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特許7191553飲料、容器詰め飲料および飲料の後味および口当たり改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】飲料、容器詰め飲料および飲料の後味および口当たり改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/70 20060101AFI20221212BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221212BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A23L2/00 K
A23L2/00 B
A23L2/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018115643
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019216635
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016110(WO,A1)
【文献】特開2017-158548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.02g/L以上1.0g/L以下のカフェインと、
0.001g/L以上10g/L以下の乳化物と、
0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムと、
を含み、
波長650nmにおける吸光度が0.2以下であることを特徴とする飲料。
【請求項2】
前記乳化物の油滴の平均粒子径が10nm以上500nm以下である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
20℃におけるpHが5以下である請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
カリウム源として、KCl及び/または乳清ミネラルを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
波長650nmにおける吸光度が0.03以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
波長420nmにおける吸光度が0.5以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
前記乳化物が油溶性香料の乳化物である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載された飲料が透明な容器に充填された容器詰め飲料。
【請求項9】
波長650nmにおける吸光度が0.2以下であって、0.02g/L以上1.0g/L以下のカフェインと、0.001g/L以上10g/L以下の乳化物と、を含む飲料の後味および口当たり改善方法であって、
前記カフェインと、前記乳化物と、カリウムとを混合し、当該カリウムが0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下となるように調製する工程を含む、飲料の後味および口当たり改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、容器詰め飲料および飲料の後味および口当たり改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水の代わりとなるフレーバーウォーターの需要が高まっている。フレーバーウォーターは、香りや味の付いた無色透明の飲料品であり、フレーバードウォータやニアウォーターとも呼ばれる。フレーバーウォーターに対する需要が多様化するなかで、カフェインを有するお茶やコーヒーといった嗜好性飲料やカフェインによる覚醒作用を有する機能性飲料などが求められている。また、乳風味飲料や低カロリー飲料が求められる中で、嗜好性を向上させるために乳化物を加えて味の再現や飲みごたえを出す工夫が求められている。
【0003】
特許文献1には、フレーバーウォーターにおいて糖や酸の種類を限定し、それらの比率を調整することで苦味を抑制することが示されている。また、特許文献2には、乳清ミネラルを含み、甘味度が特定された乳風味飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/016110号
【文献】特開2010-227095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、フレーバーウォーターの成分として、カフェインに乳化物を組み合わせた場合に、後味および口当たりが悪くなるという問題が生じることを見出した。この問題については、特許文献1,2のいずれにも記載されておらず、解決方法も何ら検討されていなかった。
【0006】
そこで、本発明者は、カフェインと乳化物を含有する飲料の後味および口当たりの良さを改善する観点から、鋭意検討を行った。その結果、特定の成分を用いることで、カフェインと乳化物を含有する飲料において、後味と口当たりの両方を改善できることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、カフェインと、乳化物と、0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムと、を含み、波長650nmにおける吸光度が0.2以下である飲料が提供される。
【0008】
本発明によれば、上記の飲料が透明な容器に充填された容器詰め飲料が提供される。
【0009】
本発明によれば、カフェインと、乳化物と、0.5mg/100ml以上50.0mg/100mlのカリウムと、を含むように飲料を調製し、波長650nmにおける吸光度を0.2以下とする飲料の後味および口当たり改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カフェインと乳化物とを含んだ飲料において、後味と口当たりを同時に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0012】
〔実施形態〕
<飲料>
本実施形態の飲料は、カフェインと、乳化物と、0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムと、を含み、波長650nmにおける吸光度が0.2以下である。
本実施形態の飲料は、カフェインと、乳化物と含むことを前提として、カリウム成分を特定量配合することで、無色透明な飲料において、後味および口当たりの両方を改善できるものである。なお、「口当たり」とは、飲料を口にいれたときの感触であり、本飲料においては、乳化物による柔らかさやまろやかさである。
【0013】
以下、本実施形態の飲料の詳細について説明する。
【0014】
[カフェイン]
カフェインの濃度の下限は、0.02g/L以上が好ましく、0.03g/L以上がより好ましく、0.05g/L以上がさらに好ましい。一方、カフェインの濃度の上限は、1.0g/L以下が好ましく、0.5g/L以下がより好ましく、0.3g/L以下がさらに好ましい。
カフェインの濃度を、かかる数値範囲とすることで、カフェインによる風味付けをしつつ、後味および口当たりを両方同時に改善することができる。
【0015】
[乳化物]
乳化物は、乳化剤および必要に応じて乳化安定剤、親水性酸化防止剤の添加により油溶性成分が飲料中に安定的な油滴として分散されたものである。油溶性成分としては、香りや味付けを付与するためのミルク香料、カフェラテ香料などの油溶性香料が挙げられる。例えば、乳化物として、長谷川香料株式会社製、ハセクリア(登録商標)などのナノコロイド化された透明乳化物を用いることができる。
【0016】
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル等のシュガーエステル;レシチン、レスチン酵素分解物等のレスチン等が挙げられる。
【0017】
乳化安定剤としては、ペクチン、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、カゼイン等が挙げられる。これらの乳化剤や乳化安定剤は、単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
親水性酸化防止剤としては、アスコルビン酸、クエン酸又はそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。親水性酸化防止剤により、油溶性成分の劣化、具体的には、油溶性香料の風味の劣化が抑制される。
【0019】
飲料の透明性を維持する観点から乳化物は可視光の散乱を抑制することが好ましく、この点で、油滴の平均粒子径の上限は500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。一方、乳化物の安定性を保つ点から油滴の平均粒子径の下限は、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。油滴の平均粒子径を係る数値範囲とすることにより、可視光の散乱を抑制し、飲料の透明性を維持することができる。なお、油滴の粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。
動的光散乱法による粒度測定方法(平均粒子径の測定方法)を以下に挙げる。
<装置>大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒径・分子量測定システム ELSZ-1000
<サンプル>測定濃度範囲(0.00001%~40%)に調整する。
<測定条件>
測定温度:20℃
積算測定回数:70回
水の屈折率:1.33
水の粘度:0.89mPa・s
水の誘電率:78.3
以下、飲料の透明性を維持することができる乳化物を透明乳化物とよぶ。
【0020】
乳化物の濃度の下限は、0.001g/L以上が好ましく、0.01g/L以上がより好ましく、0.05g/L以上がさらに好ましい。一方、乳化物の濃度の上限は、10g/L以下が好ましく、1g/L以下がより好ましく、0.5g/L以下がさらに好ましい。
乳化物の濃度を、かかる数値範囲とすることで、飲料に柔らかさやまろやかさを付与しつつ、後味および口当たりを両方同時に改善することができる。
【0021】
[カリウム]
飲料に含まれるカリウムの由来は特に限定されないが、カリウム源として飲料に塩化カリウムや乳清ミネラルを添加することで、飲料中のカリウムイオン濃度を適度にすることができる。なお、飲料に添加されるカリウム源は1種でも、2種以上でもよい。
【0022】
乳清ミネラルは、食品添加物の1つとして、食品・飲料業界で知られたものである。乳清ミネラルは、ホエイミネラルまたはホエイソルトと呼ばれることもある。本実施形態の飲料は、乳清ミネラルを含むことで、透明度を高くしつつも、乳風味を得ることができる。
【0023】
乳清ミネラルは、一般に、乳又は乳清(ホエイ)から、可能な限りタンパク質と乳糖とを除去して製造されたものである。そのため、一般に高濃度に乳の灰分(ミネラル)を含有し、かつ、固形分に占める灰分の割合が極めて高い。そして、そのミネラル組成は、原料となる乳または乳清中のミネラル組成に近い比率となる。
乳清ミネラルの固形分に占める灰分含量は、例えば30質量%以上であり、具体的には50質量%以上である。灰分含量は高いほうが好ましい。
【0024】
乳清ミネラルの具体的な製造方法としては、乳又は乳清を原料として、これを膜分離および/またはイオン交換、冷却などにより、蛋白質と乳糖を除去して乳清ミネラルを得ることができる。
【0025】
上記製造方法において、原料として乳清を用いる場合、その乳清は特に限定されず、乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエイ、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエイ、乳を限外濾過することによって得られるホエイなどを挙げることができる。
上記製造方法において、膜分離の方法としては、精密濾過膜分離、限外濾過膜分離、ナノ濾過膜分離、逆浸透膜分離、透析膜分離等を挙げることができる。
上記製造方法において、イオン交換の方法としては、陽イオン交換膜法や陰イオン交換膜法を用いる電気透析膜分離や、イオン交換樹脂による方法等を挙げることができる。
【0026】
上記製造方法などにより得られた乳清ミネラルは、液状のままでもよいが、保存や取扱いの点で、濃縮および/または乾燥してもよい。濃縮方法としてはエバポレーターを用いた減圧濃縮法等が挙げられる。また、乾燥方法としては噴霧乾燥や凍結乾燥等、一般に用いられる方法を適宜選択することができる。
【0027】
乳清ミネラルとしては、例えば、ADEKA社の市販品(商品名:みるくのミネラルL10、P10など)を用いてもよい。
【0028】
飲料中の乳清ミネラルの濃度(添加量)は、飲料のカリウムイオン(K)濃度が後述する数値範囲内になるように調製すればよい。
【0029】
飲料中のカリウムイオン濃度の下限は、好ましくは0.5mg/100ml以上であり、より好ましくは1mg/100ml以上であり、さらに好ましくは2.5mg/100ml以上である。一方、飲料中のカリウムイオン濃度の上限は、好ましくは50mg/100ml以下であり、より好ましくは25mg/100ml以下であり、さらに好ましくは11mg/100ml以下である。
飲料中のカリウムイオン濃度をかかる数値範囲とすることにより、後味と口当たりの両方を同時に改善することができる。
【0030】
なお、ここでのカリウムイオン濃度は、乳清ミネラルに由来するカリウムだけでなく、飲料中に含まれる全カリウムイオンの濃度のことである。
【0031】
飲料中のカリウムイオン濃度は、例えば、原子吸光光度法による分析で求めることができる。カリウムイオン濃度の分析は、例えば、Agilent社製 原子吸光光度計「Agilent7700」を用いて実施することができる。また、飲料の原材料中のカリウム濃度と、原材料の使用量とから、計算により求めることもできる。
【0032】
[その他成分]
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、香気成分、甘味料、酸味料、pH調整剤、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、増粘安定剤等を含んでもよい。
ただし、透明性の観点からは、飲料は、着色料を実質的に含まないか、含むとしても少量であることが好ましい。
【0033】
例えば、甘味料としては、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。甘味料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0034】
例えば、上記の酸味料としては、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0035】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、5.0以下が好ましく、2.5~4.6であることがより好ましく、3.0~4.2であることがさらに好ましい。これにより、後味と口当たりの両方を同時に改善することができる。なお、飲料のpHを3.2以上とすることで、酸味が目立ちすぎることを抑制し、乳風味を高めることができる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0036】
[糖度(ブリックス値)]
本実施形態の飲料の糖度は、特に限定されないが、3.5以下が好ましく、飲料をより低カロリーとする観点から、3.1以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。
【0037】
[酸度(クエン酸酸度)]
本実施形態の飲料の酸度は、特に限定されないが、適切な酸度に調整されることで、後味と口当たりの両方を同時に改善することができる。
具体的には、クエン酸の相当量として換算した値(クエン酸度)において、上限が、好ましくは0.15%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは、0.04%以下である。クエン酸度の好ましい下限は特になく、0%より大きい値である。
【0038】
[透明性]
本実施形態の飲料の波長650nmにおける吸光度は、好ましくは0.2以下であり、より好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。すなわち、本実施形態の飲料は、透明性が高い飲料であり、いわゆる止渇目的で喫飲されるフレーバーウォーターやニアウォーターとすることができる。
また、本実施形態の飲料の波長420nmにおける吸光度は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。ここで、特段の材料や製法を用いていない通常のコーヒー飲料は、焙煎されたコーヒー豆に由来する褐色の色を呈している。これに対し、本実施形態の飲料は、通常のコーヒー飲料とは異なるものであり、波長420nmにおける透明性が得られるものである。
【0039】
[製造方法、容器など]
本実施形態の飲料は、カフェインと、乳化物と、必要に応じてその他の成分を、定法に従って水に均一に混合することで得ることができる。
本実施形態の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰め飲料としてもよい。なお、各成分の調合タイミングは、殺菌処理前に限られず、特定の成分、例えば、揮発性が相対的に高い香気成分を殺菌処理後に調合してもよい。
【0040】
容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
さらに飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、容器は透明であることが好ましく、具体的にはペットボトルまたは無着色の瓶が好ましい。また、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、容器はペットボトルであることが好ましい。
【0041】
<飲料の後味および口当たり改善方法>
本実施形態の飲料の後味および口当たり改善方法は、カフェインと、乳化物と、0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムと、を含むように飲料を調製し、波長650nmにおける吸光度が0.2以下とするものである。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. カフェインと、
乳化物と、
0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムと、
を含み、
波長650nmにおける吸光度が0.2以下であることを特徴とする飲料。
2. 前記乳化物の油滴の平均粒子径が10nm以上500nm以下である1.に記載の飲料。
3. 20℃におけるpHが5以下である1.又は2.に記載の飲料。
4. カリウム源として、KCl及び/または乳清ミネラルを含む1.乃至3.のいずれか一つに記載の飲料。
5. 波長650nmにおける吸光度が0.03以下である1.乃至4.のいずれか一つに記載の飲料。
6. 波長420nmにおける吸光度が0.5以下である1.乃至5.のいずれか一つに記載の飲料。
7. 1.乃至6.のいずれか一つに記載された飲料が透明な容器に充填された容器詰め飲料。
8. カフェインと、乳化物と、0.5mg/100ml以上50.0mg/100ml以下のカリウムとを調製し、波長650nmにおける吸光度を0.2以下とする、飲料の後味および口当たり改善方法。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[実験1]カフェインおよび乳化物の味への影響と後味および口当たりの改善作用の検証
<対照例1,2、参考例1、比較例1、実施例1,2>
表1に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について以下の測定、および評価を行い、結果を表1に示した。なお、表1中の「-」は、配合されていないことを示す。なお、ミルク香料(透明乳化物)の平均粒子径については、上述した粒度測定方法にしたがって、予め測定した。表1記載のミルク香料(透明乳化物)は、後述する表3~表5でも用いられている。
【0045】
<測定(物性)>
・糖度(Bx):糖用屈折計示度「RX-5000α」株式会社アタゴ製を用いてブリックス値を測定した。飲料の液温は20℃とした。
・pH:東亜ディーケーケー社製 GST-5741Cにて測定した値(20℃)とした。
・吸光度(D420:波長420nm、D650:波長650nm):飲料を光路長1cmのセルに入れて、市販の分光光度計で測定した値とした。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。
・カリウムイオン(K)濃度(mg/100ml):原材料中に含まれるカリウム成分と原材料の使用量から算出される値である。
【0046】
<評価>
・官能評価:対照例、参考例、実施例および比較例の飲料(20℃)それぞれを、熟練した5名のパネラーが試飲し、以下の評価基準に従い、「後味の良さ」、「口当たりの良さ」、「苦みの強さ」、それぞれについて、7段階(1~7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、参考例1については、対照例1の飲料を対照品(基準値4点)とし、比較例1、実施例1,2については対照例2の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。また、「後味の良さ」、「口当たりの良さ」については、比較例に対して0.6点以上評点が大きくなる場合について、改善効果が生じると判断した。なお、評価の段階(点数)は、以下の基準に従った。
【0047】
・評価基準
「後味の良さ」、「口当たりの良さ」
7点・・・対象品よりも非常に良い
6点・・・対象品よりも良い
5点・・・対象品よりもわずかに良い
4点・・・対象品と同等の良さ
3点・・・対象品よりもわずかに悪い
2点・・・対象品よりも悪い
1点・・・対象品よりも非常に悪いか全く感じない
「苦みの強さ」
7点・・・対象品よりも非常に強い
6点・・・対象品よりも強い
5点・・・対象品よりもわずかに強い
4点・・・対象品と同等の強さ
3点・・・対象品よりもわずかに弱い
2点・・・対象品よりも弱い
1点・・・対象品よりも非常に弱いか全く感じない
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、カフェインと乳化物とを含む比較例1では、苦みが増強されるとともに、後味と口当たりの両方が悪くなることがわかった。これに対して、カリウム成分が添加された実施例1,2では、後味と口当たりの両方が同時に改善されることが確認された。
【0050】
[実験2]香料の違いによる影響の検証
<対照例2、比較例2~4、実施例3>
表2に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定、および評価を行い、結果を表2に示した。対照例2を比較例2~4、実施例3の対照品(基準値4点)とした。なお、表2中の「-」は、配合されていないことを示す。なお、ミルク香料(エッセンス香料)およびカフェラテ香料(透明乳化物)の平均粒子径については、上述した粒度測定方法にしたがって、予め測定した。
【0051】
【表2】
【0052】
ミルク香調のエッセンス香料が添加された比較例2,3では、後味、口当たり、苦味ともに対照例2との差が比較的小さい。一方、カフェラテ香調の透明乳化物が添加された比較例4では、苦みが増強されるが、実施例3のように乳清ミネラル(みるくのミネラルL10)によりカリウム成分を添加することにより、苦みが弱まり、口当たりと後味の両方が改善された。
【0053】
[実験3]カリウム量の違いによる影響の検証
<対照例2、比較例1,5、実施例1,4~6>
表3に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定、および評価を行い、結果を表3に示した。対照例2を比較例1,5、実施例1,4~6の対照品(基準値4点)とした。なお、表3中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示すように、KCl由来のカリウム濃度が0.5~50mg/100mlの範囲内である、実施例1,4~6において、後味と口当たりの両方が同時に改善することが確認された。
【0056】
[実験4]カフェイン量の違いによる影響の検証
<対照例2~6、比較例6、実施例2,7~9>
表4に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定、および評価を行い、結果を表4に示した。対照例3、4、2、5、6をそれぞれ比較例6、実施例7、実施例2、実施例8、実施例9の対照品(基準値4点)とした。なお、表4中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0057】
【表4】
【0058】
カフェイン濃度が、0.02~1g/Lの範囲に入る実施例7~9において、後味と口当たりの両方が同時に改善することが確認された。
【0059】
[実験5]酸度の違いによる影響の検証
<対照例2、対照例10,11>
表5に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、および評価を行い、結果を表5に示した。対照例2を実施例10,11の対照品(基準値4点)とした。なお、表5中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0060】
【表5】
【0061】
表5に示すように、酸度がより低い実施例10,11において、後味と口当たりの両方が同時により一層改善することが確認された。