(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】組み立て品
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01D5/245 M
(21)【出願番号】P 2018135008
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ-エスエヌエール ルルモン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドュレ クリストフ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-516534(JP,A)
【文献】特開2008-233069(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2966414(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第19818799(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/243-5/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の位置を決定するためのシステムに含まれる部材の組み立て品において、
上記部材と共に回転するエンコーダ(1)であって、該エンコーダ(1)の動きを表す周期的な磁気信号を放射するように構成された第1の磁気トラック(2)及び第2の磁気トラック(3)を有するエンコーダ(1)と、
上記エンコーダの上記磁気トラック(2、3)からの上記磁気信号を検出するように構成され、上記磁気トラック(2、3)の位置を表す信号を生成するために上記磁気トラック(2、3)から読み取り距離を隔てて配置された2つの態様(5)の高感度素子、及び、上記部材の位置を決定するために上記2つの態様(5)の高感度素子からの上記信号を処理する装置(6)を有するセンサ(4)と、を備え、
第1の態様(5)の上記高感度素子は、検出された上記
第2の磁気トラック
(3)からの上記磁気信号に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗材料をベースとしており、
上記第1の態様は、2N-1個の磁極対を有する上記第2の磁気トラック(3)から読み取り距離を隔てて配置される態様であり、
第2の態様(5)の上記高感度素子は、
検出された上記第1の磁気トラック(2)からの上記磁気信号に応じて抵抗値が変化する異方性磁気抵抗材料をベースとしており、
上記第2の態様は、N個の磁極対を有する上記第1の磁気トラック(2)から読み取り距離を隔てて配置されている、
ことを特徴とする組み立て品。
【請求項2】
上記第1の態様(5)の上記高感度素子は、上記
第2の磁気トラック
(3)からの上記磁気信号を検出する技術に関する性質が上記第
2の態様(5)の高感度素子の磁気抵抗材料と異なる磁気抵抗材料をベースとしている、
ことを特徴とする請求項1に記載の組み立て品。
【請求項3】
上記第2の態様(5)の上記高感度素子は、
AMR型の磁気抵抗材料をベースとしている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組み立て品。
【請求項4】
上記第1の態様(5)の上記高感度素子は、トンネル磁気抵抗材料、
GMR、又はホールプローブをベースとしている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の組み立て品。
【請求項5】
上記第1の態様(5)の上記高感度素子は、参照用の磁性層、分離層、及び高感度層を含む積層体を備えており、上記磁性層
と上記高感度層との間の抵抗は、それらの磁化の相対的な向きに応じて決まる、
ことを特徴とする請求項4に記載の組み立て品。
【請求項6】
上記エンコーダ(1)は、多磁極の上記磁気トラック(2、3)が実装された磁石により構成されている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の組み立て品。
【請求項7】
上記磁気トラック(2、3)は、一周の全部又は一部の方位を決定するために、360°又は一周の一部に広がっている、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の組み立て品。
【請求項8】
上記センサ(4)は、2つの面(8a,8b)を有する電子基板(8)を備えており、上記2つの態様(5)の各々は、これら2つの面の各々に配置される態様である、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の組み立て品。
【請求項9】
上記2つの態様(5)の各々は、上記磁気トラック(2、3)の読み取り面(S)に直交する一般化面(P)内に上記高感度素子が広がるように配置される態様である、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の組み立て品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムに含まれる部材の組み立て品に関する。該システムは、上記部材の位置を決定するためのシステムである。
【背景技術】
【0002】
部材の位置を決定するために、エンコーダと、センサと、を備えたシステムが知られている。
【0003】
エンコーダは、上記部材に固定されるように設計されている。エンコーダは、第1の磁気トラック及び第2の磁気トラックを備えている。第1の磁気トラック及び第2の磁気トラックの各々は、エンコーダの動きに対応する周期的な磁気信号を発生せるために好適である。
【0004】
センサは、2つの態様の高感度素子を有する。2つの態様の高感度素子は、エンコーダの磁気トラックにより発生された信号を検出するために好適である。2つの態様の各々は、磁気トラックの上記位置の対応信号を形成するために、磁気トラックから読み取り距離を隔てて配置されている。センサは、部材の位置を決定するために、2つの態様から受け取った信号を処理するための装置を更に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第1,353,151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、特許文献1には、バーニヤ原理に従って位置(特には絶対位置、すなわち基準位置)を単純に決定することができるように、第1の磁気トラックの磁極とは異なるいくらかの磁極を備えた第2の磁気トラックが記載されている。
【0007】
決定システムのこの様式は、各磁気トラックを読み取るための、そして、対応する信号を処理するための単一センサを用いるという利点を有する。各態様は、検出するために、磁気トラックから読み取り距離を隔てた位置に広がる表面に沿って配置するために好適に配置されている。
【0008】
特に、高感度素子の各態様が同程度の磁気信号レベルを検出するために、各態様は、同一の読み取り表面に沿って配置されていてもよい。ここで、読み取り表面は、多磁極である磁気トラックに関して読み取り距離が一定となる位置に広がっている。
【0009】
決定システムのこの様式は、特に電気自動車のための同期電動機(永久磁石式又は巻線型回転子式)のために応用することができる。電気自動車は、回転子コイル電源を制御するために回転子の位置の正確な測定を必要とする。二者択一的に、この決定システムは、その変形例において、部材の直線的な位置を決定してもよい。
【0010】
求められる正確さは、従来、電気的に、すなわち、モータの極対において±1°のオーダーである。優れたモータの監視とは、優れた出力を可能にしつつ、(1)できる限り無駄をなくした、すなわち、重量と占有するスペースを節約するモータのデザインを実現し、(2)エネルギーを節約し、結果として、同じ走行距離に対して必要となるバッテリーの量(重量、コスト)を減少させる、又は、同じバッテリーの量に対して走行距離を増加させ、ジュール効果に起因する損失を抑制することにより発熱をさらに抑制する、ことが可能であることを意味する。
【0011】
ユーザが感じるより優れている性能とは、トルクの飛びがなく、誤った方向に動き始めた場合であっても、発する雑音が小さいことである。
【0012】
特に、応用のこの様式において、電気モータの監視の安全機能がますます現在求められている。実際、角度決定は、モータトルク制御ループにおいて直接的に用いられている。そのため、正しくない角度データは、電気モータへの誤った電力供給を招くことになり、その結果、電気自動車の場合において、潜在的に深刻な、時機を失した動きとなる。
【0013】
機能安全規格ISO26262は、これらの危険な出来事及びシステムのカテゴリ及びその部品を、ASIL(Automotive Safety Integrity Level, 自動車安全性要求レベル)として、最も安全なレベルDから少なくとも安全なレベルAまでのレベルに定義している。
【0014】
レベルDセンサは、安全動作のみならず、その誤動作がただちに検出可能であることが保証されているべきである。これは、このレベルDセンサを用いたシステムがセーフモードにセットされた場合、例えば、一時的に質を下げたモードで動作させるためである。
【0015】
本発明の目的は、信頼性が高められ、特にセンサの完全な誤動作の可能性に比例し、且つ、結果として、如何なる部分的な誤作動であっても検出する、特に決定システムの組み立て品を提案することによって、従来技術の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、システムに含まれる部材の組み立て品に関する。該システムは、上記部材の位置を決定するためのシステムである。上記部材は、エンコーダと、センサと、を備えている。
【0017】
上記エンコーダは、上記部材に保持されている。上記エンコーダは、第1の磁気トラックと、第2の磁気トラックとを備えている。第1の磁気トラック及び第2の磁気トラックの各々は、エンコーダの動きに対応する周期的な磁気信号を発生せるために好適である。
【0018】
センサは、2つの態様の高感度素子を有する。2つの態様の高感度素子は、エンコーダの磁気トラックにより発生された信号を検出するために好適である。2つの態様の各々は、磁気トラックの上記位置の対応信号を形成するために、磁気トラックから読み取り距離を隔てて配置されている。センサは、部材の位置を決定するために、2つの態様から受け取った信号を処理するための装置を更に備えている。
【0019】
第1の態様の高感度素子は、検出された上記磁気トラックの磁気信号に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗材料をベースとする。第1の態様は、2N-1個の磁極対を有する第2の磁気トラックから読み取り距離を隔てて配置されている。第2の態様の高感度素子は、異方性磁気抵抗材料をベースとしてもよい。第2の態様は、N個の磁極対を有する上記第1の磁気トラックから読み取り距離を隔てて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、如何なる部分的な誤作動であっても検出する、決定システムの組み立て品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る、エンコーダに関するセンサの放射状組み立て品の概略図である。(a)は、放射状組み立て品を斜視した場合を示し、(b)は、放射状組み立て品を側面視した場合を示し、(c)は、放射状組み立て品を前面視した場合を示している。
【
図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る、エンコーダに関するセンサの面状組み立て品の概略図である。(a)は、面状組み立て品を斜視した場合を示し、
図2の(b)は、面状組み立て品を前面視した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の主題及び利点は、添付の
図1及び
図2を参照しながら以下の説明により明らかになるだろう。
【0023】
図1の(a)~(c)は、本発明のエンコーダに関するセンサの放射状組み立て品の概略図である。それぞれ、
図1の(a)は、斜視した場合を示し、
図1の(b)は、側面視した場合を示し、
図1の(c)は、前面視した場合を示している。
【0024】
図2の(a)及び(b)は、本発明のエンコーダに関するセンサの面状組み立て品の概略図である。それぞれ、
図2の(a)は、斜視した場合を示し、
図2の(b)は、前面視した場合を示している。
【0025】
これらの図面を参照して、部材の位置を決定するためのシステムに含まれる部材の組み立て品が以下に説明される。1つの応用例において、部材は回転式であり、例えば、同期電動機の軸であり、上記同期電動機を駆動するために、角度位置の決定は、用いられる。二者択一的に、この決定システムは、変換において、部材の線形の位置を決定してもよい。
【0026】
特に、位置は、絶対的に、すなわち基準位置に関して決定され、そして、部材の最小限の動きなしにシステムの出力はただちに高められる。この目的のために、決定システムは、部材に保持されたエンコーダ1を備えている。エンコーダ1は、第1の磁気トラック2と第2の磁気トラック3とを備えている。
【0027】
特に、磁気トラック2,3は、多極、すなわち、交互に連続したN極とS極との対を有し、部材の方向に沿って延伸されている。磁気トラック2,3の各々、それ自体は、エンコーダの動きに対応する周期的な磁気信号、特に疑似正弦波形式の磁気信号を発生せるために好適である。
【0028】
本実施形態は、エンコーダ1が、多磁極である磁気トラック2,3である磁石により形成されている場合について説明する。特に、磁石は、環状配列されていてもよく、例えば、樹脂又は弾性体材料をベースとして具体化されている。ここで、樹脂又は弾性体材料は、散乱された磁気粒子であり、特に、特にフェライト又はNdFeBなどの希土類粒子である。二者択一的に、各磁気トラック2,3は、別個の磁石により構成されていてもよい。
【0029】
この決定システムは、エンコーダ1の磁気トラック2,3が生じさせる信号を検出することに適した2つの態様5の高感度素子を有するセンサ4を備えている。特に、各態様5は、少なくとも2つの高感度素子、特には、仏国特許出願公開第2,792,403号明細書、欧州特許出願公開第2,602,593号明細書、欧州特許出願公開第2,602,594号明細書に記載されているような複数の配列された高感度素子を備えていてもよい。
【0030】
それ自体では、2つの態様5をそれぞれ磁気トラック2,3から読み取り距離を隔てて配置することによって、磁気トラック2,3の位置の対応信号を形成することができる。さらには、センサ4は、部材の位置を決定するために、2つの態様5から受け取った信号を処理するための装置6を備えている。
【0031】
第2の磁気トラック3は、第1の磁気トラック2の磁極対とは数が異なる複数の磁極対を備えている。特に、磁気トラック2,3の始点及び終点において磁極対が一致していることによって、磁気トラック3の磁極対は、磁気トラック2の磁極対に対してオフセットを有する。
【0032】
特に、絶対的な測定のために、第2の磁気トラック3は、第1の磁気トラック2の磁極対との間に約数を持たないいくらかの磁極対を備えている。一実施形態によれば、磁気トラック2,3は、1回転における角度位置を決定するために360°を覆うように伸びる。二者択一的に、1回転の一部分1/Qにおける角度位置を決定することができるように、磁気トラック2,3は、1回転の一部分1/Qを覆う。エンコーダ1は、それゆえ、1回転に亘るQ個の磁気トラック2,3の連続物を有する。
【0033】
一実施形態において、第1の磁気トラック2は、M個の磁極対を備え、第2の磁気トラック3は、M-1個の磁極対を備えている。
【0034】
特許文献1に特に開示されている実施形態では、処理するための装置6は、絶対角度位置を決定するために、各態様5からの角度位置信号を比較することによって磁気的なバーニヤ原理を用いてもよい。
【0035】
欧州特許出願公開第2,372,313号明細書に開示されている更なる実施形態では、各態様5は、磁気トラック2,3の角度位置の位相を含む信号を形成することを可能にする。処理するための装置6は、エンコーダ1の絶対角度位置をそこから推論するために、上記位相の間における差を計算する。
【0036】
第1の態様5の高感度素子は、検出された上記磁気トラック2,3の磁気信号に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗材料をベースとする。二者択一的に、第1の態様5の高感度素子は、ホール効果プローブであってもよい。
【0037】
一実施形態において、第1の態様5の各高感度素子は、特には、トンネル効果を伴う磁気抵抗材料をベースとする少なくとも1つの高感度層を備えている。ここで、磁気抵抗材料の抵抗値は、検出された磁気トラック2,3の磁気信号に応じて変化する。
【0038】
特に、例えば国際公開第2004/083881号に記載されているように、第1の態様5の各高感度素子は、基準磁気層と、分離層と、検出された磁場に対して敏感な磁気層との積層構造を有する。基準磁気層と、磁場に対して敏感な磁気層との間の抵抗値は、両磁気層の磁化の相対的な向きに依存する。
【0039】
この実施形態において、分離層は、TMR型磁気抵抗素子を形成するために、絶縁体であってもよい。二者択一的に、分離層は、GMR型磁気抵抗素子を形成するために、伝導性を有していてもよい。
【0040】
第2の態様5の高感度素子は、その性質において、磁気トラック3,2により供給され、検出すべき磁気信号を検出するための技術に関して異なる。2つの異なる技術を使うことにより、両態様5の同時に起こる誤作動のトリガーとなりそうな誤作動の同じ原因は、抑制される。2つの態様5の何れかにおける誤動作を検出することよりも、両態様5の同時に起こる誤作動を検出することは、難しい。したがって、センサ4の機能安全レベルは、高められる。
【0041】
第2の態様5の高感度素子は、特にAMR型の異方性磁気抵抗材料をベースにしている。
【0042】
磁気トラック2,3の位置の対応信号を形成するために、各態様5は、読み取り表面Sに沿って配置されている。読み取り表面Sは、磁気トラック2,3から読み取り距離Lを隔てた位置に広がっている。特に、読み取り表面Sは、磁気トラック2,3に関して言うと、2つの態様5の各高感度素子は、強度がおおむね一定である磁気信号を検出することができるように、おおむね一定である読み取り距離Lを隔てた位置に沿って広がっている。
【0043】
特に、磁気トラック2,3は、当該態様5からの読み取り距離Lが同じ位置に広がっているようなものなので、更に、2つの態様5は、同じ読み取り表面Sに沿って配置されていてもよい。
【0044】
各態様5は、高感度素子が磁気トラック2,3の読み取り表面Sに対して垂直な共通平面P内に広がるように、配置されている。磁気トラック2,3に関する高感度素子の配置によれば、回転している磁場であって、磁気トラック2,3に対して垂直に放射されている磁場の検出を可能にする。上記検出は、表面Sに沿って、磁気トラック2,3により放射される読み取り磁場の検出と比較して、値及び読み取り距離Lのばらつきによる影響を受けにくい。
【0045】
好都合なことに、態様5は、回転する磁場を上記長さに沿って検出可能であるように、磁気トラック2,3に沿って広がる長さをもつ。さらには、磁気トラック2,3は、回転する部材の回転軸を中心軸とする同心環状形状を有する。
【0046】
本実施形態では、処理するための装置6が実装されている基板8をセンサ4が備えている場合について説明する。特に、基板8は、2つの主面8a,8bを有している。主面8aには、一方の態様5が配置されており、主面8bには、他方の態様5が配置されている。
好ましいことに、複数の高感度素子は、主面8a,8bと平行に広がるように配置されている。この構成によれば、エンコーダ1に対してセンサ4を取り付けるために、特に、小径筒状筐体内へのセンサ4の集積化を容易にすることができる。
【0047】
磁気トラック2,3の形状(特に、磁気トラック2,3の直径と、磁気トラック2,3の間隔とに関する形状)、2つの態様5の形状(特に2つの態様5の間隔に関する形状)、及び、それらの相対的な位置は、とりわけ、計測中における一方の磁気トラック2の他方の磁気トラック3に対する干渉を妨げるように設計されている。
【0048】
特に、2つの態様5は、軸方向に沿って離間していてもよいし、基板8のどちらか一方の主面上に一緒に配置されることによって、放射状に離間していてもよい。ここで、基板8の厚さは、2つの態様5同士の間隔を決定する。2つの態様5同士の間隔は、1又は複数の追加された印刷回路であって、厚さが適宜選択され、且つ、軸方向又は放射状に積層された1又は複数の追加された印刷回路上に、2つの態様5を配置することによって、広がることもできる。
【0049】
更に、センサ4の機能安全レベルをより高めるために、2つの態様5は、電気系統が分離されていることが好ましい。これは、2つの電源のうち一方の電源の電気的な故障、又は、2つの回路のうち一方の回路における静電放電が、他方の電気系統に故障を引き起こすことを防ぐためである。
【0050】
図1に示すように、多磁極である磁気トラック2,3は、磁石の環状形状の外周に沿って、特に、隣接した状態で且つ軸方向に並べられている。実質的に一定な、読み取り表面Sと磁気トラック2,3との距離である読み取り距離Lを定めることによって、読み取り表面Sは、磁石の環状形状の外周の周りに付随的に広がっている。
【0051】
図1の(c)において、読み取り表面Sは、おおよそ、態様5の高さにおける上記外周の接面になる。読み取り距離Lは、読み取り表面Sに沿って直線的に伸びている態様5に沿って、実質的に一定である。
【0052】
基板8は、磁気トラック2,3の間に径方向に沿って配置されている。基板8の両主面の各々には、磁気トラック2,3から、径方向に沿って読み取り距離Lを隔てた位置に、2つの態様5の各々が軸方向に沿ってそれぞれ配置されている。回転する磁場の径方向に沿った検出を可能にするために、2つの態様5の各々は、複数の高感度素子の高さが径方向に沿って伸びるように、配置されている。
【0053】
図2に示すように、多磁極である磁気トラック2,3は、磁石の環状形状の横壁の上に形成されており、特に、隣接した状態で且つ径方向に並べられている。実質的に一定な、読み取り表面Sと磁気トラック2,3との距離である読み取り距離Lを定めることによって、読み取り表面Sは、上記横壁に平行な平面に沿って広がっている。
【0054】
基板8は、磁気トラック2,3の間に軸方向に沿って配置されている。基板8の両主面の各々には、磁気トラック2,3から、軸方向に沿って読み取り距離Lを隔てた位置に、2つの態様5の各々が径方向に沿ってそれぞれ配置されている。回転する磁場の軸方向に沿った検出を可能にするために、2つの態様5の各々は、複数の高感度素子の高さが軸方向に沿って伸びるように、配置されている。
【0055】
第1の態様5の高感度素子は、磁気抵抗材料をベースにしている。このような第1の態様5の高感度素子の例としては、トンネル効果を発揮するTMR型の態様が挙げられる。第2の態様5の高感度素子は、異方性磁気抵抗材料をベースにしている。このような第2の態様5の高感度素子の例としては、AMR型の態様が挙げられる。
【0056】
AMR型の態様の1つの特性は、測定された磁気信号の周波数を2倍にすることである。
図1,2に示すように、回転におけるバーニヤ原理が有効であるので、第1の態様5は、2N-1個の磁極対を有する第2の磁気トラック3から読み取り距離Lを隔てた位置に配置されており、第2の態様5は、N個の磁極対を有する第1の磁気トラック2から読み取り距離Lを隔てた位置に配置されている。
【0057】
上述のようなM/M-1型の電気信号は、絶対位置を得るために実際に用いられている。本実施形態の一例において、第1の磁気トラック2は、16個の磁極対を有し、第2の磁気トラック3は、31個の磁極対を有する。
【0058】
更に、この2N-1/Nの配列によれば、AMR型の態様について、大きな磁極に起因する利益を得ることができる。この2N-1/Nの配列は、TMR型の態様よりも低いAMR型の態様の感度を補償する。同じ読み取り距離Lを隔てた位置に2つの態様5の各々の配列によれば、絶対位置を決定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンコーダ
2 第1の磁気トラック
3 第2の磁気トラック
4 センサ
5 高感度素子の第1の態様及び第2の態様
6 装置