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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】商品検査装置
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/342 20060101AFI20221212BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221212BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20221212BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B07C5/342
G06T7/00 610
G01B11/24 K
G01N21/892 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018133772
(22)【出願日】2018-07-14
(65)【公開番号】P2020011182
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】今井 友太
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185414(JP,A)
【文献】特開2011-200833(JP,A)
【文献】特開2004-050106(JP,A)
【文献】特開2007-114843(JP,A)
【文献】特開2016-138885(JP,A)
【文献】特開2018-025419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/342
G06T 7/00
G01B 11/24
G01N 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアにより搬送される多数の商品を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された各商品の画像に対して画像処理を行う画像処理部と、
前記画像処理部で処理された画像データに対して、予め定められた選別基準に基づいて良品/不良品の判定を行う判定部と、
前記判定部で不良品と判定された商品に対し、不良品の種別に応じて異なる色またはパターンの光を、前記コンベア上に不良品の種別に係わらず設定された同一の所定の光照射領域内において、商品の搬送速度に同期して照射する光照射部と、
前記判定部で不良品と判定された商品を不良品の種別に応じて異なる不良品回収容器に排出する排出部と、
不良品の種別に対応した複数の不良品回収容器と、
を備え商品検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記判定部で判定された良品/不良品の各画像データをそれぞれ表示する表示部と、
前記表示部で表示された各画像データに対して操作者が良品/不良品の判定結果を入力
する入力部と、
前記入力部で入力された前記判定結果を学習画像データとし、当該学習画像データに基
づいて機械学習方式により学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
前記学習モデル生成部により生成された前記学習モデルにしたがって、前記判定部の前
記選別基準を更新する更新部と、
をさらに備えた商品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品の良品/不良品を判別するための検査を行う商品検査装置および商品検査方法、ならびに商品検査方法をコンピュータに実行させるための商品検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
菓子の良品/不良品を判別するためのシステムとして、たとえば特開2003-216928号公報に示すような菓子用良否判定システムが提案されている。同公報に記載されたものでは、コンベア(1)により搬送される菓子(D)をCCDカメラ(2)で撮影し、撮影された菓子(D)の画像データから取得された菓子表面全体の濃淡(焼き色)データに対して、試行錯誤により得られた焼き色基準値を外れた場合に焼きすぎ/焼き不足として不良品と判定するようにしている(同公報の段落[0009]、[0016]~[0017]および図1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の菓子用良否判定システムにおいては、主に菓子の焼き色に関する良否判定を行っている。しかしながら、焼き菓子の製造工程で生じる不良品には、焼き色以外に、局部的な膨らみやはつれ(裂け)、ひび(欠け)、穴の発生、サイズが小さい、厚みが薄いなど様々なパターンがあり、これらすべてについて、試行錯誤によりそれぞれの基準値を設定するのは困難である。したがって、実際の検査の際には、熟練した作業員の目視に頼らざるを得ないのが実情であった。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、一般作業員でも熟練した目視検査員と同等の熟練度で商品の検査を行うことができる商品検査装置および商品検査方法、ならびにこのような商品検査方法を実行させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る商品検査装置は、コンベアにより搬送される多数の商品を撮影する撮影部と、撮影部で撮影された各商品の画像に対して画像処理を行う画像処理部と、画像処理部で処理された各画像データに対して、予め定められた選別基準に基づいて良品/不良品の判定を行う判定部と、判定部で不良品と判定された商品に対し、不良品の種別に応じて異なる色またはパターンの光を、コンベア上に不良品の種別に係わらず設定された同一の所定の光照射領域内において、商品の搬送速度に同期して照射する光照射部と、判定部で不良品と判定された商品を不良品の種別に応じて異なる不良品回収容器に排出する排出部と、不良品の種別に対応した複数の不良品回収容器とを備えいる。
【0006】
本発明においては、コンベアにより搬送される多数の商品の撮影画像は画像処理部により画像処理され、画像処理された各画像データに対しては、所定の選別基準に基づいて判定部により良品/不良品の判定が行われる。判定部で不良品と判定された商品には、コンベア上に不良品の種別に係わらず設定された同一の所定の光照射領域内において、光照射部により、不良品の種別に応じて異なる色またはパターンの光が、商品の搬送速度に同期して照射される。これにより、熟練度の低い一般作業員であって、複数種類の不良品の種別をコンベア上の同一の光照射領域内で容易に識別でき、その結果、熟練した目視検査員と同等の熟練度で商品の検査および選別を行えるようになる。
【0007】
本発明においては、さらに、判定部で不良品と判定された商品を不良品の種別に応じて異なる不良品回収容器に排出する排出部を設けたので、不良品を排出部によってコンベア上から自動的に排出できるようになるばかりでなく、不良品の種別に対応した各不良品回収容器に不良品をそれぞれ回収できるようになる。これにより、各不良品回収容器への不良品の回収状況から不良品の種別に応じた分布が分かり、これを製造工程にフィードバックすることで、製造工程での不良率を低減できるようになる。
【0019】
本発明においては、判定部で判定された良品/不良品の各画像データをそれぞれ表示する表示部と、表示部で表示された各画像データに対して操作者が良品/不良品の判定結果を入力する入力部と、入力部で入力された判定結果を学習画像データとし、学習画像データに基づいて機械学習方式により学習モデルを生成する学習モデル生成部と、学習モデル生成部により生成された学習モデルにしたがって判定部の前記選別基準を更新する更新部とをさらに備えている。
【0020】
この場合には、判定部で判定された良品/不良品の各画像データはそれぞれ表示部に表示され、表示部に表示された各画像データに対しては、熟練した目視検査員のような操作者により良品/不良品の判定結果が入力部に入力される。すると、学習モデル生成部が、操作者により入力された判定結果を学習画像データとし、当該学習画像データに基づいて機械学習方式により学習モデルを生成する。そして、この学習モデルにしたがって、更新部により、判定部の選別基準が更新される。
【0021】
これにより、判定部の選別基準が機械学習を繰り返すことで徐々に精度の高いものになっていき、その結果、判定部による良品/不良品の判定処理の正確さが、熟練目視作業員の助けを借りなくても熟練目視作業員と同等以上のレベルにまで向上できる。その結果、一般作業員であっても、熟練した目視検査員と同等以上の熟練度でコンベア上の商品の検査を行えるようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、不良品と判定された商品には、商品の搬送速度に同期して光が照射されるので、熟練度の低い一般作業員でもコンベア上で不良品を容易に識別して選別できるようになり、熟練した目視検査員と同等の熟練度で商品の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例による商品検査装置の全体斜視図である。
図2】前記商品検査装置(図1)のハードウェア構成例を示す図である。
図3】前記商品検査装置(図1)の機能ブロック図である。
図4】前記商品検査装置(図1)の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】前記商品検査装置(図1)において、多数の商品がコンベア上を移動する様子をカメラ視野領域とプロジェクタ投影領域とともに時系列的に示す平面概略図である。
図6】前記商品検査装置(図1)において、多数の商品がコンベア上を移動する様子をカメラ視野領域とプロジェクタ投影領域とともに時系列的に示す平面概略図である。
図7】前記商品検査装置(図1)において、多数の商品がコンベア上を移動する様子をカメラ視野領域とプロジェクタ投影領域とともに時系列的に示す平面概略図である。
図8】前記商品検査装置(図1)において、コンベア上を移動する不良品にプロジェクタから投影(照射)された画像(照射光)を示す図であって、投影画像(照射光)がコンベア搬送速度に同期して移動していく様子を(a)~(d)の順に時系列的に示している。
図9】前記商品検査装置(図1)のタッチパネルディスプレイの表示の一例を示す図であって、良品の検査時に「検査タブ」を選択した状態を示している。
図10】前記商品検査装置(図1)のタッチパネルディスプレイの表示の一例を示す図であって、良品の検査時に「検査+学習タブ」を選択した状態を示している。
図11】前記商品検査装置(図1)のタッチパネルディスプレイの表示の一例を示す図であって、不良品の検査時に「検査タブ」を選択した状態を示している。
図12】前記商品検査装置(図1)のタッチパネルディスプレイの表示の一例を示す図であって、不良品の検査時に「検査+学習タブ」を選択した状態を示している。
図13】前記商品検査装置(図1)で取得された多数の良品画像データの一例を示す図である。
図14】前記商品検査装置(図1)で取得された多数の不良品画像データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例による商品検査装置を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図14は、本実施例による商品検査装置を説明するための図である。なお、ここでは、商品の一例として焼き菓子を例にとって示している。
【0025】
図1に示すように、商品検査装置1は、前工程の焼成工程等を経た多数の商品Bc、Bc’が供給部2から供給されるとともに、供給された商品Bc、Bc’を矢印方向に搬送するコンベア3と、コンベア3で搬送中の商品Bc、Bc’を撮影するカメラ(撮影部)4と、カメラ4で撮影された各商品Bc、Bc’の画像に対して画像処理を行う画像処理部、および画像処理部で処理された画像データに対して予め定められた選別基準に基づいて良品/不良品の判定を行う判定部としてのパソコン本体(画像処理・判定部)5と、判定部で不良品と判定された商品Bc’に対し、不良の種別に対応した色の光(色光)Lpを商品Bc’の搬送速度に同期して商品Bc’に照射するプロジェクタ(光照射部)6とを備えている。商品検査装置1はさらに、判定部で判定された良品/不良品の各画像データをそれぞれ表示する表示部、および表示部で表示された各画像データに対して操作者が良品/不良品の判定結果を入力する入力部としてのタッチパネルディスプレイ(表示・入力部)7とを備えている。
【0026】
コンベア3の上方には、カメラ4での撮影時にコンベア3上の商品Bc、Bc’を照光するための光Lを照射する照明8が配置されている。コンベア3の側方には、不良の商品Bc’を不良の種別に応じて回収するための複数の不良品回収容器D1、D2、D3が設けられている。カメラ4、プロジェクタ6およびタッチパネルディスプレイ7は、パソコン本体5に対してそれぞれケーブル100、101、102で接続されている。パソコン本体5から延びるケーブル103には、コンベア3を駆動するサーボモータ(図示せず)の回転位置を検出するためのエンコーダ9が接続されている。なお、当該サーボモータは、図示しない制御コントローラを介してパソコン本体5に接続されている。供給部2の上には、運転中/停止中/非常停止中等の表示を行う表示灯20が取り付けられている。
【0027】
商品検査装置1は、図2に示すようなハードウェア構成を有している。同図に示すように、商品検査装置1のI/Oポート50には、CPU51と、ROM52と、RAM53と、当該装置の動作を制御するプログラム等が格納された外部記憶媒体の不揮発性メモリ54とがバスラインを介して接続されている。
【0028】
また、商品検査装置1のI/Oポート50には、コンベア駆動用サーボモータ30と、カメラ4と、プロジェクタ6と、タッチパネルディスプレイ7と、エンコーダ9とがバスラインを介して接続されている。
【0029】
図3は、商品検査装置1の機能ブロック図である。同図に示すように、商品検査装置1は、カメラ4で撮影された商品の撮影画像が取り込まれる画像取込部10と、撮影画像に対して画像処理を行う画像処理部11と、画像処理された画像データに対して予め定められた選別基準に基づいて良品/不良品の判定を行う判定部12と、良品/不良品の各画像データを表示する表示部(タッチパネルディスプレイ)7と、表示部7に表示された各画像データに対して操作者が良品/不良品の判定結果を入力する入力部(タッチパネルディスプレイ)7と、不良品に対してプロジェクタ投影用画像を生成する投影用画像生成部13と、入力部7で入力された判定結果を学習画像データとし、当該学習画像データに基づいて機械学習方式により学習モデルを生成する学習モデル生成部14と、学習モデル生成部14により生成された学習モデルにしたがって判定部12の選別基準を更新する更新部15と、判定部12で不良と判定された商品に対して商品の搬送速度に同期して不良の種別に応じた色の光(色光)を照射する光照射部(プロジェクタ)6とを有している。
【0030】
図3中の各部は、不揮発性メモリ54からRAM53上に展開されたプログラムを実行するCPU51からの命令によって動作することで実現される機能である。
【0031】
次に、商品検査装置1の動作について、図1図3を参照しつつ図4のフローチャートを用いて説明する。
プログラムがスタートすると、まず、図4のステップS1において、カメラ4(図1)で撮影された商品Bc、Bc’の画像を画像取込部10(図3)により取り込む。取り込まれる画像はたとえばJPEG、BMP、GIF等である。ステップS2では、取り込まれた各商品Bc、Bc’の画像に対して画像処理部11(図3)により画像処理を行う。この画像処理においては、濃淡変化から商品の境界を見い出す「エッジ検出」等を行ったり、エンコーダ9(図1)からの入力に基づいて商品の位置情報を取得したりする。
【0032】
次に、ステップS3では、ステップS2で画像処理された画像データに対して、予め定められた選別基準に基づいて判定部12(図3)により良品/不良品の判定を行う。この初期の選別基準については、判定部12で商品Bc、Bc’ の1次検査を行った結果、抽出された特徴量に基づいて設定される。
【0033】
なお、この初期の選別基準については、後述するように、熟練した目視検査員のような操作者が判定部12による判定結果について彼らの目でさらに判定を行って、その判定結果を学習画像データとして商品検査プログラムにフィードバックして機械学習を行わせることにより、彼らの経験値が加味された新たな選別基準が段階的に設定され、より精度の高い良品/不良品の判定が行われるようになる。この段階的な選別基準は、機械学習を繰り返し行うことによりさらに精度が向上して、熟練目視検査員と同等またはそれ以上のレベルにまで到達できるようになる。
【0034】
図4のフローチャートに戻って具体的に説明を続けると、ステップS3において、初期の選別基準を用いて良品/不良品の判定を行った結果、良品と判定されればステップS4に移行し、不良品と判定されればステップS5に移行する。ステップS4では、パネルディスプレイ(表示・入力部)7(図1図3)に良品の商品Bcの画像を表示し、同様に、ステップS5では、パネルディスプレイ7に不良品の商品Bc’の画像を表示する。
【0035】
次に、ステップS6では、プロジェクタ投影用画像生成部13(図3)により、不良品の商品Bc’に対して不良の種別に対応した色の光(色光)が商品Bc’の搬送速度に同期して商品Bc’に投影(照射)されるようにプロジェクタ投影用画像を作成する。次に、ステップS7では、ステップS6で作成されたプロジェクタ投影用画像を商品Bc’に投影(照射)する。
【0036】
ステップS6~S7の処理を図5ないし図8を用いて説明する。
図5ないし図7は、一点鎖線で示すカメラ視野領域Cfおよび二点鎖線で示すプロジェクタ投影領域Pfを通過していくコンベア3上の各商品Bc、Bc’の動きを示している。図8は、コンベア3上を移動する不良品の商品Bc’にプロジェクタ(光照射部)6(図1図3)から投影(照射)されたプロジェクタ投影光(照射光)がコンベア搬送速度に同期してプロジェクタ投影領域Pf内を移動していく様子を(a)~(d)の順に時系列的に示している。
【0037】
図5において、カメラ視野領域Cfには、良品の商品Bcと、不良品の商品Bc’とが混在して配置されている。説明の便宜上、良品の商品Bcの傍には「OK」の文字が、不良品の商品Bc’の傍には「サイズNG」、「形状NG」、「色NG」の文字がそれぞれ付与されている。この例では、「サイズNG」の商品は商品の長さが短すぎる商品であり、「形状NG」の商品は商品の一部に局部的な膨らみがある商品であり、「色NG」の商品は焼き色が濃すぎる商品である。
【0038】
ステップS6では、プロジェクタ投影用画像生成部13(図3)により、不良の各商品Bc’に対して不良の種別に対応した色の光(色光)を選択するとともに、選択した色光が各商品Bc’の動的位置に対応するようにプロジェクタ投影用画像を作成し、ステップS7において、これを各商品Bc’に投影(照射)する。これにより、図6および図7に示すように、各商品Bc’がプロジェクタ投影領域Pfに移動すると、各商品Bc’にそれぞれ対応した色光がプロジェクタ6から投影(照射)され、各色光は各商品Bc’の移動につれてプロジェクタ投影領域Pf内を移動していく(図8参照)。
【0039】
作業者Pは、不良の各商品Bc’がプロジェクタ投影領域Pfに進入してくると、プロジェクタ投影光(照射光)が投影(照射)された各商品Bc’を順次ピックアップして、商品Bc’の色光Lpに対応したいずれかの不良品回収容器D1、D2、D3に商品Bc’を排出する。
【0040】
このように、不良品と判定された商品Bc’には、商品Bc’の搬送速度に同期してプロジェクタ6から光が照射されるので、熟練度の低い一般作業員でもコンベア上で不良品を容易に識別して選別できる。また、プロジェクタ6が不良の種別に応じて異なる色の光(色光)を照射するので、一般作業員が不良の種別を識別できるようになる。さらに、不良品を不良の種別に対応した不良品回収容器D1、D2、D3に回収できるので、各不良品回収容器D1、D2、D3への不良品の回収状況から不良品の分布が分かり、これを製造工程にフィードバックすることで、不良率を低減できるようになる。
【0041】
次に、図9図10は、ステップS4での処理により、タッチパネルディスプレイ7に良品の商品Bcを含むウィンドウの画像が表示された状態を示しており、同様に、図11図12は、ステップS5での処理により、タッチパネルディスプレイ7に不良品の商品Bc’を含むウィンドウの画像が表示された状態を示している。
【0042】
図9ないし図12に示す例では、各ウィンドウが「検査タブ」、「検査+学習タブ」および「(学習)タブ」を有しており、図9図11は「検査タブ」を選択した状態を、図10図12は「検査+学習タブ」を選択した状態をそれぞれ示している。
【0043】
図9図11に示すように、「検査タブ」のウィンドウが開いているとき、ウィンドウ内には、良品/不良品の判定を行っている、検査中の商品の判定結果が示されており、「品種名」(例示はAAA)と、OK(つまり良品)かNG(つまり不良品)かの「判定」結果と、不良の場合は「不良G」の種別(例示は形状)とが表示されている。この例では、商品の一部に局部的な膨らみが現われている点が不良と判断されている。画面にはさらに表が表示されており、表中には、判定対象となった商品の個数がTOTALの項目のカウント欄に、良品となった商品の個数がOKの項目のカウント欄に、不良品となった商品の個数がNGの項目のカウント欄にそれぞれ示されるとともに、良品および不良品の比率がパーセント表示されている。
【0044】
この「検査タブ」のウィンドウが開いている状態では、検査後の商品の判定結果が次々と画面に表示されるので、運転中の検査の様子をモニタリングできる。また、検査済みの多数の良品画像データ(図13参照)および不良品画像データ(図14参照)、あるいはそれらをサンプリングしたものはバッファリングされてメモリ内に格納される。
【0045】
図10図12に示すように、「検査+学習タブ」のウィンドウが開いているとき、ウィンドウ内には、図9図11のウィンドウ表示内容が画面左側に縮小表示され、画面右側には、「良品学習モードタブ」および「不良品学習モードタブ」を有する小さなウィンドウが表示されており、当該ウィンドウ内には、たとえばサンプリングした良品画像または不良品画像が表示されている。「不良品学習モードタブ」の選択時には、良品画像が表示され(図10参照)、「良品学習モードタブ」の選択時には、不良品画像が表示される(図12参照)。また、ウィンドウ内には、商品を「良品にしたい」、「不良品にしたい」の2つの項目があり、操作者がタッチ操作することでいずれかの項目を選択できるようになっている。このように、良品と判定した中に不良品は含まれていないか、不良品と判定した中に良品は含まれていないかという判断を人が行うことにより、現時点の選別基準で良品/不良品の判定をした判定結果から、人が考える判定結果に徐々に近づけることができる。なお、「(学習)タブ」は、初回学習や追加学習等を行う際に選択するタブである。
【0046】
次に、図4のステップS8では、操作者から入力がなされた否かが判断される。上述したように、検査時に取得された多数の良品画像データおよび不良品画像データ、またはこれらのサンプリング画像データはメモリ内に格納されており、操作者が「検査+学習タブ」を選択したとき、これらの画像データをメモリからそれぞれ取り出せるようになっている。
【0047】
図10は良品の画像をメモリから取り出した例を示し、図12は不良品の画像をメモリから取り出した例を示しており、操作者、好ましくは、熟練した目視検査員のような操作者が、これらの画像を精査して良品/不良品の判定を行う。操作者が検査済みの良品を不良品にすべきと判断すれば、「不良品にしたい」という項目をタッチ操作して入力し、操作者が検査済みの不良品を良品にすべきと判断すれば、「良品にしたい」という項目をタッチ操作して入力する。
【0048】
操作者による入力がなされると、図4のステップS9に移行する。一方、操作者による入力がなされなければ、プログラムはステップS1に戻り、ステップS1~S8の処理を繰り返して行う。
【0049】
ステップS9では、学習モデル生成部4(図3)により、ステップS8で入力された操作者による判定結果を学習画像データとし、当該学習画像データに基づいて機械学習方式により学習モデルを生成する。この学習モデルは、多層ニューラルネットワークを用いたAI技術であるディープラーニング(深層学習)により多数の学習画像データを学習するものである。これにより、特徴量が容易に抽出されて、追加学習がなされ、人の感性に近い判定が行えるようになる。次に、ステップS10では、更新部15(図3)により、学習モデル生成部4により生成された学習モデルにしたがって、判定部12の選別基準を更新する。
【0050】
こうして、判定部12の選別基準が機械学習を繰り返すことで徐々に精度の高いものになっていき、その結果、判定部12による良品/不良品の判定処理の正確さが、熟練目視作業員の助けを借りなくても熟練目視作業員と同等またはそれ以上のレベルにまで向上できる。その結果、一般作業員であっても、熟練した目視検査員と同等以上の熟練度でコンベア3上の商品の検査を行うことができるようになる。
【0051】
このような本実施例によれば、不良品と判定された商品Bc’には、商品Bc’の搬送速度に同期してプロジェクタ6から光が照射されるので、熟練度の低い一般作業員でもコンベア3上で不良の商品Bc’を容易に識別して選別できるようになり、熟練した目視検査員と同等の熟練度で商品の検査を行えるようになる。しかも、本実施例においては、熟練した目視検査員のような操作者により良品/不良品の判定結果が入力され、その判定結果を学習画像データとして機械学習方式により学習モデルが生成されて判定時の選別基準が更新されるので、選別基準を徐々に精度の高いものにすることができ、これにより、一般作業員であっても、熟練した目視検査員と同等以上の熟練度でコンベア上の商品の検査を行うことができるようになる。このようにして、検査員の能力差や疲労の度合いにより検査にばらつきが生じて商品の品質にばらつきが出るのを防止でき、商品の品質を均一にできる。また、プロジェクタ6が不良品の種別に応じて異なる色の光(色光)を照射するので、一般作業員が不良品の種別を識別できるようになる。
【0052】
さらに、本実施例によれば、不良の商品Bc’は不良の種別に応じて対応する不良品回収容器D1、D2、D3に回収されるので、各不良項目ごとの仕分けや計数、管理が容易になって、各工程に対応した改善策を講じやすくなる。たとえば、焼き菓子に焼きムラや焦げが多かった場合には、焼成工程の点検を重点的に行ったり、温度や湿度等の周囲環境に合わせて焼成条件を変更したりすることにより、不良率を低下できる。
【0053】
上述した商品検査装置1における各処理は、プログラム(商品検査プログラム)の形式でパソコン本体(コンピュータ)5の読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをパソコン本体5が読み出して実行することにより各処理が実行される。ここで、記録媒体としては、ハードディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROMやDVD-ROM等の光ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリ、半導体メモリ等の外部記憶媒体がある。なお、通信回線を介してプログラムをコンピュータに配信し、配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明に好適な実施例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明には種々の変形例が含まれる。以下に変形例のいくつかの例を挙げておく。
【0055】
<第1の変形例>
前記実施例では、商品Bc、Bc’を撮影するカメラ4が一つ設けられた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。カメラ4は複数設けるようにしてもよい。たとえば1台目のカメラはコンベア3の上方に配置し(図1参照)、2台目のカメラはコンベア3の側方に配置する等。この場合、画像処理部11(図3)は、複数のカメラから得られた複数の画像に対してそれぞれ画像処理を行い、タッチパネルディスプレイ7は、複数のカメラによる各画像データをそれぞれ表示する。
【0056】
これにより、判定部12(図3)による良品/不良品の判定時に複数の選別基準を用いることができるので、判定精度を向上でき、検査の質を向上できる。また、操作者が良品/不良品を判定する際に複数の画像データに目を通すことができるので、判定精度を一層向上できる。さらに、操作者による判定精度が向上することによって、更新部15(図3)により更新される選別基準をより精度の高いものにできるので、判定部12(図3)による判定の際の選別基準を向上でき、判定精度をより一層向上できる。
【0057】
<第2の変形例>
前記実施例では、商品Bc、Bc’の一方の面の画像のみを取得して良品/不良品の判定を行う例を示したが、商品Bc、Bc’の他方の面の画像をも取得して良品/不良品の判定を行う場合には、コンベア3の搬送方向下流端に吸着ドラムを含む反転部を設け、この反転部により商品Bc、Bc’の表裏を反転させるとともに、反転部に続く第2のコンベアによる搬送中に商品Bc、Bc’の他方の面の画像を取得するようにすればよい。
【0058】
<第3の変形例>
前記実施例では、不良の商品Bc’が不良の種別に応じて作業者Pにより不良品回収容器D1、D2、D3に回収される例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0059】
図示していないが、作業者Pの代わりに、ロボットアームやパラレルリンクロボット等の自動機を排出部として設置し、判定部12(図3)で不良品と判定された商品Bc’を自動機によりコンベア3上からピックアップするようにしてもよい。この場合、コンベア3上の商品Bc’の位置情報およびエンコーダの回転位置情報をプログラム内に取り込み、自動機の制御コントローラにこれらの情報を入力することにより、不良品排出処理の自動化が可能になる。これにより、商品検査装置の完全自動化が可能となって、省人化を実現でき、検査作業員の負担やストレスを削減できる。なお、作業者Pとともに自動機を用いることで、作業者Pと自動機を協働させてコラボさせるようにしてもよい。また、自動機による不良品の排出の際には、前記実施例と同様に、不良品を不良の種別に対応した各不良品回収容器D1、D2、D3にそれぞれ排出するようにしてもよい。
【0060】
<第4の変形例>
前記実施例では、商品Bc,Bc’の画像はカメラ4が撮影し、不良品Bc’の回収は作業者Pが行う例を示しており、前記第3の変形例では、商品Bc,Bc’の画像はカメラ4が撮影し、不良品Bc’の回収はロボットアームやパラレルリンクロボット等の自動機が行う例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。不良品回収用のロボットとして、カメラを内蔵したカメラ一体型ロボットを採用するようにしてもよい。
【0061】
<第5の変形例>
前記実施例では、コンベア3上の不良の商品Bc’に対して不良の種別に応じて異なる色の光(色光)がプロジェクタ6から投影(照射)される例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。プロジェクタ6から投影(照射)される光は、同じ色の光であって異なる画像パターンのものでもよい。
【0062】
<第6の変形例>
前記実施例では、パソコンのディスプレイにタッチパネルディスプレイを用いて、画面上で表示のみならず入力をも行うようにした例を示したが、パソコンの入力機器として、キーボードやマウス等を用いるようにしてもよい。
【0063】
<第7の変形例>
前記実施例では、商品として焼き菓子を例にとったが、本発明の適用はこれに限定されないことはいうまでもない。商品としては、焼き菓子以外の菓子類やその他の食品等にも同様に適用可能である。食品は、一般に外観品質の均一性確保が難しいという性質を有するため、本発明を適用するのに好適な商品である。
【0064】
<その他の変形例>
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明は、一般作業員でも熟練目視検査員と同等の熟練度で商品検査を行える商品検査装置に有用である。
【符号の説明】
【0066】
1: 商品検査装置

3: コンベア

4: カメラ(撮影部)

5: パソコン本体
11: 画像処理部
12: 判定部
13: プロジェクタ投影用画像生成部
14: 学習モデル生成部
15: 更新部

6: プロジェクタ(光照射部)

7: タッチパネルディスプレイ(表示・入力部)

Bc: 商品(良品)
Bc’: 商品(不良品)

D1、D1、D3: 不良品回収容器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【文献】特開2003-216928号公報(段落[0009]、[0016]~[0017]および図1参照)
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