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特許7191535リアクトルコア、リアクトル及びリアクトルコアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】リアクトルコア、リアクトル及びリアクトルコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20221212BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20221212BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F27/24 K
H01F41/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018065177
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176094
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎
(72)【発明者】
【氏名】青木 庄治
(72)【発明者】
【氏名】海部 宏昌
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-54287(JP,A)
【文献】特開2001-274029(JP,A)
【文献】特開平4-165607(JP,A)
【文献】特開2008-263062(JP,A)
【文献】特開2014-127637(JP,A)
【文献】特開2018-18902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/24
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一圧粉磁心を有し、前記第一圧粉磁心が第一方向に並べて配置され、前記第一方向の両側にそれぞれ第一端面及び第二端面を有した複数の内側コア部と、
前記第一圧粉磁心と外形寸法が対応する第二圧粉磁心を有し、前記第一方向と交差する第二方向で隣り合う前記第一端面の間、及び前記第二方向で隣り合う前記第二端面の間に渡ってそれぞれ配置された二つの外側コア部と、を備え、
前記第一圧粉磁心は、前記第一方向に長い直方体状をなし、
前記第二圧粉磁心は、前記第二方向に長い直方体状をなし、
前記第一圧粉磁心は、
前記第一方向に垂直な断面形状が、第二方向に長い長方形状をなし、
前記第二圧粉磁心は、
前記第二方向に垂直な断面形状が、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向に長い長方形状をなす
リアクトルコア。
【請求項2】
少なくとも前記第一方向で隣り合う前記第一圧粉磁心の間の複数箇所に配置されて、前記第一方向で隣り合う前記第一圧粉磁心の間に隙間を形成するギャップ材を備える請求項1に記載のリアクトルコア。
【請求項3】
前記第三方向における前記第一圧粉磁心の中心位置と、前記第二圧粉磁心の中心位置とが一致している請求項1又は2に記載のリアクトルコア。
【請求項4】
前記第一方向に並べて配置される前記第一圧粉磁心の個数は、
前記第二方向に並べて配置される前記第二圧粉磁心の個数よりも多い請求項1から3の何れか一項に記載のリアクトルコア。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のリアクトルコアと、
前記リアクトルコアの前記内側コア部周りに筒状に巻回されたコイルと、
を備えるリアクトル。
【請求項6】
前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向における前記コイルの外形寸法は、前記第三方向における前記外側コア部の外形寸法に対応した寸法とされている請求項5に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルコア、リアクトル及びリアクトルコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車に搭載されるリアクトルが記載されている。このリアクトルのリアクトルコアは、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなるI型コアと、同じく軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる端部コアとから形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-131200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリアクトルコアは、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車に用いるため、大量生産を前提とした設計になっている。このようにリアクトルコアを大量生産する場合、一つのリアクトルコアを構成するコア部品数を減らして工数を低減することが望まれる。
特許文献1の内側コア部と外側コア部とは、それぞれ異なる金型で加圧成形される。そのため、大量生産ではない場合、金型を複数種類用意することによるコストの比率が大きくなり生産性が低下する場合がある。
また、建設機械で用いられ大電流で使用されるリアクトルコアのように、大型のリアクトルコアを生産する場合、リアクトルコアを構成するコア部品である圧粉磁心が大型化してしまう。このように圧粉磁心が大型化した場合、圧粉磁心を加圧成形すること自体が困難になる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、生産性が低下することを抑制しつつ容易に成形することができるリアクトルコア、リアクトル及びリアクトルコアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るリアクトルコアは、複数の第一圧粉磁心を有し、前記第一圧粉磁心が第一方向に並べて配置され、前記第一方向の両側にそれぞれ第一端面及び第二端面を有した複数の内側コア部と、前記第一圧粉磁心と外形寸法が対応する第二圧粉磁心を有し、前記第一方向と交差する第二方向で隣り合う前記第一端面の間、及び前記第二方向で隣り合う前記第二端面の間に渡ってそれぞれ配置された一対の外側コア部と、を備え、前記第一圧粉磁心は、前記第一方向に長い直方体状をなし、前記第二圧粉磁心は、前記第二方向に長い直方体状をなし、前記第一圧粉磁心は、前記第一方向に垂直な断面形状が、第二方向に長い長方形状をなし、前記第二圧粉磁心は、前記第二方向に垂直な断面形状が、第一方向及び第二方向と交差する第三方向に長い長方形状をなす
【発明の効果】
【0007】
上記態様のリアクトルコアによれば、生産性が低下することを抑制しつつ容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る昇圧回路の回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリアクトルの平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るリアクトルコアの平面図である。
図4】上記リアクトルコアを第二方向から見た側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第一圧粉磁心を第三方向から見た平面図である。
図6】上記第一圧粉磁心を第二方向から見た側面図である。
図7図5のVII-VII線に沿う断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る第二圧粉磁心を第三方向から見た平面図である。
図9】上記第二圧粉磁心を第二方向から見た側面図である。
図10図8のX-X線に沿う断面図である。
図11】上記リアクトルコアに装着されたコイルの平面図である。
図12】上記リアクトルコアに装着されたコイルを第二方向から見た側面図である。
図13】本発明の一実施形態に係るリアクトルコアの製造方法及びリアクトルの製造方法のフローチャートである。
図14】上記コイルに内側コア部を挿入する直前の状態を示す斜視図である。
図15】上記内側コア部の第二端部に外側コア部を固定する直前の状態を示す斜視図である。
図16】本発明の一実施形態に係る金型内にコイル及びリアクトルコアを載置した状態を示す断面図である。
図17】上記金型内に射出成型により絶縁材を充填した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図1図17を参照して詳細に説明する。
<昇圧回路>
図1に示すように、本実施形態のリアクトル10は、昇圧回路100の一部を構成する。昇圧回路100は、チョッパ式の昇圧回路であり、リアクトル10と、コンデンサ11と、IGBT等のパワー半導体12とを備えている。本実施形態の昇圧回路100は、ハイブリッド油圧ショベル等に搭載された電動機を駆動するインバーターに内蔵されて、キャパシタ等の端子電圧V1をインバーターで必要な電圧V2まで昇圧する。なお、図1中、符号「13」は、還流ダイオードである。
【0010】
<リアクトル>
図2に示すように、リアクトル10は、リアクトルコア20と、コイル30と、絶縁材40と、を備えている。本実施形態のリアクトル10は、ハイブリッド油圧ショベル等に用いるリアクトルであるため、自動車等の車両に用いるリアクトルと比較して大電流が流れる。そのため、本実施形態のリアクトル10は、自動車等の車両に用いるリアクトルと比較して大型である。
【0011】
<リアクトルコア>
図3図4に示すように、リアクトルコア20は、二つの内側コア部21と、二つの外側コア部22とを備えている。以下の説明においては、第一方向を「Dx」、第一方向と交差する第二方向を「Dy」とする。第一方向Dx及び第二方向Dyに交差する第三方向を「Dz」とする。
【0012】
二つの内側コア部21は、第一方向Dxに延びている。内側コア部21は、第一方向Dxの両側に第一端面21taと第二端面21tbとを備えている。二つの内側コア部21は、第一方向Dxと交差する第二方向Dyに互いに間隔をあけて配置されている。二つの外側コア部22は、第二方向Dyに延び、第一方向Dxに互いに間隔をあけて配置されている。外側コア部22は、第二方向Dyで隣り合う第一端面21taの間に渡って配置されるとともに、第二方向Dyで隣り合う第二端面21tbの間に渡って配置されている。
リアクトルコア20は、これら二つの内側コア部21と二つの外側コア部22とによって環状を成している。
【0013】
内側コア部21は、複数の第一圧粉磁心23と、複数のギャップ材24とを有している。図3に示す内側コア部21は、内側コア部21一つ当たり、三つの第一圧粉磁心23と、四つのギャップ材24とを有している。
【0014】
複数の第一圧粉磁心23は、第一方向Dxに並べて配置されている。第一圧粉磁心23は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形して形成されている。複数の第一圧粉磁心23は、同一の型材、又は同一形状の複数の型材を用いてそれぞれ形成されている。原料粉末に含まれる軟磁性粉末としては、例えば、軟磁性材料である様々な合金や純鉄等の粉末を用いることができる。
【0015】
図5から図7に示すように、第一圧粉磁心23は、実質的に直方体をなしている。第一圧粉磁心23は、第一方向Dxに長い直方体をなしている。第一圧粉磁心23は、六つの平面である第一平面23aから第六平面23fを有している。第一平面23aと第二平面23bとは、実質的に平行に形成されて第三方向Dzと垂直な方向に広がる。第三平面23cと第四平面23dとは、互いに平行に形成されて第二方向Dyと垂直な方向に広がる。第五平面23eと第六平面23fとは、互いに平行に形成されて第一方向Dxと垂直な方向に広がる。第五平面23eと第六平面23fとは、第一方向Dxにおける第一圧粉磁心23の二つの端面23tを構成する。
【0016】
第一方向Dx方向に延びる第一圧粉磁心23の四つの角部23g,23h,23i,23jは、それぞれ面取りの如く外側に凸となる曲面状に形成されている。そのため、第一圧粉磁心23の第一方向Dxに垂直な断面形状(図7参照)は、第五平面23e及び第六平面23fと同じ、四つの角部が面取りの如く円弧状に形成された長方形をなしている。図5図6に示すように、第一圧粉磁心23の外形寸法は、第一方向Dxの長さを「X」、第二方向Dyの長さを「Y」、第三方向Dzの長さを「Z」とすると、Z<Y<Xの関係になっている。
【0017】
図4に示すように、一つの内側コア部21において、第一方向Dxで並んで配置された三つの第一圧粉磁心23は、それぞれの第一平面23aが面一に配置されるとともに、それぞれの第二平面23bが面一に配置されている。同様に、図3に示すように、一つの内側コア部21において、第一方向Dxで並んで配置された三つの第一圧粉磁心23は、それぞれの第三平面23cが面一に配置されるとともに、第四平面23dが面一に配置されている。
【0018】
図3図4に示すように、第一方向Dxで隣り合う第一圧粉磁心23の第五平面23eと第六平面23fとの間にはギャップ材24が配置されている。第五平面23eとギャップ材24、及び、第六平面23fとギャップ材24は、それぞれ接着等により固定されている。ギャップ材24は、第一方向Dxで隣り合う第一圧粉磁心23の間に所定の間隙を形成するスペーサである。ギャップ材24は、例えば、セラミックス、酸化アルミニウム(アルミナ)、合成樹脂等、絶縁性や耐熱性等に優れた非磁性材料で形成されている。ギャップ材24は、平板状に形成されるとともに、平面視において、第一圧粉磁心23の端面23tである第五平面23e及び第六平面23fの形状と同一か又は僅かに小さい外形を有している。
【0019】
本実施形態で例示するリアクトルコア20は、内側コア部21の第二端面21tbである第五平面23eと外側コア部22との間、及び、内側コア部21の第一端面21taである第六平面23fと外側コア部22との間に、それぞれギャップ材24が配置されている。
【0020】
ギャップ材24により形成されるリアクトルコア20の総ギャップ長は、例えば、リアクトルコア20の飽和電流値、コイル30に流す電流の最大値等の条件に応じて算出できる。総ギャップ長が一定の場合、ギャップ材24の設置枚数が多いほど、ギャップ材24一枚当たりの厚さが小さくなる。
【0021】
外側コア部22は、第二圧粉磁心26を有している。図3に示す外側コア部22は、二つの第二圧粉磁心26を有している。これら二つの第二圧粉磁心26は、第二方向Dyに並べて配置されている。第二方向Dyで隣り合う第二圧粉磁心26同士は、接着等により固定されている。これら第二方向Dyで隣り合う第二圧粉磁心26の間に、上述したギャップ材24に相当するものは配置されていない。本実施形態では、第一方向Dxに並べて配置される第一圧粉磁心23の個数(三個)が、第二方向Dyに並べて配置される第二圧粉磁心26の個数(二個)よりも多い。
【0022】
図3図4に示すように、第二圧粉磁心26は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形して形成されている。複数の第二圧粉磁心26は、第一圧粉磁心23を形成する型材と同一の型材、又は、第一圧粉磁心23を形成する型材と同一形状の別の型材を用いてそれぞれ形成されている。第二圧粉磁心26は、第一圧粉磁心23と配置される向きが異なるだけであり、第一圧粉磁心23と外形寸法が対応している。言い換えれば、第二圧粉磁心26は、第一圧粉磁心23と実質的に同一形状をなしている。本実施形態の第二圧粉磁心26を形成する原料粉末は、第一圧粉磁心23を形成する原料粉末と同じ種類の原料粉末を用いているが、異なる原料粉末を用いてもよい。
【0023】
図8から図10に示すように、第二圧粉磁心26は、第一圧粉磁心23と同様に、実質的に直方体をなしている。第二圧粉磁心26は、第二方向Dyに長い直方体をなしている。第二圧粉磁心26は、六つの平面である第一平面26aから第六平面26fを有している。第一平面26aと第二平面26bとは、互いに平行に形成されて第三方向Dzと垂直な方向に広がる。第三平面26cと第四平面26dとは、互いに平行に形成されて第二方向Dyと垂直な方向に広がる。第五平面26eと第六平面26fとは、互いに平行に形成されて第一方向Dxと垂直な方向に広がる。第三平面26cと第四平面26dとは、第二方向Dyにおける第二圧粉磁心26の二つの端面26tを構成する。
【0024】
第二方向Dyに延びる第二圧粉磁心26の四つの角部26g,26h,26i,26jは、それぞれ面取りの如く外側に凸となる曲面状に形成されている。そのため、第二圧粉磁心26の第二方向Dyに垂直な断面形状(図10参照)は、第三平面26c及び第四平面26dと同じ、四つの角部が面取りの如く円弧状に形成された長方形をなしている。
【0025】
図3に示すように、平行に配置された二つの内側コア部21の第三平面23cのうち、第二方向Dyで外側に配置された第三平面23cと、外側コア部22の一方の端面26tとが面一に配置されている。平行に配置された二つの内側コア部21の第四平面23dのうち、第二方向Dyで外側に配置された第四平面23dと、外側コア部22の他方の端面26tとが面一に配置されている。図4に示すように、第三方向Dzにおける内側コア部21の中心位置C1と外側コア部22の中心位置C2とは、一致している。
【0026】
<コイル>
図11図12に示すように、コイル30は、銅線等の線材をソレノイド状に巻回して形成されている。コイル30は、平行に並んで形成された二つの筒状部30a,30bを備えている。これら筒状部30a,30bは、電気的に直列接続され、平行配置された二つの内側コア部21にそれぞれ装着される。筒状部30a,30bの軸線Oa,Obは、それぞれ第一方向Dxに延びている。コイル30の引き出し線30c,30dは、何れも第一方向Dxにおける一方側に配置されている。筒状部30a,30bの間を渡る線材30eは、第一方向Dxで引き出し線30c,30dとは反対側に配置されている。これら二つの筒状部30a,30bは、内側コア部21をそれぞれ挿入することで、内側コア部21周りに巻回された状態となる。二つの筒状部30a,30bを構成する線材は、コイル30に通電された際に環状に形成されたリアクトルコア20内部の磁力線の向きが同一方向となる向きで巻回されている。
【0027】
図12に示すように、第三方向Dzにおけるコイル30の外形寸法Lczは、第三方向Dzにおける外側コア部22の外形寸法Lzに対応した寸法(言い換えれば、実質的に同一の寸法)とされている。第三方向Dzが上下方向となるようにコイル30を平面上に載置すると、第三方向Dzにおけるコイル30の中心Ocと、第三方向Dzにおける内側コア部21の中心位置C1と、第三方向Dzにおける外側コア部22の中心位置C2とが、実質的に同一平面上に配置される。筒状部30aと筒状部30aの内側に配置される内側コア部21との間、及び、筒状部30bと筒状部30bの内側に配置される内側コア部21との間には、それぞれ内側コア部21周りの全周に隙間Crが形成されている。
【0028】
<絶縁材>
図2に示す絶縁材40は、リアクトルコア20とコイル30との間を電気的に絶縁する。絶縁材40としては、絶縁性や耐熱性に優れた合成樹脂を用いることができる。この絶縁材40の厚さや材質は、必要となる絶縁性能や耐熱性能に応じて選定すればよい。本実施形態の絶縁材40は、リアクトルコア20の全体を覆うように形成されている。
【0029】
<リアクトルの構造条件>
図11に示すように、第一方向Dxにおける絶縁材40を除いたリアクトル10(以下、単にリアクトル10と称する)の寸法(長さ)を「Lx」、第二方向Dyにおけるリアクトル10の寸法(幅)を「Ly」とする。図12に示すように、第三方向Dzにおけるリアクトル10の寸法(高さ又は厚さ)を「Lz」とする。ギャップ材24による総ギャップ長を「t1」(図示せず)、コイル30と内側コア部21との絶縁距離である隙間Crの大きさと、コイル30の線材の線径との和を「t2」(図示せず)、第一方向Dxにおけるコイル30の長さLcxと、コイル30と外側コア部22との距離である絶縁距離rdの和(rd×2)と、の和を「t3」(図示せず)とする。さらに、第一圧粉磁心23の寸法を上述した図5から図7に示す「X」,「Y」,「Z」とすると、リアクトル10の構造条件は、以下の式で表すことができる。
Lx=2Z+3X+t1/2
Ly=2X+2t2
Lz=Y=Z+2t2
【0030】
二つの内側コア部21に巻回されたコイル30の筒状部30a,30b同士が干渉しない条件は、以下の式で表すことができる。
2X>2Y+2t2
【0031】
第一方向Dxにおける内側コア部21の長さ条件は、以下の式で表すことができる。
3X+t1/2>t3
【0032】
<リアクトルコアの製造方法、リアクトルの製造方法>
次に、図13から図17を参照しながらリアクトルコアの製造方法について説明する。
まず、同一の型材、又は、同一形状の複数の型材(何れも図示せず)を用いて、同一の軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形して、複数の第一圧粉磁心23、及び、複数の第二圧粉磁心26を形成する(ステップS01;成形工程)。上記型材によって成形された全ての圧粉磁心は、実質的に同一形状(外形寸法が対応する)となっている。そのため、型材によって成形された直後の圧粉磁心は、コア部品として第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26とに区別されない場合がある。本実施形態では、型材によって成形された直後の圧粉磁心が第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26とに区別されずに管理・保管されている。
【0033】
同一の型材や同一形状の型材を用いたとしても、第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26とには、微小な形状の違いが生じる場合がある。上記「実質的に同一形状」、「外形寸法が対応する」とは、このような微小な形状の違いが生じている場合も同一形状とみなすことを意味している。
【0034】
次に、上記圧粉磁心を組み合わせてリアクトルコア20を組み立てる(ステップS02;組立工程)。
具体的には、まず、上記型材により成形した圧粉磁心を第一圧粉磁心23として用いて、二つの内側コア部21を組み立てる。この際、第一圧粉磁心23の間にギャップ材24を挟み込んで接着等により固定する。同様に、上記型材により成形した圧粉磁心を第二圧粉磁心26として用いて、外側コア部22を組み立てる。この際、第二方向Dyで対向配置される二つの第二圧粉磁心26の端面26tの間にはギャップ材24を挟まずに、これら二つの端面26tを接着等により直接固定する。
【0035】
次いで、二つの内側コア部21と二つの外側コア部22とによりリアクトルコア20を組み立てる。このリアクトルコア20の組立途中で、コイル30を装着する。図14図15に示すように、本実施形態では、二つの内側コア部21の第二端面21tbを一つの外側コア部22に接着等により固定してU字状のコア部品Cpを形成する。図15に示すように、U字状に形成されたコア部品Cpの内側コア部21をそれぞれコイル30の二つの筒状部30a,30bに挿入する。その後、二つの内側コア部21の開放されている側の第一端面21taに、もう一つの外側コア部22の第五平面26e又は第六平面26fを接着等により固定する。
【0036】
これら内側コア部21と外側コア部22とを固定することで、コイル30が装着された二つの内側コア部21と二つの外側コア部22とにより環状に形成されたリアクトルコア20が完成する。本実施形態で説明したコイル30の装着手順は一例であって、上記手順に限られない。
【0037】
次に、絶縁材40を、リアクトルコア20とコイル30との間に充填する。
具体的には、図16図17に示すように、第三方向Dzが上下を向くようにリアクトルコア20及びコイル30を射出成型用の金型Md内に設置する。この金型Md内部の底面BSは、コイル30を下方から支持する第一支持部BS1と、リアクトルコア20の外側コア部22を下方から支持する第二支持面BS2と、を備えている。これら第一支持面BS1と、第二支持面BS2とは、第三方向Dzにおける位置が実質的に同一の平面をなしている。本実施形態における金型Mdの底面BSは、第一支持面BS1と第二支持面BS2とを含む実質的に連続する水平面とされている。
【0038】
リアクトルコア20及びコイル30を底面BS上に設置することで、外側コア部22の下方を向く面(言い換えれば、第二圧粉磁心26の第一平面26a又は第二平面26b)の位置とコイル30の下縁との位置が第三方向Dzで実質的に同一位置に配置される。そのため、上述したように、コイル30の中心Ocと、内側コア部21の中心位置C1と、外側コア部22の中心位置C2とが、実質的に同一平面上に配置される。このように中心Oc,C1,C2が実質的に同一平面上に配置されることで、筒状部30aと内側コア部21との間の隙間Cr(図12参照)が内側コア部21の中心位置C1を基準にして第三方向Dzで対称に形成される。
【0039】
次に、金型Mdを閉じて、金型Md内に加熱溶融させた絶縁材40の材料を射出し、少なくともリアクトルコア20とコイル30との隙間Crに絶縁材40の材料を充填させる(ステップS03;射出成型工程)。
本実施形態の絶縁材40は、リアクトルコア20の外面を全て覆うように形成される。図2図16図17に示すように、本実施形態の絶縁材40は、第三方向Dzから見た四隅に、取付孔形成部41を有している。これら取付孔形成部41は、リアクトル10をインバーター等のケースに固定したり、ヒートシンクを取り付けたりするための取付孔hを有している。
【0040】
図16図17において、符号「51a」は、コイル30が金型Md内で動かないように押さえる押さえ部材である。この押さえ部材51aは、コイル30を上方から押さえている。符号「51b」は、リアクトルコア20が金型Md内で動かないように押さえる押さえ部材である。これら押さえ部材51bは、外側コア部22を上方から抑えている。符号「52」は、取付孔hを形成するためのカラーである。このカラー52は、例えば、円筒状に形成されて、射出成型後に除去される。カラー52が除去されることで、取付孔形成部41に、第三方向Dzに貫通する取付孔hが形成される。
【0041】
符号「53」は、カラー押えである。カラー押え53は、カラー52を下方から支持している。符号「54」は、コイル30の引き出し線30c,30dを逃がすための溝である。本実施形態では溝54は、底面BSに形成されている。射出成型を行う際、この溝54に、引出線30c,30dが挿入される。なお、押さえ部材51a,51b、カラー52、及び、カラー押え53は、上記形状や配置に限られない。押さえ部材51a,51b、カラー52、及び、カラー押え53は、リアクトル10の仕様や金型Mdの形状等の種々条件に応じて決定すればよい。
【0042】
次に、絶縁材40を冷却、固化させ(ステップS04;冷却固化工程)、金型Mdを開放してリアクトル10を取り出す(ステップS05;離形工程)。
【0043】
<作用効果>
以上のように、本実施形態のリアクトルコア20では、複数の第一圧粉磁心23を第一方向Dxに並べて内側コア部21を形成し、第一圧粉磁心23と外形寸法が対応する第二圧粉磁心26によって外側コア部22を形成している。この場合、第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26とを、それぞれ同一型材、又は同一形状の型材によって加圧成形することができため。型材の種類が増加することによるコスト増加で生産性が低下することを抑制できる。さらに、本実施形態のリアクトルコア20では、三つの第一圧粉磁心23で内側コア部21を形成し、二つの第二圧粉磁心26で外側コア部22を形成している。そのため、リアクトルコア20を構成するコア部品が大型化することを抑制でき、専用の大型プレス装置などを用いずに容易に成形することができる。
【0044】
本実施形態の内側コア部21では、第一方向Dxで隣り合う第一圧粉磁心23の間に、それぞれギャップ材24を備えている。そのため、リアクトルコア20の複数箇所に間隙を設けることができる。この場合、リアクトルコア20に必要な総ギャップ長を、複数箇所に分散させることができるため、間隙を一カ所にだけ設ける場合と比較して、漏れ磁束を低減してリアクトル10の性能向上を図ることができる。
【0045】
本実施形態の第一圧粉磁心23は、第一方向Dxに長い直方体状をなしている。第二圧粉磁心26は、第二方向Dyに長い直方体状をなしている。そのため、第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26との形状を単純な形状にすることができる。第一圧粉磁心23と第二圧粉磁心26とは、直方体状をなすことで、平面である第一圧粉磁心23の端面23tを、平面である第二圧粉磁心26の第五平面26e又は第六平面26fに対向配置できる。そのため、環状に形成されるリアクトルコア20の磁路の断面積が小さくなることを抑制できる。
【0046】
本実施形態における第一方向Dxに垂直な第一圧粉磁心23の断面形状は、第二方向Dyに長い長方形状をなしている。そのため、第一圧粉磁心23の第一方向Dxに垂直な断面形状が例えば正方形などの場合と比較して、磁路の断面積を変えずに、第三方向Dzにおける内側コア部21の寸法を低減できる。
本実施形態における第二方向Dyに垂直な第二圧粉磁心26の断面形状は、第三方向Dzに長い長方形状をなしている。そのため、第二圧粉磁心26の第二方向Dyに垂直な断面形状が正方形などの場合と比較して、磁路の断面積を変えずに、第一方向Dxにおける外側コア部22の寸法を低減できる。
したがって、リアクトルコア20の第一方向Dxの寸法及び第三方向Dzの寸法を低減して、リアクトル10を小型化できる。
【0047】
本実施形態では、第三方向Dzにおける第一圧粉磁心23の中心位置C1と、第二圧粉磁心26の中心位置C2とが一致している。第三方向Dzにおける外側コア部22の寸法は、内側コア部21の寸法よりも大きいため、第三方向Dzにおける内側コア部21の両側に、外側コア部22の第三平面26c及び第四平面26dよりも第三方向Dzに凹んだコイル30の配置スペースを形成できる。
【0048】
本実施形態のリアクトルコア20において、第一方向Dxに並べて配置される第一圧粉磁心23の個数は、第二方向Dyに並べて配置される第二圧粉磁心26の個数よりも多くなっている。そのため、第一方向Dxの寸法よりも第二方向Dyの寸法が小さいリアクトルコア20を容易に形成することができる。
【0049】
本実施形態のリアクトル10において、第三方向Dzにおけるコイル30の外形寸法Lczは、第三方向Dzにおける外側コア部22の外形寸法Lzに対応した寸法とされている。このようにすることで、第三方向Dzで外側コア部22の端面22tとコイル30の外周面との位置を一致させると、第三方向Dzにおける内側コア部21の中心位置C1の位置とコイル30の中心Ocの位置とを一致させることができる。そのため、第三方向Dzを上下方向にしてリアクトルコア20とコイル30とを同一平面上に載置することで、内側コア部21とコイル30との間の隙間Crを、内側コア部21の中心位置C1を基準にして第三方向Dzで対称に形成することができる。
【0050】
本実施形態のリアクトルコア20の製造方法では、成型工程において、複数の圧粉磁心を同一の型材、又は、同一形状の複数の型材を用いて形成し、組立工程において、それぞれ外形寸法が対応する複数の圧粉磁心を組み合わせてリアクトルコア20を組み立てている。そのため、それぞれ外形寸法が対応する実質的に同一形状の圧粉磁心を第一圧粉磁心23及び第二圧粉磁心26として用いて、リアクトルコア20の内側コア部21と外側コア部22とをそれぞれ形成することができる。これにより、異なる種類の型材を用意する必要がなく、型材の種類が増加することがない。そのため、リアクトルコア20を構成するコア部品が大型化することを抑制できる。したがって、生産性が低下することを抑制できるとともに、容易に成形することができる。
【0051】
本実施形態のリアクトル10の製造方法では、第三方向Dzが上下を向くようにリアクトルコア20及びコイル30を金型内に設置して、少なくともリアクトルコア20とコイル30との間に、射出成形により絶縁材40を充填している。これにより、リアクトルコア20を組み立てた後であっても、リアクトルコア20とコイル30との間に絶縁材40を容易に充填させることができる。
【0052】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
実施形態では、本発明をハイブリッド油圧ショベルの昇圧回路100に適用した例について説明したが、他の昇圧回路に適用してもよい。
実施形態のリアクトルコア20は、二つの内側コア部21を有するものとしたが、三つ以上の内側コア部21を有するようにしても良い。
【0054】
第二方向Dyにおいて、平行に配置された二つの内側コア部21の外側に配置される第三平面23cと外側コア部22の一方の端面26tとが面一に配置されていた。第二方向Dyにおいて、平行に配置された二つの内側コア部21の外側に配置される第四平面23dと外側コア部22の他方の端面26tとが面一に配置されていた。しかし、これら第三平面23cと一方の端面26t、及び、第四平面23dと他方の端面26tは、それぞれ面一に配置されていなくても良い。
【0055】
実施形態の絶縁材40は、射出成形によりコイル30とリアクトルコア20との間に合成樹脂を充填することで形成していた。しかし、絶縁材40は、射出成形で形成したものに限られず、例えば、内側コア部21の外周面を覆うように形成されたボビン等を用いることもできる。
【0056】
実施形態の第二圧粉磁心26に形成されている面取りの如く外側に凸となる曲面は、必要に応じて設ければ良く、省略しても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…リアクトル 11…コンデンサ 12…パワー半導体 20…リアクトルコア 21…内側コア部 21ta…第一端面 21tb…第二端面 22…外側コア部 22t…端面 23…第一圧粉磁心 23a…第一平面 23b…第二平面 23c…第三平面 23d…第四平面 23e…第五平面 23f…第六平面 23t…端面 23g,23h,23i,23j…角部 24…ギャップ材 26…第二圧粉磁心 26a…第一平面 26b…第二平面 26c…第三平面 26d…第四平面 26e…第五平面 26f…第六平面 26t…端面 26g,26h,26i,26j…角部 30…コイル 30a,30b…筒状部 30c,30d…引き出し線 40…絶縁材 41…取付孔形成部 100…昇圧回路 h…取付孔 Md…金型
図1
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