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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ガイドワイヤマニピュレータ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/08 20060101AFI20221212BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20221212BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20221212BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20221212BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221212BHJP
【FI】
A61M25/08 500
A61B17/02
A61B17/24
A61M25/09 530
A61M25/10
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018082807
(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2018183588
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】62/489,957
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/926,738
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0082233(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0041245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065396(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0197557(US,A1)
【文献】中国実用新案第205649544(CN,U)
【文献】特表2015-502790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/08
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータであって、
遠位方向および近位方向を定義するU字状経路を含む細長シャシと、
前記U字状経路内で摺動するように構成されたアジャスタとを有し、前記アジャスタは、
回転すると、前記アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを前記ガイドワイヤの軸に沿って並進させる第1ホイールと、
回転すると、前記アジャスタ内に配置された前記ガイドワイヤを、前記ガイドワイヤの前記軸を中心に回転させる第2ホイールと、
前記第1および前記第2ホイールの遠位側の開口であって、管状バルーンと前記ガイドワイヤを収容するよう構成された開口と、
前記第1ホイールの回転軸を保持するスロットと、を有し、
医師の指から前記第1ホイールに圧力がかけられていないときに、前記第1ホイールの前記回転軸は、前記スロット内の所定の位置にあって、前記第1ホイールは前記ガイドワイヤと係合しておらず、医師の指から前記第1ホイールに圧力がかけられたときに、前記第1ホイールの前記回転軸が、前記スロット内で移動して、前記第1ホイールは前記ガイドワイヤと係合し、医師の指での操作による前記第1ホイールの回転によって、前記ガイドワイヤが前記ガイドワイヤの前記軸に沿って並進するようになる、マニピュレータ。
【請求項2】
前記第2ホイールは、第2ホイール軸を中心に回転し、前記アジャスタは、前記第2ホイールに内蔵され、前記第2ホイール軸に平行なそれぞれの軸を有する複数の円筒を更に有し、これにより前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒がそれらの軸に対して垂直に移動し、前記ガイドワイヤに係合する、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記第2ホイールは、開口した三角形部を含み、前記複数の円筒は、前記三角形部のそれぞれの頂点に配置される3つの円筒を含む、請求項2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒が前記三角形部の各辺により内側に押されて、前記ガイドワイヤに係合する、請求項3に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記管状バルーンは、流体に対して密封状態で、前記管状バルーンの近位端において前記開口に取り付けられている、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記開口を通り、前記管状バルーンの遠位端に取り付けられるバルーン保持管を有する、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
前記U字状経路は、通路を含み、前記通路は、前記管状バルーンおよび前記ガイドワイヤが前記通路から外れないように規制するように構成された、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項8】
前記アジャスタが前記U字状経路内で摺動すると、前記管状バルーンが前記通路に沿って並進する、請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
前記細長シャシに取り外し可能に取り付けられた剛管を有し、前記剛管は前記管状バルーンおよび前記ガイドワイヤを収容するように構成された、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項10】
前記剛管は、前記細長シャシと一直線ではない位置で取り付けられている、請求項9に記載のマニピュレータ。
【請求項11】
医師の指から前記第2ホイールに圧力がかけられていないときに、前記第2ホイールは前記ガイドワイヤと係合しておらず、医師の指から前記第2ホイールに圧力がかけられたときに、前記第2ホイールは前記ガイドワイヤと係合するようになる、請求項1に記載のマニピュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して副鼻腔手術に関し、特に副鼻腔手術に使用される器具の操作に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーン副鼻腔手術は、耳鼻咽喉医により詰まった鼻腔の処置に利用され得る。当該処置は、ガイドワイヤ上に沿ってバルーンを副鼻腔に挿入することを含む。挿入後、副鼻腔の壁を広げるために、バルーンは膨張される。
【0003】
本特許出願に参照により組み込まれる文献は、いずれかの用語がこれらの組み込まれた文献において、本明細書に明確にまたは暗示的になされる定義と矛盾する形で定義されている場合には、本明細書中の定義のみが考慮されるべきである点を除いて、本出願の一部とみなされるものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態はマニピュレータを提供するものであり、マニピュレータは、
遠位方向および近位方向を定義するU字状経路を含む細長シャシと、
U字状経路内で摺動するように構成されたアジャスタとを有し、アジャスタは、
回転すると、アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを当該ガイドワイヤの軸に沿って並進をさせる第1ホイールと、
回転すると、アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを、当該ガイドワイヤの軸を中心に回転させる第2ホイールと、
第1および第2ホイールの遠位側の開口であって、管状バルーンとガイドワイヤを収容するよう構成された開口とを有する。
【0005】
典型的には、第1ホイールは、第1ホイール軸を有し、アジャスタは、第1ホイール軸を収容するよう構成された保持スロットを更に有し、これにより、第1ホイールが第1ホイール軸を中心に回転すると、第1ホイールが保持スロット内で摺動することでガイドワイヤに係合する。
【0006】
開示の実施形態では、第2ホイールは、第2ホイール軸を中心に回転し、アジャスタは、第2ホイールに内蔵され、第2ホイール軸に平行なそれぞれの軸を有する複数の円筒を更に有し、これにより第2ホイールが第2ホイール軸を中心に回転すると、円筒がそれらの軸に対して垂直に移動し、ガイドワイヤに係合する。第2ホイールは、開口した三角形部を含んでもよく、複数の円筒は、三角形部のそれぞれの頂点に配置される3つの円筒を含む。典型的には、第2ホイールが第2ホイール軸を中心に回転すると、円筒が三角形部の各辺により内側に押されて、ガイドワイヤに係合する。
【0007】
更に開示された実施形態では、バルーンは、流体に対して密封状態で、バルーンの近位端において開口に取り付けられる。
【0008】
更に開示された実施形態では、マニピュレータは、開口を通り、バルーンの遠位端に取り付けられているバルーン保持管を更に有する。
【0009】
別の実施形態では、U字状経路は、通路を含み、通路は、バルーンおよびガイドワイヤが通路から外れないように規制するように構成される。典型的には、アジャスタがU字状経路内で摺動すると、バルーンが通路に沿って並進する。
【0010】
更に別の実施形態では、細長シャシに取り外し可能に取り付けられた剛管を有し、剛管は管状バルーンおよびガイドワイヤを収容するように構成される。典型的には、剛管は、細長シャシと一直線ではない位置で取り付けられる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ガイドワイヤが更に提供され、ガイドワイヤは、
長さを有し、副鼻腔に挿入されるように構成され、内腔が形成されるプラスチック管と、
プラスチック管に組み込まれた編組と、
内腔内に、プラスチック管の長さに沿って配置された、金属製ワイヤと、を有する。
【0012】
開示の実施形態では、プラスチック管は、第2プラスチック管に接合される第1プラスチック管を有し、内腔が第1および第2管に共通する。第1および第2プラスチック管は、互いに柔軟性が異なっていてもよい。第1および第2プラスチック管は、互いに厚さが異なっていてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、方法が更に提供され、方法は、
遠位方向および近位方向を定義するU字状経路を含む細長シャシを設けることと、
アジャスタをU字状経路内で摺動させることとを含み、アジャスタは、
回転すると、アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを当該ガイドワイヤの軸に沿って並進をさせる第1ホイールと、
回転すると、アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを、当該ガイドワイヤの軸を中心に回転させる第2ホイールと、
第1および第2ホイールの遠位側の開口であって、管状バルーンとガイドワイヤを収容するよう構成された開口とを有する。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、方法が更に提供され、方法は
長さを有し、副鼻腔に挿入されるように構成されたプラスチック管に内腔を形成することと、
プラスチック管に編組を組み込むことと、
内腔内に、プラスチック管の長さに沿って、金属製ワイヤを配置することと、を含む。
【0015】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係わる、副鼻腔手術用ガイドワイヤおよびバルーンマニピュレータの概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係わる、マニピュレータの部分分解図である。
図3】本発明の実施形態に係わる、上記分解図を拡大して上側から見た図である。
図4】本発明の実施形態に係わる、上記分解図を拡大して下側から見た図である。
図5】本発明の実施形態に係わる、マニピュレータのアジャスタを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係わる、マニピュレータのアジャスタを示す図である。
図7】本発明の実施形態に係わる、アジャスタのホイールを示す概略断面図である。
図8】本発明の実施形態に係わる、アジャスタに取り付けられたバルーンを示す概略断面図である。
図9】本発明の実施形態に係わる、マニピュレータのU字状経路内の直線通路を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係わる、マニピュレータの遠位部分を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係わる、当該遠位部分の部分分解図である。
図12】本発明の実施形態に係わる、ガイドワイヤの概略図である。
図13】本発明の実施形態に係わる、ガイドワイヤの概略図である。
図14】本発明の実施形態に係わる、ガイドワイヤの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係わる、副鼻腔手術用ガイドワイヤおよびバルーンマニピュレータ20の概略斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係わる、マニピュレータの部分分解図である。図3は、本発明の実施形態に係わる、上記分解図を拡大して上側から見た図である。図4は、本発明の実施形態に係わる、上記分解図を拡大して下側から見た図である。以下に詳述するが、マニピュレータ20は、副鼻腔手術処置を行う医師が片手で処置用のガイドワイヤの操作できるようにし、処置に利用されるバルーンを前進、後退できるようにするように構成される。マニピュレータの遠位部分22も以下に説明する。
【0018】
マニピュレータ20は、シャシ保持部28が可動的に取り付けられた、細長い略U字状シャシ24を備える。一実施形態において、シャシ24は2つの鏡像部24Aおよび24Bが互いに接合されて形成される。保持部28は、指になじむように医師に保持されるように設計される。保持部は、シャシ24の外側基部に形成された隆起部32に沿って摺動することで、シャシに対して近位側/遠位側に配置および固定できる。
【0019】
ガイドワイヤ位置アジャスタ40が、シャシのU字状経路36内に保持される。経路は、シャシの遠位および近位方向を定義する。後段で詳述するように、アジャスタ40により、マニピュレータを持つ医師は、アジャスタを通過するガイドワイヤ44を並進および回転可能となる。両矢印48により示すように、ガイドワイヤの軸に沿って、遠位方向または近位方向のいずれにも並進可能である。両矢印52により示すように、ガイドワイヤの軸を中心に回転が可能である。並進および回転は、マニピュレータを持つ医師の手の親指またはその他指の一本により実現できる。後段でも説明するように、アジャスタ40により、医師はアジャスタに取り付けられた副鼻腔手術バルーンを並進、膨張させることが可能となる。典型的には、アジャスタは膨張用の経路を備える。膨張は、アジャスタに接続されたポンプのような装置により実現されてもよい)。
【0020】
アジャスタ40は、3つのホイールを有する。ガイドワイヤ44の軸に対して垂直な軸を中心に回転可能な第1ホイール56と、ガイドワイヤの軸に対して平行な軸を中心に回転可能な第2ホイール60と、ホイール56の軸に対して平行な回転軸を有する第3ホイール72である。ホイール72は、アジャスタ40内部に設けられているため、図1から4では不図示であるが、後段の説明に供する図6では図示されている。
【0021】
図5および図6は、本発明の実施形態に係わるアジャスタ40を示す。図5において、第2ホイール60自体が省略されて、第2ホイール60の内部構造が図示されている。図6は、アジャスタ40とマニピュレータ20の一部を含む部分を示す図であり、第1ホイール56に関する内部構造を示す。
【0022】
図5に示すように、アジャスタ40はホイール56の軸68(図6)を保持するスロット64を備える。スロット64は、当該軸および対応するホイールをガイドワイヤに対して垂直に移動可能とする。医師の指から圧力がかけられていない状況では、軸68はスロットの上部に位置しており、ホイール56はガイドワイヤに接してはいるが、係合してはいない。この状況では、ガイドワイヤはホイール56に対して移動可能である。
【0023】
例えば、親指またはその他の指でホイールを回転させるようにして、医師がホイール56に圧力をかけると、軸68はスロット64内で下降して、ホイール56がガイドワイヤ44に係合する。即ち、回転可能なホイール72に対してガイドワイヤを押し付ける。したがって、医師がホイール56を回転させるように圧力をかけると、ガイドワイヤは自軸に沿って、矢印48(図1)の方向に並進する。一方、医師がホイール56を回転させるように圧力を掛けなければ、ガイドワイヤはホイールに係合しておらず、したがってホイールによりガイドワイヤ軸方向に制限されていない。
【0024】
ホイール60(図3)も、概してホイール56と同様の機能を実現する。即ち、ホイール60が医師による圧力により回転すると、ガイドワイヤは自軸中心に、矢印52(図1)の方向に回転する。一方、圧力がかかっていなければ、後述のようにホイールはガイドワイヤに係合しない。
【0025】
ホイール60内部には、ホイールに内蔵された略同形の円筒76が3つ存在する。これら円筒は、ホイール60の軸と平行な軸を有する。各円筒76は、正三角形の頂点に配され、ホイール60の保持にも供される端部80および84により、定位置に保持される。
【0026】
図7は、本発明の実施形態に係わるホイール60の2つの状態を示す概略断面図である。88および92で示す両図に示すように、ホイール60内部96は、開断面形状が三角形である。88で示す図は、ホイール60の第1状態、「開放」状態を概略的に示す。この状態で、ホイール60は回転せず、円筒76は重力によりガイドワイヤ44に接し得るが、ガイドワイヤは、その軸方向に沿った移動を妨げるような摩擦力をほぼ受けない。92で示す図は、ホイールの第2状態、回転状態を示す。この状態では、円筒76は、三角形部96の辺により、内側に押され、それら軸に対して垂直に移動することで、ガイドワイヤ44に係合する。この係合により、ガイドワイヤは回転する。
【0027】
図6に示すように、アジャスタ40も副鼻腔手術用管状バルーン100に水密的に取り付けられている。後述のように、バルーンに流体を供給することで、バルーンの遠位端側が延伸する。
【0028】
図8は、本発明の実施形態に係わる、アジャスタ40の開口102に取り付けられたバルーン100を示す概略断面図である。開口102はアジャスタ40の遠位端にあるため、ホイール56および60の遠位側に存在する。ガイドワイヤ44はアジャスタから導出され、管状バルーン100の中央内腔104を通る。バルーン100は、バルーンの近位端の開口102に、気体/液体(流体)に対して密封状態で取り付けられる。更に、バルーンは遠位端がバルーン保持チューブ106に取り付けられる。バルーン保持チューブ106は開口102を通過し、近位端がアジャスタ40に取り付けられる。アジャスタ40に内蔵された経路108(開口102、管106、経路108は図6にも示される)を介して、圧縮空気または食塩水の等の液体が、バルーンに充填されてもよい。112で示す図は、バルーン収縮状態に置けるバルーンおよびガイドワイヤを示す。116で示す図は、経路108を介してバルーン内に流体(液体または空気)を注入することでバルーンが膨張した状態における、バルーンおよびガイドワイヤを示す。図示簡略化のため、マニピュレータ20の後述するその他要素は、図8では省略されている。
【0029】
図9は、本発明の実施形態に係わる、U字状経路36内の直線通路120を示す。(通路120は図3にも示されている)。バルーン100は通路120内に嵌入し、通路はバルーンおよびガイドワイヤ44が通路から外れないように、規制するように構成される。アジャスタ40は、遠位方向または近位方向に、U字状経路36に沿って並進可能であるように構成される。当該並進により、バルーン100も通路120内で並進することが理解されよう。
【0030】
図10は、本発明の実施形態に係わる、マニピュレータ20の遠位部分22を示す。図11は、本発明の実施形態に係わる、当該遠位部の部分分解図である。部分22は、剛管124を含む。剛管124は後述のように、遠位端が通路120の遠位端に位置合わせされるように、シャシ24に結合される。管124の遠位端128は、刻み付きノブ136を時計回りまたは反時計回りに回すことで湾曲化、直線化可能な連動連結部位132により形成される。部位132は、当分野における任意の適切な方法でノブ136に結合されてもよい。米国特許第15/155,850号に、本稿に記載するような湾曲化および直線化が実現されるように、部位132をノブ136に結合する方法が記載されている。当該方法では、湾曲断面形状を有する金属製リボンを使用して部位132をノブ136に接続する。これにより、ノブの回転により、リボンが管124に沿って遠位方向、近位方向に並進する。任意で、管124はオリフィス126を備える。当該オリフィスを介して、洗浄液が管から排出され得る。
【0031】
管124は、管筐体140内に嵌入され固定される。管を筐体から取り外すこともでき、それにより、図11に示すように、円筒形要素139が露出する。その後管を回転し、要素139に再度挿入してもよい。筐体に挿入後、管と要素139はロック172により定位置で固定されてもよい。このように取外し、再挿入を行うことで、管124の軸に対する、遠位端128の部位132のあらゆる湾曲方向を選択できる。
【0032】
図10および11において、管124はシャシ24と一直線に延びている。但し、管の近位端と通路120の遠位端とが位置合わせされた状態で、管をシャシの延長線から外れた1つ以上の定位置に回動できる。この回動を実現するため、シャシ24の遠位部148は、管124の軸に対して垂直に伸びる突出軸152が設けられる。更に、軸152は、シャシ24の遠位部160の丸孔156に回転可能に嵌合するように構成される。筐体140の歯164は、遠位部160におけるいくつかの収容凹部168の1つに嵌入できる。凹部168の1つに歯164が嵌入されると、ロック144により、管124を軸152を中心に回転不能にできる。
【0033】
管124がシャシ24に対して回転可能であることで、副鼻腔手術の処置におけるマニピュレータ20の使用性が向上する。公知のように、当該処置は通常、患者の鼻孔のような狭い範囲で、内視鏡等のその他器具を使用する必要があるためである。
【0034】
図12、13、14は、本発明の実施形態に係わるガイドワイヤ44を概略的に示す。図12は、ガイドワイヤの遠位部200の内部と、ガイドワイヤの近位部204の一部を示す。一実施形態において、ガイドワイヤ44の全長は約1.3mであり、遠位部200の長さは約0.2mである。別の実施形態では、全長や、遠位部の長さは異なる値であってもよい。
【0035】
近位部204および遠位部200はそれぞれ円筒状のプラスチック管208、212を有する。これら管は互いに接合されることで、内部に共通内腔216が形成される。ニチノールワイヤ220は内腔216内に配置され、典型的にはガイドワイヤの全長に亘って延在するが、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤよりも短くてもよい。
【0036】
管208および212は、典型的にはポリイミドまたはポリアミドのようなプラスチックで形成される。各管は、例えば編組が組み込まれることで補強される。典型的には、編組はステンレス鋼編組である。あるいは、編組はポリマー編組を含んでもよく、ポリマーもポリイミドにより形成されてもよい。
【0037】
典型的には、遠位部200は近位部204よりも若干より柔軟となるように構成される。このような柔軟性の差は、これら部位をそれぞれ異なる適切な性質を持つプラスチックで形成することで実現できる。更に/あるいは、管208は管212よりも厚く構成されてもよい。
【0038】
図13は、管208および212を示す、ガイドワイヤの軸224に沿った概略断面図である。管208には編組228が組み込まれている。管212には編組232が組み込まれている。内腔216内のワイヤ236は、ガイドワイヤの全長に亘って延在し、その機能は以下に説明する。
【0039】
図14は、遠位部200の遠位端部240を概略的に示す。端部240は、位置センサとして機能する一軸コイル244を含む。コイル244は、ニチノールワイヤ220が通るポリイミド管246に巻き付けられる。ワイヤ236(図14では円筒として示されている)は、一軸コイルに接続され、コイルで生成された信号を、マニピュレータ20、更にはプロセッサ(不図示)へと送る。コイルを通過する交番磁場により、コイルで信号が生成され、プロセッサはこの信号により、コイルの位置、方向を判定できる。このようなシステムは公知であり、例えば米国92618カリフォルニア州アーバイン市テクノロジードライブのBiosense Webster製Carto systemで採用されている。
【0040】
遠位端部240はその先端が生体適合性セメントプラグ252で封止されている。これにより内腔216の水密性、気密性が実現される。
【0041】
一実施形態では、ニチノールワイヤ220は、典型的には15°程度、若干屈曲している。したがって、遠位端部240もガイドワイヤにおけるその他部位に対して屈曲している。
【0042】
本発明者らは、1つ以上のプラスチック管内のニチノールワイヤと、管に組み込まれた編組とにより、ガイドワイヤのもつれが防止されることを確認した。
【0043】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に記載されている様々な特徴の組合せと部分組合せの両方、および前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形および改変を含む。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) マニピュレータであって、
遠位方向および近位方向を定義するU字状経路を含む細長シャシと、
前記U字状経路内で摺動するように構成されたアジャスタとを有し、前記アジャスタは、
回転すると、前記アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを前記ガイドワイヤの軸に沿って並進させる第1ホイールと、
回転すると、前記アジャスタ内に配置された前記ガイドワイヤを、前記ガイドワイヤの前記軸を中心に回転させる第2ホイールと、
前記第1および前記第2ホイールの遠位側の開口であって、管状バルーンと前記ガイドワイヤを収容するよう構成された開口と、を有する、マニピュレータ。
(2) 前記第1ホイールは、第1ホイール軸を有し、前記アジャスタは、前記軸を収容するように構成された保持スロットを更に有し、これにより、前記第1ホイールが前記第1ホイール軸を中心に回転すると、前記第1ホイールが前記保持スロット内で摺動することで前記ガイドワイヤに係合する、実施態様1に記載のマニピュレータ。
(3) 前記第2ホイールは、第2ホイール軸を中心に回転し、前記アジャスタは、前記第2ホイールに内蔵され、前記第2ホイール軸に平行なそれぞれの軸を有する複数の円筒を更に有し、これにより前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒がそれらの軸に対して垂直に移動し、前記ガイドワイヤに係合する、実施態様1に記載のマニピュレータ。
(4) 前記第2ホイールは、開口した三角形部を含み、前記複数の円筒は、前記三角形部のそれぞれの頂点に配置される3つの円筒を含む、実施態様3に記載のマニピュレータ。
(5) 前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒が前記三角形部の各辺により内側に押されて、前記ガイドワイヤに係合する、実施態様4に記載のマニピュレータ。
【0045】
(6) 前記バルーンは、流体に対して密封状態で、前記バルーンの近位端において前記開口に取り付けられている、実施態様1に記載のマニピュレータ。
(7) 前記開口を通り、前記バルーンの遠位端に取り付けられるバルーン保持管を有する、実施態様1に記載のマニピュレータ。
(8) 前記U字状経路は、通路を含み、前記通路は、前記バルーンおよび前記ガイドワイヤが前記通路から外れないように規制するように構成された、実施態様1に記載のマニピュレータ。
(9) 前記アジャスタが前記U字状経路内で摺動すると、前記バルーンが前記通路に沿って並進する、実施態様8に記載のマニピュレータ。
(10) 前記細長シャシに取り外し可能に取り付けられた剛管を有し、前記剛管は前記管状バルーンおよび前記ガイドワイヤを収容するように構成された、実施態様1に記載のマニピュレータ。
【0046】
(11) 前記剛管は、前記細長シャシと一直線ではない位置で取り付けられている、実施態様10に記載のマニピュレータ。
(12) ガイドワイヤであって、
長さを有し、副鼻腔に挿入されるように構成され、内腔を形成するプラスチック管と、
前記プラスチック管に組み込まれた編組と、
前記内腔内に、前記プラスチック管の前記長さに沿って配置された、金属製ワイヤと、を有する、ガイドワイヤ。
(13) 前記プラスチック管は、第2プラスチック管に接合される第1プラスチック管を有し、前記内腔が前記第1および前記第2管に共通する、実施態様12に記載のガイドワイヤ。
(14) 前記第1および前記第2プラスチック管は、異なる柔軟性を有する、実施態様13に記載のガイドワイヤ。
(15) 前記第1および前記第2プラスチック管は、異なる厚さを有する、実施態様13に記載のガイドワイヤ。
【0047】
(16) 方法であって、
遠位方向および近位方向を定義するU字状経路を含む細長シャシを設けることと、
アジャスタを前記U字状経路内で摺動させることと、を含み、前記アジャスタは、
回転すると、前記アジャスタ内に配置されたガイドワイヤを前記ガイドワイヤの軸に沿って並進させる第1ホイールと、
回転すると、前記アジャスタ内に配置された前記ガイドワイヤを、前記ガイドワイヤの前記軸を中心に回転させる第2ホイールと、
前記第1および前記第2ホイールの遠位側の開口であって、管状バルーンと前記ガイドワイヤを収容するよう構成された開口と、を有する、方法。
(17) 前記第1ホイールは、第1ホイール軸を有し、前記アジャスタは、前記軸を収容するように構成された保持スロットを更に有し、これにより、前記第1ホイールが前記第1ホイール軸を中心に回転すると、前記第1ホイールが前記保持スロット内で摺動することで前記ガイドワイヤに係合する、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記第2ホイールは、第2ホイール軸を中心に回転し、前記アジャスタは、前記第2ホイールに内蔵され、前記第2ホイール軸に平行なそれぞれの軸を有する複数の円筒を更に有し、これにより前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒がそれらの軸に対して垂直に移動し、前記ガイドワイヤに係合する、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記第2ホイールは、開口した三角形部を含み、前記複数の円筒は、前記三角形部のそれぞれの頂点に配置される3つの円筒を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第2ホイールが前記第2ホイール軸を中心に回転すると、前記円筒が前記三角形部の各辺により内側に押されて、前記ガイドワイヤに係合する、実施態様19に記載の方法。
【0048】
(21) 前記バルーンを、流体に対して密封状態で、前記バルーンの近位端において前記開口に取り付けることを含む、実施態様16に記載の方法。
(22) 前記開口を通るバルーン保持管を、前記バルーンの遠位端に取り付けることを含む、実施態様16に記載の方法。
(23) 前記U字状経路は、通路を含み、前記方法は、前記バルーンおよび前記ガイドワイヤを、前記通路から外れないように、規制することを含む、実施態様16に記載の方法。
(24) 前記アジャスタが前記U字状経路内で摺動すると、前記バルーンを前記通路に沿って並進させることを含む、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記細長シャシに剛管を取り外し可能に取り付けることを含み、前記管は前記管状バルーンおよび前記ガイドワイヤを収容するよう構成された、実施態様16に記載の方法。
【0049】
(26) 前記剛管は、前記細長シャシと一直線ではない位置で取り付けられる、実施態様25に記載の方法。
(27) 方法であって、
長さを有し、副鼻腔に挿入されるように構成されたプラスチック管に内腔を形成することと、
前記プラスチック管に編組を組み込むことと、
前記内腔内に、前記プラスチック管の前記長さに沿って、金属製ワイヤを配置することと、を含む、方法。
(28) 前記プラスチック管は、第2プラスチック管に接合される第1プラスチック管を有し、前記内腔が前記第1および第2管に共通する、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記第1および前記第2プラスチック管は、異なる柔軟性を有する、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記第1および前記第2プラスチック管は、異なる厚さを有する、実施態様28に記載の方法。
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