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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】接続チャネルを含むシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/72 20060101AFI20221212BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20221212BHJP
   F16N 7/28 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F16C33/72
F16N29/00 E
F16N7/28
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018148206
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2019032079
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】10 2017 213 830.0
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517070958
【氏名又は名称】エス・ケイ・エフ マリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SKF Marine GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermann-Blohm-Str. 5, D-20457 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ブラント
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・ファンガウフ
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-140597(JP,U)
【文献】実開平3-105766(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/00
F16N 7/00
F16N 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト軸受をシールするためのシールアセンブリ(100)であって、前記シールアセンブリは、シールハウジング(110)と、前記シールハウジングによって保持された2つのシールリング(121,122)とを備え、前記シールリングはそれぞれシャフトを取り囲むよう構成され、環状チャンバ(130)が前記シールリングの間に形成されて、接続チャネル(111)によって軸受ハウジング側のオイル空間(13)に接続されており、
前記シールアセンブリの設置位置において、前記オイル空間の第1の可能な充填レベル(N)では、前記接続チャネル(111)は、オイル空間および環状チャンバの間の充填レベルの平衡化を行い、かつ前記オイル空間の第1の可能な充填レベル(N )よりも低い前記オイル空間の第2の可能な充填レベル(N)では、オイル空間および環状チャンバの間の充填レベルの平衡化を防止しており、
前記接続チャネルが前記シャフト(10)を部分的に取り囲むセクション(111b)を含む、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記シールアセンブリの前記設置位置において、1つの前記シールリングがスライド直径Dを有し、
前記第1の可能な充填レベル(N)は、前記スライド直径Dの最大で100%、80%、60%、50%、または最大で40%、前記環状チャンバの底部(G)より上にあり、および/または
前記環状チャンバの前記底部(G)から前記第2の可能な充填レベル(N)の距離(d)は、前記環状チャンバの前記底部(G)から前記第1の可能な充填レベル(N)の距離(d)の最大で95%、最大で90%、最大で85%、または最大で80%、および/または前記環状チャンバの前記底部(G)から前記第1の可能な充填レベル(N)の距離(d)の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも60%、または少なくとも70%である、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記設置位置において、前記環状チャンバへの前記接続チャネルの開口部(111d)および/または前記接続チャネルのオイルチャンバ側入口の最下点または中心点は、
D/20≦a≦2D/3またはD/11≦a≦D/9である前記第1の可能な充填レベル(N)からの距離aを有し、および/または
D/20≦b≦2D/3またはD/11≦b≦D/9である前記第2の可能な充填レベル(N)からの距離bを有し、
ここでDは、少なくとも1つの前記シールリングのスライド直径である、請求項1または2に記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記接続チャネル(111)のセクションが前記シールハウジング(110)の2つのハウジングリングの間に延在する、請求項1~のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記シールハウジングにベントチャネル(112)が形成され、前記ベントチャネル(112)が前記設置位置において、前記オイル空間(13)の前記第1の可能な充填レベル(N)より上に延在し、かつ前記環状チャンバ(130)および前記オイル空間(13)を接続する、請求項1~のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記ベントチャネルが少なくとも1つの曲がり部(112’,112”)および/または少なくとも1つの湾曲部を含む、請求項に記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記設置位置において、前記オイル空間(13)に開口する前記ベントチャネルのセクション(112c)が前記オイル空間に向かって下降している、請求項またはに記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
下降する前記セクション(112c)が、前記オイル空間への前記ベントチャネルの開口部の直径(d)の少なくとも3倍の長さ(L)を有する、請求項に記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のシールアセンブリ(100)のためのシールハウジング(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト軸受、例えばスラスト軸受またはラジアル軸受、特に船舶のアジマススラスタをシールするためのシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
シャフト軸受は一般に、軸受の潤滑のために指定された充填レベルまでオイルが充填されたオイル空間を含む特別な軸受ハウジングに配置される。シールにはシールリングが一般的に使用されており、シールリングがシャフトの周縁部またはシャフトを取り囲むシャフト保護スリーブに当接している。ここで、シールリングは、一般に、軸受ハウジングに対して軸方向にずれたシールハウジングに保持されている。 本明細書では、「軸方向」および「半径方向」、「回転方向」およびそこから導出される用語は、特に明記しない限り、常にシールされるシャフトの(意図された)回転軸に対するものを指す。
【0003】
摩耗や裂傷、材料の疲労、予期しない荷重等により、シールリングが損傷し、その機能が制限されたり、完全に破損したりすることがある。迅速な修理が常に可能であるとは限らないため、予備シールリングをメインシールリングと同軸に設けることができ、予備シールリングは、メインシールリングが破損した場合には修理が行われるまで少なくとも一時的にメインシールリングの機能を引き継ぐことができる。
【0004】
予備シールリングは、シャフトまたはシャフトを取り囲むシャフト保護スリーブにも当接しており、そのため、摩耗および摩耗粒子の発生を抑えることができるように、温度上昇を防止するように、設置時には制御された方法で既に潤滑されているべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、シャフト軸受の確実なシールが可能となる、コンパクトで頑丈で省スペースの技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載のシールアセンブリと、請求項10に記載のシールハウジングとによって達成される。有利な実施形態は、従属請求項、明細書および図面に開示されている。
【0007】
本発明のシールアセンブリは、シャフト軸受、例えばスラスト軸受またはラジアル軸受、特に船舶のアジマススラスタをシールするのに役立つ。シールアセンブリは、シールハウジングとそれによって保持された2つのシールリングを備え、各シールリングは、シールリング間に環状チャンバが形成されるようにシャフトを取り囲むように構成される。シールリングの1つ(ここでは「補助シール」とも呼ばれる)は、環状チャンバに向かってシャフトに沿って軸受ハウジング側のオイル空間(例えば、軸受ハウジングによって囲まれる)をシールするように構成される。環状チャンバは、シールリング、シャフトの周縁部またはシャフト保護スリーブの一部、およびシールハウジングの表面によって区切られていることが好ましい。
【0008】
軸受ハウジング側オイル空間は、接続チャネルによって環状チャンバに接続されている。シールアセンブリの設置位置(すなわち、取り付けられたシールアセンブリが使用される向き)において、オイル空間の第1の可能な(すなわち考えられるまたは設定可能な)充填レベルでは、接続チャネルは、オイル空間と環状チャンバとの間の(自動の)充填レベルの平衡を維持する一方、オイル空間の第2の可能な(考えられるまたは設定可能な)充填レベルでは、充填レベルの平衡が接続チャネルによって防止される。
【0009】
接続チャネルは、例えば、シールアセンブリの設置位置において、第1の可能な充填レベルの下に連続して位置するチャネル底部(設置位置では、その上にまたはその上をオイルが流れることができる)を有することができる。オイル空間が第1の可能な充填レベル以上に満たされている場合、チャンネル底部は、オイルレベル(オイル面)よりも下にあり、オイル空間と環状チャンバの自動充填レベルバランスが第1の充填レベルで保証される。または、接続チャネルは、例えば、両端間で気密に閉鎖することができ、その2つの端部(すなわち、そのオイルチャンバ側の入口および環状チャンバに向かう開口部)では第1の可能な充填レベルの下にある。最初の充填後に接続チャンネルがオイルで完全に満たされていると、吸入効果によりオイル空間と環状チャンバの間で自動的に充填レベルの平衡化が発生する。
【0010】
他方、第2の可能な充填レベルでは、(シールアセンブリの設置位置における)充填レベルの平衡化は、接続チャネルによって防止される。例えば、シールアセンブリの設置位置において、接続チャネルの一方の端部(例えば、環状チャンバへの開口部)は、第2の可能な充填レベルより上に完全に(特に上端部において)配置することができるか、または接続チャネルは、空気透過性であってもよく、第2の可能な充填レベルよりも上に位置するセクションを含むチャンネル底部を含み、この充填レベルでのオイルの流れを防止する。
【0011】
接続チャネルの位置のために、本発明のシールアセンブリは、簡単かつ信頼性のある方法で、環状チャンバのオイルによる充填の制御を可能にする。すなわち、シャフト軸受の通常の場合、すなわち、完全なシールリングによって、オイル空間の充填レベルは、好ましくは、第1の可能な充填レベルのレベルに設定される(オイル空間の供給によって調節される)ことができる。この場合、接続チャンネルが充填レベルの平衡化を実現するため、環状チャンバのオイルレベルも第1の可能な充填レベルのレベルに設定される。両方のシールリングが制御された方法で潤滑され、オイル空間からより離れた2つのシールリングの一方(ここでは「メインシールリング」とも呼ばれる)が外側に向かってシールする。
【0012】
一方、メインシールリングが破損した場合の一時的な場合には、オイル空間のための充填レベルは、好ましくは、第2の可能な充填レベルのレベル以下(すなわち、第2の水平断面平面以下)に設けられ、オイル空間の供給により調整される。この場合、接続チャンネルは、充填レベルの平衡化を防ぐ。したがって、オイル空間から環状チャンバ内にそれ以上オイルは流れない。補助シールリングはオイル空間との接触により潤滑されたままであるが、環状チャンバは(メインシールリングの不具合により)空になる。補助シールは、今やシャフト軸受のシールの機能を担う。
【0013】
このようなシールアセンブリは、コンパクトで丈夫でメンテナンスが少なく、接続チャネルを一時的に閉じるための追加のバルブを必要としない。したがって、シールアセンブリは、特に省スペースで実現される。予備シールは、オイル空間の充填レベルを調整することにより、必要に応じて簡単に作動させることができる。
【0014】
本発明のシールハウジングは、本明細書に開示される実施形態の1つによる本発明のシールアセンブリのシールハウジングとして機能するように構成される。特に、2つのシールリングの間に位置する環状チャンバを形成するようにと共に2つのシールリングを保持するように構成され、軸受ハウジング側のオイル空間から環状チャネルへオイルを案内するように(シールハウジングの対応する設置とともに)構成された接続チャネルを含む。シールハウジング(またはシールアセンブリ)の設置位置では、オイル空間の第1の可能な充填レベルで、接続チャネルがオイル空間と環状チャンバの間の充填レベルの平衡化を実現し、他方では、オイル空間の第2の可能な充填レベルによって、接続チャネルは、このような充填レベル平衡化を防止する。
【0015】
第1の可能な充填レベルおよび第2の可能な充填レベルは、それぞれ、オイル空間を通る第1の抽象的な水平断面平面として理解することができる。
【0016】
第1および第2の可能な充填レベルは、好ましくは、シールアセンブリをシールするために設けられるそれぞれのシャフト軸受に依存し、第1の可能な充填レベルは、好ましくは最大で、最大充填レベルの高さ(例えば、製造業者によって指定される)にあり、第2の充填レベルは、少なくとも最小充填レベルの高さ(例えば、製造業者によって指定される)である。最大充填レベルは、通常、シャフトの中心部にある。
【0017】
2つのシールリングは、異なるようにまたは同一に構成することができ、好ましくは両方が同じスライド直径を有する。ここで、シールリングの直径は、シールリングの「スライド直径」Dとして理解されるべきであり、シールリングは、シャフトまたはシャフト保護スリーブに当接する、またはシャフトまたはシャフト保護スリーブに沿って(シャフトの回転と共に)摺動する。
【0018】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、第1の可能な充填レベルは、最大で1つのシールリング(または両方のシールリング)のスライド直径Dの100%、80%、60%、50%または最大40%(設置位置における)だけ環状チャンバの底部(すなわち、最も低い位置)の上にある。従って、(設置位置における)環状チャンバの底部からの第1の可能な充填レベルの距離dは、d≦D、より好ましくはd≦0.8Dまたはd≦0.6Dまたはd≦0.5Dまたはd≦0.4D以下である。
【0019】
第2の可能な充填レベルは、好ましくは、スライド直径Dの少なくとも5%、少なくとも10%または少なくとも15%だけ、第1の可能な充填レベルを下回る。
【0020】
実施形態は、環状チャンバの底部からの第2の可能な充填レベルの距離dが、環状チャンバの底部からの第1の可能な充填レベルの第1の距離dの最大95%、最大90%、最大85%または最大80%であり、かつ/または 環状チャンバの底部からの第1の可能な充填レベルの距離dの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも60%または少なくとも70%であることが有利である。したがって、d≦0.95・dまたはd≦0.9・dまたはd≦0.85・dまたはd≦0.8・dおよび/またはd≧0.2・dまたはd≧0.3・dまたはd≧0.4・dまたはd≧0.6・dまたはd≧0.7・dであることが好ましい。第2の充填レベルがこのように設定されたオイル空間は、一時的なケースにおいてシャフト軸受の良好な潤滑を可能にし、さらに、これらの距離によって、2つの可能な充填レベルの互いの最小間隔が確保される。
【0021】
設置位置では、環状チャンバへの接続チャネルの開口部および/または接続チャネルのオイルチャンバ側の入口は、第1および第2の可能な充填レベルの間に配置されることが好ましい。
【0022】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、接続チャネルは、環状チャンバへの開口部を有し、設置位置における縁部の最下点、または設置位置における中心点における開口部は、第1の可能な充填レベルからD/20≦a≦2D/3の距離a離れており、特に距離aがD/11≦a≦D/9の範囲が好ましい。ここで、Dはシールリングの少なくとも1つのスライド直径である。特に、開口部が第1の可能な充填レベルに接近しすぎないため、オイルが軸受内を移動しても(シャフトの回転および冷却循環に起因して)、通常、環状チャンバへの供給が確実に行われる。同様に、接続チャネルのオイルチャンバ側の入口は、設置位置における縁部の最下点または設置位置における中心点において第1の可能な充填レベルからの距離aを有することができる。
【0023】
第2の可能な充填レベルから設置位置の環状チャネルへの接続チャネルの開口部の縁部の最下点、または設置位置の開口部の中心点への距離bは、好ましくはD/20≦b≦2D/3であり、特に距離bは、D/11≦b≦D/9の範囲が好ましい。ここで、Dは、シールリングの少なくとも1つのスライド直径である。特に、開口部は、第2の可能な充填レベルに近すぎないため、一時的なケースでは、軸受内のオイルの移動にもかかわらず、環状チャンバへのオイルの供給を防止することができる。同様に、設置位置において、接続チャネルのオイルチャンバ側の入口は、第2の可能な充填レベルから距離bに配置された、中心点または最下点を有するエッジを有することができる。
【0024】
特に有利には、上に定義された距離aおよびbについて、D/10≦a+b≦D/3またはD/6≦a+b≦D/4であることが真である実施形態が有利である。ここで、Dは、シールリングの少なくとも1つのスライド直径である。
【0025】
1つの有利な実施形態によれば、設置位置における第2の可能な充填レベルより上に位置する接続チャネルのセクションは、環状チャンバ内に半径方向に開口する。このことは、接続チャネルを含むシールハウジングの特に簡単な製造を可能にし、特に、接続チャネルのセクションは、シールハウジングのハウジングリングを通るボアとして実現することができる。
【0026】
接続チャネルは、例えば、シャフトの回転軸の周りに少なくとも60°、少なくとも70°、または少なくとも80°の中心角を有する、シャフトを部分的に取り囲むセクションを含むことができる。このようなセクションは、純粋に円周方向に延びることができ、または円周方向の延長に加えて軸方向部分を有することができる(したがって、例えば螺旋状に延びる)。
【0027】
1つの実施形態の変形例は、接続チャネルの少なくとも1つのセクションがシールハウジングの2つのハウジングリングの間に延びることが有利である。このようなセクションは、例えばハウジングリングを組み立てる前に、そのようなハウジングリングの少なくとも1つの面に、特に旋盤またはミリングにより、接続チャネルを導入することができる。このような実施形態は、製造および修理が特に簡単である。特に、上記のようにシャフトを部分的に囲むセクションは、好ましくは2つのハウジングリングの間に延在することができる。接続チャネルは、シールリングビードによってシャフトに向かって、例えばOリングなどで外側に向かってシールすることができる。
【0028】
環状チャンバは、例えばベントラインによって外側に通気することができる。
【0029】
1つの有利な実施形態によれば、本発明のシールアセンブリは、シールハウジング内にベントチャネルを含み、ベントチャネルは、設置位置で第1の可能な充填レベルの上に延在し、環状チャンバとオイル空間とを接続する。シールハウジング要素(例えば、シールハウジングのハウジングリング)を通る少なくとも1つのボアによって実現され得るこのようなベントチャネルは、通気および簡単な取り付けを含むシールアセンブリのコンパクトな設計を可能にする。特に、環状チャンバを通気するために外側に突出する配管を省略することができる。
【0030】
有利な一実施形態によれば、ベントチャネルは、少なくとも1つの曲がり部または1つの湾曲部を含む。特に、メインシールリングの欠陥により環状チャンバが乾燥して運用され、補助シールリングがシールを引き継いだ状況(オイル空間の充填レベルが第2の可能なレベルより下のレベルである)では、ベントチャネルを通る環状チャンバ内へのスプレーオイルの侵入を最小限に抑えることができる。
【0031】
設置位置において、オイル空間に開口するベントチャネルのセクションは、好ましくはオイル空間に向かって下降する。このような傾斜は、オイル空間からベントチャネルに入るスプレーオイルの一部を有利にオイル空間に戻るように流す。
【0032】
このような傾斜部分は、オイル空間へのベントチャネルの開口部の直径dの少なくとも3倍の長さLを有することが好ましい。反対に、オイル空間へのベントチャネルの開口部の直径dは、傾斜部分の長さの最大1/3である。このタイプの小さな開口部は、注入オイルの量を最小限に抑え、下降部の長さが比較的長いため、ベントチャネルが急勾配でも、オイル空間から噴霧された一部のオイルが下降部を介してベントチャネルに侵入することを防ぐ。
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態をより詳細に説明する。個々の要素および構成要素は、描写されたものと異なるように組み合わせることもできることが理解される。相互に対応する要素の参照番号は、図面に関して一般的なやり方で使用されており、必ずしも各図について新たに記載する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a】様々な断面における例示的な本発明のシールアセンブリの断面を示す。
図1b】様々な断面における例示的な本発明のシールアセンブリの断面を示す。
図1c】様々な断面における例示的な本発明のシールアセンブリの断面を示す。
図1d】様々な断面における例示的な本発明のシールアセンブリの断面を示す。
図2図1a~1dのシールアセンブリの概略概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1a~図1dにおいて、本発明のシールアセンブリ100の例示的な実施形態の様々な断面が示されている。シールアセンブリ100は、部分的に示された軸受ハウジング12内に配置されたシャフト10の軸受(図示せず)をシールする働きをする。図1a、図1cおよび図1dは、設置位置において水平であるシャフト10の意図された回転軸Rに沿った断面を示す(それぞれの断面は水平に対して異なる傾斜を有する)。図1bでは、この軸Rに垂直な断面が示されている。
【0036】
シールアセンブリ100は、シールハウジング110と、本例では、シールハウジングによって保持された2つの同様に形成されたシールリング121および122とを備え、シールリング121および122はそれぞれ、シャフト10のシャフト保護スリーブ11に当接し、したがって、両方とも同じスライド直径Dを有する。シールリング121,122の間には、環状チャンバ130が形成され、環状チャンバ130は、シャフト保護スリーブ11、シールハウジング110、およびシールリング121,122によって画定される。
【0037】
シールハウジング110には、接続チャネル111が形成され、接続チャネル111は、本例では水平に延びる、軸受ハウジング側オイル空間13から始まるセクション111aを含む。点111’において、接続チャネル111は、曲がり部を有し、ここで図1aに見える断面平面から出る。その更なる進路が図1bに示されており、接続チャネル111は、回転方向に延びるセクション111bにおいてシャフト10を部分的に取り囲んでいる(すなわち、中心角αで囲み、この場合は75°および90°の間にある)。例えば、接続チャネルは、少なくとも1つのハウジングリングの少なくとも1つの表面のセクション111bに(全体的または部分的に)特に、旋盤またはミリングで導入することができ、ここからハウジング110を組み立てることができる。図示の例では、シールリングビード121a、122aによりシャフトに対して接続チャネル111がシールされている。Oリング113および114は、外側シールとして機能する。
【0038】
図1bにおいて、第1の可能な充填レベルNおよび第2の可能な充填レベルNは、シャフト10の一部分を取り囲むオイル空間13(図1aに見られる)に対してマークされている。ここで、空のオイル空間とフルのオイル空間との間に想定または設定可能なすべての充填レベルは、抽象的な水平断面平面を定義する「可能な」充填レベルと理解されるべきである。好ましくは、Nは軸受メーカーが指定した充填レベルに対応し、それは通常、シャフトの意図された回転軸Rの領域に位置する。
【0039】
実施形態は、第1の可能な充填レベルNが、(設置位置において)環状チャンバの底部より上にシールリングの1つのスライド直径Dの最大で100%、80%、60%、50%または最大でも40%となる場合が有利である。図1bに示す例では、マークされた第1の可能な充填レベルは、回転軸Rの高さにあり、第2の可能な充填レベルNはその下にある。
【0040】
からNまでの距離a+bは、少なくとも1つのシールリングのスライド直径Dの10%から77%の範囲、特にスライド直径の15%から25%の範囲にあることが好ましい。
【0041】
別の曲がり部111 ”において、接続チャネルは、図1cに示され、環状チャンバ130に通じるセクション111cに合流する。
【0042】
設置位置では、図1a~図1cに示される実施形態の接続チャネル111は、第1の可能な充填レベルNの下に連続的に配置される。特にオイルが流れることができるそのチャネル底部は、この充填レベルNの下に延びている。オイル空間がこの充填レベルNのレベルで充填レベルを有する場合、接続チャンネル111は連続的に浸される、すなわちオイル空間13と環状チャンバ130に同じオイルレベルを設定する。両方のシールリング121,122が潤滑され、過度の摩耗や熱の発生から保護される。ここで、シールリング122は、通常の場合(つまり、元のままである限り)シャフト軸受のシールを保証するメインシールリングを表す。シールリング121は、メインシールリング122が不良の場合の補助シールリングである。
【0043】
第2の曲がり部111”の周りの領域、特に、この場合、設置位置における接続チャネルの垂直方向の最も高いセクションを表すセクション111cにおいて、チャネル底部は、第2の可能な充填レベルNの上を延在する。環状チャンバへの開口部111dは、第1の可能な充填レベルNから距離a(設置位置の中心点または最下点において)を有し、例えば、D/20≦a≦2D/3であり、この場合にはD/9≦a≦D/11でさえある。第2の可能な充填レベルNに対して、開口部111dは、距離b(設置位置の中心点または最下点において)を有し、不等式D/20≦b≦2D/3であり、この場合D/9≦b≦D/11を満たす。
【0044】
開口部111dが第2の可能な充填レベルNよりも高い位置にあるため、接続チャネル111が気密にシールされていても、オイル空間13から環状チャンバ130への流れは、オイル空間13内の充填レベルがこの第2の充填レベルNへ下がることによって妨げられ、接続チャネル111は、オイル空間と環状チャンバとの間の充填レベルの平衡化を防止する。オイルが環状チャンバ130から外に流出するメインシールリング122の不良の場合、このようにしてオイル空間からのオイルの後流が防止され、環状チャンバ130から排出される。この場合、補助シールリング121は、シャフト軸受の確実なシールを行う。
【0045】
図1dにおいて、シールアセンブリ100の断面は、設置位置において、第1の可能な充填レベルNよりも上にある別のセクションで示されている。図示の例示的な実施形態では、ベントチャネル112がこの領域に形成され、ベントチャネル112は、環状チャンバ130をオイル空間13に接続する。
【0046】
図示された例では、ベントチャネル112は、第1のセクション112aならびに第2のセクション112bおよび第3のセクション112cを含み、それらは曲がり部112’または112”によって互いに分離されており、(特に環状チャンバ130が排出される一時的な場合)、ベントチャネル112を通る環状チャンバへのスプレーオイルの浸透が低減される。さらに、この場合、第3のセクション112cは、セクション112a、112bよりも狭く形成され、スプレーオイルの浸透率をさらに低減する。
【0047】
さらに、図示された設置位置では、セクション112cは、オイル空間13に向かって長さLにわたって降下し、この領域では適宜、スプレーされたオイルがオイル空間に逆流することができる。オイル空間への開口部では、通気チャンネルは、直径dを有する。d≦L/3が成り立つ実施例が特に有利である。スプレーオイルがベントチャネルを通って環状チャンバに浸透する可能性がさらに最小限に抑えられる。
【0048】
図2には、設置位置においてシャフト10のシャフト軸受14をシールするためのシールアセンブリ100の簡略図が示されている。特に、セクション111bがシャフト10を部分的に取り囲むセクション111a、111b、111cを含む、オイル空間の第1の可能な充填レベルNの下に連続して延びる接続チャネル111が注目され、セクション111c(その関連するチャネル底部および環状チャンバ130への開口部111dを含む)は、オイル空間13の第2の可能な充填レベルNより上にある。
【0049】
上部領域には、ベントチャネル112が配置され、オイル空間に開口するセクション112cは、オイル空間13に向かって下降する。オイル空間13は、軸受ハウジング12の外側に通気ライン15を含む。
【0050】
シールハウジング110と、シールハウジングによって保持された2つのシールリング121,122とを含むシャフト軸受14をシールするためのシールアセンブリ100が開示されている。シールリング121,122は、シャフト10を取り囲むように構成されており、その間に環状チャンバ130が形成されている。環状チャンバ130は、接続チャネル111によってオイル空間13に接続されている。シールアセンブリの設置位置では、オイル空間の第1の可能な充填レベルNによって、接続チャンネルがオイル空間と環状チャンバの間の充填高さ補償を実現し、オイル空間の第2の可能な充填レベルNにより、接続チャネルは充填高さ補償を防止する。
【0051】
さらに、このようなシールアセンブリのためのシールハウジング110が開示されている。
【符号の説明】
【0052】
10 シャフト
11 シャフト保護スリーブ
12 軸受ハウジング
13 オイル空間
14 シャフト軸受
15 オイル空間の通気ライン
100 シールアセンブリ
110 シールハウジング
111 接続チャネル
111a,111b,111c 接続チャネル111のセクション
111d 環状チャンバ130への接続チャネルの開口部
111’,111” 接続チャネルの曲がり部
112 環状チャンバ130のベントチャネル
112a,112b,112c ベントチャネル112のセクション
112’, 112” ベントチャネル112の曲がり部
113, 114 Oリング
121 シールリング(補助シールリング)
122 シールリング(メインシールリング)
122a シールリング122のシールリングビード
130 環状チャンバ
d オイル空間13への開口部におけるベントチャネルの直径
環状チャンバの底部から第1の可能な充填レベルまでの距離
環状チャンバの底部から第2の可能な充填レベルまでの距離
D シールリングのスライド直径
G 設置位置における環状チャンバの底部
L ベントチャネルのセクション112cの長さ
第1の可能な充填レベル
第2の可能な充填レベル
R シャフト1の回転軸
図1a
図1b
図1c
図1d
図2