(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】感温作動パネル
(51)【国際特許分類】
B64D 33/08 20060101AFI20221212BHJP
B64D 47/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B64D33/08
B64D47/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017213457
(22)【出願日】2017-11-06
【審査請求日】2020-10-15
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ビー.クリスマン
(72)【発明者】
【氏名】ジーン エー.クヴァント
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0307202(US,A1)
【文献】特開2006-168631(JP,A)
【文献】特開平03-295798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0120075(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00145487(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/08
B64D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する壁と、
前記開口上で前記壁に取り付けられたパネルと、を含み、前記パネルは、形状記憶材料(SMM)を含むとともに、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がり、前記パネルの温度の下降に応じて、前記壁に近づく方向に曲がるように構成され
ており、
前記壁は凹部領域を含んでおり、
前記パネルは、前記開口を覆うように前記凹部領域に設けられて、前記壁から離れる方向に曲がるときに前記開口を開状態にし、前記壁に近づく方向に曲がるときに前記壁の表面と面一になるように前記凹部領域内に戻って前記開口を閉状態
にし、
前記パネルは、前記壁の第1面に取り付けられている、装置であって、
前記第1面の反対側に位置する前記壁の第2面に取り付けられたライニングをさらに含み、前記ライニングは、前記ライニングと前記壁との間で流体が流れるための通路を形成している、装置。
【請求項2】
前記パネルは、流体が前記開口を通って流れるための経路を開くか、或いは広げるべく、前記壁から離れる方向に曲がる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パネルは、
前記パネルの温度が所定の閾温度を超えると、これに応答して前記壁から離れる方向に曲がるか、或いは
前記パネルの温度が所定の閾温度よりも低くなると、これに応答して前記壁に近づく方向に曲がる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記パネルは、前記開口を封止するか、或いは流体が前記開口を通って流れるための経路を狭めるべく、前記壁に近づく方向に曲がる、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
航空機の着陸ギアをさらに含み、前記装置は、前記航空機内の前記着陸ギアを少なくとも部分的に囲むように構成されている、請求項1~
4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
開口を有する壁と、
前記開口上で前記壁に取り付けられたパネルと、を含み、前記パネルは、形状記憶材料(SMM)を含むとともに、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がり、前記パネルの温度の下降に応じて、前記壁に近づく方向に曲がるように構成された装置であって、
前記パネルは、前記壁の第1面に取り付けられており、前記装置は、
前記第1面の反対側に位置する前記壁の第2面に取り付けられたライニングをさらに含み、前記ライニングは、前記ライニングと前記壁との間で流体が流れるための通路を形成している、装置。
【請求項7】
壁の開口を覆うように、前記壁の凹部領域に取り付けられたパネルを作動させる
べく、
前記パネルの温度の上昇に応答して前記パネルを第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、前記パネルを前記壁から離れる方向に曲げて前記開口を開状態にし、
前記パネルの温度の下降に応答して前記パネルを前記第2結晶相から前記第1結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げて前記凹部領域内に戻して前記壁の表面と面一とするとともに、前記開口を閉状態にする、ことを含む
、方法であって、
前記パネルは、前記壁の第1面に取り付けられており、
前記第1面の反対側に位置する前記壁の第2面には、ライニングが取り付けられて、当該ライニングと前記壁との間で流体が流れるための通路が形成されており、
前記壁の前記第1面における流体の流れにより、前記第1面の反対側の前記壁における第2圧力よりも低い第1圧力を、前記壁の前記第1面に生じさせること、及び、
前記第1圧力が前記第2圧力よりも低いことにより、前記流体が、前記開口を通って前記壁の前記第2面から前記壁の前記第1面に流れるようにすることをさらに含む、方法。
【請求項8】
前記パネルを前記壁から離れる方向に曲げることは、前記パネルの温度が所定の閾温度を超えると、これに応答して前記パネルを前記壁から離れる方向に曲げることを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記パネルを前記壁から離れる方向に曲げることは、流体が前記開口を通って流れるための経路を開くか、或いは広げることを含む、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体が、前記壁の前記第2面を流れることにより、前記壁の前記第2面を冷却する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げることは、前記パネルの温度が所定の閾温度よりも低くなると、これに応答して前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げることを含む、請求項
7~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げることは、前記パネルが前記壁の表面と面一になるように、又は、前記パネルの温度の上昇に応答して前記パネルが前記壁から離れる方向に曲がる前に前記パネルがあった位置に、前記パネルが実質的に戻るように、前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げることを含む、請求項
7~
11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、パネルの開閉のためのシステム及び方法に関し、より具体的には、温度変化に応答して自動的に開閉するパネルのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な通気パネルは、様々な状況で熱移動を調節するのに役立つ。例えば、航空機のエンジンをエンジン室内に部分的に囲んで、当該エンジンにより供給される推力を誘導するとともに、飛行中の空力抵抗を低減することが望ましい。しかしながら、場合によっては、エンジン又は他のコンポーネントにより生成された熱によりエンジン室内の温度が上がりすぎて、エンジン室内のエンジン又は他のコンポーネントや構造物が破損することがある。例えば、エンジン室が看過できないほど高温になる現象は、航空機が上昇している(例えば、高度が上がっている)間に発生しうる。したがって、エンジン室の壁に通気パネルを用いることになるかもしれない。エンジン室内の温度が高すぎる場合、エンジン室から熱を逃がすために通気パネルを開放し、エンジン室内の温度が許容レベルまで下がると、通気パネルを閉鎖してもよい。このように、通気パネルは、必要な場合に熱を流すために開放され、必要でない場合には壁の空力面を保つために閉鎖される。通気パネルを航空機内の他のキャビティ(例えば、着陸ギア室)と共に用いて、熱の流れを調節することもできる。
【0003】
このような通気パネルは、電子的に制御可能である。例えば、熱センサを対象領域又はその近くに配置して、熱センサから受信する信号に基づいて通気パネルを開閉することができる。例えば、熱センサが、閾値よりも高い温度を示す場合に通気パネルを開放し、熱センサが閾値よりも低い温度を示す場合に通気パネルを閉鎖してもよい。しかしながら、この実施態様には様々な電子ハードウェア及び/又はソフトウェアが必要であるため、コスト及び複雑性が増す。
【0004】
したがって、他の制御システムとは独立して動作する感温作動型の通気パネルが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一例においては、装置は、開口を有する壁と、前記開口上で前記壁に取り付けられたパネルとを含む。前記パネルは、形状記憶材料(SMM)を含む。また、前記パネルは、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がり、前記パネルの温度の下降に応じて、前記壁に近づく方向に曲がる。
【0006】
他の例においては、パネルを作動させるための方法が提供される。前記パネルは、壁の開口上で前記壁に取り付けられている。上記方法は、前記パネルを第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、前記パネルを前記壁から離れる方向に曲げることを含む。前記パネルは、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がる。上記方法は、前記パネルを前記第2結晶相から前記第1結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、前記パネルを前記壁に近づく方向に曲げることを、さらに含む。前記パネルは、前記パネルの温度の下降に応答して前記壁に近づく方向に曲がる。
【0007】
さらに他の例においては、航空機は、エンジンと、開口を有する壁とを含む。前記壁は、前記エンジンを少なくとも部分的に囲んでいる。上記航空機は、前記開口上で前記壁に取り付けられたパネルをさらに含む。前記パネルは、形状記憶材料(SMM)を含む。前記パネルは、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がり、前記パネルの温度の下降に応じて、前記壁に近づく方向に曲がる。
【0008】
上述した特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において個々に実現可能であり、また、他の実施形態との組み合わせも可能である。詳細については、以下の説明及び図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0009】
航空機をさらに含み、当該航空機は、エンジンと、開口を有するとともに前記エンジンを少なくとも部分的に囲む壁と、前記開口上で前記壁に取り付けられたパネルとを含む。前記パネルは、形状記憶材料(SMM)を含む。また、前記パネルは、前記パネルの温度の上昇に応答して、前記壁から離れる方向に曲がり、前記パネルの温度の下降に応じて、前記壁に近づく方向に曲がる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
例示的な実施形態に特有のものと考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施形態、並びに、好ましい使用形態、更にその目的及び内容は、添付の図面と共に本開示の例示的な実施形態についての以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【0011】
【
図1】例示的な実施形態による、例示的な装置の内面を示す図である。
【
図2】例示的な実施形態による、パネルが取り外された状態における例示的な装置の外面を示す図である。
【
図3】例示的な実施形態による、パネルが取り付けられるとともに閉位置にある、例示的な装置の外面を示す図である。
【
図4】例示的な実施形態による、開位置にある例示的な装置のパネルを示す図である。
【
図5】例示的な実施形態による、閉位置にある例示的な装置のパネルを示す図である。
【
図6】例示的な実施形態による、開位置にある例示的な装置のパネルを示す図である。
【
図7】例示的な実施形態による、閉位置にある例示的な装置のパネルを示す図である。
【
図8】例示的な実施形態による、例示的な航空機を示す概略図である。
【
図9】例示的な実施形態による、エンジン室の一部を形成する例示的な装置を示す図である。
【
図10】例示的な実施形態による、着陸ギア室の一部を形成する例示的な装置を示す図である。
【
図11】例示的な実施形態による、着陸ギア室の一部を形成する例示的な装置を示す図である。
【
図12】例示的な実施形態による、着陸ギア室の一部を形成する例示的な装置を示す図である。
【
図13】例示的な実施形態による、着陸ギア室の一部を形成する例示的な装置を示す図である。
【
図14】例示的な実施形態による、方法を示すブロック図である。
【
図15】例示的な実施形態による、他の方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例において、壁又は他の構造体における開口に感温作動パネルが取り付けられる。概して、パネルは、熱源の近く、又は、望ましくない量の熱が蓄積し易い領域の近くの壁の開口に取り付けることができる。上記壁は、航空機のエンジン室又は着陸ギア室(例えば、ホイール格納室)の一部であってもよいが、他の例も可能である。パネルが開くと、熱が、開口を通って壁の一方の表面から他方の表面へ流れることにより、壁の背後にある構造物又はコンポーネントの温度を下げることができる。パネルが閉じると、熱の流れが制限されるが、パネルは壁の空力面に一致しうる。
【0013】
パネルは、形状記憶合金又は形状記憶ポリマーなどの形状記憶材料(SMM)で形成することができる。SMMは、銅‐アルミニウム‐ニッケル合金、ニッケル‐チタン合金(例えば、ニチノール)、又は、他の種類のSMMを含みうる。パネルのSMMは、概して、温度の上昇及び/又は下降に応答して、結晶相を変化させることが可能な任意の材料を含みうる。すなわち、SMMを構成する原子は、SMMの温度に応じて、配置を異ならせることができる。一例として、ニッケルチタン合金は、高温域では単純立方構造(simple cubic structure)を形成し、低温域では体心正方構造(body-centered tetragonal structure)を形成する。結晶相におけるこのような変化により、SMMを、壁から離れる方向又はこれに近づく方向に曲げることができる。
【0014】
例えば、パネルの温度が上昇すると(例えば、閾温度を超えると)、パネルは、これに応答して、第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化することにより、壁から離れる方向に曲がる。より具体的には、パネルは、壁から離れる方向に曲がり、流体(例えば、空気)が開口を通って流れるための経路を開くか、或いは広げる。パネルの温度が下降すると(例えば、閾温度よりも低くなると)、パネルは、これに応答して、第2結晶相から第1結晶相に少なくとも部分的に変化することにより、壁に近づく方向に再び曲がる。パネルは、開口を封止するか、壁の表面と面一になるか、或いは流体が開口を通って流れるための経路を狭めるべく、壁に近づく方向に曲がる。パネルが壁に近づく方向に再び曲がることは、パネルの温度の上昇に応答して壁から離れる方向にパネルが曲がる前にパネルがあった位置に、パネルが実質的に戻ることを含みうる。
【0015】
熱移動システムの一部としてSMMを使用すると、いくつかの利点をもたらすことができる。例えば、SMMは、当該SMMの温度に基づいて、加熱された流体が壁の開口を通って流れるのを選択的に許容するように構成されているため、SMMを用いれば、ハードウェア及び/又はソフトウェアによる熱検知・制御システムが不要となりうる。このような状況においては、熱センサ、ハードウェア又はソフトウェアによる制御システム、及び、パネルを動かすためのアクチュエータが不要な場合もある。したがって、熱移動システムは、熱センサや制御システムが適切に機能することに依存しなくてもよいし、電力を消費することもない。
【0016】
以下に、添付図面を参照して本開示の実施形態をより詳細に説明する。図面は、本開示の実施形態のいくつかを示しているが、全てを示してはいない。実際、いくつかの異なる実施形態を提示しているものの、本開示に記載した実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分且つ完全なものとなるように、そして、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるために提示するものである。
【0017】
本明細書に記載の量や測定値について「約」又は「実質的に」との用語が用いられている場合、記載された特性、パラメータ、又は値を正確に達成する必要はないが、例えば、当業者に知られた許容差、測定誤差、測定精度限界、及びその他の要因などに基づくズレや変動は、その特性などにより達成しようとする効果を排除しない程度に生じてもよいという趣旨である。
【0018】
ここで
図1を参照すると、装置100は、壁102と、当該壁102における開口104と、パネル106とを含む。
図1には、壁102の表面114が示されている。表面114は、壁102の表面110の反対側に位置する。装置100は、
図3、5、及び7に示すように、概して、表面114から表面110への流体の流れにより熱を移動させるための開口104を通る経路、又は、パネル106及び表面110を含む外向き空力面のいずれかを提供するのに有用である。
【0019】
壁102は、様々な形態をとりうる。壁102は、
図8に示す航空機120のエンジン室又は着陸ギア室(例えば、ホイール格納室)の一部であってもよいし、これらを形成していてもよいが、他の例も可能である。壁102は、金属、非金属、プラスチック(例えば、炭素繊維強化プラスチック)、複合材料、ポリマーなどの材料、又は、他の固形材料で形成されてもよい。
【0020】
図1に示すように、開口104は、実質的に丸形であってもよいが、他の例も可能である。開口104は、表面114又はその近くで加熱された流体が、壁102の表面110へ流れるための経路として機能する。
図8を参照すると、例えば、航空機120のエンジン122は、動作中に熱を発生させることにより、表面114またはその近くの流体(例えば、空気)を加熱する場合がある。パネル106が「開」位置にある場合、パネル106は、加熱された流体が開口104を流れるのを許容することができる。パネル106が「閉」位置にある場合、パネル106は、流体が開口104を流れるのを制限することができる。
【0021】
パネル106は、開口104上で壁102に取り付けられる。パネル106は、例えば、当該パネル106の外縁又は周囲に沿って、接着剤又は留め具を用いて壁102に取り付けられている。パネル106は、形状記憶合金(例えば、銅‐アルミニウム‐ニッケル合金、銅‐亜鉛‐アルミニウム合金、又は、ニッケル‐チタン合金)又は形状記憶ポリマーなどの、形状記憶材料(SMM)を含んでもよいし、これらで形成されてもよい。
【0022】
パネル106は、その少なくとも一部がSMMで形成されているため、パネル106の温度の上昇に応答して壁102から離れる方向へ曲がるように構成されるとともに、パネル106の温度の下降に応答して壁102に逆に近づく方向に曲がるように構成されてもよい。
【0023】
図2には、壁102の表面110が示されている。
図2においては、開口104が見えるようにパネル106を省略している。図示のように、壁102は、パネル106が、壁102の表面110と実質的に面一となることを可能にする傾斜面を形成する層段差(ply drop offs)103を含みうる。これに代えて、壁102は、パネル106と表面110との面一の篏合に対応する直角エッジを有する加工凹部領域を含んでもよい。
【0024】
図3には、壁102の表面110と、壁102に取り付けられたパネル106とが示されている。同図には、パネル106が、閉位置にあることが示されている。パネル106は、閉位置において、壁102の表面110と面一である。装置100は、航空機120と共に用いられる場合、流体124(例えば、外気の流れ)が、図示方向に壁102上を移動するように配向されてもよい。
【0025】
図4は、開位置にあるパネル106を示す図である。装置100は、任意ではあるが、壁102の表面114に取り付けられたライニング(lining)112を含んでもよい。ライニング112は、留め具又は接着剤を用いて表面114に取り付けられているが、他の例も可能である。ライニング112は、耐熱性発泡体やこれに類似する材料、又は、壁102を構成する任意の材料で作製することができる。
【0026】
例えば、ライニング112は、チタン、ニッケル‐チタンシート素材(sheet stock)、ニチノール、ファブリックバッティング(fabric batting)、高温断熱ウール(HTIW)、アルカリ土類ケイ酸ウール(AESウール)、アルミナケイ酸ウール(ASW)、または多結晶ウール(PCW)などの材料を含みうる。いくつかの例においては、ライニング112は、チタンメッシュ、又は、吹き付け高温シリコーンメッシュで補強されたプリーツ付通路を有しうる。
【0027】
ライニング112は、流体126が、ライニング112と壁102との間を流れるための通路116を形成している。例えば、装置100により少なくとも部分的に囲まれたコンパートメント内において、熱が生成される場合がある。生成された熱は、流体126により吸収される。パネル106が、
図4に示すような開位置にある場合、加熱された流体126は、パネル106が壁102から離れる方向に動くことにより開かれる経路108を介して、通路116を通り、且つ、開口104を通って流れる。以下に詳述するように、パネル106は、温度の上昇により生じる結晶相の少なくとも部分的な変化により、壁102から離れる方向に動くように構成される。
【0028】
図4において、パネル106は、3つの留め具119A、119B、及び119Cを介して、壁102に取り付けられていることが示されているが、他の例も可能である。留め具119A~Cのうちの1つ又は複数は、パネル106を壁102に取り付けることに加えて、パネル106の応力緩和領域を提供することができる。
【0029】
留め具119A及び119Cは、パネル106の多少の動きを許容するために(例えば、応力緩和)、ショルダーボルトの形態をとることができる。他の例においては、留め具119A及び119Cは、クランプ式留め具の形態をとることができる。
【0030】
図5は、閉位置にあるパネル106を示す図である。パネル106は、閉位置において、開口104を実質的に封止することにより、流体126が流れる経路108を狭めるか、或いは実質的に排除することができる。以下に詳述するように、パネル106は、温度の下降により生じる結晶相の少なくとも部分的な変化により、壁102に近づく方向に動くように構成される。
【0031】
図6は、開位置にあるパネル106を示す別の図である。
図6において、パネル106は、4つの留め具121A、121B、121C、及び121Dを介して、壁102に取り付けられている。留め具121A~Dのうちの1つ又は複数は、パネル106を壁102に取り付けることに加えて、パネル106の応力緩和領域を提供することができる。
【0032】
留め具121A及び121Dは、パネル106の多少の動きを許容するために(例えば、応力緩和)、ショルダーボルトの形態をとることができる。他の例においては、留め具121A及び121Dは、クランプ式留め具の形態をとることができる。
【0033】
図7は、閉位置にあるパネル106を示す別の図である。
図7において、パネル106は、4つの留め具121A~Dを介して、壁102に取り付けられている。
【0034】
図8は、航空機120を示す概略図である。航空機120は、広胴型双発ジェット機の形態をとりうるが、他の例も可能である。航空機120は、装置100の1つ又は複数の例を含みうる。装置100は、航空機120の着陸ギア118をさらに含んでもよいし、航空機120のエンジン122を含んでもよい。
図9に示すように、第1の例における装置100は、航空機120のエンジン122を少なくとも部分的に囲むように構成されてもよい。
図10~13に示すように、第2の例における装置100は、航空機120の着陸ギア118を少なくとも部分的に囲むように構成されてもよい。
【0035】
図9は、少なくとも部分的にエンジン122(例えば、ジェットエンジン)を囲むエンジン室の一部を形成する装置100を示す。エンジン122は、航空機120の推力を発生させるために連携して機能する1つ又は複数のファン、コンプレッサ、燃焼器、タービン、ミキサ、又はノズルを含みうる。
図9に示す例においては、壁102が筒状の形態を有しており、エンジン122を少なくとも部分的に囲んでいる。エンジン122は、流体127(例えば、空気)を装置100の前方端に引き込み、当該流体127を装置100の後方端から排出することができる。状況によっては、エンジン122が逆噴射を行い、流体127が
図9に示す方向とは逆の方向に移動することもある。
【0036】
パネル106は、当該パネル106の位置に応じて、開口104を開放又は閉塞するように構成することができる。パネル106が開位置にある場合、壁102の内側のエンジン122によって加熱された流体は、開口104を介して壁102の外側に逃げることができる。閉位置において、パネル106は、開口104を通る流体の流れを低減、制限、又は、遮断することができるが、壁102の表面110における空力外面の一部を形成することもできる。
【0037】
図10は、着陸ギア室の一部を形成する装置100を示す背面図である。
図10に示す例においては、装置100は、航空機120の着陸ギア118を含みうる。着陸ギア118は、4つのホイール123A、123B、123C、及び123Dと、支持体123Eとを含みうる。他の例においては、着陸ギア118は、任意の数のホイールを含みうる。支持体123Eは、航空機120の他の構造的要素(図示略)に取り付けられる。
図10に示すように、壁102は、航空機120の下方で開位置にある着陸ギア用ドアの一部を形成してもよい。着陸時、1つ又は複数の着陸ギア用ドアが開き、着陸ギア118が、航空機120の下方で展開する。
【0038】
図11は、
図10に示される装置100を示す側面図である。
図11において、壁102は、着陸ギア用ドアの形態を有し、当該ドアは、航空機120の下方で下側に開いており、壁102の表面114、開口104、及び、パネル106が見えている。パネル106は、破線で示されており、当該パネル106が、
図11の視線方向に見て壁102の後ろ側にあることを示している。流体124の流れ(例えば、外気の流れ)の典型的な方向は、図示の通りである。
【0039】
図12は、
図10及び11に示される装置100を示す別の側面図である。
図12において、壁102は、着陸ギア用ドアの形態を有し、当該ドアは、航空機120の下方で下側に開いており、壁102の表面110、開口104、及び、パネル106が見えている。開口104は、破線で示されており、当該開口104が、
図12の視線方向に見てパネル106の後ろ側にあることを示している。流体124の流れ(例えば、外気の流れ)の典型的な方向は、図示の通りである。
【0040】
図13は、
図10~12に示される装置100を上から見下ろす図である。
図13において、壁102は、着陸ギア用ドアの形態を有し、当該ドアは、着陸ギア118を少なくとも部分的に囲むように閉じられている。パネル106は、破線で示されており、当該パネル106が、
図13の視線方向に見て壁102の後ろ側にあることを示している。流体124の流れ(例えば、外気の流れ)の典型的な方向は、図示の通りである。
【0041】
壁102が閉位置にあり、当該壁102が少なくとも部分的に着陸ギア118を囲んでいる場合、装置100は、表面114から表面110への流体の流れにより熱を移動させるための開口104を通る経路、又は、パネル106と表面110とを含む外向き空力面のいずれかを提供するように構成することができる。
【0042】
いくつかの例においては、本明細書で説明する装置及び/又はシステムのコンポーネントは、本明細書で説明する機能を実行するように構成されており、その際、このような動作を実現可能なように実際に構成及び組み立てがなされている。他の例においては、装置及び/又はシステムのコンポーネントは、例えば、特定の態様で操作された場合などに、本明細書で説明する機能の実行に適合するように、又は、当該機能の実行が可能なように、又は、当該機能の実行に好適なように構成することができる。
【0043】
図14は、壁の開口を覆うように、当該壁に取り付けられたパネルを作動させるための方法200を示すブロック図である。
【0044】
ブロック202において、方法200は、パネルを第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、パネルを壁から離れる方向に曲げることを含む。パネルは、パネルの温度の上昇に応答して、壁から離れる方向に曲がることができる。
【0045】
例えば、
図1、3~7、及び9~13に示すパネル106は、パネル106が、第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化することにより、壁102から離れる方向に曲がる(例えば、立ち上がる)ことができる。例えば、
図5においては、パネル106が閉位置にあることが示されている。パネルの温度が上昇すると(例えば、閾温度を超えると)、パネル106は、第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化する。より具体的には、パネル106の一部又は全部が、第1結晶相から第2結晶相に遷移することにより、当該パネルが、
図4及び6に示す開位置に移行する。
【0046】
パネル106の温度が上昇することにより、パネル106が、第1結晶相から第2結晶相に少なくとも部分的に変化する。例えば、航空機120のエンジン室内又は着陸ギア室内で生成された熱により、パネル106の温度が上昇する。結晶相の変化により、パネル106に内部応力が生じる。この結果、パネル106は、形状を変化させて壁102から離れる方向に曲がることにより、生じた応力を緩和させる。より具体的には、パネル106の温度が、例えば、100℃などの所定の閾温度を超えると、パネル106は、これに反応して壁102から離れる方向に曲がる。パネル106は、当該パネル106の一部として含まれる様々なSMMに応じて、パネル106の温度が上記と異なる閾温度を超えた場合に、これに応答して壁102から離れる方向に曲がるようにしてもよい。
【0047】
図4及び6に示すように、パネル106が壁102から離れる方向に曲がることにより、経路108が開くか、或いは経路108が広がり、流体126が、開口104を通って流れることができる。流体126は、例えば、航空機120のエンジン室又は着陸ギア室内で加熱される流体を含みうる。
【0048】
ブロック204において、方法200は、パネルを第2結晶相から第1結晶相に少なくとも部分的に変化させることにより、パネルを壁に近づく方向に曲げることを含む。パネルは、パネルの温度の下降に応答して、壁に近づく方向に曲がることができる。
【0049】
例えば、
図1、3~7、及び9~13に示すパネル106は、パネル106が、第2結晶相から第1結晶相に少なくとも部分的に変化することにより、壁102に逆に近づく方向に曲がることができる。例えば、
図4及び6においては、パネル106が開位置にあることが示されている。パネルの温度が下降すると(例えば、閾温度よりも低くなると)、パネル106は、第2結晶相から第1結晶相に少なくとも部分的に変化する。より具体的には、パネル106の一部又は全部が、第2結晶相から第1結晶相に遷移する。
【0050】
パネル106の温度が下降することにより、パネル106が、第2結晶相から第1結晶相に少なくとも部分的に変化する。パネル106が開位置にある状態では、航空機120のエンジン室内又は着陸ギア室内で生成された熱が開口104から逃げて、パネル106の温度を徐々に下げる。結晶相の変化により、パネル106に内部応力が生じる。この結果、パネル106は、形状を変化させて壁102に近づく方向に曲がることにより、生じた応力を緩和させる。より具体的には、パネル106は、当該パネル106の温度が例えば100℃などの所定閾温度よりも低くなると、これに応答して壁102に近づく方法に曲がる。パネル106は、当該パネル106の一部として含まれる様々なSMMに応じて、パネル106の温度が上記と異なる閾温度よりも低くなった場合に、これに応答して壁102に近づく方向に曲がるようにしてもよい。
【0051】
いくつかの例においては、パネルが第1結晶相から第2結晶相に変化する閾温度(例えば、105℃)は、パネルが第2結晶相から第1結晶相に変化する温度(例えば、95℃)よりも高いため、パネル106がヒステリシスを示すことがある。これは、パネル106が、より長く開位置に留まることにより、パネル106が第1結晶に逆に遷移して流体や熱の流れを制限する前に壁102の後ろ側からより多くの熱を逃がすことができるという点で、有利である。
【0052】
図3、5、7と
図4、6との比較により示されるように、パネル106が壁102に近づく方向に曲がると、経路108が封止されるか、或いは、経路108が狭められるため、開口104を通る流体126の流れが制限される。したがって、パネル106が壁102に近づく方向に曲がる際、パネル106は、壁102の表面(例えば、表面110)と面一になるように曲がるか、或いは、パネル106の温度の上昇に応答してパネル106が壁102から離れる方向に曲がる前に当該パネルがあった位置に、パネル106が実質的に戻るように曲がる。より具体的には、パネル106の温度の上昇により、パネル106は、
図5に示す閉位置から
図4に示す開位置に移行する。その後、パネル106の温度の下降により、パネル106は、
図4に示す開位置から
図5に示す閉位置に戻る。
【0053】
いくつかの例においては、流体126は、壁102の表面114に取り付けられたライニング112の通路116を流れる。
【0054】
図15は、方法200に関連させて使用可能な方法300を示すブロック図である。
【0055】
ブロック206において、方法300は、壁の第1面における流体の流れにより、壁の第1面に第1圧力を生じさせることを含む。第1圧力は、第1面の反対側の壁の第2面における第2圧力よりも低い。
【0056】
ブロック208において、方法300は、第1圧力が第2圧力よりも低いことにより、流体が、開口を通って壁の第2面から壁の第1面に流れるようにすることを、任意で含む。
【0057】
ブロック210において、方法300は、任意ではあるが、流体が壁の第2面を流れることにより、壁の第2面を冷却することを含む。
【0058】
例えば、
図4を参照すると、流体124(例えば、外気)は、パネル106上を図示の方向に流れる。流体124の流れにより、壁102の表面110と壁102の表面114との間で、ベンチュリー効果又は圧力差が生じうる。すなわち、領域131によって概ね画定されるエリアの圧力は、壁102の表面114に存在する圧力よりも低い場合がある。したがって、流体124の流れ、及び/又は、これにより生じた圧力差により、流体126が通路116に引き込まれ、結果として、開口104を介して表面114から表面110に流れる流体126の流速が増大する。なお、流体124には、当該流体124を開口104に引き込む圧力差を生成するための通路116及びライニング112は必須ではない。ベンチュリー効果又は圧力差は、単に流体124の速度を流体126の速度よりも速くするだけで、発生させることができる。
【0059】
流体126が、航空機120のエンジン室又は着陸ギア室を流動して逃げることにより、壁102の側面114、及び、エンジン室や着陸ギア室内の他の構造物やコンポーネントを冷却することができる。
【0060】
様々な有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示したものであり、全てを網羅したり、開示した態様の実施形態に限定したりすることを意図するものではない。多くの変更又は変形が当業者には明らかであろう。また、異なる有利な実施形態においては、他の有利な実施形態とは異なる効果が説明されている場合がある。選択された実施形態は、実施態様の原理及び実際の用途を説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の変形を加えた様々な実施形態のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。