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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】水力発電系統連系システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02P9/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018086834
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019193513
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】水谷 政敏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】木村 寛太
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080348(JP,A)
【文献】特開2018-046599(JP,A)
【文献】特開2003-284392(JP,A)
【文献】特開2007-068386(JP,A)
【文献】特開2009-207349(JP,A)
【文献】特開2005-229702(JP,A)
【文献】特開平06-113447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02J 3/38
F03B 15/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車と、水車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、この発電機の発電電力を直流電力に変換する整流器と、この整流器で整流した直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナと、前記発電機の負荷を調整して前記水車の回転数を制御する制御装置とを備え、
前記パワーコンディショナが、一体の汎用品であり、
前記発電機の前記整流器で整流された電圧を計測する電圧検出手段と、
前記発電機の前記整流器で整流された電流を計測する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出した電流を演算する電流演算手段と、
前記発電機の発電電力の周波数から前記発電機の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記電圧検出手段、前記電流検出手段、および前記回転数検出手段が検出した電圧、電流、および回転数、並びに前記パワーコンディショナが出力する起動、停止、および異常信号から、定められた保護作動条件を充足する場合に、前記発電機の前記整流器への入力遮断および前記発電機に備えられた電磁ブレーキの制動の両方を行わせるフェールセーフ制御手段とを有することを特徴とする水力発電系統連系システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電系統連系システムにおいて、前記パワーコンディショナが、太陽光発電の発電電力の系統への連系向けの汎用品である水力発電系統連系システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水力発電系統連系システムにおいて、前記整流器が、整流を行う整流機能部と、前記発電機の発電電力の前記整流機能部への入力をオンオフするスイッチ機能部とを有する水力発電系統連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小水力発電装置等の水力発電装置を交流商用電力の系統に連系する水力発電系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電装置は流水が持つ運動エネルギーを発電に利用するシステムである。主な構成は、水の流れを受け回転する水車、水車と連結され回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機、発電機の出力及び水車を制御する制御装置から構成される。発電機より取り出す最適な電力は、流速により変化するため、制御装置は、流速あるいは水車の回転速度あるいは発電機の発電電圧を計測し、発電機より取り出す最適な電力を決定し、発電機の電力量と最適値が一致するように制御する。
【0003】
水力発電した電力を交流商用電力の系統(以下単に「系統」と称する場合がある)に連系して売電する系統連系システムは、発電機の出力が最大になる様、最大効率トルク、回転速度制御をする為、同期発電機と、同期発電機専用の発電機制御手段(発電機制御ドライバ)及び出力電圧制御手段(系統連系インバータ)で構成されており、同期発電機に合わせた専用設計の機器とされている。
【0004】
例えば図4に示すように、水力発電装置の発電機51の3相交流の出力を直流に変換する電力変換回路52、その制御手段である発電機制御手段53と、直流を系統54に応じた交流電力に変換するインバータ55およびその出力電圧制御手段56からなる系統連系インバータとで系統連系システムが構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-6553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の系統連系水力発電システムの構成は、同期発電機、同期発電機専用の発電機制御手段(発電機制御ドライバ)及び出力電圧制御手段(系統連系インバータ)で構成されており、発電機に合わせた専用設計の機器である為、機器が高額となる。
そのため、農業用水や工業用水等の用水路等に設置される小発電電力の発電装置、いわゆる小水力発電装置では、システム全体における系統連系のための電気系の機器が占めるコストの割合が多くなり、不経済である。
【0007】
この発明は上記課題を解消するものであり、その目的は、系統連系のための手段に汎用品が使用できて、品質を確保しながら、コスト低下が図れる水力発電系統連系システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の水力発電系統連系システムは、水車1と、水車1の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機3と、この発電機3の発電電力を直流電力に変換する整流器15と、この整流器15で整流した直流電力を系統9に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナ8と、前記発電機3の負荷を調整して前記水車1の回転数を制御する制御装置4とを備え、
前記パワーコンディショナ8が、一体の汎用品であることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、発電機3の負荷の調整により水車1の回転数を変える制御は、パワーコンディショナ8とは別に設けた前段の制御装置4およびパワーコンディショナ8の最大電力点制御(MPPT制御)等で行い、制御装置4にて交流/直流変換制御を行うことで直流に変換した発電電力をパワーコンディショナ8に供給するようにしたため、汎用のパワーコンディショナ8を用いることが可能となる。
このように、発電電力を系統9に連系する機器に、一体の汎用品のパワーコンディショナ8をそのまま利用するため、品質を確保しながら、専用設計の機器を用いる場合に比べて安価な水力発電システムを提供する事が可能となる。
なお、この明細書で言う「汎用品」は、特定の機種の発電装置に専用に設計されたものではなく、入力が処理可能な電力、電圧の範囲であり、かつ連系する系統9の電圧および周波数が適合すれば、適用できる機器であることを言う。また、「一体の汎用品」は、全ての構成部品が共通の筐体に組み込まれ、一つの物として取扱可能な汎用品を言う。
【0010】
前記パワーコンディショナ8は、前記パワーコンディショナ8が、太陽光発電の系統9への連系向けの汎用品であってもよい。すなわち、太陽電池セルが組み合わせられた太陽電池パネルを系統9に連系するパワーコンディショナ8であってもよい。
太陽光発電は普及が進んでおり、系統連系用のパワーコンディショナ8につき、量産効果によって安価で品質の良いものが多く市販されている。このような市販のパワーコンディショナ8を用いることで、より一層安価で高品質の水力発電系統連系システムを構築することができる。
【0011】
この発明において、前記整流器15が、整流を行う整流機能部15aと、前記発電機3の発電電力の前記整流機能部15aへの入力をオンオフするスイッチ機能部14とを有するものであってもよい。
発電電力を整流する整流器15にオンオフするスイッチ機能を持っていれば、発電機3と系統9とを切り離すことができて、水車1の高速回転や系統9の停電等により生じる過電圧電力への対応が容易となる。
【0012】
この発明において、前記発電機3と前記パワーコンディショナ8との間に接続され過電圧電力を抵抗によって吸収する消費抵抗装置と、前記発電機3の発電電力が設定電圧以上の過電圧になった時に前記発電機3の発電電力に発生する過電圧電力を前記消費抵抗装置に吸収させる消費抵抗制御手段とを備えていてもよい。
このように消費抵抗装置およびその消費抵抗制御手段を備えていると、水車1の高速回転や系統9の停電等により生じる過電圧電力を吸収することができ、この水力発電系統連系システムを構成する機器の過電圧による劣化や損傷を防止することができる。
【0013】
この発明において、前記発電機3の前記整流器15で整流された電圧を計測する電圧検出手段18と
前記発電機3の前記整流器15で整流された電流を計測する電流検出手段17と
記発電機3の発電電力の周波数から前記発電機3の回転数を検出する回転数検出手段19と、
前記電圧検出手段18、前記電流検出手段17、および前記回転数検出手段19が検出した電圧、電流、および回転数、並びに前記パワーコンディショナ8が出力する起動、停止、および異常信号から、定められた保護作動条件を充足する場合に、前記発電機3の前記整流器15への入力遮断および前記発電機3に備えられた制動手段(10)の制動のいずれか一方または両方を行わせるフェールセーフ制御手段23を有する構成であってもよい。
このようなフェールセーフ制御手段23を有することで、この水力発電系統連系システムを構成する機器の前記過電圧による劣化や損傷をより一層良好に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の水力発電系統連系システムは、水車と、水車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、この発電機の発電電力を直流電力に変換する整流器と、この整流器で整流した直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナと、前記発電機の負荷を調整して前記水車の回転数を制御する制御装置とを備え、前記パワーコンディショナが、一体の汎用品であるため、品質を確保しながらコスト低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態に係る水力発電系統連系システムの概念構成を示すブロック図である。
図2】同水力発電系統連系システムの具体例のブロック図である。
図3】同水力発電系統連系システムに用いた太陽光発電用のパワーコンディショナの概念構成を示すブロック図である。
図4】従来例の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1に示す水力発電機は、水車1が水平軸型(プロペラ型)の水力発電機の例である。水車1は、農業用水、工業用水等の水路、または上下水道等に設置される比較的に小型の水車である。水の運動エネルギーにより水車1が回転し、水車1の主軸1aが発電機3を回転させる。水車1と発電機3とで水力発電装置2が構成される。水力発電装置2には、水車1または発電機3を制動する電磁ブレーキ10等の制動手段が設けられている。
発電機3は、制御装置4およびパワーコンディショナ8を介して系統9に接続される。系統9は、交流商用電力系統であり、例えば100Vまたは200Vで50または60Hzの低電圧配線である。
前記水車1、発電機3、制御装置4、およびパワーコンディショナ8により水力発電系統連系システムが構成される。
【0017】
発電機3は、永久磁石を使用した三相同期発電機であり、主軸1aにカップリング(図示せず)等で締結されている。必要に応じて主軸1aと発電機3の間に増速機(図示せず)が設けられる。発電機3に負荷を接続して出力をとると、水車1に発電機3からトルクがかかり、水車1の回転が制動される。負荷を重くすると水車1の回転速度は遅くなり、負荷を軽くすると水車1の回転速度は速くなる。発電機3の負荷として制御装置4およびパワーコンディショナ8、系統9が接続されている。
【0018】
制御装置4およびパワーコンディショナ8は、水路の流速に応じて発電機3のトルクを増減させ水車1が最適な回転数で回転するように制御する。水路の流速は、流速計25で検出する。流速に代え、または流速と併用して、水車1の回転数、または発電機3の回転数に応じて発電機3のトルクを増減させるようにしてもよい。発電機3の回転数は発電電力の周波数から検出してもよい。水車1の回転数と発電機3の回転数とは定まった関係にあり、いずれか一方が検出できれば他方は演算で分かる。
【0019】
制御装置4は、主回路部6と、この主回路部6を制御する制御回路部5と、消費抵抗装置7とを備える。主回路部6に、発電機3の3相交流電力を直流に変換する整流器15と、その整流した直流を昇圧するDC/DCコンバータ16が設けられている。DC/DCコンバータ16は、例えば、昇圧側となる2次側の電圧が制御入力によって制御可能なものを用いている。
【0020】
前記パワーコンディショナ8は、系統9に並列接続して連系する装置であり、入力された直流電力を系統9と同等の電圧(少し高い電圧)、周波数、および位相の交流電力に変換する。
このパワーコンディショナ8として、一体の汎用品が用いられている。すなわち、筐体内に構成部品(いずれも図示せず)が収められ一体の機器として取扱可能な汎用品が用いられている。この実施形態では、パワーコンディショナ8として、太陽光発電の発電電力を系統9に連系可能な交流電力に変換する太陽光発電向けに量産されているパワーコンディショナを用いている。
【0021】
図3は、この実施形態に用いる太陽光発電用のパワーコンディショナ8の一例を示す。このパワーコンディショナ8は、DC/DCコンバータ31と、DC/ACインバータ32と、制御手段33とを備える。DC/DCコンバータ31は、入力された直流電力を系統9の電圧に対応する電圧に昇圧させる手段であり、出力電圧が可変である。DC/DCコンバータ31の入力電圧は、このパワーコンディショナ8の本来の用途である太陽電池モジュール36の出力電圧であり、一般的な太陽光発電で系統連系のために出力させる電圧のうちのいずれかの電圧(例えば、単相100/200Vまたは3相200V)とされている。DC/ACインバータ32は、DC/DCコンバータ31から出力された直流電力を、系統9に連系可能な周波数および位相の交流電力に変換する。
【0022】
前記制御手段33は、電力制御部34と最大電力点制御部35とを有する。電力制御部34は、DC/DCコンバータ31およびDC/ACインバータ32に対して基本的な制御を行う。最大電力点制御部35は、山登り法による最大電力点追尾制御(MPPT制御)を行うように、前記電力制御部34に指令を与える。
【0023】
MPPT制御につき説明する。太陽電池モジュール36等の発電機器の発電量は、電圧と電流の積で決まるが、発電する電圧と電流は変動する。この変動に対して、最大電力点追尾制御部35によるMPPT制御では、最大の出力が発生するように電圧と電流の組み合わせとなる動作点を常に探し求める。前記電力制御部34は、上記のように最大電力点制御部35で求められた動作点で働くように、DC/DCコンバータ31およびDC/ACインバータ32を制御する。
この実施形態の場合、発電機3の発電電力の変動により、整流されてパワーコンディショナ8に入力される電力の電流、電圧の変動が生じるが、この変動に対して、最大電力点制御部35が上記の機能を果たす。
なお、制御手段33は、最大電力点制御部35を設けずに、例えばパルス幅変調方式で制御をDC/DCコンバータ31およびDC/ACインバータ32を制御する構成であってもよい。
【0024】
図2は、発電機3とパワーコンディショナ8との間に設けられる前記制御装置4の具体的構成例を示す。主回路部6は、前記整流器15およびDC/DCコンバータ16の他に、AC/DC制御電源13、電流検出手段である電流計17、回転数検出手段19、および電圧検出手段である電圧計18を有する。
前記整流器15は、発電機3の3相交流の発電電力を直流に変換する手段であり、この変換を行う整流機機能部15aと、スイッチ機能部14とを有する。整流機機能部15aは、各相毎に出力の正電位側と負電位側とに位置する2つの半導体スイッチング素子(図示せず)が設けられたハーフブリッジ回路からなる。
【0025】
スイッチ機能部14は、発電機3から整流機機能部15aに入力される回路を開閉する各相のスイッチング素子(図示せず)で構成される。スイッチ機能部14の各スイッチング素子は、制御入力によって開閉可能な素子である。
【0026】
AC/DC制御電源13は、制御装置4を動作させる電源であり、発電機3の発電する交流電力の一部を直流電力に変換し、制御回路部5および消費抵抗装置7に供給する。AC/DC制御電源13の代わりに、電池等の別の電源を用いてもよい。
電流計17は、DC/DCコンバータ16により昇圧された電流の電流値を検出する。電圧計18は、同じく昇圧された電流の電圧値を検出する。つまり、電流計17および電圧計18は、パワーコンディショナ8に入力される電流および電圧を検出する。
回転数検出手段19は、発電電流の周波数から発電機3の回転数を検出する。この検出は、整流器15の整流前の電力に対して行っている。
【0027】
消費抵抗装置7は、風車1の回転制御や回路保護等のために、発電機3で発電した電力を消費する手段である。消費抵抗装置7は、この実施形態では、DC/DCコンバータ16とパワーコンディショナ8との間で、正電位側配線と負電位側とを短絡させて電力消費する消費抵抗7aと、この消費抵抗7aに直列接続されたスイッチ7bと、このスイッチ7bを開閉させる消費抵抗制御手段22とで構成される。
消費抵抗装置7の目的は、水力発電システムが発電中に、電力系統の停電時などで系統連系が停止した時、系統負荷が無負荷となり発電機3が高回転、発電電圧が過電圧となったことを消費抵抗制御手段22で判定してスイッチ7bをONして消費抵抗7aで過電圧電力を消費させる事で、太陽光パワーコンディショナ8を保護する事である。通常の状態は、スイッチbがOFF状態である。
【0028】
前記制御回路部5は、発電制御手段12と、前記電磁ブレーキ10を制御するブレーキ制御手段11と、フェールセーフ制御手段23とを有する。
発電制御手段12は、前記の流速に応じて発電機3のトルクを増減させ水車1が最適な回転数で回転するように制御する手段である。発電制御手段12は、前記流速計25から得られた水路の流速、または前記回転数検出手段19で検出された発電機3の回転数から、定められた制御規則に従って発電機トルクの増減のための制御信号を生成し、DC/DCコンバータの出力電圧を制御する。あるいは、前記制御信号により、前記パワーコンディショナ8における前記電力制御部34に制御させる。
【0029】
この場合に、汎用/太陽光発電用のパワーコンディショナ8のMPPT制御をそのまま改造する事無く利用して、流速での最大電力が取れるよう制御する。同時に、制御装置4にて、フェールセーフ、運転/停止制御などのシステム制御を実施してパワーコンディショナ8でのMPPT制御を以外の制御を実施する。なお、汎用/太陽光発電用のパワーコンディショナ8のMPPT制御を停止させて、制御装置4にてMPPT制御を実施する事としてもよい。
【0030】
フェールセーフ制御手段23は、前記電圧計18、前記電流計17、および前記回転数検出手段19が検出した電圧、電流、および回転数、並びに前記パワーコンディショナ8が出力する起動、停止、および異常信号から、定められた保護作動条件を充足する場合に、前記発電機3の前記整流器15への入力遮断、および前記発電機1に備えられた制動手段である電磁ブレーキ10の制動のいずれか一方または両方を行わせる。前記保護作動条件は、例えば、前記電圧、電流、および回転数のいずれかが、それぞれにつき定められた閾値を超える場合、および前記パワーコンディショナ8から停止または異常信号が入力されたときとされる。
【0031】
前記制御装置4とパワーコンディショナ8とは、シリアル通信のLAN通信等による通信手段で接続されている。また、前記制御装置4は、外部の機器とシリアル通信のLAN通信等を行う外部I/O手段21を有している。
【0032】
この構成によると、発電電力を系統9に連系する機器に、一体の汎用品のパワーコンディショナ8をそのまま利用するため、品質を確保しながら、専用設計の機器を用いる場合に比べて安価な水力発電システムを提供する事が可能となる。
前記パワーコンディショナ8が太陽光発電用のパワーコンディショナ8である場合は、より一層安価で高品質の水力発電系統連系システムを構築することができる。すなわち、太陽光発電は普及が進んでおり、系統連系用のパワーコンディショナにつき、量産効果によって高機能で耐久性、信頼性に優れた安価で品質の良いものが多く市販されている。このような市販のパワーコンディショナを用いることで、より一層安価で高品質の水力発電系統連系システムを構築することができる。
【0033】
また、この水力発電系統連系システムは、次の各利点が得られる。
発電電力を整流する整流器15にスイッチ機能部14を有しているため、発電機3と系統9とを切り離すことができて、水車1の高速回転や系統9の停電等により生じる過電圧電力への対応が容易となる。
前記消費抵抗装置7およびその消費抵抗制御手段22を備えているため、水車1の高速回転や系統9の停電等により生じる過電圧電力を吸収することができ、この水力発電系統連系システムを構成する機器の過電圧による劣化や損傷を防止することができる。
前記フェールセーフ制御手段23を有するため、この水力発電系統連系システムを構成する機器の過電圧による劣化や損傷をより一層良好に防止することができる。
【0034】
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1…水車
2…水力発電装置
3…発電機
4…制御装置
5…制御回路部
6…主回路部
7…消費抵抗装置
8…パワーコンディショナ
9…系統
10…電磁ブレーキ
14…スイッチ機能部
15…整流器
15a…整流機機能部
16…DC/DCコンバータ
17…電流計(電流検出手段)
18…電圧計(電圧検出手段)
19…回転数検出手段
23…フェールセーフ制御手段
35…最大電力点制御部
図1
図2
図3
図4