(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221212BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2018127166
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊道
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-092894(JP,A)
【文献】特開2000-124289(JP,A)
【文献】特開平11-116046(JP,A)
【文献】特開2006-080345(JP,A)
【文献】特開平06-104326(JP,A)
【文献】特開2018-073942(JP,A)
【文献】特開平05-294406(JP,A)
【文献】特開2013-235870(JP,A)
【文献】特開2005-101069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、
前記搬送対象物が載置されるハンドと、
前記ハンド上の前記搬送対象物を検出する検出部と、
を備え、
前記ハンドは、
載置面と、
前記搬送対象物が前記載置面との間に隙間をあけ且つ前記載置面に沿って配置されるように、前記搬送対象物の裏面の三箇所を支持可能な第1支持部、第2支持部、及び第3支持部と、
を有し、
前記検出部は、
前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とによって支持された前記搬送対象物の外周面に対向して配置され
、前記外周面からの反射光強度に応じた信号を出力信号とする複数の反射型光センサと、
前記複数の反射型光センサの
前記出力信号
の大きさに基づいて、前記搬送対象物の載置状態を判定する信号処理部と、
を有し、
前記複数の反射型光センサは、前記第1支持部を通り且つ前記第2支持部と前記第3支持部との中間を通る中心線の一方側に設けられた第1センサと、他方側に設けられた第2センサとを含
み、
前記第1支持部、前記第2支持部、及び前記第3支持部は、前記搬送対象物の前記裏面の外周部を支持し、
前記第1支持部、前記第2支持部及び前記第3支持部は、前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とを結んで得られる三角領域の外接円の中心に向いた傾斜面であって、前記載置面に近づくほどに前記中心に近づく傾斜面を有しており、前記傾斜面によって前記搬送対象物の前記裏面の外周部の縁に接する産業用ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の産業用ロボットであって、
前記第1センサと、前記第2センサとは、前記中心線を挟んで互いに対称となる位置に設けられている産業用ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の産業用ロボットであって、
前記第1センサと、前記第2センサとは、前記第1支持部に隣設されている産業用ロボット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の産業用ロボットであって、
前記搬送対象物は半導体ウエハである産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたロボットは、半導体ウエハを搬送するロボットであり、半導体ウエハが載置されるハンド(エンドエフェクタ)の表面に、磁性体ウエハ支持ピンと、ウエハ支持ピンを支持する弾性体と、弾性体に隣設される磁気センサとを備える。半導体ウエハの重みによって、ウエハ支持ピンと磁気センサとの間に挟まれる弾性体が圧縮され、ウエハ支持ピンと磁気センサとのギャップが縮まり、磁気センサの出力が変化する。この磁気センサの出力の変化に基づいて、ハンド上の半導体ウエハの有無が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された搬送ロボットでは、ハンド上の半導体ウエハの有無が検出されるだけである。半導体ウエハは、ハンドに載置されているだけであり、ハンド上で固定されていない。半導体ウエハの表面を保護する観点から、半導体ウエハは、磁性体ウエハ支持ピンを含む複数のウエハ支持ピンによって、ハンドの載置面との間に隙間をあけて支持されており、不安定である。半導体ウエハが適正にハンドに載置されていない場合に、搬送中の振動や障害物との衝突に起因して半導体ウエハがハンドから落下し、半導体ウエハが破損する虞がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、搬送対象物の載置状態を検出可能な産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の産業用ロボットは、板状の搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、前記搬送対象物が載置されるハンドと、前記ハンド上の前記搬送対象物を検出する検出部と、を備え、前記ハンドは、載置面と、前記搬送対象物が前記載置面との間に隙間をあけ且つ前記載置面に沿って配置されるように、前記搬送対象物の裏面の三箇所を支持可能な第1支持部、第2支持部、及び第3支持部と、を有し、前記検出部は、前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とによって支持された前記搬送対象物の外周面に対向して配置され、前記外周面からの反射光強度に応じた信号を出力信号とする複数の反射型光センサと、前記複数の反射型光センサの前記出力信号の大きさに基づいて、前記搬送対象物の載置状態を判定する信号処理部と、を有し、前記複数の反射型光センサは、前記第1支持部を通り且つ前記第2支持部と前記第3支持部との中間を通る中心線の一方側に設けられた第1センサと、他方側に設けられた第2センサとを含み、前記第1支持部、前記第2支持部、及び前記第3支持部は、前記搬送対象物の前記裏面の外周部を支持し、前記第1支持部、前記第2支持部及び前記第3支持部は、前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とを結んで得られる三角領域の外接円の中心に向いた傾斜面であって、前記載置面に近づくほどに前記中心に近づく傾斜面を有しており、前記傾斜面によって前記搬送対象物の前記裏面の外周部の縁に接する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送対象物の載置状態を検出可能な産業用ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、産業用ロボットの一例の平面図であり、アームが縮んでいる状態の平面図である。
【
図2】
図1の産業用ロボットの平面図であり、アームが伸びている状態の平面図である。
【
図4】
図1の産業用ロボットのハンドの平面図である。
【
図6】搬送対象物の載置状態の一例の模式図である。
【
図8】搬送対象物の載置状態の他の例の模式図である。
【
図10】搬送対象物の載置状態の他の例の模式図である。
【
図12】搬送対象物の載置状態の他の例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(産業用ロボットの全体構成)
図1から
図3は、本発明の実施形態を説明するための産業用ロボットの一例を示す。産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、板状の搬送対象物である半導体ウエハ2(以下、「ウエハ2」とする。)を搬送するためのロボットである。ロボット1は、例えば、複数のウエハ2が所定のピッチで積層されて収納されるカセット(図示省略)から複数のウエハ2を同時に搬出する。そして、ロボット1は、複数のウエハ2が所定のピッチで積層されて収納される半導体製造システムの加熱炉(図示省略)の中へカセットから搬出した複数のウエハ2を搬入する。また、ロボット1は、加熱炉から複数のウエハ2を同時に搬出して、搬出した複数のウエハ2をカセットの中へ搬入する。
【0010】
ロボット1は、複数のウエハ2が搭載されるウエハ搭載機構3と、ウエハ搭載機構3の基端側を回動可能に支持する第1アーム4と、カセット内あるいは加熱炉内のウエハ2の収納状態を検出するためのセンシング用ハンド5と、センシング用ハンド5の基端側を回動可能に支持する第2アーム6と、第1アーム4および第2アーム6の基端側を回動可能に支持するアーム支持部7と、アーム支持部7を昇降可能に支持する昇降機構8とを備える。
【0011】
ウエハ搭載機構3は、所定のピッチで上下方向に重なるように配置される複数の搬送用ハンドを有する。カセットに収納されるウエハ2のピッチと、加熱炉に収納されるウエハ2のピッチとが異なっている場合があり、ウエハ搭載機構3は、複数の搬送用ハンドのピッチを可変に構成されてもよい。
【0012】
センシング用ハンド5は、カセット等からウエハ2を搬出する前に、カセット内あるいは加熱炉内のウエハ2の収納状態(傾き、出っ張り等)を検出するためのものである。センシング用ハンド5はアーム支持部7と一体に上下動され、センシング用ハンド5の上下動に応じ、ウエハ2がセンシング用ハンド5に載置される。なお、センシング用ハンド5に載置されたウエハ2は、センシング用ハンド5によって、カセットと加熱炉との間で搬送されても良い。
【0013】
第1アーム4および第2アーム6は、2個の関節部を有し、全体として伸縮するように構成されている。第1アーム4の基端側と第2アーム6の基端側とは、アーム支持部7に支持されており、個別に伸縮する。アーム支持部7は、第1アーム4および第2アーム6を支持する第1支持部9と、第1支持部9を支持する第2支持部10とを有する。第2支持部10の内部には、第1支持部9を回動させるための旋回機構が収納されており、第1支持部9は、回動可能に第2支持部10によって支持されている。
【0014】
昇降機構8は、例えば、上下方向に延びて配置される送りねじ軸と、送りねじ軸を支持する支柱部とを含む直動ガイドを用いて構成され、第2支持部10には、送りねじ軸に螺合するナット部材が設けられる。モータにより送りねじ軸が回転され、第2支持部10が、送りねじ軸の回転に応じ、送りねじ軸に沿って上下移動される。これにより、アーム支持部7が昇降される。
【0015】
(センシング用ハンドの構成)
図4及び
図5は、センシング用ハンド5の構成を示す。センシング用ハンド5は、第2アーム6によって回動可能に支持される基端部51と、基端部51から先端側に向かって二又に分岐した第1腕部52及び第2腕部53とを有し、全体としてY字形状を呈している。そして、センシング用ハンド5は、センシング用ハンド5に載置されたウエハ2の裏面21が対向する載置面54を有する。
【0016】
基端部51の載置面54には第1支持部55が設けられており、第1腕部52の先端の載置面54には第2支持部56が設けられており、第2腕部53の先端の載置面54には第3支持部57が設けられている。第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57は、ウエハ2が載置面54との間に隙間をあけ且つ載置面54に沿って配置されるように、ウエハ2の裏面21の三箇所を支持可能である。
【0017】
本例では、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57は、第1支持部55と、第2支持部56と、第3支持部57とを結んで得られる三角領域Rの外接円の中心Oに向いた傾斜面58をそれぞれ有し、各傾斜面58は、載置面54に近づくほどに中心Oに近づくように傾斜している。ウエハ2が適正に載置されている場合に、ウエハ2の裏面21における外周部の縁21eは、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57それぞれの傾斜面58に接し、これらの傾斜面58によって支持される。
【0018】
ウエハ2の裏面21における外周部が、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57によって支持されることにより、ウエハ2の裏面21における中央部は、載置面54、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57と非接触となり、載置面54等との接触に起因する損傷、汚染から保護される。ウエハ2の中央部には後に複数の半導体デバイスが形成されるが、裏面21の中央部が清浄に保たれることにより、例えば半導体デバイスの所期の特性が得られる。
【0019】
さらに、ウエハ2の裏面21における外周部の縁21eが、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57それぞれの傾斜面58によって支持されることにより、ウエハ2の載置面54に沿った移動が抑制される。これにより、搬送中の振動等に起因して、ウエハ2が第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57のうち一つ以上の支持部から外れたり、ウエハ2がセンシング用ハンド5から落下したりすることが抑制される。また、ウエハ2が載置面54に対して多少傾いた状態で第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57それぞれの傾斜面58に接していたとしても、例えば搬送中の振動等により、ウエハ2が載置面54と略平行に配置され得る。
【0020】
なお、ウエハ2の重心が、第1支持部55と、第2支持部56と、第3支持部57とを結んで得られる三角領域R内に配置される限りにおいて、第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57の位置は限定されないが、円形状のウエハ2が任意の直径に対して対称であることを考慮すれば、好ましくは、第2支持部56と、第3支持部57とは、三角領域Rの外接円の中心Oと第1支持部55とを結ぶ中心線Cを挟んで互いに対称に配置される。これにより、ウエハ2を安定に支持できる。
【0021】
センシング用ハンド5は、センシング用ハンド5上のウエハ2を検出する検出部60をさらに有し、検出部60は、反射型光センサである第1センサ61及び第2センサ62と、第1センサ61及び第2センサ62の出力信号に基づいてウエハ2の載置状態を判定する信号処理部63とを有する。ここで、反射型光センサとは、発光素子と受光素子とを含み、発光素子から出た光を対象物にて反射させ、その反射光を受光素子で検出し、検出した反射光強度に応じた信号を出力するものである。出力信号の信号値は、基本的には、発光素子及び受光素子と対象物の反射面との間の距離に関連しており、距離が大きくなるほどに信号値は小さくなる。また、信号値は、対象物の反射面に対する光の入射角度にも関連しており、入射角度が大きくなるほどに信号値は小さくなる。本例では、第1センサ61を構成する発光素子および受光素子は、
図4に示すXY平面に対し直交する方向、すなわち、ウエハ2の厚み方向に重ねて配置されている。このように配置された発光素子から出た光Lは、ウエハ2の外周面22にあたり、その反射光が受光素子に入射するようになっている(
図7参照)。なお、発光素子と受光素子の配置は、これ以外に、
図4に示すXY平面上に発光素子と受光素子はY方向に並んで配置されていてもよい。
【0022】
ウエハ2が適正に載置されている場合、すなわちウエハ2の裏面21における外周部の縁21eが第1支持部55、第2支持部56及び第3支持部57それぞれの傾斜面58によって支持されている状態では、第1センサ61及び第2センサ62はウエハ2の外周面22に対向し、第1センサ61及び第2センサ62それぞれの発光素子から出た光は、ウエハ2の外周面22にて反射され、その反射光が第1センサ61及び第2センサ62それぞれの受光素子によって検出される。
【0023】
第1センサ61は中心線Cの一方側に設けられており、第2センサ62は中心線Cの他方側に設けられている。これにより、ウエハ2が適正に載置されている場合のウエハ2の位置からのずれを、中心線Cと平行な第1方向Xと、載置面54に平行且つ中心線Cに垂直な第2方向Yとの二方向に検出可能である。なお、円形状のウエハ2が任意の直径に対して対称であることを考慮すれば、好ましくは、第1センサ61と第2センサ62とは、中心線Cを挟んで互いに対称に配置され、例えば
図4に示すように、中心線Cの両側に対称に延びている第1支持部55の両側に隣設される。
【0024】
(信号処理部63の判定例)
信号処理部63には、第1センサ61及び第2センサ62それぞれの出力信号が入力される。そして、信号処理部63は、入力された二つの信号に基づいて、センシング用ハンド5上のウエハ2の載置状態が適正か否かを判定する。判定は、閾値を用いて行うことができ、例えば、第1センサ61の出力信号と、第2センサ62の出力信号との両方の出力信号の信号値が閾値以上である場合に、ウエハ2の載置状態を適正と判定し、少なくとも一方の出力信号の信号値が閾値未満である場合に、ウエハ2の載置状態を不適と判定することができる。なお、閾値は、ウエハ2の載置状態が適正である場合の出力信号値と、ウエハ2の載置状態が不適である場合の出力信号値とに基づいて適宜設定できる。
【0025】
図6及び
図7は、ウエハ2の載置状態が適正である例を示す。第1センサ61及び第2センサ62は、いずれもウエハ2の外周面22に対向しており、第1センサ61の光L及び第2センサ62の光は、いずれも外周面22に極めて小さい入射角度で入射する。また、第1センサ61と外周面22との間の距離、及び第2センサ62と外周面22との間の距離は、いずれも十分に小さい。この場合に、第1センサ61の出力信号と、第2センサ62の出力信号との両方の出力信号の信号値が閾値以上となる。したがって、信号処理部63は、ウエハ2の載置状態を適正と判定する。
【0026】
図8及び
図9は、ウエハ2の載置状態が不適である例を示す。
図8及び
図9に示す例では、ウエハ2が第1方向Xに沿ってセンシング用ハンド5の先端側にずれている。ウエハ2は、先端側で第2支持部56及び第3支持部57に乗り上げ、基端側では第1支持部55から離間して載置面54に接している。この場合に、第1センサ61及び第2センサ62は、いずれもウエハ2の外周面22から外れて表面23に対向しており、第1センサ61の光L及び第2センサ62の光は、いずれも
図7に示した外周面22に対する入射角度よりも大きい角度で表面23に入射する。また、第1センサ61と表面23との間の距離は、
図6に示した第1センサ61と外周面22との間の距離よりも大きく、第2センサ62と表面23との距離もまた、
図6に示した第2センサ62と外周面22との間の距離よりも大きくなっている。このため、第1センサ61の出力信号と、第2センサ62の出力信号との両方の出力信号の信号値が閾値未満となる。したがって、信号処理部63は、ウエハ2の載置状態を不適と判定する。
【0027】
図10及び
図11は、ウエハ2の載置状態が不適である他の例を示す。
図10及び
図11に示す例では、ウエハ2が第1方向Xに沿ってセンシング用ハンド5の基端側にずれている。ウエハ2は、基端側で第1支持部55に乗り上げ、先端側では第2支持部56及び第3支持部57から離間して載置面54に接している。この場合に、第1センサ61及び第2センサ62は、いずれもウエハ2の外周面22から外れて裏面21に対向しており、第1センサ61の光及び第2センサ62の光は、いずれも
図7に示した外周面22に対する入射角度よりも大きい角度で裏面21に入射する。また、第1センサ61と裏面21との間の距離は、
図6に示した第1センサ61と外周面22との間の距離よりも大きく、第2センサ62と裏面21との距離もまた、
図6に示した第2センサ62と外周面22との間の距離よりも大きくなっている。このため、第1センサ61の出力信号と、第2センサ62の出力信号との両方の出力信号の信号値が閾値未満となる。したがって、信号処理部63は、ウエハ2の載置状態を不適と判定する。
【0028】
図12は、ウエハ2の載置状態が不適である他の例を示す。
図12に示す例では、ウエハ2が第2方向Yに沿って中心線Cの第2支持部56側にずれている。ウエハ2は、先端側で第2支持部56に乗り上げ、第3支持部57から離間して載置面54に接しているが、基端側では第1支持部55の傾斜面58に接している。ウエハ2の載置面54に対する傾きは、
図6及び
図7に示したウエハ2の傾き、及び
図8及び
図9に示したウエハ2の傾きに比べて小さく、第1支持部55の両側に隣設されている第1センサ61及び第2センサ62は、いずれもウエハ2の外周面22に対向している。そして、中心線Cの第2支持部56側にある第1センサ61とウエハ2の外周面22との間の距離は、
図6に示した第1センサ61と外周面22との間の距離と同程度に小さく、第1センサ61の出力信号の信号値は閾値以上となる。しかし、中心線Cの第3支持部57側にある第2センサ62とウエハ2の外周面22との間の距離は、
図6に示した第2センサ62と外周面22との間の距離よりも大きくなっており、第2センサ62の出力信号の信号値は閾値未満となる。上述した判定例によれば、信号処理部63は、ウエハ2の載置状態を不適と判定する。
【0029】
センシング用ハンド5上のウエハ2の載置状態が適正であると判定された場合に、ロボット1は、第1アーム4を伸ばし、アーム支持部7を昇降させ、ウエハ搭載機構3によってカセット等からウエハ2を搬出する。一方、センシング用ハンド5上のウエハ2の載置状態が不適であると判定された場合に、ロボット1は、例えば動作を停止する。
【0030】
このように、反射型光センサである第1センサ61及び第2センサ62をウエハ2の外周面に対向するように配置することにより、例えば
図8及び
図9に示した載置状態、
図10及び
図11に示した載置状態のように、ウエハ2が一つ又は二つの支持部に乗り上げることによってウエハ2が傾いた状態を検出できる。また、第1センサ61と第2センサ62とを中心線Cの両側に配置することにより、
図12に示した載置状態のように、ウエハ2が中心線Cの片側にずれている状態を検出できる。こうして、ウエハ2の載置状態を検出することにより、ウエハ2が不適な載置状態で搬送されることを防止でき、ウエハ2の落下、落下に起因する破損を未然に回避できる。
【0031】
好ましくは、第1センサ61と、第2センサ62とは、中心線Cを挟んで互いに対称となる位置に設けられる。これにより、ウエハ2が中心線Cに対してどちらの側にずれても等しく載置状態を検出することができる。また、好ましくは、第1センサ61と、第2センサ62とは、第1支持部55の両側に隣設される。これにより、ウエハ2が第1支持部55を含む一つ又は二つの支持部に乗り上げ、又は第1支持部55を含む一つ又は二つの支持部から外れることによって傾いた状態を確実に検出することができる。
【0032】
(信号処理部63の他の判定例)
信号処理部63が行うウエハ2の載置状態の判定は、上述した例に限定されない。例えば、第1センサ61の出力信号と、第2センサ62の出力信号との少なくとも一方の出力信号の信号値が閾値以上である場合に、ウエハ2の載置状態が適正と判定され、両方の出力信号の信号値が閾値未満である場合に、ウエハ2の載置状態が不適と判定されてもよい。本例によれば、
図12に示した、載置面54に対する傾きが比較的小さいウエハ2の載置状態は適正と判定される。このように、適正と見做すことができるウエハ2の載置状態の幅を広げることができ、例えばロボット1が頻繁に動作を停止する場合に有用である。
【0033】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された産業用ロボットは、板状の搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、前記搬送対象物が載置されるハンドと、前記ハンド上の前記搬送対象物を検出する検出部と、を備え、前記ハンドは、載置面と、前記搬送対象物が前記載置面との間に隙間をあけ且つ前記載置面に沿って配置されるように、前記搬送対象物の裏面の三箇所を支持可能な第1支持部、第2支持部、及び第3支持部と、を有し、前記検出部は、前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とによって支持された前記搬送対象物の外周面に対向して配置される複数の反射型光センサと、前記複数の反射型光センサの出力信号に基づいて、前記搬送対象物の載置状態を判定する信号処理部と、を有し、前記複数の反射型光センサは、前記第1支持部を通り且つ前記第2支持部と前記第3支持部との中間を通る中心線の一方側に設けられた第1センサと、他方側に設けられた第2センサとを含む。この構成によれば、搬送対象物の外周面に対向するように配置された反射型光センサによって、搬送対象物が一つ又は二つの支持部に乗り上げる(一つ又は二つの支持部から外れる)ことによって傾いた状態を検出できる。また、中心線の両側に配置された反射型光センサによって、搬送対象物が、中心線に対して中心線と直交する方向にずれている状態を検出できる。このように、搬送対象物の載置状態を検出することにより、搬送対象物が不適な載置状態で搬送されることを防止でき、搬送対象物の落下、落下に起因する破損を未然に回避できる。
【0034】
また、本明細書に開示された産業用ロボットは、前記第1センサと、前記第2センサとは、前記中心線を挟んで互いに対称となる位置に設けられている。この構成によれば、搬送対象物が中心線に対してどちらの側にずれても等しく載置状態を検出できる。
【0035】
また、本明細書に開示された産業用ロボットは、前記第1センサと、前記第2センサとは、前記第1支持部に隣設されている。この構成によれば、搬送対象物が第1支持部を含む一つ又は二つの支持部に乗り上げ、又は第1支持部を含む一つ又は二つの支持部から外れることによって傾いた状態を確実に検出できる。
【0036】
また、本明細書に開示された産業用ロボットは、前記第1支持部、前記第2支持部、及び前記第3支持部は、前記搬送対象物の前記裏面の外周部を支持する。この構成によれば、搬送対象物の裏面を保護できる。
【0037】
また、本明細書に開示された産業用ロボットは、前記第1支持部、前記第2支持部及び前記第3支持部は、前記第1支持部と前記第2支持部と前記第3支持部とを結んで得られる三角領域の外接円の中心に向いた傾斜面であって、前記載置面に近づくほどに前記中心に近づく傾斜面を有しており、前記傾斜面によって前記搬送対象物の前記裏面の外周部の縁に接する。この構成によれば、搬送に伴う振動等に起因する搬送対象物のずれを抑制できる。また、僅かなずれであれば、傾斜面によって自動的に適正位置に戻すこともできる。
【0038】
また、本明細書に開示された産業用ロボットは、前記搬送対象物として半導体ウエハを搬送する。
【符号の説明】
【0039】
1 産業用ロボット
2 半導体ウエハ(搬送対象物)
3 ウエハ搭載機構
4 第1アーム
5 センシング用ハンド
6 第2アーム
7 アーム支持部
8 昇降機構
9 第1支持部
10 第2支持部
21 ウエハの裏面
21e ウエハの裏面における外周部の縁
22 ウエハの外周面
23 ウエハの表面
51 センシング用ハンドの基端部
52 センシング用ハンドの第1腕部
53 センシング用ハンドの第2腕部
54 センシング用ハンドの載置面
55 第1支持部
56 第2支持部
57 第3支持部
58 傾斜面
60 検出部
61 第1センサ(反射型光センサ)
62 第2センサ(反射型光センサ)
63 信号処理部
C 中心線
O 中心
L 光
R 三角領域
X 第1方向
Y 第2方向