(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】発光装置、撮像装置及びこれらの制御方法、撮像システム、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 15/05 20210101AFI20221212BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20221212BHJP
G03B 7/16 20210101ALI20221212BHJP
H04N 5/235 20060101ALI20221212BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221212BHJP
H04N 5/243 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B15/03 Z
G03B7/16
H04N5/235 400
H04N5/232 030
H04N5/232 450
H04N5/243
(21)【出願番号】P 2018121070
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】周 隆之
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347938(JP,A)
【文献】特開2007-256907(JP,A)
【文献】特開2017-129719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/05
G03B 15/03
G03B 7/16
H04N 5/235
H04N 5/232
H04N 5/243
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と通信可能に接続する発光装置であって、
自動調光を行う際に前記撮像装置により設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値
、及び、ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を前記撮像装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1の発光量下限値は、前記第2の発光量下限値より低いことを特徴とする請求項
1記載の発光装置。
【請求項3】
撮像素子を有し、発光装置と通信可能に接続する撮像装置であって、
自動調光を行う際に設定した第1の発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値を決定する決定手段
と、
ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を取得する取得手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記第1の発光モードにおいて、前記発光装置が未発光の状態で前記撮像素子の感度を第1の感度に設定し、前記第1の感度で前記自動調光を行って前記撮影時の発光量を算出する第1の算出手段と、
前記第1の発光モードにおいて、発光量制限モードに設定されているか否かを判定する判定手段と、
前記発光量制限モードに設定されていると判定され、且つ前記第1の算出手段により算出された発光量が前記第1の発光量下限値より低い場合、前記第1の発光量を前記第1の発光量下限値に設定し、前記第1の算出手段により算出された発光量と前記第1の発光量下限値の差分だけ、前記第1の発光モードでの撮影時の前記撮像素子の感度を前記第1の感度から下げた感度に設定する第1の設定手段とを更に備えることを特徴とする請求項
3記載の撮像装置。
【請求項5】
自動調光を行う際に設定した第2の発光量で前記撮像装置における連続撮影時に前記発光装置を発光させる第
3の発光モードにおいて、前記撮像素子の感度を前記第1の感度より所定量大きく設定された第2の感度で前記自動調光を行って前記連続撮影時の発光量を算出する第2の算出手段と、
前記第
3の発光モードにおいて、前記発光量制限モードに移行する移行手段と、
前記発光量制限モードへの移行後、前記第2の算出手段により算出された発光量が前記第1の発光量下限値より低い場合、前記第2の発光量を前記第1の発光量下限値に設定し、前記第2の算出手段により算出された発光量と前記第1の発光量下限値の差分だけ、前記第
3の発光モードでの連続撮影時の前記撮像素子の感度を前記第2の感度から下げた感度に設定する第2の設定手段とを更に備えることを特徴とする請求項
4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の発光量下限値は、前記第2の発光量下限値より低いことを特徴とする請求項
3乃至5のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項7】
前記発光装置からその機種情報を取得する
機種情報取得手段と、
前記取得した機種情報から、前記発光装置が前記第1の発光量下限値の通信に対応している第1の種類か、前記通信に対応していない第2の種類であるかを特定する特定手段とを更に備え、
前記決定手段は、前記発光装置が前記第1の種類と特定された場合は、前記発光装置に対して前記第1の発光量下限値を要求し、前記発光装置が前記第2の種類と特定された場合は、予め設定された所定値を前記第1の発光量下限値とすることを特徴とする請求項
3乃至
6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記発光装置が前記第2の種類と特定された場合、前記取得した機種情報に対応した下限値情報を有しているか否かを判定する手段を更に備え、
前記下限値情報を有している場合は、前記予め設定された所定値として前記下限値情報に基づく値を設定し、前記下限値情報を有していない場合は、前記予め設定された所定値として前記発光装置の機種情報に依存しない一律の値を設定することを特徴とする請求項
7記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像装置及び発光装置を通信可能に接続する撮像システムであって、
前記撮像装置は、
自動調光を行う際に設定した第1の発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値を決定する決定手段と、
前記発光装置からその機種情報を取得する取得手段と、
前記取得した機種情報から、前記発光装置が前記第1の発光量下限値の通信に対応している第1の種類か、前記通信に対応していない第2の種類であるかを特定する特定手段とを備え、
前記決定手段は、前記発光装置が前記第1の種類と特定された場合は、前記発光装置に対し
て前記第1の発光量下限値を要求し、前記発光装置が前記第2の種類と特定された場合は、予め設定された所定値を前記第1の発光量下限値とし、
前記発光装置は、
前記要求が前記撮像装置で行われたときに、前記第1の発光量下限値を前記撮像装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項10】
撮像装置と通信可能に接続する発光装置の制御方法であって、
自動調光を行う際に前記撮像装置により設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値
、及び、ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を前記撮像装置に送信する送信ステップを有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
撮像素子を有し、発光装置と通信可能に接続する撮像装置の制御方法であって、
自動調光を行う際に設定した発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値を決定する決定ステップ
と、
ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を取得する取得ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項
10又は
11に記載の制御方法を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、撮像装置及びこれらの制御方法、撮像システム、並びにプログラムに関し、特にストロボの発光量を微小量に抑える必要がある撮影に用いられる発光装置、撮像装置及びこれらの制御方法、撮像システム、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近距離撮影など、発光装置(ストロボ)の発光量を微小量に抑える必要がある撮影においては、露出がオーバーになりやすいという問題があった。発光装置において微小量に発光量を抑える調光は困難であるためである。
【0003】
図5(a)は、カメラからの発光指示値とストロボの発光量の関係を示すグラフである。
【0004】
横軸は、カメラから発光装置への相対光量(EV)で示す発光指示値である。
【0005】
ストロボの発光量を1/1(フル発光)とする指示を示す発光指示値を基準値(0EV)とする。また、発光指示値-1EVは、ストロボの発光量をフル発光の1/2とする指示を意味し、発光指示値-10EVは、ストロボの発光量をフル発光の1/1024とする指示を意味する。
【0006】
縦軸は、発光指示値に応じた実際の各ストロボ1,2の相対光量(EV)で示す発光量であり、各ストロボ1,2の調光性能を意味する。例えば、
図5(a)において、ストロボ1はカメラからの発光指示値として-10EVを受信し発光した場合、フル発光の1/1024で発光する。以下、発光指示値で示す指示通りの発光量を理想的な発光量という。
【0007】
図5(b)は、カメラからの発光指示値に対し、理想的な発光量からどれだけ各ストロボ1,2の発光量がずれるかを示すグラフである。
【0008】
図5(b)に示すように、ストロボ1,2いずれにおいても発光指示値が-10EV未満の領域においては、理想的な発光量からの差分が大きくなる、すなわち、適切な調光ができなくなる。より具体的には、上記領域においては、実際の発光量は理想的な発光量に対して多くなる、すなわち、ストロボ1,2は明るく発光してしまう。
【0009】
つまり、ストロボ1においては-10EVが、ストロボ2においては-13EVが適切な調光ができる下限値(以下、発光量下限値という)となる。
【0010】
図6は、暗い屋内で人物をストロボ撮影した際の例である。
【0011】
図6(a)は、ユーザの意図通りに、適正な発光量及び露出で撮影された画像を示す。
【0012】
一方、発光量下限値を考慮せずに撮影した場合、
図6(a)のような画像が撮影できない可能性がある。例えば、カメラからは演算上は適正な露出が得られるはずの発光量とする発光指示値がストロボに送信されているが、その発光指示値がストロボにおける発光量下限値未満である場合である。このような場合、ストロボは適切な調光ができず理想的な発光量より明るく発光してしまうため、
図6(b)に示すように被写体の露出がオーバーとなった画像が撮影される。尚、この場合もストロボ光が届かない背景は、適切な露出となる。
【0013】
これに対し、特許文献1では、クローズアップレンズを用いたストロボ撮影時に、カメラで演算された発光指示値がストロボの発光下限値以下となった場合、ストロボに送信する発光指示値を発光下限値に固定する。その一方、絞り量、撮像素子から得られる画像信号に付与される感度(ISO感度)を調整する。これにより、被写体の露出がオーバーになることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の方法では、被写体の露出がオーバーになることを抑制すべく、絞り量やISO感度を調整するため、背景がユーザの意図通りの露出にならない画像が撮影される可能性がある。
【0016】
具体的には、特許文献1の方法ではストロボへの発光指示値を発光下限値に固定するため、ストロボは適切な調光を行うことができ、その結果、カメラからの発光指示値に従った適切な明るさで発光を行う。
【0017】
一方、このように、演算された発光指示値に応じた理想的な発光量より発光量を明るくした分、発光量以外の露出値(絞り量やISO感度)を暗くなるように調整する。このため、
図6(c)に示すように、ストロボ光が到達しない背景は露出がアンダーとなる。
【0018】
また、
図5(a),(b)のストロボ1,2の調光特性を示すグラフで示されるように、ストロボによってその発光量下限値が異なる。これに対し、カメラが発光量下限値を一律に設定した場合、下記の2つの問題が生じる場合がある。
【0019】
(1)ストロボの実際の発光下限値が、カメラが一律に設定する発光量下限値より高い場合、特許文献1の技術は有効ではなくなり、
図6(b)のような画像になってしまう場合がある。
【0020】
(2)ストロボの実際の発光下限値が、カメラが一律に設定する発光量下限値より低い場合、ストロボの調光性能としては
図6(a)のような適正露出の画像が撮影できるにもかかわらず、
図6(c)のような画像になってしまう場合がある。すなわち、ストロボの調光性能を最大限に生かすことができない場合がある。
【0021】
そこで、本発明の目的は、ストロボの発光量を微小量に抑える必要がある撮影において、ストロボの調光性能を最大限に生かして適正露出の画像が撮影できる発光装置、撮像装置及びこれらの制御方法、撮像システム、並びにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の請求項1に係る発光装置は、撮像装置と通信可能に接続する発光装置であって、自動調光を行う際に前記撮像装置により設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値、及び、ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に発光する第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を前記撮像装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項3に係る撮像装置は、撮像素子を有し、発光装置と通信可能に接続する撮像装置であって、自動調光を行う際に設定した第1の発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値を決定する決定手段と、ユーザにより設定された発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第2の発光モードにおいて前記ユーザが前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第2の発光量下限値を取得する取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項9に係る撮像システムは、撮像装置及び発光装置を通信可能に接続する撮像システムであって、前記撮像装置は、自動調光を行う際に設定した第1の発光量で前記撮像装置における撮影時に前記発光装置を発光させる第1の発光モードにおいて前記撮像装置が前記発光装置の発光量の下限値として設定できる第1の発光量下限値を決定する決定手段と、前記発光装置からその機種情報を取得する取得手段と、前記取得した機種情報から、前記発光装置が前記第1の発光量下限値の通信に対応している第1の種類か、前記通信に対応していない第2の種類であるかを特定する特定手段とを備え、前記決定手段は、前記発光装置が前記第1の種類と特定された場合は、前記発光装置に対して前記第1の発光量下限値を要求し、前記発光装置が前記第2の種類と特定された場合は、予め設定された所定値を前記第1の発光量下限値とし、前記発光装置は、前記要求が前記撮像装置で行われたときに、前記第1の発光量下限値を前記撮像装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ストロボの発光量を微小量に抑える必要がある撮影において、ストロボの調光性能を最大限に生かして適正露出の画像が撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1におけるカメラとストロボの実施例1に係る通信シーケンスを示す図である。
【
図3】実施例1に係るストロボ撮影処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図3のステップS305の発光量下限値決定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】カメラからの発光指示値とストロボの発光量の関係の例を示す図である。
【
図6】暗い屋内で人物をストロボ撮影した際の撮影画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1において、撮像システムは、カメラ100、レンズ200、及びストロボ300により構成される。
【0030】
レンズ200は、交換可能にカメラ100と装着されており、カメラ100のマウント接点群103を介して電気的に接続されている。
【0031】
ストロボ300も、交換可能にカメラ100と装着されており、カメラ100のストロボ接点群109を介して電気的に接続されている。
【0032】
以下、カメラ100の内部構成について説明する。
【0033】
カメラ制御部101は、カメラ100の各部の動作を制御するマイクロコンピューターである。
【0034】
撮像素子102は、以下後述するレンズ200の撮影レンズ202を通して入射する被写体からの光を電気信号に変換して画像データを生成し、カメラ制御部101へ出力する。
【0035】
フォーカルプレーンシャッター104(以下、シャッター104という)は、撮像素子102と撮影レンズ202との間に配置され、カメラ制御部101の指示により動作する。シャッター104は先幕と後幕で構成され、先幕が走行しシャッター104が開くことにより撮像素子102の露光が開始され、後幕が走行しシャッター104が閉じることで撮像素子102の露光が終了する。
【0036】
カメラ操作部105は、カメラ100に取り付けられた
図1において不図示のレリーズボタン、スイッチ、ダイヤル、接続機器等の操作部材を介してユーザが行った操作を検知し、操作指示に応じた信号をカメラ制御部101へ送る。例えば、カメラ操作部105は、ユーザがレリーズボタンを半押し操作した場合にSW1信号をカメラ制御部101に出力し、ユーザがレリーズボタンを深く押し込む全押し操作を行った場合にSW2信号をカメラ制御部101に出力する。
【0037】
カメラ表示部106は、カメラ制御部101の指示により、撮影情報の表示や撮影画像の表示を行う。
【0038】
カメラ制御部101は、カメラ操作部105の出力信号に基づいて、カメラ100の動作制御を行う。カメラ操作部105よりSW1信号が出力された場合、撮像素子102を駆動して撮像を行い、AF及びAE動作をする。AE動作とは、撮像素子102による撮像結果から被写体の輝度を測定する測光制御を繰り返すとともに、測光結果から撮影時に使用するシャッター速度、絞り値、ISO感度を決定する動作である。ここで、撮影時に使用するシャッター速度、絞り値、ISO感度をまとめて、露出制御値と称する。決定した露出制御値はカメラ表示部106の画面上に表示される。また、AF動作とは、撮像素子102による撮像結果から、撮影レンズ202の焦点状態を検出するAF演算を行い、そのAF演算の結果に基づき撮影レンズ202を駆動してその焦点状態を調節する動作である。一方、カメラ操作部105よりSW2信号が出力された場合、以下後述するレンズ200の絞り203を駆動し、撮像素子102の感度(ISO感度)を設定して、シャッター104を制御して撮像素子102へ光を照射させる。カメラ制御部101は、撮像素子102から取得した画像データに従ってカメラ表示部106の画面上に撮影画像を表示させるとともに、画像記憶部107へ画像データを書き込む制御を行う。
【0039】
次に、レンズ200の内部構成について説明する。
【0040】
レンズ制御部201は、レンズ200の各部の動作を制御するマイクロコンピューターである。撮影レンズ202は、複数のレンズにより構成され、被写体像を撮像素子102に結像させる。さらに、撮影レンズ202内には光量を調節するための絞り203とピントを調整するためのフォーカスレンズ(不図示)が備えられている。
【0041】
レンズ制御部201は、マウント接点群103を介したカメラ制御部101からの指示に従い、カメラ100内に取り込む光量とピントを調整する。
【0042】
次に、ストロボ300の内部構成について説明する。
【0043】
ストロボ制御部301は、ストロボ300の各部の動作を制御するマイクロコンピューターである。ストロボ制御部301は、ストロボ接点群109を介して、カメラ制御部101と通信可能で、カメラ100からの発光制御指示およびカメラ情報の受信とカメラ100へのストロボ情報の送信を行うことができる。発光部302は、
図1において不図示の放電管、発光用コンデンサー、発光回路、発光光学系より構成される。ストロボ操作部303は、ユーザが操作する操作部材を備えており、ストロボ300に取り付けられた
図1において不図示のボタン、ダイヤルなどを介してユーザが行った操作を検知し、操作指示に応じた信号をストロボ制御部301へ送る。ストロボ表示部304は、ストロボ制御部301の指示により、発光モードなどの表示を行う。
【0044】
発光部302は、ストロボ制御部301の指示により、発光回路を駆動し、発光用コンデンサーに充電されたエネルギーを放電管に放出することにより発光を行い、発光光学系を介して、被写体を照射する。発光量については、ストロボ操作部303によって設定してもよいし、ストロボ接点群109を介して、カメラ制御部101から通信により取得してもよい。ストロボ制御部301は、ストロボ接点群109を介したカメラ制御部101からの指示に従い、カメラ100の撮影動作に同期して発光部302を所定の発光量で発光させる。
【実施例1】
【0045】
以下、
図2を参照して、
図1の撮像システムの実施例1に係る動作について説明する。
【0046】
図2は、
図1におけるカメラ100とストロボ300の実施例1に係る通信のシーケンスを示す図である。この通信はストロボ接点群109を介して行われる。
【0047】
まず、カメラ制御部101は機種情報要求110をストロボ300に送信する。ストロボ制御部301は、機種情報要求110を受信すると、カメラ制御部101に対して機種情報310を送信する。この機種情報310を受信することで、カメラ制御部101は、装着されているストロボ300の種類を特定することができる。
【0048】
次にカメラ制御部101は、マニュアル発光下限値要求111をストロボ300に送信する。ストロボ制御部301は、マニュアル発光下限値要求111を受信すると、カメラ制御部101に対してマニュアル発光下限値311を送信する。マニュアル発光下限値311とは、カメラ100での撮影時におけるストロボ300の発光量をユーザが設定する発光モード(マニュアル発光モード)において、ユーザが設定できる最小の発光量を指す。マニュアル発光下限値311より低い発光量は、マニュアル発光モードにおける発光量の設定の際にカメラ表示部106及びストロボ表示部304のいずれにもユーザ選択可能に表示されず、ユーザが設定することはできない。
【0049】
次にカメラ制御部101は、受信した機種情報310に基づき特定されたストロボ300の種類が自動調光発光下限値情報通信に対応している種類であると特定した場合、自動調光発光下限値要求112をストロボ300に送信する。ストロボ制御部301は、自動調光発光下限値要求112を受信すると、カメラ制御部に対して自動調光発光下限値312を送信する。自動調光発光下限値312とは、自動調光モードにおいて、カメラ100が、ストロボ300に対して設定することができる最小の発光量を指す。尚、この自動調光モードの動作については後述する。
【0050】
マニュアル発光モードでは、撮影時のストロボ300の発光量はユーザが操作して設定するため、カメラ表示部106及びストロボ表示部304の少なくとも1つにユーザがその発光量として設定できる数値範囲を表示する必要がある。だが、カメラ表示部106及びストロボ表示部304の表示スペースには限界があるため、ユーザが通常発光量として設定する範囲にその数値範囲は制限される。
【0051】
一方で、自動調光モードでは、撮影時のストロボ300の発光量はカメラ100が設定するため、その発光量として指定できる数値範囲をユーザに通知する必要はない。このため、カメラ表示部106及びストロボ表示部304の仕様にその数値範囲は制限されず、ストロボ300の調光性能に応じてその数値範囲の下限値は決定される。すなわち、自動調光発光下限値312は、マニュアル発光下限値311より低い値に設定される。
【0052】
尚、自動調光発光下限値312は、ストロボ300の調光性能上、発光量として設定しうる最下限値以上の値であって、マニュアル発光下限値311より低い値に設定されれば、その値を特に限定するものではない。だが、自動調光発光下限値312はかかる最下限値とすることが望ましい。自動調光発光下限値312をかかる最下限値より高くすると、ストロボ300の調光性能としては
図6(a)のような適正露出の画像が撮影できるにもかかわらず、
図6(c)のような画像になってしまう場合があるからである。例えばストロボ300が
図5(b)のストロボ2と同じ調光性能を有する場合、マニュアル発光下限値311をフル発光時の発光量の1/128とする相対光量の値(-7EV)とする。一方、自動調光発光下限値をストロボ300の調光性能上、発光量として設定しうる最下限値であるフル発光時の発光量の1/8192とする相対光量の値(-13EV)とする。
【0053】
なお、上記では、マニュアル発光下限値311をフル発光時の発光量の1/128、自動調光発光下限値312をフル発光時の発光量の1/8192として、EV表記したときに整数となる下限値としている。しかしながら、自動調光発光下限値312についてはEV表記したときに整数とならなくてもよい。例えば、発光量調整を詳細に行おうとすると、発光量調整のステップ幅は、EV表記の1/4や1/8といったステップ幅となる場合も考えられる。このようなステップ幅で発光量調整を行う構成では、自動調光発光下限値312であればEV表記したときに整数とならない値としても問題ないが、EV表記したときに整数とならない値はマニュアル発光下限値311には適さない。具体的には、ストロボ300の調光性能上の下限値がEV表記で-7+1/8EV(フル発光時の発光量の9/1024)の場合、この下限値を表示する必要がない自動調光発光下限値312として設定しても問題がない。一方、このようなEV表記で整数とならない値をマニュアル発光下限値とすると、EV表記で-7EV(フル発光時の発光量の1/128)とする上記場合よりも表示スペースを要する。
【0054】
以上説明した
図2の通信シーケンスにおける通信は、カメラ100とストロボ300の間で行われる通信の一例であり、このほかにも様々な通信を行っている。これらの通信は、カメラ制御部101が、ストロボの装着を検知した時や、撮影タイミングなどの所定のタイミングで実行される。
【0055】
尚、カメラ100は、自動調光発光下限値情報通信に対応していない種類のストロボ300’が装着された場合、ストロボ300の装着時と同様、まず、ストロボ300’に対して機種情報要求110を送信する。カメラ制御部101は、この要求に応じてストロボ300’から送信された機種情報310’に基づき、ストロボ300’が自動調光発光下限値情報通信に対応している種類であると特定する。かかる特定がなされた場合、カメラ制御部101は、自動調光発光下限値要求112をストロボ300’に送信することなく、自動調光モードにおいてストロボ300’に対して設定しうる発光量の下限値に予め設定された所定値を設定する。詳細は
図4において説明する。
【0056】
図3に示すフローチャートを用いて、本実施例に係るストロボ撮影処理の動作を説明する。本処理は、カメラ100において自動調光モード及びISO感度自動設定モードが設定されている場合に、カメラ制御部101がカメラ100において不図示のROMに保持されるプログラムを読み込むことにより実行される。尚、自動調光モードとは、プリ発光を行い、被写体からの反射光を撮像素子102が受光して適切な露出でのストロボ撮影が可能となる発光量(メイン発光量)を算出した後、ストロボ撮影を行うモードである。また、ISO感度自動設定モードとは、AE動作によってISO感度が自動的に設定されるモードである。
【0057】
まず、カメラ制御部101はSW1信号がON状態となると(ステップS300でYES)、ステップS301へと進み、AF及びAE動作をする。すなわち、カメラ100に装着されたストロボが未発光の状態で、撮影レンズ202の焦点状態の調節及びISO感度を含む露出制御値の決定が行われる。
【0058】
次に、カメラ制御部101はSW2信号がON状態となると(ステップS302でYES)、ステップS303へに進む。ステップS303において、カメラ制御部101は、ストロボ300に対するプリ発光制御と、撮像素子102への制御を行い、得られた情報から撮影時のストロボ発光量(メイン発光量)を算出する。尚、プリ発光時に用いられる露出制御値はステップS301で決定された値が用いられる。
【0059】
ステップS304において、カメラ制御部101は、ISO感度シフトモードに移行しているか否かを判定する。この判定の結果、ISO感度シフトモードに移行している場合は、ステップS305へと処理を進め、ISO感度シフトモードに移行していない場合は、ステップS309へと処理を進める。ここで、ISO感度シフトモード(発光量制限モード)とは、カメラ100に装着されるストロボの発光量を制限すべく、後述するステップS304~S308によりISO感度をシフトするモードである。また、ユーザの操作によって、ISO感度シフトモードへの移行が行われる。
【0060】
ステップS305において、カメラ制御部101は、装着されているストロボに対して自動調光モードにおいて設定しうる発光量の下限値を決定する発光量下限値決定処理を実行する。
【0061】
図4は、
図3のステップS305の発光量下限値決定処理のサブルーチンを示す図である。
【0062】
ステップS400において、カメラ制御部101は、装着されているストロボが、自動調光発光下限値情報通信に対応しているか否かを判定する。この結果、対応していると判定した場合、すなわち装着されているストロボがストロボ300である場合は、ステップS401に進み、対応していないと判定した場合、すなわち装着されているストロボがストロボ300’である場合は、ステップS402に進む。
【0063】
ステップS401において、カメラ制御部101は、ストロボ300から取得した自動調光発光下限値312を自動調光モードでの撮影において設定しうる発光量の下限値に決定し、発光量下限値決定処理を終了する。
【0064】
ステップS402において、カメラ制御部101は、ストロボ300’から得られた機種情報310’に対応した下限値情報をカメラ制御部101自身が有しているか否かを判定する。この判定の結果、下限値情報を有している場合は、ステップS403へ処理を進め、有していないと判定した場合は、ステップS404へ処理を進める。ここで、下限値情報とは、ストロボの機種毎に、その調光性能上、発光量として設定しうる最下限値を示す情報である。例えば、例えば、
図5(b)のグラフのストロボ1の場合、その下限値情報は-10EVとなる。
【0065】
ステップS403において、カメラ制御部101は、ストロボ300’から得られた機種情報310’に対応した下限値情報に基づき、自動調光モードでの撮影において設定しうる発光量の下限値を決定し、本処理を終了する。例えば、カメラ制御部101自身が
図5(b)のグラフのストロボ1の下限値情報及び機種情報を有し、且つストロボ300’の機種情報310’がストロボ1の機種情報に一致している場合、ステップS403で発光量の下限値が-10EVに決定される。
【0066】
ステップS404において、カメラ制御部101は、ストロボ300’の機種情報310’に依存しない一律の値である所定値を自動調光モードでの撮影において設定しうる発光量の下限値に決定し、本処理を終了する。
【0067】
図3に戻り、ステップS305の発光量下限値決定処理を終了すると、ステップS306に進む。
【0068】
ステップS306において、カメラ制御部101は、ステップS303で算出されたストロボ発光量が、ステップS304で決定された発光量の下限値以下か否かを判定する。
【0069】
算出されたストロボ発光量がステップS305で決定された発光量の下限値以下であった場合は、ステップS307に進む。一方、算出されたストロボ発光量がステップS305で決定された発光量の下限値より大きい場合は、ステップS309に進む。
【0070】
ステップS307において、カメラ制御部101は、ステップS304で決定された発光量の下限値をメイン発光量として設定する。
【0071】
ステップS308において、カメラ制御部101は、ステップS303で算出されたストロボ発光量と、ステップS307で設定されたストロボ発光量の差分に基づき、撮影時のISO感度をシフトする。例えば、ステップS303で算出されたストロボ発光量が-11EVであり、ステップS307で設定されたストロボ発光量が-10EVであった場合、メイン発光量は1EVだけ明るくなる。これに対しISO感度を1EV分だけ下げることで、被写体を適正露出で撮影することができる。
【0072】
ステップS309では、カメラ制御部101は、ストロボ300、撮像素子102、及びシャッター104などを制御し、装着されるストロボを発光(メイン発光)して露光動作を実行し、本処理を終了する。
【0073】
上記の通り本発明の実施形態によれば、カメラ100が装着されるストロボがストロボ300である場合はストロボ300からの自動調光発光下限値312をステップS305で決定される発光量の下限値に決定する。一方、カメラ100が装着されるストロボがストロボ300’である場合はストロボ300’からの機種情報310’に基づきステップS305で決定される発光量の下限値に決定する。すなわち、カメラ100に装着されるストロボ毎に、そのストロボに対して自動調光モードにおいて設定しうる発光量の下限値を決定することができる。これにより、ストロボ毎の発光能力を最大限に生かすように発光制御し、ストロボ撮影をすることができる。
【実施例2】
【0074】
次に、カメラ100が、連写優先自動調光モードを更に有する場合について説明する。
【0075】
連写優先自動調光モードとは、連続撮影時のメイン発光量を低くすることにより、ストロボの発光のための充電切れによる発光抜けを抑え、ストロボの連続発光回数を多くすることができるモードである。すなわち、連写優先自動調光モードにおけるISO感度自動設定モード時に設定されるISO感度は、自動調光モードにおける場合(すなわちステップS301で決定されるISO感度)よりも所定量大きく設定される。また、連写優先自動調光モードでのプリ発光により算出されるメイン発光量は、
図3のステップS303で算出される値より低くなる。
【0076】
連写優先自動調光モード及びISO感度自動設定モードが設定されている場合のストロボ撮影処理は、基本的には
図3と同様となる。但し、ステップS302でSW2信号がON状態となり、ステップS303でプリ発光によりメイン発光量を算出した後、カメラ制御部101は、ISO感度シフトモードに移行し、かかる移行後にステップS305に進む。また、カメラ制御部101は、カメラ表示部106を介して、ISO感度シフトモードに移行したことをユーザに通知する。
【0077】
連写優先自動調光モードでは、上述の通り自動調光モードで算出されるメイン発光量の値より低い値が算出される。このため、カメラ100に装着されるストロボの調光性能上、発光量として設定しうる最下限値より、算出されるメイン発光量の方が低くなる可能性は、自動調光モードの場合より高くなる。このため、上述の通り、連写優先自動調光モードでは、ユーザ操作によりISO感度シフトモードに移行しているか否かを判定するのではなく、カメラ制御部101自身でISO感度シフトモードに移行する。これにより、適正な露出で被写体を撮影する確率を上げることができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0079】
[その他の実施例]
本発明の目的は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、装置に供給することによっても、達成されることは言うまでもない。このとき、供給された装置の制御部を含むコンピュータ(またはCPUやMPU)は、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
【0080】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0081】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0082】
また、上述のプログラムコードの指示に基づき、装置上で稼動しているOS(基本システムやオペレーティングシステム)などが処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0083】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、装置に挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれ、前述した実施例の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。このとき、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行う。
【符号の説明】
【0084】
100 カメラ
101 カメラ制御部
102 撮像素子
104 シャッター
106 カメラ表示部
109 ストロボ接点群
200 レンズ
300 ストロボ
301 ストロボ制御部
302 発光部