(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20221212BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/26 J
H01L21/265 602B
(21)【出願番号】P 2017138101
(22)【出願日】2017-07-14
【審査請求日】2020-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩志
(72)【発明者】
【氏名】西出 信彦
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】松永 稔
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-161616(JP,A)
【文献】特開2001-013583(JP,A)
【文献】特開平07-221944(JP,A)
【文献】特開2002-064069(JP,A)
【文献】特開2001-269789(JP,A)
【文献】特表2015-516688(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026540(WO,A1)
【文献】特開2006-278802(JP,A)
【文献】特開2003-264157(JP,A)
【文献】特開2003-282436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/26-21/268, H01L21/42-21-428
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
互いに平行となるように配列された複数の棒状ランプが前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、
前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、
を備え、
前記チャンバーには、前記光照射部から出射された前記フラッシュ光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、
前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、
前記光拡散板には、傾斜面を有する複数の溝が
直線状に形設され
、
前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられ、
前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
互いに平行となるように配列された複数の棒状ランプが前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、
前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、
を備え、
前記チャンバーには、前記光照射部から出射された前記フラッシュ光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、
前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、
前記光拡散板には、曲面を有する複数の溝が
直線状に形設され
、
前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板に外側に向かう方向に屈折するように設けられ、
前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
互いに平行となるように配列された複数の棒状ランプが前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、
前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも大きな円環形状を有する光拡散板と、
を備え、
前記チャンバーには、前記光照射部から出射された光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、
前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、
前記光拡散板には、傾斜面を有する複数の溝が
直線状に形設され、
前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された前記フラッシュ光の一部が前記基板の周縁部に向けて拡散されるように形設され
、
前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に光を照射する光照射部と、
前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、
を備え、
前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように設けられ、
前記光拡散板には、複数の凹状の錐体が前記光照射部側に形設され、
前記複数の凹状の錐体は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に光を照射する光照射部と、
前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、
を備え、
前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように設けられ、
前記光拡散板には、複数の凸状の錐体が前記光照射部側に形設され、
前記複数の凸状の錐体は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
このようなフラッシュランプを使用した熱処理装置においては、半導体ウェハーの面積よりも相当に大きな領域に複数のフラッシュランプを配置しているのであるが、それにもかかわらず、半導体ウェハーの周縁部の照度が中央部の照度よりも低くなる傾向が認められる。その結果、照度の面内分布が不均一となって温度分布にもバラツキが生じることとなる。
【0006】
このような照度分布の不均一を解消するために、複数のフラッシュランプのパワーバランス、個々のランプの発光密度、ランプレイアウト、リフレクタ等を工夫することによって、半導体ウェハーの面内における照度分布を可能な限り均一になるように調整していた。しかし、これらの工夫は多くの部品や設定値を調整する必要があり、要求水準を満たす照度分布の面内均一性を得る作業は極めて困難であった。また、近年、照度分布の均一性に対する要求水準はますます高くなってきており、上述のような工夫による調整はさらに困難なものとなってきている。
【0007】
比較的に簡易に照度分布の面内均一性を向上させる手法として、特許文献1には、フラッシュランプと半導体ウェハーとの間に半導体ウェハーよりも小さな照度調整板を設置することが開示されている。照度調整板によって半導体ウェハーの中央部に到達する光の光量を低下させることにより、照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、照度調整板によって半導体ウェハーの中央部に到達する光の光量を低下させているため、フラッシュランプから放射されたフラッシュ光の一部が無駄に消費されることとなっていた。そのため、フラッシュ光のエネルギー効率が低下するという問題が生じていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放射された光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、を備え、前記チャンバーには、前記光照射部から出射された前記フラッシュ光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、前記光拡散板には、傾斜面を有する複数の溝が形設され、前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項1の発明は、前記複数の溝は直線状に形設されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項1の発明は、前記光照射部は、互いに平行となるように配列される複数の棒状ランプを含み、前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、互いに平行となるように配列された複数の棒状ランプが前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、を備え、前記チャンバーには、前記光照射部から出射された前記フラッシュ光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、前記光拡散板には、曲面を有する複数の溝が直線状に形設され、前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられ、前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、互いに平行となるように配列された複数の棒状ランプが前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の照射時間であるフラッシュ光を照射する光照射部と、前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも大きな円環形状を有する光拡散板と、を備え、前記チャンバーには、前記光照射部から出射された前記フラッシュ光を前記チャンバー内に透過するチャンバー窓が装着され、前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように、前記チャンバー窓に載置され、前記光拡散板には、傾斜面を有する複数の溝が直線状に形設され、前記複数の溝は、前記光拡散板に照射された前記フラッシュ光の一部が前記基板の周縁部に向けて拡散されるように形設され、前記複数の棒状ランプの長手方向と前記複数の溝の長手方向とが平行となることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に光を照射する光照射部と、前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、を備え、前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように設けられ、前記光拡散板には、複数の凹状の錐体が前記光照射部側に形設され、前記複数の凹状の錐体は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記チャンバーの一方側に設けられ、前記保持部に保持された前記基板に光を照射する光照射部と、前記保持部と前記光照射部との間に設けられ、前記基板よりも小さな平面サイズを有する光拡散板と、を備え、前記光拡散板は、前記光拡散板の中心軸と前記保持部に保持された前記基板の中心軸とが一致するように設けられ、前記光拡散板には、複数の凸状の錐体が前記光照射部側に形設され、前記複数の凸状の錐体は、前記光拡散板に照射された光が前記光拡散板の外側に向かう方向に屈折するように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、傾斜面を有する複数の溝が形設された光拡散板を中心軸が基板の中心軸と一致するように保持部と光照射部との間に設けるため、光拡散板に入射したフラッシュ光の一部は基板の周縁部に向けて拡散され、光照射部から放射されたフラッシュ光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、曲面を有する複数の溝が形設された光拡散板を中心軸が基板の中心軸と一致するように保持部と光照射部との間に設けるため、光拡散板に入射したフラッシュ光の一部は基板の周縁部に向けて拡散され、光照射部から放射されたフラッシュ光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、傾斜面を有する複数の溝が形設された円環形状の光拡散板を中心軸が基板の中心軸と一致するように保持部と光照射部との間に設けるため、光拡散板に入射したフラッシュ光の一部は基板の周縁部に向けて拡散され、光照射部から放射されたフラッシュ光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、複数の凹状の錐体が形設された光拡散板を中心軸が基板の中心軸と一致するように保持部と光照射部との間に設けるため、光拡散板に入射した光の一部は基板の周縁部に向けて拡散され、光照射部から放射された光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、複数の凸状の錐体が形設された光拡散板を中心軸が基板の中心軸と一致するように保持部と光照射部との間に設けるため、光拡散板に入射した光の一部は基板の周縁部に向けて拡散され、光照射部から放射された光を無駄に消費することなく、基板上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】第1実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図10】
図8の光拡散板の一部を拡大した断面図である。
【
図11】フラッシュランプから放射された光の光路を模式的に示す図である。
【
図12】第2実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図13】第2実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図14】第3実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図15】第4実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図16】第5実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図17】第6実施形態の光拡散板の一部を示す斜視図である。
【
図18】第7実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図19】第8実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図20】第8実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図21】第8実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図22】第9実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図23】第9実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【
図24】第9実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0026】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0027】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0028】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0029】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0030】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0031】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0032】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0033】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0034】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0035】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0036】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0037】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0038】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0039】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0040】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0041】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0042】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0043】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0044】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0045】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0046】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0047】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0048】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0049】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0050】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0051】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0052】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0053】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0054】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0055】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0056】
図1に示すように、上側チャンバー窓63の上面には光拡散板90が設置されている。
図8は、第1実施形態の光拡散板90の全体外観を示す斜視図である。また、
図9は、光拡散板90の断面図である。第1実施形態の光拡散板90は、円板形状の石英板の上面に多数の溝91を形設して構成される。すなわち、光拡散板90は全体が石英にて形成されている。円板形状の光拡散板90の径は処理対象となる半導体ウェハーWの径よりも短い(本実施形態ではφ200mm)。従って、光拡散板90の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。
【0057】
図10は、光拡散板90の一部を拡大した断面図である。光拡散板90の上面には複数の溝91が互いに平行となるように直線状に形設されている。それぞれの溝91は傾斜面(テーパ面)92を有する。傾斜面92と光拡散板90の底面とのなす角度(以降、傾斜面の傾斜角度と称する)αは45°である。また、複数の溝91を形設する間隔であるピッチpは4mmである。さらに、傾斜面の高さhは3mmである。
【0058】
図8,9に示すように、光拡散板90の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝91の傾斜面92の向きが反対となる。
図9に示すように、複数の溝91の傾斜面92のそれぞれは、上方から光拡散板90に照射された光が光拡散板90の外側に向かう方向に屈折するように設けられている。
【0059】
光拡散板90は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63上に載置される。光拡散板90の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さいため、光拡散板90は半導体ウェハーWの中央部と対向するように設置されることとなる。また、本実施形態では、複数のフラッシュランプFLと複数の溝91とが平行となるように光拡散板90が設置される。
【0060】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0061】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0062】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0063】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0064】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0065】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0066】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0067】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0068】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0069】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0070】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、基板Wの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0071】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0072】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0073】
図11は、フラッシュランプFLから放射された光の光路を模式的に示す図である。上側チャンバー窓63の上面には、その中心軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの中心軸CXと一致するように光拡散板90が載置されている。光拡散板90の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。光拡散板90には傾斜面92を有する複数の溝91が形設されている。
【0074】
フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板90の側方を通過した光(主として30本のフラッシュランプFLの配列の中央部より外側のフラッシュランプFLから出射された光)は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板90に入射した光(主として30本のフラッシュランプFLの配列の中央部のフラッシュランプFLから出射された光)は、複数の溝91の傾斜面92によって屈折される。
図8,9に示したように、光拡散板90の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝91の傾斜面92の向きが反対となる。その結果、
図9および
図11に示すように、ランプ配列の中央付近のフラッシュランプFLから放射されて光拡散板90に入射したフラッシュ光の一部は光拡散板90よりも外側に向けて、すなわち半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散されることとなる。そして、光拡散板90よりも外側に向けて拡散したフラッシュ光の光量分だけ半導体ウェハーWの中央部に向かうフラッシュ光の光量が低下する。このため、光拡散板90を設けずにフラッシュ光を照射したときには相対的に照度が高くなる傾向が認められる半導体ウェハーWの中央部に照射される光の光量が減少するとともに、逆に照度が低くなる半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加し、半導体ウェハーWの面内全体に均一にフラッシュ光が照射されることとなる。よって、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性が向上し、表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0075】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0076】
第1実施形態においては、傾斜面92を有する複数の溝91を形設した光拡散板90をフラッシュランプFLと半導体ウェハーWとの間に配置している。半導体ウェハーWよりも小さい光拡散板90は半導体ウェハーWの中央部と対向するように設置される。フラッシュランプFLから放射されて光拡散板90に入射したフラッシュ光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散されるため、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少する。その結果、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0077】
また、複数の溝91を形設した光拡散板90によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることはなく、半導体ウェハーWの全面に有効に照射されることとなる。
【0078】
なお、光拡散板90に入射したフラッシュ光を半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散させるだけであれば、傾斜面92を有する1本の溝91を光拡散板90に形設すれば足りるようにも思われる。しかし、溝91を1本とした場合には、溝91を含む光拡散板90の厚さが非常に大きくなり、フラッシュ加熱部5と上側チャンバー窓63との間に光拡散板90を設置することが困難となる(或いは、フラッシュ加熱部5とチャンバー6との設置間隔を大きくする必要がある)。第1実施形態では、傾斜面92を有する複数の溝91を光拡散板90に形設しているため、光拡散板90の厚さを過度に大きくすることなく、入射したフラッシュ光を半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散させることができる。また、光拡散板90に複数の溝91を形設することにより、比較的広範囲にわたってフラッシュ光を拡散させることができる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第2実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0080】
図12および
図13は、第2実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。
図12に示す光拡散板280は、円板形状の石英板の上面に傾斜面282を有する複数の溝281を形設して構成される。光拡散板280の上面には複数の溝281が互いに平行となるように直線状に形設されている。
図12に示す光拡散板280における、傾斜面282の傾斜角度αは30°である。第1実施形態の光拡散板90と同様に、光拡散板280の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝281の傾斜面282の向きは反対となる。
【0081】
一方、
図13に示す光拡散板290は、円板形状の石英板の上面に傾斜面292を有する複数の溝291を形設して構成される。光拡散板290の上面には複数の溝291が互いに平行となるように直線状に形設されている。
図13に示す光拡散板290における、傾斜面292の傾斜角度αは15°である。第1実施形態の光拡散板90と同様に、光拡散板290の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝291の傾斜面292の向きは反対となる。
【0082】
円板形状の光拡散板280および光拡散板290の径は半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板280,290の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。また、光拡散板280および光拡散板290は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。また、第1実施形態と同じく、複数のフラッシュランプFLと複数の溝281,291とが平行となるように光拡散板280および光拡散板290がそれぞれ設置される。
【0083】
第2実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板280,290の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板280,290に入射した光は傾斜面282,292によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。その結果、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。但し、第2実施形態においては、傾斜面282,292の傾斜角度αが第1実施形態よりも小さいため、傾斜面282,292によって拡散されるフラッシュ光の角度が第1実施形態とは異なる。その結果、光拡散板280,290によるフラッシュ光の拡散範囲も第1実施形態とは異なることとなる。
【0084】
また、光拡散板280,290によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0085】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第3実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0086】
図14は、第3実施形態の光拡散板390の全体外観を示す斜視図である。第3実施形態の光拡散板390は、円板形状の石英板の上面に傾斜面を有する複数の溝391を形設して構成される。円板形状の光拡散板390の径は半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板390の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。また、光拡散板390は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。
【0087】
第3実施形態においては、光拡散板390の上面に傾斜面を有する複数の溝391が同心円状に形設される。光拡散板390における、複数の溝391の傾斜面の傾斜角度は適宜の値とすることができる。また、複数の溝391の傾斜面の向きは、上方から光拡散板390に照射された光が光拡散板390の外側に向かう方向に屈折する向きとされる。
【0088】
第3実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板390の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板390に入射した光は溝391の傾斜面によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。その結果、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0089】
また、光拡散板390によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0090】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第4実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0091】
図15は、第4実施形態の光拡散板490の全体外観を示す斜視図である。第4実施形態の光拡散板490は、円板形状の石英板の上面に傾斜面を有する複数の溝491を形設して構成される。円板形状の光拡散板490の径は半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板490の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。また、光拡散板490は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。
【0092】
第4実施形態においては、光拡散板490の上面に傾斜面を有する複数の溝491が互いに平行となるように直線状に形設される。光拡散板490における、複数の溝491の傾斜面の傾斜角度は適宜の値とすることができる。但し、第4実施形態においては、複数の溝491の傾斜面の向きが第1実施形態とは逆になっている。従って、第4実施形態の光拡散板490においては、上方から照射された光は、複数の溝491の傾斜面で屈折された直後は光拡散板490の内側に向かうものの、光拡散板490の下面からの距離が大きくなるにつれて第1実施形態と同様に光拡散板490の外側に向かうこととなる。すなわち、光拡散板490と半導体ウェハーWとの間隔を適宜に調整すれば、フラッシュランプFLから光拡散板490に入射したフラッシュ光は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散されることとなる。
【0093】
第4実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板490の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板490に入射した光は溝491の傾斜面によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。その結果、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0094】
また、光拡散板490によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0095】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第5実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第5実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0096】
図16は、第5実施形態の光拡散板590の全体外観を示す斜視図である。第5実施形態の光拡散板590は、円板形状の石英板の上面に傾斜面を有する複数の溝591を形設して構成される。円板形状の光拡散板590の径は半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板590の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。また、光拡散板590は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。
【0097】
第5実施形態においては、円板形状の光拡散板590を周方向に90°ずつ4分割した各分割領域の上面に傾斜面を有する複数の溝591が互いに平行となるように直線状に形設される。また、隣接する分割領域の上面に形設された複数の溝591がなす角度は直角である。光拡散板590における、複数の溝591の傾斜面の傾斜角度は適宜の値とすることができる。光拡散板590の各分割領域に形設された複数の溝591の傾斜面の向きは、上方から光拡散板590に照射された光が光拡散板590の外側に向かう方向に屈折する向きとされる。
【0098】
第5実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板590の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板590に入射した光は溝591の傾斜面によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。その結果、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0099】
また、光拡散板590によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0100】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第6実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第6実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0101】
図17は、第6実施形態の光拡散板690の一部を示す斜視図である。第1実施形態では平面の傾斜面92を有する複数の溝91を形設していたのに対して、第6実施形態では曲面692を有する複数の溝691を形設している。すなわち、第6実施形態の光拡散板690は、円板形状の石英板の上面に曲面692を有する複数の溝691を形設して構成される。円板形状の光拡散板690の径は半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板690の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。また、光拡散板690は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。
【0102】
第6実施形態においては、光拡散板690の上面に曲面692を有する複数の溝691が互いに平行となるように直線状に形設される。光拡散板690の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝691の曲面692の向きは反対となる。複数の溝691の曲面692のそれぞれは、上方から光拡散板690に照射された光が光拡散板690の外側に向かう方向に屈折するように設けられている。
【0103】
第6実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板690の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板690に入射した光は溝691の曲面692によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。その結果、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0104】
また、光拡散板690によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0105】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第7実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第7実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第7実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0106】
図18は、第7実施形態の光拡散板790の全体外観を示す斜視図である。第7実施形態の光拡散板790は円環形状を有する。すなわち、第7実施形態の光拡散板
790は、円環形状の石英板の上面に傾斜面を有する複数の溝791を形設して構成される。円環形状の光拡散板790の外径は半導体ウェハーWの径よりも大きい。例えば、半導体ウェハーWの径がφ300mmであれば、光拡散板790の外径はφ400mmであり、内径はφ300mmとされる。また、光拡散板790は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63の上面に載置される。
【0107】
第7実施形態においては、円環形状の光拡散板790の上面に傾斜面を有する複数の溝791が互いに平行となるように直線状に形設される。光拡散板790における、複数の溝791の傾斜面の傾斜角度は適宜の値とすることができる。また、光拡散板790の中心線を挟んで一方側と他方側とで溝791の傾斜面の向きが反対となる。
【0108】
第7実施形態においては、ランプ配列の中央付近のフラッシュランプFLから放射されて円環形状の光拡散板790の内側開口部分を通過したフラッシュ光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの上面に照射される。一方、ランプ配列の中央部よりも外側のフラッシュランプFLから放射されて光拡散板790の複数の溝791が形設された部分に入射したフラッシュ光は溝791の傾斜面によって屈折され、入射光の一部は半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散される。このため、相対的に照度が低くなる傾向が認められる半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加し、半導体ウェハーWの面内全体に均一にフラッシュ光が照射されることとなる。その結果、第1実施形態と同様に、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0109】
また、光拡散板790によって半導体ウェハーWよりも外側に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0110】
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態について説明する。第8実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第8実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第8実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0111】
図19、
図20および
図21は、第8実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。第8実施形態の光拡散板870,880,890は、矩形の石英板の上面に複数の凹状の錐体を形設して構成される。矩形の光拡散板870,880,890の全長(矩形の長辺の長さ)は処理対象となる半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板870,880,890の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。
【0112】
また、光拡散板870,880,890は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63上に載置される。光拡散板870,880,890の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さいため、光拡散板870,880,890は半導体ウェハーWの中央部と対向するように設置されることとなる。
【0113】
図19に示す光拡散板870の上面には、均等な密度にて複数の凹状の三角錐871が形設されている。
図20に示す光拡散板880の上面には、均等な密度にて複数の凹状の六角錐881が形設されている。また、
図21に示す光拡散板890の上面には、均等な密度にて複数の凹状の円錐891が形設されている。凹状の三角錐871、六角錐881および円錐891のそれぞれの錐体面は、第1実施形態の傾斜面と同様に機能する。すなわち、光拡散板870,880,890の上方から照射された光は、それぞれ凹状の三角錐871、六角錐881および円錐891の錐体面によって屈折される。
【0114】
第8実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板870,880,890の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板870,880,890に入射した光は、それぞれ凹状の三角錐871、六角錐881および円錐891の錐体面によって屈折されて発散される。光拡散板870,880,890にはそれぞれ複数の三角錐871、六角錐881および円錐891が形設されており、各錐体の錐体面によって入射したフラッシュ光が個別に発散される。その結果、光拡散板870,880,890の全体としては入射したフラッシュ光の一部を光拡散板870,880,890よりも外側に向けて、すなわち半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散させることとなる。そして、光拡散板870,880,890よりも外側に向けて拡散したフラッシュ光の光量分だけ半導体ウェハーWの中央部に向かうフラッシュ光の光量が低下する。このため、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0115】
また、複数の凹状の錐体を形設した光拡散板870,880,890によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0116】
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態について説明する。第9実施形態の熱処理装置1の全体構成は第1実施形態と概ね同じである。また、第9実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第9実施形態が第1実施形態と相違するのは、光拡散板の形態である。
【0117】
図22、
図23および
図24は、第9実施形態の光拡散板の全体外観を示す斜視図である。第9実施形態の光拡散板970,980,990は、矩形の石英板の上面に複数の凸状の錐体を形設して構成される。矩形の光拡散板970,980,990の全長は処理対象となる半導体ウェハーWの径よりも短い。従って、光拡散板970,980,990の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さい。
【0118】
また、光拡散板970,980,990は、その中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸と一致するように上側チャンバー窓63上に載置される。光拡散板970,980,990の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さいため、光拡散板970,980,990は半導体ウェハーWの中央部と対向するように設置されることとなる。
【0119】
図22に示す光拡散板970の上面には、均等な密度にて複数の凸状の三角錐971が形設されている。
図23に示す光拡散板980の上面には、均等な密度にて複数の凸状の六角錐981が形設されている。また、
図24に示す光拡散板990の上面には、均等な密度にて複数の凸状の円錐991が形設されている。凸状の三角錐971、六角錐981および円錐991のそれぞれの錐体面は、第1実施形態の傾斜面と同様に機能する。すなわち、光拡散板970,980,990の上方から照射された光は、それぞれ凸状の三角錐971、六角錐981および円錐991の錐体面によって屈折される。
【0120】
第9実施形態においても、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板970,980,990の側方を通過した光は、そのまま上側チャンバー窓63を透過して半導体ウェハーWの周縁部に照射される。一方、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光拡散板970,980,990に入射した光は、それぞれ凸状の三角錐971、六角錐981および円錐991の錐体面によって屈折されて発散される。光拡散板970,980,990にはそれぞれ複数の三角錐971、六角錐981および円錐991が形設されており、各錐体の錐体面によって入射したフラッシュ光が個別に発散される。その結果、光拡散板970,980,990の全体としては入射したフラッシュ光の一部を光拡散板970,980,990よりも外側に向けて、すなわち半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散させることとなる。そして、光拡散板970,980,990よりも外側に向けて拡散したフラッシュ光の光量分だけ半導体ウェハーWの中央部に向かうフラッシュ光の光量が低下する。このため、半導体ウェハーWの周縁部に照射される光の光量が増加する一方で中央部に照射される光の光量は減少し、半導体ウェハーW上の照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0121】
また、複数の凸状の錐体を形設した光拡散板970,980,990によって半導体ウェハーWの中央部に向かう光を周縁部に拡散させて照度分布の面内均一性を向上させているため、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光が無駄に消費されることは防止される。
【0122】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態では傾斜面92の傾斜角度αが45°とされ、第2実施形態では傾斜角度αが30°または15°とされていたが、傾斜面の傾斜角度αはこれらとは異なる角度であっても良い。サセプタ74に保持された半導体ウェハーWと光拡散板との距離や半導体ウェハーW上の照度分布等に応じて傾斜面の傾斜角度αは適宜の値とすることができる。
【0123】
また、傾斜面の傾斜角度αは固定に限定されるものではなく、1枚の光拡散板に異なる傾斜角度αの傾斜面を有する溝が形設されていても良い。具体的には、例えば、光拡散板の中央の傾斜面から周縁部の傾斜面に向けて傾斜角度αが徐々に小さくなるようにしても良い。このようにすれば、半導体ウェハーWの中心に向かう光がより強く拡散されて照度分布の面内均一性をさらに向上させることができる。
【0124】
また、光拡散板に形設される複数の溝と複数のフラッシュランプFLとの配置関係は平行に限定されるものではなく、複数の溝と複数のフラッシュランプFLとが所定の角度となるように光拡散板を設置するようにしても良い。
図9に示すように、光拡散板に入射した光は溝の長手方向とは垂直な方向に拡散される。よって、半導体ウェハーWの周縁部のうち特に照度が低くなりやすい部位に向けてフラッシュ光が拡散される溝の向きとなるように光拡散板を設置するのが好ましい。
【0125】
また、光拡散板に形設される複数の溝の本数は特に限定されるものではなく、適宜の数とすることができる。もっとも、溝の本数が過度に少なくなると、各溝の大きさが大きくなって光拡散板が厚くなり、光拡散板の設置スペースを確保できなくなるおそれがある。このため、光拡散板の厚さが過度に大きくならない程度の溝の本数とするのが好ましい。
【0126】
また、光拡散板の全面に複数の溝を設けることに限定されるものではなく、光拡散板の上面の必要な箇所のみに傾斜面(または曲面)を有する複数の溝を形設するようにしても良い。必要な箇所とは、照度が低くなりやすい半導体ウェハーWの部位に向けてフラッシュ光を拡散させることができる箇所である。
【0127】
また、第8,9実施形態において、光拡散板に形設される錐体は三角錐、六角錐または円錐に限定されるものではなく、例えば四角錐や八角錐であっても良い。すなわち、錐体の底面の形状は任意である。もっとも、光拡散板に形設される錐体が三角錐、六角錐または四角錐であれば、隣り合う錐体間の間隔を狭くして複数の錐体を高密度にて形設することが可能となる。
【0128】
また、上記各実施形態においては、光拡散板の上面に複数の溝または錐体を形設していたが、これに限定されるものではなく、光拡散板の下面に複数の溝または錐体を形設するようにしても良いし、光拡散板の上下両面に複数の溝または錐体を形設するようにしても良い。
【0129】
また、上記各実施形態においては、上側チャンバー窓63の上面に光拡散板を載置するようにしていたが、チャンバー6内の保持部7の上方に光拡散板を設置するようにしても良い。さらには、上側チャンバー窓63の上面およびチャンバー6内の双方に光拡散板を設けるようにしても良い。或いは、フラッシュ加熱部5のランプ光放射窓53の上面に光拡散板を載置するようにしても良い。要するに、保持部7とフラッシュランプFLとの間のいずれかの位置に光拡散板を設けるようにすれば良い。
【0130】
また、上側チャンバー窓63またはフラッシュ加熱部5のランプ光放射窓53に複数の溝または錐体を形設するようにしても良い。この場合、上記各実施形態の光拡散板を上側チャンバー窓63またはランプ光放射窓53に埋め込んだ形態となる。
【0131】
また、保持部7とハロゲンランプHLとの間(例えば、下側チャンバー窓64の上面)に上記各実施形態と同様の光拡散板を設置するようにしても良い。このようにすれば、ハロゲンランプHLから放射された光の一部を半導体ウェハーWの周縁部に向けて拡散させ、予備加熱時における半導体ウェハーWの照度分布の面内均一性を向上させることができる。
【0132】
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0133】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)の熱処理、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
【0134】
また、本発明に係る熱処理技術は、フラッシュランプアニール装置に限定されるものではなく、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やCVD装置などのフラッシュランプ以外の熱源の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
65 熱処理空間
74 サセプタ
75 保持プレート
77 基板支持ピン
90,280,290,390,490,590,690,790,870,880,890,970,980,990 光拡散板
91,281,291,391,491,591,691,791 溝
92,282,292 傾斜面
692 曲面
871,971 三角錐
881,981 六角錐
891,991 円錐
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー