IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レオナルド・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

特許7191511二相流体受動冷却システム、特に、航空電子機器等の電子機器を冷却するための二相流体受動冷却システム
<>
  • 特許-二相流体受動冷却システム、特に、航空電子機器等の電子機器を冷却するための二相流体受動冷却システム 図1
  • 特許-二相流体受動冷却システム、特に、航空電子機器等の電子機器を冷却するための二相流体受動冷却システム 図2
  • 特許-二相流体受動冷却システム、特に、航空電子機器等の電子機器を冷却するための二相流体受動冷却システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】二相流体受動冷却システム、特に、航空電子機器等の電子機器を冷却するための二相流体受動冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20221212BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20221212BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H05K7/20 R
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
F28D15/04 E
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017242747
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2018152550
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】102016000129385
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517444584
【氏名又は名称】レオナルド・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】LEONARDO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【復代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【復代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・モスカテッリ
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパオロ・ボレッリ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ロマーノ
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-261472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0181763(US,A1)
【文献】中国実用新案第2696126(CN,Y)
【文献】中国実用新案第2842735(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2010/0012300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0196633(US,A1)
【文献】特開2005-209981(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195254(WO,A1)
【文献】特開2005-061690(JP,A)
【文献】特開2001-035980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
F28D 15/02
F28D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に、電子機器が収容されるケーシングの壁を形成し、前記電子機器に対向する第1面(12a)と、前記第1面(12a)とは反対側の第2面(12b)と、を有する少なくとも1つのプレート部材(12)と、前記少なくとも1つのプレート部材(12)に形成された流体回路(14)とを備えた、航空電子機器等の電子機器を冷却するための冷却システム(10)であって、
前記流体回路(14)は、前記プレート部材(12)の第1面(12a)に形成され、第1ラビリンス通路に沿って延びる第1ダクト(14a)と、前記少なくとも1つのプレート部材の第2面(12b)に形成され、第2ラビリンス通路に沿って延びる第2ダクト(14b)とを備え、
前記少なくとも1つのプレート部材(12)は、前記第1ダクト(14a)と前記第2ダクト(14b)を互いに連通させる第1貫通孔(18)と第2貫通孔(20)とを有し、
前記流体回路(14)は、第1貫通孔(18)内に配置され、第2ダクト(14b)から第1ダクト(14a)に毛細管現象により作動流体が流れる多孔質分離要素(22)であり、作動流体は、第1ダクト(14a)において気相であり、第2ダクト(14b)において液相であり、
前記第1ラビリンス通路と前記第2ラビリンス通路は、それぞれ前記第1面(12a)と前記第2面(12b)の全体に亘って延びており、
前記第1面(12a)側には電子機器が配置されて前記第1ダクト(14a)が蒸発装置として機能し、前記第2ダクト(14b)が凝縮装置として機能して前記第2面(12b)側から外部環境に放熱させる、冷却システム。
【請求項2】
前記第1および第2貫通孔(18、20)と同様に、前記第1面(12a)と同じ面で、前記第1ダクト(14a)をシールするために、前記少なくとも1つのプレート部材(12)の前記第1面(12a)に貼り付けられる第1フィルム(16a)と、前記第1および第2貫通孔(18、20)と同様に、前記第2面(12b)と同じ面で、前記第2ダクト(14b)をシールするために、前記少なくとも1つのプレート部材(12)の第2面(12b)に貼り付けられる第2フィルム(16b)とをさらに備える、請求項1に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に請求項1の前文に記載されるように、航空電子機器等の電子機器を冷却するために使用される冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの冷却システムは、特許文献1により公知である。
【0003】
一般に、空気又は液体の冷却システムは、例えば、航空機に搭載される航空電子機器のような電子機器によって発生した熱を放散するために使用される。これらの冷却システムは、作動できるように電力を供給しなければならない構成要素(例えば、ファン、ポンプ等)を使用するという点で、アクティブシステムである。
【0004】
二相流体冷却システム、いわゆるLHP(Loop Heat Pipe)回路も知られている。これらの冷却システムは受動的システムであり、作動するために電力供給を必要としない。知られているように、LHP回路は基本的に、二相流体を含み、多孔質分離要素を介して互いに連通する第1および第2部分を有する蒸発装置を備える。タンクすなわち補償室として機能する第1部分では、流体は液相である。一方、実際の蒸発器として作用し、本体に接触し、本体から熱を受けるため、冷やされるように配置された第2部分では、流体は気相である。流体は、多孔質分離要素を通過して、毛細管現象によって蒸発装置の第1部分から第2部分へ流れた後、第2部分から導管を流れて(例えば、コイルで形成される)凝縮装置を通過して第1部分に戻り、気相から液相への変換が起こる。
【0005】
2020年から2025年に飛行する航空機は、より多くの電力を使用し、より多くの電子回路を同じ配電盤に搭載する。したがって、放熱密度は現在のものよりも高く、100W/cm程度である。したがって、サイズ、質量、エネルギー消費、安全性および信頼性の点でそれらの特性に悪影響を及ぼすことなく、現在の二相流体冷却システムよりも大きな熱量を放散可能にする、電子機器、特に航空電子機器のための冷却システムを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ヨーロッパ特許第2887788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、電子機器の最高温度を変えることなく、より高い熱量を外部環境に放散させることを可能とすると共に、電子機器の局所の最高温度を低下させることを可能にする二相流体受動冷却システムを提供することを目的とする。これにより、同一機器の電子部品の信頼性と寿命を向上させることができる。なお、放散する熱量は、短時間に放散熱量を増加する場合(通常、「電力ピーク」という)での恒温熱容量に相当する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的および他の目的は、添付の請求項1に記載された特徴を有する本発明に係る冷却システムにより達成される。
【0009】
本発明の好ましい形態は従属項に記載されており、その構成要件は、以下の実施形態の一体的で統合された部分を形成するものとみなされるべきである。
【0010】
要するに、本発明は、電子機器が内部に搭載されるケーシングの一部を形成する、少なくとも1つのプレート部材と、該プレートに設けた流体回路とを備えた二相流体受動冷却システムを提供するという考えに基づいている。各プレート部材は、電子機器に向かう(すなわち、ケーシングの内側に面する)第1面と、第1面とは反対側の(すなわち、ケーシングの外側に面する)第2面とを有する。流体回路は、前記プレート部材の第1面に形成され、第1ラビリンス(labyrinth)経路に沿って延びる第1ダクトと、前記プレート部材の第2面に形成され、第2ラビリンス経路に沿って延びる第2ダクトとを備える。前記プレート部材は、前記第1ダクトと前記第2ダクトとを互いに連通する第1貫通孔および第2貫通孔を備える。前記流体回路は、前記第1ダクトと前記第2ダクトとの間に配置される多孔質分離要素を備え、作動流体は、毛細管現象により第2ダクトから第1ダクトに流れ、第1ダクト内では気相状態、第2ダクト内では液相状態となっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の冷却システムをプレート部材の第1面から見た斜視図である。
図2】本発明の冷却システムをプレート部材の第2面から見た斜視図である。
図3図1および図2の冷却システムを示す図1のIII-III線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照すると、本発明に係る二相流体受動冷却システム(以下、単に冷却システムと記載する。)は、全体を符号10で示されている。冷却システムは、特に航空機のための航空電子機器を冷却するが、後述する説明から明らかなように、多くの他のアプリケーションで使用できる電子機器(図示せず)を冷却するために使用することを想定している。
【0013】
冷却システム10は、まず、電子機器を内部に収容するケーシングの1つの壁を形成するプレート部材12を備える。プレート部材12は、平坦な部材で構成されているのが好ましい。図示された実施形態では、プレート部材12は正方形(より一般的には長方形)である。
【0014】
プレート部材12は、作動状態において電子機器(すなわちケーシングの内面)に向かう第1面12a(図1に示す)と、第1面12aとは反対側(つまり、作動状態ではケーシングの外面に向かう)第2面12b(図2に示す)とを有する。
【0015】
プレート部材12には、作動流体として二相流体(例えば、水、アンモニア、プロピレン等)を含む流体回路14が形成されている。流体回路14は、互いに連通する第1ダクト14aと第2ダクト14bとを備える。第1ダクト14aは、プレート部材12の第1面12aに形成され、図1に示すように、第1ラビリンス経路に沿って延びている。第2ダクト14bは、プレート部材12の第2面12bに形成され、図2に示すように、第2ラビリンス経路に沿って延びている。図3に示すように、第1ダクト14aをシールするための第1フィルム16aがプレート部材12の第1面12aに貼り付けられ、同様に第2ダクト14bをシールするための第2フィルム16bがプレート部材12の第2面12bに貼り付けられている。第1および第2ダクト14a、14bに沿って延びる各ラビリンス経路は、各面12a、12bの全体に亘ってそれぞれ延び、ケーシングの温度をできるだけ均一にするようにしている。
【0016】
プレート部材12は、第1ダクト14aと第2ダクト14bとを互いに連通する第1貫通孔18と第2貫通孔20とを有する。第1ダクト14aは、第1貫通孔18から第2貫通孔20に向かう流体の流動方向に延びている。一方、第2ダクト14bは、第2貫通孔20から第1貫通孔18に向かう流体の流動方向に延びている。作動流体は、第1ダクト14aでは気相であり、第2ダクト14bでは液相である。第1貫通孔18には、作動流体が毛細管現象によって第2ダクト14bから第1ダクト14aへ流動する多孔質分離要素22が配置されている。第1面12aに向かい、多孔質分離要素22と第1フィルム16aとの間に設けられる第1貫通孔18の一部は、第1ダクト14aと共に蒸発装置として機能する。第2ダクト14bから多孔質分離要素22を介して流動する液相の作動流体は、電子機器からの放熱により蒸発する。第2ダクト14bは凝縮装置として機能し、第1ダクト14aから第2貫通孔20を介して流動する気相の作動流体から外部環境に放熱させて液相に戻る。第2面12bに向かい、多孔質分離要素22と第2フィルム16bとの間に設けた第1貫通孔18の一部は、補正チャンバとして機能し、液相の作動流体を、毛細管現象によって多孔質分離要素22を流動する前に回収する。
【0017】
図面では、1つのプレート部材12のみが図示されているが、冷却システムは、より高い熱出力を放散できるように(放散熱出力がプレート部材の表面積に比例して)、上述するように、流体回路14を備えたより多くのプレート部材12を備えることができる。
【0018】
冷却システム10は以下のように動作する。
【0019】
流体回路14の第2ダクト14b内の液相の作動流体は、毛細管現象によって多孔質分離要素22を流動し、第1ダクト14aに到達し、(第1ダクトが対向する)電子機器からの放熱により気相となる。そして、気相状態の作動流体は、第1ダクト14a内を第1貫通孔18から第2貫通孔20に流動し、第2貫通孔20から第2ダクト14bに戻る。 第2ダクト14bに沿って第2貫通孔20から第1貫通孔18に至ると、外部環境に放熱して気相から液相となり、最終的に多孔質分離要素22を通過して、再び第1ダクト14aに戻る。
【0020】
本発明に係る冷却システムは、二相流体を使用する公知の受動的冷却システムに比べて多くの利点がある。
【0021】
まず、ここで提案された冷却システムは、使用時に電子機器が収容されるケーシングの1以上の壁の厚さに形成されているので、利用可能な専用の自由空間を必要としない。
【0022】
次に、本発明の冷却システムは、製造が容易で高価ではなく、プレート部材に、第1および第2のダクトを形成するのと同様に、第1および第2ダクトに作動流体を充填するための第1および第2貫通孔を形成し、最終的に第1および第2フィルムを、(例えば、接着剤によって)プレート部材の第1および第2面にそれぞれ貼り付ける必要があるだけとなっている。
【0023】
さらに、本発明の冷却システムは、蒸発によって、温度をほぼ一定に維持してピークの放熱出力を吸収すると共に、プレート部材上の温度が均一であることにより、電子機器の最大温度が同じとなるように、(プレート部材の表面積に比例する)より高い熱出力を外部環境に放散できる。
【0024】
当然のことながら、本発明の原理は変更されないままであり、実施形態および構成上の詳細は、単に非限定的な例として説明および図示されたものとは大きく異なり得る。
【符号の説明】
【0025】
10…二相流体受動冷却システム
12…プレート部材
12a…第1面
12b…第2面
14…流体回路
14a…第1ダクト
14b…第2ダクト
16a…第1フィルム
16b…第2フィルム
18…第1貫通孔
20…第2貫通孔
22…多孔質分離要素
図1
図2
図3