(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】骨組織への視覚的近接性に基づく、解剖学的画像の位置追跡座標系との位置合わせの改善
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221212BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20221212BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221212BHJP
G06T 7/33 20170101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360G
A61B6/12
G06T7/00 612
G06T7/33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018081195
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-20
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ラム・ベルナルド・メイヤー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268259(JP,A)
【文献】国際公開第2014/139022(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/133982(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14、8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の表面上のそれぞれのあらかじめ定義された
場所に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の
前記複数の解剖学的地点の位置と、前記第2の座標系内の
前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、
撮像装置を用いて、
前記あらかじめ定義された場所を視認することと、
視認された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置が
、前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置と一致しない場合に、前記
視認された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置をマーキング
することと、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、
マーキングされていない位置と
、マーキングさ
れた位置と
を用いて、
前記第1の座標系内の前記複数の解剖学的地点の位置と、前記
第2の座標系内の前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって、洗練させること
であって、前記マーキングされた位置を複数回複製し、前記関連付けをおこなう、洗練させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記3D解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)解剖学的画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の器官は、患者の頭部を含み、かつ前記複数の
解剖学的地点の位置を受け取ることは、前記患者の頭部上の、前記あらかじめ定義された部位にある位置を受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
映像表示装置を備える医療用装置と、
プロセッサであって、
患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された
場所に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の
前記複数の解剖学的地点の位置と、前記第2の座標系内の
前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、
撮像装置を用いて
前記映像表示装置に表示された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置が
、前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置と一致
するかどうかの情報を受信し、一致しない場合に、前記
表示された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置をマーキング
することと、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、
マーキングされていない位置と
、マーキングされた位置と
を用いて、
前記第1の座標系内の前記複数の解剖学的地点の位置と、前記
第2の座標系内の前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させること
であって、前記マーキングされた位置を複数回複製し、前記関連付けをおこなう、洗練させることと、を実行するように構成されているプロセッサと、を備える、器具。
【請求項5】
前記3D解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)解剖学的画像を含む、請求項
4に記載の器具。
【請求項6】
前記患者の器官は、患者の頭部を含み、かつ、前記プロセッサは、前記患者の頭部上の前記あらかじめ定義された部位にある位置を受け取るように構成されている、請求項
4に記載の器具。
【請求項7】
前記医療用装置はカテーテルであり、かつ前記
撮像装置はカメラである、請求項
6に記載の器具。
【請求項8】
コンピュータ
プログラムであって
、コンピュータに、
患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された
場所に対応する複数の解剖学的地点を特定する工程と、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の
前記複数の解剖学的地点の位置と、前記第2の座標系内の
前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行する工程と、
撮像装置を用いて
映像表示装置に表示された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置が、前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置と一致するかどうかの情報を受信し、一致しない場合に、前記
表示された前記あらかじめ定義された場所の前記第1の座標系内の位置をマーキン
グする工程と、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、
マーキングされていない位置と
、マーキングされた位置と
を用いて、
前記第1の座標系内の前記複数の解剖学的地点の位置と、前記
第2の座標系内の前記複数の解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させる工程
であって、
前記マーキングされた位置を複数回複製し、前記関連付けをおこなう、洗練させる工程と、を実行
させる、コンピュータ
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本出願と同日に出願された、「Registration of an Anatomical Image with a Position-Tracking Coordinate System Based on Proximity to Bone Tissue(骨の組織への近接性に基づく、解剖学的画像の位置追跡座標系との位置合わせ)」と題された、代理人整理番号第JNJ-BIO5789USNP号を、参照により、あたかも全体を記載してあるものとして組み込んでいる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、座標系どうしの位置合わせに関し、特に、静止した状態の器官を目視で検査することに基づいて、座標系どうしを位置合わせする方法とシステムに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
骨の組織への近接性に基づいて、解剖学的画像を位置追跡座標系と位置合わせするのを改善するためのシステムと方法とが開示されている。その方法は、患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された部位に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、第1の座標系内の位置と、第2の座標系内のそれぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、視認装置を用いて、第1の座標系内の位置を視認することと、位置が所定の場所と一致しない場合に、位置をマーキングし、位置を重みづけすることと、第1の座標系と第2の座標系の初期位置合わせを、位置と、マーキングされた位置と、それぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させることと、を含み得る。
【0004】
1つの実施形態では、その方法は、例えば複数の同じ位置を作成することによって、位置を重みづけすることを更に含み得る。
【0005】
1つの実施形態では、3D解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)解剖学的画像を含み得る。1つの実施形態では、患者の器官は、患者の頭部を含み、かつ複数の位置を受け取ることは、患者の頭部上の、あらかじめ定義された部位にある位置を受け取ることを含む。
【0006】
骨組織への視覚的近接性に基づいて解剖学的画像を位置追跡座標系と位置合わせするのを改善するための器具は、映像表示装置を備える医療用装置と、プロセッサであって、患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された部位に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、第1の座標系内の位置と、第2の座標系内のそれぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、視認装置を用いて、第1の座標系内の位置を視認することと、位置が所定の場所と一致しない場合に、位置をマーキングし、位置を重みづけすることと、第1の座標系と第2の座標系の初期位置合わせを、位置と、マーキングされた位置と、それぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させることとを実行するように構成されているプロセッサとを備え得る。
【0007】
1つの実施形態では、プロセッサは、複数の同じ位置を作成することを含む、位置の重みづけを実行するように更に構成されている。1つの実施形態では、医療用装置はカテーテルであり、かつ映像表示装置はカメラである。
【0008】
精度を向上させ、場所の干渉排除性を改善するために、近接場所センサを用いるためのコンピュータプログラム製品もまた開示されている。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による、サイナプラスティ外科用システムの概略的な絵画図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による、外科用システムとともに用いられる医療用装置の概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による、磁気位置追跡システムの座標系の、あらかじめ取得されたコンピュータ断層撮影法(CT)画像との初期位置合わせを洗練させるための方法を模式的に図示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えばサイナプラスティをはじめとする一部の医療処置は、関連する器官類の解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせすることを伴い得る。その位置合わせを利用して、位置センサを装着された外科用ツールは、治療される対象の器官に向けて案内され、解剖学的画像に重ねられて視覚化され得る。原則として、手術前の位置合わせは、位置追跡システムの位置センサを装着した外部の位置合わせツールを利用して実行され得る。そのようなツールを、患者の顔面上のあらかじめ選定された部位(例えば、額及び2つの頬それぞれの中心)に取り付けることができる。次にそのあらかじめ選定された部位での組織の測定された位置に基づいて、解剖学的画像が位置追跡システムの座標系に位置合わせされ得る。
【0012】
しかしながらこの考えられる解決法は、ミリ単位の精度レベルよりも高い精度レベルで解剖学的画像の位置合わせをすることが重要であるサイナプラスティ手技にとっては、精度が足りず、不適切なものでありがちである。一部の顔の要素は自然に変形する軟組織を含み得、かつ位置合わせツールによって圧力が組織に制御されることなく加えられるため、この考えられる解決法の精度は、容認できないものとなり得る。
【0013】
以下で説明する本発明の実施形態は、解剖学的撮像システムの座標系と位置追跡システムの座標系との間の、初期位置合わせを洗練させるための技術の改善を提供する。開示されている実施形態では、患者の頭部の三次元(3D)解剖学的画像が、コンピュータ断層撮影法(CT)システムを用いて取得される初期位置合わせが実施される。解剖学的画像は、CTの座標系内で測定された解剖学的地点を含み、位置追跡システムの座標系にマッピングされるようになっている。
【0014】
一部の実施形態では、2つの座標系どうしの間のマッピングが、位置センサを備える位置合わせツールを用いて実行される。位置合わせを行うために、医師位置合わせツールの遠位端部を、患者の顔の肌の上のあらかじめ定義された多数の部位に、取り付ける。あらかじめ定義された部位の例としては、頬、額、鼻筋等が挙げられ得るが、それらに限られない。あらかじめ定義された部位のそれぞれで、位置追跡システムは、自身の座標系内の、位置センサ(すなわち、あらかじめ定義された部位)の位置を測定する。
【0015】
一部の実施形態では、解剖学的画像がプロセッサに提供され、そのプロセッサは、解剖学的画像内のあらかじめ定義された部位を識別して、それぞれのあらかじめ定義された部位に対して、あらかじめ定義された部位に対応する解剖学的地点と、患者の顔の骨組織上にある最も近い地点との間の(CT座標系内での)距離を計算する。
【0016】
一部の実施形態では、プロセッサは、位置合わせツールにより取得された地点の位置と、CTにより取得された画像のそれぞれの解剖学的地点の位置との間の相互の関連付けによって、CTシステムの座標系の位置追跡システムの座標系への、座標系どうしの初期位置合わせを実行するように構成されている。1つの実施形態では、プロセッサは、それぞれの重みを用いて、反復最近接点(ICP)法のような、好適な位置合わせ方法を適用することにより、初期位置合わせを実施する。初期位置合わせ処理は典型的には、最も近い骨組織にもっとも短い距離にある場所での測定値に高い重みづけをされるか、あるいはその逆をされる、2つの座標系どうしの間の変換を推定する。
【0017】
初期位置合わせをした上で、センサ、カメラ又はその他の映像表示装置を備えるカテーテルが、患者の体腔内に挿入され得る。医師はこのカメラを用いてカテーテルを、上述のあらかじめ定義された部位の1つの上に配置する。例えば、医師はカテーテルを、カメラ視野によって捉えられたように、鼻筋の上に配置する。カメラによって表示された場所が、あらかじめ定義された部位と一致しない場合には、医師は、カメラ視野の場所を、所定の場所としてマークする。このカメラ視野の場所は、後でより詳細に説明される位置合わせの計算において、重みづけされる。
【0018】
開示されている技法は高精度であるため、その技法では、例えば、患者の頭部に挿入され、かつ位置追跡システムの別の位置センサを備える、サイナプラスティ外科用ツールのガイドを改善することが可能になる。
【0019】
図1は、本発明の1つの実施形態による、磁気位置追跡システム20の概略的な絵画図である。システム20は、患者22の頭部内での1つ以上の位置センサの位置を追跡するように構成されている。以下で詳細に説明するように、磁気位置追跡システム20は、磁場発生装置及び1つ以上の位置センサを備える。位置センサは、磁場発生器から検知された外部磁場に応答して位置信号を生成し、それによって、プロセッサ34が、以下に説明するように、位置追跡システムの座標系内での各センサの位置をマッピングすることを可能にする。
【0020】
図2は、磁気位置追跡システム20に用いることができる、カテーテルのような医療用装置の概略図である。医療用装置201は、映像表示素子202と、1つ以上のセンサ203とを含み得る。
図2にはただ1つのセンサしか図示されていないが、2つ以上のセンサを医療用装置201に設けることができる。
【0021】
この位置検知方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムなどの様々な医療用途において実施されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに、米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に説明されており、これらの開示内容をいずれも参照によって本明細書に援用するものである。
【0022】
図1を再び参照すると、本実施例では、磁気位置追跡システム20は、ロケーションパッド40を備え、そのロケーションパッド40は、フレーム46に固定された多数の磁場発生器44を備える。
図1に示す例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えているが、任意の他の好適な数の発生器44を使用し得る。パッド40は、発生器44が患者の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕42を更に備える。システム20は、コンソール33を更に備え、そのコンソール33は、事前に定義された作業体積の磁場を頭部41のまわりに発生するように、磁場発生器44を適した信号で駆動するように構成されたドライバ回路(図示せず)を備える。ロケーションパッド40は、ケーブル(図示せず)によって、コンソール33に接続されている。
【0023】
一部の実施形態では、磁気位置追跡システム20は、例えば手持ち式ワンドのような位置合わせツール30を備え、そのツール30は、磁気位置追跡システム20の座標系をあらかじめ取得されたコンピュータ断層撮影法(CT)画像の座標系と位置合わせするために用いられる。位置合わせツール30は、初期位置合わせ処理に用いられるが、そのツール30は、位置測定値を取得するように構成されている。
【0024】
典型的には、医師24が、初期位置合わせ処理を実施する。プロセッサ34は、この初期位置合わせ処理中、患者の頭部上のあらかじめ定義されたそれぞれの部位に対する2つの座標、すなわち、1)CTシステムの座標系における「解剖学的地点」、及び2)位置追跡システム20の座標系における「位置地点」を計算するように構成されている。位置地点は、この事前定義された部位におけるワンド30の位置測定値から導出され、磁気位置追跡システム20の座標系における、この部位の皮膚の座標を示すものである。解剖学的地点は、CT画像内で特定されたこの部位の、皮膚の座標を示すものである。プロセッサ34は、解剖学的地点と、画像35内のあらかじめ定義された部位の位置地点との間を互いに関係づけて、CT画像を磁気位置追跡システム20の座標系と位置合わせする初期位置合わせ処理を実行するように構成されている。一部の実施形態では、プロセッサ34は、位置合わせツールによって取得されたチタンの位置と、CTによって取得された画像のそれぞれの解剖学的地点の位置との間を相互に関連付けることによって、CTシステムの座標系を、位置追跡システムの座標系へ位置合わせするように構成されている。1つの実施形態では、プロセッサ34は、それぞれの重みを用いて、反復最近接点(ICP)法のような、好適な位置合わせ方法を適用することにより、位置合わせを実施する。位置合わせ処理は典型的には、最も近い骨組織にもっとも短い距離にある場所での測定値に高い重みづけをされるか、あるいはその逆をされる、2つの座標系どうしの間の変換を推定する。
【0025】
初期位置合わせ処理は典型的には、例えばサイナプラスティ手技のような実際の医療処置に先立って実施される。その医療処置中、医師24は、頭部41の中に、例えばカテーテル201又はその他の外科用ツールのような医療用装置を挿入し得るが、同医療用装置は、磁気位置追跡システム20のカメラ202及び/又は他の追加的な位置センサ203を備えるものである。CT画像が位置追跡システムと既に位置合わせされているので、医師24は、その遠位端がCT画像上に表示されている医療用装置201を、頭部41の中の標的部位へ進めることができる。医療用装置201は、医療用装置内の1つ以上のセンサ203によって判定されるその磁気的場所と、カメラ202によって表示されている構造物、例えば、頭部41内の物理的形状若しくは要素(及び/又は、医療用装置が挿入されるその他の体腔部)とに従って、位置追跡システム内で追跡される。1つの実施形態では、標的となる場所は、頭部41内の構造物であり得る。
【0026】
代替的な実施形態では、CT画像35の代わりに、プロセッサ34は、X線透視又は磁気共鳴撮像(MRI)等の、別の適した解剖学的撮像技法を使用して取得した1つ以上の画像を受信し、これらの解剖学的画像を上述の座標系と位置合わせするように構成される。
【0027】
1つの実施形態では、プロセッサ34は典型的に、外部のソースからデータを受信するため、ワンド30の位置センサからケーブル32を介して測定値を受信するため、カメラ202から映像データを受信するため、かつ磁気位置追跡システム20の他の構成要素を制御するために好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備えるコンピュータである。コンソール33は、入力装置39を更に備えるが、その入力装置39には、例えば、キーボード、マウス、マイク、ジェスチャ読取装置又はタッチスクリーン、及びディスプレイ36が挙げられ、そのディスプレイ36は、カメラ131からの映像データ、及びその他のデータを表示するように構成されている。
【0028】
図を簡単かつ明瞭なものとするため、
図1及び
図2は、開示されている技法に関連する要素のみを示す。磁気位置追跡システム20は典型的には、開示されている技法には直接関係のない追加的なモジュール及び要素を備えているが、そのような要素は
図1及び対応する説明からは、意図的に省略されている。
【0029】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行し、処理又はその他の方法でソフトウェアにより使用されるデータをメモリ(図示せず)に記憶させるようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードするか、又は光学的、磁気的若しくは電子的記録媒体など、持続性の有形媒体上に提供されてもよい。又は、プロセッサ34の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア要素によって行われてもよい。
【0030】
図3は、本発明の1つの実施形態による、磁気位置追跡システム20の座標系を、CT撮像システムの座標系に対して初期位置合わせするのを改善する方法を模式的に図示したフローチャートである。
【0031】
その方法はまずステップS1で、初期位置合わせ処理を実行することで開始される。1つの実施形態では、初期位置合わせ処理は、本出願と同日に出願された、「Registration of an Anatomical Image with a Position-Tracking Coordinate System Based on Proximity to Bone Tissue(骨の組織への近接性に基づく、解剖学的画像の位置追跡座標系との位置合わせ)」と題された、本発明の発明者による、同時係属中の出願(なお、同出願は参照により、本明細書に、その全体が記載されているかのように組み込まれる)に記載されている位置合わせ処理であり得る。
【0032】
ステップS2では、例えばカメラ202を有する等、視覚能力を有するカテーテル201を、患者の体腔部に挿入する。
【0033】
ステップS3では、初期位置合わせの間に決定された所定の場所に従って、カテーテルを所定の場所に操縦してガイドする。1つの実施形態では、所定の場所は、患者の体腔内の構造物であり、例えば、鼻の骨の先端部である。
【0034】
ステップS4では、カメラによって表示されているカテーテルの場所が、所定の場所の位置データと一致するかどうかを判定する。場所が一致した場合(S4が「はい」である場合)には、ステップS6に進む。
【0035】
場所が一致しない場合(S4が「いいえ」である場合)には、ステップS5で、マークされた場所、すなわち、カメラ202により示される、カテーテル201の場所を、所定の場所に作成する。
【0036】
ステップS6では、調べるべき所定の場所がもっとあるかどうかを判定する。調べるべき所定の場所がもっとあるという場合(S6が「はい」である場合)には、ステップS3に進む。
【0037】
すべての所定の場所が調べ終わった場合(S6が「はい」である場合)には、ステップS7で、初期位置合わせを洗練させるため、ステップS5でマーキングした場所(複数可)を重みづけすることによって、相互関連付け直しを実行する。
【0038】
1つの実施形態では、それぞれのマーキングされた場所が複数回複製される計算を実行することによって、初期位置合わせは洗練される。1つの実施形態では、それぞれのマーキングされた場所は、例えば100回、複製され得る。従って、マーキングされた場所は、初期位置合わせ処理において決定された、マーキングされていない場所よりも相当に大きな重みを与えられる。すなわち、これらの重みづけられた場所は、洗練された位置合わせにおいて、マーキングされていないあらかじめ定義された部位での重みよりも大きな影響を与えるものとなる。
【0039】
1つの実施形態では、プロセッサ34は、例えば反復最近接点(ICP)法のような、CFOR及びPFOR系の地点のペアどうしの間の距離の合計を繰り返し最小化する好適な方法を適用することにより、洗練された位置合わせを実行する。
【0040】
本明細書に記載される実施形態は、主としてサイナプラスティ用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、例えば、他の、耳鼻咽喉(ENT)用途及び整形外科用途のような、他の用途においても用いられ得る。
【0041】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に詳細に示し説明したものに限定されないことが認識されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の表面上のそれぞれのあらかじめ定義された部位に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の位置と、前記第2の座標系内のそれぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、
視認装置を用いて、前記第1の座標系内の位置を視認することと、
前記位置が所定の場所と一致しない場合に、前記位置をマーキングし、前記位置を重みづけすることと、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、前記位置と、前記マーキングされ重みづけされた位置と、前記それぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって、洗練させることと、を含む、方法。
(2) 前記位置を重みづけすることは、複数の同じ位置を作成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記3D解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)解剖学的画像を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記患者の器官は、患者の頭部を含み、かつ前記複数の位置を受け取ることは、前記患者の頭部上の、前記あらかじめ定義された部位にある位置を受け取ることを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 映像表示装置を備える医療用装置と、
プロセッサであって、
患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された部位に対応する複数の解剖学的地点を特定することと、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の位置と、前記第2の座標系内のそれぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行することと、
視認装置を用いて、前記第1の座標系内の位置を視認することと、
前記位置が所定の場所と一致しない場合に、前記位置をマーキングし、前記位置を重みづけすることと、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、前記位置と、前記マーキングされた位置と、前記それぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させることと、を実行するように構成されているプロセッサと、を備える、器具。
【0043】
(6) 前記プロセッサは、
複数の同じ位置を作成することを含む、前記位置の重みづけを実行するように構成されている、実施態様5に記載の器具。
(7) 前記3D解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)解剖学的画像を含む、実施態様5に記載の器具。
(8) 前記患者の器官は、患者の頭部を含み、かつ、前記プロセッサは、前記患者の頭部上の前記あらかじめ定義された部位にある位置を受け取るように構成されている、実施態様5に記載の器具。
(9) 前記医療用装置はカテーテルであり、かつ前記映像表示装置はカメラである、実施態様8に記載の器具。
(10) コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
患者の器官の三次元(3D)解剖学的画像内で、第1の座標系での前記患者の器官の皮膚上のそれぞれのあらかじめ定義された部位に対応する複数の解剖学的地点を特定する工程と、
前記第1の座標系及び第2の座標系の初期位置合わせを、前記第1の座標系内の位置と、前記第2の座標系内のそれぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付けることによって実行する工程と、
視認装置を用いて、前記第1の座標系内の位置を視認する工程と、
前記位置が所定の場所と一致しない場合に、前記位置をマーキングし、前記位置を重みづけする工程と、
前記第1の座標系と前記第2の座標系の前記初期位置合わせを、前記位置と、前記マーキングされた位置と、前記それぞれの解剖学的地点との間を相互に関連付け直すことによって洗練させる工程と、を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【0044】
(11) 前記位置を重みづけすることは、複数の同じ位置を作成することを含む、実施態様10に記載のコンピュータソフトウェア製品。