(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20221212BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221212BHJP
G03B 7/00 20210101ALI20221212BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H04N5/232 960
H04N5/232 300
H04N7/18 K
G03B7/00
G03B17/00 Q
(21)【出願番号】P 2018025192
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】平野 洋
(72)【発明者】
【氏名】時岡 正樹
(72)【発明者】
【氏名】深堀 謙哉
(72)【発明者】
【氏名】小俣 岳士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 広幸
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-074451(JP,A)
【文献】特開2009-010987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 7/18
G03B 7/00
G03B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された画像からマーカーを検出するマーカー検出手段と、
前記検出されたマーカーに関連付け
られた情報に基づいて前記画像から部分画像を切り出す画像切り出し手段と、を備え
、
前記画像切り出し手段は、前記検出されたマーカーの特徴に基づいて、前記部分画像の基準座標とサイズを決定することを特徴とする
撮像装置。
【請求項2】
光学ズーム機能と電子ズーム機能を備え、
前記マーカーを含む画像は前記光学ズーム機能を用いて取得され、前記部分画像は前記電子ズーム機能を用いて提供されることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記マーカー検出手段は、予め登録された前記マーカーの検出条件に従い、前記撮像された画像から前記マーカーを検出することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像切り出し手段は、前記検出されたマーカーの位置情報、前記検出されたマーカーのサイズ情報及び前記検出されたマーカーの特徴に関連付けられた基準位置情報に基づいて、前記部分画像の基準座標を決定することを特徴とする請求項
1記載の
撮像装置。
【請求項5】
前記画像切り出し手段は、前記検出されたマーカーの位置情報、前記検出されたマーカーのサイズ情報及び前記検出されたマーカーの特徴に関連付けられた基準位置情報及びサイズ情報に基づいて、前記部分画像を切り出す範囲を決定することを特徴とする請求項
1又は
4記載の
撮像装置。
【請求項6】
ユーザが入力する前記基準位置情報及び前記サイズ情報を前記マーカーの特徴に関連付けて記憶するための情報記憶手段をさらに備えることを特徴とする請求項
5記載の
撮像装置。
【請求項7】
前記マーカーの画像を取得し、該取得されたマーカーの画像から特徴を抽出する特徴抽出手段をさらに備え、
前記情報記憶手段は、前記ユーザが入力する前記基準位置情報及び前記サイズ情報を前記抽出されたマーカーの特徴に関連付けて記憶することを特徴とする請求項
6記載の
撮像装置。
【請求項8】
撮像装置の制御方法であって、
撮像された画像からマーカーを検出するマーカー検出工程と、
前記検出されたマーカーに関連付け
られた情報に基づいて前記画像から部分画像を切り出す画像切り出し工程と、を有
し、
前記画像切り出し工程では、前記検出されたマーカーの特徴に基づいて、前記部分画像の基準座標とサイズを決定することを特徴とする
撮像装置の制御方法。
【請求項9】
撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御方法は、
撮像された画像からマーカーを検出するマーカー検出工程と、
前記検出されたマーカーに関連付け
られた情報に基づいて前記画像から部分画像を切り出す画像切り出し工程と、を有
し、
前記画像切り出し工程では、前記検出されたマーカーの特徴に基づいて、前記部分画像の基準座標とサイズを決定することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主被写体を特定するのが困難な現場で用いられる撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラやモバイル等の撮像装置では、被写体認識技術や被写体追尾技術の性能が向上し、これに伴い、例えば、顔認識技術と電子ズーム技術を用いて理想的な構図の画像を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、撮像装置の小型化も進み、撮影者の体の一部に装着して撮像可能なカメラ(ウェラブルカメラ)も普及している。さらに、ネットワーク技術の高度化に伴って撮像された映像をネットワークを介して高速ストリーミング配信するカメラも普及している。これらの技術の発展に基づいてウェラブルカメラを用いる遠隔作業システムが開発されている。この遠隔作業システムでは、例えば、作業現場で作業者が装着したウェラブルカメラが撮像した映像を、作業現場から離れた場所の作業指示者が確認し、作業指示者は作業者に対して作業指示を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した遠隔作業システムでは、作業者が作業を行うために動くとウェラブルカメラが撮像した映像の画角や撮像方向が変化するために、作業指示者は作業対象となる主被写体を特定することが困難となる。また、ウェラブルカメラが撮像した映像には多種の被写体が映り込む可能性があるため、やはり、作業指示者は作業対象となる主被写体を特定することが困難となる。その結果、遠隔作業の継続が困難となるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、主被写体を特定しやすい映像を得ることができる撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮像された画像からマーカーを検出するマーカー検出手段と、前記検出されたマーカーに関連付けられた情報に基づいて前記画像から部分画像を切り出す画像切り出し手段と、を備え、前記画像切り出し手段は、前記検出されたマーカーの特徴に基づいて、前記部分画像の基準座標とサイズを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主被写体を特定しやすい画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置としての作業者カメラを含む遠隔作業システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1における作業者カメラの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1の遠隔作業システムにおける切り出し画像の作成処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図5】マーカーと切り出し範囲の切り出し基準位置及び切り出しサイズとの関係を説明するための図である。
【
図6】画角や撮像方向が異なる複数の光学画像の各々から切り出し画像を切り出す手法を説明するための図である。
【
図7】マーカーの登録について説明するための工程図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態において作業者カメラが実行する撮像処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施の形態における課題を説明するための図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置としての作業者カメラの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態において作業者カメラが実行する画像切替処理を示すフローチャートである。
【
図12】光学画像の移動許容範囲の算出方法を説明するための図である。
【
図13】情報処理端末の画面に表示される画像が光学画像に切り替えられた状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の各実施の形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は各実施の形態に記載されている構成によって限定されることはない。まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る撮像装置としての作業者カメラを含む遠隔作業システムの構成を概略的に示す図である。
図1において、遠隔作業システム100は、作業者101が身につけるウェラブルカメラとしての作業者カメラ102と、作業者101から遠隔の地に存在する作業指示者103が使用する情報処理端末104とを備える。この遠隔作業システム100では、作業指示者103は作業者101の作業場所を直接確認することができない。また、作業者カメラ102は作業対象物が載置される作業台105を撮像しやすいように作業者101の腕や頭部等に装着され、作業台105の付近の画像を撮像する。情報処理端末104は、例えば、PCやモバイル端末であり、画像を表示するディスプレイを有する。作業者カメラ102は、Wi-Fi、3G/4G、Bluetooth(登録商標)等規格を利用する無線通信部を有し、当該無線通信部によってネットワーク106を介して情報処理端末104に画像を送信する。作業指示者103は、作業者101が装着した作業者カメラ102から送信された画像を情報処理端末104で確認しながら、作業者101に対して携帯電話や無線機等を用いて音声等で作業指示を伝える。作業台105には、作業対象物(主被写体)とマーカー107が載置されている。マーカー107は、例えば、特定の形状、色やパターンを有する物理的な目印であり、その形状等が予め作業者カメラ102に登録される。作業者101は作業対象物の中で特に注目すべき部分の近辺にマーカー107を配置する。
【0011】
図2は、
図1における作業者カメラの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図2において、作業者カメラ102は、撮像部201、記憶部202、制御部203、電源部204、外部I/F205、操作部206及び表示部207を備える。作業者カメラ102では、特に、撮像部201、記憶部202や制御部203が協働して光学ズーム機能や電子ズーム機能が実現される。撮像部201は、レンズ201A、撮像センサ201B及び絞り201Cを有する。レンズ201AはAF制御が実行される際に、駆動系(図示しない)によって移動される。記憶部202は、撮像や格納に関するユーザの設定やマーカー107の検出に用いるマーカーの検出条件を格納するメモリ等からなる。また、記憶部202は、電子ズーム機能によって得られる切り出し画像の切り出し基準位置情報や拡大倍率情報(切り出しサイズ情報)等を格納する情報記憶手段として機能する。切り出し基準位置情報や拡大倍率情報は各種マーカーの特徴(形状、色やパターン)に関連付けられて格納される。
【0012】
制御部203は、撮像部201のメカ制御や露出制御等を行って画像を撮像する。また、制御部203は、記憶部202、電源部204、外部I/F205、操作部206及び表示部207を制御する。さらに、制御部203は、記憶部202に格納されたマーカーの検出条件に従い、光学ズーム機能を用いて撮像された画像からマーカー107を検出するマーカー検出手段として機能する。また、制御部203は、検出されたマーカー107の撮像された画像における位置やサイズを取得するマーカー情報取得手段として機能する。さらに、制御部203は、検出されたマーカー107に関連付けられた切り出し基準位置情報や切り出しサイズ情報に基づいて撮像された画像から切り出し画像(部分画像)を切り出す画像切り出し手段として機能する。また、制御部203は、撮像された画像から切り出し画像を切り出すために電子ズーム機能を用いる。
【0013】
外部I/F205は外部機器と有線又は無線等で通信を行う。操作部206は作業者101や作業指示者103等のユーザから操作を受け付ける。操作部206は撮像された画像を表示する。なお、作業者カメラ102はスロット(図示しない)を有し、該スロットへはフラッシュメモリ等の記憶媒体が挿入可能であり、挿入された記憶媒体へ撮像した画像のデータを格納することもできる。
【0014】
次に、本実施の形態に係る撮像装置の制御方法として、
図1の遠隔作業システムにおける切り出し画像の作成処理について説明する。
図3は、
図1の遠隔作業システムにおける切り出し画像の作成処理を説明するためのシーケンス図である。なお、
図3の処理は、原則として、予め格納されていたプログラム等に従って制御部203が実行する。
図3において、まず、作業者101が装着している作業者カメラ102の電源をONにする(S301)。その後、起動された作業者カメラ102は起動処理を実行する(S302)。次いで、作業者カメラ102は、記憶部202に格納されているマーカーの検出条件を読み出し(ロードし)(S303)、光学ズーム機能を用いて撮像された画像からマーカーを検出するマーカー検出処理を実行する(S304)。マーカー検出処理では、テンプレートマッチング法等の公知の技術を用いてマーカーを検出する。
【0015】
マーカー検出処理においてマーカーの検出に失敗した場合、作業者カメラ102は作業台105にマーカーが載置されていないと判定し、光学ズーム機能を用いて撮像された画像をそのまま情報処理端末104へ送信する(S305)。光学ズーム機能を用いて撮像された画像は、当該画像から切り出される切り出し画像に比べて比較的広角である。以下、光学ズーム機能を用いて撮像された画像を「光学画像」と称する。
【0016】
ところで、作業者カメラ102の電源をONにする前や後に、作業者101が作業台105にマーカーを載置すると(S306)、マーカー検出処理においてマーカーの検出に成功する。このとき、制御部203は光学画像からマーカーの位置を取得し(S307)、さらに、マーカーのサイズを取得する(S308)。ここで、取得されるマーカーの位置は、光学画像におけるマーカーの左上の画素ピクセルの座標である。なお、マーカーは、上述したように、作業対象物の中で特に注目すべき部分(主被写体)の近辺に作業者101が配置する。例えば、作業対象物へ、
図4に示すように、アルファベットの文字列が付され、特に「HI」の部分に注目する場合、当該「HI」の部分の近傍へマーカー400が配置される。本実施の形態において、マーカー400には、切り出し基準位置情報として「右上端」が関連付けられ、拡大倍率情報として「7倍」が関連付けられる。
【0017】
次いで、制御部203は、記憶部202からマーカー400に関連付けられた切り出し基準位置情報を取得し(S309)、さらに、拡大倍率情報を取得する(S310)。その後、制御部203は、光学画像において切り出し画像としての切り出し範囲を決定する(S311)。具体的には、
図5に示すように、検出されたマーカー400の右上端を切り出し基準位置(基準座標)とし、水平方向にマーカー400の水平方向のサイズの7倍のサイズの範囲を切り出し範囲として決定する(図中の破線で示す矩形を参照。)。ここで、切り出し基準位置はマーカー400の位置とマーカー400の水平方向のサイズから画素ピクセルの座標として算出される。切り出し範囲の垂直方向のサイズは、例えば、作業者カメラ102のアスペクト比の設定に基づいて水平方向のサイズから算出される。なお、S309及びS310では、制御部203が特徴抽出手段として、検出されたマーカー400の特徴(形状、色やパターン)を抽出し、抽出された特徴に関連付けられた切り出し基準位置情報や拡大倍率情報を取得する。その後、決定された切り出し範囲に基づき、電子ズーム機能によって光学画像から切り出し画像が切り出され、当該切り出し画像が情報処理端末104へ送信される(S312)。
【0018】
ところで、作業者101が作業対象物に対する作業を行う際、作業者101が動くことによって光学画像の画角や撮像方向が変化する。例えば、作業者カメラ102が
図4の作業対象物を撮像する場合であっても、作業者101が動くと、
図6(A)乃至
図6(C)に示すような、互いに画角や撮像方向が異なる光学画像が撮像される。例えば、
図6(A)を基準状態とすると、
図6(B)は作業者101が作業対象物に近づいた状態を示し、
図6(C)は作業者101とともに作業者カメラ102が右を向いた状態を示す。これらの光学画像に対してS307乃至S311の処理を実行すると、いずれの光学画像からも、マーカー400の右上端を切り出し基準位置とし、マーカー400の水平方向のサイズの7倍のサイズの切り出し画像600が得られる(
図6(D))。ここで、作業対象物に対するマーカー400の相対的な位置や大きさは変わらず、また、いずれの光学画像においても同じマーカー400を基準として切り出し画像600を得ることから、いずれの光学画像からも同じ切り出し画像600が得られる。具体的には、
図6(B)に示すように、作業者101が作業対象物に近づいた場合、光学画像において作業対象物が大きく写るが、相対的にマーカー400も大きく写る。これにより、相対的にマーカー400の大きさを基準とする切り出し画像600も大きくなる。その結果、切り出し画像600に含まれる注目すべき部分(「HI」)は、
図6(A)に示す場合の切り出し画像600に含まれる注目すべき部分(「HI」)と変わらない。また、
図6(C)に示すように、作業者カメラ102が右を向いた場合、光学画像において注目すべき部分(「HI」)が移動するが、相対的にマーカー400も移動する。これにより、相対的にマーカー400を基準とする切り出し画像600も移動する。その結果、切り出し画像600に含まれる注目すべき部分(「HI」)も、
図6(A)に示す場合の切り出し画像600に含まれる注目すべき部分(「HI」)と変わらない。すなわち、作業者カメラ102によって撮像される画像の画角や撮像方向が変化しても、同じ内容の切り出し画像600を得ることができる。
【0019】
次いで、作業指示者103は送信された切り出し画像や光学画像を確認し(S313)、作業者101へ作業指示を伝える(S314)。作業指示を伝えられた作業者101は、当該作業指示に基づいて作業を行う(S315)。なお、本実施の形態では、一旦、S301において作業者カメラ102の電源がONにされると、S302乃至S315の処理が定期的に繰り返して実行される。
【0020】
図3の処理によれば、作業者カメラ102によって撮像される画像の画角や撮像方向が変化しても、同じ内容の切り出し画像600を得ることができる。その結果、同じ内容の切り出し画像600を作業指示者103へ安定して提供することができ、作業指示者103は作業対象物の注目すべき部分を特定しやすい画像を得ることができる。
【0021】
なお、本実施の形態では、切り出し基準位置情報が「右上端」であり、拡大倍率情報が「7倍」であったが、切り出し基準位置情報や拡大倍率情報はこれらに限られるものではない。さらに、切り出し基準位置がマーカー400そのものに存在していなくてもよく、例えば、マーカー400から少しオフセットされた位置が切り出し基準位置であってもよい。
【0022】
次に、本実施の形態におけるマーカーの登録処理について説明する。
図7は、作業者カメラ102において実行されるマーカー登録処理を説明するための工程図である。マーカー登録処理では、マーカーの特徴(形状、色やパターン)と切り出し基準位置情報や拡大倍率情報が関連付けられて保存される。また、作業者カメラ102がマーカーを含む画像を撮像していることがマーカー登録処理を実行する前提となる。
【0023】
例えば、
図7(A)に示すようなマーカー700を登録する場合、まず、制御部203は、
図7(B)に示すような、新規マーカー登録画面701を表示部207に表示させる。新規マーカー登録画面701は、マーカー取り込みガイド枠702を有し、作業者カメラ102が撮像した画像(光学画像)の一部がマーカー取り込みガイド枠702に表示される。
【0024】
次いで、制御部203はユーザへ、マーカー取り込みガイド枠702にマーカー700が表示されるように、作業者カメラ102の画角や撮像方向を調整することを促す。その後、マーカー取り込みガイド枠702にマーカー700が表示されると、制御部203は、さらに、
図7(C)に示すような、切り出し情報設定画面703を表示部207に表示させる。切り出し情報設定画面703は、切り出し基準位置情報を設定するための基準位置設定枠704と、拡大倍率情報を設定するための拡大倍率設定枠705とを有する。
【0025】
次いで、制御部203はユーザへ、基準位置設定枠704に切り出し基準位置情報を入力し、さらに、拡大倍率設定枠705に拡大倍率情報を入力することを施す。そして、ユーザが基準位置設定枠704へ、例えば、「左下端」を入力し、さらに、拡大倍率設定枠705へ、例えば、「10」倍を入力すると、制御部203は、マーカー取り込みガイド枠702に表示されたマーカー700の特徴を抽出する。このとき、マーカー700の特徴として、例えば、形状、色やパターンが抽出され、これらがマーカーの検出条件として記憶部202に格納される。また、制御部203は、抽出したマーカー700の特徴へ基準位置設定枠704や拡大倍率設定枠705へ入力された基準位置や拡大倍率を関連付けて記憶部202に格納する。これにより、新規なマーカーを基準位置や拡大倍率とともに作業者カメラ102へ登録することができる。
【0026】
図7の処理によれば、基準位置設定枠704や拡大倍率設定枠705に基準位置や拡大倍率を入力するだけで、表示されるマーカー700とこれらの情報を関連付けて登録することができる。これにより、新規なマーカーの登録に関するユーザの利便性を向上させることができる。
【0027】
次に、本実施の形態における撮像処理について説明する。
図8は、作業者カメラが実行する撮像処理を示すフローチャートである。この撮像処理は、例えば、
図3のS304、S305の処理を実行する際やS307乃至S312の処理を実行する際に並行して制御部203により、実行される。
【0028】
まず、制御部203は、S304と同様のマーカー検出処理を実行し、光学画像においてマーカーが検出されるか否かを判定する(S801)。マーカーが検出された場合、制御部203は、検出されたマーカーの特徴(形状、色やパターン)を解析し(S802)、シフト量取得手段として予め記憶部202に格納されているフォーカスシフト量(焦点シフト量)を取得する(S803)。フォーカスシフト量は、マーカーに合焦するフォーカス位置を基準としたときに、切り出し画像へ合焦させるための必要なレンズ201Aの移動量である。本実施の形態では、フォーカスシフト量が各種マーカーの特徴に関連付けられて予め記憶部202に格納されている。さらに、制御部203は焦点位置取得手段として、撮像部201を用いて検出されたマーカーに合焦するフォーカス位置(焦点位置)を取得する(S804)。その後、制御部203は、取得されたフォーカス位置とフォーカスシフト量に基づいて、切り出し画像へ合焦するためのレンズ201Aの移動量である最終フォーカス制御量を算出する(S805)。次いで、制御部203はレンズ制御手段として、最終フォーカス制御量に基づいてフォーカスレンズとしてのレンズ201Aを移動させる(S806)。その後、改めて画像を撮像し(S808)、本処理を終了する。一方、S801において、マーカーが検出されない場合、通常のオートフォーカス制御を実行して(S807)合焦を行った後、改めて画像を撮像し(S808)、本処理を終了する。
【0029】
図8の処理によれば、マーカーに合焦するフォーカス位置とフォーカスシフト量に基づいてレンズ201Aの移動を制御するため、切り出し画像へ確実に合焦することができる。その結果、作業指示者103へ提供される切り出し画像が鮮明となり、作業指示者103が指示に悩むのを抑制することができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。第1の実施の形態は、光学画像においてマーカーが検出された後、作業者カメラ102の撮像方向が大きく変化しない場合を想定している。しかしながら、第2の実施の形態は、光学画像においてマーカーが検出された後、作業者カメラ102の撮像方向が大きく変化する場合を想定している点で第1の実施の形態と異なる。
【0031】
第1の実施の形態における遠隔作業システム100では、作業者101が身につける作業者カメラ102が撮像した画像が、作業者101から遠隔の地に存在する作業指示者103が使用する情報処理端末104へ送信される。特に、光学ズーム機能を用いて撮像された光学画像からマーカーが検出される場合、マーカーを基準として電子ズーム機能によって切り出された切り出し画像が情報処理端末104へ送信される(
図9(A))。この切り出し画像の内容は、上述したように、作業者カメラ102によって撮像される画像の撮像方向が多少変化しても、変化しない。
【0032】
しかしながら、作業者101が移動して作業者カメラ102によって撮像される画像の画角や撮像方向が大きく変化して光学画像からマーカーが検出されなくなった場合であっても、電子ズーム機能が維持されて拡大された画像が提供され続けるおそれがある。例えば、
図9(B)に示すように、作業者101がマーカー107や作業台105に載置された作業対象物から目を反らし、壁にかけられた時計108を眺めた場合、情報処理端末104の画面には情報処理端末104の画面には時計108が大きく映し出される。また、作業者101の腕や工具等でマーカー107が作業者カメラ102から隠される場合であっても、電子ズーム機能が維持されて拡大された画像が提供され続けるおそれがある。この場合、情報処理端末104の画面には情報処理端末104の画面には作業者101の腕や工具が大きく映し出される。このように、情報処理端末104の画面に映し出される対象が急に変化するため、作業指示者103は事態を把握することができず、混乱してしまう。本実施の形態では、これに対応して、作業者101が動いて作業者カメラ102によって撮像される画像の画角や撮像方向が大きく変化してから所定の時間が経過した場合、切り出し画像ではなく光学画像を提供する。
【0033】
図10は、本実施の形態に係る撮像装置としての作業者カメラの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図10において、作業者カメラ1000は、作業者カメラ102と同様に、撮像部201、記憶部202、制御部203、電源部204、外部I/F205、操作部206及び表示部207を備える。さらに、作業者カメラ1000は、角速度センサ208及び加速度センサ209を備える。角速度センサ208は、作業者101の移動に伴う作業者カメラ1000の撮像方向の変化の角速度を検知し、制御部203へ伝達する。また、加速度センサ209は、作業者101の移動に伴う作業者カメラ1000の移動時の加速度を検知し、制御部203へ伝達する。
【0034】
次に、本実施の形態に係る撮像装置の制御方法としての画像切替処理について説明する。
図11は、本実施の形態において作業者カメラが実行する画像切替処理を示すフローチャートである。なお、
図11の処理も、原則として、予め格納されていたプログラム等に従って制御部203が実行する。
図11において、まず、作業者カメラ1000は、記憶部202に格納されているマーカーの検出条件を読み出し(ロードし)(S1101)、現時点でも、光学画像からマーカーを検出することができるか否かを判定する(S1102)。
【0035】
光学画像からマーカーを検出できたと判定される場合、
図3の切り出し画像の作成処理を実行して切り出し画像を作成する(S1103)。次いで、制御部203は許容量算出手段として、光学画像の移動許容範囲(移動許容量)を算出する(S1104)。S1104では、まず、制御部203は、マーカー107から作業者カメラ1000までの距離や作業者カメラ1000の撮像方向の情報を角速度センサ208と加速度センサ209から取得して記憶部202に保存する(
図12(A))。次いで、作業者カメラ1000の撮像方向が変化して光学画像1200が移動したときに、移動後の光学画像1200から切り出し画像1201やマーカー107がはみ出さない光学画像1200の移動量を移動許容範囲として算出する。
【0036】
例えば、
図12(B)において、二点鎖線で示すように、作業者カメラ1000の撮像方向が左へ変化したとき、移動後の光学画像1200aの右端が切り出し画像1201の右端を越えて左へ進むと切り出し画像1201が光学画像1200aからはみ出る。この場合、切り出し画像1201において移動後の光学画像1200aが一部欠落し、適切な切り出し画像1201を得られない。そこで、作業者カメラ1000の撮像方向が左へ変化したときは、マーカー107を基準とする切り出し画像1201の右端と、移動後の光学画像1200a右端が一致するまで、光学画像1200の移動を許容する。すなわち、移動前の光学画像1200の右端からマーカー107を基準とする切り出し画像1201の右端までの距離L
1が、撮像方向が左へ変化したときの光学画像の移動許容範囲となる。
【0037】
また、例えば、
図12(C)において、二点鎖線で示すように作業者カメラ1000の撮像方向が右へ変化したとき、移動後の光学画像1200bの左端がマーカー107を越えて右へ進むと、光学画像1200bからマーカー107がはみ出る。その結果、マーカー107の位置やサイズを取得することができず、マーカー107を基準として光学画像1200bから切り出し画像1201を切り出せなくなる。そこで、作業者カメラ1000の撮像方向が右へ変化したときは、マーカー107と、移動後の光学画像1200b左端が一致するまで、光学画像1200の移動を許容する。すなわち、移動前の光学画像1200の左端からマーカー107までの距離L
2が、撮像方向が右へ変化したときの光学画像の移動許容範囲となる。なお、撮像方向が上へ変化したときや撮像方向が下へ変化したときの光学画像の移動許容範囲も同様に算出する。その後、制御部203は、算出された移動許容範囲を記憶部202に格納し(S1105)、S1102に戻る。
【0038】
S1102の判定の結果、光学画像からマーカーを検出できないと判定される場合、記憶部202に移動許容範囲が格納されているか否かを判定する(S1106)。記憶部202に移動許容範囲が格納されている場合は、それまでに、S1102において「YES」と判定されていた場合、すなわち、光学画像からマーカーが検出できていた場合に他ならない。したがって、S1106において、記憶部202に移動許容範囲が格納されていると判定される場合は、作業者カメラ1000の撮像方向が変化したことにより、それまで検出できていたマーカーが光学画像から検出できなくなった場合の可能性がある。若しくは、マーカーが作業者101の腕や工具等によって作業者カメラ1000から隠されたことにより、それまで検出できていたマーカーが光学画像から検出できなくなった場合の可能性もある。この場合、S1107に進み、制御部203は、角速度センサ208や加速度センサ209の出力値として、作業者カメラ1000の撮像方向の変化の角速度や作業者カメラ1000の移動時の加速度を取得する。なお、S1106で記憶部202に移動許容範囲が格納されていないと判定される場合は、元々、光学画像からマーカーが検出できていない場合に該当するため、S1102に戻り、マーカーの検出を継続する。
【0039】
S1107に続くS1108において、制御部203は移動量取得手段として、角速度センサ208や加速度センサ209の出力値に基づいて、作業者カメラ1000の撮像方向の変化に伴う光学画像の移動量を算出する。その後、制御部203は移動量判定手段として、算出された光学画像の移動量と移動許容範囲を比較して光学画像の移動量が移動許容範囲内か否かを判定する(S1109)。S1109で光学画像の移動量が移動許容範囲内であると判定される場合は、作業者カメラ1000はマーカーをその光学画像に含むものの、マーカーが作業者101の腕や工具等によって作業者カメラ1000から隠されて検出できなくなった場合に該当する。この場合、S1102に戻り、マーカーの検出を継続する。
【0040】
S1109で光学画像の移動量が移動許容範囲外であると判定される場合は、切り出し画像1201の少なくとも一部やマーカー107が移動後の光学画像1200(a,b)からはみ出た場合である。この場合、S1110において、制御部203は経過時間取得手段として、マーカーが検出できなくなってから経過した時間を計測し、時間判定手段として、所定時間が経過したか否かを判定する(S1111)。この所定時間は、情報処理端末104の画面に映し出される対象が急に変化してから対象の急変を作業指示者103が認識して混乱し始めるまでの時間が該当する。S1101で所定時間が経過したと判定される場合、作業指示者103が混乱し始めるのを防止するために、制御部203は画像提供手段として、切り出し画像1201を光学画像1200に切り替えて情報処理端末104へ送信する(S1112)。このとき、
図13に示すように、情報処理端末104の画面には画角の広い光学画像1200が表示される。その後、制御部203は記憶部202から移動許容範囲を削除(クリア)し(S1113)、S1102へ戻る。S1101で所定時間が経過していないと判定される場合はS1102へ戻る。
【0041】
図11の処理によれば、情報処理端末104の画面に映し出される対象が急に変化しても、所定時間が経過すると、情報処理端末104には、画角の広い光学画像1200が表示される。これにより、作業指示者103は事態を把握することができ、混乱することがない。
【0042】
また、
図11の処理では、マーカーが検出されずに光学画像1200へ切り替わった後に記憶部202から移動許容範囲が削除されてS1102へ戻り、マーカーの検出を継続する。これにより、その後、マーカーが検出されてS1104が実行されて新たな移動許容範囲が算出されても、S1105において記憶部202へ円滑に新たな移動許容範囲を格納することができる。
【0043】
さらに、作業者カメラ1000の撮像方向が変化したことによってマーカーが光学画像から検出できなくなった場合であっても、その後、直ぐに作業者101がマーカー107へ視線を戻す場合がある。この場合、光学画像の移動量が移動許容範囲外と判定されたときに直ちに切り出し画像1201を光学画像1200へ切り替えると、作業者101がマーカー107へ視線を戻したときに、また、切り出し画像1201へ切り替えられる。すなわち、短時間の間に情報処理端末104の画面に映し出される画像の画角の変化が2回行われるため、却って作業指示者103を混乱させるおそれがある。これに対して、
図11の処理では、光学画像の移動量が移動許容範囲外と判定されても、所定時間が経過するまでは、切り出し画像1201を光学画像1200へ切り替えない。これにより、直ぐに作業者101がマーカー107へ視線を戻した場合、短時間の間に情報処理端末104の画面に映し出される画像の画角の変化が2回行われるのを防止することができる。その結果、作業指示者103を混乱させるおそれを無くすことができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本発明は、上述の実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークや記憶媒体を介してシステムや装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0045】
例えば、上述した各実施の形態では、作業者カメラ102が撮像した動画をストリーミング配信することを前提とするが、作業者カメラ102が周期的に静止画像を配信する場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100 遠隔作業システム
101 作業者
102,1000 作業者カメラ
103 作業指示者
104 情報処理端末
107,400,700 マーカー
201 撮像部
202 記憶部
203 制御部
600,1201 切り出し画像
701 新規マーカー登録画面
1200 光学画像