(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】カバーガラス付光学積層体、および、カバーガラス付画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221212BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2018086482
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
(72)【発明者】
【氏名】北村 ▲吉▼紹
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】杉山 輝和
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-223021号公報
【文献】特開2016-136238号公報
【文献】特開2018-30901号公報
【文献】特開2000-169733号公報
【文献】特開2004-131484号公報
【文献】国際公開第2014/082540号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
B32B7/023
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工された光学フィルムおよび粘着剤層を有し、切削端面における正反射率RRと拡散反射率DRとの比RR/DRが0.15以上である、光学積層体
と、
該光学積層体の前記粘着剤層と反対側に配置された別の粘着剤層を介して積層されたカバーガラスと、を有する、カバーガラス付光学積層体。
【請求項2】
前記光学フィルムが偏光子を含む、請求項1に記載の
カバーガラス付光学積層体。
【請求項3】
前記光学フィルムが、前記偏光子の前記粘着剤層と反対側に保護フィルムをさらに有する、請求項2に記載の
カバーガラス付光学積層体。
【請求項4】
前記光学フィルムが、前記偏光子と前記粘着剤層との間に別の保護フィルムをさらに有する、請求項2または3に記載の
カバーガラス付光学積層体。
【請求項5】
前記別の保護フィルムが位相差層を兼ねる、請求項4に記載の
カバーガラス付光学積層体。
【請求項6】
表示セルと、該表示セルの視認側に配置された請求項
1~5のいずれかに記載のカバーガラス付光学積層体と、を有する、カバーガラス付画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、カバーガラス付光学積層体、およびこれらの製造方法、ならびに、これらの光学積層体またはカバーガラス付光学積層体を含むカバーガラス付画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター等の画像表示装置には、画像表示を実現し、および/または当該画像表示の性能を高めるために、種々の光学積層体(例えば、偏光板)が使用されている。光学積層体は、所定形状に切断された後、切断面を切削による仕上げ加工に供する場合がある。さらに、近年、光学積層体を矩形以外に加工(異形加工)することが望まれる場合がある。このような切削加工においては、エンドミルによる切削が行われる場合がある。しかし、エンドミルにより切削加工された光学積層体は、クラックが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-187781号公報
【文献】特開2018-022140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、切削加工されているにもかかわらずクラックの抑制された光学積層体、このような光学積層体を含むカバーガラス付光学積層体、およびこれらの製造方法、ならびに、これらの光学積層体またはカバーガラス付光学積層体を含むカバーガラス付画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学積層体は、切削加工された光学フィルムおよび粘着剤層を有し、切削端面における正反射率RRと拡散反射率DRとの比RR/DRが0.15以上である。
1つの実施形態においては、上記光学フィルムは偏光子を含む。
1つの実施形態においては、上記光学フィルムは、上記偏光子の上記粘着剤層と反対側に保護フィルムをさらに有する。
1つの実施形態においては、上記光学フィルムは、上記偏光子と上記粘着剤層との間に別の保護フィルムをさらに有する。
1つの実施形態においては、上記別の保護フィルムは位相差層を兼ねる。
本発明の別の局面によれば、カバーガラス付光学積層体が提供される。このカバーガラス付光学積層体は、上記の光学積層体と、該光学積層体の上記粘着剤層と反対側に配置された別の粘着剤層を介して積層されたカバーガラスと、を有する。
本発明のさらに別の局面によれば、カバーガラス付画像表示装置が提供される。このカバーガラス付画像表示装置は、表示セルと、該表示セルの視認側に配置された上記の光学積層体と、該光学積層体の視認側に配置されたカバーガラスと、を有する。本発明の別のカバーガラス付画像表示装置は、表示セルと、該表示セルの視認側に配置された上記のカバーガラス付光学積層体と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、切削加工された光学積層体において切削端面の正反射率RRと拡散反射率DRとの比RR/DRを0.15以上とすることにより、クラック(特に、ヒートサイクル試験後のクラック)を抑制することができる。このような光学積層体は、カバーガラスと好適に積層され得、カバーガラス付画像表示装置に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体を説明する概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による光学積層体を所定厚みに積層した状態で切削端面の透過光の状態を観察した写真である。
【
図3】本発明の実施形態の範囲外である光学積層体を所定厚みに積層した状態で切削端面の透過光の状態を観察した写真である。
【
図4】本発明の切削加工された光学積層体の形状の一例を示す概略平面図である。
【
図5】本発明の光学積層体の切削加工の一例を説明するための概略斜視図である。
【
図6】本発明の光学積層体の製造方法における切削加工に用いられる切削手段の一例を説明するための概略斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の光学積層体の製造方法における切削加工に用いられる切削手段の別の例を説明するための軸方向から見た概略断面図であり;
図7(b)は、
図7(a)の切削手段の概略斜視図である。
【
図8】本発明の1つの実施形態によるカバーガラス付光学積層体を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、見やすくするために図面は模式的に表されており、さらに、図面における長さ、幅、厚み等の比率、ならびに角度等は、実際とは異なっている。
【0009】
A.光学積層体
本発明の光学積層体は、切削加工された光学フィルムおよび粘着剤層を有する。
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体を説明する概略断面図である。図示例の光学積層体100は、光学フィルム110および粘着剤層120を有する。実用的には、粘着剤層120の表面にはセパレーター130が剥離可能に仮着されている。本発明の光学積層体は、カバーガラスと好適に積層され得、カバーガラス付画像表示装置に好適に適用され得る。
【0010】
光学フィルムとしては、切削加工が必要とされる用途に用いられ得る任意の適切な光学フィルムが挙げられる。光学フィルムは、単一層で構成されるフィルムであってもよく、積層体であってもよい。光学フィルムの具体例としては、偏光子、位相差フィルム、偏光板(代表的には、偏光子と保護フィルムとの積層体)、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、ならびに、これらを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板)が挙げられる。本発明の実施形態によれば、特に、偏光子のような収縮しやすい光学フィルムを含む光学積層体においてクラックを顕著に抑制することができる。
【0011】
例えば光学フィルム110が偏光板である場合、当該偏光板は偏光子の粘着剤層120の反対側のみに保護フィルムを有していてもよく、偏光子と粘着剤層120との間のみに保護フィルムを有していてもよく、両方に保護フィルムを有していてもよい。粘着剤層の反対側に設けられる保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。偏光子と粘着剤層との間に設けられる保護フィルムは、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。当該保護フィルムは、別の実施形態においては、位相差層を兼ねてもよい。位相差層としての保護フィルムの構成は、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。例えば、保護フィルムは、λ/2板であってもよく、λ/4板であってもよく、これらの積層体であってもよい。λ/2板およびλ/4板は、代表的にはnx>ny≧nzの屈折率特性を有する。λ/2板は、面内位相差Re(550)が好ましくは180nm~320nmであり、λ/4板は、面内位相差Re(550)が好ましくは100nm~200nmである。また例えば、保護フィルムは、ネガティブBプレート(nx>ny>nz)とポジティブCプレート(nz>nx=ny)との積層体であってもよい。なお、本明細書において「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
【0012】
粘着剤層120は、主として、最終的に得られる光学積層体を表示セルに貼り合わせるために用いられる。本発明の実施形態によれば、粘着剤層を含む光学積層体を切削加工した場合であっても、クラック(特に、ヒートサイクル試験後のクラック)を抑制することができる。粘着剤層120は、代表的にはアクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)で構成され得る。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個である。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。粘着剤層の厚みは、例えば10μm~50μmであり得る。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば特開2016-190996号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0013】
本発明の実施形態においては、光学積層体の切削端面における正反射率RRと拡散反射率DRとの比RR/DRは0.15以上であり、好ましくは0.16以上であり、より好ましくは0.22以上であり、さらに好ましくは0.24以上である。比RR/DRの上限は、例えば0.37であり、好ましくは0.30である。比RR/DRがこのような範囲であれば、切削加工(例えば、エンドミル加工)された光学積層体におけるクラック(特に、ヒートサイクル試験後のクラック)を抑制することができる。特に、切削加工された光学積層体をカバーガラスと積層した場合のクラックを抑制することができる。
【0014】
光学積層体の切削端面における正反射率RRは、好ましくは0.30%以上であり、より好ましくは0.40%以上であり、さらに好ましくは0.50%以上である。正反射率RRの上限は、例えば0.75%であり、好ましくは0.65%である。光学積層体の切削端面における拡散反射率DRは、好ましくは2.40%~5.00%であり、より好ましくは2.50%~3.50%である。
【0015】
正反射率RRおよび拡散反射率DRは例えば下記のようにして求められ、得られたRRおよびDRから比RR/DRが算出される。切削加工された光学積層体をランダムに選び出し、選出した光学積層体を積層して厚み約15mmの束を作製する。より詳細には、光学積層体は、異なる複数のワーク(ワークについては後述)からランダムに選出される。作製した束の測定面を面一とした状態で、束の測定面方向の両端部から所定の距離の位置(2か所)に輪ゴムを巻いて束を拘束する。拘束した束の測定面について、分光測色計(例えば、コニカミノルタ社製「CM-2600d」)を用いてSCI(Specular Component Include)およびSCE(Specular Component Exclude)を測定し、以下の式から正反射率RRおよび拡散反射率DRを求める。
正反射率RR=SCI-SCE
拡散反射率DR=SCE
【0016】
以下、RR/DRについてより詳細に説明する。
図2は、RR/DRが上記のような範囲を満たす光学積層体を所定厚みに積層した状態で切削端面の透過光の状態を観察した写真であり、
図3は、RR/DRが上記のような範囲から外れる光学積層体を所定厚みに積層した状態で切削端面の透過光の状態を観察した写真である。
図2と
図3とを比較すると明らかなように、RR/DRが上記のような範囲を満たす光学積層体は光の輪郭が明確であり(いわゆるテカリがあり)、一方、RR/DRが上記のような範囲を外れる光学積層体は光の輪郭が不明確である(テカリがない)。本発明者らは、切削加工(代表的には、エンドミル加工)された光学積層体におけるクラックの問題について試行錯誤を繰り返した結果、切削端面にテカリがある光学積層体においてクラックが抑制されることを発見した。特に、このような積層体は、カバーガラスと積層した場合のクラックが抑制されることを発見した。このように、本発明は光学積層体の切削加工(代表的には、エンドミル加工)において新たに生じた課題を解決するものであり、切削端面のテカリ(またはRR/DR)を最適化することによる効果は予期せぬ優れた効果である。なお、
図2および
図3においては差異を明確化するために透過光の状態を示しているが、反射光のテカリもこれに対応する。
【0017】
以下、一例として
図4に示すような平面形状の光学積層体の製造方法における各工程を説明する。
【0018】
B.ワークの形成
図4は、切削加工を説明するための概略斜視図であり、本図にワーク1が示されている。
図4に示すように、光学積層体を複数枚重ねたワーク1が形成される。光学積層体は、ワーク形成に際し、代表的には任意の適切な形状に切断されている。具体的には、光学積層体は矩形形状に切断されていてもよく、矩形形状に類似する形状に切断されていてもよく、目的に応じた適切な形状(例えば、円形)に切断されていてもよい。図示例では、光学積層体は矩形形状に切断されており、ワーク1は、互いに対向する外周面(切削面)1a、1bおよびそれらと直交する外周面(切削面)1c、1dを有している。ワーク1は、好ましくは、クランプ手段(図示せず)により上下からクランプされている。ワークの総厚みは、好ましくは8mm~20mmであり、より好ましくは9mm~15mmであり、さらに好ましくは約10mmである。このような厚みであれば、クランプ手段による押圧または切削加工時の衝撃による損傷を防止し得る。光学積層体は、ワークがこのような総厚みとなるように重ねられる。ワークを構成する光学積層体の枚数は、例えば10枚~50枚であり得る。クランプ手段(例えば、治具)は、軟質材料で構成されてもよく硬質材料で構成されてもよい。軟質材料で構成される場合、その硬度(JIS A)は、好ましくは60°~80°である。硬度が高すぎると、クランプ手段による押し跡が残る場合がある。硬度が低すぎると、治具の変形により位置ずれが生じ、切削精度が不十分となる場合がある。
【0019】
C.切削加工
次に、ワーク1の外周面を、切削手段20により切削する。切削は、切削手段の切削刃をワーク1の外周面に当接させることにより行われる。切削は、ワークの外周面の全周にわたって行ってもよく、所定の位置のみに行ってもよい。
図4に示すような平面形状の光学積層体を作製する場合、切削は、代表的にはワークの外周面の全周にわたって行われる。切削加工は、代表的には
図5~
図7に示すように、いわゆるエンドミル加工である。すなわち、切削手段(エンドミル)20の側面を用いて、ワーク1の外周面を切削する。切削手段(エンドミル)20としては、代表的にはストレートエンドミルが用いられ得る。
【0020】
エンドミル20は、
図6および
図7に示すように、ワーク1の積層方向(鉛直方向)に延びる回転軸21と、回転軸21を中心として回転する本体の最外径として構成される切削刃22と、を有する。切削刃22は、
図6に示すように回転軸21に沿ってねじれた最外径として構成されてもよく(所定のねじれ角を有していてもよく)、
図7に示すように回転軸21に実質的に平行な方向に延びるよう構成されていてもよい(ねじれ角が0°であってもよい)。なお、「0°」は実質的に0°であるという意味であり、加工誤差等によりわずかな角度ねじれている場合も包含する。切削刃が所定のねじれ角を有する場合、ねじれ角は好ましくは70°以下であり、より好ましくは65°以下であり、さらに好ましくは45°以下である。切削刃22は、刃先22aと、すくい面22bと、逃がし面22cと、を含む。切削刃22の刃数は、後述の所望の接触回数が得られる限りにおいて適切に設定され得る。
図6における刃数は3枚であり
図7における刃数は2枚であるが、刃数は1枚であってもよく、4枚であってもよく、5枚以上であってもよい。好ましくは、刃数は2枚である。このような構成であれば、刃の剛性が確保され、かつ、ポケットが確保されて削りカスを良好に排出することができる。
【0021】
1つの実施形態においては、切削刃22のHV硬度は、代表的には1500以上であり、好ましくは1700以上であり、より好ましくは2000以上である。HV硬度の上限は、例えば2350であり得る。この場合、切削刃は、代表的には超硬合金で構成される。超硬合金は、代表的には、金属炭化物の粉末を焼結して得られる。超硬合金の具体例としては、WC-Co系合金、WC-TiC-Co系合金、WC-TaC-Co系合金、WC-TiC-TaC-Co系合金が挙げられる。なお、HV硬度はビッカーズ硬さとも称され、JIS Z 2244に準じて測定され得る。
【0022】
別の実施形態においては、切削刃22のHV硬度は、代表的には7000以上であり、好ましくは8000以上であり、より好ましくは9000以上であり、さらに好ましくは10000以上である。HV硬度の上限は、例えば15000であり得る。この場合、切削刃は、代表的には焼結ダイヤモンドを含む。より詳細には、切削刃は、超硬合金で構成された基部に焼結ダイヤモンド層が形成されている。焼結ダイヤモンド(PCD:Polycrystalline diamond)は、ダイヤモンドの小さな粒を金属および/またはセラミックスの粉と一緒に高温・高圧で焼き固めた多結晶ダイヤモンドをいう。
【0023】
切削加工の条件は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、エンドミルの送り速度、回転数、刃数等を適切に調整することにより、所定のRR/DRを有する切削加工された光学積層体が得られ得る。本明細書において「送り速度」は、切削手段(エンドミル)とワークとの相対速度を意味する。したがって、切削加工においては、エンドミルのみを移動させてもよく、ワークのみを移動させてもよく、エンドミルおよびワークの両方を移動させてもよい。切削回数は、1回削り、2回削り、3回削りまたはそれ以上であり得る。1つの実施形態においては、エンドミル20の直径は、好ましくは3mm~20mmである。
【0024】
以上のようにして、所定のRR/DRを有する切削加工された光学積層体が得られ得る。なお、切削加工された光学積層体(実質的には、光学フィルムおよび粘着剤層)は、代表的には、切削痕を有し得る。
【0025】
D.カバーガラス付光学積層体
本発明の実施形態による光学積層体(例えば、上記A項~C項に記載の光学積層体)は、上記のとおり、カバーガラスと好適に積層され得る。したがって、カバーガラス付光学積層体もまた、本発明の実施形態に包含される。
図8は、本発明の1つの実施形態によるカバーガラス付光学積層体を説明する概略断面図である。図示例のカバーガラス付光学積層体101は、偏光子110と、粘着剤層120と、偏光子110の粘着剤層120と反対側に配置された別の粘着剤層140を介して積層されたカバーガラス150と、を有する。粘着剤層120の表面にはセパレーター130が剥離可能に仮着されている。すなわち、カバーガラス付光学積層体101は、
図1の光学積層体と、当該光学積層体の粘着剤層120と反対側に配置された別の粘着剤層140を介して積層されたカバーガラス150と、を有する。
【0026】
別の粘着剤層140を構成する粘着剤(粘着剤組成物)は、-40℃における貯蔵弾性率が好ましくは1.0×108(Pa)以上である。このような粘着剤層を採用すれば、光学積層体の切削端面のRR/DRの最適化による効果との相乗的な効果により、切削加工された光学積層体にカバーガラスを貼り合わせた場合であっても、クラック(特に、ヒートサイクル試験後のクラック)を抑制することができる。このような粘着剤(粘着剤組成物)としては、例えば、ゴム系粘着剤が挙げられる。ゴム系粘着剤は、代表的には、ブタジエン重合体および/またはポリイソプレン重合体(またはその変性物)と光重合開始剤とを含み得る。ゴム系粘着剤は、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレートまたはそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート等をさらに含んでいてもよい。
【0027】
カバーガラス150については業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0028】
カバーガラス付光学積層体は、切削加工された光学積層体(例えば、上記A項~C項に記載の光学積層体)に、上記別の粘着剤層140を介してカバーガラスを貼り合わせることにより得られ得る。
【0029】
E.カバーガラス付画像表示装置
本発明の実施形態による光学積層体(例えば、上記A項~C項に記載の光学積層体)は、上記のとおり、カバーガラス付画像表示装置に好適に適用され得る。したがって、カバーガラス付画像表示装置もまた、本発明の実施形態に包含される。カバーガラス付画像表示装置は、表示セルと、表示セルの視認側に配置された本発明の実施形態による光学積層体と、光学積層体の視認側に配置されたカバーガラスと、を有する。
【0030】
本発明の実施形態によるカバーガラス付光学積層体(例えば、上記D項に記載のカバーガラス付光学積層体)もまた、画像表示装置に適用されてカバーガラス付画像表示装置を構成し得る。この場合、カバーガラス付画像表示装置は、表示セルと、表示セルの視認側に配置された本発明の実施形態によるカバーガラス付光学積層体と、を有する。
【0031】
画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置、量子ドット表示装置が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。実施例における評価項目は以下のとおりである。
【0033】
(1)RR/DR
実施例および比較例で得られた異なる複数のワークから偏光板をランダムに選び出し、選出した偏光板を積層して厚み約15mmの束を作製した。作製した束の測定面を面一とした状態で、束の測定面方向の両端部から10mmの位置(2か所)に輪ゴム(アイ・ジー・オー社製、#7)を巻いて束を拘束した。拘束した束の測定面について、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM-2600d」)を用いてSCIおよびSCEを測定し、以下の式から正反射率RRおよび拡散反射率DRを求めた。
正反射率RR=SCI-SCE
拡散反射率DR=SCE
(2)クラック
実施例および比較例で得られた偏光板の両側にガラス板を貼り合わせ、-40℃~85℃で200サイクルのヒートサイクル(ヒートショック)試験を行った。試験後のクラックの発生状況について、偏光フィルターを上記偏光板の偏光子の吸収軸とクロスニコルになるように配置した状態で透過光検査を行い、以下の基準で評価した。
あり:光漏れを視認できる
なし:光漏れを視認できない
【0034】
<実施例1>
常法により、視認側から順に表面保護フィルム(48μm)/ハードコート層(5μm)/シクロオレフィン系保護フィルム(47μm)/偏光子(5μm)/シクロオレフィン系保護フィルム(24μm)/粘着剤層(20μm)/セパレーターの構成を有する粘着剤層付偏光板を作製した。粘着剤層は、特開2016-190996号公報の[0121]および[0124]に準じて作製した。得られた粘着剤層付偏光板を
図4に類似した形状(概略サイズ142.0mm×66.8mmで四隅のR6.25mm)に打ち抜き、打ち抜いた粘着剤層付偏光板を複数枚重ねてワーク(総厚み約10mm)とした。得られたワークをクランプ(治具)で挟んだ状態で、エンドミル加工により周縁部を切削し、
図4に示すような切削加工された粘着剤層付偏光板を得た。エンドミルの切削刃は焼結ダイヤモンドを用いたものであり、HV硬度は10000であった。また、エンドミルの刃数は2枚、ねじれ角は0°であった。また、エンドミルの送り速度(直線部を切削する際の送り速度)は1000mm/分であり、回転数は25000rpmであり、切削回数は2回(1回目0.1mm、2回目0.2mmの切削しろ0.3mm)であった。得られた切削加工された粘着剤層付偏光板のRR/DRは0.17であった。
【0035】
上記の粘着剤層付偏光板の表面保護フィルムを剥離し、剥離面に別の粘着剤層を形成した。別の粘着剤層は、特開2016-103030号公報の[0053]に準じて作製した。さらに、上記シクロオレフィン系保護フィルム側の粘着剤層に仮着されていたセパレーターを剥離し、このようにして得られた両側に粘着剤層を有する偏光板の両側にガラス板を貼り合わせ、上記のクラックの評価に供した。結果を表1に示す。
【0036】
<実施例2および比較例1~2>
切削加工の条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、
図4に示すような切削加工された粘着剤層付偏光板を得た。得られた切削加工された粘着剤層付偏光板のRR/DRは表1に示すとおりであった。さらに、実施例1と同様にしてクラックの評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の切削加工された光学積層体は、画像表示部にカバーガラスを積層する場合に好適に用いられ、特に、パーソナルコンピューター(PC)やタブレット端末に代表される矩形の画像表示部、および/または、自動車のインストゥルメントパネルやスマートウォッチに代表される異形の画像表示部に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0039】
1 ワーク
20 切削手段
100 光学積層体
101 カバーガラス付光学積層体
110 光学フィルム
120 粘着剤層
140 別の粘着剤層
150 カバーガラス