図3の(a)は、段付きピニオンギア53を、図1におけるA-A線に沿って切断した断面図である。図3の(b)は、図3の(a)におけるA-A線に沿って、段付きピニオンギア53を切断した断面図である。
図3の(a)では、差動装置6のシャフト61と、遊星減速ギア5の段付きピニオンギア53との位置関係を説明するために、シャフト61の位置を破線で示している。
【0012】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動装置6に入力する遊星減速ギア5(減速機構)と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、を有している。
【0013】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア5と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、遊星減速ギア5で減速されて差動装置6に入力された後、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。図1では、ドライブシャフト8Aが、動力伝達装置1を搭載した車両の左輪に回転伝達可能に接続されていると共に、ドライブシャフト8Bが、右輪に回転伝達可能に接続されている。
【0014】
ここで、遊星減速ギア5は、モータ2の下流に接続されており、差動装置6は、遊星減速ギア5の下流に接続されており、ドライブシャフト8(8A、8B)は、差動装置6の下流に接続されている。
【0015】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むステータコア25とを、有している。
【0016】
モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bに外挿された状態で、ドライブシャフト8Bに対して相対回転可能に設けられている。
モータシャフト20では、長手方向の一端20a側と他端20b側の外周に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
モータシャフト20の一端20a側は、ベアリングB1を介して、中間ケース12の円筒状のモータ支持部121で回転可能に支持されている。
モータシャフト20の他端20b側は、ベアリングB1を介して、カバー11の円筒状のモータ支持部111で回転可能に支持されている。
【0017】
モータ2は、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むモータハウジング10を有している。本実施形態では、モータハウジング10の一端10aに、中間ケース12が接合されており、モータハウジング10の他端10bに、カバー11が接合されている。
【0018】
モータハウジング10の一端10aと他端10bには、シールリングS、Sが設けられている。モータハウジング10の一端10aは、当該一端10aに設けたシールリングSにより、中間ケース12の環状の基部120に隙間なく接合されている。
モータハウジング10の他端10bは、当該他端10bに設けたシールリングSにより、カバー11の環状の接合部110に隙間なく接合されている。
【0019】
中間ケース12では、基部120とモータ支持部121とが、回転軸X方向で位置をずらして設けられている。
本実施形態では、中間ケース12をモータハウジング10の一端10aに固定すると、モータ支持部121が、モータハウジング10の内側に挿入されるようになっている。
【0020】
この状態においてモータ支持部121は、後記するコイルエンド253aの内径側で、ロータコア21の一端部21aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される(図2参照)。
そして、図2に示すように、基部120とモータ支持部121とを接続する接続部123は、コイルエンド253aと後記する側板部551との接触を避けて、回転軸Xに沿う向きで設けられている。
【0021】
なお、モータ支持部121のロータコア21側の端面121aには、ベアリングリテーナ125が固定されている。
ベアリングリテーナ125は、回転軸X方向から見てリング状を成している。ベアリングリテーナ125の内径側は、モータ支持部121で支持されたベアリングB1のアウタレースB1bの側面に回転軸X方向から当接している。ベアリングリテーナ125は、モータ支持部121からのベアリングB1の脱落を阻止している。
【0022】
図1に示すように、カバー11では、接合部110とモータ支持部111とが、回転軸X方向で位置をずらして設けられている。
本実施形態では、カバー11の接合部110をモータハウジング10の他端10bに固定すると、モータ支持部111が、モータハウジング10の内側に挿入されるようになっている。
【0023】
この状態においてモータ支持部111は、後記するコイルエンド253bの内径側で、ロータコア21の他端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される。
そして、接合部110と、カバー11の側壁部113とを接続する接続部115は、コイルエンド253bと後記する支持筒112との接触を避けて、回転軸Xに沿う向きで設けられている。
【0024】
モータハウジング10の内側では、カバー11側のモータ支持部111と、中間ケース12側のモータ支持部121との間に、ロータコア21が配置されている。
【0025】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものであり、珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成しており、珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0026】
回転軸X方向におけるロータコア21の一端部21aは、モータシャフト20の大径部203で位置決めされている。ロータコア21の他端部21bは、モータシャフト20に圧入されたストッパ23で位置決めされている。
【0027】
ステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものであり、電磁鋼板の各々は、モータハウジング10の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252を、有している。
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用しており、ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0028】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0029】
モータシャフト20では、大径部203よりも一端20a側の領域の外周に、ベアリングB1が圧入されている。
図2に示すように、ベアリングB1のインナレースB1aは、回転軸X方向の一方の側面が、モータシャフト20の外周に設けた段部204に当接している。インナレースB1aは、他方の側面に、モータシャフト20の外周に圧入されたリング状のストッパ205が当接している。
ストッパ205によりベアリングB1は、インナレースB1aを、段部204に当接させた位置で位置決めされている。
【0030】
モータシャフト20の一端20aは、ストッパ205よりも差動装置6側(図中、左側)に位置している。回転軸X方向において一端20aは、遊星減速ギア5のサンギア51の側面51aに、間隔をあけて対向している。
【0031】
モータシャフト20の一端20a側では、モータシャフト20の径方向外側に、円筒壁122が位置している。円筒壁122は、モータ支持部121から差動装置6側(図中、左側)に突出している。
【0032】
円筒壁122は、モータシャフト20の外周を所定間隔で囲んでおり、円筒壁122とモータシャフト20との間には、リップシールRSが設置されている。
リップシールRSは、モータハウジング10の内径側の空間Saと、ケース13の内径側の空間Sbとを、区画するために設けられている。
【0033】
ケース13の内径側の空間Sbには、差動装置6の潤滑油OLが封入されている。リップシールRSは、モータハウジング10の内径側の空間Saへの潤滑油OLの流入を阻止するために設けられている。
【0034】
円筒壁122の外径側では、前記した接続部123との間に、遊星減速ギア5側(図2における左側)に開口した凹部124が形成されている。
凹部124の接続部123側(外径側)には、ベアリングB3のアウタレースB3bを位置決めする段部123aが設けられている。凹部124内において、ベアリングB3のインナレースB3aは、モータ支持部121との接触を避けて設けられており、インナレースB3aは、後記する筒状部552の外周を支持している。
【0035】
本実施形態では、モータハウジング10と、カバー11と、中間ケース12と、ケース13とで、動力伝達装置1の本体ケース9を構成している。
本体ケース9の内部空間は、中間ケース12を境にして、モータハウジング10側の空間Saが、モータ2を収容するモータ室となっている。そして、ケース13側の空間Sb、Scが、遊星減速ギア5と差動装置6を収容するギア室となっている。
【0036】
図2に示すように、モータシャフト20の一端20a側の領域(連結部202)は、ロータコア21が外挿された領域201よりも大きい内径で形成されている。
この一端20a側の連結部202の内側には、サンギア51の円筒状の連結部511が挿入されている。この状態において、モータシャフト20の一端20a側の連結部202と、サンギア51の連結部511とが、相対回転不能にスプライン嵌合している。
【0037】
そのため、モータ2の出力回転が、モータシャフト20を介して、遊星減速ギア5のサンギア51に入力されて、サンギア51がモータ2の回転駆動力で、回転軸X回りに回転する。
【0038】
サンギア51は、内径側の側面51aから回転軸X方向に延びる連結部511を有している。連結部511は、サンギア51と一体に形成されおり、サンギア51の内径側と連結部511の内径側とに跨がって、貫通孔510が形成されている。
サンギア51は、貫通孔510を貫通したドライブシャフト8Bの外周で回転可能に支持されている。
【0039】
サンギア51の差動装置6側の側面51bは、後記するデフケース60の筒状の当接部601に、回転軸X方向の隙間をあけて対向しており、側面51bと当接部601との間には、ニードルベアリングNBが介在している。
【0040】
図3の(b)に示すように、サンギア51は、前記したモータシャフト20の延長上で、段付きピニオンギア53の大径歯車部531に噛合している。
【0041】
段付きピニオンギア53は、サンギア51に噛合する大径歯車部531と、大径歯車部531よりも小径の小径歯車部532とを有している。
図3の(b)の段付きピニオンギア53の部分の断面図に示すように、段付きピニオンギア53は、大径歯車部531と小径歯車部532が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
【0042】
段付きピニオンギア53は、大径歯車部531と小径歯車部532の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔530を有している。
段付きピニオンギア53は、貫通孔530を貫通したピニオン軸54の外周で、ニードルベアリングNBを介して回転可能に支持されている。
【0043】
ピニオン軸54の外周では、大径歯車部531の内径側と、小径歯車部532の内径側に、ニードルベアリングNBがそれぞれ設けられている。ピニオン軸54の外周においてニードルベアリングNB、NBは、軸線X1方向に直列に並んでいる。
【0044】
ピニオン軸54の長手方向の一端と他端は、デフケース60と一体に形成された側板部651と、この側板部651に間隔をあけて配置された側板部551で支持されている。
具体的には、ピニオン軸54の長手方向の一端と他端は、側板部651の支持孔651aと側板部551の支持孔551aに、それぞれ軸線X1方向から挿入されて、固定されている。
【0045】
側板部651、551は、回転軸X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
側板部651、551の間では、複数の段付きピニオンギア53が回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数(例えば、3つ)設けられている(図3の(a)参照)。
【0046】
そのため、段付きピニオンギア53を支持するピニオン軸54もまた、段付きピニオンギア53と同数設けられている。そして、側板部651の支持孔651aと側板部551の支持孔551aもまた、段付きピニオンギア53と同数ずつ設けられている。
【0047】
図3では、大径歯車部531に隣接して紙面手前側に位置する小径歯車部532を仮想線で示している。さらに、小径歯車部532よりも紙面手前側で、ピニオン軸54を支持する側板部651の外周651bの位置を、符号651bを付した仮想線で示している。
また、小径歯車部532よりも紙面手前側に位置する後記するシャフト61の位置を、符号61を付した破線で示すと共に、シャフト61の一端と他端が挿入される軸孔60a、60bの位置を、符号60a、60bを付して示している。
【0048】
図3の(a)に示すように、回転軸X方向から見て、側板部651の外周651bは、回転軸Xを中心とした円弧状を成している。段付きピニオンギア53を支持するピニオン軸54は、外周651bよりも内径側(回転軸X)側で、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数(本実施形態では、3つ)設けられている。
【0049】
ピニオン軸54は、回転軸Xを中心とする同一の仮想円Im上に位置している。そのため、側板部651に設けたピニオン軸54の支持孔651aもまた、回転軸X方向から見ると、回転軸Xを中心とする同一の仮想円Im上に位置している。
【0050】
図3の(a)に示すように、回転軸X周りの周方向で隣接する段付きピニオンギア53の間には、回転軸Xに沿う向きで設けられた接続梁56が位置している。
接続梁56は、キャリア55の側板部651と側板部551とに跨がって、段付きピニオンギア53との干渉を避けて設けられている。
【0051】
図3の(b)に示すように、小径歯車部532の各々は、リングギア52の内周に噛合している。リングギア52は、ケース13の内周にスプライン嵌合しており、リングギア52は、ケース13との相対回転が規制されている。
【0052】
側板部551の内径側には、モータ2側に延びる筒状部552が設けられている。筒状部552は、中間ケース12の凹部124に、回転軸X方向から挿入されている。凹部124内において、筒状部552は、モータ支持部121との接触を避けて設けられている。
【0053】
筒状部552は、モータシャフト20と、遊星減速ギア5側の連結部511との噛み合い部分の径方向外側に位置している。筒状部552の外周には、凹部124で支持されたベアリングB3が接触している。側板部551の筒状部552は、ベアリングB3を介して、中間ケース12で回転可能に支持されている。
【0054】
遊星減速ギア5では、キャリア55を構成する側板部551と側板部651のうちの一方の側板部651が、差動装置6のデフケース60と一体に形成されている。
そのため、遊星減速ギア5のキャリア55(側板部551、651、ピニオン軸54)は、デフケース60と実質的に一体に形成されている。
【0055】
遊星減速ギア5では、モータ2の出力回転が、サンギア51に入力される。
サンギア51に入力された出力回転は、サンギア51に噛合する大径歯車部531を介して、段付きピニオンギア53に入力されて、段付きピニオンギア53が軸線X1回りに回転する。
【0056】
そうすると、大径歯車部531と一体に形成された小径歯車部532は、大径歯車部531と一体に軸線X1周りに回転する。
ここで、小径歯車部532は、ケース13の内周に固定されたリングギア52に噛合している。そのため、小径歯車部532が軸線X1回りに回転すると、段付きピニオンギア53は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに回転する。
【0057】
そうすると、ピニオン軸54の一端が、デフケース60と一体に形成された側板部651に支持されているので、段付きピニオンギア53の回転軸X周りの周方向の変位に連動して、デフケース60が回転軸X回りに回転する。
【0058】
ここで、段付きピニオンギア53では、小径歯車部532の外径R2が大径歯車部531の外径R1よりも小さくなっている(図3の(b)参照)。
そして、遊星減速ギア5では、サンギア51が、モータ2の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア53を支持するキャリア55が、入力された回転の出力部となっている。
そうすると、遊星減速ギア5のサンギア51に入力された回転は、段付きピニオンギア53により大きく減速されたのちに、キャリア55の側板部651が一体に形成されたデフケース60に出力される。
【0059】
図4は、動力伝達装置1の差動装置6周りの拡大図である。
図4に示すように、デフケース60は、シャフト61と、かさ歯車62A、62Bと、サイドギア63A、63Bとを、内部に収納する中空状に形成されている。
デフケース60では、回転軸X方向(図中、左右方向)の一方側に、筒状の支持部602が設けられており、他方側にリング状の当接部601が設けられている。
【0060】
支持部602は、シャフト61から離れる方向に、回転軸Xに沿って延出している。
デフケース60の支持部602の外周には、ベアリングB2のインナレースB2aが圧入されている。
ベアリングB2のアウタレースB2bは、ケース13のリング状の支持部131で保持されており、デフケース60の支持部602は、ベアリングB2を介して、ケース13で回転可能に支持されている。
【0061】
支持部602には、ケース13の開口部130を貫通したドライブシャフト8Aが、回転軸X方向から挿入されており、ドライブシャフト8Aは、支持部602で回転可能に支持されている。
開口部130の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Aの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Aの外周と開口部130の内周との隙間が封止されている。
【0062】
図1に示すように、デフケース60には、カバー11の開口部114を貫通したドライブシャフト8Bが、当接部601側(図中、右側)から挿入されている。
ドライブシャフト8Bは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア5のサンギア51の内径側を回転軸X方向に横切って設けられており、ドライブシャフト8Bの先端側が、デフケース60内に挿入されている。
【0063】
カバー11の開口部114の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Bの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Bの外周と開口部114の内周との隙間が封止されている。
【0064】
図4に示すように、デフケース60の内部では、ドライブシャフト8A、8Bの先端部の外周に、サイドギア63A、63Bがスプライン嵌合しており、サイドギア63A、63Bとドライブシャフト8(8A、8B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0065】
デフケース60には、回転軸Xに直交する方向に貫通した軸孔60a、60bが、回転軸Xを挟んで対称となる位置に設けられている。
軸孔60a、60bは、回転軸Xに直交する軸線Y上に位置しており、シャフト61の一端61a側および他端61b側が挿入されている。
【0066】
シャフト61の一端61a側および他端61b側は、ピンPでデフケース60に固定されており、シャフト61は、軸線Y回りの自転が禁止されている。
シャフト61は、デフケース60内において、サイドギア63A、63Bの間に位置しており、軸線Yに沿って配置されている。
【0067】
デフケース60内においてシャフト61には、かさ歯車62A、62Bが外挿して回転可能に支持されている。
かさ歯車62A、62Bは、シャフト61の長手方向(軸線Yの軸方向)で間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bは、互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
シャフト61においてかさ歯車62A、62Bは、当該かさ歯車62A、62Bの軸心を、シャフト61の軸心と一致させて設けられている。
【0068】
デフケース60内において、回転軸Xの軸方向におけるかさ歯車62A、62Bの両側には、サイドギア63A、63Bが位置している。
サイドギア63A、63Bは、互いの歯部を対向させた状態で、回転軸Xの軸方向に間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bとサイドギア63A、63Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0069】
前記したように、本実施形態では、遊星減速ギア5のキャリア55(側板部551、651、ピニオン軸54)は、デフケース60と実質的に一体に形成されている。
デフケース60では、シャフト61の軸孔60a、60bに加えて、ピニオン軸54の支持孔651aを持つ側板部651が、一体的に設けられている。
【0070】
ここで、デフケース60において軸孔60a、60bは、シャフト61の中心線(シャフト61の中心を長手方向に沿って延びると共に回転軸Xに直交する軸線:軸線Y)と交差する位置に設けられており、軸孔60a、60bの開口方向は軸線Y方向である。
【0071】
デフケース60にシャフト61を組み付ける際には、軸孔60a、60bのうちの一方の軸孔に、軸線Y方向からシャフト61を挿入したのち、シャフト61の一端61aと他端61bを、軸孔60aと軸孔60bで支持させる。そのため、デフケース60では、軸孔60a、60bにおけるシャフト61の支持強度を確保するために、軸孔60a、60bを囲む肉厚のボス部605、605(図4参照)が形成されている。
【0072】
図5の(b)に示すように、回転軸X方向から見て、軸線Yがピニオン軸54の支持孔651aと交差するように、軸孔60a、60bの位置が設定されていると、支持孔651aを持つ側板部651が、回転軸X方向から見て、軸線Y上に配置されることになる。
【0073】
この場合において、軸孔60a、60bの位置と側板部651の位置が、回転軸X方向で一致していると、回転軸Xの径方向から見て、軸孔60a、60bが、側板部551に隠れてしまう。
前記したように、デフケース60へのシャフト61の組み付けは、軸孔60a、60bのうちの一方の軸孔に、シャフト61を軸線Y方向から挿入することで行われる。そのため、軸孔60a、60bが側板部551に隠れていると、シャフト61のデフケース60への組み付けに支障が生じる。
そのため、回転軸X方向から見て、軸線Yがピニオン軸54の支持孔651aと交差するように、軸孔60a、60bの位置が設定されている場合には、軸孔60a、60bの位置と、側板部651の位置を、回転軸X方向で離して設定する必要がある(図5の(a)、(b)参照)。
【0074】
図5に示す比較例にかかる動力伝達装置1Aでは、回転軸X方向から見て、軸線Yがピニオン軸54の支持孔651aと交差している。
そのため、比較例にかかる動力伝達装置1Aでは、シャフト61のデフケース60への組み付けが阻害されないようにするために、支持孔651aを持つ側板部651の位置が、軸孔60a、60bの縁の位置から、回転軸X方向に所定距離La離間した位置に設定されている(図5の(a)参照)。
【0075】
そのため、比較例にかかる動力伝達装置1Aでは、側板部651の位置を、軸孔60a、60bの位置から回転軸X方向に離間させた分だけ、回転軸X方向の長さが長くなる。
【0076】
これに対して、図3の(a)に示すように、本実施形態にかかる動力伝達装置1では、回転軸X方向から見たときに、軸線Yがピニオン軸54の支持孔651aと交差しないように、軸孔60a、60bの位置が設定されている。
すなわち、支持孔651aを持つ側板部651が、回転軸Xの径方向から見たときに、デフケース60に設けた軸孔60a、60bと重ならない位置となるように、軸線Yと各支持孔651aとの位置関係が設定されている。
【0077】
そのため、図2に示すように、支持孔651aを持つ側板部651の位置と、軸孔60a、60bの位置が、回転軸Xの径方向でオーバーラップしている。
すなわち、デフケース60では、側板部651の位置と、軸孔60a、60bの位置が、回転軸X方向(図中、左右方向)で同じ位置に配置されているものの、軸孔60a、60bの位置と、側板部651の位置が、回転軸X周りの周方向で離れている。
【0078】
これにより、図3の(b)に示すように、デフケース60のモータ2側(図中、右側)の領域を、段付きピニオンギア53の小径歯車部532の内径側(回転軸X)側に挿入して配置することができる。
【0079】
そのため、本実施形態にかかる動力伝達装置1では、デフケース60が、比較例にかかる動力伝達装置1Aよりも、段付きピニオンギア53の大径歯車部531に近づけて配置されている。そして、本実施形態にかかる動力伝達装置1では、比較例にかかる動力伝達装置1Aのデフケース60が備える支持部601Aの代わりに、回転軸X方向の長さが短い当接部601がデフケース60に設けられている。
これにより、支持部601Aに代えて当接部601を採用した分だけ、動力伝達装置1の回転軸X方向の長さが短くなっている。
【0080】
前記したように、遊星減速ギア5のキャリア55(側板部551、651、ピニオン軸54)は、デフケース60と実質的に一体に形成されている。
そのため、シャフト61と、デフケース60の軸孔60a、60bと、支持孔651aを有する側板部551は、回転軸X方向から見たときの位置関係が固定されている。
【0081】
そこで、シャフト61と、デフケース60の軸孔60a、60bと、支持孔651aを有する側板部551と、の位置関係であって、本実施形態にかかる動力伝達装置1の場合における位置関係を、図3の(a)を参照して説明する。
【0082】
本実施形態では、シャフト61の中心を長手方向に沿って延びると共に回転軸Xに直交する軸線Yを基準とした一方側に、2つの支持孔651a、651aが位置しており、他方側に、ひとつの支持孔651aが位置している。
他方側の支持孔651aが、軸線Yと回転軸Xに直交する軸線V上に位置している場合において、一方側の2つの支持孔651a、651aは、軸線Vを挟んで対称となる位置関係で設けられている。
そして、回転軸Xと、一方側の2つの支持孔651a、651aの中心とを結ぶ線分Lc、Lcが、それぞれ軸線Yに対して同じ交差角θとなるように、一方側の2つの支持孔651a、651aの位置が決められている。
【0083】
そして、交差角θは、支持孔651aを持つ側板部651が、軸孔60a、60bを囲むボス部605と干渉しない位置に配置されるように、シャフト61の幅W(直径)を考慮して設定されている。
【0084】
このように、デフケース60では、側板部651の位置と、軸孔60a、60bの位置が、回転軸X方向(図2における、左右方向)で同じ位置に配置されているものの、軸孔60a、60bの位置と、側板部651の位置が、図3の(a)に示すように、回転軸X周りの周方向で離れている。
そのため、図3の(b)に示すように、デフケース60のモータ2側(図中、右側)の領域を、段付きピニオンギア53の小径歯車部532の内径側(回転軸X)側に挿入して、モータ2に近づけて配置することができる。
【0085】
これにより、本実施形態にかかる動力伝達装置1では、デフケース60がモータ2に近づいた分だけ、回転軸X方向の長さが短くなっている。
【0086】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギアと、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
【0087】
モータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア5のサンギア51に回転が入力される。
【0088】
遊星減速ギア5では、サンギア51が、遊星減速ギア5の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア53を支持するキャリア55が、入力された回転の出力部となっている。
【0089】
サンギア51が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア53(大径歯車部531、小径歯車部532)が、サンギア51側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア53の小径歯車部532は、ケース13の内周に固定されたリングギア52に噛合している。そのため、段付きピニオンギア53は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X回りに回転する。
【0090】
これにより、段付きピニオンギア53を支持するキャリア55(側板部551、651)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア53では、小径歯車部532の外径R2が大径歯車部531の外径R1よりも小さくなっている(図3参照)。
そのため、遊星減速ギア5のサンギア51に入力された回転は、段付きピニオンギア53により、大きく減速されたのちに、キャリア55の側板部651が一体に形成されたデフケース60(差動装置6)に出力される。
【0091】
そして、デフケース60が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、ドライブシャフト8(8A、8B)が回転軸X回りに回転して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0092】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1では、遊星減速ギア5(遊星ギア)のキャリア55と、差動装置6(デファレンシャルギア)のデフケース60(デファレンシャルケース)と、が一体に形成されている。
遊星減速ギア5のキャリア55は、ピニオン軸54が挿入される支持孔651a、551a(ピニオン軸挿入孔)を有している。
ピニオン軸54は、段付きピニオンギア53(ピニオンギア)を回転可能に支持する。
デフケース60は、シャフト61(傘歯車軸)が挿入される軸孔60a、60b(かさ歯車軸挿入孔)を有する。
シャフト61は、一対のかさ歯車62A、62B(傘歯車)を回転可能に支持する。
軸孔60aと軸孔60bとを貫通する直線(軸線Y)が、複数の支持孔651aと、周方向におけるオーバーラップを避けて設定されている。
シャフト61が複数の支持孔651aを結ぶ仮想円Im(円)の中心を通る。
【0093】
動力伝達装置1の組み付け時には、シャフト61を、回転軸Xに直交する軸線Y方向から、デフケース60の軸孔60a、60bに挿入する。
遊星減速ギア5のピニオン軸54は、回転軸X周りの周方向に複数設けられており、ピニオン軸54の支持孔651a、551aは、回転軸X周りの周方向で、ピニオン軸54と同数設けられている。
そのため、回転軸Xの径方向から見た動力伝達装置1の断面図において、支持孔651a、551a(ピニオン軸挿入孔)を延長した延長線(軸線X1)と、軸孔60a、60b(傘歯車軸挿入孔)を延長した延長線(軸線Y)と、が交差する(ぶつかる)ような配置とすると、以下のような問題が生じることがある。
【0094】
すなわち、回転軸X方向から見て、軸線X1と軸線Yとが交差する位置関係で、支持孔651a、551aと、軸孔60a、60bの位置が決められていると、デフケース60において、支持孔651aを持つ側板部651の位置と、軸孔60a、60bの位置を、回転軸X方向で離す必要がある。
【0095】
回転軸X方向における支持孔651aの位置と、軸孔60a、60bの位置とが、回転軸Xの径方向から見て重なるような位置関係に設定されていると、シャフト61の軸孔60a、60bへの挿入に支障が生じるからである。
そのため、ピニオン軸54を、対応する軸孔60a、60bに挿入する都合上、回転軸X方向で、軸孔60a、60bを、支持孔651aから離して配置する必要がある。そうすると、動力伝達装置1が回転軸X方向にサイズアップしてしまう。
【0096】
そこで、上記のとおり、2つの延長線(軸線X1、Y)が交差しないようにする。すなわち、回転軸X方向から見て、軸線X1と軸線Yとが交差しない位置関係で、支持孔651a、551aと、軸孔60a、60bの位置を決定する。
これにより、シャフト61が挿入される軸孔60a、60bの位置を、回転軸X方向でピニオン軸54に近づけた奥側(モータ2側)に押し込むことができる。
その結果、軸孔60a、60bを貫通する直線(軸線Y)が、複数の支持孔651aと、回転軸X周りの周方向においてオーバーラップする配置となり、動力伝達装置1の回転軸X方向のサイズダウンが可能となる。
【0097】
なお、複数のかさ歯車のそれぞれに、シャフト61に相当するピン(傘歯車軸)を設けることも考えられる。そうすると、デフケース60におけるピンの支持位置が、一か所だけとなり、かさ歯車の回転が不安定となる。
本実施形態にかかる動力伝達装置1のように、一対のかさ歯車62A、62Bを支持するシャフト61(傘歯車軸)が、複数の支持孔651a(ピニオン軸挿入孔)を結ぶ仮想円Im(円)の中心を通る位置(回転軸Xと交差する位置)に配置することで、デフケース60におけるシャフト61の支持を安定させて、シャフト61で支持されたかさ歯車62A、62Bの安定的な回転を得ることができる。
【0098】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)回転軸X方向から見て、シャフト61の軸孔60a、60bを貫通する直線(軸線Y)が、回転軸X周りの周方向で所定間隔で配置された複数の支持孔651aのうちの一の支持孔651aの隣の領域と、他の一の支持孔651aの隣の領域とを通る。
一の支持孔651aの隣の領域は、図3の(a)において軸線Yの左側で、上側に位置するピニオン軸54の支持孔651aから見て、シャフト61側(図中、右側)の領域である。
他の支持孔651aの隣の領域は、図3の(a)において軸線Yの左側で、下側に位置するピニオン軸54の支持孔651aから見て、シャフト61側(図中、右側)の領域である。
【0099】
一対のかさ歯車62A、62Bを支持するシャフト61を、回転軸X方向から見て、何れの支持孔651aとも交差させることなく、デフケース60で支持させることができる。
これにより、デフケース60を、段付きピニオンギア53の小径歯車部532の内径側に挿入して、モータ2に近づけて配置することができる。これにより、動力伝達装置1の回転軸X方向のサイズダウンが可能となる。
【0100】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)回転軸X方向から見て、シャフト61の軸孔60a、60bを貫通する直線(軸線Y)が、ピニオン軸54の支持孔651aの何れとも交差しないように、シャフト61の軸孔60a、60bの位置が設定されている。
【0101】
このように構成すると、デフケース60において支持孔651aを持つ側板部651を、軸孔60a、60bを囲むボス部605と干渉しない位置に配置できる。
すなわち、軸孔60a、60bの位置と、側板部651の位置を、図3の(a)に示すように、回転軸X周りの周方向で離すことができる。
これにより、デフケース60において、側板部651の位置と、軸孔60a、60bの位置を、回転軸X方向(図2における、左右方向)で同じ位置に配置できる。これにより、図3の(b)に示すように、デフケース60のモータ2側(図中、右側)の領域を、段付きピニオンギア53の小径歯車部532の内径側(回転軸X)側に挿入して、モータ2に近づけて配置することができる。
【0102】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(4)キャリア55とデフケース60とが一体に形成されている。
【0103】
このように構成すると、キャリア55の剛性と強度を高めることができる。
【0104】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(5)遊星減速ギア5の上流にモータ2が接続されている。
差動装置6の下流に、モータ2の内周を貫通して配置されるドライブシャフト8Bが接続されている。
【0105】
このように構成すると、縦方向(重力方向)にダウンサイジングが可能である。
【0106】
ここで、本明細書における用語「下流に接続」とは、上流に配置された部品から下流に配置された部品へと動力が伝達される接続関係にあることを意味する。
例えば、モータ2の下流に接続された遊星減速ギア5という場合は、モータ2から遊星減速ギア5へと動力が伝達されることを意味する。
また、本明細書における用語「直接接続」とは、他の減速機構、増速機構、変速機構などの減速比が変換される部材を介さずに部材同士が動力伝達可能に接続されていることを意味する。
【0107】
前記した実施形態では、段付きピニオンギア53を採用した遊星減速ギア5を例示したが、段付きでないピニオンギアを採用した遊星減速ギアを採用しても良い。
【0108】
なお、モータ2の出力部(モータシャフト20)と遊星減速ギア5の入力部(サンギア51)との連結態様は、前記した実施形態のものに限定されない。
モータ2の出力部(モータシャフト20)と遊星減速ギア5の入力部(サンギア51)との連結態様は、別のギア部品などを介して回転伝達可能に連結した構成としても良い。
【0109】
さらに、実施形態では、減速機構が、段付きピニオンギア53を備える遊星減速ギア5であり、モータ2の出力回転の伝達経路上に、ひとつの遊星減速ギア5が設けられている場合を例示した。
本発明は、この態様にのみに限定されない。モータ2の出力回転の伝達経路上に、複数の遊星減速ギアが直列に配置されている構成としても良い。
【0110】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
図1
図2
図3
図4
図5