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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018137785
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020018036
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】大場 博史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 稔
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮廻 博志
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-047840(JP,U)
【文献】特開平07-298527(JP,A)
【文献】特開2004-343970(JP,A)
【文献】特開2006-217770(JP,A)
【文献】特開2012-039859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
コアと、を備え、
前記コアは、互いに嵌合し合う複数の磁性部材で構成される複数の群を備え、
前記複数の磁性部材は、内周部を備え、
前記シャフトの外周面には、前記シャフトの長手方向において互いに並ぶ、凹状又は凸状の複数の嵌合部が所定の間隔で設けられており、
前記シャフトの長手方向において、前記嵌合部の長さは前記群の長さより小さく、前記複数の群を構成する複数の磁性部材のうち、一部の磁性部材の内周部は前記複数の嵌合部と嵌合し、他の磁性部材の内周部は前記複数の嵌合部の間にある前記シャフトの外周面の一部と対向している、モータ。
【請求項2】
前記複数の磁性部材はそれぞれ、外周部と、外周部に囲まれた面を備え、
前記複数の磁性部材のそれぞれの面には、複数の筋が形成されており、
前記複数の嵌合部のうち第1の嵌合部には前記複数の磁性部材のうち第1の磁性部材が嵌合し、
前記複数の嵌合部のうち第2の嵌合部には前記複数の磁性部材のうち第2の磁性部材が嵌合し、
前記第1の磁性部材が有する筋の方向は、前記第2の磁性部材が有する筋の方向とは異なる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記複数の嵌合部のうち第3の嵌合部には前記複数の磁性部材のうち第3の磁性部材が嵌合し、
前記第3の磁性部材が有する筋の方向は、前記第1の磁性部材が有する筋の方向とは異なり、かつ、前記第2の磁性部材が有する筋の方向とは異なる、請求項に記載のモータ。
【請求項4】
前記互いに嵌合し合う複数の磁性部材は、凸部が設けられている磁性部材と、前記凸部と嵌合する凹部が設けられている磁性部材とを含む、請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記複数の磁性部材のそれぞれの面には、複数の筋が形成されており、
前記複数の磁性部材は、複数の群で構成され、
前記複数の群のうち第1の群の磁性部材が有する筋の方向と、前記複数の群のうち第2の群の磁性部材が有する筋の方向とは異なる、請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータに関し、特に、内周部を有するステータがシャフトに取り付けられている構造を有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
内周部を有するステータがシャフトに取り付けられている構造を有するモータがある。このようなモータに用いられるシャフトとステータと接続構造については、下記特許文献1に記載されているように、シャフトの表面にナール加工を施したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-039250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、回転時に振動が発生しにくいモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータは、シャフトと、コアと、を備え、コアは、互いに嵌合し合う複数の磁性部材で構成される複数の群を備え、複数の磁性部材は、内周部を備え、シャフトの外周面には、シャフトの長手方向において互いに並ぶ、凹状又は凸状の複数の嵌合部が所定の間隔で設けられており、シャフトの長手方向において、嵌合部の長さは群の長さより小さく、複数の群を構成する複数の磁性部材のうち、一部の磁性部材の内周部は複数の嵌合部と嵌合し、他の磁性部材の内周部は複数の嵌合部の間にあるシャフトの外周面の一部と対向している
【0006】
好ましくは、複数の磁性部材はそれぞれ、外周部と、外周部に囲まれた面を備え、複数の磁性部材のそれぞれの面には、複数の筋が形成されており、複数の嵌合部のうち第1の嵌合部には複数の磁性部材のうち第1の磁性部材が嵌合し、複数の嵌合部のうち第2の嵌合部には複数の磁性部材のうち第2の磁性部材が嵌合し、第1の磁性部材が有する筋の方向は、第2の磁性部材が有する筋の方向とは異なる。
【0007】
好ましくは、複数の嵌合部のうち第3の嵌合部には複数の磁性部材のうち第3の磁性部材が嵌合し、第3の磁性部材が有する筋の方向は、第1の磁性部材が有する筋の方向とは異なり、かつ、第2の磁性部材が有する筋の方向とは異なる。
【0010】
好ましくは、互いに嵌合し合う複数の磁性部材は、凸部が設けられている磁性部材と、凸部と嵌合する凹部が設けられている磁性部材とを含む。
【0011】
好ましくは、複数の磁性部材のそれぞれの面には、複数の筋が形成されており、複数の磁性部材は、複数の群で構成され、複数の群のうち第1の群の磁性部材が有する筋の方向と、複数の群のうち第2の群の磁性部材が有する筋の方向とは異なる。
【0012】
これらの発明に従うと、回転時に振動が発生しにくいモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータを示す断面図である。
図2図1のA-A線における断面を模式的に示す図である。
図3】シャフト及びコアを示す側面図である。
図4】プレートを示す図である。
図5】プレートの側断面図である。
図6】コアの側断面図である。
図7】シャフトの側面図である。
図8】シャフトにコアを取り付ける工程を説明する図である。
図9】本実施の形態の変形例に係るシャフトを示す側面図である。
図10】本実施の形態の変形例に係るシャフト及びコアを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるモータについて説明する。
【0015】
以下の説明において、モータのシャフトに平行な方向を、回転軸方向ということがある。また、回転軸方向を、前後方向(モータのフレームから見てブラケットが設けられている方向が後方向)ということがある。また、モータの回転軸に垂直な方向(径方向)のうち特定の方向(具体的には、後述する)を上下方向といい、前後方向及び上下方向に垂直な方向を左右方向ということがある。ここでいう「前後」、「上下」、「左右」等は、モータのみに着目した場合について便宜上採用する示し方であって、このモータが搭載される機器における方向や、このモータが使用される姿勢について何ら限定するものではない。
【0016】
[実施の形態]
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータを示す断面図である。図2は、図1のA-A線における断面を模式的に示す図である。
【0018】
図1に示される断面は、図2においてB-B線として示される断面である。なお、一部の構成部材は、模式的に示されている。以下の図において、矢印A1は、回転軸方向すなわち前後方向を示す。矢印A2は、左右方向を示す(図2において左が左方向)。矢印A3は、上下方向を示す(図2において上が上方向)。
【0019】
モータ1は、フレーム組立体1aと、フレーム組立体1aに対して回転可能なアマチュア組立体1bとを有する。
【0020】
アマチュア組立体1bは、シャフト(回転軸)2と、シャフト2に取り付けられたアマチュア4と、シャフト2に取り付けられた整流子9などとを有している。アマチュア4は、シャフト2に取り付けられている。アマチュア4は、コア5及び巻線(図示せず)などを有している。巻線は、コア5に巻回されている。整流子9は、シャフト2の一方の端部近傍に設けられている。整流子9は、周方向(回転軸周り)に並ぶ複数の整流子片9bを備えている。複数の整流子片9bは、それぞれ、巻線に電気的に接続されている。
【0021】
フレーム組立体1aは、フレーム(モータケース)10、ブラケット30、プレート40、マグネット50などで構成されている。
【0022】
フレーム10は、前側の端部と、後側の端部と、前側の端部としての面(キャップ)と、筒部とを有している。すなわち、フレーム10において、後側の端部が開口部となるカップ形状を有している。フレーム10の後側の端部(図1において右側の端部)の開口部は、プレート40によりふさがれている。フレーム10及びプレート40により構成されるハウジング内に、アマチュア組立体1bのアマチュア4や整流子9などが収納されている。
【0023】
フレーム10は、磁性材料を用いて形成されている。図2に示されるように、フレーム10は、複数の角部12と、隣接する2つの角部12の間にある平面部11とを有している。具体的には、フレーム10は、平面部11と角部12とをそれぞれ4つずつ有する外形を有している。周方向に隣接する2つの平面部11同士は、1つの角部12を介して接続されている。周方向に隣接する2つの平面部11のうち一方は、他方に対して略垂直である。角部12は、丸みを帯びた形状(R形状)を有している。フレーム10は、シャフト2に垂直な断面において略正方形である。フレーム10は、全体として角型に形成されている。すなわち、モータ1は、角型の小型モータである。なお、以下の説明において、上下方向は、シャフト2を挟むように位置する一対の平面部11に対して垂直な方向であり、左右方向は、シャフト2を挟むように位置する他の一対の平面部11に対して垂直な方向である。
【0024】
図1に戻って、プレート40の内側には、ブラケット30が配置されている。ブラケット30は、フレーム10に設けられている。ブラケット30は、2組のブラシユニット20を有している。それぞれのブラシユニット20は、整流子9に接触するブラシ(図示せず)と、外部からの電流が供給される端子部28と、ブラシと端子部28とを電気的に接続する金属製の支持部(図示せず)とを有している。端子部28は、ブラケット30に取り付けられている。支持部は、ブラシをブラケット30に支持する。支持部は、例えば、弾性を有する弾性部材で形成され、整流子9がブラシの外表面に接触する状態でブラシをブラケットに保持する。
【0025】
シャフト2は、フレーム10の前側の面を貫通している。すなわち、シャフト2の前端部は、フレーム10から、フレーム10の外部に突出しており、シャフト2の他の部分はフレーム10の内部に収納されている。フレーム10の前側の面の中央部には、軸受保持部10gが設けられており、この軸受保持部10gに軸受18が保持されている。また、プレート40の中央部には、軸受19が保持されている。軸受19の後方には、スラストワッシャ19bが配置されている。シャフト2は、2箇所の軸受18,19及びスラストワッシャ19bにより、フレーム10に対して回転可能に支持されている。なお、シャフト2の後端部は、プレート40よりも後側に突出していてもよい。
【0026】
図2に示されるように、本実施の形態においては、1つの環状のマグネット50が設けられている。換言すると、マグネット50は、筒状の形状に形成されている。マグネット50は、フレーム10の内側に配置されている。フレーム組立体1aは、マグネット50の外周面50aをフレーム10で囲んだ断面構造を有している。フレーム10の外周面が、モータ1の外周面となる。なお、それぞれが磁極要素を有する複数のマグネットが用いられていてもよい。
【0027】
フレーム10は、略均一の厚みを有している。すなわち、フレーム10の内面10bは、平面部11による平坦な部分と、角部12による丸みを持った部分とが複数繋がることで構成され、角型に形成されている。
【0028】
マグネット50は、例えば公知の希土類材料と公知の樹脂材料とを用いて形成されたボンド磁石である。なお、マグネット50は、ボンド磁石に限られず、例えば焼結型の磁石であってもよい。
【0029】
マグネット50は、磁極要素61(N極61a、S極61b、N極61c、S極61d)を有している。すなわち、マグネット50は、モータ1の角部12の数と同一の数の磁極要素61を有している。磁極要素61は、周方向に、極性が互い違いになるように配置されている。4つの磁極要素61は、フレーム10の4つの角部12に、磁極要素61同士が向かい合うようにして配置されている。
【0030】
マグネット50は、角部12のフレーム10の内面10bに沿う丸みを帯びた形状の外周面50aを有している。また、マグネット50は、円柱面状の内周面50bを有している。マグネット50の内周面50bとコア5との間には、わずかなエアギャップが設けられている。
【0031】
本実施の形態において、マグネット50は、フレーム10に、接着剤59を用いて固定されている。すなわち、マグネット50の後側の端部とフレーム10の内面10bとの間には、接着剤59がある。モータ1の組み立て工程において、マグネット50は、フレーム10の後側の開口部からフレーム10の内側に納められる。そして、接着剤59がマグネット50の後側の端部とフレーム10の内面10bとの間に配されて、マグネット50がフレーム10に固定される。その後、フレーム10にアマチュア組立体1bを取り付け、ブラケット30及びプレート40をフレーム10に取り付けることにより、モータ1が組み立てられる。
【0032】
図3は、シャフト2及びコア5を示す側面図である。
【0033】
図3において、コア5については、回転軸を通る平面における断面がハッチングを付さずに示されている。
【0034】
図3に示されるように、コア5は、複数のコア(群の一例)5bを含んでいる。本実施の形態において、複数のコア5bは、5つのコア5v,5w,5x,5y,5zを有している。すなわち、コア5は、5つのコア5bで構成されている。シャフト2の長手方向に沿って、前方から、コア5v、コア5w、コア5x、コア5y、及びコア5zが順番に並んでいる。
【0035】
本実施の形態において、シャフト2の前端から、最前のコア5vの前面までの寸法は、寸法d1である。
【0036】
図4は、プレート6を示す図である。図5は、プレート6の側断面図である。
【0037】
図4及び図5に示されるように、各コア5bは、複数のプレート(磁性部材の一例)6を有している。すなわち、コア5は、複数のプレート6を有している。プレート6は、例えば、径方向に突出する10個のティース7を有している。プレート6の中央部には、内周部6cが形成されている。内周部6cは、円形の穴である。内周部6cの直径(寸法d5)は、シャフト2の直径と略同じである。プレート6の外周部6dは、径方向において、フレーム10に固定されたマグネット50に対向している。
【0038】
プレート6は、プレスやその他の加工方法により、電磁鋼板を所定の形状に切り取って形成されている。プレート6の表裏2つの面6bのそれぞれには、筋6zが形成されている。筋6zは、例えば、プレート6の材料である電磁鋼板にもともと存在しているものであり、具体的には、電磁鋼板が生産される際の圧延工程などにおいて電磁鋼板の表面に形成されたマーク(ロール目)である。筋6zは、プレート6において、所定の方向が長手方向となるように形成されている。
【0039】
図5に示されるように、プレート6の面6bには、凸部7bと、凹部7cとが形成されている。すなわち、プレート6の一方の面6bには凸部7bが形成され、他方の面6bには凹部7cが形成されている。凸部7bと凹部7cとは、プレート6の表裏の同位置に形成されている。例えば、プレート6の1箇所をプレスにより押し込むことにより、凸部7bと凹部7cとが形成される。
【0040】
図4に示されるように、凸部7bと凹部7cとの組合せは、各ティース7に設けられている。すなわち、それぞれの凸部7bと凹部7cとの組合せは、プレート6の外周縁の近傍部位に設けられている。1つのプレート6に、10個の凸部7bと10個の凹部7cとが形成されている。
【0041】
凸部7bは、他のプレート6の凹部7cに嵌合可能である。後述のようにプレート6が重ね合わせられるとき、一方のプレート6のそれぞれの凸部7bが、隣り合う他のプレート6のそれぞれの凹部7cに嵌合する。
【0042】
図6は、コア5bの側断面図である。
【0043】
図6に示されるように、コア5bは、複数(例えば10枚から20枚程度)のプレート6を重ねて構成されている。換言すると、コア5を構成する複数のプレート6は、コア5bとして、複数の群を構成している。コア5bは、それぞれのプレート6のティース7等が重なるようにして重ねられる。すなわち、コア5bも、ティース7や内周部6cを有している。
【0044】
コア5bは、互いに嵌合し合う2以上のプレート6を含んでいる。すなわち、それぞれのプレート6の凸部7bが、隣り合う他のプレート6の凹部7cに嵌合することにより、隣り合う2つのプレート6同士は互いに嵌合し合っている。本実施の形態において、全体として接着剤等の他の部材を用いることなく、ひとかたまりの積層体であるコア5bが構成されている。2つのプレート6同士は10箇所で嵌合しており、コア5bは、複数のプレート6が分解されにくいように結合されて構成されている。
【0045】
なお、各コア5bにおいて、重ねられた複数のプレート6のうち、隣り合う他のプレート6の凸部7bに嵌合する凹部7cを有する端部のプレート6には、凸部7bが設けられていないが、これに限られない。
【0046】
各コア5bの前後方向の幅寸法は、寸法d6である。
【0047】
本実施の形態において、1つのコア5bを構成する複数のプレート6は、それぞれの筋6zの長手方向が互いに略同方向になるようにして重ねられている。これにより、同一の電磁鋼板から形成した複数のプレート6を容易に重ねることができる。なお、これに限られず。1つのコア5bを構成する複数のプレート6同士で、それぞれの筋6zの長手方向が互いに異なるようにして重ねられていてもよい。
【0048】
図7は、シャフト2の側面図である。
【0049】
図7に示されるように、本実施の形態において、シャフト2の外周面には、シャフト2の長手方向において互いに並ぶ、複数のナール(嵌合部の一例)2bが形成されている。本実施の形態において、複数のナール2bは、5組のナール2v,2w,2x,2y,2zを有している。各ナール2bは、凸状である。ナール2bは、シャフト2の外周面から径方向に突出している。ナール2bは、シャフト2にナール加工を施すことにより形成されている。なお、図2に示されるように、5組のナール2v,2w,2x,2y,2zのそれぞれは、シャフト2の外周面の上下左右それぞれに設けられている。すなわち、5組のナール2v,2w,2x,2y,2zのそれぞれは、ナール加工により形成された4本の凸状突起を有している。
【0050】
図7に示されるように、本実施の形態において、シャフト2の長手方向において、複数のナール2bは一列に並んでいる。すなわち、5組のナール2v,2w,2x,2y,2zのうち、それぞれの右側に形成されたものは、シャフト2の長手方向に略一直線上に並んでいる。
【0051】
なお、本実施の形態において、シャフト2の前端から、最前のナール2vの前端までの寸法は、寸法d2である。各ナール2bの前後方向の長さは、寸法d3である。前後方向に隣り合うナール2b同士の間隔は、寸法d4である。
【0052】
寸法d4は、寸法d6と略同じである。寸法d3は、寸法d6よりも小さくなっている。また、寸法d2は寸法d1よりも大きく、寸法d1と寸法d6との和は、寸法d2と寸法d3との和よりも大きい。
【0053】
図8は、シャフト2にコア5を取り付ける工程を説明する図である。
【0054】
図8に示されるように、本実施の形態においては、ナール加工が施されたシャフト2に5個のコア5bが順に組み付けられることにより(ステップS1からステップS5)、シャフト2にコア5が取り付けられる(ステップS6)。ナール2bが各コア5bの内周部6cに嵌合するので、モータ1の駆動時において、コア5に加えられたトルクが確実にシャフト2に伝達される。
【0055】
すなわち、ステップS1では、前から1番目のナール2vに対して内周部6cが嵌め込まれるように、前から1番目のコア5vがシャフト2に取り付けられる(例えば、圧入される)。これにより、ナール2vがコア5vの内周部6cと嵌合している状態になる。
【0056】
次に、ステップS2では、前から2番目のナール2wに対して内周部6cが嵌め込まれるように、前から2番目のコア5wがシャフト2に取り付けられる。これにより、ナール2wがコア5wの内周部6cと嵌合している状態になる。このとき、コア5wは、前から1番目のコア5vに対して回転軸周りに72度回転させた状態で、シャフト2に取り付けられる。
【0057】
ステップS3では、前から3番目のナール2xに対して内周部6cが嵌め込まれるように、前から3番目のコア5xがシャフト2に取り付けられる。これにより、ナール2xがコア5xの内周部6cと嵌合している状態になる。このとき、コア5xは、前から1番目のコア5vに対して回転軸周りに144度回転させた状態で、シャフト2に取り付けられる。
【0058】
ステップS4では、前から4番目のナール2yに対して内周部6cが嵌め込まれるように、前から4番目のコア5yがシャフト2に取り付けられる。これにより、ナール2yがコア5yの内周部6cと嵌合している状態になる。このとき、コア5yは、前から1番目のコア5vに対して回転軸周りに216度回転させた状態で、シャフト2に取り付けられる。
【0059】
ステップS5では、前から5番目のナール2zに対して内周部6cが嵌め込まれるように、前から5番目のコア5zがシャフト2に取り付けられる。これにより、ナール2zがコア5zの内周部6cと嵌合している状態になる。このとき、コア5zは、前から1番目のコア5vに対して回転軸周りに288度回転させた状態で、シャフト2に取り付けられる。
【0060】
このように、本実施の形態においては、5つのナール2bのそれぞれに、コア5bが1つずつ嵌合する。すなわち、複数のナール2bは、それぞれ、複数のプレート6のいずれかの内周部6cと嵌合しているといえる。前から1番目のナール2vには前から1番目のコア5vのプレート6のいずれかが嵌合し、前から2番目のナール2wには前から2番目のコア5wのプレート6いずれかが嵌合し、前から3番目のナール2xには前から3番目のコア5xのプレート6いずれかが嵌合し、前から4番目のナール2yには前から4番目のコア5yのプレート6いずれかが嵌合し、前から5番目のナール2zには前から5番目のコア5zのプレート6いずれかが嵌合している。
【0061】
複数のコア5bのうち1つのコア5bのプレート6が有する筋6zの方向と、他のコア5bのプレート6が有する筋6zの方向とは、異なっている。すなわち、コア5vのプレート6が有する筋6zの長手方向と、コア5wのプレート6が有する筋6wの長手方向と、コア5xのプレート6が有する筋6xの長手方向と、コア5yのプレート6が有する筋6yの長手方向と、コア5zのプレート6が有する筋6zの長手方向とは、互いに異なっている。換言すると、各コア5bの回転軸周りの角度は、互いに異なっているといえる。
【0062】
このように、本実施の形態においては、コア5を構成する複数のプレート6の筋6zの向き(長手方向)は、一様ではなく、コア5b毎(一群毎)に異なっている。したがって、コア5の回転軸周りのバランスが比較的均一になり、モータ1の回転時に振動が発生しにくくなる。
【0063】
通常、コアを構成するプレートの回転軸周りの角度が一様である(筋(ロール目)の向きが同じになる)と、コアにアンバランスが生じやすい。各プレート同士で、重量の偏りに共通した傾向があるためである。このようにアンバランスが生じると、モータの回転時に振動が発生する。アンバランスを軽減するためには、アマチュアを構成した状態で、アマチュアにパテ等を塗ってバランスを調整したり(プラスバランス)、コアを削ってバランスを調整したり(マイナスバランス)する必要があるが、どちらの手法でも、モータの品質が損なわれたり、モータの特性に影響が加わる可能性がある。例えば、パテを塗ると、パテが脱落することによるモータロックが生じる可能性がある。また、コアを削ると、コアとマグネットとのギャップが広がることにより特性が悪化する可能性がある。
【0064】
このような課題に対して、本実施の形態の構成であれば、コア5の回転軸周りのバランスが予め整いやすい。アマチュア4を組み立てた場合に、最もバランスに影響するコア5のバランスがとれていると、アマチュア4を組み立てた段階における上述のようなバランス修正を行う必要がなくなる。したがって、振動が少なく、品質が高いモータ1を容易に製造することができる。
【0065】
特に、一般に、全長が長いモータにおいては、アマチュアが長く、コアの積厚が厚くなるため、コアの偏心やコアのバランスの偏りにより、アマチュアのアンバランスの程度が大きくなりがちであり、モータの振動が大きくなりやすい。しかしながら、本実施の形態の構成であれば、比較的高トルクの出力を得られる、アマチュア4の全長が比較的長いモータ1であっても、コア5の回転軸周りのバランスが取れている状態になる。そのため、振動が少なく、品質が高いモータ1を容易に製造することができる。
【0066】
シャフト2の外周面には、シャフト2の長手方向において互いに並ぶ、複数のナール2bが設けられている。比較的サイズが小さいナール2bを複数回に分けてシャフト2に構成することができるので、比較的簡素な設備でシャフト2を生産することができる。また、この場合であっても、複数のプレート6を、互いに嵌合させてコア5bとしてひとかたまりにまとめたうえでコア5b毎にナール2bに嵌合させているので、プレート6のシャフト2への保持強度を確保することができ、プレート6に加わるトルクを確実にシャフト2に伝達させることができる。
【0067】
接着などの方法によらず、機械的な結合構造により複数のプレート6がコア5b、及びコア5としてシャフト2に固定されているので、モータ1の耐久性を高くすることができる。
【0068】
各コア5bにおいて、凸部7bと凹部7cとの組合せは、ティース7の先端部付近に設けられている。各プレート6において反りが発生しやすいティース7付近で、隣り合うプレート6同士が嵌合するので、各ステータ6の反りを抑えたコア5bを構成することができる。
【0069】
以下、本実施の形態の変形例について説明する。以下の説明において、本実施の形態に係る構成と同様の構成には同一の符号を付しており、その説明を省略することがある。
【0070】
[変形例の説明]
【0071】
シャフト2の長手方向において互いに並ぶ複数のナールが、シャフト2の長手方向において一列に並んでいなくてもよい。
【0072】
図9は、本実施の形態の変形例に係るシャフト102を示す側面図である。
【0073】
図9に示されるシャフト102の外周面には、シャフト2の長手方向において互いに並ぶ2組のナール102b,102cが形成されている。2組のナール102b,102cのそれぞれは、ナール加工により形成された4本の凸状突起を有している。本変形例においては、前方のナール102bと後方のナール102cとは、シャフト2の長手方向において一列に並ばず、互いに周方向に互い違いになるように形成されている。すなわち、前方のナール102bは、シャフト2の外周面の上下左右それぞれに設けられている。他方、後方のナール102cは、シャフト2の外周面の、左上、左下、右下、及び右上に設けられている。
【0074】
図10は、本実施の形態の変形例に係るシャフト102及びコア5を示す側面図である。
【0075】
図10に示されるように、シャフト102においても、上述の実施の形態と同様に、5つのコア5bを順に取り付けることで、シャフト102にコア5を固定することができる。本変形例では、前側の3つのコア5v,5w,5xの内周部5cが、前方のナール102bに嵌合する。また、後側の3つのコア5x,5y,5zが、後方のナール102cに嵌合する。
【0076】
なお、図10において、シャフト2の前端から、最前のコア5vの前面までの寸法が、寸法d1で示されている。コア5bの前後方向の幅寸法は、寸法d6である。また、図9において、シャフト2の前端から、前方のナール102bの前端までの寸法は、寸法d2である。各ナール102b,102cの前後方向の長さは、寸法d3である。前方のナール102bの前端から後方のナール102cの後端までの距離は、寸法d8である。
【0077】
本変形例において、寸法d3は、寸法d8に0.5を乗じた数より大きい。すなわち、シャフト2の長手方向において、前方のナール102bと後方のナール102cとはオーバーラップしている(前方のナール102bの後端よりも後方のナール102cの前端のほうが前にある)。また、寸法d2は寸法d1よりも小さく、寸法d2と寸法d8との和は、寸法d6に6を乗じた寸法と寸法d1との和よりも大きい。すなわち、最前のコア5vの前端よりも前方のナール102bの前端のほうが前にあり、最後尾のコア5zの後端よりも後方のナール102cの後端のほうが後ろにある。
【0078】
以上のような変形例に係るシャフト102を用いてモータ1を構成した場合においても、上述と同様の効果を得ることができる。本変形例においては、最前のコア5vの前端から、最後尾のコア5zの後端まで、シャフト2の長手方向にナール102b,102cのいずれかが存在している。したがって、複数のプレート6同士がコア5b内で嵌合していなくても(例えば、凸部7bや凹部7cがプレート6に設けられていなくても)、確実に各プレート6で発生したトルクがナール102b,102cを通じてシャフト2に伝達される。
【0079】
[その他]
【0080】
上記の実施の形態や変形例の特徴点が部分的に組み合わされてモータが構成されていてもよい。上記の実施の形態や変形例において、いくつかの構成要素が設けられていなかったり、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。
【0081】
シャフトの長手方向に隣り合うコア同士が、互いに嵌合していてもよい。
【0082】
上述の実施の形態のような凸状のナールに代えて、例えば凹状の嵌合部が設けられていてもよい。また、シャフトの外周面に形成される凸状の嵌合部として、ナール加工により形成されるものとは異なるものが設けられていてもよい。このような嵌合部の個数は、上述の実施の形態に限られない。それぞれのナールのシャフトの長手方向の寸法は、上述のものに限られない。
【0083】
モータの外周形状は、上述の実施の形態のような角型でなくてもよい。例えば、いわゆる小判形(左右2つの円弧を2つの直線で繋いだオーバル型)の断面を有する小型のモータにおいて上述のようなコアを採用してもよいし、丸形の断面を有する小型のモータにおいて上述のようなコアを採用してもよい。モータの外周形状が小判形の断面を有する場合には、2つの円弧状の平面形状を有するマグネットがフレームに固定され、モータの外周形状が丸形の断面を有する場合には円形の平面形状を有するマグネットがフレームに固定される。また、モータの極数及びスロット数は、上述のものに限られない。
【0084】
上述の実施の形態においては、シャフトの長手方向に並んだ複数の凸状のナールをシャフトの外周面に形成し、その後にシャフトにコアを圧入してアマチュア組立体を構成しているが、アマチュア組立体の製造工程はこれに限定されない。例えば、シャフトの長手方向に並んだ複数の凸状のナールのうち第1の凸状のナールをシャフトの外周面に形成し、第1の凸状のナールに第1のコアを嵌合させ、その後、第2の凸状のナールをシャフトの外周面に形成し、第2の凸状のナールに第2のコアを嵌合させる、ということを繰り返して、モータを形成しても構わない。すなわち、長手方向に並ぶ複数の凸状のナールのうち1つを形成して形成したナールにコアを嵌合させる工程を繰り返すことにより、モータを形成するようにしてもよい。
【0085】
上記のように構成されたモータは、種々の用途に用いることができる。例えば、電子機器に用いられたり、種々の車両に搭載される用途に用いられたりしてもよい。
【0086】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 モータ
1a フレーム組立体
1b アマチュア組立体
2,102 シャフト
2b(2v,2w,2x,2y,2z),102b,102c ナール(嵌合部の一例)
4 アマチュア
5 コア
5b(5v,5w,5x,5y,5z) コア(群の一例)
6 プレート(磁性部材の一例)
6b (プレートの)面
6c 内周部
6z 筋
7 ティース
7b 凹部
7c 凸部
10 フレーム
20 ブラシユニット
30 ブラケット
40 プレート
50 マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10